(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図13に従って説明する。
図1及び図2は、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ11の要部模式図である。液体貯留手段としてのインクカートリッジ23及び液体パックとしてのインクパック23aは、インクジェット式プリンタ11本体側に配置される。そして、インクパック23aに収容された液体としてのインクは、供給チューブ28及び液体供給用バルブユニットとしてのバルブユニット21を介して、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19に供給される。なお、供給チューブ28及びバルブユニット21によって液体供給路が構成されている。
このようなインクジェット式プリンタとして、例えば、A0判等の大判のターゲットとしての記録紙に印刷可能なプリンタであって、インク消費量が多いために多量のインクを貯留しておく必要があるものがある。このようなプリンタでは、キャリッジ15上にインクカートリッジ23を搭載しない、オフキャリッジの構成を採っている。
また、近年、オフキャリッジにすることによってインクカートリッジのレイアウトに自由度を持たせた、小型化、薄型化されたプリンタが使用されるようになっている。従って本実施形態では、大判の記録紙に印刷を行うプリンタに具体化するようにしたが、小型化、薄型化されたこれらのプリンタに具体化するようにしてもよい。
ここで、図1に示したインク供給システムは、空気加圧供給タイプを示している。すなわち、図1は、空気圧によってインクパック23aを加圧してインクを供給するインクジェット式プリンタ11の要部模式図である。インクカートリッジ23は気密状態に形成された外郭ケース24を備え、同外郭ケース24の内部には、ポリエチレンフィルムにアルミニウムを蒸着したラミネートフィルム等の可撓性素材からなる、インクパック23aが設けられている。インクパック23a内にはインクが充填されている。インクパック23aの一側には針装着部23bが形成されており、インクカートリッジ23を収容するインクカートリッジホルダ(図示せず)に設けられた針23cが針装着部23bに装着するように構成されている。針23cは供給チューブ28の一端と接続されており、バルブユニット21に対してインクを供給可能となっている。供給チューブ28は、例えばポリエチレン等の可撓性部材により形成されている。また、供給チューブ28は、耐薬品性に優れたポリエチレン系樹脂等の可撓性部材による内装に、気密遮断性に優れた塩化ビニルや金属膜等を外装として覆った二重構造であってもよい。
インクカートリッジ23とインクパック23aの間には、加圧ポンプ29により加圧空気が導入されるように構成された空間部Sが形成されている。このインクカートリッジ23は、密閉状態になるように形成されている。この空間部Sに加圧ポンプ29によって空気を送りこむことによって、インクパック23aが加圧される。そして、インクパック23a内に封入されたインクは、正圧により供給チューブ28を介してキャリッジ15上のバルブユニット21にインクが流入する。
図2は、水頭差によってインクを供給するインクジェット式プリンタ11の要部模式図である。インクパック23aに形成された導出部としてのインク導出口23dは、バルブユニット21及び記録ヘッド19より重力方向の上方に配置されている。これにより発生する水頭差に基づく正圧により、供給チューブ28及びバルブユニット21を介して記録ヘッド19にインクが供給される。本発明におけるインクジェット式プリンタ11は、前記のいずれのインク供給システムを利用可能である。そして、図3は前記した図1に示すインク供給システムを採用したインクジェット式プリンタ11の基本構成を示したものであり、インクジェット式プリンタ11の平面図を示している。
図3に示すように、インクジェット式プリンタ11は、上側が開口する略直方体形状のフレーム12を備え、そのフレーム12に紙送り部材13が架設されており、図示しない紙送り機構により、この紙送り部材13上を紙が給送されるようになっている。さらに、フレーム12には前記紙送り部材13に平行にガイド部材14が架設されており、このガイド部材14には、前記キャリッジ15がガイド部材14の軸線方向に移動可能に挿通支持されている。そしてこのキャリッジ15は、タイミングベルト17を介してキャリッジモータ18に接続されており、キャリッジモータ18の駆動によってガイド部材14に沿って往復移動されるようになっている。
また、キャリッジ15の紙送り部材13に対向する面には、前記記録ヘッド19が搭載されている。そして、キャリッジ15上には記録ヘッド19にインクを供給する前記バルブユニット21B,21C,21M,21Y(なお、以下においては各バルブユニットを代表して、単に「バルブユニット21」として示す場合もある)が搭載されている。このバルブユニット21B,21C,21M,21Yは、本実施形態においては、その内部にインクを一時的に貯留するために、インクの色(ブラックインクBと、シアンC、マゼンタM、イエローYの各カラーインク)に対応して4個具備されている。
なお、記録ヘッド19の下面には図示しないノズル吐出口が設けられており、図示しない圧電素子の駆動により、前記バルブユニット21B,21C,21M,21Yから記録ヘッド19にインクが供給され、紙上にインク滴が吐出され、印刷が行われるようになっている。
フレーム12の右端には4つのカートリッジホルダ22が形成されている。そして、このカートリッジホルダ22には、前記インクカートリッジ23B,23C,23M,23Y(なお、以下においては各インクカートリッジを代表して、単に「インクカートリッジ23」として示す場合もある)が着脱可能に備えられている。このインクカートリッジ23B,23C,23M,23Yは、それぞれ、内部が気密状態となっている前記外郭ケース24と、その内側に設けられたインクパック23a(図1参照)とによって構成されている。インクパック23aには、前記したブラックインクBおよび各カラーインクC,M,Yがそれぞれ貯留されている。
インクカートリッジ23のインクパック23aと前記バルブユニット21とは、可撓性を有する前記供給チューブ28B,28C,28M,28Y(なお、以下においては各供給チューブを代表して、単に「供給チューブ28」として示す場合もある)を介して接続されている。
また、イエローインクYを貯留するインクカートリッジ23Yの上には、前記加圧ポンプ29が備えられており、この加圧ポンプ29は、空気供給チューブ26B,26C,26M,26Yを介して前記インクカートリッジ23B,23C,23M,23Yの各外郭ケース24と接続されている。従って、加圧ポンプ29により加圧された空気は、空気供給チューブ26B,26C,26M,26Yを介して各インクカートリッジ23B,23C,23M,23Yの外郭ケース24内に導入され、外郭ケース24とインクパック23aとの間に形成された前記空間部S(図1参照)に導入されるようになっている。
すなわち、加圧ポンプ29が駆動されることにより、外郭ケース24内に空気が導入されると、インクパック23aは加圧空気によって押し潰されるようになる。そして、インクパック23aに貯留されている各インクは、供給チューブ28B,28C,28M,28Yを介してバルブユニット21B,21C,21M,21Yに供給されるようになる。
また、前記供給チューブ28B,28C,28M,28Yの流路途中、すなわち前記バルブユニット21B,21C,21M,21Yの上流には、流量調整手段としての流路バルブ30が備えられている。そして、この流路バルブ30は、インクカートリッジ23の近傍において前記フレーム12に固定されており、供給チューブ28B,28C,28M,28Yを流れるインクの流量を変化させることが可能となっている。
一方、前記キャリッジ15の移動経路上における非印字領域(ホームポジョン)には、記録ヘッド19のノズル形成面を封止することができるキャッピング手段31が配置されている。さらにこのキャッピング手段31の上面には、前記記録ヘッド19のノズル形成面に密着して封止し得るゴム等の弾性素材により形成されたキャップ部材31aが配置されている。そして、キャリッジ15がホームポジョンに移動したときに、キャッピング手段31が記録ヘッド19側に移動(上昇)して、キャップ部材31aによって記録ヘッド19のノズル形成面を封止することができるように構成されている。
このキャップ部材31aは、図1に示すように、インクジェット式プリンタ11の休止期間中において記録ヘッド19のノズル形成面を封止し、ノズル開口の乾燥を防止する蓋体として機能する。また、このキャップ部材31aの下底部には、吸引手段としての吸引ポンプ(チューブポンプ)31bにおけるチューブ31cの一端が接続され、吸引ポンプ31bによる負圧を記録ヘッド19に作用させて、記録ヘッド19からインクを吸引排出させるクリーニング動作を実行する機能も果たすようになされている。
このように、吸引ポンプ31bによって吸引を行い、バルブユニット21内や記録ヘッド19内の気泡を排出する方法として、いわゆるチョーククリーニングがある。このチョーククリーニングでは、記録ヘッド19より上流側の弁を閉じた状態(チョーク状態)とし、ノズル形成面側から吸引ポンプ31bより吸引する。そして、バルブユニット21内や記録ヘッド19を高負圧にして気泡を膨張させ、記録ヘッド19のフィルタより下流に気泡を引き込む。この状態で、弁を開いて気泡を排出させる。吸引ポンプ31bにより吸引されたインクは、廃液回収ボックス31eに回収される。廃液回収ボックス31e内には、複数層の廃液吸収剤31fが設けられており、回収されたインクを貯蔵する。
一方、キャッピング手段31の印字領域側に隣接して、ゴム等の弾性素材を短冊状に形成したワイピング部材32が配置されており、必要に応じて記録ヘッド19の移動経路に水平方向に進出して、ノズル形成面を払拭して清掃することができるように構成されている。
次に、前記バルブユニット21について図4〜図11に従って詳しく説明する。
図4及び図5は、記録ヘッド19及びバルブユニット21の斜視図を、図6及び図7は、バルブユニット21の側面図を、図8は、バルブユニット21の断面図を、図9及び図10は、バルブユニット21の部分断面図を示している。なお、図4および図5に示した構成においては、説明の便宜上、記録ヘッド19の上部にバルブユニット21が2つのみ搭載されている状態を示しており、残り2つについては省略している。
なお、これ以外に、このバルブユニット21は、1つの記録ヘッド19から吐出されるインク色に対応してさらに複数のバルブユニットが搭載される場合もある。また、1つの記録ヘッド19に対して、複数のバルブユニット21を搭載したものを、複数組備える構成を採用することもできる。
図4および図5に示すように、バルブユニット21は略円形の偏平状に形成された合成樹脂製のユニットケース35を備え、その一端に形成された接続部36には前記供給チューブ28が接続されている。また、他端には、図5に示すようにインク導出部37が形成されており、このインク導出部37は、円環状の接続部材38と板状のヘッド支持体39を介して記録ヘッド19に接続されている。
また、図6及び図8に示すように、ユニットケース35の一側面21aには、略円筒状の小凹部41が形成されている。そして、図6に示すように、同じく一側面21aには、小凹部41から前記接続部36の方向に向かってくの字を描くようにして溝42が形成されており、溝42の端部が接続部36に形成されている穴43と連通している。そして、さらにこの一側面21aには、前記小凹部41及び溝42を塞ぐようにして、可撓性の液体供給室側フィルム部材としての第1のフィルム部材45が熱溶着により貼り付けられている。従って、小凹部41と第1のフィルム部材45とによって略円柱状の液体供給室としてのインク供給室46が形成されているとともに、溝42と第1のフィルム部材45とによってインク導入路47が形成されている。そして、供給チューブ28から流入するインクは、接続部36の穴43、インク導入路47を介してインク供給室46に流入するようになっている。
