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JP4091757B2 - 防曇性基材およびその形成方法 - Google Patents

防曇性基材およびその形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、浴室用、洗面所用等の防曇鏡、自動車用等の防曇窓ガラスあるいは防曇鏡、建築用の防曇窓ガラス等各種の用途に用いることが可能な防曇持続性と耐水性を併せ持つ防曇性基材およびその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラスやプラスチックなどの透明基材は、基材を挟んで内面と外面の温湿度の差により、一方の表面が露点以下になった場合、もしくは基材に対して急激な温湿度変化が起こった場合(沸騰水蒸気が基材に接触した場合、低温部署より高温多湿の環境に移った場合等)に雰囲気中の水分が水滴として付着し、基材表面は結露する。その結果、結露した水滴により光の散乱が起こる。すなわち「曇り」が発生し、視界を防がれることで、安全性が著しく損なわれる。例えば、一般的な窓ガラス、自動車や航空機のフロントガラス、サングラス等があげられる。
【0003】
これらのガラスやプラスチックなどの透明基材に「曇り」の発生を防止するためには、従来より、(1)基材表面に界面活性剤を塗布して水に対する接触角を小さくすることにより水滴を水膜状にする方法、(2)基材表面に、硬化性樹脂と親水性樹脂、界面活性剤等を混合し溶液を塗布により成膜し、加熱もしくは紫外線または電子線により硬化させて水に対する接触角を小さくさせることのより水滴を水膜状にする方法、(3)基材表面の水に対する接触角を大きくすることにより水滴をはじき落とす方法、(4)基材表面に吸水性樹脂を成膜し、付着した水滴を瞬時に膜内部に取り込んで水滴をなくす方法が考えられてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、(1)の方法は、初期の防曇性は優れているものの、水との接触により界面活性剤が流出し、防曇効果が短命であるという欠点がある。(2)の方法は、極めて親水性の強い表面を必要とするが、水滴付着に伴い膜膨潤が生じ、表面硬度の急激な低下が発生するとともに、(1)と同様に防曇性成分の流出によりに、防曇付与機能が長時間持続しない場合がある。水滴付着時の膜膨潤については、防曇性成分を減少させることにより改善可能であるが、その場合、防曇性が犠牲となる場合がほとんどである。(3)の方法は、一般的に防曇性が発現するほどの撥水性を有するものがほとんどなく、撥水性を有する物質を使用した場合、一般的に基材との密着が困難であるため、単に基材表面に乗っているだけの場合がほとんどであり、防曇持続性に問題がある。(4)の方法は、上記であげたように表面に水分が残らないため見た目にすっきりして、透明感を損なうことがないが、吸水能力に限界があるために、限界を越えると、水滴が除去できず「曇り」が発生する。また、吸水能力が、膜の膨潤による水分取り込みにより発生するため、(2)以上に膜強度低下が起こる。
【0005】
これらのことより、現状では十分な防曇性を示し、各種耐久性に優れた防曇性基材は得られていないが、この二つの機能を満足する防曇剤の出現が待たれている。このような状況の中で、ウレタン樹脂中に界面活性剤を固定することにより、防曇持続性と耐摩耗性の両方を兼ね備えている防曇剤(商品名「VISGARD」、Film Specialties製)として市販されている。なお、この防曇剤については特表2000−515572号公報で開示されている。
【0006】
このようなウレタン樹脂を主成分とした防曇剤を使用した場合は、ウレタン樹脂特有の弾性により耐擦傷性が他の樹脂を使用したものより良好な傾向を示している。さらに、ウレタン成分であるイソシアネートと反応し結合することが可能な官能基(水酸基、アミノ基、メルカプト基等)をもった界面活性剤を用いることにより、ウレタン成分中に強固に固定されることで界面活性剤の流出を防ぎ、防曇性を持続させることが可能となっている。