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JP4039032B2 - 衝突エネルギー吸収部材 - Google Patents

衝突エネルギー吸収部材 Download PDF

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JP4039032B2 JP2001334025A JP2001334025A JP4039032B2 JP 4039032 B2 JP4039032 B2 JP 4039032B2 JP 2001334025 A JP2001334025 A JP 2001334025A JP 2001334025 A JP2001334025 A JP 2001334025A JP 4039032 B2 JP4039032 B2 JP 4039032B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝突エネルギー吸収部材に関し、詳しくは、金属製の自動車車体フレーム構造部材のうち自動車衝突時の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車車体のフレーム構造部品のなかで、図6に示すようなフロントサイドフレームや車両後方に配置されるリヤサイドフレームなどは、自動車衝突時のエネルギー吸収部材として重要な役割を有している。自動車が衝突した際に、前記フロントまたはリアのサイドフレームは、これらが適度に蛇腹状に潰れることにより衝突時のエネルギーを吸収し、キャビン内の乗員生存空間を確保するような構造とするのが一般的である。例えば図6に示したフロントサイドフレーム20では、前方での衝突時に入力される衝突荷重(エネルギー)22が、バンパ21を介してフロントサイドフレーム20へと伝達され、このときにフロントサイドフレームが適切に潰れエネルギーを吸収できなかった場合には、衝突荷重がさらに後方のキャビンに伝達され、乗員に損傷を与えることになる。
【0003】
このような背景のもと、フロントサイドフレーム等の衝突エネルギー吸収部材には、エネルギー吸収能の高い部材が要望されている。
このような要望に対し、 例えば、特開平4−310477号公報には、軽金属により閉断面構造に押し出し成形された基本メンバとこの基本メンバ内に嵌合し略同じ長さの、 少なくとも先端に圧縮変形促進部、 好ましくは切欠き、を設けた補強メンバとで二重構造を形成した部材が提案されている。また、特開平11−29064 号公報、特開平11−208519号公報には、同じく軽金属材料の押し出し加工により、中空材の中心軸を通る面上に、中空材の内面に接続するリブを設けたことを特徴とする自動車車体のフレーム構造が提案されている。
【0004】
これらの従来技術は何れも、アルミニウムに代表される軽金属材料の押し出し加工部品を製造するものであるため、部品自体が高価であるという問題点や、隣接する部品との連結方法も煩雑になるという問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した従来技術の問題点を解決し、 小型軽量でかつ衝撃吸収エネルギー量が大きく、しかも安価で生産性に優れた自動車用の衝突エネルギー吸収部材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため、 次のように考えた。
衝突時のエネルギー吸収量を大きくするためには、部材を構成する材料の厚みを厚くすることが有効である。しかしながら、部材の厚みを厚くすることは、車体重量を増加させ燃費の悪化に直接的に結びつくことになり、地球環境保全の観点から全世界規模で展開されているCO2 排出量削減活動、すなわち自動車の軽量化の観点からは好ましくない。
【0007】
エネルギー吸収量を増加させるもう一つの方法として、部材の断面形状を最適化する方法がある。断面形状の最適化は、 部材の厚みを増加させることなく、部材の単位重量あたりのエネルギー吸収量を増加させる点で、自動車の軽量化の趨勢に沿うものである。
前記従来の提案に係るアルミニウムに代表される軽金属材料の押し出し加工によるフロントサイドメンバなどのような、押し出し加工により成形された隔壁を有する閉断面構造の部材は、当該隔壁の無い単純な閉断面構造部材に比べ、エネルギー吸収量が増加するとともに、座屈形状が安定することによりエネルギー吸収量および変形時の座屈荷重も安定するという利点がある。しかしながら、アルミニウム材の押し出し加工は、材料および製造コストが高く、 生産性が悪いという問題がある。
【0008】
また、自動車車体用フレーム材として最も一般的に使用されている鉄鋼材料(例えば薄鋼板)などを用いて、公知の方法(例えば板金加工等)により隔壁を有する閉断面構造部材を製造することは可能であるが、加工が煩雑であり多くの工程を必要とするなどの理由から、製造技術的にもコスト的にも問題がある。
