以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。説明の便宜上、以下の各実施形態において前述の図44〜図49に示す従来例と同一の部分については同一の符号を付している。
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の空気調和機を示す側面断面図である(後述する図6のD断面を示している)。空気調和機の室内機1は、キャビネット2により本体部が保持されており、キャビネット2には上面側と前面側に吸込口4が設けられたフロントパネル3が着脱自在に取り付けられている。
キャビネット2は後方側面に爪部(不図示)が設けられ、居室の側壁W1に取り付けられた取付板(不図示)に該爪部を係合することにより支持される。フロントパネル3の下端部とキャビネット2の下端部との間隙には、吹出口5が設けられている。吹出口5は室内機1の幅方向に延びる略矩形に形成され、前方下方に臨んで設けられている。
室内機1の内部には、吸込口4から吹出口5に連通する送風経路6が形成されている。送風経路6内には空気を送出する送風ファン7が配されている。送風ファン7として、例えば、クロスフローファン等を用いることができる。送風経路6は送風ファン7により送出される空気を前方下方に案内する前方案内部6aを有している。前方案内部6aには左右方向の吹出角度を変更可能な縦ルーバ12が設けられている。
キャビネット2の下方には風向可変部111a、111bが折り畳んで収納されている。風向可変部111bは回動軸111dにより回動可能に支持され、風向可変部111aは回動軸111dに連結される腕部111cを介して回動軸111eにより回動可能に支持されている。回動軸111dはギヤ(不図示)を介して駆動モータ111fの駆動により回転する。また、風向可変部111aの先端には風向可変部111aの位置を規制する位置規制部111gが設けられている。
また、送風経路6内には前方側の送風経路6内の静圧を検知する静圧検知センサ(不図示)が設けられている。静圧検知センサの検知により展開した風向可変部111a近傍の静圧が所定値になるように風向可変部111a、111bを配置できるようになっている。
尚、静圧検知センサを用いて風向可変部111a近傍の静圧が所定値になるように風向可変部111a、111bを可変し、風向可変部111a、111bの位置をデータベースとして記憶してもよい。これにより、運転条件に応じたデータをデータベースから取りだして風向可変部111a、111bを所定位置に配置でき、静圧検知センサを省くことができる。
フロントパネル3に対向する位置には、吸込口4から吸い込まれた空気に含まれる塵埃を捕集・除去するエアフィルタ8が設けられている。送風経路6中の送風ファン7とエアフィルタ8との間には、室内熱交換器9が配置されている。室内熱交換器9は屋外に配される圧縮機(不図示)に接続されており、圧縮機の駆動により冷凍サイクルが運転される。
冷凍サイクルの運転によって冷房時には室内熱交換器9が周囲温度よりも低温に冷却される。また、暖房時には、室内熱交換器9が周囲温度よりも高温に加熱される。尚、室内熱交換器9とエアフィルタ8との間には吸い込まれた空気の温度を検知する温度センサ61が設けられ、室内機1の側部には空気調和機の駆動を制御する制御部(不図示)が設けられている。室内熱交換機9の前後の下部には冷房または除湿時に室内熱交換器9から落下した結露を補集するドレンパン10が設けられている。
上記構成の空気調和機において、空気調和機の運転を開始すると、送風ファン7が回転駆動され、室外機(不図示)からの冷媒が室内熱交換器9へ流れて冷凍サイクルが運転される。これにより、室内機1内には吸込口4から空気が吸い込まれ、エアフィルタ8によって空気中に含まれる塵埃が除去される。
室内機1内に取り込まれた空気は室内熱交換器9と熱交換し、冷却または加熱される。
室内熱交換器9で冷却または加熱された調和空気は、縦ルーバ12によって左右方向の向きを規制され、矢印Aに示すように前方下方に向けて室内に送出される。これにより、室内機1は前方下方に調和空気を送出する前方下方吹出しの状態になる。
空気調和機の運転開始直後は速やかに室内の空気を循環させる必要がある。このため、送風ファン7の回転速度を高くして室内熱交換器9で熱交換された空気は吹出口5から勢いよく送出される。これにより、調和空気は吹出口5から前方下方に例えば風速約6〜7m/秒で矢印Aに示すように送出され、居室内を循環する。
また、暖房運転の場合には暖房運転を開始して一定時間経過後または吸込口4より取込んだ空気の温度と設定温度との差が所定温度よりも小さい時に図2に示すように風向可変部111a、111b(延長部)が展開され、送風経路6が延長される。そして、吹出口5から矢印Cに示すように後方下方(側壁W1方向)に例えば風速約5〜6m/秒で調和空気を送出する。
図3(a)〜(f)は風向可変部111a、111bの動作を示している。図3(a)は風向可変部111a、111bが展開した状態(図2参照)を表している。即ち、風向可変部111a(上壁延長部)は前方案内部6aの上壁に接触して送風経路6の上壁を延長し、前方案内部6aの気流の進行方向前方を閉塞する位置に配置される。風向可変部111b(下壁延長部)は送風経路6の下壁を延長する位置に配置される。
図3(b)は駆動モータ111fが駆動開始した状態を示している。駆動モータ111fの駆動により回転軸111dがJ方向に回転すると、風向可変部111a、111b及び腕111cが回転軸111dを中心にしてJ方向に回動する。図3(c)、(d)に示すように更に駆動モータ111fの駆動により回動軸111dが回動すると、風向可変部板111bがキャビネット2の下面に接触する。
