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JP2018153729A - 水処理剤、水処理方法及び水処理装置 - Google Patents

水処理剤、水処理方法及び水処理装置 Download PDF

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JP2018153729A JP2017051044A JP2017051044A JP2018153729A JP 2018153729 A JP2018153729 A JP 2018153729A JP 2017051044 A JP2017051044 A JP 2017051044A JP 2017051044 A JP2017051044 A JP 2017051044A JP 2018153729 A JP2018153729 A JP 2018153729A
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Abstract

【課題】濁度除去効果を高くし、かつ、ろ過閉塞の問題を解消し、安定的な浄水処理を可能にする水処理剤、方法及び装置を提供する。【解決手段】本発明の水処理剤はポリカルボン酸系重合体を含有し、1mol/L塩化ナトリウム溶液に溶解した場合の0.1質量%塩粘度が2〜5mPa・sであり、25g/L塩化ナトリウム溶液に溶解した場合の0.1質量%溶液粘度が6mPa・s以下であり、かつ、アニオン当量が4.5meq/g以上である。このような水処理剤は、濁度除去効果が高い上、無機凝集剤のみを用いた場合と同じかそれよりもろ抗上昇が抑制されるので、安定的な浄水処理が可能になる。【選択図】図1

Description

本発明は、水処理剤及びそれを用いた水処理方法及び水処理装置に関するものであり、より詳しくは水処理剤を使用した場合に起こるろ過閉塞を防止することができ、水処理剤を使用する凝集沈殿工程において優れた凝集処理効果を得ることができる水処理剤と、それを用いた浄水処理方法及び浄水処理装置に関するものである。
従来より、浄水処理においては、懸濁物質を含有する被処理水(以下「原水」ともいう)に硫酸バンドやポリ塩化アルミニウム(PAC)等の無機凝集剤を注入し、懸濁物質を取り込んだ凝集フロックを形成させ、この凝集フロックを沈降分離させることによって、懸濁物質を除去していた。
しかしながら、近年、湖沼や河川の富栄養化が進み藻類が増殖するようになった。これらの藻類は凝集性が悪く、砂ろ過処理にも悪影響を与える。増殖した藻類を凝集させるには多量の無機凝集剤を必要とし、無機凝集剤を多量に注入することにより処理水が酸性になるため、アルカリ剤の添加が必要になる。また無機凝集剤に由来する汚泥の発生量も増加し、この汚泥の処理に費用が増大する問題も生じている。
浄水処理において無機凝集剤による凝集フロックの沈降性を改良するために、アニオン系高分子凝集剤を併用することが検討されているが、次のような問題点が指摘されている。即ち、浄水処理において注入された高分子凝集剤は、生成フロックとともに固液分離され大部分は取り除かれるが、一部が微細フロックとともに処理水側に残存する。この残存した高分子凝集剤が後工程の砂ろ過池のろ過砂に吸着したり、ろ過砂層上部で二次凝集することで、ろ過閉塞を起こしてしまう恐れがある。
高分子凝集剤による閉塞を防止する手段としては、凝集薬封鎖剤を注入する方法、フロック形成槽内の流動電流を測定し、測定した流動電流に基づいて凝集剤の余剰量あるいは不足量を求め、凝集剤の注入量を制御する方法等がある。
特開2003−340208号公報 特開2007−61718号公報
しかしながら、上記方法にも以下のような問題点がある。凝集薬封鎖剤を注入する方法は、処理コストの上昇を招く恐れがある。フロック形成槽内の流動電流を測定し、測定した流動電流に基づいて、凝集剤の注入量を制御する方法では、懸濁物質と凝集剤が過不足なく反応し、電気的に中性になるように凝集剤量をコントロールすることを目的としているが、浄水処理においては、電気的に中和となる点が必ずしも良好な処理結果が得られるわけではなく、特許文献1公報には処理水濁度やろ過への影響については何ら示唆されていない。
そこで、本発明者らは上述の問題点に鑑み、高分子凝集剤について種々検討した結果、特定の高分子凝集剤を使用した場合に低濁度時においても優れた濁度除去効果が得られ、かつ高分子凝集剤を使用した場合に起り得るろ過閉塞の問題を解消し、安定的な浄水処理が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成とすることができる。
(1)本発明の水処理剤は高分子凝集剤としてポリカルボン酸系重合体を含有するものであって、水処理剤全体で次の特性(a)〜(c)を全て充足する。(a)1mol/L塩化ナトリウム溶液に溶解した場合の0.1質量%塩粘度が2mPa・s〜5mPa・s、(b)25g/L塩化ナトリウム溶液に溶解した場合の0.1質量%溶液粘度が6mPa・s以下、(c)アニオン当量が4.5meq/g以上。
(2)ポリカルボン酸系重合体は特に限定されないが、ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩を含むことが好ましく、より好ましくはポリ(メタ)アクリル酸又はその塩を主成分とし、特に好ましくはポリ(メタ)アクリル酸とポリ(メタ)アクリル酸塩のいずれか一方又は両方からなるものを用いる。
(3)本発明は水処理剤に限定されず、水処理方法にも関するものであって、例えば、被処理水に無機凝集剤を注入した後、上記水処理剤を注入する工程を有する水処理方法である。
(4)好ましくは、無機凝集剤を被処理水1L当たり10mg〜200mg注入し、水処理剤を被処理水1L当たり0.05mg〜20mg注入する。
(5)水処理剤を注入するタイミングは特に限定されないが、好ましくは、無機凝集剤の注入により凝集したフロックの径が0.1mm以上となった後に水処理剤の注入を開始する。