なお、前記第1のフィルム部材45としては、インク性状に化学的な影響を及ぼさないこと、更に水分透過度や、酸素や窒素透過度の低い素材であることが重要である。そこで、第1のフィルム部材45は、高密度ポリエチレンフィルムあるいはポリプロピレンフィルムに、塩化ビニリデン(サラン)をコーティングしたナイロンフィルムを接着ラミネートした構成であることが望ましい。または、アルミナ蒸着又はシリカ蒸着されたPET素材から構成してもよい。
また、図6及び図8に示すように、前記第1のフィルム部材45において、前記インク供給室46側の面には、前記インク供給室46の内径よりも若干小さな外径を有するばね受け座45aが、インク供給室46と同心円状に位置するようにして取り付けられている。なお、ばね受け座45aは前記第1のフィルム部材45に対して熱溶着によって予め取り付けるようにしてもよく、また、接着剤、あるいは両面接着テープ等によって取り付けるようにしてもよい。そして、ばね受け座45aには、前記第1のフィルム部材45と反対の面に環状の段差部45bが設けられている。
また、図7及び図8に示すように、ユニットケース35の他側面21bには、略円錐台形状の大凹部48が形成されている。なお、この大凹部48は、前記小凹部41よりも大きな径を有しながら同心円状に位置するように設けられている。
そして、図7に示すように、ユニットケース35の他側面21bには、大凹部48の端部から前記インク導出部37の方向に向かうようにして溝49が形成されており、この溝49の端部は前記インク導出部37に形成されている穴51と連通している。そして、さらに他側面21bには、前記大凹部48及び溝49を塞ぐようにして、可撓性の圧力室側フィルム部材としての第2のフィルム部材52が熱溶着により貼り付けられている。従って、大凹部48と第2のフィルム部材52とによって略円錐台形状の圧力室53が形成されているとともに、溝49と第2のフィルム部材52とによってインク導出路54が形成されている。そして、圧力室53内のインクは、インク導出路54及びインク導出部37の穴51を介して前記記録ヘッド19に排出されるようになっている。
なお、前記第2のフィルム部材52としては、圧力室53の負圧状態を効率的に感知することができるように軟質であるとともに、インク性状に化学的な影響を及ぼさないこと、更に水分透過度や、酸素や窒素透過度の低い素材であることが重要である。そこで、第2のフィルム部材52は、高密度ポリエチレンフィルムあるいはポリプロピレンフィルムに、塩化ビニリデン(サラン)をコーティングしたナイロンフィルムを接着ラミネートした構成であることが望ましい。または、アルミナ蒸着又はシリカ蒸着されたPET素材から構成してもよい。
また、前記第2のフィルム部材52の前記圧力室53の反対側の面には、第2のフィルム部材52に比較して硬い材料により形成された受圧板56が取り付けられている。この受圧板56は、前記圧力室53の内径よりも小さい外径を有している。そして、この受圧板56は、印刷動作等によりキャリッジ15が動いた場合に、受圧板56自体の自重とキャリッジ15の加速度により、第2のフィルム部材52を動かして圧力室53内の圧力が変化しないように、軽量であることが必要である。そこで、受圧板56はポリエチレンやポリプロピレンといった軽量のプラスチック材料で形成することが望ましい。
なお、この受圧板56は前記第2のフィルム部材52に対して熱溶着によって予め取り付けるようにしてもよく、また接着剤、あるいは両面接着テープ等により取り付けるようにしてもよい。この受圧板56は、図4及び図6に示すように、本実施形態では、円板状に形成されているが、特に円板状のものに限られることはない。しかしながら、圧力室53がごく薄い円筒状の空間を形成する場合においては、前記受圧板56として円板状のものを用い、受圧板56を圧力室53に対して同心円状に配置することが望ましい。
そして、図8に示すように、ユニットケース35のインク供給室46と圧力室53との間には、各室46,53を区画するように隔壁58が形成されており、この隔壁58には、インク供給室46と圧力室53とを連通させる開閉弁を構成する支持孔59が形成されている。
そして、この支持孔59には、開閉弁を構成する可動バルブ61が摺動可能に挿通支持されている。可動バルブ61は、詳しくは、円柱状のロッド部材62と、このロッド部材62に一体に形成されている断面円形の板状部材63とにより構成されている。そして、板状部材63の外径は、前記ロッド部材62の外径よりも大きくなっており、可動バルブ61のうち、ロッド部材62のみが、前記支持孔59に摺動可能に挿通支持されている。
なお、図9及び図10に示すように、前記支持孔59は、等間隔に4つの切り欠き孔59aが形成されている。従って、支持孔59にロッド部材62が挿通支持された状態では、ロッド部材62と切り欠き孔59aとによって、4つの液体供給孔としてのインク流路59bが形成されるようになっている。また、図8に示すように、板状部材63は、前記インク供給室46内に位置しており、同板状部材63には、前記インク供給室46側の面に環状の段差部63aが形成されている。
そして、ばね受け座45aの段差部45bと板状部材63の段差部63aとには、コイル状のシールばね65が掛け装されており、このシールばね65の作用により、ばね受け座45aと板状部材63とは離間する方向に付勢されている。
一方、図8及び図9に示すように、前記隔壁58には、前記支持孔59を囲むようにして円環状に形成されたゴム製のシール部材66が取り付けられている。従って、可動バルブ61における前記板状部材63は、シールばね65の付勢力によりシール部材66に当接するようになっている。なお、前記シール部材66はOリング等でもよいが、エラストマー樹脂等を隔壁58と2色成形により一体に形成してもよい。そして、板状部材63とシール部材66とが当接する場合には、インク流路59bは閉じた状態となる。
そして、以上のように構成されたバルブユニット21は、前記記録ヘッド19が非印刷状態、すなわちインクを消費しない状態においては、前記シールばね65によるばね荷重W1が、可動バルブ61の前記板状部材63に加わっている。また、板状部材63にはインク供給室46に供給されるインクの加圧力P1も加わる。これにより、前記板状部材63は図8に示したように、ゴム製のシール部材66に当接し、前記インク流路59b(図9参照)は閉弁状態になる。すなわち、インク供給室46と圧力室53との間は非連通の状態となり、バルブユニット21は自己封止の状態になる。
一方、前記記録ヘッド19が印刷状態となり、インクを消費した場合においては、圧力室53のインクの減少に伴い前記第2のフィルム部材52がインク供給室46側に変位し、第2のフィルム部材52の中央部が可動バルブ61を構成するロッド部材62の端部に当接する。なお、この時の第2のフィルム部材52の変位に要する変位反力をWdとする。そして、記録ヘッド19においてさらにインクが消費されることにより、圧力室53内には負圧P2が発生するようになる。そしてこの時、P2>W1+P1+Wdの関係となった場合に、第2のフィルム部材52がロッド部材62を押圧し、これにより、板状部材63によるシール部材66の当接が解かれ、図11に示すように、インク流路59bは開弁状態となる。
従って、インク供給室46内におけるインクは、インク供給室46から圧力室53に至るインク流路59bを介して圧力室53内に供給され、圧力室53内へのインクの流入により圧力室53の負圧は解消される。これに伴い、可動バルブ61が移動して図8に示すように再び閉弁状態になされ、インク供給室46から圧力室53へのインクの供給は停止される。
なお、前記した可動バルブ61の開閉弁の動作は、図8及び図11に示す状態が、反復繰り返されるような極端な動作が必ずしもなされる必要はない。現実には印刷動作中においては、第2のフィルム部材52は可動バルブ61を構成するロッド部材62の端部に当接した均衡状態を保ち、インクの消費に従って僅かに開弁しつつ、圧力室53に対してインクを逐次補給するように作用する。
すなわち、圧力室53内におけるインクの圧力変動は、可動バルブ61の開閉によって、ある一定の範囲内となるように制限されており、インク供給室46内のインクの圧力変化とは切り離されている。従って、キャリッジ15の往復移動により供給チューブ28に圧力変化が生じていても、その影響を受けることがない。そして、その結果、圧力室53から記録ヘッド19へのインクの供給は、良好に行われるようになっている。
なお、前記受圧板56は、前記第2のフィルム部材52の変位作用を受圧板56の全面積において受けることができる。従って、第2のフィルム部材52の変位作用を確実に可動バルブ61に伝達させることができ、可動バルブ61による開閉弁作用の信頼性を向上させることができる。
また、前記した構成によると、インクカートリッジ23から記録ヘッド19に至るインクの供給系は密閉経路になされ、この密閉経路内にインクを充填させることができる。従って、この構成によると、脱気インクを用いることにより、インクの供給系に僅かに残る気泡等もインクに吸収させることが可能となる。それ故、インク供給系に残留する気泡により、いわゆるドット抜けと称する印刷不良の発生度合いも遥かに低減させることができる。
次に、前記流路バルブ30について図12及び図13に従って、詳しく説明する。
図12に示すように、流路バルブ30は、流路としてのインク流路部71と押圧部72とを備える。インク流路部71は、略直方体状の可撓性部材によって形成されたインク流路本体部71aを備え、同インク流路本体部71aの上面には、4つの溝72B,72C,72M,72Yが形成されている。そして、インク流路本体部71aの上面には、前記溝72B,72C,72M,72Yを塞ぐようにして、可撓性を有する可撓性部材としての封止フィルム71bが熱溶着により貼り付けられている。従って、溝72B,72C,72M,72Yと封止フィルム71bとによってインク供給路73B,73C,73M,73Yが形成されている。
そして、このインク供給路73B,73C,73M,73Yは、前記供給チューブ28B,28C,28M,28Yの流路途中に位置している。従って、流路バルブ30よりも上流側の供給チューブ28から流出したインクは、インク供給路73B,73C,73M,73Yに流入した後に流路バルブ30よりも下流側の供給チューブ28に流入するようになっている。
押圧部72は、前記インク流路部71に比較して硬い材料により形成されており、図示しない駆動モータによって、上下方向に移動するようになっている。従って、図12に示すように、押圧部72が、上側に位置した状態では、インク流路部71のインク供給路73B,73C,73M,73Yは最大の断面積を有するようになり、インクが最大の流量で流れるようになる。一方、図13に示すように、押圧部72が下降すると、押圧部72がインク流路部71を押圧し、インク流路部71全体を変形させて、インク供給路73B,73C,73M,73Yが押し潰されるようになっている。その結果、インク供給路73B,73C,73M,73Yの断面積は小さくなり、インクの流量が減少するようになっている。従って、流路バルブ30は、前記押圧部72を上下動させることにより、供給チューブ28を流れるインクの流量を最大から最小まで変化させることができるようになっている。