更に回動軸111dが回転すると風向可変部111aが回動し、図3(e)に示すように位置規制部111gがキャビネット2の下面に当接する。腕部111cが回動を継続することによって位置規制部111fがキャビネット2と摺動し、風向可変部111bがK方向に回動する。そして、図3(f)に示すように、風向可変部111aが風向可変部111bに当接して風向可変部111a、111bが収納状態(図1参照)になる。尚、風向可変部111a、111bを展開する場合は上記と逆順に動作する。
図2において、送風経路6の上壁を構成する風向可変部111aは送風経路6内に面した側が凹に形成され、前方案内部6aを流通する気流の進行方向前方を閉塞する。送風経路6の下壁を構成する風向可変部111bは送風経路6内に面した側が凸に形成される。また、風向可変部111a、111bの下流側の端部は後方下方に向けて配置される。これにより、前方案内部6aを流通する気流が風向可変部111a、111bにより湾曲され、後方下方に導かれる。
風向可変部111aの内面側には風向可変部111aに接して前方案内部6aの静圧よりも高圧の高静圧部90が形成される。送風経路6の静圧を検知する静圧検知センサ(不図示)の検知結果によって風向可変部111a、111bは位置調整され、高静圧部90の等圧線が風向可変部110aに面して流通する気流に沿って形成されている。即ち、高静圧部90の等圧線は前方案内部6aの終端と風向可変部111aの終端とを結ぶ線に略平行に形成され、高静圧部90近傍で気流が等圧線に略平行になっている。
このため、高圧部90が流体力学的な壁面として作用し、風向可変部111a、111bによって調和空気の送出方向を滑らかに可変して圧力損失の増加を抑制することができる。従って、風量を減少させずに調和空気を後方下方に送出することができる。尚、調和空気を略真下方向に送出する際も上記と同様に風向可変部111a、111bの向きによって高静圧部90の等圧線を気流に沿って形成し、風量を減少させずに調和空気を略真下方向に送出することができる。
図4は本実施形態の空気調和機の室内機1の送風ファン7の回転数と風量の関係を示している。縦軸は風量(単位:m3/min)を示し、横軸は送風ファン7の回転数(単位:rpm)を示している。また、図中、K1は吹出風向が後方下方(壁方向吹出し、図2参照)のときを表わしている。比較のため、K2、K3、K4はそれぞれ従来の空気調和機において吹出風向が前方下方(最大風量時、図44参照)、真下方向(図45参照)、後方下方(図46参照)のときを表わしている。
同図によると、従来の空気調和機(K2、K3、K4)においては、吹出口5近傍での風向変更角度が大きいほど同一回転数時の風量が減少している。これは、高静圧部90を気流が通過する際の圧力損失のためであり、気流が通過する高静圧部90の静圧が高いほど圧力損失も高くなって風量が減少するからである。
これに対し、本実施形態(K1)は吹出風向が後方下方(壁方向吹出)であるにもかかわらず、風向を変更しない場合の前方下方吹出し時(K2)と略同等の風量を得ることができる。従って、後方下方吹出し時の送風効率を大幅に向上させることができる。
図5は本実施形態の空気調和機の室内機1の送風ファン7の風量と騒音との関係を示している。縦軸は騒音(単位:dB)を示し、横軸は風量(単位:m3/min)を示している。また、上記と同様に、図中、K1は吹出風向が後方下方(壁方向吹出し、図2参照)のときを表わし、K2、K3、K4はそれぞれ従来の空気調和機において吹出風向が前方下方(最大風量時、図44参照)、真下方向(図45参照)、後方下方(図46参照)のときを表わしている。
同図によると、従来の空気調和機(K2、K3、K4)においては、吹出口5近傍での風向変更角度が大きいほど同一風量時の騒音が増加している。これは、高静圧部90を気流が通過する際の圧力損失のための風量減少によるものであり、気流が通過する高静圧部90の静圧が高いほど圧力損失も高くなって風量が減少する。その結果、所望の風量を確保するために送風ファン7の回転数が高くする必要が生じ、騒音が増加するからである。
これに対し、本実施形態(K1)は吹出風向が後方下方(壁方向吹出)であるにもかかわらず、風向を変更しない場合の前方下方吹出し時(K2)と略同等の騒音を実現することができる。従って、後方下方吹出し時の静音性を大幅に向上させることができる。
図2において、高静圧部90は略弓形の二尖点曲線に形成され、高静圧部90は略弓形を形成する弧の中央部が静圧の最高値になっている。これにより、高静圧部90の上流側と下流側とが略対称な静圧分布になっている。従って、気流が等圧線に沿ってよりスムーズに流通して圧力損失をより低減し、空気調和機から送出される調和空気の風量をさらに増加することができる。
更に、風向可変部111aの前方案内部6aに面した側の内壁は、下流へ行くほど下方に向かうように形成されるとともに、前方案内部6aの下壁を吹出口5のさらに外側に延長した仮想面98と交差するように配置されている。これにより、風向可変部111aの下端部が仮想面98よりも下方に配され、気流が略真下方向または後方下方に確実に導かれる。従って、意図しない方向に気流が送出されず、信頼性の高い空気調和機を得ることができる。
図6は後方下方吹出し時の居室R内の気流の挙動を示している。調和空気は側壁W1に沿って下降して矢印Cに示すように床面F、側壁W1に対向する側壁W2、天井壁Sを順次伝って吸込口4に戻る。これにより、送出された暖気の巻き上がりを防止してショートサーキットによる暖房効率の低下を防止できるとともに、居室Rの下部を充分暖めて快適性を向上させることができる。
暖房運転において、吸込口4より取込んだ空気の温度と設定温度との温度差が小さくなったことを温度センサ61により検知すると、送風ファン7の調整により徐々に送風量が低下される。送風量が低下しても、室内機1から下方に送出された調和空気(暖気)はコアンダ効果により巻き上がらずに側壁W1に沿って下降し続け、居住空間に直接降り注がずに床面Fを伝って足元に到達する。従って、使用者に直接風が当たることによる不快感もなく快適性が向上する。