そこで、本発明者らは、これらの問題を解決するために検討を重ね、その結果、金属製中空部材とくに円管(断面形状が円形の金属管)、角管(断面形状が多角形の金属管)を入れ子状に組み合わせることにより、容易にかつ安価に製造可能な内部隔壁を有する閉断面構造部材が得られることを見出して、以下に要旨を記載される本発明をなすに至った。
【0009】
(1)金属製の自動車車体フレーム構造部材のうち金属製管材の軸方向座屈によって自動車衝突時の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収部材において、前記金属製管材が外管と外管内に挿入された内管とからなり、内管は外管と溶接または圧入によって固定され、外管としての
(1-1) 円管に内接する複数の内管としての円管および/または角管で、または、
(1-2) 円管の内部にその全長にわたり当接した一または複数の円管および/または角管で、
隔壁を形成された閉断面形状を有することを特徴とする衝突エネルギー吸収部材(:第1の発明部材)。
(2)金属製の自動車車体フレーム構造部材のうち金属製管材の軸方向座屈によって自動車衝突時の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収部材において、前記金属製管材が外管と外管内に挿入された内管とからなり、内管は外管と溶接または圧入によって固定され、外管としての
(2-1) 角管に内接する複数の内管としての円管および/または角管で、または、
(2-2) 角管の内部にその全長にわたり当接した一または複数の円管および/または角管で、
隔壁を形成された閉断面形状を有することを特徴とする衝突エネルギー吸収部材(:第2の発明部材)。
【0010】
(3)金属製の自動車車体フレーム構造部材のうち金属製管材の軸方向座屈によって自動車衝突時の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収部材において、(1)または(2)に記載の閉断面形状を有する部材と、円管または角管とを、管軸方向に連結してなることを特徴とする衝突エネルギー吸収部材(:第3の発明部材)。
(4)金属製の自動車車体フレーム構造部材のうち金属製管材の軸方向座屈によって自動車衝突時の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収部材において、(1)または(2)に記載の閉断面形状を有する部材を複数相互に管軸方向に連結してなることを特徴とする衝突エネルギー吸収部材(:第4の発明部材)。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、第1の発明部材の例を示す断面図である。同図において、(a)は外管としての円管1の内部(中空部の意、以下同じ)に円管1aを3本、(b)は4本挿入したものである。また円管1の内部には(c)、(e)に示すように角管2aを挿入してもよく、また(d)に示すように角管2aと円管1aを組み合わせたものを挿入してもよい。これにより、円管1の内部に、円管1aおよび/または角管1aの管壁からなる隔壁が形成されるから、従来の押し出し加工や煩雑な加工方法を用いることなく、容易に隔壁を有する閉断面形状の部材を製造することができる。この部材は、内部に隔壁を形成された閉断面形状を有するものであるから、衝突エネルギー吸収能が高いことに加え、横方向の曲げ剛性が強く、それゆえ衝突荷重入力時に横方向にオイラー座屈が発生し難く、軸方向に安定的に座屈するという利点も併せ持っている。
【0012】
外管に挿入する円管または角管は、外管とレーザ溶接などにより溶接してもよいし、圧入することにより固定してもよい。
次に、図2は、第2の発明部材の例を示す断面図である。これは、第1の発明部材において外管として円管1の代わりに角管2を用いたものであり、第1の発明部材と同様、衝突時に大量のエネルギーを吸収するとともに軸方向に安定的に座屈する。
【0013】
本発明部材(:第1〜第4の発明部材)は、用いる管の本数や形状種(:円管、角管)の組み合わせに左右されるものではなく、図示されたもの以外の組み合わせであっても、内部に隔壁を形成された閉断面形状を有するものであれば、同様の効果が期待できる。用いる管の本数や形状種(円管、角管)の組み合わせは、必要とするエネルギー吸収量および部材の重量などを考慮して決定すればよい。なお、角管は、製造のしやすさの観点からその断面形状が四角形のものが好ましいが、それに限定されるものではない。
【0014】
また、本発明部材は、図3に第1の発明部材について例示するように、端部にフランジ3を設けることにより、他フレーム部品または車両本体への接続(溶接またはボルト締結)を容易化しうる。このフランジは、円管または角管を挿入される前の外管の端部に予め形成しておくことが好ましい。
