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JP4079804B2 - ポリオレフィン側鎖含有グラフトポリマーセグメントを有するブロックポリマー - Google Patents

ポリオレフィン側鎖含有グラフトポリマーセグメントを有するブロックポリマー Download PDF

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JP4079804B2
JP4079804B2 JP2003069466A JP2003069466A JP4079804B2 JP 4079804 B2 JP4079804 B2 JP 4079804B2 JP 2003069466 A JP2003069466 A JP 2003069466A JP 2003069466 A JP2003069466 A JP 2003069466A JP 4079804 B2 JP4079804 B2 JP 4079804B2
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polymer
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信夫 川原
智昭 松木
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Mitsui Chemicals Inc
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  • Graft Or Block Polymers (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも1種類のポリオレフィンを側鎖に持つグラフトポリマーセグメントを有するブロックポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンは、軽量かつ安価な上に、優れた物性と加工性を持つという特性を有する反面、印刷性、塗装性、耐熱性、耐衝撃性および他の極性を有するポリマーとの相溶性などの高機能性を付与するという観点ではその高い化学的安定性が妨げとなっている。この欠点を補い、ポリオレフィンに機能性を持たせる方法として、例えばラジカル重合法によりオレフィンと酢酸ビニル、メタクリル酸エステルなどの極性モノマーを共重合する方法や、過酸化物の存在下にポリオレフィンに無水マレイン酸などの極性モノマーをグラフトさせる方法が知られている。しかしながら、これらの方法は得られるポリマー中におけるポリオレフィン部分の構造を精密に制御することが困難であり、ポリオレフィン本来の優れた物性を保持するには不充分であった。
【0003】
構造が精密に制御されたポリオレフィン部分を有し、かつポリオレフィンのみでは発現し得ない機能を有するポリマーを製造する手段の一つとして、末端に重合性のビニル結合を有するポリオレフィンマクロモノマーを用い、それを単独重合あるいは官能基を持った様々なビニルモノマーと共重合させることによりポリオレフィン側鎖を有するグラフトポリマーとする方法が知られている。このようなグラフトポリマーの製造法としては、例えば特開平10−182766号公報には、リビング重合法を利用して合成したポリプロピレン系マクロモノマーを用いた方法が記載されている。
【0004】
このようなリビング重合を用いた方法では、ポリオレフィン側鎖の分子量分布(Mw/Mn)は約1になる。しかしながら重合体の成形加工面を考えるとポリオレフィンセグメントの分子量分布(Mw/Mn)は大きいことが好ましく、リビング重合法によって得られるポリオレフィンマクロモノマーを用いてグラフトポリマーを製造する方法はポリオレフィンセグメントに期待される成形加工性の点で充分満足すべき方法とは言い難い。しかも、特開平10−182766号公報に記載の方法ではオレフィン重合触媒として特定の構造を有するバナジウム化合物を用いるために製造できるポリオレフィンマクロモノマーの種類はポリプロピレン系重合体に限られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かかる現状に鑑みて本発明者らは鋭意検討の結果、ポリオレフィン製造用触媒として工業的に広く用いられている固体状チタン触媒やメタロセン触媒などに代表される遷移金属化合物を成分として含有する配位重合触媒により製造したポリオレフィンマクロモノマーを用いることにより、リビング重合によって得られる分子量分布(Mw/Mn)の狭いポリプロピレン系重合体に限定されることなく様々な種類のポリオレフィンを側鎖に導入した、成形加工性の良好なポリオレフィンを側鎖に持つグラフトポリマーセグメントを有するブロックポリマー、およびその製造方法を発明するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るブロックポリマーは、下記一般式(I)で表されるポリオレフィン鎖を有するマクロモノマー(C1)、下記一般式(II)で表されるポリオレフィン鎖を有するマクロモノマー(C2)
【0007】
【化3】
Figure 0004079804
【0008】
【化4】
Figure 0004079804