更に、使用者に直接風が当たることによる不快感がなく、同時に静音化が確保されているため、吸込口4より取込んだ空気の温度と設定温度との温度差が小さくなっても風量を低下させる必要がない。従って、常に大風量の調和空気を居室R内に供給し続けることができる。
尚、風向可変部111a、111bの配置の設定を使用者によるリモートコントローラ(不図示)の操作によって行えるようになっている。これにより、調和空気の風向を使用者により任意に選択することができる。
本実施形態によると、吹出口から調和空気を真下方向または後方下方に送出する際に、風向可変部111a、111bにより送風経路6を延長することによって風向可変部111a、111bに面して流通する気流が前方案内部6aを流通する気流に対して湾曲する。そして、風向可変部111a、111bに接する高静圧部90の等圧線が送風経路6を湾曲して流通する気流の主流の流線と交わらないため、該気流にかかる圧力損失を大幅に低減することができる。その結果、大きな風向の変更にもかかわらず大風量の調和空気を送出することができる。尚、高静圧部90では主流から分かれた低速かつ低エネルギーの気流が風向可変部111aに沿って流通しているため、圧力損失に対する影響が少なくなっている。
また、風向可変部111a、111bに面して流通する調和空気の主流は高静圧部90と送風経路6の下壁面とに囲まれた空間を流通する。即ち、高静圧部90により流路の壁面が形成される。従って、気流が風向可変部111aと接していないので粘性による損失が低減され、更に風量を増加することができる。
また、風向可変部111aによって前方案内部6aを流通する気流の進行方向前方を閉塞することによって容易に気流に沿った等圧線を有する高静圧部90を形成することができる。
また、高静圧部90は流路の壁面を成し、高静圧部90により調和空気の流路を絞ってノズル形状を成して流路面積を前方案内部6aよりも狭くなる。このため、ノズルの作用により高エネルギーの流体が吹出口5から送出される。その結果、高静圧部90に隣接する気流の風速が大きく変化せず、気流の静圧変動を抑制して気流がよりスムーズに流れて圧力損失をより低減できる。従って、空気調和機から送出する調和空気の風量をより増加させることができる。
また、高静圧部90により絞られて一端狭くなった流路面積が風向可変部111a、111bの下流側で再度拡大されている。これにより、流路は下流に行くに従い一旦断面積が減少して最小断面積部(以下「のど部」という)が形成される。このため、拡大された流路によって所謂ディフューザが構成され、送風ファン7の静圧上昇を補助して更に風量を増加することができる。また、図2に示すように、流路ののど部には高静圧部90が発生せず圧力損失が生じないため、その位置で流路を湾曲することにより、圧力損失が生じない湾曲部を形成することができる。
また、吹出口5にフレキシブルに変形できる可撓性の風向可変部111a、111bを設けているため、送風経路6の壁面を簡単に可変することができる。このため送風経路内の静圧分布を簡単に変更することができる。
本実施形態の他の態様として、空気調和機を所謂コーナーエアコンのように構成してもよい。即ち、図7に示すように、室内機1bを居室Rの隣接する二側壁W3、W4が交差したコーナーLの天井壁Sに接する位置に取り付けてもよい。この場合においても、吹出口からコーナーLに向けて後方下方に調和空気を吹き出すことにより、調和空気はコーナーL及び側壁W3、W4に沿って下降し、矢印Cに示すように床面F、側壁W3、W4に対向する側壁W5、W6、天井壁Sを順次伝って吸込口4に戻る。これにより暖気が居室R内を循環して暖房運転が行われる。従って、上記の効果を得ることができる。
<第2実施形態>
次に、図8は第2実施形態の空気調和機の室内機1を示す側面断面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図8に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は第1実施形態の風向可変部111a、111bに替えて回動可能に支持される風向可変部112a、112bが設けられる。その他の部分は第1実施形態と同様である。
風向可変部112bは前方案内部6aの下壁を延長し、駆動モータ(不図示)の駆動によって回転する回動軸112fによりキャビネット2に枢支されている。回動軸112fには上腕112cが回動可能に連結され、上腕112cには腕関節112eを介して下腕112dが回動可能に連結されている。風向可変部112aは吹出口5に配されるとともに駆動モータ(不図示)によって回転する回動軸112gにより下腕112dに回動可能に支持され、駆動モータの駆動によって向きを替えて風向を可変する風向板から成っている。
暖房運転を開始すると、断面形状が湾曲した風向可変部112a、112b(延長部)は同図に示すように上腕112c、下腕112dが伸びた状態で前方案内部6aに沿って配置される。これにより、送風経路6が延長される。風向可変部112aは先端を下方に向けて下面側が凹になるように配置され、風向可変部112bは先端を下方に向けて送風経路6側が凸になるように配置される。そして、調和空気を矢印Aに示すように前方下方に送出する。
また、風向可変部112bは送風経路6側が凸になっているため、調和空気の流路が下流に行くほど断面積が拡大されている。これにより、この部分を気流が流通すると運動エネルギーが静圧に変換され、所謂ディフューザとして作用する。このため、送風ファン7の風量を増加するようになっている。
暖房運転を開始して一定時間が経過した場合や吸込口4より取込んだ空気の温度と設定温度との差が所定温度よりも小さい場合には、図9に示すように風向可変部112a、112bが配置される。即ち、風向可変部112a(上壁延長部)は駆動モータの駆動によって送風経路6の上壁に一端部が接触して送風経路6の上壁を延長する位置に配される。風向可変部112aの他端部は後方下方に向けて配置される。また、風向可変部112b(下壁延長部)は送風経路6の下壁を延長し、送風経路6側が凸になるように先端が後方下方に向けて配置される。
