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JP4013238B2 - 断続重切削ですぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具の製造方法 - Google Patents

断続重切削ですぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、特に鋼などの断続切削を高送りや高切り込みなどの重切削条件で行った場合にすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具(以下、被覆超硬工具という)の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般に、結晶成長が等方性の炭化タングステン(WCで示す)相:85〜95重量%を含有し、残りがCoを主体とする結合相と不可避不純物からなる組成を有する炭化タングステン基超硬合金基体(以下、超硬基体という)の表面に、炭化チタン(以下、TiCで示す)層、窒化チタン(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)層、炭酸化チタン(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化チタン(以下、TiCNOで示す)層のうちの1種の単層または2種以上の複層からなるTi化合物層、あるいは前記Ti化合物層と酸化アルミニウム(以下、Al23で示す)層とで構成された硬質被覆層を4〜15μmの平均層厚で化学蒸着および/またわ物理蒸着してなる被覆超硬工具が知られており、この被覆超硬工具は主に鋼などの連続切削や断続切削に用いられる。
また、一般に上記の被覆超硬工具の硬質被覆層を構成するAl23層として、α型結晶構造をもつものやκ型結晶構造をもつものなどが広く実用に供され、さらに上記TiCN層には、粒状結晶組織をもつものの他に、例えば特開平6−8010号公報や特開平7−328808号公報などに記載される通り、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより縦長成長結晶組織をもつようにしたものも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、近年の切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は、高送りおよび高切り込みなどの重切削条件で行われる傾向にあるが、上記の従来被覆超硬工具においては、特にこれを断続切削を高送りおよび高切り込みなどの重切削条件で行うのに用いると、切刃に欠けが発生し易く、これが原因で比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の従来被覆超硬工具の耐欠損性向上を図るべく研究を行った結果、
上記の従来被覆超硬工具を構成する超硬基体、すなわち結晶成長が等方性のWC相によって構成された超硬基体は、通常、所定の配合組成の混合粉末よりプレス成形された圧粉体を、例えば10-2〜10-6Torrの真空雰囲気中、1300〜1500℃の温度に昇温し、この昇温温度に1〜3時間保持後炉冷の条件で焼結することにより製造されているが、この従来超硬基体の焼結工程での昇温に際して、800〜1200℃に昇温した時点で、まず、その雰囲気を、真空からそれぞれH2とCO2の分圧を1〜20Torrとした脱炭雰囲気とし、この脱炭雰囲気に所定時間保持した後、温度は同じく800〜1200℃に保持したままで、その雰囲気をそれぞれの分圧がH2:1〜20Torr、CH4:1〜20TorrのH2とCH4の混合ガスからなる浸炭雰囲気とし、この浸炭雰囲気に所定時間保持する脱炭・浸炭処理を施す(ただし、前記脱炭・浸炭処理後の焼結温度への昇温、前記焼結温度での保持、および炉冷の雰囲気は、上記の通りの真空雰囲気中で行われる)と、焼結後の超硬基体の表面部には、WCのもつ六方晶結晶構造の[001]面が優先的に成長して偏平化した形状の異方性WC相が存在した表面層が形成されるようになり、このように偏平化したWC相は、等方性(粒状)のWC相に比して結合相との結合界面が増加したものになるから、前記異方性(偏平状)WC相が存在する表面層は靭性の向上したものになり、しかもこの場合前記脱炭・浸炭温度を調整し、基体表面を光学顕微鏡で観察して、前記異方性WC相が前記等方性WC相との合量に占める割合で20〜60面積%存在するようにすると共に、前記脱炭・浸炭時間をそれぞれ10〜30分の範囲で調整して、前記異方性WC相が基体表面から50〜500μmの深さに亘って存在するようにすると、この結果の超硬基体の表面部に形成された前記表面層はきわめて高い靭性をもつようになることから、これに上記の硬質被覆層を形成してなる被覆超硬工具は、これを高靭性が要求される鋼の断続重切削に用いても切刃に欠けの発生なく、切削性能を長期に亘って発揮するという研究結果を得たのである。
【0005】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