但し、該防曇剤は、界面活性剤による表面親水性とともに、ウレタン樹脂本来の持つ吸水性により防曇性を発現しているため、防曇発現時の吸水により膜強度低下が発生し、直接払拭する可能性のある部位の使用においては、膜剥離等の不具合が発生する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなしたものであって、界面活性剤を含有するウレタン樹脂系防曇剤中にコロイド状シリカとオルガノアルコキシシリカを添加することにより、防曇性、耐水性、耐摩耗性に優れ、長期間にわたり防曇性能を維持することが可能な防曇性基材およびその形成方法を開発した。なお、コロイド状シリカ単独の添加では、一定量以上添加することで耐水性の改善は可能であるが、ウレタン樹脂の弾性による耐摩耗性の発現が、阻害されるため、耐摩耗性と耐水性の両方を得ることは、できなかった。また、オルガノアルコキシシラン単独の添加でも、コロイド状シリカ添加と同様に耐摩耗性と耐水性の両方を得ることはできなかった。そこで、コロイド状シリカとオルガノアルコキシシランを一定量の比率で添加することにより、耐摩耗性と耐水性が両立することを見い出した。
【0008】
すなわち、本発明の防曇性基材は、基材の表面に、界面活性剤を含有するウレタン樹脂にコロイド状シリカおよびオルガノアルコキシシランが混在されてなる吸水性複合膜を被覆してなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の防曇性基材は、吸水性複合膜は、重量百分率で界面活性剤含有ウレタン樹脂の含有率が40wt%〜70wt%、コロイド状シリカの含有率が20wt%〜40wt%、オルガノアルコキシシランの含有率が10wt%〜20wt%より構成されてなることが好ましい
【0010】
界面活性剤含有ウレタン樹脂中の界面活性剤は、イソシアネートと反応し強固に結合する水酸基、アミノ基、メルカプト基から群から選ばれる少なくとも一つの官能基を含み、ウレタン成分であるイソシアネートと反応してウレタン樹脂中に固定されていることが好ましい
【0011】
さらに、前記オルガノアルコキシシランは、一般式R 2 SiR 1 3 (式中、R 1 は炭素数1または2のアルコキシ基、R 2 はアミノ基またはメルカプト基)で表わされることが好ましい
【0012】
また、本発明の防曇性基材の好適な形成方法は、下記の工程により、基材表面に吸水性複合膜を被覆することを特徴とする。(a)基材を用意する工程と、(b)界面活性剤を含有するポリオール成分とイソシアネート成分を混合して界面活性剤含有ウレタン樹脂を形成した後、該樹脂中にコロイド状シリカ、オルガノアルコキシシランおよび溶媒を添加し、混合して塗布液を調製する工程と、(c)前記塗布液を前記基材表面上に塗布し、120℃〜170℃の低温で熱処理によって基材表面に吸水性複合膜を被覆する工程。
【0013】
そして該形成方法において、前記界面活性剤に水酸基、アミノ基、メルカプト基から群から選ばれる少なくとも一つの官能基が含まれていることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の防曇性基材は、基材の表面に、界面活性剤を含有するウレタン樹脂にコロイド状シリカおよびオルガノアルコキシシランが混在されてなる吸水性複合膜を被覆してなることを特徴とする。
【0015】
吸水性複合膜を形成する一方の成分である界面活性剤含有ウレタン樹脂は、界面活性剤とウレタン樹脂成分としてのポリオール、イソシアネートの3成分を含む。その内、ウレタン樹脂成分であるポリオール成分は、一般的に使用されているポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなどの使用が可能で、特に親水性のものが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリブチレングリコールから選ばれた重合体もしくは、共重合体などが挙げられる。
【0016】
また、イソシアネート成分としては、一般的に使用されているイソシアネートプレポリマーを使用することが可能で、特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェノールメチレンジイソシアネート、ジメチルシクロヘキシルジイソシアネートトルエンジイソシアネートナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0017】
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、非イオン系等特に種類の指定はないが、特に非イオン系が有効である。さらに、ウレタン成分であるイソシアネートと反応することを可能とするため、界面活性剤に水酸基、アミノ基、メルカプト基などの官能基が含まれていることが好ましい。