一方、自動車衝突時のエネルギー吸収に対する考え方の一つに、衝突の程度によって座屈させる部分(エネルギーを吸収させる部分)を制御するという考え方がある。この考え方の要点は、例えば図6のフロントサイドフレームでいえば、低速での衝突の場合は、部材の先端(車両先頭側)部分のみを積極的に潰してエネルギーを吸収し、その後方のエンジンルームを保護して修理にかかるコストを極力低減し、また高速での衝突の場合には、 部材全体を潰して大きな衝突エネルギーを吸収し、 キャビンと接続する部分のみは強固なものとして乗員の生存空間を保持するというものであり、それを具現するためには、部材内で衝突速度(衝突時のエネルギー)に応じて圧潰される部分の位置を制御する必要がある。
【0015】
このような部材内での圧潰部位制御を行うに相応しい部材として、第3及び第4の発明部材が提供される。
図4は、第3の発明部材の例を示す側面図であり、この例は、図1(a)に示した形態(内部挿入管数:3本)の第1の発明部材11と、内部に隔壁のない(したがって比較的低強度の)円管10とを連結要素部材とし、これらを管軸方向に連結して構成された。第1の発明部材11と円管10とは、それぞれの端部に設けたフランジ3同士をあて板4を介して溶接またはボルト締結することにより連結された。車両内での配置は、円管10の部分を車両先端側(バンパ側)とした。
【0016】
これによれば、衝突荷重22の入力速度が比較的低速のときは、バンパ側に配置された円管10からなる比較的低強度の部分が優先的に圧潰され、後続の第1の発明部材11は変形せずにエンジンルームを保護することができる。衝突荷重22の入力速度が比較的高速のときは、後続の第1の発明部材11からなる部分も圧潰され、この部分で大きな衝突エネルギーを吸収することができ、キャビンの変形が抑制される。
【0017】
また、図5は、第4の発明部材の例を示す側面図であり、この例は、図1(a)に示した形態(内部挿入管数:3本)の第1の発明部材11と図1(b)に示した形態(内部挿入管数:4本)の第1の発明部材11aとを連結要素部材とし、これらを管軸方向に連結して構成された。第1の発明部材11と11aとは、それぞれの端部に設けたフランジ3同士をあて板4を介して溶接またはボルト締結することにより連結された。車両内での配置は、内部挿入管数の少ない(したがって比較的低強度の)第1の発明部材11の部分を車両先端側(バンパ側)とした。この第4の発明部材によっても、第3の発明部材と同様、衝突の程度に応じた圧潰部位制御が可能である。なお、第4の発明部材では、内部挿入管の本数、肉厚、材料強度などを変更することにより、部材内の各部位のエネルギー吸収量を精細に調整することができる。
【0018】
【実施例】
(実施例1)
図7に示す部材A〜Dを作製した。用いた鋼管の素材は、板厚1.2mm 、引張り強さ440MPaの熱延鋼板とした。作製した各部材の衝突荷重入力方向の長さは300mm とした。部材Aは直径100mm の円管であって内部隔壁をもたない比較例である。部材B〜Dは外管としての円管に別の円管または角管を一又は複数挿入したものでこれら挿入管により内部隔壁を形成された閉断面形状を有する本発明例(第1の発明部材の例)である。挿入管の挿入は圧入によって行い、外管との溶接は行っていない。部材B〜Dをなす外管及び挿入管の周長は、部材Aと同じ重量が得られるように設定した。
【0019】
これらの部材について、時速50kmの速さで錘を衝突させ、衝突時に発生する荷重をロードセルで計測し、錘に直撃される部材端部の変位をレーザ変位計で計測し、得られた荷重−変位曲線を用いて荷重を変位で積分することにより、変形が150mmに達するまでのエネルギー吸収量を算出した。部材A〜Dのエネルギー吸収量比(:部材Aに対する相対値)を図7に示す。A<B<C<Dの順にエネルギー吸収量が大きくなっており、第1の発明部材のエネルギー吸収能が高いことがわかる。
(実施例2)
図8に示す部材E〜Gを作製した。用いた鋼管の素材および作製した各部材の衝突荷重入力方向の長さは実施例1と同じとした。部材Eは一辺100mm の正方形断面を有する角管であって内部隔壁をもたない比較例である。部材F,Gは外管としての正方形断面を有する角管に円管一又は複数挿入したものでこれら挿入管により内部隔壁を形成された閉断面形状を有する本発明例(第2の発明部材の例)である。挿入管の挿入は圧入によって行い、外管との溶接は行っていない。部材F,Gをなす外管及び挿入管の周長は、部材Eと同じ重量が得られるように設定した。
【0020】
これらの部材について、実施例1と同じ方法で、変形が 150mmに達するまでのエネルギー吸収量を算出した。
部材E〜Gのエネルギー吸収量比(:部材Eに対する相対値)を図8に示す。E<F<Gの順にエネルギー吸収量が大きくなっており、第2の発明部材のエネルギー吸収能が高いことがわかる。
(実施例3)
表1に示す部材組み合わせ条件で第3又は第4の発明部材に相当する連結部材を作製した。用いた鋼管の素材は、板厚1.2mm 、引張り強さ440MPaの熱延鋼板とした。連結要素部材は、何れも外管寸法を直径:80mm、長さ:300mm とし、その両端部には図3に示したようにフランジを設けた。連結にあたっては、連結要素部材間に図4または図5に示したようにあて板(引張強さ440MPaの熱延鋼板、板厚2mm)を挟み、両フランジをスポット溶接にて接合した。