(6)より好ましい水処理方法では、水処理剤の注入により成長したフロックを、当該水処理剤を注入する前の前記被処理水に返送する。
(7)本発明は更に水処理装置にも関するものであって、この水処理装置は、凝集混和部と、薬剤供給手段と、フロック形成部と、沈殿部と、ろ過部とを有する。凝集混和部には被処理水を導入し、無機凝集剤用の薬剤供給手段は凝集混和部に無機凝集剤を注入し、フロック形成部には無機凝集剤が注入された被処理水が導入され、沈殿部ではフロック形成部で形成されたフロックが沈降分離し、ろ過部には沈澱部から上澄水が導入される。そして、水処理剤用の薬剤供給手段は、凝集混和部、フロック形成部、凝集混和部とフロック形成部の間のいずれか一カ所以上で水処理剤を被処理水に注入する。なお、凝集混和部の前段に供給源から被処理水を導入するための着水部を有するものであってもよい。
(8)好ましい水処理装置では、無機凝集剤用の薬剤供給手段は、無機凝集剤を被処理水1リットル当たり10〜mg200mg注入するよう設定され、水処理剤用の薬剤供給手段は、当該水処理剤を被処理水1リットル当たり0.05mg〜20mg注入するよう設定される。
(9)より好ましい水処理装置は返送手段を有し、その返送手段が、水処理剤を注入後の被処理水と、当該被処理水から分離したフロック(粗大フロック、沈降分離フロック)の一方又は両方を、水処理剤の注入箇所よりも上流側の返送場所に返送する。返送場所は1か所でも複数箇所でもよいが、水処理剤の注入箇所が複数箇所に及ぶ場合は、最も上流側の水処理剤注入箇所と同じ箇所か、それよりも更に上流側、例えば着水部を返送場所とすることが好ましい。
本発明によれば、浄水処理装置の連続運転可能時間が長くなる上、濁度の低い浄水が得られる。
本発明による水処理方法のフロー図である。 本発明の浄水処理装置の一例を示す模式図である。 実施例で用いた設備を説明する図である。 本発明の浄水処理装置を高速凝集沈澱装置とした場合の一例を示す模式図である。 本発明の浄水処理装置を超高速凝集沈澱装置とした場合の一例を示す模式図である。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は特定の具体例に限定されるものではない。
図1は浄水処理の一例を示すフロー図であり、被処理水に無機凝集剤を添加して凝集フロックを形成した後、本発明の水処理剤を添加して凝集フロックを成長させる。被処理水は最終的にろ過され、処理水となる。先ず、無機凝集剤と、本発明の水処理剤について以下に説明する。
[無機凝集剤]
本発明に用いる無機凝集剤は特に限定されず、浄水処理に通常使用される無機凝集剤を使用することができる。具体的には、鉄系凝集剤とアルミニウム系凝集剤のいずれか一方又は両方を使用可能であり、より具体的には、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)、塩化第二鉄及びこれらの混合物からなる群より選択されるいずれか1種以上を用いることができる。
[水処理剤(高分子凝集剤)]
本発明の水処理剤はポリカルボン酸系重合体を含むものであって、好ましくはポリカルボン酸系重合体を主成分(50質量%)とするが、ポリカルボン酸系重合体の含有量は70質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、実質的にポリカルボン酸系重合体からなる水処理剤が最も好ましい。
ポリカルボン酸系重合体は、天然物、合成品のいずれも用いることができる。例えば、合成品の場合は、カルボン酸とカルボン酸塩の少なくとも一方を用いて生成した重合体の他、カルボン酸又はその塩以外の他のモノマーで重合体を生成後、その重合体の少なくとも一部を加水分解などの化学変性でカルボキシル化したものも含む。
すなわち、ポリカルボン酸系重合体は、カルボン酸とカルボン酸塩の少なくとも一方を構造単位として有する重合体であれば特に限定されず、ホモポリマーでもよいし、コポリマーでもよい。以下、カルボン酸又はその塩をカルボン酸(塩)と略記し、他の化合物についても塩を使用可能な場合は同様に略記する。
ポリカルボン酸系重合体の原料となるカルボン酸(塩)は特に限定されず、不飽和カルボン酸(塩)、飽和カルボン酸(塩)の一方又は両方を用いることができるが、例えば、(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)、イタコン酸(塩)、クロトン酸(塩)、ビニル安息香酸(塩)などの不飽和カルボン酸(塩)から選択される1種以上を用いることができる。
最も好ましいカルボン酸(塩)は(メタ)アクリル酸(塩)、すなわち、アクリル酸(塩)とメタクリル酸(塩)から選択される。塩としてはナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩の他、アンモニウム塩も用いることができるが、アルカリ金属塩、特にナトリウムが好ましい。
カルボン酸(塩)と、カルボン酸(塩)以外のコモノマーを共重合させてポリカルボン酸系(共)重合体を生成する場合、コモノマーの種類は特に限定されないが、例えば、ビニルスルホン酸(塩)などの1種以上のアニオン性モノマー:(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリレート(塩)又はこれらの誘導体から選択される1種以上のノニオン性モノマー:窒素含有(メタ)アクリレート(塩)、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物(塩)、アミンイミド基含有化合物(塩)から選択される1種以上のカチオン性モノマーなどを用いることができる。
