JP4015911B2 - ブラシノステロイドの生合成に関与しているシトクロムp450モノオキシゲナーゼ遺伝子の改変および/または過剰発現による単子葉植物の形質の制御方法およびこの遺伝子を用いて改変された単子葉植物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、単子葉植物の形質(例えば、形態、および収量)を制御する方法、および形質を制御することにより作製された形質転換植物に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物、特に主要穀物の形態などの形質を制御し、所望の形質(例えば、所望の形態および増加した収量)を有する植物を作出する技術は、農業の分野において非常に有用な技術である。
【0003】
例えば、イネの形態を短桿(半矮性)に改変すると、その植物は、肥料を添加した際の茎葉の徒長伸長が抑制されることから、風などの物理的な力に対する倒伏耐性が向上し、その結果、高い耐肥性を示す。さらに、茎葉の伸長抑制に伴い、肥料や同化産物の茎葉への分配比率が相対的に減少するため、穂の生育に対する肥料や同化産物の分配比率が相対的に向上し、その結果、改変植物の穂の生育が促進され、収量は増加する。また、イネ葉の形態を直立葉に改変した改変体は、野生型イネと比較して、受光態勢が改善され、必要な太陽光を植物に照射するために必要とされる1植物体あたりの作付面積が減少する。その結果、単位作付面積あたりの耕作量を増やすことができる。
【0004】
しかし、従来の方法を用いて直立葉、短桿などの形態を有する植物を作出した場合、その植物は、穂の生育阻害を示し、収量減少を生じる。
【0005】
現在までのところ、直立葉、短桿などの形態を有し、かつ収量減少を生じないなどの優良形質を有する優良品種を作出する方法は知られていない。従って、所望の優良形質を有する優良品種植物を作出する方法、およびそのような方法によって作出された植物、種子、植物細胞、植物体が望まれている。
【0006】
植物の形態制御に関連する植物ホルモンとしては、ブラシノステロイドが周知である。ブラシノステロイドとは、ブラシノライドを含む、ステロイドラクトン構造を有する植物の成長調節ホルモンの一般名である。
【0007】
ブラシノライドは、1979年に新規な植物成長促進因子としてアブラナ(Brassica napus)の花粉から単離されそして新型のステロイドラクトンであるとして同定された。その後、ブラシノライド様ステロイド化合物(ブラシノステロイド類と称する)が試験した全ての植物種に非常に低い濃度で存在することが見いだされた(Mandava,Ann.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.39(1988),23−52を参照のこと)。ブラシノライドの生理学的活性の初期の研究は、この特定の因子が、(i)低温における植物実生の発芽および成長を促進し、(ii)細胞表面上における皮質微小管およびセルロースミクロフィラメントの縦方向の配置の誘発により細胞サイズの増加および伸長を促進し、(iii)導管要素を増幅させることにより木質部の分化を促進し、(iv)植物およびそれらの果実の乾燥重量の有意な増加をもたらし、(v)葉の展開および拡大を促進し、(vi)オーキシン誘発細胞成長に特徴的なH+輸送および膜過分極を誘発し、(vii)クラウンゴール腫瘍細胞の分裂および茎の放射方向の成長を阻害し、(viii)光成長植物のアントシアニン生成を抑制し、(ix)例えば暗所におけるサイトカイニンにより誘発される脱黄化(de−etiolation)を阻害し、(x)暗所における組織老化を促進させるが明所での植物の寿命を延長し、そして(xi)多数の細菌および真菌種(Mandava(1988)、Ann.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.39(1988),23−52)に対する植物病原体耐性応答を誘発する、というものであった。
【0008】
ブラシノライド類の単離およびそれを用いた生理学的研究の後に、推定されている生合成中間体を代表する多くのブラシノステロイド化合物が種々の植物種において同定された。これらの化合物のインビボ濃度が極端に低いことが見いだされたため、これらの化合物の化学的合成法を開発するために努力がなされた(Adam and Marquardt,Phytochem.25(1986),1787−1799を参照のこと)。
【0009】
ブラシノステロイド類が実際に植物の見込みのある成長調節剤として使用できることを示しそしてこれらの物質の可能な利点および能力を開発できるようにするために、ブラシノステロイド合成および情報伝達に関与する遺伝子の単離およびその解析が行われている。
【0010】
例えば、イネにおいては、ブラシノステロイド受容体様遺伝子であるOsBRI1を欠失したd61突然変異体が単離されている。d61変異体、あるいはOsBRI1の機能をアンチセンス核酸によって抑制した植物体では、直立葉や半矮性などの有用形質が観察されたものの、一穂当たりの粒数が減少したり粒自体も小さくなるなど、収量性に対する悪影響も認められている(図1)。
【0011】
ブラシノステロイドの合成および/または情報伝達に関する変異を外因性のブラシノステロイド(例えば、ブラシノステロイドの噴霧または塗布などによる適用)によって相補し、その変異による悪影響を避けるという可能性も考えられ得る。しかし、d61は、ブラシノステロイド受容体様遺伝子であるOsBRI1に変異を有するため、外因性のブラシノステロイドによってその表現型を相補することは不可能である。
【0012】
外因性のブラシノステロイドに対して応答性の改変植物としては、例えば、ブラシノステロイド合成系遺伝子に変異を有する植物が挙げられ得る。しかし、ブラシノステロイド合成系遺伝子に変異を有する植物は、以下に説明する従来の知見から、優良形質の作出のために利用できないと考えられていた。
【0013】
例えば、アラビドプシスにおいては、植物におけるブラシノステロイド合成に関与するシトクロムP450型タンパク質をコードするcpd遺伝子が同定されている(WO97/35986)。cpd遺伝子に変異を有するcpd突然変異植物を白光下において、土壌で育てた場合、cpd突然変異植物体の大きさは、同齢の野生型植物よりも20〜30分の1程度に小さくなったことが報告されている。また、光への暴露により突然変異体の根の外皮における緑化およびクロロプラスト分化が引き起こされ、その結果、細胞伸長をさらに阻害し、葉柄、葉、花茎(inflorescence-stem)および花の器官の長さが全般的に短くなることも報告されている。
【0014】
Choeらは、ブラシノステロイドの生合成に関与しているシトクロムP450モノオキシゲナーゼ酵素であるDWF4に変異を有するアラビドプシス植物体は、野生型と比較して、植物体の大きさが数倍小さいという極矮性を示し、かつ不稔性であったことを報告している(Sunghwa Choeら、The Plant Cell,vol.10、231−243、1998年2月)。
【0015】
また、Choeら(The Plant Journal,vol.26、573−582、2001年6月)は、アラビドプシスにおけるDWF4の過剰発現を行っているが、改変アラビドプシスでの種子の収量性が改善されなかったことを報告している。従って、上記のアラビドプシスの結果から、有用な形質を有する改変植物の作出のために、DWF4の改変および/または過剰発現を用いることができるとは考えられていなかった。
【0016】
また、洪ら(洪治ら、日本植物生理学会二〇〇二年度年会講演要旨集、p.224)と森ら(森昌樹ら、日本植物生理学会二〇〇二年度年会講演要旨集、p.225)は、ブラシノステロイドC−6位の酸化活性を触媒するOsDWARFに変異を有するイネ植物体は、葉鞘がほとんど形成されないなど、極端な奇形を伴った極矮性を示したことを報告している。したがって、イネにおいてもアラビドプシスと同様に、有用な形質を有する改変植物の作出のために、ブラシノステロイドの生合成または情報伝達系遺伝子の改変および/または過剰発現を用いることができるとは考えられていなかった。
【0017】
以上の次第で、ブラシノステロイドは、植物の形態制御に関連する植物ホルモンとして公知ではあるが、優良形質を有する植物の作出においてブラシノステロイド合成系遺伝子を利用する方法は、開発されていない。
【0018】
本願発明は、ブラシノステロイド合成系遺伝子に関する従来の知見に反して、ブラシノステロイド合成系遺伝子の改変および/または過剰発現によって優良形質を有する作物を作出する方法、ならびにそのような方法によって作出された植物(植物体)、植物種子、植物細胞、植物組織を提供する。
【0019】
【非特許文献1】
Mandava,Ann.Rev.Plant Physiol.PlantMol.Biol.39(1988),23−52
【非特許文献2】
Adam and Marquardt,Phytochem.25(1986),1787−1799
【非特許文献3】
Sunghwa Choeら、The Plant Cell,vol.10、231−243、1998年2月(第236頁右欄下から12行目〜下から10行目)
【非特許文献4】
Sunghwa Choeら(The Plant Journal,vol.26、573−582、2001年6月)
【非特許文献5】
洪治ら、日本植物生理学会二〇〇二年度年会講演要旨集、p.224)
【非特許文献6】
森ら(森昌樹ら、日本植物生理学会二〇〇二年度年会講演要旨集、p.225)
【0020】
【特許文献1】
WO97/35986(Example 1)
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の解決しようとする課題は、植物の形態などの形質を制御し、所望の形態(特に、短桿および/または改善された受光態勢をもたらす直立性)を有し、かつ収量が減少するなどの改変の悪影響を有しない植物を作出する技術が存在しないという上記現状に鑑み、当該分野において、所望の形態を有する優良品種植物を作製する方法、およびそのような方法によって作出された植物、種子、植物細胞、および植物組織、ならびにこれら植物の後代を提供することである。
【0022】
現在までの知見では、ブラシノステロイド合成系および/または情報伝達系の遺伝子を改変することによって、所望の形態などの優良形質を有する優良品種植物を作出することが可能であるとは考えられない。むしろ、ブラシノステロイド合成系および/または情報伝達系の遺伝子に変異を導入すると、変異体植物は、極矮性の形態を有するか、または収量性に対する悪影響をもたらすことが公知である。また、収量に対する悪影響を除去することが可能であるとも考えられていなかった。また、ブラシノステロイド合成系および/または情報伝達系の遺伝子の過剰発現によって、収量の増加などの優良形質を有する植物の作出が可能であるとも、考えられていなかった。
【0023】
