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JP4148602B2 - アクリル樹脂手袋用の内面処理剤およびそれを用いた手袋 - Google Patents

アクリル樹脂手袋用の内面処理剤およびそれを用いた手袋 Download PDF

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JP4148602B2
JP4148602B2 JP19347699A JP19347699A JP4148602B2 JP 4148602 B2 JP4148602 B2 JP 4148602B2 JP 19347699 A JP19347699 A JP 19347699A JP 19347699 A JP19347699 A JP 19347699A JP 4148602 B2 JP4148602 B2 JP 4148602B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル樹脂手袋の内面の滑性を向上させるための処理剤と、スムーズな装着および脱着が可能なアクリル樹脂手袋に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、家庭用、作業用、検査用、手術用等の手袋としては、天然ゴム(NR)製のもののほか、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等の合成ゴム製のものや、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂製のものなど、種々の材質のものが知られている。
【0003】
これらの手袋は、一般に手との密着性が高く、べた付き感があるため、スムーズに装着および脱着することができない。そこで、従来、手袋の内面にタルク粉、雲母粉、澱粉等の離型剤を付着させる打粉処理を施したり、表面に塩素処理や植毛を施したりすることによって、表面の摩擦係数(すなわち、粘着性)を低減させ、手袋内面の滑性を高める試みがなされている。
【0004】
しかしながら、手袋内面に付着された離型剤や植毛された毛は、手袋を繰り返し使用したり、洗浄したりすることによって手袋本体から剥離しやすく、長期に亘って滑性を高める効果を維持することができない。また、離型剤が手袋脱着後の手に付着したり、周囲を汚したりするおそれがあるため、電子部品の製造等、ほこりを極度に避ける必要のある作業には使用できない。さらに、離型剤の種類によっては手肌と直接触れることでアレルギー症状を引き起こす原因となるおそれもある。
【0005】
一方、塩素処理を施した場合には、たとえ手袋の内面のみに処理を施したとしても外表面までもが滑り易くなってしまうため、手袋装着時の作業性が低下するという問題や、手袋に変色が生じるという問題がある。
さらに、近年特に注目されているダイオキシン問題への取り組みのなかで、塩素を含む製品を避ける方向にあり、かかる理由からも塩素処理が敬遠されつつある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、近年、微粒子を含んだ層を手袋の内面に設けることによって、手袋装着時の作業性を維持しつつ、内面の滑り易さを向上させて良好な装着・脱着性を得ることが試みられており、前記層を形成するための種々の内面処理剤や内面処理の方法、さらには内面処理を施した種々の手袋が提案されている。
【0007】
特開平8−337910号公報には、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)ラテックスで構成される手袋基体の内面に、シリカパウダー等の無機微粒子を含有するアクリル系樹脂層を設けたNBR手袋が開示されており、特開平4−119102号公報には、有機充填剤を含有した合成樹脂エマルジョンからなる層を設けて内面の滑性を高めた塩化ビニル樹脂製の手袋が開示されている。
【0008】
しかしながら、こうして得られた手袋も、装着感や脱着感が依然として十分ではない。
さらに、NBR手袋や塩化ビニル樹脂製の手袋はアクリル系樹脂層との密着性がそれほど良好ではないため、例えば長期間の使用によってアクリル系樹脂層が剥離するといった問題もある。
【0009】