上記のようなコモノマーは1種以上を組み合わせて使用することが可能であり、その量も特に限定されない。しかし、後述するように処理剤全体のアニオン当量を高くするためには、カチオン性モノマーの使用量はモノマー原料全体の5mol%未満にすべきであり、好ましくはカチオン性モノマーを使用しない。また、ノニオン性モノマーを用いる場合も、アニオン当量が後述する最適値になるよう、その使用量を制限する。更に、アニオン性モノマーのみを用いることもできる。
ノニオン性モノマーのうち、(メタ)アクリルアミドのように毒性があるものは、その使用量をモノマー原料全体の10mol%以下とすることが好ましく、より好ましくは5mol%以下とする。また、(メタ)アクリルアミドを使用せずにカルボン酸系重合体を製造しても、本発明の処理剤の浄水能力への影響は少ない。なお、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミドとメタクリアミドの両方を含む概念である。
上記のようにモノマーを重合させた合成品とは別に、または合成品と共に天然物(抽出物、化学変性品を含む)を用いる場合も、その種類は特に限定されない。天然物由来のポリカルボン酸系重合体としては、例えば、アルギン酸(塩)、カルボキシメチルセルロース(塩)、ポリグルタミン酸(塩)、ペクチン(塩)などから1種以上を選択することができる。
このように、ポリカルボン酸系重合体としては、合成品、天然物、コポリマー、ホモポリマー、化学変性品など多様な種類を1種以上選択して使用することができるが、安全性を考慮すると、食品添加物としても使用できるポリカルボン酸系重合体、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)、アルギン酸(塩)、カルボキシメチルセルロース(塩)、ポリグルタミン酸(塩)からなる群より1種以上が選択される。
これらの中でも、凝集性能が高いポリ(メタ)アクリル酸(塩)が最も好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)と1種以上の他の好適なポリカルボン酸系重合体を組み合わせて使用することもできるが、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)がポリカルボン酸系共重合体全体に占める割合を50質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、実質的にポリ(メタ)アクリル酸(塩)のみをポリカルボン酸系共重合体として使用することもできる。
ポリ(メタ)アクリル酸(塩)は特に限定されず、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸カリウム、ポリメタクリル酸アンモニウムからなる群より選択されるいずれか1種以上を用いることが可能であるが、特に好ましくはポリアクリル酸ナトリウムである。
上記のようなポリカルボン酸系重合体以外の水処理剤成分は特に限定されず、1種以上の他の高分子凝集剤、1種以上の添加剤を添加することも可能である。他の高分子凝集剤の具体例は、ポリ(メタ)アクリルアミド、アミン縮合系、DADMAC(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、メラミン酸コロイド、スルホン酸系、ポリ(メタ)アクリルエステル系、ジシアンジアミド系などがある。しかし、より好ましくは、ポリカルボン酸系重合体以外の高分子凝集剤は使用しない。
このように、本発明の水処理剤は、ポリカルボン酸系重合体を必須として含むのであれば、1種または2種以上のポリカルボン酸系重合体のみからなる場合、ポリカルボン酸系重合体以外の物質(他の高分子凝集剤、添加剤など)をも含む場合などが考えられるが、いずれの場合も水処理剤全体では、0.1質量%塩粘度が2mPa・s〜5mPa・s、0.1質量%溶液粘度が6mPa・s以下、かつ、アニオン当量が4.5meq/g以上になるように、ポリカルボン酸系重合体の種類及び量、並びにポリカルボン酸系重合体以外の物質の種類及び量を調整する。
ここで、0.1質量%塩粘度とは、塩化ナトリウム1mol(約58.44g)を、1Lの水に溶解した塩化ナトリウム水溶液(1mol/L)に、水処理剤をその固形分濃度が0.1質量%になるよう溶解して試料を作成し、この試料をB型粘度計にて25℃の条件で測定した値であり、単位はmPa・sである。
上記の0.1質量%塩粘度は凝集フロックの凝集性の指標となるもので、0.1質量%塩粘度が2mPa・s未満では、凝集フロックがさほど大きくならず沈降性の改善が望めない。他方、0.1質量%塩粘度が5mPa・sを超えると水処理剤の拡散性が低下するので、フロック形成槽で十分に拡散させるためには撹拌速度を上げる必要があり、この攪拌速度の上昇がフロック破壊の原因になる。
アニオン当量は以下の測定法で求めることができる値であって、単位はmeq/gである。水処理剤1g(固形分)を水1Lに溶解した水溶液(1g/L)を調整し、N/200メチルグリコールキトサン溶液を5ml添加し、攪拌後、トルイジンブルー指示薬を2〜3滴添加し、PVSK溶液(N/400ポリビニル硫酸カリウム溶液)で滴定し、変色して10秒以上保持する時点を終点とする。同上の操作で試料を添加せずにブランク試験を行い、下記式によりアニオン当量Avを算出する。
アニオン当量(Av)[meq/g] =
(ブランクの滴定量[ml]−サンプルの滴定量[ml])×1/2×PVSK溶液の力価
なお、アニオン性の高分子重合体は負にコロイド荷電しており、コロイド当量値にマイナスの符号を付したコロイド荷電量として表記する方法も用いられてはいるが、ここでは、非負数のアニオン当量として表記する。すなわち、アニオン当量が大きいほど高(強)アニオンであり、アニオン当量が小さいほど低(弱)アニオン、すなわちノニオン性に近づくことになる(例:アニオン当量0〜0.7はノニオン性)。
本発明の水処理剤はアニオン当量が4.5以上であり、好ましいアニオン当量は4.5〜11.0であり、特に好ましいアニオン当量は9.0以上である。アニオン当量がこの範囲を超えると凝集フロックが大きく成長せず処理水の濁度が高くなる傾向となる。
