JP4017921B2 - 暖房室内の空気循環装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,暖房運転が行われる室内の温度分布むらを緩和する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
冬季などにおいて暖房運転が行われる室内では,天井面付近に暖気が溜まりやすく,床面付近では温度低下となり,高さ方向に温度分布のバラツキが生じやすい。特に近年のOA機器類の普及は,このような室内における温度分布のむら発生を助長させる傾向にある。
【0003】
また一方,特に内部発生熱が大きいオフイスなどでは,インテリアゾーンに比べて,窓などがある側面付近では,外壁熱負荷の影響で暖房負荷が大きくなる。従来より,このような暖房運転時における外壁熱負荷を軽減しつつ,床面付近での温度低下を軽減するために,種々の装置が検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,従来の装置は何れもダクトなどの機材を数多く必要とする大がかりのものがほとんどであり,イニシャルコストとランニングコストがかさむという問題がある。また,これらの装置は既存の建築物に適用するにはダクト配置や制御系などの大幅な改造を余儀なくされるという問題もあり,加えて,オフイスの配置替えや模様替えは常態化しているので,それの対応を見込んだ計画に腐心しなければならないという問題もある。
【0005】
本発明の目的は,暖房運転が行われる室内の温度分布むらを,簡単な設備で緩和できる装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の暖房室内の空気循環装置は,暖房運転が行われる室内の天井面付近に,室内の窓が形成された側面の上部に向けて天井面に沿って送風するファンを配置し,該ファンの送風により下降流を生じる室内の窓が形成された側面付近の上部に,該下降流を窓に沿った平行な層状の下降流にさせる整流部材を配置し,窓に沿って整流されて下降していく層状の空気中に,窓からの距離にほぼ比例した温度勾配を形成させ,床面付近に到達した下降流を再び混合させて,ほぼ水平に90°方向変換して床面に沿って室内下方に流すことを特徴とする。整流部材は,窓に対して平行な姿勢のベーン板を有していても良い。
【0007】
この空気循環装置において,ファンの稼動で送風され,天井面に沿って流れた空気は,室内の側面付近の上部に達すると,方向転換して下降流となる。こうして下降流が生じる室内の側面は,外壁熱負荷の影響を受ける側面であり,この側面には,窓が形成されている。そして,このように側面付近に発生した下降流は,室内の側面付近の上部に配置された整流部材により平行流にされた後,室内の側面に沿って下降していく。
【0008】
一方,このように室内の側面に沿って下降していく空気は,外気で冷却されている窓などに熱的に接触して外壁熱負荷の影響を受け,下降中の空気は次第に低温となる。この場合,前述の整流部材によって側面に沿った平行流が形成されていることにより,整流部材を通過した空気のうち室内の側面付近を下降していく空気は,室内において側面のすぐ近くを流れる空気は側面とほぼ同じ温度にまで低温となるが,側面から離れるに従って高温となり,室内において側面から充分に離れた位置を流れる空気(例えば整流部材を通過した空気の室内側に接した空気)は外壁熱負荷の影響を受けずに,ほぼ天井面付近から供給された高温の状態のままである。こうして,室内の側面に沿って下降していく間に,下降中の空気において,側面から離れるに従って高温となる温度勾配が形成される。
【0009】
そして,こうして室内の側面付近を下降してきた空気は,床面付近に到達すると再び混合され,方向変換して床面に沿って室内下方を流れて,在室者の足下部分に供給される。その際,前述のように室内の側面から離れるに従って高温となる温度勾配が形成された空気が混合され,室内において側面のすぐ近くを流れて低温となった空気と,側面から充分に離れた位置を流れてほぼ天井面付近から供給された状態のままの高温の空気が混合されることにより,快適性を損なわない程度の高温な空気を床面付近に送風することができる。これにより,在室者の足下の寒さが軽減され,室内の天井から床にかけての上下方向の温度分布むらを緩和することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の好ましい実施の形態を図面を参照にして説明する。図1は,本発明の実施の形態にかかる空気循環装置を備えた室内1に発生する気流状態を図解的に示す縦断面図であり,図2は,空気循環装置を室内1に設置した状態を示す斜視図である。
【0011】
