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JP4099546B2 - 殺菌性繊維材料の製造方法 - Google Patents

殺菌性繊維材料の製造方法 Download PDF

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三男 鈴木
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、銀コロイドを用いた新規な殺菌性繊維材料製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまで、銀系抗菌剤又は殺菌剤を用いた抗菌性又は殺菌性繊維材料としては、リン酸ジルコニウム銀、リン酸カルシウム銀又は銀コーティング酸化チタンを含有させた抗菌性ポリエステル短繊維(特許文献1参照)、リン酸ジルコニウム銀のような銀系抗菌剤と合成ピレスロイド系防ダニ剤を含有するポリオレフィンからなる不織布(特許文献2参照)、芯部がポリアルキレンテレフタレート、さや部がテレフタル酸成分、脂肪族ラクトン成分、エチレングリコール成分及び1,4‐ブタンジオール成分からなる共重合ポリエステルで構成された複合繊維のさや部に、リン酸ジルコニウム銀のような銀系抗菌剤を含有させた抗菌性複合繊維(特許文献3)、表面にイミド水素を有する環状化合物を吸着した銀系抗菌剤を含有するポリエステル繊維布帛(特許文献4参照)など、繊維素材として合成繊維を用いたものが知られている。
【0003】
そのほか、再生セルロースを素材として用いたものとして、第三アミンN‐オキシドに溶解したパルプに、銀系抗菌剤例えば銀ゼオライト、リン酸ジルコニウム銀、リン酸カルシウム銀、銀溶解性ガラスを加え、紡糸した抗菌性セルロース繊維(特許文献5参照)が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの繊維は、リン酸ジルコニウム銀のような特殊な抗菌剤を用いているため、コスト高になるのを免れないし、また使用できる繊維素材が制限される上、長期間使用すると、殺菌力、抗菌力が次第に低下するという欠点があるため、実用化が困難であった。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−237720号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】
特開平8−325915号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】
特開平11−158734号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】
特開平11−335970号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献5】
特開平11−107033号公報(特許請求の範囲等)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に鑑み、長期間にわたって変質することなく、優れた殺菌力を示す殺菌性繊維材料を提供することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
これまで、コロイド状銀は、例えば銀塩水溶液に還元炎を吹き付ける方法、硝酸銀の希薄溶液を還元炎で還元する方法、酸化銀をタンニンの希薄溶液で処理する方法、酸化銀を水素ガスで還元する方法などにより製造されているが、これらの方法で得られるコロイド状銀は、いずれも粒径50nm以上の比較的大きいコロイド粒子を形成するため、有効表面積が小さく、長時間にわたって使用している間に殺菌力が低下するのを免れない。
【0008】
しかも、これらのコロイド状銀を有機質繊維に担持させようとしても、単に物理的な吸着によって結合するだけなので、他の器物との接触や、洗濯により簡単に脱落し、長期間にわたって殺菌力を維持することはできない。
【0009】
しかるに、本発明者らは、水性媒質中、陽イオン性界面活性剤の存在下で、水溶性銀化合物を金属複合水素化物により還元して得られる銀コロイドは、粒径20nm以下の非常に微細な粒子を形成するため、強力な殺菌力を示す上に、タンパク質系繊維と接触させると強固に結合し、長期間にわたってその殺菌力を維持することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、水溶性銀化合物水溶液に陽イオン性界面活性剤及び複合金属水素化物を加えて調製した粒径20nm以下のコロイドを含む淡黄色ないし黄色の銀ヒドロゾルに、タンパク質系繊維を上記銀ヒドロゾルが脱色するまで浸漬したのち、取り出し、乾燥することを特徴とする殺菌性繊維材料の製造方法を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明方法により得られる殺菌性繊維材料は、基材となる親水性有機質繊維に銀コロイドが強固に結合したものであるが、このように強固な結合が形成されるのは、併用する陽イオン性界面活性剤が大きな影響を与えているものと思われる。すなわち、陽イオン性界面活性剤を用いない場合や、陽イオン性界面活性剤の代りに陰イオン性界面活性剤を用いた場合には、このような強固な結合は形成されない。