0.1質量%溶液粘度とは、塩化ナトリウムの量を1molから25gに変更して塩化ナトリウム水溶液(25g/L)を調整した以外は、上記0.1質量%塩粘度と同じ方法で測定した粘度であり、単位はmPa・sである。
前述の0.1質量%塩粘度やアニオン当量は、従来より高分子凝集剤の凝集性能の評価に利用される場合があったが、これらの指標は浄水処理工程におけるろ過装置(ろ過池)のろ過抵抗との関連で論じられることはなかった。本願発明者らが鋭意検討した結果、高分子凝集剤が使用されたときのろ過抵抗への影響度は、25g/Lの塩化ナトリウムで測定した0.1質量%溶液粘度で評価することが最適であることを見出した。
この0.1質量%溶液粘度は、凝集沈殿砂ろ過法などにより浄水処理を行う際の砂ろ過池のろ過抵抗の指標となるものである。一般に、ろ過開始から時間の経過により砂ろ過池のろ抗(ろ過抵抗)が上昇するが、0.1質量%溶液粘度が6mPa・s以下の水処理剤を使用した場合には、このろ抗の上昇率が水処理剤を使用しない場合と同程度ですむ。これに対し、水処理剤の0.1質量%溶液粘度が6mPa・sを超えると、砂ろ過池のろ抗上昇率が速くなり、ろ過障害を招く要因となる。
このように、本発明では、水処理剤の0.1質量%塩粘度及びアニオン当量を好適範囲にすることでフロック形成性を向上し、かつ、水処理剤の0.1質量%溶液粘度を好適範囲とすることでろ過障害の抑制をも可能にする。
次に、水処理剤が用いられる浄水処理装置と、水処理剤を用いた浄水処理方法について具体的に説明する。
[浄水処理装置]
本発明が適用できる浄水処理設備(浄水処理装置)は特に限定されず、実用化されている通常の設備を全て採用することが可能であり、例えば横流式沈殿設備を有する浄水施設、高速凝集沈殿装置を有する浄水設備が挙げられる。
高速凝集沈殿装置としてはスラリー循環型(図4に一例を示す)、スラッジ・ブランケット型いずれも適用可能である。また、マイクロサンドのような、通常の凝集フロックよりも比重が大きい沈降促進剤を併用する超高速凝集沈殿装置(図5に一例を示す)の適用も可能である。ただし、いずれの場合も、本発明の水処理剤は、ろ過装置(ろ過池)を有する浄水処理装置に特に適している。
以下に、横流式沈殿設備を有する浄水施設を例として具体的に説明する。図2は浄水処理装置の一例を示しており、この浄水処理装置15は、被処理水1を導入する着水井(着水部)16と、懸濁物を凝集する凝集処理手段20と、凝集フロックを分離除去する固液分離手段30と、分離したフロックの汚泥を濃縮・脱水する汚泥処理手段40と、薬剤(無機凝集剤12、水処理剤13、塩素剤14)を供給する薬剤供給手段50とを有し、固液分離手段30内に、または、固液分離手段30とは別にろ過池32などのろ過装置を設置する。次に、各手段20、30、40、50の具体的構造を説明する。
凝集処理手段20は、凝集混和池(凝集混和部)21とフロック形成池(フロック形成部)22とを有している。凝集混和池21とフロック形成池22は1台ずつ設置してもよいし、いずれか一方又は両方を複数台設置してもよい。これらの池21、22を複数台設置する場合は、同じ種類の池21、22を直列又は並列、より好ましくは直列に接続し、被処理水が複数の池を通過して、次の処理工程に送られるように設計する。
凝集混和池21は着水井16の下流側に設置され、導入された被処理水1には薬剤供給手段50から無機凝集剤12が直接又は間接的に注入される。
例えば、無機凝集剤の薬剤供給手段50は、1台又は複数台の凝集混和池21と、凝集混和池21よりも上流側の装置(着水井16、配管)のうち、いずれか1台以上に接続されており、無機凝集剤は、被処理水とは別に凝集混和池21に直接注入されるか、被処理水と一緒に上流側の装置から凝集混和池21に間接的に注入される。
凝集混和池21には、攪拌翼、攪拌ポンプなどの攪拌手段が設置されている。この攪拌手段は、所定の撹拌エネルギーを付与する撹拌速度(回転数)が設定され、無機凝集剤が注入された被処理水を急速撹拌する。撹拌エネルギーの指標は特に限定されないが、その一例はG値(単位時間単位体積あたりの仕事量Pから被処理水の粘性係数μを除した値の平方根、日本水道協会水道施設設計指針2000、P188より)である。
急速撹拌の結果、被処理水中の濁質が凝集して微細フロック(マイクロフロック)として成長し、微細フロックを含む被処理水1が下流側に設置されたフロック形成池22に導入される。
このフロックの凝集状態は、目視で観察するほか、浄水処理装置15に測定手段70を設けてもよい。いずれの場合も、観察(測定)したフロック成長度を、本発明の水処理剤を注入するタイミングの判断に利用可能である。
上記水処理剤用の薬剤供給手段50は、無機凝集剤12の導入部位よりも下流側、すなわち、凝集混和池21と、フロック形成池22と、凝集混和池21とフロック形成池22との間の装置(配管等)のいずれか1台以上に接続されており、水処理剤は、被処理水1とは別にフロック形成池22に直接注入されるか、あるいは被処理水1と一緒に上流側の装置からフロック形成池22に間接的に注入される。
凝集混和池21と同様に、フロック形成池22には、攪拌羽、攪拌ポンプなどの攪拌手段が設置されている。この撹拌手段は、凝集混和池21の撹拌手段よりも低攪拌エネルギー(例えば、G値10秒−1〜80秒−1)を付与するように撹拌速度が設定され、上述の水処理剤が注入された被処理水を緩速撹拌し、微細フロックを粗大化させる。
固液分離手段30は、沈殿池(沈殿部)31とろ過池(ろ過部)32の何れか一方あるいは両方を有している。粗大フロック分離のためには、フロック形成池22とろ過池32との間には沈殿手段(沈殿池31)を設置することが好ましい。
沈殿池31の構造は特に限定されないが、一般的にその内部には、傾斜板又は傾斜管が設けられており、フロック形成池22からの被処理水は、この沈殿池31で粗大フロックを主に含む沈殿物(汚泥)と、粗大フロックが分離された液相とに分離される。
