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JP4004854B2 - 浄水処理方法及びその装置 - Google Patents

浄水処理方法及びその装置 Download PDF

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JP4004854B2 JP2002150433A JP2002150433A JP4004854B2 JP 4004854 B2 JP4004854 B2 JP 4004854B2 JP 2002150433 A JP2002150433 A JP 2002150433A JP 2002150433 A JP2002150433 A JP 2002150433A JP 4004854 B2 JP4004854 B2 JP 4004854B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子凝集剤を使用した好適な浄水処理方法及び装置に関するものであり、より詳しくは高分子凝集剤を使用した場合に起こるろ過閉塞を防止することができ、高分子凝集剤を使用する凝集沈殿工程において優れた凝集処理効果を得ることができる方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、浄水処理においては、懸濁物質を含有する被処理水(以下「原水」ともいう)に硫酸バンドやポリ塩化アルミニウム(PAC)等の無機凝集剤を注入し、懸濁物質を取り込んだ凝集フロックを形成させ、この凝集フロックを沈降分離させることによって、懸濁物質を除去していた。
しかしながら、近年、湖沼や河川の富栄養化が進み藻類が増殖するようになった。これらの藻類は凝集性が悪く、砂ろ過処理にも悪影響を与える。増殖した藻類を凝集させるには多量の無機凝集剤を必要とし、無機凝集剤を多量に添加することにより処理水が酸性になるため、飲料水としては適さなくなる。また無機凝集剤に由来する汚泥の発生量も増加し、この汚泥の処理に費用が増大する問題も生じている。
【0003】
浄水処理において無機凝集剤による凝集フロックの沈降性を改良するために、アニオン系高分子凝集剤を併用することが検討されているが、次のような問題点が指摘されている。
即ち、浄水処理において注入された高分子凝集剤は、生成フロックとともに固液分離され大部分は取り除かれるが、一部が微細フロックとともに処理水側に残存する。この残存した高分子凝集剤が後工程の砂ろ過塔内のろ材に吸着し、ろ過閉塞を起こしてしまう恐れがある。
【0004】
高分子凝集剤による閉塞を防止する手段としては、凝集薬封鎖剤を注入する方法、無機凝集剤注入後のフロックの形成度合を測定し、フロック形成度合に応じて高分子凝集剤の注入率を決定する方法、排水処理においてフロック生成槽内の流動電流を測定し、測定した流動電流に基づいて凝集剤の余剰量あるいは不足量を求め、凝集剤の注入量を制御する方法等がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記方法にも以下のような問題点がある。凝集薬封鎖剤を注入する方法は、処理コストの上昇を招く恐れがある。無機凝集剤注入後のフロックの形成度合を測定し、フロック形成度合に応じて高分子凝集剤の注入率を決定する方法では、懸濁物質と無機凝集剤の結合が良好に行われた微細フロックが形成されたとしても、高分子凝集剤が有効に粗大フロックの凝集に使われなければ、ろ過閉塞の恐れは依然として残るので、無機凝集剤注入後のフロックの形成度合の管理だけでは不十分である。更に、フロック生成槽内の流動電流を測定し、測定した流動電流に基づいて、凝集剤の注入量を制御する方法では、懸濁物質と凝集剤が過不足なく反応し、電気的に中性になるように凝集剤量をコントロールすることを目的としているが、浄水処理においては、電気的に中和となる点が必ずしも良好な処理結果が得られるわけではなく、当該公報には処理水濁度やろ過への影響については何ら示唆されていない。
【0006】