〔式(I)(II)中、R1は水素原子またはメチル基であり、Xはヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基であり、P1はCH2=CHR2(R2は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である。〕
から選ばれるマクロモノマーを単独重合あるいは2種類以上を共重合、または(C1)および(C2)から選ばれる少なくとも1種類のマクロモノマーと炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物から選ばれる1種以上のモノマー(D)とを共重合することにより得られる、ポリオレフィンを側鎖に有するグラフトポリマーセグメント(A)と、付加重合可能なモノマー(E)または開環重合可能なモノマー(F)を重合することにより得られるポリマーセグメント(B)とが結合したブロックポリマーである。
【0009】
ポリオレフィンを側鎖に有するグラフトポリマーセグメント(A)としては、上記ポリオレフィンを有するマクロモノマー(C1)または(C2)を単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて、または(C1)および(C2)から選ばれる少なくとも1種類のマクロモノマーと炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物から選ばれる1種以上のモノマー(D)とを組み合わせて共重合することにより得られるものであれば何でもよいが、具体的には、主鎖としてはポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリ(メタ)アクリルアミド系ポリマー、ポリ(メタ)アクリロニトリル系ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーなどを、側鎖としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリヘキセンなどのα−オレフィンのホモ重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などのエチレン系共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体、プロピレン−オクテン共重合体などのプロピレン系共重合体などを例示することができる。
【0010】
モノマー(D)は、炭素ー炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物から選ばれる。炭素−炭素不飽和結合とは炭素−炭素二重結合または炭素ー炭素三重結合である。このような有機化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル系モノマーエチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー、N−ビニルカルバゾール塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール挙げられる。これらの有機化合物は、単独で、または2種類以上を組み合わせて成分(D)として使用しても構わない。
【0011】
ポリマーセグメント(B)としては、付加重合可能なモノマー(E)を重合することにより得られるポリマーや、開環重合可能なモノマー(F)を開環重合することにより得られるポリマーであれば何でもよいが、具体的には、ポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリ(メタ)アクリルアミド系ポリマー、ポリ(メタ)アクリロニトリル系ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー、ポリオキシアルキレン系ポリマー、ポリエステル系ポリマーなどを例示することができる。また、上記ポリオレフィン鎖を有するマクロモノマー(C1)、(C2)を単独あるいは2種類以上を組み合わせて、または(C1)および(C2)から選ばれる少なくとも1種類のマクロモノマーと上記モノマー(D)とを組み合わせて共重合することにより得られる、ポリオレフィンを側鎖に有するグラフトポリマーもポリマーセグメント(B)として使用できるが、その場合、上記セグメント(A)とセグメント(B)とは互いに異なるセグメントであることが必要とされる。
【0012】
付加重合可能なモノマー(E)は、炭素ー炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物から選ばれるモノマーであり、上記モノマー(D)と同様の化合物を例示することができる。
【0013】
開環重合可能なモノマー(F)としては、オキシラン化合物、ラクトン化合物が挙げられる。具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリンなどのオキシラン化合物類、β−プロピオラクトン、α、α−ビス(クロロメチル)−β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、グリコリド、ラクチド、トリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトンなどのラクトン化合物類などが挙げられる。
【0014】