この分離の後又は分離の前に、粗大フロックの一部又は全部を水処理剤の注入箇所よりも上流側へ返送することも可能である。具体的には、フロック形成池22と、沈殿池31と、それらの間の配管のうち1以上にフロック返送手段60を接続し、分離した凝集沈殿汚泥3と粗大フロックのいずれか一方又は両方を含む被処理水を、凝集混和池21と、それよりも上流側の装置(着水井16、配管)のうち、いずれか一ヶ所以上の返送場所に返送してもよい。最も好ましい返送場所は着水井16である。このフロック返送手段60は特に限定されないが、一般にフロックを返送する返送管を有し、必要であれば送水ポンプ、切替バルブ、貯蔵タンク等の他の部材をも有する。
他方、粗大フロックを分離後の液相(沈殿上澄水)は、沈殿池31からろ過池32に送られ、ろ過池32を通過する間に過剰な高分子凝集剤や残留フロック等の残留汚染物質が除去され、更に、消毒剤として塩素剤14が薬剤供給手段50を介して添加され処理水2となる。この処理水2は浄水として使用される。ろ過池32はろ過材を有しており、例えばろ過材は粒状、繊維状、又は膜状であって、その種類や形状は特に限定されない。
好ましいろ過材は粒子状であって、例えば、ろ過砂(珪砂)(有効径0.35〜1.0mm、均等係数1.7以下、比重2.57〜2.67)、アンスラサイト(有効径0.7〜4.0mm、均等係数1.4以下、比重1.4〜1.6)、ガーネット(有効径約0.3mm、均等係数1.5以下、比重3.8〜4.1)、マンガン砂(有効径0.35〜0.60mm、均等係数1.5以下、比重2.58〜2.65)、セラミック(有効径0.3〜2.0mm、比重1.0〜1.2)のうち、1種以上を用いることができるが、上水道用途の場合は、珪砂とアンスラサイトのいずれか一方又は両方を含むものが最も好ましく、これらのろ過材に他のろ過材を更に組み合わせることも可能である。ろ過材は単層又は多層構造とし、これらろ過材とフィルターとを組み合わせることも可能である。
汚泥処理手段40は、排水池41、排泥池42、濃縮池43および脱水装置44を有しており、凝集処理手段20や固液分離手段30から排出される汚泥、排水などを処理する。例えば、ろ過池32には沈殿上澄水に残留する微細な凝集フロックや過剰な高分子凝集剤のような残留汚染物質が捕捉されるため、定期的にろ材を洗浄する必要がある。この洗浄で発生するろ過洗浄排水4は、排水池41に導入され、排水池上澄水5と汚泥スラリー6に沈降分離され、排水池上澄水5は着水井16へ、汚泥スラリー6は排泥池42へ移送される。なお、ろ過洗浄排水4は着水井16に移送してそのまま再利用することもできる。
排泥池42は排水池41の下流側に設置されており、排水池41から汚泥スラリー6が、沈殿池31から凝集沈殿汚泥3が導入される。排泥池42には撹拌翼のような混合装置が設置されており、導入された汚泥スラリー6および凝集沈殿汚泥3は均質に混合され、浄水汚泥7として濃縮池43に移送される。
浄水汚泥7は濃縮池43でさらに濃縮されて濃縮池上澄水8と濃縮汚泥9に沈降分離される。濃縮汚泥9は濃縮池43の下流側に設置された汚泥脱水装置44に移送され、脱水離脱水10と脱水ケーキ11に分離され、脱水ケーキ11は場外に搬出される。一方、濃縮池上澄水8と脱水離脱水10は着水井16に返送して再利用することもできる。
浄水処理装置15は上記構成に限定されず、他の装置も適宜組み合わせて使用することも可能であり、例えば、ろ過池32の上流側あるいは下流側に、オゾン接触池と粒状活性炭吸着池の組合せによる吸着設備を設置してもよい。
横流式沈殿設備以外の浄水処理装置として、図4に一例を示したスラリー循環型の高速凝集沈殿装置80では、不図示の薬剤供給手段により水処理剤と無機凝集剤のような薬品類が供給され、薬品類を含む母液と被処理水1(原水)とを第1反応室81で撹拌手段87を用いて撹拌混合し、混合液を第2反応室82を経て分離室85へ導く。フロックが分離した上澄水は分離室85の上部から引き出され、フロックは循環流に誘導されて下降し、第1反応室81へ戻る。
この装置80では、水処理剤は無機凝集剤の後であれば、第1、第2反応室81、82又はその他装置のいずれに添加してもよいが、無機凝集剤の注入箇所又はその下流側が凝集混和部となり、水処理剤の注入箇所又はその下流側がフロック形成部となり、分離室85が沈殿部となる。ろ過部は、この設備80の内部又は外部に設置可能であり、分離室85の上澄水はろ過部を通過した後に処理水となる。
他方、図5に一例を示した超高速凝集沈殿装置90では、被処理水1は急速撹拌槽91(凝集混和部)に導入され、薬剤供給手段により供給された無機凝集剤と攪拌混合され、注入撹拌槽92で薬剤供給手段により供給された水処理剤、およびマイクロサンドなどの沈降促進剤と攪拌混合され、フロック形成槽93(フロック形成部)で粗大フロックが形成され、沈殿槽94(沈殿部)で粗大フロックが分離した後、上澄水はこの装置90の内部又は外部のろ過部でろ過され、処理水となる。
いずれの態様でも、ろ過部(ろ過池32)は浄水処理装置15、80、90の下流側に位置しており、下流側に吸着設備などの最終処理装置を設置した場合を除き、このろ過部を通過した水が最終的に処理水2(浄水)となるが、前述のように、従来の水処理剤(高分子凝集剤)を使用した浄水処理技術では、ろ過材の閉塞障害によるろ抗上昇の問題があった。本発明の水処理剤13、浄水処理装置15、80、90並びに浄水処理方法ではこの問題が劇的に改善された。
次に、図2の浄水処理装置15を用いた場合の、本発明の浄水処理方法を具体的に説明する。
[浄水処理方法]
本発明で処理する被処理水1は特に限定されず、工場排水、家庭排水、海水などの処理も可能ではあるが、特に適しているのは河川水、湖沼水、貯水地水、雨水、伏流水、地下水、井水である。これらの被処理水1(原水)を水源から直接、または着水井16や図示していない生物処理設備のような前処理部を介して凝集混和池21に供給する。