これにより、風向可変部112aによって前方案内部6aを流通する気流の進行方向前方が閉塞され、風向可変部112aに接した二尖点曲線から成る略弓形の高静圧部90が形成される。高静圧部90は等圧線が第1実施形態と同様に風向可変部112a、112bに面した調和空気の流通方向に沿って形成される。このため、高静圧部90が流体力学的な壁面となり、調和空気が送出方向を滑らかに可変して吹出口5から後方下方に送出される。
この時、前方案内部6aの上壁と風向可変部112aとの接触部分が滑らかな曲面にならないため高静圧部90には渦25が発生して第1、第2実施形態よりも送風効率がやや低下する。しかしながら、従来よりも圧力損失の増加を抑制して第1実施形態と略同等の送風効率を得ることができる。風向可変部112a、112bの先端を略真下方向に向けて吹出口5から略真下方向に調和空気を送出してもよい。
また、高静圧部90によって流路が絞られ、下流側で再度流路が拡大されている。更に、風向可変部112aは前方案内部6aの下壁を吹出口5から外側に延長した仮想面98と交差するように配置される。従って、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
上記構成の空気調和機により冷房運転を開始すると、風向可変部112a、112bは図10に示すように配置される。即ち、風向可変部112aは上腕112c、下腕112dが伸びた状態で前方案内部6aに沿って先端を前方下方に向けて下面側が凸になるように配置される。
風向可変部112bは吹出口5から送出される気流から退避してキャビネット2の下方に収納される。そして、調和空気を矢印Aに示すように前方下方に送出する。これにより、暖房運転時の前方下方吹出しよりも上方に調和空気を送出し、温度の低い調和空気が自重により降下して室内に拡散されるようになっている。また、風向可変部112bをキャビネット2の下方に収納することにより、冷房時の風向可変部112bへの発露を防止できる。
冷房運転を開始して一定時間が経過した場合や吸込口4より取込んだ空気の温度と設定温度との差が所定温度よりも小さい場合には、図11に示すように風向可変部112a、112bが配置される。即ち、風向可変部112aは上腕112c、下腕112dが伸びた状態で下面側が凸になるとともに、上流側の端部が送風経路6を流通する気流に略平行かつ気流を二分し、下流側の端部が水平方向前方を向くように配置される。
また、風向可変部112bは吹出口5から送出される気流から退避してキャビネット2の下方に収納される。そして、吹出口5から矢印Dに示すように水平方向に例えば風速約5〜6m/秒で調和空気が送出される。
図12は空気調和機の運転停止時の状態を示している。空気調和機の運転を停止すると、上腕112c、下腕112dが折り畳まれた状態になり風向可変部112bが送風経路6内に配され、風向可変部112aにより吹出口5が閉塞される。これにより、室内機1の内部を視認できないようになっている。尚、使用者によるリモートコントローラの操作によって、縦ルーバ12及び風向可変部112a、112bの位置を可変できるようになっている。
<第3実施形態>
次に、図13は第3実施形態の空気調和機の室内機1を示す側面断面図である。前述の図8〜図12に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は第3実施形態の風向可変部112a、112bに替えて回動可能に支持される風向可変部113a、113b、113cが設けられる。また、送風経路6の上壁は吹出口5近傍で上方に向けて傾斜している。その他の部分は第2実施形態と同様である。
風向可変部113cは前方案内部6aの下壁を延長し、駆動モータ(不図示)の駆動によって回転する回動軸113fによりキャビネット2に枢支されている。風向可変部113a、113bは吹出口5に配されるとともに駆動モータ(不図示)によって回転する回動軸113d、113eにより回動可能に支持され、駆動モータの駆動によって向きを替えて風向を可変する風向板から成っている。
また、風向可変部113b、113cは断面形状が湾曲しており、一面が凸状の曲面に形成されるとともに他面が凹状の曲面に形成される。風向可変部113aは一面(図中、下面)が略平面になっており他面(図中、上面)が緩やかな凸状の曲面に形成され、略中央部付近を回転軸113dで軸支されている。
上記構成の空気調和機において、暖房運転を開始すると風向可変部113a、113b、113cは同図に示すように配置される。即ち、風向可変部113aは回転軸113dの駆動により後方下方に面して平面側が配され、前方上方に面して曲面側が配置される。風向可変部113bは回転軸113eの駆動により上流側端部は送風経路6を流通する気流に略平行かつ気流を二分して配される。また、風向可変部113bの前方上方側が凸に配置され、下流側の端部は前方下方に向けられる。
風向可変部113cは先端を下方に向けて送風経路6側が凸になるように配置される。そして、調和空気を矢印Aに示すように前方下方に送出する。これにより、室内機1は前方下方に調和空気を送出する前方下方吹出しの状態になる。
また、風向可変部113cは送風経路6側が凸になっているため、調和空気の流路が下流に行くほど断面積が拡大されている。これにより、この部分を気流が流通すると運動エネルギーが静圧に変換され、所謂ディフューザとして作用する。このため、送風ファン7の風量を増加するようになっている。
また、図14に示すように風向可変部113a、113cにより吹出口5を絞ることもできる。即ち、風向可変部113aは前方上方に面して平面側が配され、後方下方に面して曲面側が配される。風向可変部113cは図17よりも上向きに配置され、風向可変部113aとの間に形成される調和空気の流路面積が縮小される。風向可変部113bは風向可変部113a、113cの間を流通する気流に沿って配置される。