そこで、本発明者らは上述の問題点に鑑み、高分子凝集剤を使用した場合に低濁度時においても優れた濁度除去効果が得られ、かつ高分子凝集剤を使用した場合に起り得るろ過閉塞の問題を解消し、安定的な浄水処理が可能な方法を開発すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成からなる。
(1)被処理水に無機凝集剤を注入して微細なフロックを形成し、続いてアニオン系高分子凝集剤を注入することによりフロックを巨大化し凝集沈殿処理を行い、引き続きろ過処理を行う浄水処理方法において、アニオン系高分子凝集剤を注入してろ過閉塞なく安定した運転ができている状態の巨大化した凝集フロックの流動電流を測定して該電流値を安定値として予め求めた後、アニオン系高分子凝集剤の注入後の巨大フロックの流動電流を測定し、前記安定値からの流動電流値の低下の度合に基づいて、アニオン系高分子凝集剤の注入量が過剰であると判定し、その判定結果に基づいてアニオン系高分子凝集剤の注入量を制御することを特徴とする浄水処理方法。
(2)前記安定値からの流動電流値の低下の度合が安定値の5割低下したときに、アニオン系高分子凝集剤が過剰であると判定し、その判定結果に基づいてアニオン系高分子凝集剤の注入量を制御することを特徴とする前記(1)記載の浄水処理方法。
(3)被処理水に無機凝集剤を注入して微細なフロックを形成し、続いてアニオン系高分子凝集剤を注入することによりフロックを巨大化し凝集沈殿処理を行い、引き続きろ過処理を行う浄水処理方法において、アニオン系高分子凝集剤注入前の微細なフロックの流動電流を測定し、次いで該アニオン系高分子凝集剤の注入後の凝集フロックの流動電流を測定し、前記アニオン系高分子凝集剤注入前の流動電流値に対する前記アニオン系高分子凝集剤注入後の流動電流値の低下度合に基づいて、アニオン系高分子凝集剤の注入量が過剰であると判定し、その判定結果に基づいてアニオン系高分子凝集剤の注入量を制御することを特徴とする浄水処理方法。
【0008】
(4)前記アニオン系高分子凝集剤注入前の流動電流値に対する前記アニオン系高分子凝集剤注入後の流動電流値の低下度合が、注入前の2倍に低下したときに、アニオン系高分子凝集剤の注入量が過剰であると判定し、その判定結果に基づいてアニオン系高分子凝集剤の注入量を制御することを特徴とする前記(3)記載の浄水処理方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明が適用できる浄水処理設備としては、実用化されている通常の設備が対象であり、例えば横流式沈殿設備を有する浄水施設、高速凝集沈殿設備を有する浄水設備が挙げられる。高速凝集沈殿設備としてはスラリー循環型、スラッジ・ブランケット型いずれも適用可能である。
なお、実施の形態を説明するための全図において、同一は機能を有する構成要素は同一符号を用いて示す。
【0011】
図1は本発明の一実施態様を示す図である。図は横流式沈殿設備を有する浄水施設の例である。原水1は、原水導入管2を通って凝集混和槽3に送られる。凝集混和槽3には無機凝集剤4が注入され、ここで急速撹拌されることで原水中の濁質分は無機凝集剤4と反応し微細なフロック(マイクロフロック)となる。
【0012】
本発明で使用される無機凝集剤としては、一般に凝集剤として既に使用されている鉄系又はアルミニウム系無機凝集剤が使用できる。具体的には硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)、塩化第二鉄及びこれらの混合物が挙げられる。これら無機凝集剤の注入量は原水の水質にもよるが、1〜1000mg/リットルの範囲である。
【0013】
凝集混和槽3で生成された微細フロックを含む水6はフロック形成槽7に送られる。フロック形成槽7では高分子凝集剤が注入され、凝集混和槽3よりも緩い緩速攪拌されることで微細フロックが高分子凝集剤により巨大化される。
【0014】