必要であれば被処理水1の水質をジャーテストなどで予め調べ、水質に合わせて無機凝集剤12の注入量を予め設定しておき、被処理水1リットルあたり5〜200mg、好ましくは10〜200mg、より好ましくは10〜100mgの添加量で無機凝集剤12を注入する。なお、上記添加量は、無機凝集剤が硫酸アルミニウムや塩化第二鉄の場合は固形分の質量であり、無機凝集剤がPAC(酸化アルミニウムAl換算10質量%のポリ塩化アルミニウム溶液)の場合は、その液体質量である。無機凝集剤12が注入された被処理水1を急速撹拌し、被処理水1中の濁質分を凝集させる。
本発明の水処理剤を注入する時期(タイミング)を決定するため、微細フロックの成長度を定期的又は連続して測定する。フロック成長度は、測定手段70により機械的に、あるいは作業者が目視(肉眼、顕微鏡)により測定可能であり、また、フロック成長度としては、フロック径、被処理水濁度など多様な指標を採用することが可能であるが、好ましくはフロック径を測定する。
一般に、作業者が肉眼で認識可能なフロック径(直径)が0.1mm以上と言われており、フロック径(好ましくは平均粒径)が0.1mm以上、好ましくは1mm〜2mmの範囲にある時点を注入可能のタイミングと判断し、水処理剤13の注入を開始する。
水処理剤13の注入量は、原水の水質により適宜変更可能ではあるが、好ましくは、無機凝集剤注入後の被処理水1リットル当たり0.05mg〜20mg(固形分)の範囲内で設定する。
この水処理剤13が注入された被処理水1を緩速攪拌してフロックを成長させ、その一部又は全部を沈殿池31で固液分離し、分離された液相がろ過池32を通る間に、微小な残留フロックのような残留汚染物質が捕捉除去される。
この残留フロックの表面には水処理剤13が付着している。アクリルアミド系高分子凝集剤(非カルボン酸系)のような従来の高分子凝集剤のみを水処理剤として用いた場合は、ろ過閉塞によりろ過池32のろ抗が急激に上昇することがあった。本発明の水処理剤13で処理した場合には、このろ過閉塞が起こり難く、仮にろ過閉塞が起こっても通常の逆洗処理により容易に回復させることができる。
なお、ろ過閉塞は、高分子凝集剤の種類だけではなく、他の要因でも起こりうる。例えば、原水の濁度が低く、フロックの核となる濁質分が少なすぎる場合は、フロックが十分に成長されないため、フロック成長に寄与できない残留高分子凝集剤が増加する。このような場合は、高分子凝集剤を無機凝集剤と併用しても濁度低減の効果が見られない上、残留高分子凝集剤や遊離フロックの増加によりろ過閉塞が起こりやすくなる。
従って、本発明の他の実施形態では、上記水処理剤13の使用に加え、フロック返送手段60を使用して、フロック形成池22と、沈殿池31と、その他装置(フロック形成池22と沈殿池31の間の装置、配管など)のいずれか一ヶ所以上から、フロックを上流側の装置へ返送することが好ましい。なお、返送するフロックとは、沈降分離フロック18の他、粗大フロック17を含む被処理水(すなわち、水処理剤注入後の被処理水)をも含む概念である。
具体的には、原水の濁度、無機凝集剤注入後のフロック成長度、前記の水処理剤注入後のフロック成長度のうち、いずれか一つ以上を測定し、測定値が予め設定した値に達しないときは、測定値に応じた量のフロック17、18を上流側に返送し、無機凝集剤12注入前の被処理水と混合する。
フロックの返送場所は、水処理剤の注入箇所より上流側、すなわち、凝集混和池21またはそれよりも上流側の装置(着水井16、配管)であれば特に限定されず、これら返送場所のうち、1又は2箇所以上に返送することが可能であるが、測定値に応じて返送場所の切り替えも可能であり、具体的には、原水濁度が低い場合は、凝集混和池21よりも上流側で被処理水(原水)に返送する。
返送されたフロック17、18には、表面に水処理剤13が付着し、それ自体が凝集能力を有するので、フロックを返送しない場合と比較して、フロック相互が衝突してより粗大なフロックを形成する。その結果、フロックの粗大化により固液分離が促進され、凝集フロックによるろ過池32の詰まりが防止される上、水処理剤13の注入量を低減することもできる。
返送するフロック17、18は特に限定されないが、濃縮池43で完全に沈殿・濃縮された沈殿フロックの返送は避けることが好ましい。完全に沈殿・濃縮した沈殿フロックでは返送の際に目的濁質濃度に調整することが困難で、かえって無機凝集剤や高分子凝集剤の必要量が多くなることがある。また、濃縮により、沈殿フロック表面に露出する高分子凝集剤の吸着部位(活性基)が減少し、フロック形成能力が極端に低下してしまう。
フロック17、18を返送する場合、1種以上の添加剤、例えば、カオリンのような粘土鉱物粒子や微細砂を一緒に返送してもよく、これら添加剤によりフロックがより強固でかつ重量を有するものになるので、除濁効果がより発揮される。
これら添加剤を返送フロックと混合する場所は特に限定されないが、フロックを返送する経路の途中、例えば、フロック返送手段60の返送管が好ましく、より好ましくは、フロックを被処理水と混合する直前(着水井16や凝集混和池21に到達する直前の配管)が好ましい。また、返送管ではなく、着水井16、凝集混和池21や配管に返送する地点に、別途、粘土質無機微粒子や微細砂を注入する手段を設けることも可能である。
なお、フロックの返送や、前記の水処理剤添加は、いずれの工程でも工程開始の判断にはフロック成長度の測定結果を利用するが、その測定方法は特に限定されない。
例えば、作業者が肉眼でフロックを観察し、水処理剤13の注入開始を判断する場合、目視でフロックが確認でき(すなわちフロック径0.1mm以上)、かつ、確認できる最大フロックの径が2mm以下の場合を、水処理剤13の注入開始のタイミングとする。濁度を作業者が目視で測定する場合は、比色管等を用いることができる(視覚濁度)。
フロック成長度を測定手段70で機械的に測定する場合は、通常使用される測定装置を広く使用することができる。例えば、測定手段70は光学センサーを有し、被処理水の透過率、吸光度、散乱光等の光学データを取得し、その光学データからフロック径、濁度を測定する。測定手段70で測定される濁度は、例えば、散乱光濁度、積分球濁度、又は透光度濁度であり、フロック径は、例えば吸光度変動解析法による平均粒径である。