【0012】
そして、この際基材としては、タンパク質系繊維が用いられるが、このタンパク質系繊維としては、例えば絹や羊毛を挙げることができる。これらの繊維の形状としては、単繊維、撚糸、織布、不織布、編布など任意のものでよく、特に制限はない。
絹としては、通常のカイコから採取される絹のみではなく、安価に入手し得るヤママユガ科の柞蚕を用いることもできるし、羊毛としては、製織時に生じる羊毛屑を用いることもできる。
【0013】
また、これらのタンパク質系繊維に殺菌性を付与するために結合させる銀コロイド、粒径20nm以下の微粒状のものであり、この銀コロイドは、タンパク質系繊維の質量に基づき0.01〜10.0質量%、好ましくは0.05〜5.0質量%の割合で含ませる。この量が0.01質量%未満では、殺菌力が不十分になるし、また10.0質量%よりも多くすれば、結合力が低下して脱落を生じる。
【0014】
また、銀コロイド粒子と併用されるカチオン性界面活性剤としては、長鎖アルキルアミン塩、例えばステアリルアミン塩化水素塩、オレイルアミン塩化水素塩、長鎖カルボン酸とアミンとの縮合物、例えばヤシ油脂肪酸とジエタノールアミンとの縮合物、長鎖アルキル第四級アンモニウム塩、例えばセチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミドなどがある。この場合、長鎖アルキル第四級アンモニウム塩を用いると殺菌力が向上するので有利である。
このカチオン性界面活性剤は、銀100質量部当り、50〜2000質量部、好ましくは100〜1500質量部の範囲で用いられるが、殺菌力を強化するために、さらに増量することもできる。
【0015】
本発明の殺菌性繊維材料には、所望に応じさらに殺菌力を強化するために、他の殺菌成分、例えば亜鉛、スズ、銅などの金属又はイオンを含ませることができる。これらの含有量は、タンパク質系繊維100質量部当り1質量部以下にするのが好ましい。
【0016】
本発明方法によれば、水溶性銀化合物水溶液に、陽イオン性界面活性剤及び複合金属水素化物を加えて還元反応させ、粒径20nm以下のコロイド粒子を含む銀ヒドロゾルを調製する。次いで、これにタンパク質系繊維も浸漬してヒドロゾルが脱色するまで接触させる。
【0017】
この際用いる水溶性銀化合物としては、例えば硝酸銀AgNO3、亜硝酸銀AgNO2、塩素酸銀AgClO3、過塩素酸銀AgClO4、酢酸銀Ag(CH3CO2)、硫酸銀Ag2SO4などを挙げることができる。そのほか[Ag(NH32]Clのような錯塩も用いることができる。
これらの水溶性銀化合物は、0.05〜5mM、好ましくは0.1〜2mMの範囲の濃度で水に溶かし、水溶液として用いられる。
【0018】
次に、この水溶性銀化合物の水溶液に添加される複合金属水素化物としては、例えば水素化ホウ素ナトリウムNaBH4、水素化ホウ素カリウムKBH4、水素化アルミニウムリチウムLiAlH4など、各種反応において還元剤として慣用されているものを用いることができる。
これらは、水溶性銀化合物に基づき、2〜50倍モル量の範囲で用いられる。これよりも少ない量では、銀の還元が不十分になるし、またこれよりも多い量では後処理が厄介である。
【0019】
この方法を好適に行うには、先ず前記の水溶性銀化合物の水溶液にカチオン性界面活性剤及び複合金属水素化物を加えて反応させることにより、銀ヒドロゾルを生成させる。この反応は室温下、例えば20℃で十分に進行するが、所望ならば30〜60℃に加熱して反応を促進することもできる。反応時間は、使用する各成分の種類や反応条件により変わるが、通常は5〜30分の範囲である。反応が完了すると粒径10nm以下の銀コロイド粒子を含む淡黄色ないし暗褐色の銀ヒドロゾルが得られる。
【0020】
次に、この銀ヒドロゾルにタンパク質系繊維を浸漬し、5〜30分間かきまぜると、銀コロイド粒子がこれに結合し、液は無色になると同時にタンパク質系繊維は黄色に着色する。そして、銀コロイド粒子が完全にタンパク質系繊維に結合したか否かは、例えば処理液中のAgの原子吸光スペクトルを測定することによって確認することができる。
【0021】
このようにして得られる殺菌性繊維材料は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtillis)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などに対して強力な殺菌効果を示す。
【0022】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。なお、各例における制菌活性値、殺菌活性値は以下に示す統一試験法により測定したものである。