そのため、ブラシノステロイド合成系および/または情報伝達系の遺伝子を改変および/または過剰発現することによって優良形質の植物体を作製することが可能であるとは、考えられていなかった。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の当業者の認識に反して、ブラシノステロイドの生合成に関与しているシトクロムP450モノオキシゲナーゼ遺伝子を改変した結果、極矮性の形態、および収量の減少などの悪影響を生じることなく、優良形質(例えば、短桿および直立葉)を有することが可能であるという知見に部分的に基づく。
【0025】
本発明の方法を用いることによって、所望の形態(例えば、短桿および/または改善された受光態勢をもたらす直立性)を有する単子葉植物体の作出が可能となる。また、本発明の方法を用いることによって、極矮性、または収量の減少などの悪影響を避けることが避けることが可能となり、その結果、穀物または作物として好ましい形質を保ちつつ、所望の形質を付与することが可能となる。
【0026】
従って、本発明は以下を提供する。
【0027】
1. 以下の工程を包含する、所望の形質を有する改変単子葉植物を作出する方法:
配列番号1に示す核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸を含む遺伝子を単離する工程;
該単離された遺伝子の発現を抑制する工程。
【0028】
2. 前記所望の形質が短桿または直立葉である、項目1に記載の方法。
【0029】
3. 前記単子葉植物がイネ科植物である、項目1に記載の方法。
【0030】
4. 前記イネ科植物がコムギである、項目3に記載の方法。
【0031】
5. 前記イネ科植物がイネである、項目3に記載の方法。
【0032】
6. 前記イネ科植物がトウモロコシである、項目3に記載の方法。
【0033】
7. 前記発現の抑制が、アンチセンス核酸、または相同性依存型ジーンサイレンシングによってなされる、項目1に記載の方法。
【0034】
8. 項目1に記載される単子葉植物。
【0035】
9. 項目1に記載される単子葉植物の種子。
【0036】
10. 項目1に記載される単子葉植物から単離された植物細胞。
【0037】
11. 項目8に記載される単子葉植物の後代。
【0038】
12. 配列番号1に示す核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸を含む遺伝子に変異を有する改変単子葉植物を単離する工程を包含する、所望の形質を有する改変単子葉植物を作出する方法。
【0039】
13. 前記所望の形質が短桿または直立葉である、項目12に記載の方法。
【0040】
14. 前記変異がトランスポゾンの挿入による変異である、項目12に記載の方法。
【0041】
15. 前記トランスポゾンの挿入によって前記遺伝子が破壊されている、項目14に記載の方法。
【0042】
16. 前記単子葉植物がイネ科植物である、項目12に記載の方法。
【0043】
17. 前記イネ科植物がコムギである、項目16に記載の方法。
【0044】
18. 前記イネ科植物がイネである、項目16に記載の方法。
【0045】
19. 前記イネ科植物がトウモロコシである、項目16に記載の方法。
【0046】
20. 前記遺伝子に変異誘発する工程をさらに包含する、項目12に記載の方法。
【0047】
21. 項目12に記載される単子葉植物。
【0048】
22. 項目12に記載される単子葉植物の種子。
【0049】
23. 項目12に記載される単子葉植物から単離された植物細胞。
【0050】
24. 項目21に記載される単子葉植物の後代。
【0051】
25. 前記遺伝子の対立遺伝子の両方が遺伝子破壊されている、項目24に記載の単子葉植物。
【0052】
26. 以下の工程を包含する、収量の増加した改変単子葉植物を作出する方法:
配列番号1に示す核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸を含む遺伝子を単離する工程;
該単離された遺伝子の発現を植物内で発現させる発現ベクターを構築する工程;
該発現ベクターを用いて、単子葉植物を形質転換する工程。
【0053】
27. 前記単子葉植物がイネ科植物である、項目26に記載の方法。
【0054】
28. 前記イネ科植物がコムギである、項目27に記載の方法。
【0055】
29. 前記イネ科植物がイネである、項目27に記載の方法。
【0056】
30. 前記イネ科植物がトウモロコシである、項目27に記載の方法。
【0057】
31. 前記発現ベクターが、構成性プロモーター、誘導性プロモーター、部位特異的プロモーター、または時期特異的プロモーターを含む、項目26に記載の方法。
【0058】
32. 前記形質転換される単子葉植物が、項目8または項目21に記載の改変単子葉植物である、項目26に記載の方法。
【0059】
33. 項目26に記載される方法によって作出された改変単子葉植物。
【0060】
34. 項目26に記載される方法によって作出された改変単子葉植物の種子。
【0061】
35. 項目26に記載される方法によって作出された改変単子葉植物から単離された植物細胞。
【0062】
36. 項目33に記載される改変単子葉植物の後代。
【0063】
37. 配列番号1、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、または配列番号37に示す配列を有する核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸を含む遺伝子であって、単子葉植物において過剰発現する場合に単子葉植物の収量を増加し得る、遺伝子。
【0064】
38. 配列番号1、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、または配列番号37に示す配列を有する核酸。
【0065】
39. 配列番号2、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、または配列番号38に示す配列を有するポリペプチド。
【0066】
40. 配列番号2、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、または配列番号38に示す配列を有するポリペプチドをコードする核酸。
【0067】
41. 項目37に記載される遺伝子あるいは項目38または40に記載される核酸、あるいはこれらのフラグメントを含む発現ベクター。
【0068】
42. 構成性プロモーター、誘導性プロモーター、部位特異的プロモーター、または時期特異的プロモーターを含む、項目41に記載の発現ベクター。
【0069】
43. 項目37に記載される遺伝子または項目38に記載される核酸によってコードされるポリペプチド。
【0070】
44. 項目39または43に記載されるポリペプチドに結合する抗体。
【0071】
45. モノクローナル抗体である項目44に記載の抗体。
【0072】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0073】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0074】
本明細書において用いられる「植物」とは、植物界に属する生物の総称であり、クロロフィル、かたい細胞壁、豊富な永続性の胚的組織の存在,および運動する能力がない生物により特徴付けられる。代表的には、植物は、細胞壁の形成・クロロフィルによる同化作用をもつ顕花植物をいう。「植物」は、単子葉植物および双子葉植物のいずれも含む。単子葉植物としては、イネ科植物が挙げられる。好ましい単子葉植物としては、トウモロコシ、コムギ、イネ、エンバク、オオムギ、ソルガム、ライムギ及びアワが挙げられ、さらに好ましくは、トウモロコシ、コムギ、イネが挙げられるが、これらに限定されない。双子葉植物としては、アブラナ科植物、マメ科植物、ナス科植物、ウリ科植物、ヒルガオ科植物が挙げられるが、これらに限定されない。特に他で示さない限り、植物は、植物体、植物器官、植物組織、植物細胞、および種子のいずれをも意味する。植物器官の例としては、根、葉、茎、および花などが挙げられる。植物細胞の例としては、カルスおよび懸濁培養細胞が挙げられる。特定の実施形態では、植物は、植物体を意味し得る。
【0075】
イネ科の植物の例としては、Oryza、Triticum、Hordeum、Secale、Saccharum、Sorghum、またはZeaに属する植物が挙げられ、例えば、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、サトウキビ、ソルガム、トウモロコシなどを含む。
【0076】
本明細書において、用語「改変植物」とは、天然に存在する植物と比較して、ゲノム情報の少なくとも一部の構造および/または機能が変更されているものをいう。そのような改変植物は、例えば、野生型植物の形質転換、形質転換によって得られた植物との交雑、ならびにアンチセンス核酸による遺伝子発現の抑制およびコサプレッションによる遺伝子発現の抑制などによって作製され得るが、改変植物の作製方法は、これらに限定されない。
【0077】
本明細書において、用語「形質転換」と「遺伝子導入」は互換可能に使用される。「形質転換」とは、植物細胞または植物組織に、遺伝子を含む外来の核酸を導入することによって、植物細胞または植物組織の遺伝子型に変化を生じることを意味する。
【0078】
用語「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞、および植物細胞等が例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれ、本明細書においてそれらの形態をすべて包含するが、特定の文脈において特定の形態を指し得る。
【0079】
本願明細書において使用する場合、用語「選抜」とは、形質転換植物を薬物存在下で培養および/または育成することによって、薬物耐性遺伝子によって形質転換された形質転換体を、形質転換されていない植物とを区別する工程を意味する。
【0080】
遺伝子に関して本明細書において使用する場合、用語「発現の抑制」とは、未処理の植物と比較して、対象となる遺伝子の転写産物および/または翻訳産物の量を減少させる方法をいう。「発現の抑制」方法としては、アンチセンス核酸、相同性依存型ジーンサイレンシングなどを使用する方法、および変異誘発などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書において使用する場合、用語「アンチセンス核酸」とは、本来転写されるべきmRNA(センスRNA)に対し、相補的な塩基配列を有する核酸をいう。アンチセンス核酸は、転写されるべき遺伝子の断片を180度回転させてから同種または異種のプロモーター/エンハンサーと連結することによって細胞内で生成しても、または、センスRNAと相補的な配列を有する核酸を合成することによって生成してもよい。
【0082】
本明細書において使用する場合、用語「相同性依存型ジーンサイレンシング」とは、トランスジーンの相同性に基づいた遺伝子の不活化現象を意味する。ジーンサイレンシングとしては、コサプレッション、パラミューテーション、およびプロモーター依存型サイレンシングが挙げられる。Wesleyら(PlantJ.、2001年9月27日、27(6):581〜90)に記載される自己相補的「ヘアピン」RNA(hpRNA)を使用する方法もまた、ジーンサイレンシングに含まれる。