(a)WC相:85〜95重量%を含有し、残りがCoを主体とする結合相と不可避不純物からなる組成を有する超硬基体の表面に、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、TiNO層、およびTiCNO層のうちの1種の単層または2種以上の複層からなるTi化合物層、あるいは前記Ti化合物層とAl23層で構成された硬質被覆層を4〜15μmの平均層厚で化学蒸着してなる被覆超硬工具を構成する前記超硬基体の10 −2 〜10 −6 Torrの真空雰囲気中での焼結工程において、
(b)1300〜1500℃の範囲内の所定の焼結温度への昇温に際して、まず、800〜1200℃の範囲内の所定の温度に昇温した時点で、その雰囲気を真空からそれぞれの分圧がH :1〜20Torr、CO :1〜20TorrのH とCO の混合ガスからなる脱炭雰囲気とし、この脱炭雰囲気に所定時間保持した後、温度は同じく800〜1200℃の範囲内の所定の温度に保持したままで、その雰囲気をそれぞれの分圧がH :1〜20Torr、CH :1〜20TorrのH とCH の混合ガスからなる浸炭雰囲気とし、この浸炭雰囲気に所定時間保持する脱炭・浸炭処理を施すことにより、
(c)上記超硬基体の表面部に、基体表面を光学顕微鏡で観察して、WCのもつ六方晶結晶構造の[001]面が優先的に成長して偏平化した形状の異方性WC相がWC相に占める割合で20〜60面積%存在し、残りが上記等方性のWC相からなる組織を示し、かつ前記異方性WC相が表面から50〜500μmの深さに亘って存在する表面靭性層を形成してなる、
断続重切削ですぐれた耐欠損性を発揮する被覆超硬工具の製造方法に特徴を有するものである。
【0006】
なお、この発明の被覆超硬工具において、これを構成する超硬基体の表面部に形成した表面靭性層の基体表面における異方性WC相の割合を、WC相に占める割合で20〜60面積%としたのは、その割合が20面積%未満では基体表面部に所望の靭性を確保することができず、一方その割合が60面積%を越えると、靭性は一段と向上するが、反面熱塑性変形し易く、特に熱発生の著しい乾式断続重切削では切刃に偏摩耗が起り、これが原因で使用寿命に至ることから、その割合を20〜60面積%、望ましくは25〜50%と定めた。
また、上記の表面靭性層の基体表面からの深さを50〜500μmとしたのも同じ理由からで、その深さが50μm未満では基体表面部に所望の靭性を確保することができず、一方その深さが500μmを越えると、切刃が熱塑性変形し易くなって使用寿命に至るものであり、望ましくは100〜300μmとするのがよい。
【0007】
さらに、この発明の被覆超硬工具を構成する超硬基体におけるWC相の割合を、85〜95重量%としたのは、その割合が85重量%未満では相対的に結合相の割合が多くなり過ぎて基体自体の耐摩耗性が急激に低下するようになり、一方その割合が95重量%を越えると、反対に結合相の割合が少なくなり過ぎて強度が低下するようになるという理由によるものである。
また、硬質被覆層の平均層厚を4〜15μmとしたのは、その平均層厚が4μm未満では、所望の耐摩耗性を確保することができず、一方その平均層厚が15μmを越えると、切刃に欠けやチッピングが発生し易くなるという理由からである。
【0008】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の被覆超硬工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、平均粒径:3μmのWC粉末、同1μmのCr32粉末、および同3μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末を表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、この混合粉末をISO規格CNMG120408に則したスローアウエイチップ形状の圧粉体にプレス成形し、これらのの圧粉体を10-3torrの真空雰囲気中、800〜1200℃の範囲内の所定の温度に昇温した時点で、まず、その雰囲気を、真空からH2:10Torr、CO2:10Torrの分圧のH2とCO2の混合ガスからなる脱炭雰囲気とし、この脱炭雰囲気に20分保持した後、温度は同じく800〜1200℃の範囲内の所定の温度に保持したままで、その雰囲気をそれぞれの分圧がH2:10Torr、CH4:10TorrのH2とCH4の混合ガスからなる浸炭雰囲気とし、この浸炭雰囲気にも20分保持する脱炭・浸炭処理を施し、この後雰囲気を10-3torrの真空雰囲気として、1400〜1460℃の範囲内の所定の温度に昇温し、以降前記の真空雰囲気を保持したままで、この昇温温度に1時間保持し、炉冷することにより超硬基体A〜Gをそれぞれ製造した。
さらに、比較の目的で、表2に示される通り、上記の超硬基体A〜Gの製造における昇温過程での上記脱炭・浸炭処理を行わず、焼結温度までの昇温を上記の10-3torrの真空雰囲気中で行う以外は同一の条件で超硬基体a〜gをそれぞれ製造した。
上記の超硬基体A〜Gおよび超硬基体a〜gのそれぞれについて、その表面を光学電子顕微鏡(5000倍)により観察し、WC相の全体割合、並びにWC相に占める異方性WC相および等方性WC相の割合を画像解析装置を用いて測定すると共に、表面部断面を同じく光学電子顕微鏡(2000倍)を用いて観察し、異方性WC相の基体表面からの存在深さ(表面靭性層の深さ)を測定したところ、表1、2に示される結果を示した。
【0009】