これにより、風向可変部113a、113cの間を気流が流通すると静圧が運動エネルギーに変換される。従って、送風ファンの風量が減少して吹出し風速が増加し、気流の到達距離を延長することができる。
暖房運転を開始して一定時間が経過した場合や吸込口4より取込んだ空気の温度と設定温度との差が所定温度よりも小さい場合には、図15に示すように風向可変部113a、113b、113cが配置される。即ち、風向可変部113aは駆動モータの駆動によって平面側を前面に向け、送風経路6の上壁に一端部が接触して送風経路6の上壁を延長する位置に配される。従って、風向可変部113a、113b、113c(延長部)により送風経路6が延長される。
風向可変部113aの他端部は回動軸113eに接するように下方に向けて配される。風向可変部113bは送風経路6側が凹になるように先端が後方下方に向けて配される。これにより、風向可変部113a、113bは連続して送風経路6の上壁を延長する上壁延長部が構成されている。また、風向可変部113cは(下壁延長部)は送風経路6の下壁を延長し、送風経路6側が凸になるように先端が後方下方に向けられて配される。
これにより、前方案内部6aを流通する気流の進行方向前方が風向可変部113a、113bにより閉塞され、風向可変部113a、113bに接した二尖点曲線から成る略弓形の高静圧部90が形成される。高静圧部90の等圧線は第1〜第3実施形態と同様に風向可変部113a、113b、113cに面した調和空気の流通方向に沿って形成される。このため、高静圧部90が流体力学的な壁面となり、調和空気が送出方向を滑らかに可変して吹出口5から後方下方に送出される。
この時、前方案内部6aの上壁と風向可変部113aとの接触部分が滑らかな曲面により形成されないため高静圧部90には渦25が発生して第1実施形態よりも送風効率がやや低下する。しかしながら、従来よりも圧力損失の増加を抑制して第1実施形態と略同等の送風効率を得ることができる。
また、高静圧部90によって流路が絞られ、下流側で再度流路が拡大されている。更に、風向可変部113bは前方案内部6aの下壁を吹出口5のさらに外側に延長した仮想面98と交差するように配置される。従って、第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
尚、図16に示すように、風向可変部113aの平面側を送風経路6に面して配置してもよい。これにより、前面パネル3に沿って風向可変部113a、113bが配され、室内機1の美観が向上する。この時、高静圧部90は前方上方に傾斜した送風経路6の上壁と風向可変部113a、113bにより囲まれて形成されるため高静圧部90内に発達する渦25が大きくなる。このため、図15の場合に比して送風効率がやや若干低下するが従来よりも圧力損失の増加を抑制することができる。
また、図17に示すように、風向可変部113b、113cの先端を略真下方向に向けて吹出口5から略真下方向に調和空気を送出してもよい。この時、図18に示すように前面パネル3に沿って風向可変部113aを配置すると室内機1の美観が向上する。
また上記構成の空気調和機において、冷房運転を開始すると、風向可変部113a、113b、113cは図19に示すように配置される。即ち、風向可変部113aは前方案内部6aを流通する気流に沿って平面側が前方上方に面して配置される。風向可変部113bは前方案内部6aを流通する気流に略平行かつ気流を二分して下に凸に配される。風向可変部113cは吹出口5から送出される気流から退避してキャビネット2の下方に配される。
そして、調和空気を矢印Aに示すように前方下方に送出する。これにより、暖房運転時の前方下方吹出しよりも上方に調和空気を送出し、温度の低い調和空気が自重により降下して室内に拡散される。
尚、風向可変部113aを前述の図13に示すように後方下方に面して平面側を配置すると上方に気流が流れず風向可変部113aに結露が生じる。このため、風向可変部113aの平面側を上面にすることにより回動軸113dよりも下方に風向可変部113aが配置される。これにより、風向可変部113aの両面に沿って低温の調和空気が流通し、風向可変部113aの結露を防止することができる。
冷房運転を開始して一定時間が経過した場合や吸込口4より取込んだ空気の温度と設定温度との差が所定温度よりも小さい場合には、図20に示すように風向可変部113a、113b、113cが配置される。即ち、風向可変部113aは前方案内部6aを流通する気流に沿って平面側が後方上方に面して配置される。風向可変部113bは前方案内部6aを流通する気流に略平行かつ気流を二分して下に凸に配される。風向可変部113cは吹出口5から送出される気流から退避してキャビネット2の下方に配される。
これにより、調和空気は吹出口5から矢印Eに示すように前方上方に例えば風速約5〜6m/秒で送出される。室内に送出された調和空気は図21に示すように、居室Rの天井に到達する。その後、コアンダ効果により天井面Sから室内機1に対向する壁面W2、床面F、室内機1側の壁面W1を順次伝って室内機1の両側方から吸込口4に吸い込まれる。
従って、使用者に常に冷たい風や暖かい風が当たることがなく、使用者の不快感を防止して快適性を向上することができる。更に、冷房時には局所的に使用者の体温を低下させることがなく健康上の安全性を向上することができる。またこのとき、気流が居室R全体を大きく攪拌するので、居室R内の温度分布が設定温度付近で均一になる。即ち、居室Rの上方の一部を除いて、使用者の居住領域全体が設定温度に略一致して温度ばらつきが小さく直接風もほとんど使用者に当たることのない快適空間を得ることができる。また、風向可変部113cをキャビネット2の下方に収納することにより、冷房時の風向可変部113cへの発露を防止できる。