【0083】
遺伝子に変異誘発を行う方法としては、突然変異誘発物質(例えば、アルキル化剤、アクリジン色素など)を使用する方法、および紫外線または放射線を照射する方法、トランスポゾンを挿入する方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
本明細書において使用する場合、用語「遺伝子破壊」とは、その遺伝子が発現しなくなるように、所望の遺伝子を改変する方法をいう。植物の遺伝子破壊を行う方法は周知であり、例えば、レトロトランスポゾンの挿入を用いる方法、相同組換えを利用する方法が挙げられるが、これらに限定されない。また、レトロトランスポゾンとしては、Tto1およびTto2(タバコ)、Tos17およびTos19(イネ)、Bs1(トウモロコシ)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0085】
本明細書において、「トランスジェニック植物」とは、特定の遺伝子が組み込まれた植物をいう。
【0086】
本明細書では、植物の栽培は当該分野において公知の任意の方法により行うことができる。植物の栽培方法は、例えば、モデル植物の実験プロトコール−イネ・シロイヌナズナ編−」:細胞工学別冊植物細胞工学シリーズ4;イネの栽培法(奥野員敏)pp.28−32、およびアラビドプシスの栽培法(丹羽康夫)pp.33−40(監修 島本功、岡田清孝)に例示されており、当業者であれば容易に実施することができることから本明細書では詳述する必要はない。
【0087】
本明細書において使用される場合、導入される遺伝子は、ポリヌクレオチドからなる。
【0088】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作製することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。用語「核酸」はまた、本明細書において、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。特定の核酸配列はまた、「スプライス改変体」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を暗黙に包含する。その名が示唆するように「スプライス改変体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス改変体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。
【0089】
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定する遺伝子を構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子という。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」をさすことがある。本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。
【0090】
本明細書において使用する場合、用語「高度にストリンジェントな条件」とは、配列が非常に相補的であるDNA鎖のハイブリダイゼーションを許容し、かつ顕著に不一致のDNAのハイブリダイゼーションを排除するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、温度、イオン強度および変性剤(例えば、ホルムアミド)の濃度によって主に決定される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄についての「高度にストリンジェントな条件」の例は、65〜68℃での0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムまたは42℃での0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムおよび50%ホルムアミドである。Sambrook,FritschおよびManiatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,1989);Andersonら,Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach第4章(IRL Press Limited)を参照のこと。
【0091】
よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミドまたは他の変性剤)もまた用いられ得るが、ハイブリダイゼーションの速度が影響される。他の薬剤は、非特異的および/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少させる目的のために、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の緩衝液中に含まれ得る。例は、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、NaDodSO4、(SDS)、ficoll、デンハルト溶液、超音波処理サケ精子DNA(または別の非相補的DNA)およびデキストラン硫酸であるが、他の適切な薬剤もまた用いられ得る。これらの添加剤の濃度および種類は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は通常、pH6.8〜7.4で実施される;しかし、代表的なイオン強度の条件では、ハイブリダイゼーションの速度は、pHからほぼ独立する。Andersonら,Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach第4章(IRL Press Limited)を参照のこと。
【0092】
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基組成、長さおよび塩基対の不一致程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、これらの変動要因を適応させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にするために当業者によって調整され得る。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の方程式によって評価され得る:
Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na+]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中でのナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中での(グアニン+シトシン)塩基の百分率である。不完全に一致したハイブリッドについては、融解温度は、1%の不一致毎に約1℃下げられる。
【0093】
用語「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が形成され得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、50〜65℃での0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムまたは37〜50℃での0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムおよび20%ホルムアミドである。例示として、0.015Mナトリウムイオン中での50℃という「中程度にストリンジェントな条件」は、約21%の不一致を可能にする。
【0094】
「高度にストリンジェントな条件」と「中程度にストリンジェントな条件」との間に絶対的な区別が存在しないことが当業者によって認識される。例えば、0.015Mナトリウムイオン(ホルムアミドなし)では、完全に一致した長さのDNAの融解温度は、約71℃である。65℃で(同じイオン強度で)の洗浄を用いると、このことは、約6%の不一致を可能にする。より遠く関連した配列を捕獲するために、当業者は、単純に、温度を低くし得るかまたはイオン強度を高くし得る。
【0095】
約20ntまでのオリゴヌクレオチドプローブについての1M NaCl*中での融解温度の良好な評価は、以下によって与えられる:
Tm=A−T塩基対あたり2℃ + G−C塩基対あたり4℃
*6×塩クエン酸ナトリウム(SSC)中でのナトリウムイオン濃度は、1Mである。Suggsら,Developmental Biology Using Purified Genes 683(BrownおよびFox編,1981)を参照のこと。
【0096】
オリゴヌクレオチドについての高度ストリンジェンシー洗浄条件は通常、6×SSC、0.1% SDS中でのそのオリゴヌクレオチドのTmよりも0℃〜5℃低い温度においてである。
【0097】
本明細書では塩基配列の同一性の比較および相同性の算出は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
【0098】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。
【0099】
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。
【0101】
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能を発揮する活性が包含される。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。本発明の1実施形態である重金属を結合する機能を有するタンパク質の場合は、その生物学的活性は、少なくとも重金属を結合する活性を包含する。別の実施形態では、生物学的活性としては、重金属に結合する活性および形質膜のような疎水性部分に結合する能力の両方が挙げられる。
【0102】
本明細書において、「改変体ポリペプチド」または「改変対ポリヌクレオチド」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトとマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子とβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用であることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
【0103】
「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。より好ましくは、本発明のポリペプチドは、重金属結合領域および/またはファルネシル化領域におけるシステインが保存されるように改変され得る。
【0104】
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
【0105】