注入する高分子凝集剤としては公知のアニオン系、ノニオン系、カチオン系高分子凝集剤を挙げることができる。アニオン系高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド部分加水分解物、アニオン性モノマーの共重合体、アニオン性モノマーとアクリルアミド等のノニオン性モノマーとの共重合体が挙げられる。アニオン性モノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミドエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−メタクリロイルオキシブタンスルホン酸、及びこれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属塩又はアンモニウム塩が挙げられる。これらアニオン性モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ノニオン性モノマーとしてはアクリルアミド、メタクリルアミド、メタアクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。これらノニオン性モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。共重合体として好ましいものは、アクリルアミド・アクリル酸塩共重合体、アクリルアミド・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体である。また、ノニオン系高分子凝集剤とは、上記のノニオン性モノマーの重合体又は共重合体であるが、好ましくはポリアクリルアミドである。
【0015】
高分子凝集剤の注入量は0.05〜0.5mg/リットルで本発明の目的を達成できるが、最大でも合計で1mg/リットル以下とすることが好ましい。また、使用上の規制値が処理水中の残留アクリルアミドモノマー0.00005mg/リットル以下であることから、製品中のアクリルアミドモノマーは、理論上0.005wt%以下にしておくことが重要である。
【0016】
高分子凝集剤により巨大化されてフロックは、続く沈殿池13で固液分離されることにより大部分は汚泥として回収される。一般に沈殿池13は内部に傾斜板や傾斜管が設けられている。
固液分離された沈殿処理水は、砂ろ過塔15に送られろ材で処理されて浄水16となる。ろ材としては珪砂やアンスラサイトが最も一般的である。前述の通りフロックの大部分は沈殿池13で分離されるが、フロックに捕捉されなかった原水中の濁質分や、沈殿池13で沈降しなかったフロックが、砂ろ過塔15内のろ材でろ過される。無機凝集剤のみで凝集されたフロックは、無機凝集剤自体の粘度はそれほど高くないのでろ材に粘着することはなく、またろ材に粘着しても逆洗で容易にフロックは除去できる。一方、高分子凝集剤で凝集されたフロックは、高分子凝集剤の有する粘度の影響でろ材に粘着してしまい、ろ過閉塞を起こしてしまう。
【0017】
本発明の最も大きな特徴は、高分子凝集剤を使用した場合に発生し得るろ過閉塞の問題を解消するために、高分子凝集剤の注入後の凝集フロックの流動電流を測定し、その測定結果に基づき高分子凝集剤の注入量を制御する点にある。流動電流の測定は流動電流計11を用いて行う。
【0018】
流動電流計11の概略図を図2に示す。シリンダー20内部にモーター22により上下に動くピストン21が備え付けてある。ピストン21はシリンダー20の内壁との間には所定のクリアランスがある。試水入口23から入ったフロックを含む試水は、ピストン21の上下運動によって上述のクリアランス内でせん断力が加えられ、このせん断力により、凝集フロック表面に付いているコロイド粒子は凝集フロックと引き離される。この時に発生する流動電流を、増幅整流回路25で凝集フロック表面の荷電密度に応じた流動電流値として検出することができる。例えばポリ塩化アルミニウム(PAC)で凝集したフロックは、凝集フロック表面に多量の水酸化アルミニウムの凝集物質が付着しているので、正の荷電粒子が多く存在することになる。従って、無機凝集剤で凝集した後の流動電流値は、原水と比較して高くなる(正側になる)。また、無機凝集剤の注入量に比例して流動電流値は高くなる。
【0019】