なお、前記流路バルブ30における流路体積の変化に伴い、供給チューブ28内のインクには、大きな圧力変動が生じることがある。しかし、流路バルブ30より下流には、前記バルブユニット21が設けられており、バルブユニット21の圧力室53におけるインクの圧力変動が常に一定の範囲内に制限されている。従って、流路バルブ30によるインクの圧力変動が、記録ヘッド19へのインク供給に与える影響を最小限に抑えることができ、流路バルブ30を設計する際には、インクの圧力変動に関して考慮しなくてもよいようになっている。従って、流路バルブ30の位置も、キャリッジ15上に乗っている必要がなく、本実施形態のように、フレーム12に固定することができ、設計の自由度が増す。
次に、以上のように構成されたインクジェット式プリンタ11の、前記バルブユニット21の圧力室53のインクの充填性を向上させる際の作用について説明する。
まず、前記バルブユニット21の圧力室53内に気泡が存在してインクの充填性が低下し、記録ヘッド19へ気泡が流出して、印刷不良となった場合には、キャリッジ15を非印字領域(ホームポジション)まで移動させる。その後、記録ヘッド19のノズル形成面をキャップ部材31aによって封止する。
次に、図13に示すように、前記流路バルブ30の押圧部72を下降させ、インク供給路73B,73C,73M,73Yの断面積を最小にして、インクの流量を最小限まで減少させる。この状態で、吸引ポンプを駆動させると、圧力室53に大きな負圧が作成され、P2>W1+P1+Wdの関係となった場合に、図11に示すように、インク流路59bが開弁状態となる。
その結果、前記流路バルブ30より下流の供給チューブ28と、圧力室53とは、インク供給室46を介して連通状態となり、流路バルブ30より下流全体に大きな負圧が作成されるようになる。そして、圧力室53のインクに混在していた気泡は、その体積が増大するようになる。
その後、この状態において、図12に示すように、流路バルブ30の押圧部72を上昇させ、流路バルブ30を一気に開放状態とすると、インクがインクカートリッジ23から勢いよく流れ込み、供給チューブ28、インク供給室46、圧力室53を通ったインクが記録ヘッド19から勢いよく排出される。そして、このときのインクの流れによって、圧力室53内において体積が増大していた気泡は、インクとともに記録ヘッド19から排出される。その後、必要に応じて吸引ポンプの駆動を停止し、記録ヘッド19とキャップ部材31aとを分離し、処理を終了する。以上により、いわゆるチョーククリーニングが行われる。そしてバルブユニット21の圧力室53における気泡が排出され、インクの充填性を向上させるための作業が終了する。
上記第1の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記第1の実施形態では、インクジェット式プリンタ11において、インクカートリッジ23から記録ヘッド19へとインクを供給するための供給チューブ28上に、バルブユニット21と、流路バルブ30とを設けるようにした。
従って、流路バルブ30の押圧部72によってインク流路部71を押さえ付けることによって、供給チューブ28を流れるインクの流量を減少させることができる。そして、この状態で、記録ヘッド19をキャップ部材31aで覆って吸引ポンプ31bで吸引することにより、流路バルブ30より下流におけるインクの圧力を低下させることができる。そして、その後、吸引ポンプ31bによる吸引を停止し、流路バルブ30の押圧部72とインク流路部71とを一気に分離させることにより、インクカートリッジ23に貯留されているインクを一気に記録ヘッド19へと流すことができる。
その結果、バルブユニット21内の圧力室53内に滞留していた気泡等も一緒に記録ヘッド19から外部へと排出することができるようになり、いわゆる、チョーククリーニングを行うことができる。従って、圧力室53内のインクに混在して、記録ヘッド19におけるインクの噴射の性能を低下させる原因となる気泡を減少させることができ、圧力室53のインクの充填性を向上させることができる。そして、記録ヘッド19からのインクの噴射を良好に行うことができるようになる。
(2)上記第1の実施形態では、流路バルブ30をバルブユニット21の上流に設けるようにした。
従って、流路バルブ30によって供給チューブ28におけるインクの流量を減少させた状態で、記録ヘッド19の側からインクを吸引したときに、バルブユニット21の圧力室53の内部における圧力を低下させることができる。そして、圧力室の内部に対流している気泡の体積を増加させることができる。この状態から、流路バルブ30の押圧部72を上昇させて流路バルブ30を開弁状態とすることにより、インクとともに、体積が増加した気泡を一緒に記録ヘッド19から外部へと排出することができるようになる。
従って、流路バルブ30をバルブユニット21の下流に設けた場合に比較して、気泡の排出性が、減圧可能な気泡の体積が増加する分良くなる。その結果、圧力室53内のインクに混在して、記録ヘッド19における噴射の性能を低下させる原因となる気泡を最小限に減少させることができる。そして、圧力室53のインクの充填性を向上させ、記録ヘッド19の噴射を良好に行うことができるようになる。
(3)上記第1の実施形態では、バルブユニット21の圧力室53は、内部のインクの減少に従って、インク供給室46からインクの供給を受けるようになっており、圧力室53内におけるインクの圧力変動は、ある一定の範囲内となるように制限されている。従って、圧力室53より上流において、圧力変動が生じていても、記録ヘッド19がその影響を受けることがないようになっている。その結果、バルブユニット21の上流に設けられている流路バルブ30は、インクに圧力変動を与えてしまうような装置であっても問題がなく、装置の設計の自由度が増す。
(4)上記第1の実施形態では、流路バルブ30を、可撓性材料によって形成されたインク流路部71と、同インク流路部71よりも硬質な材料で形成された押圧部72とにより構成するようにした。そして、インク流路部71に対して押圧部72を押し付けて流路を狭めたり、押圧部72を離間させて流路を拡大させたりしてインク流路部71を流れるインクの流量を変化させるようにした。
従って、流路バルブ30の構造を簡単なものとすることができ、インクジェット式プリンタの生産効率を向上させることができる。
(5)上記第1の実施形態では、記録ヘッド19はインクを噴射する記録紙に対して往復移動するキャリッジ15に搭載され、流路バルブ30は、フレーム12に備えるようにした。これによれば、流路バルブ30をキャリッジ15以外の場所に設けることとなるが、流路バルブ30において生じた圧力変動が、流路バルブ30の下流のバルブユニット21において吸収されるようになっているため、記録ヘッド19に圧力変動の影響を与えないようにすることができる。そして、バルブユニット21の圧力室53におけるインクの充填性を高めて、記録ヘッド19におけるインクの噴射を良好に行うことができる。
(6)上記第1の実施形態では、キャリッジ15に搭載されたバルブユニット21は、供給チューブ28を介してもたらされるインクを圧力室53に供給する可動バルブ61を備える。そして、バルブユニット21は、第2のフィルム部材52を備え、この第2のフィルム部材52によって、記録ヘッド19側で消費される圧力室53内のインクの減少に伴う負圧を感知して前記可動バルブ61を摺動させ、インク流路59bを開状態とさせる。従って、圧力室53内には記録ヘッド19において消費されたインクの量に対応して、その負圧を受けてその都度インクが供給させるようになされる。これにより、記録ヘッド19からの安定したインク滴の吐出作用を保証することができる。
(7)上記第1の実施形態では、ユニットケース35に第2のフィルム部材52を設けた。このため、第2のフィルム部材52は、圧力室53の負圧を受けて、圧力室53側に変位でき、この変位により可動バルブ61を移動させ、インク流路59bを開状態あるいは閉状態とすることができる。すなわち、簡単な構成で、記録ヘッド19より安定した液体の吐出作用を保証することができる。
(8)上記第1の実施形態では、第2のフィルム部材52に受圧板56を設けた。従って、受圧板56は、可撓性の第2のフィルム部材52の変位作用を、これに接触している面積全体で受けることができ、第2のフィルム部材52の変位作用をより確実にロッド部材62に伝達することができる。従って、バルブユニット21の開弁あるいは閉弁させる動作における信頼性を向上させることができる。
(9)上記第1の実施形態では、インクジェット式プリンタ11は、インクカートリッジ23を本体側に配置するオフキャリッジの構成とし、インクカートリッジ23のインクパック23aと外郭ケース24との間に形成された空間部Sに加圧空気を送って、圧力室53にインクを供給するようにした。このため、圧力室53へのインクの供給を安定させることができる。なお、インク導出口23dをバルブユニット21よりも重力方向に上方へ配置して、水頭差によりバルブユニット21にインクを供給する構成では、加圧ポンプ等の装置の配設の必要がなくなり、簡略な構成のインク供給システムを得ることができる。
(10)上記第1の実施形態では、コイルばねからなるシールばね65が可動バルブ61を付勢することにより、インク流路59bが閉塞される。このため、簡略な構成で、可動バルブ61を付勢することができ、可動バルブ61に第2のフィルム部材52による変位を加えたり加えなかったりすることで、バルブユニット21を開弁したり、自動的に閉塞したりすることが可能である。そして、いわゆる、自己封止機能を有するバルブユニット21を得ることができる。
(11)上記第1の実施形態では、可動バルブ61は、シールばね65の付勢作用を一面に受けて他面でインク流路59bを閉塞する板状部材63と、同板状部材63の中央部に一体に成型されてバルブユニット21のユニットケース35内を摺動移動するロッド部材62とにより構成するようにした。そして、ロッド部材62の端部が第2のフィルム部材52の変位による押圧作用を受けるように構成した。これによれば、インク流路59bの閉塞及び開放を確実に行うことができる。
(12)上記第1の実施形態では、インク流路59bは、可動バルブ61のロッド部材62を摺動可能に支持する支持孔59をユニットケース35内に形成し、支持孔59の周囲に沿って間欠的に切り欠くことで形成されている。従って、もし、切り欠いて形成していない場合には、インク流路59bと可動バルブ61の板状部材63とを離間させても、インクを圧力室53へと供給する流路がロッド部材62により塞がれてしまう。しかし本実施形態では、インク流路59bは切り欠いて形成されているので、インクが圧力室53へ良好に流入することができる。
(13)上記第1の実施形態では、インク流路59bの外側を囲むようにして円環状に形成されたシール部材66を配置するようにした。そして、可動バルブ61における板状部材63がシール部材66に当接することでインク流路59bを閉塞するようにした。従って、バルブユニット21を開弁とするときに、可動バルブ61によるインク流路59bの閉塞をより確実なものとすることができる。
(14)上記第1の実施形態では、流路バルブ30を閉弁状態において吸引を行った後に、開弁するようにした。このため、圧力室53が負圧となった状態から開弁させることにより、インクを勢いよく記録ヘッド19に排出することができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した液体噴射装置の第2の実施形態を図14〜図18に従って説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の流路バルブ30を設けないようにするとともに、バルブユニット21の構造を変更したのみの構成であるため、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