本明細書において使用される用語「ペプチドアナログ」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログが付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、ペプチドアナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。
【0106】
本明細書において使用されるポリペプチドの核酸形態は、そのポリペプチドのタンパク質形態を発現し得る核酸分子をいう。この核酸分子は、発現されるポリペプチドが天然型のポリペプチドと実質的に同一の活性(重金属を結合する活性、膜のような疎水性部分に結合する活性などを含む)を有する限り、上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、ポリペプチドをコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、そのポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子でもよい。このような遺伝子は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
【0107】
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
【0108】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、癌マーカー、神経疾患マーカーなど)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
【0109】
高分子構造(例えば、ポリペプチド構造)は種々のレベルの構成に関して記述され得る。この構成の一般的な議論については、例えば、Albertsら、Molecular Biology of the Cell(第3版、1994)、ならびに、CantorおよびSchimmel、Biophysical Chemistry Part I:The Conformation of Biological Macromolecules(1980)を参照。「一次構造」とは、特定のペプチドのアミノ酸配列をいう。「二次構造」とは、ポリペプチド内の局所的に配置された三次元構造をいう。これらの構造はドメインとして一般に公知である。ドメインは、ポリペプチドの緻密単位を形成し、そして代表的には50〜350アミノ酸長であるそのポリペプチドの部分である。代表的なドメインは、βシート(βストランドなど)およびα−ヘリックスのストレッチ(stretch)のような、部分から作られる。「三次構造」とは、ポリペプチドモノマーの完全な三次元構造をいう。「四次構造」とは、独立した三次単位の非共有的会合により形成される三次元構造をいう。異方性に関する用語は、エネルギー分野において知られる用語と同様に使用される。したがって、本発明のポリペプチドは、重金属結合能および形質膜結合能を有するような高次構造を有する限り、どのようなアミノ酸配列のポリペプチドをも包含し得る。
【0110】
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、植物の特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。
【0111】
本発明において利用され得る一般的な分子生物学的手法としては、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols inMolecular Biology、 Wiley、 New York、NY;Sambrook Jら (1987) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYなどを参酌して当業者であれば容易に実施をすることができる。
【0112】
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるものをいう。そのようなベクターとしては、原核生物細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体等の宿主細胞、好ましくは植物細胞において自律複製が可能であるか、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。
【0113】
「発現ベクター」は、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、植物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。選抜のための選択マーカーとしては、抗生物質カナマイシンに対する耐性を与える酵素ネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードするneo遺伝子(Beckら(1982)Gene 19:327);抗生物質ハイグロマイシンに対する耐性を与える酵素ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼをコードするhyg遺伝子(Gritz及びDavies(1983)Gene 25:179);及び除草剤ホスフィノトリシン(phosphinothricin)に対する耐性を与えるホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼをコードするbar遺伝子(EP242236);ストレプトマイシンフォスフォトランスフェラーゼをコードするspt遺伝子;ストレプトマイシン耐性遺伝;スペクチノマイシン耐性遺伝子などの薬剤耐性遺伝子(例えば、H.S.Chawla、2002、Introduction to Plant Biotechnology 2nd、p.363、Science Publishers, Inc. 単行本);ならびにβ−グルクロニダーゼをコードするgus遺伝子(Jeffersonら(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 6:3901)及びルシフェラーゼ遺伝子(Owら(1986)Science 234:856)のようなスクリーン可能なマーカー遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
本発明において選抜に使用する薬剤としては、カナマイシン、ハイグロマイシン、ジェネティシン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0115】
「組換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、植物細胞、および植物個体等の宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。
【0116】
植物細胞に対する「組換えベクター」としては、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター、ジェミニウイルスベクターなどが例示される。
【0117】
「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。ターミネーターとしては、CaMV35Sターミネーター、ノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター(Tnos)、タバコPR1a遺伝子のターミネーターが挙げられるが、これに限定されない。本明細書において用いられる「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、通常構造遺伝子の上流にあるが、好ましくは、推定プロモーター領域は、第1エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。
【0118】
本明細書において、遺伝子の発現について用いられる場合、一般に、「部位特異性」とは、生物(例えば、植物)の部位(例えば、植物の場合、根、茎、幹、葉、花、種子、胚芽、胚、果実など)におけるその遺伝子の発現の特異性をいう。「時期特異性」とは、生物(たとえば、植物)の発達段階(例えば、植物であれば生長段階、および、発芽後の芽生えの日数)に応じたその遺伝子の発現の特異性をいう。そのような特異性は、適切なプロモーターを選択することによって、所望の生物に導入することができる。
【0119】
本明細書において、本発明のプロモーターの発現が「構成的」であるとは、生物のすべての組織において、その生物の生長の幼若期または成熟期のいずれにあってもほぼ一定の量で発現される性質をいう。具体的には、本明細書の実施例と同様の条件でノーザンブロット分析したとき、例えば、任意の時点で(例えば、2点以上(例えば、5日目および15日目))の同一または対応する部位のいずれにおいても、ほぼ同程度の発現量がみられるとき、本発明の定義上、発現が構成的であるという。構成的プロモーターは、通常の生育環境にある生物の恒常性維持に役割を果たしていると考えられる。本発明のプロモーターの発現が「ストレス応答性」であるとは、少なくとも1つのストレスが生物体に与えられたとき、その発現量が変化する性質をいう。特に、発現量が増加する性質を「ストレス誘導性」といい、発現量が減少する性質を「ストレス抑制性」という。「ストレス抑制性」の発現は、正常時において、発現が見られることを前提としているので、「構成的」な発現と重複する概念である。これらの性質は、生物の任意の部分からRNAを抽出してノーザンブロット分析で発現量を分析することまたは発現されたタンパク質をウェスタンブロットにより定量することにより決定することができる。ストレス誘導性のプロモーターを本発明のポリペプチドをコードする核酸とともに組み込んだベクターで形質転換された植物または植物の部分(特定の細胞、組織など)は、そのプロモーターの誘導活性をもつ刺激因子を用いることにより、ある条件下での特定の遺伝子の発現を行うことができる。
【0120】
「エンハンサー」は、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ得る。植物において使用する場合、エンハンサーとしては、CaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むエンハンサー領域が好ましい。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
【0121】
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、プロモーターと構造遺伝子との間に介在する配列が存在してもよいため、プロモーターと構造遺伝子とは必ずしも隣接して配置される必要はない。
【0122】
導入した遺伝子の存在は、サザンブロット法によって確認し得る。導入した遺伝子の発現は、ノーザンブロット法またはPCR法により、検出し得る。必要に応じて、遺伝子産物たるタンパク質の発現を、例えば、ウェスタンブロット法により確認し得る。