更に、図22に示すように、風向可変部113aの向きを水平にすると、矢印Dに示すように調和空気を吹出口5から水平方向に送出することができる。尚、前述の図19に示す前方下方吹出し時に風向可変部113bを下に凸に配置することにより、前方上方吹出し時(図20参照)及び水平方向吹出し時(図22参照)においてスムーズに風向可変部113bを配置することができる。
図23は空気調和機の運転停止時の状態を示している。空気調和機の運転を停止すると、風向可変部113cが送風経路6内に配置され、風向可変部113a、113bにより吹出口5が閉塞される。これにより、室内機1の内部を視認できないようになっている。また、前面パネル3に沿って風向可変部113aを配置し、風向可変部113aの下端とキャビネット2の底面とを繋ぐように風向可変部113bを配置すると、室内機1の美観を向上することができる。尚、使用者によるリモートコントローラの操作によって、縦ルーバ12及び風向可変部113a、113b、113cの位置を可変できるようになっている。
<第4実施形態>
次に、図24は第4実施形態の空気調和機の室内機1を示す側面断面図である。前述の図13〜図23に示す第3実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は第4実施形態の風向可変部113a、113b、113cに替えて風向可変部114a、114bが設けられる。その他の部分は第3実施形態と同様である。
風向可変部114a、114bは吹出口5に配され、両面が平面の平板から成っている。回動軸114c、114dは風向可変部114a、114bを回動可能に支持し、駆動モータ(不図示)によって回転する。これにより、風向可変部114a、114bは駆動モータの駆動によって向きを替えて風向を可変する風向板から成っている。また、回動軸114cは風向可変部114aの略中央に設けられ、回動軸114dは風向可変部114bの端部に設けられる。
上記構成の空気調和機において、暖房運転を開始すると風向可変部114a、114bは同図に示すように配置される。即ち、風向可変部114a、114bは前方案内部6aを流通する気流に沿って配置される。この時、風向可変部114bは回動軸114d側の端部が後方になるように配置されている。そして、調和空気を矢印Aに示すように前方下方に送出する。これにより、室内機1は前方下方に調和空気を送出する前方下方吹出しの状態になる。
暖房運転を開始して一定時間が経過した場合や吸込口4より取込んだ空気の温度と設定温度との差が所定温度よりも小さい場合には、図25に示すように風向可変部114a、114bが配置される。即ち、風向可変部114aは駆動モータの駆動によって一端が送風経路6の上壁に近接して上壁を下方へ延長するように配される。風向可変部114aの他端部は回動軸114dに近接して下方に向けて配される。風向可変部114bは先端が後方下方に向けて配される。従って、風向可変部114a、114b(延長部)により送風経路6が延長される。
これにより、前方案内部6aを流通する気流の進行方向前方が風向可変部114a、114bにより閉塞され、風向可変部114a、114bに接した高静圧部90が形成される。高静圧部90の等圧線は第1〜第4実施形態と同様に風向可変部114a、114bに面した調和空気の流通方向に沿って形成される。このため、高静圧部90が流体力学的な壁面となり、調和空気が送出方向を滑らかに可変して吹出口5から後方下方に送出される。
また、高静圧部90によって流路が絞られ、下流側で再度流路が拡大されている。更に、風向可変部114bは前方案内部6aの下壁を吹出口5から外側に延長した仮想面98と交差するように配置される。従って、第1〜第3実施形態と同様の効果を得ることができる。尚、高静圧部90は第1〜第3実施形態のように略弓形を成さないためやや送風効率が劣化するが、従来よりも圧力損失を低減して送風効率を向上できる。
また、図26に示すように、風向可変部114aを前面パネル3に沿って配置すると室内機1の美観が向上する。この時、前方案内部6aの上壁と風向可変部114aとの接触部分が滑らかな曲面により形成されないため高静圧部90には渦25が発生して第1実施形態よりも送風効率がやや低下する。しかしながら、従来よりも圧力損失の増加を抑制して第1実施形態と略同等の送風効率を得ることができる。
また、図27に示すように風向可変部114bの先端を略真下方向に向けて吹出口5から略真下方向に調和空気を送出してもよい。この時、図28に示すように、前面パネル3に沿って風向可変部114aを配置すると室内機1の美観が向上する。
また、図29に示すように、風向可変部114bを軸側の端部が前方になるように配置して前方吹出しを行ってもよい。しかしながら、前述の図24において前方下方吹出し時に風向可変部114bの軸側の端部を後方に配置することによって、後方下方吹出し時(図25、図26参照)や略真下方向に送出する際(図27、図28参照)に風向可変部114bをスムーズに移動させることができるのでより望ましい。
また、上記構成の空気調和機において冷房運転を開始すると、風向可変部114a、114bは図30に示すように配置される。即ち、風向可変部114a、114bは前方案内部6aを流通する気流に沿って前方下方に傾斜して配置される。この時、風向可変部114aは前述の図24、図29に示す暖房運転の前方下方吹出し時よりも前端が上方に配される。これにより、風向可変部114aの両面を気流が通過して低温の調和空気による風向可変部114a表面の結露を防止することができる。
また、風向可変部114bは回動軸114d側の端部が前方になるように配置されている。そして、調和空気を矢印Aに示すように前方下方に送出する。これにより、室内機1は前方下方に調和空気を送出する前方下方吹出しの状態になる。