【0018】
また、吸水性複合膜中には、シラン成分として、コロイド状シリカと一般式R2SiR13(式中、R1は炭素数1または2のアルコキシ基、R2はアミノ基または、メルカプト基)で表わされる、オルガノアルコキシシランが添加されており、その含有量は、コロイド状シリカの含有率が20%〜40wt%、オルガノアルコキシシランの含有率が10wt%〜20wt%であることが好ましい。なお、コロイド状シリカの粒径は、50nm以下のものが好ましい。
【0019】
コロイド状シリカもしくはオルガノアルコキシシラン単独の添加においては、両方とも添加率が増加するに従って耐水性は改善されるが、耐摩耗性は悪化する傾向にあり、耐水性と耐摩耗性を両立させることはできなかった。この原因としては、コロイド状シリカもしくはオルガノアルコキシシランを添加することによりウレタン樹脂の弾性が損なわれることにより耐摩耗性が悪化するためと考えられる。そこで、両方を一定量添加することにより、耐水性と耐摩耗性の両立が可能となることを見い出した。但し、ある一定以上添加することで再び耐摩耗性が悪化する傾向にあった。この作用については、明確ではないが、コロイド状シリカとオルガノアルコキシシリカの相互作用によるものと考えられ、ある添加比率を超えたところで過剰分のコロイド状シリカもしくはオルガノアルコキシシランが耐摩耗性に悪影響を与えると考えられる。
【0020】
ここで、コロイド状シリカの含有率が20wt%未満である場合は、耐水性を補うためにはオルガノアルコキシシランを20wt%以上添加する必要があるが、この場合には耐摩耗性が悪化する。一方、コロイド状シリカの含有率が40wt%を超える場合には、オルガノアルコキシシランを添加しても耐摩耗性を良化させることはできない。
【0021】
また、オルガノアルコキシシランについても同様の傾向にあり、オルガノアルコキシシランの含有率が10wt%未満では、耐水性を補うためにコロイド状シリカを添加すると、耐摩耗性が悪化する。一方、オルガノアルコキシシランの含有率が20wt%を超える場合には、コロイド状シリカを添加しても耐摩耗性を良化させることはできない。特に、オルガノアルコキシシランの含有率が5wt%以下になると耐摩耗性が著しく悪化し、後述する耐テーバー摩耗性において10以上となってしまい好ましくないものとなる。
【0022】
これらの成分は、界面活性剤含有ウレタン樹脂とのバインディング性に優れ、防曇性、耐水性等各種物性にバランスよく優れさせるためには、前記コロイド状シリカおよびオルガノアルコキシシランの含有率とともに、界面活性剤含有ウレタン樹脂の含有率は、該吸水性複合膜中の重量比率として40wt%〜70wt%とすることが好ましく、その比率が40wt%未満であると、防曇性が損なわれ、70wt%を超えると添加物によるウレタン樹脂への添加効果が薄れ、良好な耐水性が得られない。
【0023】
次に、本発明の防曇性基材の形成方法は、下記の工程により、基材表面に吸水性複合膜を被覆することを特徴とする。(a)基材を用意する工程と、(b)界面活性剤を含有するポリオール成分とイソシアネート成分を混合して界面活性剤含有ウレタン樹脂を形成した後、該樹脂中にコロイド状シリカ、オルガノアルコキシシランおよび溶媒を添加し、混合して塗布液を調製する工程と、(c)前記塗布液を前記基材表面上に塗布し、120℃〜170℃の低温で熱処理によって基材表面に吸水性複合膜を被覆する工程。
【0024】
上記のように、吸水性複合膜の各形成原料を希釈溶媒に添加し、更に必要であればレベリング剤を添加、混合して塗布液とする。なお、希釈溶媒としては、ウレタン成分との相溶性の面より、メチルプロピレングリコール、ジアセトンアルコールが好ましい。
【0025】
次いで、これらを塗布液として、基材上へ塗布する。塗布手段としてはディップコート、フローコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の公知手段が採用できる。塗布後、120℃〜170℃の比較的低温で、30分〜60分加熱することにより、溶媒の殆どが飛散するのと同時にコロイド状シリカおよびオルガノアルコキシシランがマトリックスとして作用する。
【0026】
吸水性複合膜の膜厚は、熱処理後において5〜30μm程度にするのが望ましく、5μm未満であると、防曇耐久性が劣る傾向にあり、他方30μmを越えると外観品質において光学歪みが発生する可能性がある。