図14に示すように、第1の実施形態においては、供給チューブ28の流路途中、すなわち、バルブユニット21の上流に、流路バルブ30を備えるようにしたが、本実施形態においては、これを備えないようにしている。
また、図15及び図16は、本実施形態における記録ヘッド19及びバルブユニット21の斜視図を示しているが、本実施形態におけるバルブユニット21は、上記第1の実施形態における構成に加えて、駆動手段としての第1の押圧用偏心カム81を備える。
詳しくは、図15に示されているように、前記バルブユニット21を構成するユニットケース35の側面、すなわち前記した第2のフィルム部材52に取り付けられた受圧板56に対向するように、第1の押圧用偏心カム81が配置されている。この第1の押圧用偏心カム81は、後で詳細に説明するように、水平方向に差し渡されて回転駆動される駆動ロッド82に対して、偏心状態に取り付けられている。
そして、図15及び図16に示すように、ユニットケース35の後端部には、前記駆動ロッド82を回転駆動させる駆動ユニット83が配置されており、図15に示すように、駆動ロッド82の前端部は、ユニットケース35の側面に取り付けられたロッド受け部材84によって回転可能に軸支されている。
この構成により、第1の押圧用偏心カム81が駆動ロッド82の回転駆動を受けて、前記受圧板56をユニットケース35側に押圧する動作がなされ、第2のフィルム部材52も同方向に変位される。これによりバルブユニット21内に配置された可動バルブ61を強制的に開弁させて、正圧が加えられたインクを記録ヘッド19側に導入するようになされる。なお、本実施形態においては、流量調整手段は、前記第1の押圧用偏心カム81、受圧板56、第2のフィルム部材52,可動バルブ61、インク流路59bによって構成される。
また、図17は本実施形態におけるバルブユニット21を他側面21b側から見た図を、図18は、図17におけるバルブユニット21をA−A線より矢印方向に見た状態の断面図を示している。そして、前記第1の実施形態におけるバルブユニット21は、インク導出路54へとつながる圧力室53の出口が、圧力室53の比較的下部に形成されるようにしていたが、本実施形態にでは、図17及び図18に示すように、出口86を重力方向の最上部に形成するようにしている。そして、圧力室53の出口86に連通してインク導出路54が、圧力室53を形成する前記大凹部48に沿って円弧状に形成されるようにしている。
従って、本実施形態においては、圧力室53から記録ヘッド19に至る圧力室53の出口86が、重力方向の最上部に形成されているので、例えばインクジェット式プリンタ11に初めてインクを導入する初期充填時において、圧力室53内に空気(気泡)を残さずにインクを充填させることができる。
換言すれば、圧力室53内に空気が存在する場合においては、環境温度の変化により気泡の体積が変化することとなり、これに基づいて圧力室内の内圧を変化させるという問題が発生する。その結果、内圧が上昇した場合には記録ヘッド19のノズルからインクが漏れ出したり、内圧が減少した場合には記録ヘッド19のノズルから空気を引き込んだりという問題が発生しかねない。それ故、圧力室53から記録ヘッドに至る圧力室の出口86を、重力方向の最上部に形成させることは、この種のバルブユニット21において、重要な要件となる。
以上は、本実施形態におけるインクジェット式プリンタ11の構成についての説明である。そして、本実施形態におけるインクジェット式プリンタ11は、記録ヘッド19側においてインクを消費することによってなされるバルブユニット21の作用については、上記第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
そこで、本実施形態においては、前記したようにバルブユニット21に配置された可動バルブ61を強制的に開弁させる第1の押圧用偏心カム81の作用についてのみ説明する。
すでに図15に基づいて説明したとおり、この実施の形態においてはバルブユニット21に配置された可動バルブ61を強制的に開弁させる駆動手段として、第1の押圧用偏心カム81が用いられている。そして、この第1の押圧用偏心カム81が駆動ロッド82の回転駆動を受けて、前記受圧板56をユニットケース35側に押圧することができるように構成されている。ここで、図18(a)は第1の押圧用偏心カム81が作用していない状態、すなわち、バルブユニット21は自己封止弁として機能できる状態を示しており、また、図18(b)は第1の押圧用偏心カム81が作用して開閉弁としての前記可動バルブ61を強制的に開弁状態とした状態を示している。
図18(b)に示すように、第1の押圧用偏心カム81が作用して前記可動バルブ61を強制的に開弁状態とした場合においては、インクカートリッジ23より正圧状態で供給されるインクは、圧力室53を介してそのまま記録ヘッド19に供給される。この結果、前記インクは記録ヘッド19のインク流路内を通り、ノズル開口より排出される。これにより記録ヘッド19の目詰まりを解消させると共に、増粘したインクを排出するクリーニング動作を実行することができる。
この様に、記録ヘッド19の上流側に配置されたバルブユニット21を利用し、可動バルブ61を強制的に開弁状態にして、クリーニング動作を実行するように構成することで、キャッピング手段31を介してインクを吸引排出する場合に比較すると、記録ヘッド19内に負圧が残されることがない。このため、クリーニング動作後にノズル開口から気泡を吸い込むという問題を回避することができる。従って、クリーニング動作の信頼性を向上させることができ、クリーニング操作の実行により印刷不良を招来させるという問題を解消することができる。さらに、キャッピング手段31を介して負圧を発生させるための吸引ポンプ31bも不要となる。
なお、本実施形態においては、バルブユニット21における可動バルブ61を強制開弁させる駆動手段として第1の押圧用偏心カム81を用い、第1の押圧用偏心カム81の回動により可動バルブ61を移動させるようにしている。これを、駆動手段として、例えば電磁プランジャやその他のアクチュエータを用いることができる。
上記第2の実施形態によれば、前記第1の実施形態の(6)〜(13)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(15)上記第2の実施形態では、バルブユニット21における可動バルブ61を第2のフィルム部材52と受圧板56とを介して押圧し、強制的に移動させる第1の押圧用偏心カム81を設けるようにした。これにより、インクカートリッジ23から正圧状態で供給されるインクをそのまま記録ヘッド19に供給することができる。そして、記録ヘッド19の目詰まりを解消させると共に、増粘したインクを排出するクリーニング動作を実行することができる。従って、自己封止機能を有するバルブユニット21の機能を享受しつつ、メンテナンス操作の信頼性を向上させることができる。
(16)上記第2の実施形態では、圧力室53の出口86が重力方向の最上部に形成されている。これによれば、圧力室53に残留した気泡は、通常、圧力室53の上方に位置するようになっており、インクが圧力室53に充填されると、気泡が圧力室53の出口86から記録ヘッド19を介して外部に排出されやすくなる。従って、効率よく気泡を排出させることができるので、圧力室53内に気泡が残り難く、印刷を良好に行うことができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明を具体化した液体噴射装置の第3の実施形態を図19〜図23に従って説明する。なお、第3の実施形態は、第1の実施形態の流路バルブ30を設けないようにするとともに、バルブユニット21の構造を変更したのみの構成であるため、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
図19及び図20は、本実施形態における記録ヘッド19及びバルブユニット21の斜視図を示している。また、図21及び図22は、本実施形態におけるバルブユニット21の他側面21b及び一側面21aから見た図である。さらに、図23(a),(b)は、図21におけるバルブユニット21のA−A線の断面図である。なお、上記第1の実施形態においては、記録ヘッド19の上部にバルブユニット21が2つのみ搭載されている状態を示してバルブユニット21について説明した。これを、本実施形態では、説明の便宜上、各色のインクに対応した構成の記録ヘッド19の上部に4つのバルブユニット21が搭載されている状態を示して説明する。
また、第1の実施形態においては、供給チューブ28の流路途中、すなわち、バルブユニット21の上流に、流路バルブ30を備えるようにしたが、本実施形態においては、上記第2の実施形態と同様にして、これを備えないようにしている。
そして、図20及び図22に示すように、本実施形態におけるユニットケース35は、接続部36とインク導入路47との間にフィルタ88を収容するフィルタ部89が形成されている。従って、供給チューブ28と接続される接続部36から供給されるインクは、このインク導入路47とフィルタ部89とを介して、ユニットケース35のほぼ中央部に形成されたインク供給室46に供給されるように構成されている。
そして、本実施形態においては、図21〜図23に示すように、圧力室53の内壁面には、圧力室53内のインクを流出させる出口としてのインク導出孔91を備える。このインク導出孔91は、バルブユニット21を記録ヘッド19に搭載した状態において、圧力室53の重力方向の最上部に配置するように形成されている。
また、第1の実施形態においては、インク導出路54は、ユニットケース35の他側面21b側に設けるようにしていたが、本実施形態におけるインク導出路54は、図20及び図22に示すように、一側面21a側に設けられている。インク導出路54は、圧力室53のインク導出孔91に連通しており、ユニットケース35の上方から下方に溝状に形成されている。
さらに、第1の実施形態においては、インク導出路54は、圧力室53を形成する第2のフィルム部材52により形成されるようにしていたが、本実施形態においては、導出路側フィルム部材92をユニットケース35に熱溶着することによって形成されるようにしている。
また、本実施形態においては、図23(a),(b)に示すように、ユニットケース35の外側であって、インク供給室46側には、駆動手段としての可動部材93を備えている。この可動部材93は、磁性体からなり、電磁プランジャとして、図示しない電磁石の中心部に往復動可能に嵌挿されている。この可動部材93は、電磁石によって磁化されると、第1のフィルム部材45を介して可動バルブ61をシール部材66側へ押圧できるように配置されている。なお、本実施形態においては、流量調整手段は、可動部材93と、第1のフィルム部材45と、可動バルブ61と、インク流路59bとによって構成されている。
以上は、本実施形態におけるインクジェット式プリンタ11の構成についての説明である。そして、本実施形態におけるインクジェット式プリンタ11は、記録ヘッド19側においてインクを消費することによってなされるバルブユニット21の作用については、上記第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
そこで、本実施形態においては、前記したようにバルブユニット21に配置された可動部材93の作用についてのみ説明する。
可動部材93は、図23(a)に示すように、第1のフィルム部材45側に移動して、第1のフィルム部材45を押圧する。この押圧力は、シールばね65のばね荷重W1よりも大きいため、シールばね65は収縮して押圧力を可動バルブ61の板状部材63に伝達する。このため、押圧された板状部材63はシール部材66を押圧し、閉弁状態とする。この状態で、記録ヘッド19を非印刷領域に配置されたキャップ部材31aによりキャッピングし、記録ヘッド19のノズル形成面からインクを吸引するチョーククリーニングを行う。このとき、インク導出路54から圧力室53内のインクが吸引され、支持孔59よりも下流において高負圧状態となる。この状態では、第2のフィルム部材52はロッド部材62の端部に当接するが、第2のフィルム部材52による押圧力及びシールばね65の付勢力よりも、可動部材93による押圧力は充分大きい。このため、第2のフィルム部材52及びシールばね65により加えられる押圧力によって、可動バルブ61がシール部材66から離間することはない。