なお、特開平8−337910号公報には、アクリル系樹脂層の滑性を良好なものとするために添加される微粉体として、無機微粒子に代えて、塩化ビニル樹脂等の有機微粒子を使用することができる旨の記載があるが、塩化ビニル樹脂を用いた場合は、前述のように、廃棄処理時にダイオキシンが発生するおそれがある。また、特開平4−119102号公報に記載の発明は塩化ビニル樹脂製の手袋に関するものであって、係る手袋は、手袋自体の耐油性や機械的強度が弱いという問題があるほか、廃棄処理時にダイオキシンが発生するおそれもある。
【0010】
ところで、本発明者らは、先に、アクリル樹脂製の手袋に関する発明を特許出願している(特願平11−107066号)。このアクリル樹脂手袋は、モジュラスが大きいという利点を有しており、かつ塩化ビニルのように廃棄処理時に環境汚染を招いたりすることがないという利点をも有している。
しかしながら、従来知られている手袋の内面処理剤は主にゴム手袋用の、ラテックスをベースとするものであって、アクリル系樹脂製の手袋に対する密着性が低く、実用的でない。
【0011】
また、手袋の表面に、特開平8−337910号公報に開示のアクリル系樹脂層のみを形成した場合には十分な滑性が得られず、逆に、微粉末が添加されていることによってざらつき感が生じてしまう。一方、特開平4−119102号公報に開示の合成樹脂エマルジョンからなる層を、アクリル樹脂手袋の内面に設けた場合は、両者の密着性が低いため、前記層が剥離しやすい問題がある。
【0012】
従って、上記アクリル樹脂手袋の内面の滑性を向上させ得る実用的な内面処理剤は未だ知られるに至っていない。
そこで本発明の目的は、アクリル樹脂手袋の装着性・脱着性を優れたものとするための内面処理剤と、装着性および脱着性に優れたアクリル樹脂手袋とを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アクリル系樹脂エマルジョン中に、所定の有機充填剤の微粒子を含有させるとともに、その含有量を所定の範囲に設定したときは、装着性および脱着性に優れるとともに、長期間の使用によっても装着性や脱着性が低下することがなく、さらには廃棄処理時における環境への影響が少ないアクリル樹脂手袋を得ることができるという全く新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明に係るアクリル樹脂手袋用の内面処理剤は、アクリル系樹脂エマルジョンと、平均粒径が3〜10μmの、(メタ)アクリル系樹脂微粒子、ポリオレフィン系樹脂微粒子およびセルロースビーズからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機充填剤とを含み、前記有機充填剤の含有量が全体の2〜8重量%であることを特徴とする。
【0015】
かかる内面処理剤によれば、内面処理剤のベースとなる樹脂エマルジョンがアクリル樹脂手袋の本体を構成するアクリル樹脂と同類の樹脂であることから、内面処理によって手袋本体に設けられる内面処理剤の層と、当該手袋本体との密着性が良好で、長期間の使用によっても剥離することがない。
さらに、内面処理剤が上記所定の有機充填剤の微粒子を含有するとともに、その含有量が所定の範囲に設定されていることから、アクリル樹脂手袋の内面に優れた滑性を付与することができる。
【0016】
上記本発明の内面処理剤は、アクリル系樹脂エマルジョンが架橋剤を含有するものであるのが好ましい。
この場合、アクリル樹脂手袋の本体と、その内面に設けられた内面処理剤の層とを同時に架橋させることができ、当該内面処理剤の層とアクリル樹脂手袋本体との密着性をより一層良好なものにすることができる。
【0017】
本発明に係るアクリル樹脂手袋は、上記本発明に係る内面処理剤を、アクリル樹脂手袋本体の内表面に成膜したことを特徴とする。
上記本発明に係るアクリル樹脂手袋は、装着感および脱着感が極めて良好で、アクリル樹脂製の手袋が本来有する大きなモジュラスを損なうことなく、その装着感および脱着感を優れたものとすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のアクリル樹脂手袋用内面処理剤と、それを用いたアクリル樹脂手袋について詳細に説明する。
〔内面処理剤〕
(アクリル系樹脂エマルジョン)
本発明に係る内面処理剤に使用可能なアクリル系樹脂エマルジョンとしては、例えば