【0027】
本発明に使用する基材としては、代表的なものとしてはガラスが用いられるが、そのガラスは自動車用ならびに建築用、産業用ガラス等に通常用いられている板ガラス、所謂フロート板ガラスなどであり、クリアをはじめグリ−ン、ブロンズ等各種着色ガラスや各種機能性ガラス、強化ガラスやそれに類するガラス、合せガラスのほか複層ガラス等、さらに平板あるいは曲げ板等各種板ガラス製品として使用できることは言うまでもない。また、板厚としては、例えば約1.0mm程度以上約12mm程度以下であり、建築用としては約3.0mm程度以上約10mm程度以下が好ましく、自動車用としては約2.0mm程度以上約5.0mm程度以下のガラスである。なお、比較的低温でガラス、プラスチック等の基材表面に吸水性複合膜を形成することができるので、例えば、鏡加工をしたガラス、曲げ加工、成型まで完了した自動車用ガラス等に、全面もしくは部分的に容易に成膜することができる。
【0028】
また、本発明の基材は、ガラスに限定されるものではなく、ガラス以外でも樹脂、金属、セラミックスなど、上記温度範囲で乾燥処理をしても変質しないものであれば使用することができる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。
【0030】
なお、本発明および比較例で得られた、防曇性被膜を有する防曇性光学部品は、以下に示す測定法により諸物性を測定した。
〔繰返防曇性〕:”JIS S 4030眼鏡用くもり止め剤試験法”により43℃に設定した温水の水蒸気中に3分保持した時の曇り具合と、保持後に常温(23℃、63%RH)中に取り出したときの呼気による曇り具合を観察し、この操作を10サイクルまで行い、外観に異常がなく曇りが発生しないものを合格とした。
〔冷温防曇性〕:4℃に設定した冷蔵庫内に防曇性光学部品を30分保持した後、常温(23℃、63%RH)中に取り出したときの外観、曇り具合、呼気による曇りを観察し、この操作を10サイクルまで行い、外観に異常がなく曇りが発生しないものを合格とした。
〔耐テーバー摩耗性〕:摩耗輪としてCF−10Fを使用して荷重2.45Nで200回実施した時の曇化変化を測定し、曇化変化△H≦10のものを合格とした。
〔耐水性〕:室温(23±2℃)の水中に1時間浸漬し、浸漬後に外観に異常がなく、爪による払拭で剥離しないものを合格とした。
【0031】
実施例1
(界面活性剤含有ウレタン樹脂系防曇剤の調整)
界面活性剤含有ウレタン樹脂系防曇剤として、市販されている防曇剤(商品名「VISGARD」、Film Specialties製)を用いる。本防曇剤は、ポリオールと界面活性剤を含有したa薬液とイソシアネート成分を含むb薬液の2液式となっていることより、重量比でa成分10に対してb成分4の割合で調合することにより防曇薬液を得た。
【0032】
(吸水性複合膜用薬液の調整)
コロイド状シリカ(商品名「NPC−ST」、固形分20%、日産化学製)、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(商品名「TSL8380」東芝シリコーン製)とを、上記界面活性剤含有ウレタン系防曇薬液中に添加するとともに、メチルプロピレングリコールを希釈溶媒として固形分濃度30wt%になるように混合処理することにより吸水性複合膜用薬液を調製した。なお、前記吸水性複合膜用薬液は、成膜後の吸水性複合膜中の界面活性剤含有ウレタン樹脂成分が70wt%、コロイド状シリカが20wt%、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが10wt%になるように調整した。
【0033】
(吸水性複合膜の形成)
上記で調整した薬液を塗布液とした浸漬槽内に、片面をマスキングしたガラス板を浸漬し引き上げるデッピング法により塗布し、該被塗布ガラス板を約150℃で約30分程度加熱乾燥することにより、膜厚17.5μmを有する吸水性複合膜を形成した。
【0034】
上記方法で得られた吸水性複合膜を有するガラスの性能は、表1に示すように各種防曇性能、耐テーバー摩耗性、耐水性が優れたものであることが確認された。
【0035】
【表1】
Figure 0004091757
【0036】
実施例2