この結果、支持孔59より下流に存在する気泡は、高負圧状態になると膨張して体積を増す。特に、圧力室53内の気泡は、高負圧状態になると、膨張して圧力室53の上部へ浮上する。
このように支持孔59より下流、即ち圧力室53及び圧力室53より下流において、高負圧状態になった状態で、吸引ポンプ31bによる吸引を終了する。そして、図23(b)に示すように、可動部材93を第2のフィルム部材52より離間させて押圧力を解除する。この場合、ロッド部材62と当接していた第2のフィルム部材52の押圧力により、可動バルブ61はシール部材66から離間し、開弁状態になる。この時、圧力室53は負圧であるため、インク供給室46内のインクが、急激に圧力室53内に流れ込む。圧力室53のインク導出孔91は重力方向の最上部に形成されているため、圧力室53内の上部に浮上した気泡は下方から流入するインクとともに、インク導出孔91から排出される。インク導出孔91から排出されたインクはインク導出路54を介して、インク導出部37より、バルブユニット21外部へ排出される。また、記録ヘッド19内のインクや、吸引動作により生じるキャップ部材31a内の泡立ったインクも排出される。
上記第3の実施形態によれば、前記第1の実施形態の(6)〜(14)及び前記第2の実施形態の(16)に記載の特徴に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(17)上記第3の実施形態では、可動バルブ61の第1のフィルム部材45を介して板状部材63を押圧して、強制的に閉弁させる可動部材93を設けた。このため、チョーククリーニングを行う場合に、強制的に閉弁し、インク流路59bより下流を高負圧状態とすることが可能となる。さらに高負圧状態を保持しながら開弁するようにしたため、流入させるインクの流量を高めることが可能となり、インク中の気泡の排出性を向上させることができる。また、吸引動作により生じる、キャップ部材31a内の泡立ったインクも排出することができるため、クリーニングにおける信頼性を向上させることができる。
(18)上記第3の実施形態では、ユニットケース35に第1のフィルム部材45を設けた。そして、第1のフィルム部材45は可動部材93の押圧力を受けて変形し、可動部材93の押圧力を可動バルブ61に伝達することができる。
(19)上記第3の実施形態では、可動部材93が第1のフィルム部材45を可動バルブ61の移動する方向に押圧することで、閉弁されるようにした。従って、可動部材93による押圧力が直接、可動バルブ61に伝達されるため、可動部材93の押圧力を効率的に伝達できる。
(第4の実施形態)
以下、本発明を具体化した液体噴射装置の第4の実施形態を図24(a),(b)に従って説明する。なお、第4の実施形態は、第3の実施形態の駆動手段の構成を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
本実施形態においては、流路を強制的に閉状態とする駆動手段として、吸引用偏心カム95と受圧板56に形成されているカム受け部98とが用いられている。図24(a),(b)に示すように、ユニットケース35の受圧板56側には、回転軸96とカム97からなる、吸引用偏心カム95が配設されている。回転軸96は、水平方向に指し渡されて、図示しない駆動ロッド及びロッド受けに固定されており、この回転軸96に対し、カム97は偏心状態に取り付けられている。吸引用偏心カム95に対向した受圧板56には、前記カム97を囲うようにしてカム受け部98が突設されている。
このカム受け部98は、吸引用偏心カム95の回転により押圧力を受けたり受けなかったりするようになっている。そして、図24(a)に示すように、カム受け部98が吸引用偏心カム95から押圧力を受けると、カム受け部98と一体である受圧板56、及び、その受圧板56に取着されている第2のフィルム部材52は、インク供給室46から離れるように変位する。なお、このように、第2のフィルム部材52が、インク供給室46から離れる方向に変位することを、吸引するということとする。また、図24(b)に示すように、カム受け部98が吸引用偏心カム95から押圧力を受けないようになると、第2のフィルム部材52、受圧板56は吸引されないようになる。
従って、図24(a)に示すように、カム受け部98が吸引用偏心カム95による押圧力を受けると、第2のフィルム部材52と受圧板56とに吸引される力が加わり、第2のフィルム部材52は可動バルブ61に当接しない状態となる。この時、シールばね65の付勢力とインク供給室46内のインク圧とにより可動バルブ61はシール部材66に当接されているため、流路は閉状態となっている。この状態において、インク導出孔91より圧力室53内のインクを流出させると、圧力室53内は高負圧状態になる。
この高負圧状態時において、圧力室53内の気泡は、膨張して体積が大きくなり、排出されやすい状態となっている。この状態で、吸引ポンプ31bによる吸引動作を継続しながら、吸引用偏心カム95を更に回転させ、カム受け部98への押圧力を解除すると、受圧板56及び第2のフィルム部材52を吸引する力が解除される。第2のフィルム部材52は圧力室53側に凹状に変位し、図24(b)に示すように、可動バルブ61のロッド部材62へ当接し、板状部材63とシール部材66とを離間させる。このため、流路は開状態となり、吸引ポンプ31bによる吸引力と圧力室53内の負圧による吸引力とにより、インクが急激に流れ込み、圧力室53内の気泡は上方のインク導出孔91より排出される。
なお、本実施形態においては、流量調整手段は、吸引用偏心カム95と、受圧板56に形成されているカム受け部98と、可動バルブ61と、インク流路59bとによって構成されている。
従って、第4の実施形態によれば、前記第1の実施形態の(6)〜(13)及び前記第2の実施形態の(16)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(20)上記第4の実施形態では、流路を強制的に閉状態とする駆動手段を吸引用偏心カム95とカム受け部98とから構成し、インク供給室46側と逆の方向に第2のフィルム部材52と受圧板56とを吸引する力を加えるようにした。このため、圧力室53が高負圧状態になっても、第2のフィルム部材52が可動バルブ61に当接することを防ぐことが可能となり、流路が開状態とならない。従って、流路を閉状態とする動作の信頼性を向上させることができる。また、チョーククリーニングを行う場合に、強制的に閉弁し、インク流路59bより下流を高負圧状態とすることが可能となる。さらに高負圧状態を保持しながら開弁するようにしたため、流入させるインクの流量を高めることが可能となり、インク中の気泡の排出性を向上させることができる。また、吸引に動作により生じる、キャップ部材31a内の泡立ったインクも排出することができるため、クリーニングにおける信頼性を向上させることができる。
(21)上記第4の実施の形態では、チョーククリーニングを行う場合には、吸引ポンプ31bによる吸引動作を行いながら、バルブユニット21を開弁させるようにした。従って、吸引の工程の途中に圧力室53が負圧となった状態から開弁させるため、吸引力を更に高めることができ、インクを勢いよく記録ヘッド19側に排出することができる。
(第5の実施形態)
以下、本発明を具体化した液体噴射装置の第5の実施形態を図25及び図26に従って説明する。なお、第5の実施形態は、第1の実施形態のバルブユニット21の構成を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
図25に示すように、本実施形態におけるバルブユニット21は、圧力室53内に、コイル状の負圧保持ばね100を備える。そしてこの負圧保持ばね100は、圧力室53内において、可動バルブ61を構成するロッド部材62を取り巻くようにして配置されている。この負圧保持ばね100は、隔壁58に形成された円環状の凸部によって、その一端が保持されており、その他端は第2のフィルム部材52に当接するように付勢されている。すなわち、負圧保持ばね100は、その付勢方向が第2のフィルム部材52に取り付けられた受圧板56の移動方向に一致するように配置されていて、前記圧力室53の容積を拡張する方向に作用する。
そして、本実施形態においては、負圧保持ばね100のコイル径は、シールばね65のコイル径とほぼ同寸法になされた比較的小径のものが使用されており、従って、負圧保持ばね100は第2のフィルム部材52を介して、前記受圧板56のほぼ中央部に当接するようになされる。
以上が、本実施形態におけるバルブユニット21の構成についての説明である。そして、次に、本実施形態におけるバルブユニット21の作用について説明する。
まず、図25(a)に示すように、記録ヘッド19が非印刷状態、すなわちインクを消費しない状態においては、バルブユニット21における前記シールばね65によるばね荷重W1が、可動バルブ61における板状部材63に加わっている。また、前記板状部材63にはインク供給室46に供給されるインクの加圧力P1も加わる。これにより、前記板状部材63は、シール部材66に当接して、閉弁状態になされる。すなわち、バルブユニット21は自己封止の状態になされる。
一方、図25(b)に示すように、前記記録ヘッド19が印刷状態となり、インクを消費した場合においては、圧力室53のインクの減少に伴い前記第2のフィルム部材52がユニットケース35に形成された大凹部48側に変位し、これに取り付けられた受圧板56は、圧力室53の容積を縮小する方向に移動する。この時、前記したコイル状の負圧保持ばね100を圧縮すると共に、受圧板56の中央部が第2のフィルム部材52を介して可動バルブ61を構成するロッド部材62の端部に当接する。
なお、この時の負圧保持ばね100のばね荷重をW2とし、第2のフィルム部材52の変位に要する変位反力をWdとする。そして、記録ヘッド19においてさらにインクが消費されることにより、圧力室53内には負圧P2が発生する。この時、P2>W1+P1+Wd+W2の関係となった場合に、第2のフィルム部材52がロッド部材62を押圧し、これにより、板状部材63によるシール部材66の当接が解かれ、開弁状態になされる。
従って、インク供給室46内におけるインクは、インク供給室46から圧力室53に至る支持孔59を介して圧力室53内に補給され、圧力室53内へのインクの流入により圧力室53の負圧は解消される。これに伴い、可動バルブ61が移動して図25(a)に示されたように再び閉弁状態になり、インク供給室46から圧力室53へのインクの補給は停止される。
なお、本実施形態においては、前記した可動バルブ61の開閉弁の動作は、図25(a)および図25(b)に示す状態が、反復繰り返されるような極端な動作は必ずしもなされない。現実には印刷動作中においては、第2のフィルム部材52は可動バルブ61を構成するロッド部材62の端部に当接した均衡状態を保ち、インクの消費に従って僅かに開弁しつつ、圧力室53に対してインクを逐次補給するように作用する。
ここで、前記した負圧保持ばね100は、第2のフィルム部材52に当接して受圧板56を押圧し、前記したように圧力室53の容積を拡張する方向に付勢している。従って、例えばキャリッジ15の往復移動により、前記受圧板56が多少の加減速作用を受けても、前記受圧板56が移動するのを抑制する。これにより、前記可動バルブ61による開閉弁作用に誤動作を与える度合いを効果的に低減させることができる。