なお、本発明の浄水処理装置15及び処理方法は、上記以外のいかなる変更も可能であり、例えば、pH調整剤、凝集補助剤、殺菌剤等の通常浄水処理に使用される添加剤や、他の水処理剤(高分子凝集剤、無機凝集剤)を被処理水に添加可能であり、その添加のタイミングや添加手段も特に限定されるものではない。以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
本発明の水処理剤として6種類のポリマI〜VIを用意し、比較対象として7種類の比較ポリマI〜VIIを用意した。その組成を下記表1、2に記載する。
Figure 2018153729
上記表1中、成分Aはポリアクリル酸Na(ホモポリマー)を示し、成分Bはポリアクリル酸Naとアルギン酸Naとの混合物であり、成分Cはポリアクリル酸NaとカルボキシメチルセルロースNaとの混合物であり、成分Dはポリアクリル酸NaとポリアクリルアミドNaの混合物であって、成分DのポリアクリルアミドNaはそのアニオン構造単位にカルボキシル基を含むアニオン系のポリカルボン酸共重合体である(アクリルアミドとアクリル酸Naの共重合体)。
Figure 2018153729
上記表2の成分Dは、表1の成分Dと同様、ポリアクリル酸Naと、アニオン系のポリカルボン酸共重合体であるポリアクリルアミドNaとの混合物である。比較ポリマVI、VIIを、NaCl濃度が1mol/Lの溶液と、25g/Lの溶液にそれぞれ溶解させたところ、完全に溶解せずに不溶物が残ったため、比較ポリマVI、VIIについては0.1質量%塩粘度と0.1質量%溶液粘度が測定できなかった。
上記ポリマI〜VI及び比較ポリマI〜VIIを用いて下記表3の条件で浄水試験を行った。
Figure 2018153729
各試験に用いた無機凝集剤の注入量、水処理剤の種類及び注入量を、試験結果と共に下記表4に記載する。
Figure 2018153729
以下、各実施例及び各比較例について詳細に説明する。
<比較例1>
図3は実験装置101を示しており、図2の装置15と対応する部材には同じ符号を付して説明を省略する。この実験装置101の原水槽に105に、濁度10度の被処理水(原水槽に袖ヶ浦市水および和光純薬株式会社製の試薬カオリンを添加して調製・適宜補充)を1L/分の速度で通水し、無機凝集剤12として上記のポリ塩化アルミニウム(以下PACと略す)を凝集混和槽(図2の凝集混和池21に相当)の第1槽に注入し、凝集混和槽21の第1槽、第2槽、第3槽それぞれでインペラ回転数200rpmの撹拌による凝集混和を行い、第3槽におけるフロック径が0.1mm以上になったことを確認してから被処理水1をフロック形成槽(図2のフロック形成池22に相当)に導入した。
フロック形成槽22の第1槽・第2槽ではインペラ回転数60rpm、フロック形成槽22の第3槽・第4槽ではインペラ回転数40rpmで緩速撹拌してフロックを粗大化させ、フロック形成槽22の第4槽における凝集フロック径を肉眼で測定したところフロック径は1〜3mmであり、粗大フロックと微小フロックが混在した状態であった。
次に、沈殿槽(図2の沈殿池31に相当)の上昇流速が50mm/minとなるように被処理水を沈殿槽31のセンターウェル103に導入し、処理が安定した後に沈殿槽上澄水を採取し、日本電色工業社製の濁度計「WA 6000」を用いて濁度を測定したところ、濁度は2度を超えていた。なお、この比較例1では、沈殿池上澄水の濁度が高く処理が不良であったため、ろ過塔への通水は実施しなかった。
<比較例2>
沈殿槽31の上昇流速が10mm/分となるように被処理水をセンターウェル103に導入した以外は、比較例1と同じ条件で凝集沈殿処理を行ったところ、沈殿槽上澄水の濁度は0.1〜0.5度に減少した。この沈殿上澄水を、空気・水同時洗浄および水逆洗によりろ過砂を予め清浄な状態にしたろ過塔に、通水速度LVが5m/分となるよう水量を調整して通水を行ったところ、通水開始から72時間経過後でも、ろ抗はろ過砂の洗浄の目安とされる1500mmには達しなかった。なお、比較例2は、浄水処理施設で無機凝集剤のみを使用して凝集沈殿ろ過処理が行われる場合のもっとも標準的な処理条件に該当する。
<実施例1>
水処理剤として、表1のポリマIを凝集混和槽21の第3槽に1mg/L注入した以外は、比較例1と同じ条件で凝集沈殿処理を行ったところ、フロック形成槽22の第4槽における凝集フロック径は3〜5mmと比較例1および比較例2よりも粗大化し、上昇流速が50mm/分と比較例2の5倍であるにもかかわらず沈殿槽上澄水の濁度は0.1〜0.5度と同等の低濁度であった。また同様に、実施例1では、ろ過継続時間が72時間経過後であってもろ抗は1500mmに達しなかった。したがって本発明のポリマIを使用すれば、無機凝集剤単独使用の凝集沈殿処理よりも沈殿槽の上昇流速を高くすることができるだけでなく、従来のアクリルアミド系高分子凝集剤併用時の問題点であったろ過障害も抑制できることが確認された。
<実施例2>
水処理剤として、表1に記載の本発明のポリマIを凝集混和槽21の第3槽に0.4mg/L注入した以外は、実施例1と同じ条件で凝集沈殿処理を行ったところ、フロック形成槽22の第4槽における凝集フロック径は同様に3〜5mmに粗大化しており、沈殿槽上澄水の濁度も0.1〜0.5度と同等であり、また、ろ過継続時間が72時間経過後であってもろ抗は1500mmに達しなかった。
<実施例3〜実施例7>
水処理剤として、表1に記載の本発明のポリマII〜ポリマVIを使用した以外は、実施例1と同じ条件で凝集沈殿処理を行ったところ、フロック形成槽22の第4槽における凝集フロック径はいずれも同様に3〜5mmに粗大化しており、沈殿槽上澄水の濁度もいずれも0.1〜0.5度と同等であり、また同様に、いずれの場合もろ過継続時間が72時間経過後であってもろ抗は1500mmに達しなかった。