実施例1と比較して、吸水性複合膜中の界面活性剤含有ウレタン樹脂系防曇剤「VISGARD」の含有率が40wt%、コロイド状シリカの含有率が40wt%、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランの含有率が20wt%となるように調製した以外は、実施例1と同様の操作で膜厚18μmを有する吸水性複合膜を形成した。評価した結果、実施例1と同様に優れた物性を有するものであった。
【0037】
実施例3
実施例1と比較して、吸水性複合膜中のオルガノアルコキシシランとしてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランの代わりにγ−アミノプロピルトリエトキシシランを用いた以外は、実施例1と同様の操作で膜厚17μmを有する吸水性複合膜を形成した。評価した結果、実施例1と同様に優れた物性を有するものであった。
【0038】
比較例1
実施例1と比較して、吸水性複合膜用薬液として界面活性剤含有ウレタン樹脂系防曇剤「VISGARD」の単独組成とした以外は、実施例1と同様の操作で膜厚18μmを有する吸水性複合膜を形成した。評価した結果、耐水性試験において、1時間の水浸漬により爪での軽い払拭により膜剥離が発生した。
【0039】
比較例2
実施例1と比較して、吸水性複合膜用薬液として界面活性剤含有ウレタン樹脂系防曇剤「VISGARD」の含有率が60wt%、コロイド状シリカの含有率が40wt%とした以外は、実施例1と同様の操作で膜厚15μmを有する吸水性複合膜を形成した。評価した結果、耐テーバー摩耗性において10以上となり不合格となった。
【0040】
比較例3
実施例1と比較して、吸水性複合膜用薬液として界面活性剤含有ウレタン樹脂系防曇剤「VISGARD」の含有率が60wt%、γ−メルカプトトリメトキシシランの含有率が40wt%とした以外は、実施例1と同様の操作で膜厚17μmを有する吸水性複合膜を形成した。評価した結果、耐テーバー摩耗性は良好であったが、耐水性において試験後に爪での払拭により簡単に剥離してしまった。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、本発明の防曇性基材は、界面活性剤含有ウレタン樹脂系被膜の防曇持続性、テーバー摩耗性を低下させることなく耐水性を維持することが可能となり、特に、浴室用鏡等の高湿度環境および頻繁に払拭を行うような場所においても使用することが可能となった。

Claims (6)

  1. 基材の表面に、界面活性剤を含有するウレタン樹脂にコロイド状シリカおよびオルガノアルコキシシランが混在されてなる吸水性複合膜を被覆してなることを特徴とする防曇性基材。
  2. 吸水性複合膜は、重量百分率で界面活性剤含有ウレタン樹脂の含有率が40wt%〜70wt%、コロイド状シリカの含有率が20wt%〜40wt%、オルガノアルコキシシランの含有率が10wt%〜20wt%より構成されてなることを特徴とする請求項1記載の防曇性基材。
  3. 界面活性剤含有ウレタン樹脂中の界面活性剤は、イソシアネートと反応し強固に結合する水酸基、アミノ基、メルカプト基から群から選ばれる少なくとも一つの官能基を含み、ウレタン成分であるイソシアネートと反応してウレタン樹脂中に固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の防曇性基材。
  4. オルガノアルコキシシランは、一般式R2SiR13(式中、R1は炭素数1または2のアルコキシ基、R2はアミノ基またはメルカプト基)で表わされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の防曇性基材。
  5. 下記の工程により、基材表面に吸水性複合膜を被覆することを特徴とする防曇性基材の形成方法。
    (a)基材を用意する工程と、
    (b)界面活性剤を含有するポリオール成分とイソシアネート成分を混合して界面活性剤含有ウレタン樹脂を形成した後、該樹脂中にコロイド状シリカ、オルガノアルコキシシランおよび溶媒を添加し、混合して塗布液を調製する工程と、
    (c)前記塗布液を前記基材表面上に塗布し、120℃〜170℃の低温で熱処理によって基材表面に吸水性複合膜を被覆する工程。
  6. 前記界面活性剤に水酸基、アミノ基、メルカプト基から群から選ばれる少なくとも一つの官能基が含まれていることを特徴とする請求項に記載の防曇性基材の形成方法。
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