一方、アニオン系の高分子凝集剤を用いて生成したフロックは、凝集フロックの表面にアニオン系物質である高分子凝集剤が付着しているので、負の荷電が多くなる。このため、流動電流値は無機凝集剤で凝集した後の流動電流値よりは低くなる(負側になる)。従って、高分子凝集剤注入後の凝集フロックの流動電流値を測定すれば、高分子凝集剤の過不足を判定できることになる。流動電流値は高分子凝集剤の注入率に比例して低くなる。また、流動電流値は高分子凝集剤が有するアニオン性の強度に比例して低くなる。つまり、同じ高分子凝集剤注入量であれば、アニオン性の強い高分子凝集剤は流動電流値の低下が大きく、ノニオンやアニオン性の弱い高分子凝集剤は流動電流値の低下は小さい。
【0020】
流動電流による高分子凝集剤の注入量の制御において、最適な管理が可能な流動電流値は原水性状、無機凝集剤の種類及び注入量、高分子凝集剤の種類及び注入量によって変動するので一概には言えないが、高分子凝集剤を注入してろ過閉塞がなく安定した運転ができている状態の流動電流値(安定値)を予め把握しておき、この安定値よりも5割程度流動電流値が低下した場合には、高分子凝集剤が過剰であると判定できる。従って、このような状態で運転を継続した場合には、余剰の高分子凝集剤を含む凝集フロックがろ過池に流出し、急激にろ過閉塞を起こすことになる。この場合には、流動電流値を安定値に近付けるように高分子凝集剤の注入量を低下させる必要がある。
【0021】
また、本発明においては、高分子凝集剤注入前後の流動電流の比較で、高分子凝集剤の注入量を制御することも可能である。この場合も最適な管理が可能な流動電流値は、原水性状、無機凝集剤の種類及び注入量、高分子凝集剤の種類及び注入量によって変動するので一概には言えないが、高分子凝集剤注入前の流動電流値と比較して2倍程度流動電流値が低下した場合には、高分子凝集剤が過剰であると判定できる。
【0022】
一方、原水の濁度が低いときには濁質分が少ないのでフロック生成のための核が少なくなり、フロック相互の衝突回数が減少し、高分子凝集剤を併用したとしても濁度低減の効果が見られない場合がある。更には、フロック生成のための核が少ないことにより、フロック形成に寄与できなかった残留高分子凝集剤が増加し、これもろ過閉塞を起こす原因になると考えられている。
【0023】
本発明のもう一つの最も大きな特徴は、上述のろ過閉塞防止と濁度低減の両方を達成することを目的として、凝集沈殿処理で生成したフロックを凝集沈殿処理前の原水に返送することを特徴とすることにある。
返送されるフロックが、高分子凝集剤の注入後にフロック形成槽で生成したフロックであるか、高分子凝集剤の注入後にフロック形成槽で生成したフロックを、沈殿池で沈降させたもの(以下、沈殿フロックと称す)であることが好ましい。これらのフロックは、すでに高分子凝集剤を表面に保持し凝集能力も残存しているので、フロックを返送しない場合と比較して、フロック相互が衝突してより巨大化したフロックを形成する能力を有する。また、フロック相互の衝突回数が増えるので、巨大化しないで沈殿池で沈殿しないまま、砂ろ過塔まで到達する微細フロックの量も激減し、ろ過継続時間の短縮を防ぐことができる。また、新たに注入する高分子凝集剤の量を低減させる効果が期待できる。
【0024】
なお、沈殿フロックを返送させる場合には、沈殿池で完全に沈殿・濃縮された沈殿フロックの返送は避けた方が良い。完全に沈殿・濃縮した沈殿フロックでは返送する際に目的とする濁質濃度に調整することが困難で、かえって新たに注入する無機凝集剤や高分子凝集剤の量が多くなってしまうことがある。また、濃縮されることで、フロック表面に保持されている高分子凝集剤の有効な部分が全く無くなってしまい、フロック形成能力も無くなってしまう。
【0025】
フロックの返送場所は原水、高分子凝集剤を注入する前のいずれも可能である。フロックは、例えば図3のフロック返送管18aを利用してフロック形成槽7または沈殿池13からそれぞれ原水導入管2や凝集混和槽3に返送することができる。特に、原水濁度が低く濁質分が少ない場合には原水に返送することが有効である。
返送するフロック量は特に限定されないが、凝集混和槽3やフロック形成槽7でのフロック状態、或いは沈殿処理水の濁度をモニタリングすることで最適な条件を設定すれば良い。
【0026】