【0123】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
【0124】
【実施例】
(方法および材料)
(形質転換)
形質転換を行うためには、一般に、植物に対して直接的に遺伝子導入を行う方法(直接的遺伝子導入法)、または植物に対して間接的に遺伝子導入を行う方法(間接的遺伝子導入法)が行われる。
【0125】
現在までに、間接的な遺伝子導入法として、アグロバクテリウムを利用した方法が広く利用されている。例えばイネの完熟種子を培養して3週間後に得られたカルスに対してアグロバクテリウムを感染させる方法(Hieiら、PlantJournal、6:271−282,1994を参照)あるいは、発芽後4−5日の種子に対してアグロバクテリウムを感染させて形質転換体を迅速に得ることができる方法(田中ら、特許第3141084号を参照)を挙げることができる。
【0126】
一方、直接的遺伝子導入方法として、パーティクルガン法(Christou,P.ら、Bio/Technology、9:957−962,1991を参照)、ポリエチレングリコール法(Datta,S.K.ら、Bio/Technology、8:736−740,1990を参照)、およびエレクトロポーレーション法(Shimamoto,K.らNature、338:274−276,1989を参照)などが形質転換体の作出に利用されている。エレクトロポーレーションとは、直流の高電圧パルスを用いて物理的に植物細胞に小孔をあけ、そこから遺伝子を細胞内に導入する方法をいう。
【0127】
これらの直接的遺伝子導入方法は、間接的遺伝子導入方法と比較して、アグロバクテリウムの培養・調製が不要であるなどの利点を有する。しかし、直接的遺伝子導入方法であるパーティクルガン法の場合には、形質転換組織から形質転換植物を再生する効率が依然として低いという欠点がある(Hagio、1998、JARQ 32(4)239−247)。
【0128】
一方、コムギへ遺伝子導入する場合には、未熟胚が用いられていた(J.T.Weeksら、Plant.Physiol.102:1077−1084,1993を参照)。しかし、未熟胚を入手するためには、圃場や温室で植物を育成しなければならず、圃場では6−7ヶ月、温室では3−5ヶ月を要する。
【0129】
(実施例1:所望の形質を有するイネ植物の単離)
所望の形質である、短桿および直立葉の優良形質を有する変異イネ植物を、レトロトランスポゾンTos17の挿入変異が生じたイネ(日本晴)遺伝子破壊系統群(名古屋大学生物分子応答研究センター内にて維持、保存)内において検索した。その結果、Tos2091が、同定された(図2)。
【0130】
(実施例2:Tos2091の解析)
Tos2091突然変異体において、直立葉や矮性などの表現型とTos17の挿入との間には連鎖が認められなかったことから、このTos2091突然変異体は培養変異に由来するものであると考えられた。そこでこのTos2091突然変異体とインド稲カサラスを交配して得られたF2分離集団を用いて、突然変異の原因遺伝子のマッピングを行った。
【0131】
(1:Tos2091突然変異体の原因遺伝子のマッピング)
Tos2091突然変異の染色体座乗位置は、「Tos2091」(ジャポニカ種)と「カサラス」(インディカ種)の交雑後代系統を用いて特定した。連鎖解析にはMAPMAKER program(Landerら、1987)を用いた。F2分離集団を用いて、突然変異の原因遺伝子のマッピングを行ったところ、原因遺伝子は第3染色体短腕側に座乗していることが明らかとなった。
【0132】
(2:Tos2091突然変異体の原因遺伝子の同定)
ブラシノステロイド合成系には数種のシトクロムP450モノオキシゲナーゼが関与していることが公知であるので、以下のように、イネから複数のシトクロムP450モノオキシゲナーゼ様遺伝子断片を単離し、それぞれの染色体座乗位置を解析した。
【0133】
(2.1:イネのシトクロムP450モノオキシゲナーゼ様遺伝子の単離)
シロイヌナズナから単離されていたブラシノステロイド生合成に関わるシトクロムP450遺伝子(Choeら、1998)の塩基配列を基に縮重プライマーを設計した:(5’−ACICARTGYGTIRTIAAYGARACIYTIMG−3’;5’−GCIARYTCIBWICCIGSRCAIARIC−3’)。イネ「日本晴」のゲノムDNAを鋳型とし、Pyrobest DNApolymarase(TaKaRa)を用いてPCRを行った。得られた増幅断片をクローニングベクターpBluescript II(Clontech)にクローニングした後、塩基配列を決定した。各候補遺伝子の染色体座乗位置は、「日本晴」(ジャポニカ種)と「カサラス」(インディカ種)の日印交雑系統を用い、上記の方法で特定した。なお、上記の核酸配列中、Iはイノシンを、Rはアデニンまたはグアニンを、Yはシトシン、チミンまたはウラシルを、Mはアデニンまたはシトシンを、Bはシトシン、グアニン、チミンまたはウラシルを、Wはアデニン、チミンまたはウラシルを、Sはシトシンまたはグアニンを意味する。
【0134】
(2.2:Tos2091突然変異体の原因遺伝子の同定)
各候補遺伝子の染色体座乗位置を解析した結果、1つのシトクロムP450モノオキシゲナーゼ様遺伝子が、Tos2091の原因遺伝子とほぼ同じ位置に布置された。候補遺伝子を含むBACクローンを、PCRによるスクリーニングによって得た。用いた特異的プライマーは、前述のPCR増幅断片の塩基配列を基に設計した:(5’−GAAACGTGGTCAGGTTCCTGCA−3’;5’−TGAAGCTGCTGCTCTGAGCCAA−3’)。得られたBACクローンの塩基配列を決定し、候補遺伝子の完全長ゲノム配列を決定した。
【0135】
この候補遺伝子は、アラビドプシスDWARF4(DWF4)遺伝子と、塩基配列において51.5%、アミノ酸配列において65.8%の相同性を示したことから、DWF4のイネにおけるカウンターパートであると推定された。そのため、この遺伝子をOsDWF4と命名した。
【0136】
アラビドプシスのDWF4は、ブラシノステロイドの生合成に関与しているシトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードしていることが明らかになっている。OsDWF4のORFは1518塩基(配列番号1)で、506アミノ酸で構成されるタンパク質(配列番号2)をコードしていた(図4)。OsDWF4の塩基配列はアラビドプシスのORFと51%の相同性を示し(図5)、推定されるアミノ酸配列はDWF4と65.8%の相同性を示した(図6)。シトクロムP450モノオキシゲナーゼに特徴的な6つのドメイン構造はいずれもOsDWF4に保存されていた(図5)。これらの結果から、OsDWF4はシロイヌナズナDWF4遺伝子のイネにおけるカウンターパート遺伝子であると結論付けられた。
【0137】
また、F2分離集団を用いてOsDWF4遺伝子のマッピングを行ったところ、OsDWF4遺伝子は、Tos2091突然変異体の原因遺伝子と同様に、第3染色体短腕側に座乗していることが明らかとなった(図3)。
【0138】
この遺伝子が、Tos2091突然変異体の原因遺伝子であることを確認するために、OsDWF4のゲノム配列によるTos2091の相補実験を行った。
【0139】
上記のBACクローンからOsDWF4のコード領域を含む約10kbpのゲノムDNA配列を得た。この約10kbpのゲノムDNA配列をバイナリーベクターpCAMBIA 1300(CAMBIA)にクローニングし、アグロバクテリウム法を用いてTos2091突然変異体に導入した。遺伝子導入は、菌株にAgrobacterium tumefaciens EHA105を用い、田中らの方法(特許第3141084号)に従った。
【0140】
OsDWF4のコード領域を含む約10kbのゲノムDNAを導入した植物では、Tos2091の表現型が回復した。従って、Tos2091の原因遺伝子がOsDWF4であることが確認された。
【0141】
(3:OsDWF4の発現解析)
イネ「日本晴」各器官から抽出した総RNAをDNase(NipponGnene)で処理した。RT−PCRを行うための鋳型cDNAは、Advantage RT−for−PCR Kit(Clontech)を用いて作製した。PCRにはTaKaRa Taq polymarase(TaKaRa)を用いた。プラーマーには:(5’−GGTGTATAGCTAGCTTGCTTGCAG−3’; 5’−GAGAGCCTTCCAGTAGGGCG−3’)を用いた。
【0142】
定量的RT−PCRにより、OsDWF4発現の組織特異性を調べたところ、OsDWF4は根に強く発現しており、茎頂分裂組織近傍においては、わずかに発現が認められた。しかし葉身、葉鞘、伸長節間、幼穂、開花期の穂では発現が認められなかった(図7)。
【0143】
(4:OsDWF4の機能を欠損する別の突然変異系統の取得)
OsDWF4の機能を欠損する別の突然変異系統を得るために、OsDWF4の完全長ゲノム塩基配列および推定アミノ酸配列を用い、農業生物資源研究所のTos17ミュータントパネルをスクリーニングした(http://pc7080.abr.affrc.go.jp/~miyao/pub/tos17/)。挿入を検出するためのプラーマー対として:(5’−ACTGTATAGTTGGCCCATGTCCAG−3’; 5’−TAATCCTACTGCGACTGACCTTCC−3’)、非挿入を検出するためのプラーマー対として(5’−TGTGGTGGTATCAGATAAAGGAGC−3’; 5’−TAATCCTACTGCGACTGACCTTCC−3’)を用いた。その結果、シトクロムP450モノオキシゲナーゼに特徴的な6つの保存されたドメインのうちの1つであるドメインCにレトロトランスポゾンTos17の挿入変異を生じたイネ遺伝子破壊系統(NE7040)が得られた(図8)。
【0144】
得られた変異系統のうちの1つであるNE7040の自殖後代について、Tos17挿入変異の分離を確認したところ、分離世代では、野生型ホモ接合型、挿入変異ヘテロ接合型、挿入変異ホモ接合型が、約1:2:1で分離した。
【0145】
すなわち、分離世代において約25%の個体が直立葉、半矮性の表現型を示し、他の個体の表現型は野生型のそれと見分けがつかなかった。それぞれの遺伝子型を調べたところ、直立葉、半矮性の表現型を示した個体はいずれもTos17の挿入変異をホモに持っており、正常な表現型を示した個体には、Tos17の挿入変異をヘテロに持つ個体と挿入変異を持たない個体が約2:1の割合で含まれていた。従って、突然変異体の表現型と遺伝子型には相関が認められ、Tos17の挿入変異をホモに持つことによってOsDWF4の機能が完全に失われた場合に、直立葉、半矮性の表現型が引き起こされることが明らかとなった(図9)。また、これらホモ変異体では、d61とは異なり、穂の発達の著しい阻害、極矮性などの望まれない形質は、観察されなかった。
【0146】
理論に拘束されることを意図しないが、単子葉植物において、ブラシノステロイドの生合成に関与しているシトクロムP450モノオキシゲナーゼによる酵素反応は、DWF4遺伝子を含む複数の遺伝子によってコードされる酵素によって触媒されていることが推定される。
【0147】