また負圧保持ばね100は、インクが重力を受けて圧力室53の下方において前記第2のフィルム部材52を、より外側に膨出させる作用も効果的に抑制する。すなわち、負圧保持ばね100は、圧力室53を常に若干の負圧状態に維持する作用をもたらすので、第2のフィルム部材52に取り付けられた受圧板56を、常に垂直状態に維持させるように働く。これにより、前記可動バルブ61による開閉弁作用に誤動作を与える度合いを効果的に低減させることができる。
さらに、前記圧力室53内にインクが補給された場合においても、前記負圧保持ばね100が拡張しつつ圧力室53を若干の負圧状態に保つように作用するので、圧力室53内の圧力変動を低減させることができる。これにより、記録ヘッドからの正常なインク滴の吐出動作を保証することができる。
これに加えて、この実施の形態によると、前記圧力室53は負圧保持ばね100とシールばね65とによるばね荷重が加わることにより、負圧状態が確保されるようになされている。換言すれば、ばね荷重を前記負圧保持ばね100とシールばね65とに分割させることができ、従って、閉弁状態において可動バルブ61を前記したシール部材66に当接させるためのシールばね65のばね荷重を小さく選定することが可能となる。
従って、エラストマー樹脂等によるシール部材66への当接圧を低減させることができ、これによりシール部材66の異常な変形を防止させることができる。また、シール部材66に不当なばね荷重が加わるのを阻止することができるので、シール部材66を構成するエラストマー樹脂に含有する油脂等の不純物がインクに混入する等の問題を回避することができる。
一方、前記した実施の形態においては、前記した可動バルブ61が、前記圧力室の容積の縮小に基づいて最大限に移動した場合おいて、前記負圧保持ばね100が、さらに圧縮可能なストロークを残すように寸法関係が設定されていることが望ましい。図26は、その例を示したものであり、バルブユニット21のほぼ中央部を拡大して示している。なお、この図26に示した各符号は、すでに説明した各部における符号に対応している。そして、図26においては、圧力室53の容積の縮小に基づいて負圧保持ばね100が最大限に変形(縮小)された場合の様子を示している。
この図26に示すように、可動バルブ61が最大限に移動した場合のシールばね65の密着高さをL1で示しており、この状態における負圧保持ばね100の圧縮された高さをL2で示している。すなわち、シールばね65がたとえ密着された場合においても、負圧保持ばね100は密着されない状態を保つように寸法関係が設定される。換言すれば、シールばね65および負圧保持ばね100として同一規格(寸法)のばね部材をそれぞれ用いた場合にはL1<L2の関係になされる。この図に示す形態において、インクは負圧保持ばね100の隙間を通って圧力室53内に流れ込む構成であるため、もし負圧保持ばね100が密着してしまった場合には、インクの流路が塞がれる形となりインクの供給が行われなくなってしまう可能性がある。従って、前記したようにL1<L2とすることで、この問題を回避することが可能となる。
例えば、図1に示したようなインクの加圧供給システムを採用した場合においては、可動バルブ61の僅かな開弁状態で、圧力室53内にインクを導入することができるので、図26に示したような寸法関係は必ずしも必要ではない。しかしながら、図2に示したように水頭差によりインクを供給するシステムを採用した場合においては、インクの供給圧力が低いために、可動バルブ61は大きく開弁した状態が継続される。そこで、前記したように可動バルブ61の移動ストロークに対して負圧保持ばね100の密着高さに余裕を持たせる設定になっていることは重要である。
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態と同様にして、流路バルブ30(図3参照)を備えており、第1の実施形態と同様にして、流路バルブ30の開閉を行うことにより、バルブユニット21の圧力室53のインクの充填性を向上させることができる。そして、その作用については第1の実施形態と同様のため、その説明を省略する。
従って、第5の実施形態によれば、前記第1の実施形態に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(22)上記第5の実施形態によれば、負圧保持ばね100は、第2のフィルム部材52に当接して受圧板56を移動方向と一致するように押圧し、圧力室53の容積を拡張する方向に付勢している。従って、例えばキャリッジ15の往復移動により、前記受圧板56が多少の加減速作用を受けても、前記受圧板56が移動するのを抑制する。これにより、前記可動バルブ61による開閉弁作用に誤動作を与える度合いを効果的に低減させることができる。
(23)上記第5の実施形態によれば、負圧保持ばね100は、インクが重力を受けて圧力室53の下方において前記第2のフィルム部材52を、より外側に膨出させる作用も効果的に抑制する。すなわち、負圧保持ばね100は、圧力室53を常に若干の負圧状態に維持する作用をもたらすので、第2のフィルム部材52に取り付けられた受圧板56を、常に垂直状態に維持させるように働く。これにより、前記可動バルブ61による開閉弁作用に誤動作を与える度合いを効果的に低減させることができる。
(24)上記第5の実施形態によれば、前記圧力室53内にインクが補給された場合においても、前記負圧保持ばね100が拡張しつつ圧力室53を若干の負圧状態に保つように作用するので、圧力室53内の圧力変動を低減させることができる。これにより、記録ヘッドからの正常なインク滴の吐出動作を保証することができる。
(25)上記第5の実施形態によれば、前記圧力室53は負圧保持ばね100とシールばね65とによるばね荷重が加わることにより、負圧状態が確保されるようになされている。換言すれば、ばね荷重を前記負圧保持ばね100とシールばね65とに分割させることができ、従って、閉弁状態において可動バルブ61を前記したシール部材66に当接させるためのシールばね65のばね荷重を小さく選定することが可能となる。その結果、エラストマー樹脂等によるシール部材66への当接圧を低減させることができ、これによりシール部材66の異常な変形を防止させることができる。また、シール部材66に不当なばね荷重が加わるのを阻止することができるので、シール部材66を構成するエラストマー樹脂に含有する油脂等の不純物がインクに混入する等の問題を回避することができる。
(26)上記第5の実施形態においては、バルブユニット21がインクの減少に伴う負圧を感知して最大限開弁された場合において、負圧保持ばね100がさらに圧縮可能なように寸法設定がなされている。これによれば、バルブユニット21が最大限開弁されたときに、負圧保持ばね100はさらに圧縮可能であるので、インクが負圧保持ばね100の隙間を通ることが可能となる。その結果、インクの供給が阻害されることを防ぐことができる。
(27)上記第5の実施形態においては、負圧保持ばね100がコイルばねであり、コイルばねが受圧板56の中央部に当接し得るように配置した。これによれば、簡単なコイルばねにより第2のフィルム部材52を付勢することができる。
(第6の実施形態)
以下、本発明を具体化した液体噴射装置の第6の実施形態を図27(a)に従って説明する。なお、第6の実施形態は、上記第5の実施形態の負圧保持ばね100の構造を変更したのみの構成であるため、第5の実施形態と同様の部分については、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
図27に示すように、本実施形態においては、負圧保持ばね100として上記第5の実施形態と同様のコイルばねが用いられており、そのコイル径は図25に示した形態に比較して、より大きなものが使用されている。これにより、負圧保持ばね100は第2のフィルム部材52を介して、円板状に形成された前記受圧板56の周縁付近に当接するように構成されている。
この構成によると、受圧板56はその周縁付近で負圧保持ばね100による当接を受けるため、インクが重力を受けて圧力室53の下方において第2のフィルム部材52をより外側に膨出させる作用を受けても、前記受圧板56を常に垂直状態に維持させるように働く。従って、前記可動バルブ61による開閉弁作用に誤動作を与える度合いを効果的に低減させることができる。
従って、第6の実施形態によれば、前記第1の実施形態の(1)〜(14)及び前記第5の実施形態の(22)〜(26)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(28)上記第6の実施形態においては、負圧保持ばね100がコイルばねであり、当該コイルばねが前記受圧板56の周縁付近に当接するように配置した。これによれば、第2のフィルム部材52をより安定して付勢することが可能となり、圧力室53内に逐次インクを導入する可動バルブ61の誤動作を、より効果的に抑制することができる。
(第7の実施形態)
以下、本発明を具体化した液体噴射装置の第7の実施形態を図27(b)に従って説明する。なお、第7の実施形態は、上記第5の実施形態の負圧保持ばね100の構造を変更したのみの構成であるため、第5の実施形態と同様の部分については、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
図27(b)に示すように、負圧保持ばねとして、第5の実施形態と同様にコイルばねが用いられているが、この形態においてはコイル径の小さな複数の負圧保持ばね100a,100bが利用されている。そして、各負圧保持ばね100a,100bは、円板状に形成された前記受圧板56の周縁付近にそれぞれ当接するように配置されている。この構成においても、インクが重力を受けて圧力室53の下方において第2のフィルム部材52をより外側に膨出させる作用を受けても、前記受圧板56を常に垂直状態に維持させるように働く。従って、前記可動バルブ61による開閉弁作用に誤動作を与える度合いを効果的に低減させることができる。
なお、本実施形態においては、2本の負圧保持ばね100a,100bを用いた状態を示しているが、それ以上の複数本のコイルばねを利用することができる。従って、n本のコイルばねを利用する場合においては、負圧保持ばねによるばね荷重を前記したようにW2とする場合においては、1本あたりのコイルばねによるばね荷重を、W2/nに設定する必要がある。
従って、第7の実施形態によれば、前記第1の実施形態の(1)〜(14)及び前記第5の実施形態の(22)〜(26)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(29)上記第7の実施形態においては、負圧保持ばね100が複数のコイルばねにより構成され、各コイルばねが前記受圧板56の周縁付近にそれぞれ当接するように配置した。これによれば、第2のフィルム部材52を全体的に均一に付勢することが可能となり、圧力室53内に逐次インクを導入する可動バルブ61の誤動作を、より効果的に抑制することができる。
(第8の実施形態)
以下、本発明を具体化した液体噴射装置の第8の実施形態を図28に従って説明する。なお、第8の実施形態は、上記第5の実施形態の負圧保持ばね100の構造を変更したのみの構成であるため、第5の実施形態と同様の部分については、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
図28(a)に示すように、本実施形態においては、負圧保持ばねとして板ばね101が採用されている。この板ばね101は、図28(b)に示すようにその両端部が同方向に折り曲げ成形され、一対の両端部としての脚部101a,101bを構成している。そして、その中央部には、切り起こし部101cが前記脚部の折り曲げ方向とは逆方向に形成されている。