(1) アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸またはメタクリル酸エステルの単独ポリマーのエマルジョン;
(2) 上記(1) に開示の4種のモノマーのうち少なくとも2種を組み合わせて得られる共重合体ポリマーのエマルジョン;
(3) 上記(1) および(2) に開示のポリマーのいずれかと、酢酸ビニル、スチレンまたはアクリロニトリルとを共重合体させたポリマーのエマルジョン;および
(4) 上記(1) 〜(3) に開示のポリマーに、水酸基、カルボキシル基、N−メチロール基、N−メチロールエーテル基等の架橋性基を有するモノマーを共重合させたポリマーのエマルジョン
等の、硬質から軟質までの種々のグレードのものが挙げられる。特に、上記(3) および(4) のように自己架橋性を有するアクリル樹脂エマルジョンを用いたときは、架橋剤を配合しなくても、モジュラスの高い手袋を得ることができる。
【0019】
上記アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルにおけるエステル部分を構成する置換基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル等の炭素数が1〜4のアルキル基等が挙げられる。
上記アクリル系樹脂エマルジョンの具体例としては、日本ゼオン(株)製の商品名「LX851」(Tg=15℃)、「LX852」(Tg=−6℃、軟質)、「LX854」(Tg=−10℃)、「LX857」(Tg=43℃、硬質)等が挙げられる(商品名の後に、そのガラス転移温度Tgと、硬質もしくは軟質のいずれのグレードに属するかを示した)。
【0020】
本発明においては、内面処理剤によって形成される層と、アクリル樹脂手袋との密着性を十分なものとし、かつアクリル樹脂手袋の強度を向上させるために、内面処理剤のベースエマルジョンであるアクリル系樹脂エマルジョン中に架橋剤を添加するのが好ましい。
アクリル系樹脂エマルジョンとして、自己架橋性を有する上記(3) および(4) のエマルジョンを用いた場合は、架橋剤が存在しなくても成膜することができるが、架橋剤を配合することによってアクリル樹脂手袋の強度をより一層向上させることができる。
【0021】
上記架橋剤としては、例えば亜鉛華、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の、ポリマーの加工に用いられる従来公知の種々の架橋剤が挙げられる。
架橋剤の添加量は特に限定されないが、アクリル系樹脂エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対して1〜10重量部、特に1〜5重量部であるのが好ましい。
【0022】
上記アクリル系樹脂エマルジョンには、前記架橋剤および後述する有機充填剤のほか、例えば老化防止剤、充填剤、分散剤等の、従来公知の種々の配合剤を必要に応じて添加することができる。
上記老化防止剤としては、一般に、非汚染性のフェノール類が好適に用いられるが、アミン類を使用してもよい。老化防止剤の添加量はアクリル系樹脂エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対して0.5〜3重量部程度であるのが好ましい。上記充填剤としては、例えばカオリンクレー、ハードクレー、炭酸カルシウム等が挙げられる。充填剤の添加量は、上記樹脂固形分100重量部に対して10重量部以下であるのが好ましい。分散剤はアクリル系樹脂エマルジョン中での各種配合剤の分散性を良好にするために添加されるものであって、例えば陰イオン界面活性剤等が挙げられる。分散剤の添加量は、分散対象である成分の重量に対して0.3〜1.0重量%程度であるのが好ましい。
【0023】
(有機充填剤)
本発明に係る内面処理剤において、アクリル系樹脂エマルジョン中には、メタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル系樹脂微粒子;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂微粒子;またはセルロースビーズの有機充填剤が添加される。
【0024】