また、アラビドプシスとイネにおけるブラシノステロイドの生物学的機能の差異(例えば、Steven D.Clouseら、Plant Plhysiol.(1996)111:671−678、Jianming LiおよびJoanne Chory、Cell、vol.90、929−938、1997年9月5日、ならびにChizuko Yamamuroら、The PlantCell、vol.12、1591−1605、2000年9月を参照のこと)、ならびに双子葉植物と単子葉植物において一般的にホルモンなどの生合成経路に差異が見られることから、単子葉植物の場合は、双子葉植物の場合とは異なり、DWF4の変異体が、極矮性などの形質を示さなかったものと考えられる。また、ブラシノステロイドの受容体に変異を導入した場合には、ブラシノステロイド受容体に代わり得る遺伝子が存在しないため、極矮性を示したものと考えられる。これらの知見から、DWF4遺伝子に変異を導入した場合には、イネのみならず単子葉植物全てにおいて、極矮性などの好ましくない形質を示すことなく、短桿(半矮性)、および直立葉などの好ましい形質を示すことが予想される。(実施例3:レトロトランスポゾンを利用したDWF4遺伝子破壊植物の作製)植物染色体中の遺伝子を破壊する方法は、周知である。遺伝子破壊をする方法としては、レトロトランスポゾンを利用する方法、および相同組換えを利用する方法が挙げられるが、これらに限定されない。従って、OsDWF4または所望の種におけるOsDWF4のカウンターパートを単離しさえすれば、当業者は、以下の実施例および技術常識を参酌して、容易にDWF4遺伝子破壊植物を得ることができる。
【0148】
(1:遺伝子破壊植物の作製)
レトロトランスポゾンを利用して遺伝子破壊植物を作出する方法は、例えば、Hirohiko Hirochikaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、vol.93、7783−7788(1996年7月)に記載されるように周知である。
【0149】
(2:遺伝子破壊植物のスクリーニング)
所望の遺伝子内にレトロトランスポゾンが挿入されたか否かを簡便に確認するためにPCRを使用する方法(PCR法を用いた3次元スクリーニング)が確立されている(宮尾安藝雄、廣近洋彦、「イネのTos17による遺伝子破壊法」、細胞工学別冊 植物細胞工学シリーズ14、植物のゲノム研究プロトコール 最新のゲノム情報とその利用法、秀潤社、P.73−81、(2001))。具体手には、以下の手順によって確認する。
【0150】
(2.1:試薬)
1.Tos17末端プライマー1次スクリーニング用:
T17F−1 ACCACTTCAGAGATTGTGTGGTTGC
T17R−1 CAGCAACGATGTAGATGGTCAAGC
2.ネスティド(Nested)PCR用:
T17F−2 GACAACACCGGAGCTATACAAATCG
T17R−2 AGGAGGTTGCTTAGCAGTGAAACG
T17LTRN6F CTGTATAGTTGGCCCATGTCC
T17LTR7R ATGGACTGGACATCCGATGG
3.Taqポリメラーゼ(Expand Long Template PCRSystem、Boehringer−Mannheim, 3.5u/μl)。
【0151】
(2.2:PCRによる確認)
例えば、Ronald Koesら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.92,1995年8月、第8149〜8153頁)に開示されるように、PCRを用いて、レトロトランスポゾンが所望の遺伝子に挿入された植物のスクリーニング方法は周知である。
【0152】
また、具体的には、以下のPCR法を用いて、所望の遺伝子内にレトロトランスポゾンが挿入された植物をスクリーニングできる。
【0153】
1.PCR用反応混合液
鋳型DNA(10ng/μl) 5 μl
(スクリーニングする植物より調製したゲノムDNA)
10×PCRバッファー 2 μl
2mM dNTP 2 μl
2.5 mM MgCl2 2 μl
10 μM Tos17プライマー 2 μl
10 μM 任意プライマー 2 μl
Taq ポリメラーゼ 0.5 μl
上記に蒸留水を加えて20 μlとする。
【0154】
2.PCRサイクル
94℃, 3分
その以下のステップを10サイクル行う、
94℃ 30秒
62℃ 30秒
68℃ 2分
次に以下のステップを20サイクル行う、
94℃ 30秒
62℃ 30秒
68℃ 2分(各サイクルにつき、20秒伸長サイクルを追加)
次に68℃ 10分を行う。
【0155】
3.反応混合液を1%アガロースゲル電気泳動で解析する。増幅効率が悪い場合は、LA−TaqでPCRを行う。
【0156】
4.目的の遺伝子のさらに内側の塩基配列で作製したプライマーを用いて、最初の反応溶液の20倍希釈溶液1μlを鋳型にして再度PCR(最終容量20μl)を行う。1次PCRでT17F−1を用いた場合は、T17F−2とT17LTRN6Fを用いた2種類の反応を行う。T17R−1を用いた場合は、同様に2種類のRプライマーを使用する。これらのプライマーセットを用いるとサイズが異なる産物が得られるので、正しい増幅産物であるかどうかを確認できる。
【0157】
5.サザン解析で増幅バンドが目的の遺伝子由来であることを確認する。
【0158】
(3:ホモ接合型変異植物のスクリーニング)
変異植物を交配する方法は、周知である(例えば、高牟禮逸朗、佐野芳雄「イネの突然変異体誘発、選抜と交配法」、細胞工学別冊、植物細胞工学シリーズ4、モデル植物の実験プロトコール、イネ・シロイヌナズナ編、秀潤社、p.44−48(1996))。
【0159】
交配することによって得られた後代が、ホモ接合型変異植物であるか否かは、以下のサザン解析を用いて確認する。
【0160】
(3.1:ゲノムDNAの抽出)
スモールスケールCTAB法(M.G.MurrayおよびW.F.Thompson(1980)Rapid isolation of high molecular weight plant DNA,Nucleic Acids Res.8:4321−4325)を用いてゲノムDNAを抽出する。
【0161】
【0162】
(3.1.2:方法)
1.イネの葉1枚程度を液体窒素で凍らせて、乳鉢で粉末にする。
2.0.7 mlの1.5×CTAB液の入ったエッペンドルフチューブにスパチュラを使って移す。(移す分量は、チューブを転倒すると懸濁液がゆるやかに移動する程度)
3.0.5 mlのクロロホルムを加えて、室温で20分程度振とうする。
4.14,000 rpmで5分遠心する。
5.上清0.5 mlを新しいチューブに移し、0.5 mlの沈澱バッファーを加えて混合する。
6.55℃のウォーターバスに30分程度置く。(沈澱が析出する)
7.14,000 rpmで5分遠心する。
8.上清を完全に除き、1M NaCl−TEを0.5 ml加える。
9.55℃のウォーターバスに2時間程度置き、時々チューブを転倒混和して沈澱を溶かす。
10.DNAが完全に溶けたら、14,000 rpmで5分遠心して不溶物を沈澱させる。
11.上清を新しいチューブに移し、1 mlのエタノールを加えて、よく混合する。
12.14,000 rpmで5分遠心する。
13.上清を捨て、1 mlの70%エタノールを加えて沈澱と管壁をリンスする。
14.14,000 rpmで2分遠心する。
15.上清を捨てる。
16.もう一度軽く遠心して残ったエタノールを底に集め、ピペットマンを用いて残ったエタノールを完全に除去する。
17.10分程度風乾して白かった沈澱が透明になったら、50μlの TE(+RNase)に溶かす。(溶けにくいので、溶けるまで根気強く撹拌する。)
18.2 μlサンプリングして、蛍光光度計で濃度を測る。
19.50 ng/μlにTEで希釈して−20℃保存する。
加えるTEの量 = (濃度 ng/50) * 48 − 48。
【0163】
(3.2:アガロースゲル電気泳動)
1. 1レーン当たり500 ngをXbaIで消化する。
2. 0.8%アガロースゲルで、ゲルの下端が1.5〜2kbになるように泳動する。マーカーには、λ/HindIIIを用い、コントロールに日本晴/XbaIを1レーン泳動するのを忘れないようにする。明瞭な泳動像を得るためには、λの2 kbのバンドがウェルから18〜20 cm程度泳動する必要がある。
3. 泳動後、ナイロンメンブラン(Hybond N+)にブロッティングし、フィルターに転写されたDNAを5分程度アルカリ変性する。フィルターを中和液に漬けた後、2xSSCでよく洗って、タオルペーパーに挟んで余分なSSCを除く。
4. フィルターが湿った状態でUV照射を行い、80℃の乾燥器で2〜3時間のべーキングしてDNAを膜に固定してハイブリダイゼーションに使用する。
【0164】
(3.3:プローブの選択)
サザンハイブリダイゼーションに使用するために適切なプローブを選択することは、当業者が容易になし得る。例えば、プローブとしては、BLAST検索でヒットした部分の塩基配列からプライマーを作製して、PCRで増幅した断片を用いる。
【0165】
Tos17をプローブに用いて上記のサザンハイブリダイゼーション行う場合は、Tos17はレトロトランスポゾンであるため、レトロトランスポゾン一般に保存された場所をプローブに用いると、Tos17以外のレトロトランスポゾンにもハイブリダイゼーションして、バンドの識別が困難になる。この点、Tos17のgag領域を含む前半分の部分(XbaI−BamHI断片)をプローブに用いるとTos17特異的な明瞭なバンドが得られる。また、以下のプライマーで、日本晴ゲノムDNAを増幅するとTos17特異的なプローブが得られる。
【0166】
プライマー名 塩基配列
PA0131 TGAAGCATCGGTCTCAGCTA
PA0132 GTAGGTTGGGAGGGTTGTGA
(3.4.1.:ハイブリダイゼーション用プローブの調製)
ハイブリダイゼーション用のプローブの調製には、32Pあるいは、アマシャムの GeneImageを用いる。
【0167】
(3.4.2:ハイブリダイゼーション溶液の組成および作製方法)
(作製方法)
1.仔牛胸腺DNA(SIGMA D−1501, 1g)一瓶のDNAを秤量する。仮に1.1gだとすると、110 mlのTE10−1の入ったフラスコにDNAを入れてオートクレーブする。DNAが溶けたら、最大出力で1分程度ソニケーションして、DNAを短い断片にする。この溶液を10 mg/mlストック溶液として、−20℃で保存する。
2.ビーカーに、MiliQ水を600 ml程度入れる。 NaH2PO4・2H2O(FW=156.01)を78gをビーカに移し溶解する。
3.別のビーカーに、MiliQ水を100 ml程度入れ、水酸化ナトリウム25gを溶解しておく。
4.リン酸ナトリウム溶液のpHを7程度になるまで、水酸化ナトリウム溶液を加える。
5.70gのSDSを2,3回に分けてリン酸ナトリウム溶液に加えて溶解する。
6.EDTA−2Naを372 mg秤量して、リン酸ナトリウム溶液に加える。7.変性仔牛胸腺DNAを20 ml加える。
8.残りの水酸化ナトリウム溶液で、pH7.2にあわせて、1lにメスアップする。
9.室温、あるいは42℃のインキューベータで保存する。滅菌に必要はない。