前記した構成の板ばね101は、図28(a)に示すように一方の脚部101aが圧力室53内においてユニットケース35に固定されている。また、切り起こし部101cを形成することにより穿設された開口に、可動バルブのロッド部材62が挿入され、切り起こし部101cの先端部は、第2のフィルム部材52を介して前記受圧板56のほぼ中央部に当接するように構成されている。
この構成においても、前記板ばね101が圧力室53の容積を拡張する方向に付勢し、例えば、キャリッジの往復移動による加減速を受けても、開閉弁の誤作動を効果的に抑制するように作用する。
従って、第8の実施形態によれば、前記第1の実施形態の(1)〜(14)及び前記第5の実施形態の(22)〜(26)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(30)上記第8の実施形態においては、負圧保持ばねが板ばね101であり、板ばね101の脚部101a,101bが支持されて、その中央部が受圧板56のほぼ中央部に当接し得るように配置した。これによれば、簡単な板ばね101により第2のフィルム部材52を付勢することができる。
(第9の実施形態)
以下、本発明を具体化した液体噴射装置の第9の実施形態を図29〜図31に従って説明する。なお、第9の実施形態は、上記第1の実施形態のバルブユニット21の構造を変更したのみの構成であるため、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
図29及び図30に示すように、本実施形態におけるバルブユニット21は、圧力室53内に、4つの規制部材としての度当たり用突起部材103を備える。詳しくは、この度当たり用突起部材103は、バルブユニット21の隔壁58から、圧力室53側に向かって、キャリッジ15の主走査方向に突出するようにして形成されている。そして、図30に示すように、度当たり用突起部材103は、支持孔59を囲むようにして円環状に設けられた部材を等間隔に4つ切り欠くことにより形成されている。
また、図29に示すように、可動バルブ61がシール部材66に当接した状態、すなわち閉弁状態における、度当たり用突起部材103の受圧板56側の端部と、可動バルブ61の受圧板56側の端部との距離をL3とする。また、ばね受け座45aと可動バルブ61との距離をL4とする。すると、度当たり用突起部材103は、その主走査方向の長さが、L3<L4となるように寸法関係が設定されている。
なお、本実施形態における度当たり用突起部材103は、バルブユニット21のユニットケース35と一体となるように形成するようにしたが、エラストマー樹脂等を隔壁58と2色成型により一体に形成してもよい。また、ゴム等により形成して隔壁58に取り付けるようにしてもよい。
以上は、本実施形態におけるバルブユニット21の構成についての説明である。そして、次に、本実施形態におけるバルブユニット21の作用について説明する。
まず、図29に示すように、記録ヘッド19が非印刷状態、すなわちインクを消費しない状態においては、バルブユニット21におけるシールばね65によるばね荷重W1が、可動バルブ61の板状部材63に加わっている。また、前記板状部材63にはインク供給室46に供給されるインクの加圧力P1も加わる。これにより、前記板状部材63は、シール部材66に当接して、閉弁状態になされる。すなわち、バルブユニット21は自己封止の状態になされる。
一方、図31に示すように、前記記録ヘッド19が印刷状態となり、インクを消費した場合においては、圧力室53のインクの減少に伴い前記第2のフィルム部材52がユニットケース35に形成された大凹部48側に変位し、これに取り付けられた受圧板56は、圧力室53の容積を縮小する方向に移動する。この時、受圧板56の中央部が第2のフィルム部材52を介して可動バルブ61のロッド部材62の端部に当接する。
なお、この時の第2のフィルム部材52の変位に要する変位反力をWdとする。そして、記録ヘッド19においてさらにインクが消費されることにより、圧力室53内には負圧P2が発生する。この時、P2>W1+P1+Wdの関係となった場合に、第2のフィルム部材52がロッド部材62側に移動し、ロッド部材62を押圧する。
この結果、第2のフィルム部材52は、前記度当たり用突起部材103に当接するとともに、板状部材63によるシール部材66の当接が解かれ、開弁状態になされる。なお、このとき、度当たり用突起部材103は、その主走査方向の長さが、L3<L4となるように寸法関係が設定されているため、第2のフィルム部材52は移動が規制され、可動バルブ61の板状部材63はばね受け座45aと当接しないようになっている。
すなわち、圧力室53内が大きく減圧されることにより可動バルブ61が最大限開弁した時に第2のフィルム部材52に生じる荷重は、度当たり用突起部材103と第2のフィルム部材52との当接面に主にかかるようになる。この結果、可動バルブ61自体にかかる荷重が小さくなり、可動バルブ61の変形等を回避することができる。
そして、以上により、インク供給室46内におけるインクは、インク供給室46から圧力室53に至る支持孔59を介して圧力室53内に補給される。なお、このとき、もし度当たり用突起部材103が、支持孔59の周りに円環状に設けられていた場合には、インクの流路が塞がれる形となりインクの供給が行われなくなってしまう可能性がある。しかし、図30に示すように、本実施形態における度当たり用突起部材103は、円環状に設けられた部材を等間隔に4つ切り欠くことにより形成されているので、この切り欠いた部分を介してインクは圧力室53内へと流入する。この結果、圧力室53内へのインクの流入により圧力室53の負圧は解消される。これに伴い、可動バルブ61が移動し、図29に示されたように再び閉弁状態になされる。そして、インク供給室46から圧力室53へのインクの補給は停止される。
なお、本実施形態においては、前記した可動バルブ61の開閉弁の動作は、図29および図31に示す状態が、反復繰り返されるような極端な動作は必ずしもなされない。現実には印刷動作中においては、第2のフィルム部材52は可動バルブ61を構成するロッド部材62の端部に当接した均衡状態を保ち、インクの消費に従って僅かに開弁しつつ、圧力室53に対してインクを逐次補給するように作用する。
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態と同様にして、流路バルブ30(図3参照)を備えており、第1の実施形態と同様にして、流路バルブ30の開閉を行うことにより、バルブユニット21の圧力室53のインクの充填性を向上させることができる。そして、その作用については第1の実施形態と同様のため、その説明を省略する。
従って、第9の実施形態によれば、前記第1の実施形態の(1)〜(14)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(31)上記第9の実施形態においては、第2のフィルム部材52が可動バルブ61を押圧するときの変位の大きさを規制する度当たり用突起部材103を設けるようにした。これによれば、第2のフィルム部材52が可動バルブ61を過度に押し付けることを防ぐことができ、可動バルブ61の変形等を回避することができる。
(32)上記第9の実施形態においては、度当たり用突起部材103は、その主走査方向の長さが、L3<L4となるように寸法関係が設定されるようにした。従って、可動バルブ61がばね受け座45aに当接することを、より確実に防ぐことができ、可動バルブ61の変形等を効果的に回避することができる。
(33)上記第9の実施形態においては、度当たり用突起部材103は、円環状に設けられた部材を等間隔に4つ切り欠くことにより形成した。従って、もし度当たり用突起部材103が、支持孔59の周りに円環状に設けられていた場合には、インクの流路が塞がれる形となりインクの供給が行われなくなってしまう可能性がある。しかし、本実施形態における度当たり用突起部材103は、切り欠いて形成されているので、この切り欠いた部分を介してインクは圧力室53内へと流入する。
(第10の実施形態)
以下、本発明を具体化した液体噴射装置の第10の実施形態を図32及び図33に従って説明する。なお、第10の実施形態は、上記第9の実施形態のバルブユニット21の構造を変更したのみの構成であるため、第9の実施形態と同様の部分については、同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
図32に示すように、本実施形態においては、受圧板56が、第2のフィルム部材52の圧力室53側の面に取り付けられている。そして、度当たり用突起部材103は、第9の実施形態と同様に4つ備えられているが、本実施形態においては、受圧板56の圧力室53側の面から、インク供給室46に向かって、キャリッジ15の主走査方向に突出するようにして形成されている。
また、可動バルブ61がシール部材66に当接した状態、すなわち閉弁状態における、度当たり用突起部材103のインク供給室46側の端部と、ユニットケース35の隔壁58との距離をL5とする。さらに、ばね受け座45aと可動バルブ61との距離をL6とする。すると、度当たり用突起部材103は、その主走査方向の長さが、L5<L6となるように寸法関係が設定されている。
なお、本実施形態における度当たり用突起部材103は、受圧板56と一体となるようにし形成するようにしたが、エラストマー樹脂等を受圧板56と2色成型により一体に形成するようにしてもよい。また、ゴム等により形成して受圧板56に取り付けるようにしてもよい。
以上は、本実施形態におけるバルブユニット21の構成についての説明である。そして、次に、本実施形態におけるバルブユニット21の作用について説明する。
まず、図32に示すように、記録ヘッド9が非印刷状態、すなわちインクを消費しない状態においては、バルブユニット21におけるシールばね65によるばね荷重W1が、可動バルブ61の板状部材63に加わっている。また、前記板状部材63にはインク供給室46に供給されるインクの加圧力P1も加わる。これにより、前記板状部材63は、シール部材66に当接して、閉弁状態になされる。すなわち、バルブユニット21は自己封止の状態になされる。
一方、図33に示すように、前記記録ヘッド19が印刷状態となり、インクを消費した場合においては、圧力室53のインクの減少に伴い前記第2のフィルム部材52がユニットケース35に形成された大凹部48側に変位し、これに取り付けられた受圧板56は、圧力室53の容積を縮小する方向に移動する。この時、受圧板56の中央部が可動バルブ61のロッド部材62の端部に当接する。
なお、この時の第2のフィルム部材52の変位に要する変位反力をWdとする。そして、記録ヘッド19においてさらにインクが消費されることにより、圧力室53内には負圧P2が発生する。この時、P2>W1+P1+Wdの関係となった場合に、第2のフィルム部材52がロッド部材62側に移動し、受圧板56がロッド部材62を押圧する。
この結果、受圧板56の度当たり用突起部材103は、隔壁58に当接するとともに、板状部材63によるシール部材66の当接が解かれ、開弁状態になされる。なお、このとき、度当たり用突起部材103は、その主走査方向の長さが、L5<L6となるように寸法関係が設定されているため、受圧板56は移動が規制され、可動バルブ61の板状部材63はばね受け座45aと当接しないようになっている。
すなわち、圧力室53内が大きく減圧されることにより可動バルブ61が最大限開弁した時に第2のフィルム部材52に生じる荷重は、度当たり用突起部材103と隔壁58との当接面に主にかかるようになる。この結果、可動バルブ61自体にかかる荷重が小さくなり、可動バルブ61の変形等を回避することができる。