冷房運転を開始して一定時間が経過した場合や吸込口4より取込んだ空気の温度と設定温度との差が所定温度よりも小さい場合には、図31に示すように風向可変部114a、114bが配置される。即ち、風向可変部114aは前端が後端よりも上方に配され、吹出口5近傍で上方に傾斜した送風経路6の上壁に略平行になっている。風向可変部114bは軸側の端部が開放側の端部よりも前方下方になるように配される。
これにより、調和空気は吹出口5から矢印Eに示すように前方上方に例えば風速約5〜6m/秒で送出される。室内に送出された調和空気は前述の図21と同様に居室Rの天井に到達する。その後、コアンダ効果により天井面Sから室内機1に対向する壁面W2、床面F、室内機1側の壁面W1を順次伝って室内機1の両側方から吸込口4に吸い込まれる。従って、第4実施形態と同様に、快適性や安全性を向上することができる。
更に、図32に示すように、風向可変部114aの向きを水平にすると、矢印Dに示すように調和空気を吹出口5から水平方向に送出することができる。尚、前述の図30に示す前方下方吹出し時に風向可変部114bの軸側を前方に配置することにより、前方上方吹出し時(図31参照)及び水平方向吹出し時(図32参照)にスムーズに風向可変部114bを配置することができる。
図33は空気調和機の運転停止時の状態を示している。空気調和機の運転を停止すると、風向可変部114a、114bにより吹出口が閉塞される。これにより、室内機1の内部を視認できないようになっている。また、前面パネル3に沿って風向可変部114aを配置し、風向可変部114aの下端とキャビネット2の底面とを繋ぐように風向可変部114bを配置すると、室内機1の美観を向上することができる。尚、使用者によるリモートコントローラの操作によって、縦ルーバ12及び風向可変部114a、114bの位置を可変できるようになっている。
<第5実施形態>
次に、図34は第5実施形態の空気調和機の室内機1を示す側面断面図である。前述の図24〜図33に示す第4実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は第5実施形態の風向可変部114a、114bに替えて、風向可変部115a、115bが設けられる。その他の部分は第4実施形態と同様である。
風向可変部115a、115bは吹出口5に配され、両面が平面の平板から成っている。回動軸115c、115dは風向可変部115a、115bを回動可能に支持し、駆動モータ(不図示)によって回転する。これにより、風向可変部115a、115bは駆動モータの駆動によって向きを替えて風向を可変する風向板から成っている。また、回動軸115cは風向可変部115aの略中央に設けられ、回動軸115dは風向可変部115bの略中央の風向可変部115bから所定量離れた位置に設けられる。
上記構成の空気調和機において、暖房運転を開始すると風向可変部115a、115bは同図に示すように配置される。即ち、風向可変部115a、115bは前方案内部6aを流通する気流に沿って配置される。この時、風向可変部115bの回動軸115dは風向可変部115bの上方に配されている。そして、調和空気を矢印Aに示すように前方下方に送出する。これにより、室内機1は前方下方に調和空気を送出する前方下方吹出しの状態になる。
また、図35に示すように、風向可変部115bの回動軸115dを風向可変部115bの下方に配して前方下方吹出しを行ってもよい。図34に示すように回動軸115dを風向可変部115bの上方に配した場合は、遠方にまで調和空気を到達させることができる。このため、居室が比較的大きい場合に適している。
また、図35に示すように回動軸115dを風向可変部115bの下方に配した場合は、回動軸115dを風向可変部115bの上方に配した場合よりも暖房時に近傍の空間においてきめ細やかな気流制御を行うことができる。このため、居室が比較的小さい場合に適している。従って、居室の大きさに基づいて適時選択することができる。
暖房運転を開始して一定時間が経過した場合や吸込口4より取込んだ空気の温度と設定温度との差が所定温度よりも小さい場合には、図36に示すように風向可変部115a、115bが配置される。即ち、風向可変部115aは駆動モータの駆動によって一端が送風経路6の上壁に接して前方案内部6aの上壁を延長するように配される。風向可変部115bは一端が風向可変部115aに近接し、他端が略真下方向に向けて配される。従って、風向可変部115a、115b(延長部)により送風経路6が延長される。尚、風向可変部115a、115b間の隙間は極めて小さく、調和空気がこの隙間から漏れる量は極めて微量である。
これにより、前方案内部6aを流通する気流の進行方向前方が風向可変部115a、115bにより閉塞され、風向可変部115a、115bに接した高静圧部90が形成される。高静圧部90の等圧線は第1〜第4実施形態と同様に風向可変部115a、115bに面した調和空気の流通方向に沿って形成される。このため、高静圧部90が流体力学的な壁面となり、調和空気が送出方向を滑らかに可変して吹出口5から後方下方に送出される。
また、高静圧部90によって流路が絞られ、下流側で再度流路が拡大されている。更に、風向可変部115bは前方案内部6aの下壁を吹出口5から外側に延長した仮想面98と交差するように配置される。従って、第1〜第4実施形態と同様の効果を得ることができる。尚、高静圧部90は第1〜第3実施形態のように略弓形を成さないためやや送風効率が劣化するが、従来よりも圧力損失を低減して送風効率を向上できる。
また、風向可変部115bは回動軸115dが端部に設けられず、略中央の所定量離れて設けられるため、第5実施形態に比して少ないトルクで回動させることができる。従って、駆動モータの省電力化や駆動モータ出力のスペックダウンによる低コスト化を図ることができる。
尚、図37に示すように風向可変部115bの先端を真下方向からやや前方に向けて吹出口5から矢印Bに示すように略真下方向に調和空気を送出してもよい。前述の図35において前方下方吹出し時に風向可変部115bの回動軸115dを下方に配置することによって、後方下方吹出し時(図36参照)や略真下方向に送出する際(図37参照)に風向可変部115bをスムーズに移動させることができる。