【0168】
(3.4.3:ハイブリダイゼーション)
1.Tos17プローブ用DNA溶液を25 ng/μlに調節してストック溶液とする。
2.λ/HindIII溶液を0.5 ng/μlに調節してストック溶液とする。
3.Megaprime DNA Labelling System,dCTP(Amersham,RPN1606)と、α−32P dCTP(Amersham,AA0005,3000Ci/mmol)を用いて標識する:
Tos17溶液 1〜2 μl
λ/HindIII溶液 1 μl
プライマー溶液 5 μl
H2O 28 μl
4.上記の溶液を混合して、沸騰水上で1〜2分変性させて、チューブを氷上に戻す。
5.ラベリング用の緩衝液溶液を10 μlと、Klenow fragment溶液1 μlをチューブに加えた後、α−32P dCTPを加え、37℃でラベリング反応を行う。
6.ポリシールバックにメンブラン1枚当たり20〜30 mlのハイブリダイゼーション溶液を入れて、65℃でプレハイブリダイゼーションを1時間程度行う。
7.ラベリング反応後、MicroSpin S−200 HR Columns, pre−equilibrated in TE buffer(Amersham, 27−5120−01)で未反応のラベルを除く。(3000 rpm,1分)
8.プローブ溶液を沸騰水上で1分熱変性した後、ハイブリダイゼーション溶液に加える。ハイブリダイゼーション溶液を交換する必要はない。
9.65℃で1晩ハイブリダイゼーションする。
10.55℃の2xSSCで、30〜1時間の洗浄を2回行う。
11.最後に、2xSSCで軽くすすいで、メンブランをサランラップで挟み込む。
13.増感紙を用いて、−80℃でオートラジオグラフィーを、1〜2日行う。
(実施例4:相同組換えを利用したDWF4遺伝子破壊植物の作製)
植物の相同組換えを利用して、植物の遺伝子を破壊する方法は、例えば、Rie Teradaら(Nature Biotechnology、Published on line;9 )に記載されるように周知である。
(実施例5:OsDWF4の過剰発現による改変植物の作製)
内性のブラシノステロイド含量を高めることを目的として、イネアクチンプロモーター(図中にACT−pで示す)の制御下でOsDWF4 cDNAを過剰発現させるベクターを構築した(図10)。このベクターは、NPTIIで示すカナマイシン及びゲンタマイシン耐性遺伝子、NOS−tで示すノパリンシンターゼのターミネーター、HPTで示すハイグロマイシン耐性遺伝子を含む。田中らの方法(前出)を用いて、この発現ベクターによってイネ(日本晴)を形質転換し、改変植物の形質を調べた。
【0169】
得られた36系統のうちの14系統において、一穂あたりの粒数が野生型(非形質転換)日本晴と比較して増加していた(表1)。
【0170】
【表1】
【表2】
選択された14系統の中で特に粒数増加の程度が大きかった3系統をさらに選択して(13、26、および31)、粒重を野生型(非形質転換)日本晴と比較したところ、各系統間で有意な差は見られなかった(表2の「十粒重(平均)」)。これに対して、改変植物の総粒数は、野生型(非形質転換)日本晴と比較して、有意に増加し、従って、総粒重も増加していた(表2の「総粒数」および「総粒重」)。
【0171】
この結果は、従来の双子葉植物(アラビドプシス)での知見に基づく予測に反して、単子葉植物においてDWF4(例えば、OsDWF4)を過剰発現させることによって、収量の増加した改変植物を得ることが可能であることが、実証された。
(実施例6:単離したOsDWF4ホモログまたはOsDWF4改変体の活性測定)
単離したOsDWF4ホモログまたはOsDWF4改変体によってコードされるタンパク質が野生型OsDWF4タンパク質の活性を有するか否かを、以下のように決定することができる。
【0172】
OsDWF4ホモログまたはOsDWF4改変体を単離した後、実施例5に記載される方法に従って、この単離した遺伝子をOsDWF4のプロモーターの制御下に連結して、単離した遺伝子を発現させるベクターを構築する。
【0173】
このベクターを、ゲノム内のOsDWF4に変異を有する植物(矮性および/または直立葉などの変異表現型を有する植物、例えば、イネのTos2091突然変異体)に導入する。この遺伝子導入の結果得られる形質転換体が、矮性および/または直立葉など変異表現型を相補する場合、この単離されたOsDWF4ホモログまたはOsDWF4改変体が、OsDWF4の活性を有することを意味する。
【0174】
従って、OsDWF4に変異を有する植物を用いる相補性試験によって、単離されたOsDWF4ホモログまたはOsDWF4改変体が活性を有するか否かを決定することができる。
(実施例7:OsDWF4変異植物に対するブラシノステロイド適用)
実施例1において得られたNE7040、または実施例4において作製される改変植物を宿主として使用して、ブラシノステロイドを適用(例えば、噴霧、または塗布)することによって、収量を減少することなく、短桿および直立葉という所望の形質を有する植物を作出することができる。
【0175】
ブラシノステロイド適用方法としては、一次枝梗分化期前後に、1μM水溶液を植物体全体にスプレーする方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0176】
ブラシノステロイドを適用するタイミングで、適用する濃度、適用する位置、および適用方法は、当業者に周知であり、かつ当業者が適宜選択し得る事項である。
(実施例8:OsDWF4変異植物においてOsDWF4を過剰発現させることによる優良形質植物の作出)
実施例1において得られたNE7040、または実施例4において作製される改変植物を宿主として使用して、以下の方法でOsDWF4を過剰発現することによって、収量を減少することなく、短桿および直立葉という所望の形質を有する植物を作出することができる。
【0177】
その方法は、OsDWF4を、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター、および/または発生時期特異的プロモーターなどに作動可能に連結し、そのOsDWF4遺伝子を含む発現ベクターを構築して、宿主となる植物に導入する。
【0178】
使用するプロモーターとしては、穂特異的プロモーターが好ましい。具体的には、イネのMADSボックス遺伝子のプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
(実施例9:OsDWF4以外のイネブラシノステロイド合成系遺伝子の単離)
アラビドプシスにおけるブラシノステロイド合成系に関与する遺伝子としては、DWF4以外に、以下:
DIM(DIMINUTO/DWARF1):C−24Reductase(C−24還元酵素):Klahre,U.ら、(1998).The Arabidopsis DIMINUTO/DWARF1 gene encodesa protein involved in steroid synthesis. Plant Cell 10:1677−1690。
【0179】
DET2(DEETIOLATED2):C−5αReductase(C−5α還元酵素):Fujioka,S.ら、(1997)The Arabidopsis deetiolated2 mutant is blockedearly in brassinosteroid biosynthesis. Plant Cell 9:1951−1962。
【0180】
CPD(CONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENESISAND DWARFISM1):C−23αHydroxylase(C−23α水酸化酵素):Szekeres,M.ら、(1996).Brassinosteroids rescue the deficiency of CYP90, a cytochrome P450,controlling cell elongation and de−etiolation inArabidopsis. Cell 85:171−182。
【0181】
DWF(DWARF):C−6 oxidase(C−6 酸化酵素)Shimada, Y.ら、(2001)Brassinosteroid−6−oxidases from Arabidopsis and tomato catalyze multiple C−6 oxidations in brassinosteroid biosynthesis. Plant Physiol. 126: 770−779。
【0182】
DWF5(DWARF5):δ7SterolC−7reductase(δ7ステロールC−7還元酵素):Choe,S.ら、(2000).Lesions in the sterol delta reductase gene of Arabidopsis cause dwarfism due to a block in brassinosteroid biosynthesis. Plant J. 21:431−443。
【0183】
DWF7(DWARF7):δ7SterolC−5reductase(δ7ステロールC−5還元酵素):Choe,S.ら、(1999).The Arabidopsis dwf7/ste1 mutant is defective in the delta7 sterol C−5 desaturation step leading to brassinosteroid biosynthesis. Plant Cell 11: 207−221。
【0184】
ROT3(ROTUNDIFOLIA3):CytochromeP450(シトクロームP450):Kim,G.Tら、(1998).The ROTUNDIFOLIA3 gene of Arabidopsis thaliana encodes a new member of the cytochrome P−450 family that is required for the regulated polar elongation of leaf cells. Genes Dev. 12:2381−2391。
【0185】
FACKEL:C−14Sterolreductase(C−14ステロール還元酵素):Jang,J.C.ら、(2000).A critical role of sterols in embryonic patterning and meristem programming revealed by the fackel mutants of Arabidopsis thaliana. Genes Dev. 14:1485−1497。
【0186】
が公知である。しかし、イネにおいて、これらの遺伝子に対応する遺伝子のほとんどは単離されていない。そのため、イネにおけるこれらの対応する遺伝子を、以下のように単離した。
【0187】
アラビドプシスにおいて既に単離されている遺伝子からプローブを調製し、そのプローブを用いて、ストリンジェントな条件でのハイブリダイゼーションを使用するスクリーニングを行った。その結果、以下に列挙するブラシノステロイド合成系に関与する遺伝子を、イネcDNAライブラリーより単離した。