以下に、本発明に係るブロックポリマーの製造法について具体的に説明する。本発明に係るブロックポリマーは、
(方法1)セグメント(A)の重合を行った後、引き続きセグメント(B)の重合を行う方法、
(方法2)セグメント(B)の重合を行った後、引き続きセグメント(A)の重合を行う方法、
(方法3)セグメント(A)およびセグメント(B)をそれぞれ別個に重合した後、両セグメントをカップリングする方法
のいずれかの方法により製造することが好ましい。以下、これらの(方法1)、(方法2)および(方法3)について順次説明する。
【0015】
◆◆(方法1)セグメント(A)の重合を行った後、引き続きセグメント(B)の重合を行う方法◆◆
最初にセグメント(A)の原料であるマクロモノマー類の製造について説明した後、次いでセグメント(A)の重合、セグメント(B)の重合によって本発明のブロックポリマーを製造する方法について説明する。
【0016】
マクロモノマー類の製造
本発明で使用されるポリオレフィンマクロモノマーのうち、上記一般式(I)で表されるポリオレフィン鎖P1の末端にスチリル基を有するポリオレフィンマクロモノマー(C1)は、例えば下記一般式(III)
【0017】
【化5】
Figure 0004079804
〔式(III)中、Yはハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、エポキシ基、アミノ基、イソシアナート基から選ばれる官能基を含む基である。〕で示されるスチレン誘導体と、下記一般式(IV)
【0018】
【化6】
Figure 0004079804
〔式(IV)中、P1は式(I)(II)と同一であり、Zは水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、酸無水物基から選ばれる官能基である。〕で示される官能基含有ポリオレフィンとを反応させることにより得られる。
【0019】
上記一般式(III)で示されるスチレン誘導体の具体例としては、例えばm−クロロスチレン、p−クロロスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、m−ヨードスチレン、p−ヨードスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、m−ブロモメチルスチレン、p−ブロモメチルスチレン、m−ヨードメチルスチレン、p−ヨードメチルスチレン、p−(2−クロロエチル)スチレン、p−(2−ブロモエチル)スチレン、p−(3−クロロプロピル)スチレン、p−(3−ブロモプロピル)スチレン、p−(4−クロロブチル)スチレン、p−(4−ブロモブチル)スチレン、p−(5−クロロペンチル)スチレン、p−(5−ブロモペンチル)スチレン、p−(6−クロロヘキシル)スチレン、p−(6−ブロモヘキシル)スチレンなどのハロゲン含有スチレン類、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシメチルスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−(2−ヒドロキシエチル)スチレン、p−(3−ヒドロキシプロピル)スチレン、p−(4−ヒドロキシブチル)スチレンなどの水酸基含有スチレン類、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸、(3−ビニルフェニル)酢酸、(4−ビニルフェニル)酢酸、3−(4−ビニルフェニル)プロピオン酸、4−(4−ビニルフェニル)ブタン酸、5−(4−ビニルフェニル)ペンタン酸、6−(4−ビニルフェニル)ヘキサン酸などのカルボキシル基含有スチレン類、3−ビニル安息香酸クロリド、4−ビニル安息香酸クロリド、3−ビニル安息香酸ブロミド、4−ビニル安息香酸ブロミド、3−ビニル安息香酸ヨージド、4−ビニル安息香酸ヨージド、(3−ビニルフェニル)酢酸クロリド、(4−ビニルフェニル)酢酸クロリド、3−(4−ビニルフェニル)プロピオン酸クロリド、4−(4−ビニルフェニル)ブタン酸クロリド、5−(4−ビニルフェニル)ペンタン酸クロリド、6−(4−ビニルフェニル)ヘキサン酸クロリドなどの酸ハロゲン化物基含有スチレン類、3−ビニルアニリン、4−ビニルアニリン、3−ビニルベンジルアミン、4−ビニルベンジルアミン、2−(4−ビニルフェニル)エチルアミン、3−(4−ビニルフェニル)プロピルアミン、4−(4−ビニルフェニル)ブチルアミン、5−(4−ビニルフェニル)ペンチルアミンなどのアミノ基含有スチレン類、グリシジル−(3−ビニルベンジル)エーテル、グリシジル−(4−ビニルベンジル)エーテルなどのエポキシ基含有スチレン類、3−イソシアナートスチレン、4−イソシアナートスチレン、3−イソシアナートメチルスチレン、4−イソシアナートメチルスチレン、4−(2−イソシアナートエチル)スチレン、4−(3−イソシアナートプロピル)スチレン、4−(4−イソシアナートブチル)スチレンなどのイソシアナート基含有スチレン類などが挙げられる。
【0020】
上記一般式(IV)で示される官能基含有ポリオレフィンは、例えば、
(方法a)13族元素を含む基を有するポリオレフィンを製造し、次いで該ポリオレフィンの13族元素を含む基と官能基構造を有する化合物との置換反応を行った後加溶媒分解するか、または、