また、上記構成の空気調和機において冷房運転を開始すると、風向可変部115a、115bは前述の図34に示すように配置される。この時、風向可変部115aは暖房時に比べて外側端部がやや上になるように設定される。これにより、風向可変部115aの両面に調和空気を流通させて風向可変部115aの発露を防止することができる。そして、調和空気を矢印Aに示すように前方下方に送出する。これにより、室内機1は前方下方に調和空気を送出する前方下方吹出しの状態になる。
冷房運転を開始して一定時間が経過した場合や吸込口4より取込んだ空気の温度と設定温度との差が所定温度よりも小さい場合には、図38に示すように風向可変部115a、115bが配置される。即ち、風向可変部115aは前端が後端よりも上方に配され、吹出口5近傍で上方に傾斜した送風経路6の上壁に略平行になっている。風向可変部115bは外側の端部が内側の端部よりも前方下方になるように配される。
これにより、調和空気は吹出口5から矢印Eに示すように前方上方に例えば風速約5〜6m/秒で送出される。室内に送出された調和空気は前述の図21と同様に居室Rの天井に到達する。その後、コアンダ効果により天井面Sから室内機1に対向する壁面W2、床面F、室内機1側の壁面W1を順次伝って室内機1の両側方から吸込口4に吸い込まれる。従って、第4、第5実施形態と同様に、快適性や安全性を向上することができる。
更に、図39に示すように、風向可変部115aの向きを水平にすると、矢印Dに示すように調和空気を吹出口5から水平方向に送出することができる。尚、前述の図34に示す前方下方吹出し時に風向可変部115bの回動軸115dを風向可変部115bの上方に配置することにより、前方上方吹出し時(図38参照)及び水平方向吹出し時(図39参照)にスムーズに風向可変部115bを配置することができる。
図40は空気調和機の運転停止時の状態を示している。空気調和機の運転を停止すると、風向可変部115a、115bにより吹出口が閉塞される。これにより、室内機1の内部を視認できないようになっている。また、前面パネル3に沿って風向可変部115aを配置し、風向可変部115aの下端とキャビネット2の底面とを繋ぐように風向可変部115bを配置すると、室内機1の美観を向上することができる。尚、使用者によるリモートコントローラの操作によって、縦ルーバ12及び風向可変部115a、115bの位置を可変できるようになっている。
<第6実施形態>
次に、図41は第6実施形態の空気調和機の室内機1を示す側面断面図である。前述の図1〜図3に示す第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。本実施形態は第1実施形態の風向可変部111a、111bに替えて、風向可変部110a、110bが設けられる。その他の部分は第1実施形態と同様である。
風向可変部110a、110bは短冊状の部材を連結して成り、自由に湾曲できるとともに折り畳んでキャビネット2内に収納することができるようになっている。
上記構成の空気調和機において、暖房運転を開始すると、風向可変部110a、110b(延長部)は同図に示すようにそれぞれ送風経路6の上壁及び下壁を略直線的に延長するように配置される。これにより、風向可変部110a、110bは前方案内部6aを流通する気流に沿った流路を形成し、調和空気が矢印Aに示すように前方下方に送出され、室内機1は前方下方に調和空気を送出する前方下方吹出しの状態になる。
また、風向可変部110a、110bによって送風経路6が下流に行くほど断面積が拡大するように形成される。このため、風向可変部110a、110bが所謂ディフューザとして作用し、風向可変部110a、110bに面して流通する気流の運動エネルギーが静圧に変換される。従って、吹出口5から送出される調和空気の風量が、風向可変部110a、110bにより送風経路6を延長しない場合に比べて、大幅に増加される。
暖房運転を開始して一定時間が経過した場合や吸込口4より取込んだ空気の温度と設定温度との差が所定温度よりも小さい場合には、図42に示すように風向可変部110a、110bが配置される。即ち、風向可変部110a、110bは湾曲して先端が略真下方向に向けて配される。
これにより、前方案内部6aを流通する気流の進行方向前方が風向可変部110aにより閉塞され、風向可変部110aに接した高静圧部90が形成される。高静圧部90の等圧線は第1〜第5実施形態と同様に風向可変部110a、110bに面した調和空気の流通方向に沿って形成される。このため、高静圧部90が流体力学的な壁面となり、調和空気が送出方向を滑らかに可変して吹出口5から後方下方に送出される。
また、高静圧部90によって流路が絞られ、下流側で再度流路が拡大されている。更に、風向可変部110aは前方案内部6aの下壁を吹出口5から外側に延長した仮想面98と交差するように配置される。従って、第1〜第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
図43は空気調和機の運転停止時の状態を示している。空気調和機の運転を停止すると、風向可変部110a、110bがスライド移動して折り畳まれ、送風経路6の上下のキャビネット2内に収納される。これにより、風向可変部110a、110bが突出せず、室内機1の美感が向上する。風向可変部110a、110bを変形して吹出口5を閉塞してもよい。尚、使用者によるリモートコントローラの操作によって、縦ルーバ12及び風向可変部110a、110bの配置を可変できるようになっている。
以上本発明に係る空気調和機を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を加えて実施することができる。