上記有機充填剤の平均粒径は3〜10μmの範囲で設定される。平均粒径が上記範囲を下回るとアクリル樹脂手袋の内面に十分な滑性を付与できなくなる。従って、アクリル樹脂手袋に良好な装着感や脱着感を付与できなくなるおそれがある。逆に、平均粒径が上記範囲を超えると、アクリル樹脂手袋の内面にざらつき感が生じてしまう。従って、かえって手袋の装着感や脱着感を損なうおそれがある。有機充填剤の平均粒径は、上記範囲の中でも特に3〜6μmであるのが好ましい。
【0025】
上記有機充填剤の添加量は、内面処理剤全体の2〜8重量%に設定される。添加量が上記範囲を下回るとアクリル樹脂手袋の内面に十分な滑性を付与できなくなる。従って、アクリル樹脂手袋に良好な装着感や脱着感を付与できなくなるおそれがある。逆に、添加量が上記範囲を超えると、内面処理剤の層を形成しにくくなったり、アクリル樹脂手袋の内面にざらつき感が生じて、かえって手袋の装着感や脱着感を損なってしまうおそれが生じる。有機充填剤の添加量は、上記範囲の中でも特に2〜6重量%であるのが好ましい。
【0026】
〔アクリル樹脂手袋〕
本発明に係るアクリル樹脂手袋は、次の(a) 〜(d) の工程を経ることによって製造される。
(a) 所定のアクリル系樹脂エマルジョンに感熱化剤やアノード凝着剤を添加し、さらに必要に応じて架橋剤を添加する。
【0027】
(b) 次いで、この樹脂エマルジョンに加熱した手袋の型を浸漬して、樹脂エマルジョンをゲル化させて皮膜を形成する。
(c) さらに、前記皮膜が形成された手袋の型を、あらかじめ加温しておいた本発明に係る内面処理剤に浸漬して、皮膜の表面に内面処理剤の層を形成する。
(d) 前記皮膜および内面処理剤の層を加熱し、両者を同時に架橋させた後、前記皮膜と内面処理剤の層との積層体を手袋の型から反転脱型する。
【0028】
上記(a) の工程において用いられる感熱化剤としては、例えば硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、亜鉛アンモニウム錯塩等の無機または有機のアンモニウム塩、あるいは例えばポリビニルメチルエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリエーテルポリホルマール、官能性ポリシロキサン等の、曇点が常温以上、100℃以下の水溶性高分子が挙げられる。
【0029】
前記アノード凝着剤としては、例えば硝酸カルシウム、塩化カルシウム等の2価以上の金属塩、あるいはテトラメチルアンモニウム塩酸塩等の有機アルキルアミン塩等が挙げられる。
感熱化剤やアノード凝着剤の添加量は常法に従って設定すればよく、通常、樹脂エマルジョン中の樹脂固形分100重量部に対して0.5〜5重量部、特に0.5〜2.0重量部の範囲で設定される。
【0030】
前記架橋剤の種類やその添加量は、内面処理剤に添加する架橋剤およびその添加量と同様である。
上記(b) の工程において、手袋の型の加熱温度は、使用するアクリル系樹脂エマルジョンの種類に応じて適宜設定されるものであるが、通常、型表面の温度が70〜100℃程度となるように設定される。なお、手袋の型には、例えば陶器製、セラミック製等、従来公知のものが使用可能である。
【0031】
上記(d) の工程における架橋処理は、特に限定されるものではないが、例えば100〜130℃で、20〜60分程度行えばよい。
本発明においては、手袋のモジュラス、柔軟性、伸び等の種々の特性をより一層良好なものとするという観点から、JIS K 6251(加硫ゴムの引張試験方法)に規定の300%伸び時の引張応力M300 (すなわちモジュラス)が7.0MPa以上、とりわけ7.0〜8.0MPaの範囲となるように設定されているのが好ましい。手袋の引張応力M300 は、使用するアクリル系樹脂エマルジョンの種類、とりわけ軟質または硬質の別、その混合割合等によって適宜調整することができる。なお、前記引張応力M300 が7.0MPaを下回ると、塩化ビニル樹脂製の手袋と同等またはそれ以上の装着性および脱着性を得ることができなくなるおそれがある。
【0032】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を説明する。
実施例1
(内面処理剤の製造)
内面処理剤のベースエマルジョンとして、アクリル樹脂エマルジョンである「LX852」(日本ゼオン(株)製の商品名、Tg=−6℃、軟質)と、「LX857」(同社製の商品名、Tg=43℃、硬質)を80:20の割合で混合したものを用いた。
【0033】