(方法b)該ポリオレフィンの13族元素を含む基を加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応を行った後加溶媒分解する、ことにより製造することができるが、本発明ではこれらの方法に何ら限定されるものではない。以下、上記の製造方法について詳細に説明する。
【0021】
(方法a)および(方法b)で用いられる、13族元素を含む基を有するポリオレフィンの製造方法は、(A)13族元素を含む化合物の存在下で公知重合触媒によってオレフィン重合する方法と、(B)末端に不飽和結合を持つポリオレフィンと13族元素を含む化合物と反応によって製造する方法に大別される。以下、各々について説明する。
【0022】
〔(A)13族元素を含む化合物の存在下でオレフィン重合する方法〕
13族元素を含む基を有するポリオレフィンは、例えば既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒を用いて13族元素を含む化合物の存在下、CH2=CHR2で示されるオレフィンを単独重合または共重合させて製造される。R2は、炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子である。
このようなCH2 =CHR2 で示されるオレフィンとして具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセンなどが挙げられる。
【0023】
13族元素を含む化合物としては、例えば有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば下記式(V)で示される有機アルミニウム化合物を例示することができる。
a n AlA3-n ・・…(V)
〔式(V)中、Ra は炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、Aはハロゲンまたは水素であり、nは1〜3である。〕
a は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、例えばアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などである。
【0024】
このような有機アルミニウム化合物として具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;トリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムジハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。
【0025】
また有機アルミニウム化合物として、下記式(VI)で示される化合物を用いることもできる。
a n AlB3-n ・・…(VI)
上記式(VI)において、Ra は上記と同様であり、Bは−ORb 基、−OSiRc 3 基、−OAlRd 2 基、−NRe 2 基、−SiRf 3 基または−N(Rg )AlRh 2 基であり、nは1〜2であり、Rb 、Rc 、Rd およびRh はメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、Re は水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、RfおよびRgはメチル基、エチル基などである。
【0026】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には、以下のような化合物を例示できる。
(i)Ra nAl(ORb)3-nで表される化合物、例えば、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシドなど、(ii)Ra nAl(OSiRc)3-nで表される化合物、例えば、Et2Al(OSiMe3)、(iso-Bu)2Al(OSiMe3)、(iso-Bu)2Al(OSiEt3)など、(iii)Ra nAl(OAlRd 2)3-nで表される化合物、例えば、 Et2AlOAlEt2、(iso-Bu)2AlOAl(iso-Bu)2 など、(iv)Ra nAl(NRe 2)3-nで表される化合物、例えば、Me2AlNEt2、Et2AlNHMe、Me2AlNHEt 、Et2AlN(Me3Si)2 、(iso-Bu)2AlN(Me3Si)2 など、(v)Ra n Al(SiRf 3)3-nで表される化合物、例えば、(iso-Bu)2AlSiMe3など、(vi)Ra n Al〔N(Rg )-AlRh 2 3-nで表される化合物、例えば、Et2AlN(Me)-AlEt2、(iso-Bu)2AlN(Et)Al(iso-Bu)2 など。
【0027】
また、これに類似した化合物、例えば酸素原子、窒素原子を介して2以上のアルミニウムが結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。より具体的には、(C25)2AlOAl(C25)2 、(C49)2AlOAl(C49)2 、(C25)2AlN(C25)Al(C25)2、など、さらにメチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類(有機アルミニウムオキシ化合物)を挙げることができる。
【0028】
また、下記式(VII)の有機アルミニウム化合物を用いることもできる。