図示の形態では,室内1として,通常のオフイス空間などを例示している。天井面10と床面11の間に形成された室内1には,OA機器類などを操作する在室者12がいる。天井面10のほぼ中央には,天井梁15が設けられている。この天井梁15の下方に,ブラケット16を介してファン17を吊下げることにより,ファン17は室内1の天井面10付近に配置される。ファン17は空調された空気を吸い込んで室内1に循環させる手段であり,回転翼18を備えており,ファン17の稼動で回転翼18が回転することにより,天井面10付近の空気を水平かもしくは水平よりもやや斜め上向きに送風するようになっている。こうして,ファン17の稼動で送風された空気は,室内1において,コアンダ効果によって天井面10の下面を這うようにほぼ水平方向に送風されるようになっている。
【0012】
図示の形態では,このファン17の稼動により,図1において左向きに送風が行われている。そして,天井面10に沿いながら室内1の左側面20の上部付近まで送風された空気は,室内1の左側面20付近の上部に達すると,室内1の内壁(左側面20)上部に突き当り,順次下向きにほぼ90°ずつ方向転換し,下降流となる。こうして下降流となった空気が,室内1の左側面20付近を,左側面20に沿いながら下向きに送風されるようになっている。
【0013】
図1において,室内1の左側面20は,窓21を備えた窓面に形成されている。この形態では,図2に示すように,窓21は左側面20の横幅全体に渡るように横に連なって配置されている。前述のように左側面20の上部付近で下向きに方向転換して左側面20に沿いながら下向きに送風される空気が,室内1において,窓21付近を下向きに流れるようになっている。
【0014】
また,このように窓面に形成された左側面20の上部には,左側面20(窓21)に沿いながら送風される下降流を,左側面20に沿った平行な下降流にさせる整流部材25が配置される。
【0015】
ここで図3は,整流部材25の斜視図であり,図4は,図3におけるA−A断面矢視図である。図示の整流部材25は,方形状をなす枠体26の長手方向にベーン板27を装着した構成である。枠体26は上下面が開口し,上から下に向って空気が抵抗なく通過できるようになっている。この枠体26の内方に,図示の例では2枚のベーン板27が何れもほぼ垂直で,互いに平行になるように配置されている。
【0016】
図示の形態では,図4に示すように各ベーン板27の角度は,枠体26に対して可変に構成されている。なお,図3,4では,枠体26の内方に2枚のベーン板27を配置した例を示したが,枠体26の内方に配置されるベーン板27の枚数は,例えば1〜5枚程度である。なお,図2に示す例では,熱負荷である窓21面の長さに応じ,整流部材を25を4つに分割して製作し,取り付けを容易にしてある。
【0017】
図2に示されるように,室内1の左側面20の上部において,整流部材25を窓21の上となる位置に(ただし,図示しないブラインドボックスの間隔をおいて室内1側に離間させて)取り付けている。また,左側面20の横幅全体に渡って配置された窓21に対応するように,整流部材25も左側面20の横幅全体に渡って取り付けている。こうして整流部材25を各窓21の上部に取り付けることにより,整流部材25に装着されたベーン板27が,左側面20(窓21)に対して平行な姿勢で設置されている。
【0018】
図1に示すように,室内1の右側方は,パーティション30で仕切られている。そして,パーティション30の背部には,廊下31が形成されている。
【0019】
また,室内1の片隅には,直吹型の床置式空調機35が配置してある。この空調機35の内部には,熱交換器36と送風ファン37を備えている。熱交換器36には,廊下31の上部に配置された配管40,41から,往管42及び還管43を介して,温熱媒が循環供給されている。そして,送風ファン37の稼動により,空調機35下部(床面11近くに位置する)の吸気口45から,室内1の空気を空調機35内に吸い込んで,その空気を熱交換器36によって加熱し,その加熱した空気を,空調機35上部の給気口46から,室内1に向って吹き出すようになっている。なお,空調機35の給気口46は,床面11から1800mm程度の高さにあり,ここから吹き出された暖気は,ファン17がなければ,図1に即して言うと,天井梁15のインテリア側に滞留しようとする。ファン17の吸込口を空調機35の給気口46に向けて(図1では左下がりに)設けることにより,暖気と周囲空気を誘引して天井梁15廻りの暖気のよどみを解消する。
【0020】
さて,以上のように構成された室内1では,空調機35に内蔵された送風ファン37の稼動により,空調機35上部の給気口46から室内1に向って加熱した空気が吹き出されて,通常の暖房運転が行われる。このような暖房運転が行われている室内1では,天井面10付近に暖気が溜まりやすく,一方で,床面11付近では温度低下となりやすい。
【0021】