また、本発明を実施する場合において、返送フロックにカオリン等の粘土質無機微粒子や微細砂を混合すると、フロックがより強固でかつ重量を有するものになるので、除濁効果がより発揮されるので好ましい。これら粘土質無機微粒子や微細砂を混合する場所としては、フロック返送管18a、18bの途中であればどこでも良いが、引抜いたフロックを原水導入管2や凝集混和槽3に返送する直前が好ましい。また、フロック返送管18a、18bではなく原水導入管2や凝集混和槽3に返送する地点に別途、粘土質無機微粒子や微細砂を注入する手段を設けることも可能である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。実験は図1の装置を用いて行った。
【0028】
(実施例1)
なお、実験条件は下記の通りである。
原水流量:100m3/日(湖沼水)
原水濁度:11〜15度
原水pH:7.6〜8.3
無機凝集剤:PAC 40〜100mg/リットル
高分子凝集剤:中アニオン系高分子凝集剤0.1〜0.5mg/リットル
凝集混和槽:有効容積200リットル×2槽
フロック形成槽:有効容積1200リットル×2槽
沈殿池=7000リットル、傾斜板付き
砂ろ過塔:ろ過速度150m/日
ろ層構成:アンスラサイト層高400mm、珪砂層高400mm
【0029】
図1の装置において、無機凝集剤(PAC)を60mg/リットル凝集混和槽に注入し、急速攪拌を行いマイクロフロックを形成させた後、フロック形成槽流入直前に高分子凝集剤を所定量注入して緩速撹拌を行った。流動電流値は凝集混和槽出口と沈殿池流入直後に行った。各高分子凝集剤注入量における流動電流値、処理水濁度及びろ過継続時間を第1表に記載する。
【0030】
高分子凝集剤注入量が0.1mg/リットル及び0.3mg/リットルの場合は、沈殿池流入直後の流動電流値はそれぞれ−18〜−20mV、−20〜−24mVで、高分子凝集剤注入量を増加した方が低い値となった。これらの場合のろ過継続時間はそれぞれ48時間、46時間であり、高分子凝集剤を注入しない場合(48時間)と差は無く、ろ過池の状態は安定していた。また、高分子凝集剤注入量を0.5mg/リットルにした場合には、流動電流値は−33〜−35mVとなり、ろ過継続時間は32時間と著しく短縮され、高分子凝集剤量は過剰であると判断した。
【0031】
以上の結果から明らかなように、流動電流値が安定値よりも5割程度流動電流値が低下した場合には、高分子凝集剤が過剰となりろ過継続時間が短くなった。従って、高分子凝集剤により形成した凝集フロックの流動電流値を測定することで、ろ過継続時間の短縮を未然に防止できることがわかる。
【0032】
【表1】
Figure 0004004854
【0033】
(実施例2)
実験は図3の装置を用いて行った。
なお、実験条件は下記の通りである。
原水流量:100m3/日(湖沼水)
原水濁度:10〜14度
原水pH:7.5〜8.2
無機凝集剤:液体硫酸バンド 40〜100mg/リットル
高分子凝集剤:弱アニオン系高分子凝集剤0.1〜0.5mg/リットル
凝集混和槽:有効容積200リットル×2槽
フロック形成槽:有効容積1200リットル×2槽
沈殿池:7000リットル、傾斜板付き
砂ろ過塔:ろ過速度150m/日
ろ層構成:アンスラサイト層高400mm、珪砂層高400mm
【0034】
図3の装置において、無機凝集剤(液体硫酸バンド)を80mg/リットル凝集混和槽に注入し、急速撹拌を行いマイクロフロックを形成させた後、フロック形成槽流入直前に、高分子凝集剤を0.3mg/リットル注入して緩速撹拌を行った。また、沈殿池流入直後の沈殿フロックを、毎分10リットルの割合で凝集混和槽の2槽目に返送した。処理水濁度及びろ過継続時間を第2表に記載する。
【0035】
実施例3〜4、比較例1〜2
フロックの引抜場所や返送場所或いは返送量を第2表に示すように変更した以外は、実施例2と同様に試験を行った。また、フロックの引抜きを実施しなかった場合(比較例1)、高分子凝集剤を注入しなかった場合(比較例2)の実験も行った。結果を第2表に併記する。
第2表に示す結果から明らかなように、本発明のフロックを返送する方法では沈殿処理水の濁度が低下し、かつろ過継続時間が延長できることがわかる。
【0036】
【表2】
Figure 0004004854
【0037】
実施例5、比較例3