ついで、これらの超硬基体を、所定の形状に加工およびホーニング加工した状態で、その表面に、通常の化学蒸着装置を用い、表3に示される条件(表中、l−TiCNは縦長成長結晶組織を有するTiCN層の形成条件を示し、これによって形成されたl−TiCN層は特開平6−8010号公報に記載されるものと同種の組織をもつものであり、またαAl23およびκAl23はそれぞれα型結晶構造およびκ型結晶構造を有するAl23層の形成条件を示すものである)にて、表4、5に示される目標組成および目標層厚(切刃の逃げ面)の硬質被覆層を形成することにより、基体表面部に表面靭性層の存在する本発明被覆超硬工具1〜7および前記表面靭性層の形成がない従来被覆超硬工具1〜7をそれぞれ製造した。
【0010】
つぎに、上記本発明被覆超硬工具1〜7および従来被覆超硬工具1〜7について、
被削材:JIS・SNCM440の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:180m/min.、
切り込み:3mm、
送り:0.15mm/rev.、
切削時間:2分、
の条件での合金鋼の乾式断続高切り込み切削試験、並びに、
被削材:JIS・SCr420Hの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:200m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.35mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件での合金鋼の乾式断続高送り切削試験を行い、いずれの切削試験でも切刃の最大逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
【0011】
【表1】
Figure 0004013238
【0012】
【表2】
Figure 0004013238
【0013】
【表3】
Figure 0004013238
【0014】
【表4】
Figure 0004013238
【0015】
【表5】
Figure 0004013238
【0016】
【表6】
Figure 0004013238
【0017】
【発明の効果】
表1〜6に示される結果から、基体表面部に偏平状(異方性)WC相が存在する表面靭性層を形成してなる本発明被覆超硬工具1〜7は、いずれも前記表面靭性層の形成によってすぐれた耐欠損性を具備するようになることから、特に一段と苛酷な条件である、断続切削を乾式で、かつ高送りおよび高切り込みの重切削条件で行っても切刃に欠けの発生なく、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するのに対して、超硬基体の表面部に前記表面靭性層の形成がない従来被覆超硬工具1〜7においては、いずれも超硬基体の靭性不足が原因で高衝撃の加わる断続重切削では切刃に欠けが発生し、これが原因で比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆超硬工具は、例えば鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削は勿論のこと、特に高衝撃の加わる断続重切削にもすぐれた耐欠損性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (1)

  1. (a)炭化タングステン相:85〜95重量%を含有し、残りがCoを主体とする結合相と不可避不純物からなる組成を有する炭化タングステン基超硬合金基体の表面に、炭化チタン層、窒化チタン層、炭窒化チタン層、炭酸化チタン層、および炭窒酸化チタン層のうちの1種の単層または2種以上の複層からなるTi化合物層、あるいは前記Ti化合物層と酸化アルミニウム層で構成された硬質被覆層を4〜15μmの平均層厚で化学蒸着してなる表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具を構成する前記炭化タングステン基超硬合金基体の10 −2 〜10 −6 Torrの真空雰囲気中での焼結工程において、
    (b)1300〜1500℃の範囲内の所定の焼結温度への昇温に際して、まず、800〜1200℃の範囲内の所定の温度に昇温した時点で、その雰囲気を真空からそれぞれの分圧がH :1〜20Torr、CO :1〜20TorrのH とCO の混合ガスからなる脱炭雰囲気とし、この脱炭雰囲気に所定時間保持した後、温度は同じく800〜1200℃の範囲内の所定の温度に保持したままで、その雰囲気をそれぞれの分圧がH :1〜20Torr、CH :1〜20TorrのH とCH の混合ガスからなる浸炭雰囲気とし、この浸炭雰囲気に所定時間保持する脱炭・浸炭処理を施すことにより、
    (c)上記炭化タングステン基超硬合金基体の表面部に、前記基体表面を光学顕微鏡で観察して、炭化タングステンのもつ六方晶結晶構造の[001]面が優先的に成長して偏平化した形状の異方性炭化タングステン相が炭化タングステン相に占める割合で20〜60面積%存在し、残りが上記等方性の炭化タングステン相からなる組織を示し、かつ前記異方性炭化タングステン相が表面から50〜500μmの深さに亘って存在する表面靭性層を形成すること、
    を特徴とする断続重切削ですぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具の製造方法
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