そこで,このような暖房運転が行われている室内1において,天井面10付近に配置されたファン17の稼動で回転翼18を回転させることにより,室内1において,天井面10付近に溜まりがちの暖気を,左側面20の上部付近に向って天井面10に沿いながらほぼ水平方向に送風する。また,このように天井面10に沿って送風される空気は,室内1の天井面10付近の空気を誘引しながら,その誘引した空気をも左側面20の上部付近に向って一緒に搬送していく。
【0022】
こうしてファン17の稼動で送風され,天井面10に沿って流れた空気(天井面10付近の暖気)は,室内1の左側面20付近の上部に達すると,順次下向きにほぼ90°ずつ方向転換し,下降流となる。こうして下降流となった空気が,室内1の左側面20付近を,左側面20に沿いながら下降し,窓21付近を下向きに送風されることになる。
【0023】
一方,このように室内1の左側面20付近を流れる空気が,窓21付近を下向きに送風される際には,窓21の上部に取り付けられた整流部材25を空気が上から下に向って通過することになる。このように,整流部材25を通過する際には,垂直に配置されたベーン板27に沿って空気が流れることにより,室内1の左側面20付近を送風される空気は,強制的に窓21(左側面20)に沿った平行な層状の下降流にさせられる。
【0024】
一方,このように室内1の左側面20に沿って下降していく間に,外気によって冷却されている窓21などに熱的に接触して外壁熱負荷の影響を受けることにより,下降中の空気は次第に低温となる。この場合,前述の整流部材25によって平行流が形成されていることにより,図5に示すように,室内1の左側面20付近を下降中に,窓21のすぐ近くを流れる空気の温度Tは,外気で直接冷却されている窓21とほぼ同じ温度にまで冷却されて低温となるが,窓21から離れるに従って高温となり,室内1において窓21から充分に離れた位置を流れる空気の温度Tは外壁熱負荷の影響を受けずに,ほぼ天井面10付近から供給された高温の暖気の状態のままである。こうして,室内1の左側面20に沿って整流されて下降していく層状の空気中に,窓21からの距離Xにほぼ比例して下降中の空気の温度Tが高温になるといった温度勾配が形成される。
【0025】
そして,こうして室内1の左側面20付近を下降してきた空気は,床面11付近に到達すると再び混合され,ほぼ水平に90°方向変換して床面11に沿って室内1下方を流れていく。こうして,室内1下方を流れた空気が,在室者12の足下部分に供給される。この場合,前述のように整流部材25の作用によって室内1の左側面20に沿って下降していく空気中に温度勾配が形成されていることにより,床面11付近に到達して混合される際には,窓21のすぐ近くを流れて低温となった空気と,窓21から離れた位置を流れた高温のままの空気(暖気)を混合させることができ,快適性を損なわない程度の高温な空気を床面11付近に送風することができる。これにより,在室者12の足下の寒さが軽減され,室内1の温度分布むらを緩和することが可能となる。
【0026】
ここで,仮に整流部材25が無い場合を仮定すると,図6に示すように,ファン17の稼動で天井面10に沿って流れた空気は,室内1の左側面20付近の上部で方向転換して下降流となるが,この下降流は,整流部材25が無いために,室内1の左側面20付近を下向きに送風される際に,渦などを多く発生してしまう。このため,室内1の左側面20付近を流れる空気は,下降中に攪拌される。そして,この攪拌作用により,室内1の左側面20に沿って下降していく間に,室内1の左側面20付近を流れる空気全体が外気によって冷却されている窓21に熱的に接触し,外壁熱負荷の影響を受けることとなる。これにより,加熱する必要のない窓21を多くの空気で加熱することになってしまう。また,室内1の左側面20に沿って下降していく空気中には,窓21からの距離Xに比例した温度勾配は形成されなくなり,窓21のすぐ近くを流れる空気の温度Tと,室内1において窓21から離れた位置を流れる空気の温度Tが,何れも相当に低温となってしまう。そして,このような低温となった空気が,床面11付近に到達後,方向変換して床面11に沿って流れ,在室者12の足下に供給されることにより,足元を冷すことになってしまう。また,このような足元を冷す弊害を回避するために,空調機35の能力をより高める必要が生じてしまう。
【0027】
この点,本発明の実施の形態の如き整流部材25を用いれば,先に図5で説明したように,整流部材25によって平行流を形成していることにより,室内1の左側面20に沿って下降していく空気中に,窓21からの距離Xにほぼ比例して温度Tが高温になる温度勾配を形成することができ,窓21から離れた位置を流れる空気については,外壁熱負荷の影響がほとんど及ばないようにすることができる。このため,結果的に外壁熱負荷の影響を軽減することができる。また,空調機35の暖房能力を必要以上に上げなくとも,在室者12の足下の寒さを軽減でき,室内1の温度分布むらを緩和できる。