そして、以上により、インク供給室46内におけるインクは、インク供給室46から圧力室53に至る支持孔59を介して圧力室53内に補給される。なお、本実施形態における度当たり用突起部材103も、上記第9の実施形態と同様にして円環状に設けられた部材を等間隔に4つ切り欠くことにより形成されているので、この切り欠いた部分を介してインクは圧力室53内へと流入する。この結果、圧力室53内へのインクの流入により圧力室53の負圧は解消される。これに伴い、可動バルブ61が移動し、図32に示されたように再び閉弁状態になされる。そして、インク供給室46から圧力室53へのインクの補給は停止される。
なお、本実施形態においては、前記した可動バルブ61の開閉弁の動作は、図32および図33に示す状態が、反復繰り返されるような極端な動作は必ずしもなされない。現実には印刷動作中においては、受圧板56は可動バルブ61を構成するロッド部材62の端部に当接した均衡状態を保ち、インクの消費に従って僅かに開弁しつつ、圧力室53に対してインクを逐次補給するように作用する。
また、本実施形態においては、上記第1の実施形態と同様にして、流路バルブ30(図3参照)を備えており、第1の実施形態と同様にして、流路バルブ30の開閉を行うことにより、バルブユニット21の圧力室53のインクの充填性を向上させることができる。そして、その作用については第1の実施形態と同様のため、その説明を省略する。
従って、第10の実施形態によれば、前記第1の実施形態の(1)〜(14)及び前記第9の実施形態の(31)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(34)上記第10の実施形態においては、度当たり用突起部材103は、その主走査方向の長さが、L5<L6となるように寸法関係が設定されるようにした。従って、可動バルブ61がばね受け座45aに当接することを、より確実に防ぐことができ、可動バルブ61の変形等を効果的に回避することができる。
(35)上記第10の実施形態においては、度当たり用突起部材103は、受圧板56と一体となるようにして設けた。従って、受圧板56のみの改造を行うことにより、簡単に度当たり用突起部材103を追加することができ、設計変更が容易である。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記第1の実施形態においては、バルブユニット21は、圧力室53の負圧を感知する第2のフィルム部材52と、可動バルブ61と、インク流路59bとによって供給チューブ28から圧力室53へのインクの供給及び非供給を切り換えるようにした。これを、圧力室53内のインクの減少に伴う負圧を感知して圧力室53へのインクの供給及び非供給を切り換えることが可能なものであれば、その他の構造のバルブユニット21を使用するようにしてもよい。例えば、前記特許文献2に記載の背圧調整器を備えたものを使用するようにしてもよい。
・上記第1〜第10の実施形態では、開閉バルブ作動部材は、第2のフィルム部材52からなるようにしたが、圧力室53の負圧を検知して可動バルブ61を駆動できるものであれば、その他のものでもよい。例えば、ダイヤフラムでもよい。
・上記第1〜第3及び第5〜9の実施形態では、第2のフィルム部材52に受圧板56を取着するようにしたが、取着しないようにしてもよい。
・上記第1〜第10の実施形態では、可動バルブ61は、シールばね65によって隔壁58に取り付けられているシール部材66に押し付けられるように付勢されるようにした。これを、シールばね65を設けないようにしてもよい。そして、このような場合には、可動バルブ61の板状部材63が、供給チューブ28から供給されるインクの圧力を受けることによって、シール部材66に押し付けられるような形状となるように変更してもよい。
・上記第1〜第10の実施形態では、可動バルブ61は、ロッド部材62と板状部材63とによって構成されるようにした。これを、第2のフィルム部材52の変位による押圧作用を受けることにより、インク流路59bを開閉するものであれば、他の形状となるようにしてもよい。
・上記第1〜第10の実施形態では、インク流路59bは、支持孔59を間欠的に切り欠くことにより形成するようにした。これを、可動バルブ61の移動により流路を開閉できるものであれば、その他の形状となるように形成するようにしてもよい。
・上記第1〜第10の実施形態では、バルブユニット21の隔壁58に、シール部材66を備えるようにしたが、備えないようにしてもよい。
・上記第1〜第10の実施形態では、シールばね65は、コイルばねからなるようにしたが、その他の弾性部材、例えば、板ばね、皿ばね、ゴム等からなるようにしてもよい。
・上記第2〜第8の実施形態では、上記第9及び第10の実施形態における度当たり用突起部材103を特に設けるようにしなかったが、設けるようにしてもよい。
・上記第2〜第4、第9及び第10の実施形態では、上記第5〜第7の実施形態における負圧保持ばね100,100a,100bを特に設けるようにしなかったが、設けるようにしてもよい。
・上記第2〜第4,第9及び第10の実施形態では、上記第8の実施形態における板ばね101を特に設けるようにしなったが、設けるようにしてもよい。
・上記第5の実施形態においては、シールばね65及び負圧保持ばね100として同一規格のばね部材をそれぞれ用いた場合にはL1<L2の関係となるようにした。これを、L1=L2、L1>L2の関係となるようにしてもよい。
・上記第2〜第4の実施形態では、第1の実施形態における流路バルブ30を特に設けないようにしたが、設けるようにしてもよい。
・上記第1及び第5〜第10の実施形態では、流路バルブ30を、バルブユニット21の上流側に設けたが、下流側に設けるようにしてもよい。
・上記第1及び第5〜第10の実施形態では、流路バルブ30を、インク流路部71と押圧部72とによって構成されるようにしたが、供給チューブ28におけるインクの流量を変化させることができるものであれば、その他の構造の流路バルブでももちろんよい。
・上記第1及び第5〜第10の実施形態では、流路バルブ30は、最もインク流路部71が押圧部72によって押し潰されている時でも、わずかにインクが流れるような構造となるようにしたが、完全にインクが流れないような構造としてもよい。
・上記第1及び第5〜第10の実施形態では、流路バルブ30をフレーム12に設けるようにしたが、キャリッジ15に搭載するようにしてもよい。
・上記第2の実施形態では、駆動手段として第1の押圧用偏心カム81を備えるようにしたが、その他の駆動手段によって受圧板56を押圧するようにしてもよい。例えば、第3の実施形態における可動部材93(図23参照)のようなものを使用してもよい。
・上記第3の実施形態においては、駆動手段として可動部材93を備えるようにしたが、その他の駆動手段を設けて、第1のフィルム部材45を押圧するようにしてもよい。例えば、第2の実施形態における第1の押圧用偏心カム81と同様のカムを第2の押圧用偏心カムとして可動部材93と同様の位置に設けるようにしてもよい。そして、第2の押圧用偏心カムの回転動作によって第1のフィルム部材45を押圧するようにしてもよい。このような構成とすると、効率的に閉弁状態とすることができる。
・上記第1及び第5〜第10の実施形態においては、圧力室53のインクの出口は、重力方向の下部に形成するようにした。これを、第2〜第4の実施形態と同様に、重力方向の最上部に形成するようにしてもよい。
・上記第1〜第3及び第5〜第10の実施形態においては、チョーククリーニングを行う場合には、吸引ポンプ31bによる吸引動作を行った後に、バルブユニット21を開弁させるようにした。これを、吸引ポンプ31bによる吸引動作を行いながら、バルブユニット21を開弁させるようにしてもよい。
・上記第4の実施形態においては、チョーククリーニングを行う場合には、吸引ポンプ31bによる吸引動作を行いながら、バルブユニット21を開弁させるようにした。これを、吸引ポンプ31bによる吸引動作を行った後に、バルブユニット21を開弁させるようにしてもよい。
・上記第1〜第10の実施形態においては、インクカートリッジ23は、フレーム12に設けられているカートリッジホルダ22に収容するようにし、キャリッジ15の移動方向に移動不要に備えるようにした。これを、インクカートリッジ23を、キャリッジ15に搭載するようにしてもよい。
・上記第1〜第10の実施形態において、インク導入路47、インク導出路54は、ユニットケース35の他の位置に配置されるようにしてもよい。
・上記第1及び第5〜第10の実施形態においては、供給チューブ28からバルブユニット21に供給されたインクは、インク導入路47を介してインク供給室46に流入するようにした。これを、第3及び第4の実施形態のように、バルブユニット21にフィルタ部89を設け、インク導入路47とフィルタ部89とを介してインク供給室46にインクが供給されるようにしてもよい。
・上記第3及び第4の実施形態においては、バルブユニット21のユニットケース35に、フィルタ部89を備えるようにしたが、備えないようにしてもよい。また、フィルタ部89は、ユニットケース35の他の位置に配置されるようにしてもよい。
・上記第3の実施形態においては、可動部材93は電磁石によって、第1のフィルム部材45側に移動させるようにした。これを、アクチュエータ等のこれ以外の機構により移動させるようにしてもよい。
・上記第4の実施形態においては、第2のフィルム部材52は可撓性のフィルムにより形成し、駆動手段は吸引用偏心カム95と受圧板56に形成されているカム受け部98とによって構成されるようにした。これを、第2のフィルム部材52を磁性体とし、駆動手段として電磁石を使用するようにしてもよい。又は、第2のフィルム部材52に磁性体を貼着したり、受圧板56を磁性体としたりするようにしてもよい。このような構成すると、電磁石通電時に磁力が発生し、第2のフィルム部材52を吸引して閉弁状態にすることができる。
あるいは、駆動手段として、永久磁石と電磁石等を有する電磁プランジャを使用するようにしてもよい。このような構成にすると、電磁石通電時に、電磁プランジャの先端部に設けられた永久磁石が第2のフィルム部材52側に移動し、第2のフィルム部材52を吸引する。従って、磁力による開閉弁の制御が可能となる。
・上記第1〜第10の実施形態では、液体噴射装置として、インクを吐出するインクジェット式プリンタ11(ファックス、コピア等の印刷装置を含む)について説明したが、他の液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。
S…空間部、11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、15…キャリッジ、19…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、21…液体供給用バルブユニットとしてのバルブユニット、23…液体貯留手段としてのインクカートリッジ、23a…液体パックとしてのインクパック、24…外郭ケース、30…流路バルブ、31b…吸引手段としての吸引ポンプ、35…ユニットケース、45…液体供給室側フィルム部材としての第1のフィルム部材、46…液体供給室としてのインク供給室、52…圧力室側フィルム部材としての第2のフィルム部材、53…圧力室、56…受圧板、59…支持孔、59a…切り欠き孔、59b…液体供給孔としてのインク流路、61…可動バルブ、62…ロッド部材、63…板状部材、65…シールばね、66…シール部材、71…流路としてのインク流路部、71b…可撓性部材としての封止フィルム、72…押圧部、81…第1の押圧用偏心カム、86…出口、91…出口としてのインク導出孔、93…可動部材、95…吸引用偏心カム、98…駆動手段を構成するカム受け部、100,100a,100b…負圧保持ばね、101…板ばね、101a,101b…両端部としての脚部。