【0021】
これらの連結部材について、表1に示す衝突速度で錘を衝突させ、座屈が発生する部位とその変形ストロークを調査した。その結果を表1に示す。同表より、衝突速度に応じて各連結部材の軸方向(衝突荷重入力方向)における変形量の分布が変化しており、このことから、第3,第4の発明部材によれば、連結要素部材の断面形状を適切に設定することにより、衝突速度(衝突時のエネルギー)に応じた圧潰部位および変形量の制御が可能であることがわかる。
【0022】
【表1】
Figure 0004039032
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、容易にかつ低コストで自動車衝突時のエネルギー吸収能が高い部材を製造することが可能であり、乗員の安全はもとより、車両の軽量化を図ることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明部材の例を示す断面図である。
【図2】第2の発明部材の例を示す断面図である。
【図3】端部に他部材等接続用フランジを設けた本発明部材の例を示す模式図である。
【図4】第3の発明部材の例を示す側面図である。
【図5】第4の発明部材の例を示す側面図である。
【図6】フロントサイドフレームへの衝突荷重のかかり方を示す説明図である。
【図7】部材A〜Dのエネルギー吸収量比を示すグラフである。
【図8】部材E〜Gのエネルギー吸収量比を示すグラフである。
【符号の説明】
1,1a,10 円管
2,2a 角管
3 フランジ
4 あて板
11,11a 第1の発明部材
20 フロントサイドフレーム
21 バンパ
22 衝突荷重(エネルギー)

Claims (6)

  1. 金属製の自動車車体フレーム構造部材のうち金属製管材の軸方向座屈によって自動車衝突時の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収部材において、前記金属製管材が外管と外管内に挿入された内管とからなり、内管は外管と溶接または圧入によって固定され、外管としての円管に内接する複数の内管としての円管および/または角管で隔壁を形成された閉断面形状を有することを特徴とする衝突エネルギー吸収部材。
  2. 金属製の自動車車体フレーム構造部材のうち金属製管材の軸方向座屈によって自動車衝突時の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収部材において、前記金属製管材が外管と外管内に挿入された内管とからなり、内管は外管と溶接または圧入によって固定され、外管としての角管に内接する複数の内管としての円管および/または角管で隔壁を形成された閉断面形状を有することを特徴とする衝突エネルギー吸収部材。
  3. 金属製の自動車車体フレーム構造部材のうち金属製管材の軸方向座屈によって自動車衝突時の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収部材において、前記金属製管材が外管と外管内に挿入された内管とからなり、内管は外管と溶接または圧入によって固定され、外管としての円管の内部にその全長にわたり当接した一または複数の内管としての円管および/または角管で隔壁を形成された閉断面形状を有することを特徴とする衝突エネルギー吸収部材。
  4. 金属製の自動車車体フレーム構造部材のうち金属製管材の軸方向座屈によって自動車衝突時の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収部材において、前記金属製管材が外管と外管内に挿入された内管とからなり、内管は外管と溶接または圧入によって固定され、外管としての角管の内部にその全長にわたり当接した一または複数の内管としての円管および/または角管で隔壁を形成された閉断面形状を有することを特徴とする衝突エネルギー吸収部材。
  5. 金属製の自動車車体フレーム構造部材のうち金属製管材の軸方向座屈によって自動車衝突時の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収部材において、請求項1乃至4のいずれかに記載の閉断面形状を有する部材と、円管または角管とを、管軸方向に連結してなることを特徴とする衝突エネルギー吸収部材。
  6. 金属製の自動車車体フレーム構造部材のうち金属製管材の軸方向座屈によって自動車衝突時の衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収部材において、請求項1乃至4のいずれかに記載の閉断面形状を有する部材を複数相互に管軸方向に連結してなることを特徴とする衝突エネルギー吸収部材。
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