このベースエマルジョンの乾燥ポリマー(樹脂固形分)100重量部に対して亜鉛華(架橋剤)3重量部を添加した後、前記乾燥ポリマーの濃度が0.4重量%となるように蒸留水で希釈した。
次いで、希釈された配合エマルジョンに対し、有機充填剤としてのポリメタクリル酸メチル(PMMA)の粒子〔日本純薬(株)製の商品名「ジュリマーMB−S」、平均粒径4μm〕を2重量%の割合で配合して、アクリル系樹脂エマルジョンの内面処理剤を得た。
【0034】
(手袋本体の作製)
アクリル系樹脂エマルジョンとして、前出の「LX852」と「LX857」とを、乾燥ポリマー(樹脂固形分)の重量比が80:20となるように混合したものを用いた。
上記アクリル系樹脂エマルジョンにおける乾燥ポリマーの合計量100重量部に対して、亜鉛華(架橋剤)5重量部、ポリビニルメチルエーテル(感熱化剤)0.5重量部および硝酸カルシウム(アノード凝着剤)1.5重量部を添加し、アクリル系樹脂エマルジョンに感熱性を付与した。
【0035】
次いで、このアクリル系樹脂エマルジョンに、100℃程度に加温した手袋の型を約5秒間浸漬した後、手袋の型を引き上げた。
(内面処理されたアクリル樹脂手袋の製造)
前記「手袋本体の作製」によって手袋の型表面に形成されたアクリル系樹脂エマルジョンの皮膜を、樹脂エマルジョンがゲル状態のままで、前記「内面処理剤の製造」によって得られた内面処理剤に手袋の型ごと約20秒間浸漬し、こうして、前記皮膜の表面に内面処理剤の層を形成した。
【0036】
内面処理剤の層を形成するのに際して、内面処理剤は室温で使用し、前記アクリル系樹脂エマルジョンの皮膜を内面処理剤に約20秒間浸漬した。内面処理剤から手袋の型を引き上げた後、100〜130℃で20〜60分間加熱して、型表面に形成された皮膜(手袋本体)と内面処理剤の層とを架橋させた。
次いで、形成された樹脂エマルジョンおよび内面処理剤の層を手袋の型から反転脱型して、内面に滑性処理が施されたアクリル樹脂手袋を得た。
【0037】
実施例2および4
前記内面処理剤における有機充填剤の添加量を表1に示す値に設定したほかは、実施例1と同様にして、内面に滑性処理が施されたアクリル樹脂手袋を得た。
実施例3
前記内面処理剤における有機充填剤として、表1に示す粒径を有するものを使用し、かつその添加量を表1に示す値に設定したほかは、実施例1と同様にして、内面に滑性処理が施されたアクリル樹脂手袋を得た。
【0038】
比較例1および2
前記内面処理剤における有機充填剤の添加量を表2に示す値に設定したほかは、実施例1と同様にして、内面に滑性処理が施されたアクリル樹脂手袋を得た。
比較例3および4
前記内面処理剤における有機充填剤として、表2に示す粒径を有するものを使用し、かつその添加量を表2に示す値に設定したほかは、実施例1と同様にして、内面に滑性処理が施されたアクリル樹脂手袋を得た。
【0039】
比較例5
ベースラテックスとしての天然ゴム(NR)ラテックスにおけるゴム固形分100重量部に対して、硫黄(加硫剤)1重量部、亜鉛華(架橋剤)1重量部、ジブチルカルバミン酸亜鉛(加硫促進剤、BZ)1重量部を添加し、ゴム固形分の濃度が0.4重量%となるように希釈して、ベースとなるNRラテックスを得た。
【0040】
内面処理剤として、アクリル系樹脂エマルジョンに代えて、上記NRラテックスを用いたほかは、実施例1と同様にして、内面に滑性処理が施されたアクリル樹脂手袋を得た。
比較例6
ベースラテックスとしてのアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)ラテックスにおけるゴム固形分100重量部に対して、硫黄(加硫剤)1重量部、亜鉛華(架橋剤)1重量部、ジブチルカルバミン酸亜鉛(加硫促進剤、BZ)1重量部を添加し、ゴム固形分の濃度が0.4重量%となるように希釈して、ベースとなるNBRラテックスを得た。
【0041】
内面処理剤として、アクリル系樹脂エマルジョンに代えて、上記NBRラテックスを用いたほかは、実施例1と同様にして、内面に滑性処理が施されたアクリル樹脂手袋を得た。
〔物性の評価〕
(摩擦係数の測定)
測定機としてヘイドン10型〔新東科学(株)製の商品名「トライボギア」、TYPE:HEIDON−10DR〕を使用して、上記実施例および比較例で得られた手袋における内面(内面処理剤の層が形成された滑性が高い方の面)の静摩擦係数を、洗浄前(使用前)と洗浄後とのそれぞれについて測定した。なお、摩擦係数を測定する際の対象物には普通紙を使用し、荷重50gの条件にて測定を行った。