【0188】
OsDIM(DIMINUTO/DWARF1):C−24Reductase(C−24還元酵素);配列番号19および20。
【0189】
OsDET2(DEETIOLATED2):C−5αReductase(C−5α還元酵素);配列番号21および22。
【0190】
OsCPD1(CONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENESIS AND DWARFISM1):C−23αHydroxylase(C−23α水酸化酵素);配列番号23および24。
【0191】
OsCPD2(CONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENESIS AND DWARFISM2):C−23αHydroxylase(C−23α水酸化酵素);配列番号25および26。
【0192】
OsCPD3(CONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENESIS AND DWARFISM3):C−23αHydroxylase(C−23α水酸化酵素);配列番号27および28。
【0193】
OsDWF(DWARF):C−6 oxidase(C−6 酸化酵素);配列番号29および30。
【0194】
OsDWF5(DWARF5):δ7SterolC−7reductase(δ7ステロールC−7還元酵素);配列番号31および32。
【0195】
OsDWF7(DWARF7):δ7SterolC−5reductase(δ7ステロールC−5還元酵素);配列番号33および34。
【0196】
OsROT3(ROTUNDIFOLIA3):CytochromeP450(シトクロームP450);配列番号35および36。
【0197】
OsFACKEL:C−14Sterolreductase(C−14ステロール還元酵素);配列番号37および38。
(実施例10:OsDWF4以外のイネブラシノステロイド合成系遺伝子破壊植物の作製)
実施例3に記載の方法に従って、以下のように、OsDWF4以外のイネブラシノステロイド合成系遺伝子破壊植物を作製する。
【0198】
実施例9において単離された遺伝子の配列に基づいてPCRプライマーを設計する。このPCRプライマーを使用して目的の遺伝子内にレトロトランスポゾンが挿入されたか否かを確認する。次に、目的の遺伝子内にレトロトランスポゾンが挿入された植物を単離し、ブラシノステロイド合成系遺伝子の変異に特徴的な表現型(例えば、矮性、直立葉など)を確認する。
【0199】
この表現型が、目的の遺伝子の破壊の結果生じたものであることを確認するために、以下のとおり相補性試験を行う。
【0200】
目的の遺伝子をその天然のプロモーターに作動可能に連結し、目的の遺伝子の発現ベクターを構築する。その発現ベクターを遺伝子破壊植物に形質転換して、遺伝子破壊植物の表現型(特に、ブラシノステロイド合成系遺伝子の変異に関連する表現型)が相補されるか否かを確認する。変異表現型が相補された場合、その遺伝子破壊植物において、目的の遺伝子が破壊されていることを意味する。
(実施例11:単離したホモログ遺伝子または改変体遺伝子の活性測定)
OsDWF4以外のブラシノステロイド合成系に関連する遺伝子について、単離したホモログ遺伝子または改変体遺伝子によってコードされるタンパク質が野生型イネタンパク質の活性を有するか否かを、以下のように決定することができる。
【0201】
ホモログ遺伝子または改変体遺伝子を単離した後、実施例5に記載される方法に従って、この単離した遺伝子をその遺伝子の天然のプロモーターの制御下に連結して、単離した遺伝子を発現させるベクターを構築する。
【0202】
このベクターを、ゲノム内の目的の遺伝子に変異を有する植物(矮性および/または直立葉などの変異表現型を有する植物、例えば、イネ突然変異体)に導入する。この遺伝子導入の結果得られる形質転換体が、矮性および/または直立葉など変異表現型を相補する場合、この単離したホモログ遺伝子または改変体遺伝子が、野生型イネ遺伝子の活性を有することを意味する。
【0203】
従って、目的の遺伝子に変異を有する植物を用いる相補性試験によって、この単離したホモログ遺伝子または改変体遺伝子が活性を有するか否かを決定することができる。
(実施例12:OsDWF4以外のブラシノステロイド合成系遺伝子の過剰発現による改変植物の作製)
内性のブラシノステロイド含量を高めることを目的として、イネアクチンプロモーターの制御下でOsDWF4以外のブラシノステロイド合成系遺伝子のcDNAを過剰発現させるベクターを構築する。
【0204】
このベクターには、例えば、NPTIIで示すカナマイシン及びゲンタマイシン耐性遺伝子、NOS−tで示すノパリンシンターゼのターミネーター、HPTで示すハイグロマイシン耐性遺伝子を含むことができる。田中らの方法(前出)を用いて、この発現ベクターによってイネ(日本晴)を形質転換し、改変植物の形質を調べる。
【0205】
一穂あたりの粒数が野生型(非形質転換)日本晴と比較して増加している株を選択する。選択した株について、さらに、総粒数、および総粒重を、野生型イネ(非形質転換植物)と比較する。その結果、目的の遺伝子を過剰発現することによって、収量の増加した改変植物を得ることが可能である。
(実施例13:ブラシノステロイド合成系遺伝子に変異を有する植物における、ブラシノステロイド合成系遺伝子の過剰発現による改変植物の作製)
上記の実施例に従って、当業者は、任意の1つのブラシノステロイド合成系遺伝子について、変異を有する植物を作製することができる。そのような変異植物を交雑することによって、任意の2つ以上のブラシノステロイド合成系遺伝子に変異をホモ接合型またはヘテロ接合型で有する変異植物を作製することも容易にできる。
【0206】
さらに、当業者は、全てのブラシノステロイド合成系遺伝子について、発現ベクターを構築することができる。この発現ベクターは、過剰発現、時期特異的発現、組織特異的発現、構成性発現、ホルモンなどの刺激応答性発現をするベクターであり得る。
【0207】
当業者は、上記の変異植物と、発現ベクターを組み合わせることによって、所望の形質を有する植物を作製することができる。
【0208】
【発明の効果】
本発明によって、極矮性などの望ましくない形質をもたらすことなく、植物の形態などの形質を制御し、所望の形態(特に、短桿(半矮性)、改善された受光態勢をもたらす直立性、および/または収量増加)を有する植物を作出する方法を提供する。また、そのような方法によって作出された植物、その種子および後代、ならびに植物細胞、および植物体が提供される。
【0209】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、野生型イネ(日本晴)およびd61変異体イネ(日本晴)の形態における表現型の差異を示す写真である。d61変異体は、野生型とは異なり、直立葉や半矮性という優良な形質を示す。
【図2】図2は、本発明において単離されたTos2091が、直立葉や半矮性という優良な形質を有することを示す。
【図3】図3は、OsDWF4遺伝子のマッピングの結果を示す。OsDWF4遺伝子は、Tos2091突然変異体の原因遺伝子と同様に、第3染色体短腕側に座乗していることが明らかとなった。
【図4】図4は、OsDWF4遺伝子の塩基配列と推定アミノ酸配列を示す。
【図5】図5は、OsDWF4とアラビドプシスDWF4の塩基配列の比較を示す。
【図6】図6は、OsDWF4とアラビドプシスDWF4の推定アミノ酸配列の比較を示す。
【図7】図7は、定量的RT−PCRにより、OsDWF4発現の組織特異性を調べた結果を示す。
【図8】図8は、OsDWF4遺伝子についてレトロトランスポゾンTos17の挿入による変異誘発を行った結果得られたイネ遺伝子破壊系統(NE7040)では、OsDWF4がコードするシトクロムP450モノオキシゲナーゼに特徴的な6つの保存されたドメインのうちの1つであるドメインCにTos17が挿入されていた。
【図9】図9は、Tos17の挿入による変異誘発によって得られた変異系統のうちの1つであるNE7040の自殖後代について、PCRによる表現型とTos17の挿入との連鎖解析を行った結果を示す。+/+はTos17挿入変異を持たない植物、+/−はTos17挿入変異をヘテロに持つ植物、−/−はTos17挿入変異をホモに持つ植物を示す。直立葉、半矮性の表現型を示した個体はいずれもTos17の挿入変異をホモに持っており、正常な表現型を示した個体には、Tos17の挿入変異をヘテロに持つ個体と挿入変異を持たない個体が約2:1の割合で含まれていた。
【図10】図10は、OsDWF4を過剰発現させるための発現ベクターの構造。
Claims (15)
- 以下の工程を包含する、所望の形質を有する改変単子葉植物を作出する方法:
配列番号1に示す核酸と高度にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸からなる遺伝子を単離する工程;および
該単離された遺伝子の発現を抑制する工程、
ここで、該所望の形質が短桿でかつ直立葉であり、そして、
該単子葉植物がイネであり、そして、
該遺伝子がシトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする、
方法。 - 前記発現の抑制が、アンチセンス核酸、または相同性依存型ジーンサイレンシングによってなされる、請求項1に記載の方法。
- 請求項1に記載される方法によって作出された改変単子葉植物。
- 請求項1に記載される方法によって作出された改変単子葉植物の種子。
- 請求項1に記載される方法によって作出された改変単子葉植物から単離された植物細胞。
- 請求項3に記載される改変単子葉植物の後代。
- 配列番号1に示す配列を有する核酸と高度にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸からなる遺伝子に変異を有する改変単子葉植物を単離する工程を包含する、所望の形質を有する改変単子葉植物を作出する方法であって、
ここで、該所望の形質が短桿でかつ直立葉であり、そして、
該単子葉植物がイネであり、そして、
該遺伝子がシトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする、
方法。 - 前記変異がトランスポゾンの挿入による変異である、請求項7に記載の方法。
- 前記トランスポゾンの挿入によって前記遺伝子が破壊されている、請求項8に記載の方法。
- 前記遺伝子に変異誘発する工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
- 請求項7に記載される方法によって作出された改変単子葉植物。
- 請求項7に記載される方法によって作出された改変単子葉植物の種子。
- 請求項7に記載される方法によって作出された改変単子葉植物から単離された植物細胞。
- 請求項11に記載される改変単子葉植物の後代。
- 前記遺伝子の対立遺伝子の両方が遺伝子破壊されている、請求項14に記載の改変単子葉植物の後代。
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