実施例2又は比較例1において、高分子凝集剤注入量を0.1mg/リットルに変更した以外は、同様の実験を繰返した。結果を第3表に示す。
第3表に示す結果から明らかなように、本発明の方法では高分子凝集剤注入量を低下させても沈殿処理水の濁度が低下し、かつろ過継続時間が延長できる(実施例5と比較例1との比較)ことがわかる。
【0038】
【表3】
Figure 0004004854
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、高分子凝集剤の注入後の凝集フロックの流動電流を測定し、その測定結果に基づき高分子凝集剤の注入量を制御することで、浄水処理において問題となる高分子凝集剤に起因するろ過閉塞を未然に防止することができ、砂ろ過塔の寿命を延長することが可能となり、一方、高分子凝集剤を使用していることで、沈殿処理水や浄水の濁度を低下させるなどの多大な効果を奏する。
また、本発明によれば、高分子凝集剤の注入後の凝集沈殿処理で生成したフロックを返送すること、浄水処理において問題となる高分子凝集剤に起因するろ過閉塞を未然に防止することができ、かつ原水の低濁度時の凝集不良の問題も解決できることなど多大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の凝集沈殿処理装置を示す概略説明図である。
【図2】本発明に係る流動電流計の概略説明断面図である。
【図3】本発明の実施例2の凝集沈殿処理装置の概略説明図である。
【符号の説明】
1 原水
2 原水導入管
3 凝集混和槽
4 無機凝集剤
5 無機凝集剤貯留槽
6 微細フロック含有水
7 フロック形成槽
8 高分子凝集剤
9 高分子凝集剤貯留槽
10 フロック引抜管
11 流動電流計
12 巨大フロック含有水
13 沈殿池
14 上澄水
15 砂ろ過塔
16 浄水
17 浄水排出管
18a フロック返送管
18b フロック返送管
20 シリンダー
21 ピストン
22 モーター
23 試水入口
24 試水出口
25 増幅整流回路

Claims (4)

  1. 被処理水に無機凝集剤を注入して微細なフロックを形成し、続いてアニオン系高分子凝集剤を注入することによりフロックを巨大化し凝集沈殿処理を行い、引き続きろ過処理を行う浄水処理方法において、アニオン系高分子凝集剤を注入してろ過閉塞なく安定した運転ができている状態の巨大化した凝集フロックの流動電流を測定して該電流値を安定値として予め求めた後、アニオン系高分子凝集剤の注入後の巨大フロックの流動電流を測定し、前記安定値からの流動電流値の低下の度合に基づいて、アニオン系高分子凝集剤の注入量が過剰であると判定し、その判定結果に基づいてアニオン系高分子凝集剤の注入量を制御することを特徴とする浄水処理方法。
  2. 前記安定値からの流動電流値の低下の度合が安定値の5割低下したときに、アニオン系高分子凝集剤が過剰であると判定し、その判定結果に基づいてアニオン系高分子凝集剤の注入量を制御することを特徴とする請求項1記載の浄水処理方法。
  3. 被処理水に無機凝集剤を注入して微細なフロックを形成し、続いてアニオン系高分子凝集剤を注入することによりフロックを巨大化し凝集沈殿処理を行い、引き続きろ過処理を行う浄水処理方法において、アニオン系高分子凝集剤注入前の微細なフロックの流動電流を測定し、次いで該アニオン系高分子凝集剤の注入後の凝集フロックの流動電流を測定し、前記アニオン系高分子凝集剤注入前の流動電流値に対する前記アニオン系高分子凝集剤注入後の流動電流値の低下度合に基づいて、アニオン系高分子凝集剤の注入量が過剰であると判定し、その判定結果に基づいてアニオン系高分子凝集剤の注入量を制御することを特徴とする浄水処理方法。
  4. 前記アニオン系高分子凝集剤注入前の流動電流値に対する前記アニオン系高分子凝集剤注入後の流動電流値の低下度合が、注入前の2倍に低下したときに、アニオン系高分子凝集剤の注入量が過剰であると判定し、その判定結果に基づいてアニオン系高分子凝集剤の注入量を制御することを特徴とする請求項3記載の浄水処理方法。
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