【0042】
また、参考例で得られたアクリル樹脂手袋について、内面処理剤による処理を行わずに、これを対照とした。かかる対照についても、上記と同様にして摩擦係数を測定した。
〔手袋の装着性・脱着性〕
上記実施例、比較例および対照の手袋を10名の被験者に実際に装着してもらい、手袋の装着感(ゴム手袋を装着している際の作業のし易さ。手にかかる負担の程度や手を締め付ける度合い。いわゆる、フィット感)と着脱感(ゴム手袋を装着または脱着する際の取扱性)についての評価を求めた。
【0043】
装着性および脱着性は以下の基準で評価を行い、各被験者の評価の平均で表した。
(装着性)
◎:装着感が極めてソフトで、指の曲げ伸ばしが自然に行え、あたかも手袋を装着していないように感じられた。
〇:装着感がソフトで、指の曲げ伸ばしが自然に行えた。
△:手袋が多少硬く感じられたものの、実用上問題はなかった。
×:装着感が極めて悪く、長時間の装着により手に疲労感が生じた。
【0044】
(脱着性)
◎:非常に装着し易く(履き易く)、脱ぎ易い。
○:履き易く、脱ぎ易い。
△:履きにくく、脱ぎにくい。
×:極めて履きにくく、かつ脱ぎにくい。
【0045】
以上の結果を表1および2に示す。
【0046】
【表1】
Figure 0004148602
【0047】
【表2】
Figure 0004148602
【0048】
表1および2より明らかなように、アクリル樹脂手袋の内面に本発明に係る内面処理剤の層を設けた実施例1〜4では、当該内面の静摩擦係数が低く、滑性が優れていることが分かった。また、装着感および脱着感が良好であって、内面処理を施していないアクリル樹脂手袋に比べてその滑性を十分に向上させることができた。さらに、装着感および脱着感は洗浄前後のいずれにおいても良好であることから、内面処理剤の層を形成したことによる効果を長期に亘って維持できることが分かった。
【0049】
これに対し、内面処理剤中での有機充填剤の添加量が少ない比較例1や、有機充填剤の粒径が小さい比較例3では、十分に滑性を高めることができず、装着感および脱着感を良好なものとすることができなかった。
また、内面処理剤中での有機充填剤の添加量が多すぎる比較例2や、粒径が大きすぎる比較例4では、摩擦係数は低いものの、ざらつきが生じ、装着・脱着感が不十分であった。
【0050】
一方、加硫剤を添加したNRまたはNBR等のラテックスをベースとした内面処理剤を用いた比較例5および6では、内面処理剤の層とアクリル樹脂手袋の本体との密着性が不十分であるために、洗浄前の段階で既に装着感および脱着感が不良となった。さらに、このことから、アクリル樹脂手袋の内面処理層には、手袋本体を構成する樹脂と同じ種類の樹脂エマルジョンからなるものを用いるのが好ましいことが分かった。
【0051】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係る内面処理剤によれば、アクリル樹脂手袋本来の物性を低下させることなく、内面の滑性を向上させ、かつその状態を長期に亘って維持することができる。従って、上記内面処理剤を用いて処理を施した本発明に係るアクリル樹脂手袋によれば、装着および脱着を長期に亘ってスムーズに行なうことができる。

Claims (3)

  1. アクリル系樹脂エマルジョンと、平均粒径が3〜10μmの、(メタ)アクリル系樹脂微粒子、ポリオレフィン系樹脂微粒子およびセルロースビーズからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機充填剤とを含み、前記有機充填剤の含有量が全体の2〜8重量%であるアクリル樹脂手袋用の内面処理剤。
  2. さらに架橋剤を含有する請求項1記載のアクリル樹脂手袋用の内面処理剤。
  3. 請求項1または2記載の内面処理剤を、アクリル樹脂手袋本体の内表面に成膜したことを特徴とするアクリル樹脂手袋。
JP19347699A 1999-04-14 1999-07-07 アクリル樹脂手袋用の内面処理剤およびそれを用いた手袋 Expired - Fee Related JP4148602B2 (ja)

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