【0028】
以上,本発明の好ましい実施の形態の一例を説明したが,本発明は例示した形態に限定されない。例えば,室内1の天井面10付近に配置されるファン17の取付け数と位置は任意であり,室内1において外壁熱負荷の影響を受ける側面の上部に向けて送風できれば良く,オフイスなどの室内1の形状や大きさに応じて適切に選定される。例えば,室内1の天井面10付近にファン17を複数台設置しても良い。この場合,室内1において外壁熱負荷の影響を受ける側面が複数ある場合には,それら各側面の上部に向けてそれぞれ送風し,各側面に沿って空気を下降させるようにしても良い。また,ファン17に首振り機能を持たせ,図2に示すように,1台のファン17で広い範囲に送風できるようにしても良い。ファン17は,例えばクロスフローファンを窓21の横幅に相当する幅に組み立てて使用したり,複数台のファン17を横幅方向に分散させて配置することができる。また,1台の軸流ファンに首振り機構を持たせることで窓21幅相当の領域に暖気を供給してもよい。もっとも省コストを志向して1台のファン17を固定式で設置するだけでも,壁に暖気流がぶつかった後に広がるため,ある程度の効果はある。また,例示の設備では天井ボードを貼らない所謂直天の設備に適用するため,梁15にファン17を取り付けたが,天井ボードを貼る設備に適用する場合にはファン17と整流部材25を適宜の吊金物で支持することができる。
【0029】
また,整流部材25に備えられるベーン板27の高さ(鉛直方向の距離)は,例えば25〜100mm程度とすれば良く,室内1の側面から200〜400mm程度の範囲に,1〜5枚程度のベーン板27を等間隔で平行に配置することが好ましい。ベーン板27の長さ(水平方向の距離)は,適宜使いやすい長さに設定すれば良い。なお,ベーン板27は室内1の側面に対して平行に配置されるが,このベーン板27と直交するように別のベーン板を設けて,整流部材25を格子状に構成しても良い。また,図1,2に示したように,窓21の上部にブラインドを取り付けるためのスペース(ブラインドボックススペース)50が形成されている場合は,そのスペース50の上に整流部材25を配置すればよい。そうすれば,窓21にブラインドを装着する際に整流部材25が邪魔とならない。なお,冷房運転の場合にはファン17を停止すれば冷房に影響を与えない。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば,簡単な設備でありながら室内の天井面付近に溜まりがちの暖気を,外壁熱負荷の影響をなるべく受けずに,高温の状態を維持したまま床面に沿って供給することにより,室内の温度分布むらを緩和することができ,在室者の足下の寒さを軽減できる。特に本発明装置は,設備が簡単で低廉であるばかりでなく,仕切りや配置替え等の模様替えに際しても容易に対処でき,また既存の空調設備に変更を与えることなく設置でき,極めて実用的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる空気循環装置を備えた室内に発生する気流状態を図解的に示す縦断面図である。
【図2】空気循環装置を室内に設置した状態を示す斜視図である。
【図3】整流部材の斜視図である。
【図4】図3におけるA−A断面矢視図である。
【図5】整流部材によって強制的に窓に沿った平行な下降流にさせられた空気中に,窓からの距離にほぼ比例して高温になる温度勾配が形成された状態を示す説明図である。
【図6】整流部材が無い場合の,窓に沿っって下降する空気中に生ずる温度分布の説明図である。
【符号の説明】
1 室内
10 天井面
11 床面
12 在室者
15 天井梁
17 ファン
20 左側面
21 窓
25 整流部材
26 枠体
27 ベーン板
30 パーティション
31 廊下
35 空調機
36 熱交換器
37 送風ファン
Claims (2)
- 暖房運転が行われる室内の天井面付近に,室内の窓が形成された側面の上部に向けて天井面に沿って送風するファンを配置し,該ファンの送風により下降流を生じる室内の窓が形成された側面付近の上部に,該下降流を窓に沿った平行な層状の下降流にさせる整流部材を配置し,
窓に沿って整流されて下降していく層状の空気中に,窓からの距離にほぼ比例した温度勾配を形成させ,床面付近に到達した下降流を再び混合させて,ほぼ水平に90°方向変換して床面に沿って室内下方に流すことを特徴とする,暖房室内の空気循環装置。 - 整流部材は,窓に対して平行な姿勢のベーン板を有することを特徴とする,請求項1に記載の暖房室内の空気循環装置。
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