【0023】
統一試験法:
(1)接種菌数:1±0.3×105個/mlの菌液0.2mlを使用
(2)試験布の滅菌:オートクレーブ中121℃で15分間
(3)試験布(浴比):18cm2、0.4g(2:1)
(4)試験培養:バイアルびん中37±1℃で18時間
(5)菌の洗い出し液:(生理食塩水+0.2%Tween80)20ml
(6)計測培養条件:ニュートリエント寒天培地中37±1℃で18時間
このようにして試験培養したものついて次の式により制菌活性値及び殺菌活性値を求める。
制菌活性値=logB−logC
殺菌活性値=logA−logC
ただし、Aは無加工布の接種直後に回収した菌数、Bは無加工布の18時間培養後に回収した菌数、Cは加工布の18時間培養後に回収した菌数。
抗菌防臭基準においては、制菌活性値が2.2以上のものを合格としている。
【0024】
実施例1
20mM−硝酸銀水溶液100mlを脱イオン水460mlで希釈したのち、室温下、1質量%濃度のステアリルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液40ml及び40mM−ナトリウムホウ素水素化物水溶液200mlをかきまぜながら順々に加え、10分間反応させることにより、黄色透明な銀コロイド含有液800mlを調製した。
次いで、わた状絹(中国産柞蚕糸)38gを脱イオン水800mlに5分間浸漬し、これに前記の銀コロイド含有液800mlを加えて10分間にわたって搾液−含浸を繰り返した。この間に銀コロイド含有液は、ごく淡い黄色に変化した。
次に、わた状絹を取り出し、2回水洗後、3日間風乾することにより、銀コロイドを担持した黄褐色のわた状絹からなる殺菌性繊維材料40gを得た。このものの銀コロイド担持量は約0.5質量%であった。
【0025】
参考例1
大腸菌(Escherichia coli)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の生菌を含む液体培地4mlに、実施例1で得た殺菌性繊維材料を、5g、2.5g、1.25g又は0.625g加え、室温において30分間接触させ、それぞれの10分後及び30分後の生菌数を調べた。その結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0004099546
【0027】
この表から分るように、殺菌性繊維材料の量が2.5gの場合、黄色ブドウ球菌の生菌数は10分から30分の間に1/10から1/100の範囲で低下する。
【0028】
【0029】
実施例
実施例1と同様にして調製した銀コロイド含有液108mlにカイコから採取した絹布(300×300mm)を室温で5時間浸漬したのち、水洗し、風乾することにより黄色の銀コロイド担持絹布からなる殺菌性繊維材料を得た。このものの銀コロイド担持量は約0.05質量%であった。
【0030】
【0031】
参考例2
実施例で得た殺菌性繊維材料について繊維製品新機能評価協議会の統一試験法に従い、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureusATCC6538P)を用いた抗菌性試験を行った。
また、洗濯度を調べるために、JIS L0217 103号に従い、JAFET標準洗剤を用いて10回洗濯した後の試料について同様の抗菌性試験を行った。
このようにして得た結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
Figure 0004099546
【0033】
表中の制菌活性値及び殺菌活性値は次のようにして求められた数値である。
制菌活性値=logB−logC
殺菌活性値=logA−logC
ただし、Aは最初の生菌数、Bは18時間後の生菌数、Cは加工布の18時間後の生菌数。
【0034】
【発明の効果】
本発明方法により得られる殺菌性繊維材料は、優れた殺菌性を有し、長期間経過後においてもその効力を維持し得るので、衛生衣、病人用シーツ及びカバー、衛生マスク、除菌用濾過剤などとして広く利用することができる。

Claims (3)

  1. 水溶性銀化合物水溶液に陽イオン性界面活性剤及び複合金属水素化物を加えて調製した粒径20nm以下のコロイドを含む淡黄色ないし黄色の銀ヒドロゾルに、タンパク質系繊維を上記銀ヒドロゾルが脱色するまで浸漬したのち、取り出し、乾燥することを特徴とする殺菌性繊維材料の製造方法
  2. タンパク質系繊維が絹及び羊毛の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の殺菌性繊維材料の製造方法
  3. 陽イオン性界面活性剤が高級アルキルアミン塩類及び高級アルキル基をもつ第四級アンモニウム塩の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2記載の殺菌性繊維材料の製造方法。
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