<比較例3>
水処理剤として、表2に記載の比較ポリマIを使用した以外は、実施例1と同じ条件で凝集沈殿処理を行ったところ、フロック形成槽22の第4槽における凝集フロック径は3〜5mm、沈殿槽上澄水の濁度は0.1〜0.5度と実施例1と同等であったが、ろ抗が1500mmに達するまでのろ過継続時間は28時間と実施例1や比較例2より著しく短くなっており、ろ過障害が認められた。
<比較例4〜比較例7>
水処理剤として、表2に記載の比較ポリマII〜比較ポリマVを使用した以外は、実施例1と同じ条件で凝集沈殿処理を行ったところ、フロック形成槽22の第4槽における凝集フロック径はいずれも3〜5mm、沈殿槽上澄水の濁度はいずれも0.1〜0.5度と実施例1と同等であったが、ろ抗が1500mmに達するまでのろ過継続時間はそれぞれ35、24、15、36時間と実施例1や比較例2より著しく短くなっており、ろ過障害が認められた。
<比較例8>
水処理剤として、表2に記載の比較ポリマVIを使用した以外は、実施例1と同じ条件で凝集沈殿処理を行ったところ、フロック形成槽22の第4槽における凝集フロック径は2〜3mmと比較例1よりは改善されたものの実施例1よりはフロック径が小さく、沈殿槽上澄水の濁度は2度を超えており比較例1と同様に処理不良であった。このため、ろ過塔への通水は実施しなかった。
<比較例9>
水処理剤として、表2に記載の比較ポリマVIIを使用した以外は、実施例1と同じ条件で凝集沈殿処理を行ったところ、フロック形成槽22の第4槽における凝集フロック径は2〜3mmと比較例1よりは改善されたものの実施例1より小さく、沈殿槽上澄水の濁度は2度を超えており比較例1、比較例8と同様に処理不良であった。このため、ろ過塔への通水は実施しなかった。
上述のとおり、本発明の水処理剤13を使用すれば、無機凝集剤12を単独で使用する凝集沈殿処理よりも沈殿池31の上昇流速を高くして分離面積を小さくすることができるだけでなく、従来のアクリルアミド系高分子凝集剤併用時の問題点であったろ過障害を引き起こすリスクが画期的に軽減されることが確認された。
1 被処理水(原水)
2 処理水
3 凝集沈殿汚泥
4 ろ過洗浄排水
5 排水池上澄水
6 汚泥スラリー
7 浄水汚泥
8 濃縮池上澄水
9 濃縮汚泥
10 脱水離脱水
11 脱水ケーキ
12 無機凝集剤
13 水処理剤
14 塩素剤
15 浄水処理装置
16 着水井
17 粗大フロック
18 沈降分離フロック
20 凝集処理手段
21 凝集混和池
22 フロック形成池
30 固液分離手段
31 沈殿池
32 ろ過池
40 汚泥処理手段
41 排水池
42 排泥池
43 濃縮池
44 汚泥脱水装置
50 薬剤供給手段
60 フロック返送手段
70 測定手段
80 高速凝集沈殿装置
81 第1反応室
82 第2反応室
85 分離室
87 撹拌手段
90 超高速凝集沈殿装置
91 急速撹拌槽
92 注入撹拌槽
93 フロック形成槽
94 沈殿槽

Claims (9)

  1. ポリカルボン酸系重合体を含有し、
    1mol/L塩化ナトリウム溶液に溶解した場合の0.1質量%塩粘度が2〜5mPa・sであり、25g/L塩化ナトリウム溶液に溶解した場合の0.1質量%溶液粘度が6mPa・s以下であり、かつ、アニオン当量が4.5meq/g以上であることを特徴とする水処理剤。
  2. 前記ポリカルボン酸系重合体がポリ(メタ)アクリル酸又はその塩を含むことを特徴とする請求項1に記載の水処理剤。
  3. 被処理水に無機凝集剤を注入した後、請求項1又は請求項2に記載の水処理剤を注入することを特徴とする水処理方法。
  4. 前記無機凝集剤を、前記被処理水1L当たり10〜200mg注入し、
    前記被処理水1L当たり0.05〜20mgの前記水処理剤を注入することを特徴とする請求項3に記載の水処理方法。
  5. 前記無機凝集剤の注入により凝集したフロックの径が0.1mm以上となった後に、前記水処理剤の注入を開始することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の水処理方法。
  6. 前記水処理剤の注入により成長したフロックを、当該水処理剤を注入する前の前記被処理水に返送することを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の水処理方法。
  7. 被処理水が導入される凝集混和部と、
    前記凝集混和部に無機凝集剤を注入する無機凝集剤の薬剤供給手段と、
    前記無機凝集剤を注入後の被処理水が導入されるフロック形成部と、
    前記フロック形成部で形成されたフロックを沈降分離する沈殿部と、
    前記沈殿部の上澄水が導入されるろ過部と、
    前記凝集混和部と、前記フロック形成部と、前記凝集混和部と前記フロック形成部との間のいずれか1か所以上の注入場所で、請求項1又は請求項2に記載の水処理剤を注入する水処理剤の薬剤供給手段と、
    を有することを特徴とする水処理装置。
  8. 前記無機凝集剤の薬剤供給手段は、前記無機凝集剤を被処理水1リットル当たり10〜200mg注入し、
    前記水処理剤の薬剤供給手段は、当該水処理剤を被処理水1リットル当たり0.05〜20mg注入することを特徴とする請求項7に記載の水処理装置。
  9. 前記水処理剤を注入後の被処理水と、当該被処理水から沈降分離したフロックのいずれか一方又は両方を返送する返送手段を更に有し、
    前記返送手段は、前記薬剤供給手段による前記水処理剤の注入場所よりも上流側の1か所以上の返送場所に、前記被処理水と沈降分離した前記フロックのいずれか一方又は両方を返送することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の水処理装置。
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