a AlAB ・・…(VII)
〔Ra、A、Bは上記式(V)または(VI)と同様である。〕
【0029】
13族元素を含む化合物として、有機ホウ素化合物を用いることもできる。有機ホウ素化合物としては、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロン、テキシルボラン、ジシクロヘキシルボラン、ジシアミルボラン、ジイソピノカンフェニルボラン、9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、カテコールボラン、B-ブロモ-9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、ボラン-トリエチルアミン錯体、ボラン-メチルスルフィド錯体などが挙げられる。
【0030】
また、有機ホウ素化合物としてイオン性化合物を使用してもよい。このような化合物としては、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、N,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[トリ(n-ブチル)アンモンニウム]ノナボレート、ビス[トリ(n-ブチル)アンモンニウム]デカボレートなどが挙げられる。
また、これらの13族元素を含む化合物は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いることもできる。
【0031】
〔(B)末端に不飽和結合を持つポリオレフィンから製造する方法〕
また、13族元素を含む基を有するポリオレフィンは、末端に不飽和結合を持つポリオレフィンを用いて製造することもできる。具体的には、末端が不飽和結合であるポリオレフィンと、13族元素を含む化合物、例えば有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物とを反応させて、13族元素を含む基を有するポリオレフィンとする方法である。
【0032】
片末端が不飽和結合であるポリオレフィン(末端不飽和ポリオレフィン)は、例えば既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒の存在下に炭素原子数2〜20のオレフィンを重合または共重合させて製造することができる。炭素原子数2〜20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテンなどが好ましく用いられる。
このようにして得られた末端不飽和ポリオレフィンと13族元素を含む化合物を反応させて13族元素を含む基を有するポリオレフィンに変換する。なお、得られたポリオレフィンが、片末端に13族元素が結合したものと、片末端が不飽和結合末端であるものとの混合物である場合にも、必要に応じて、片末端が不飽和結合末端であるポリオレフィンの末端を13族元素が結合した末端に変換してもよい。
【0033】
反応に用いられる13族元素を含む化合物は、有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物が好ましく用いられる。中でも、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハイドライドまたは1つ以上の水素−ホウ素結合を有するホウ素化合物であることがより好ましく、有機アルミニウムとしてはジアルキルアルミニウムハイドライドが特に好ましく、有機ホウ素化合物としては9-ボラビシクロ[3,3,1]ノナンが特に好ましい。
【0034】
片末端が不飽和結合末端であるポリオレフィンと、13族元素を含む化合物との反応は、例えば以下のようにして行われる。
(i) 末端がビニリデン基であるポリプロピレン0.1〜50gと、ジイソブチルアルミニウムハイドライドの0.01〜5モル/リットル−オクタン溶液を5〜1000ミリリットルとを混合し、0.5〜6時間還流させる。
(ii) 末端がビニリデン基であるポリプロピレン0.1〜50gと、5〜1000ミリリットルの無水テトラヒドロフランと、0.1〜50ミリリットルの9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナンの0.05〜10モル/リットル−テトラヒドロフラン溶液とを混合し、20〜65℃で0.5〜24時間攪拌する。
以上のようにして、13族元素を含む基を有するポリオレフィンが製造される。
【0035】
〔一般式(IV)で示される官能基含有ポリオレフィンへの変換〕
このようにして製造された13族元素を含む基を有するポリオレフィンは、
(方法a)該ポリオレフィンの13族元素を含む基と官能基構造を有する化合物との置換反応を行い、次いで加溶媒分解するか、または、
(方法b)該ポリオレフィンの13族元素を含む基を加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応を行い、次いで加溶媒分解することにより、一般式(IV)におけるZが水酸基である下記一般式(VIII)で示されるポリオレフィンに変換することができる。
【0036】
【化7】
Figure 0004079804
式中、P1は前記と同様である。
【0037】
(方法a)で用いられる、官能基構造を有する化合物としては、ハロゲンガス、メチルクロロホルミエート、フタル酸クロライドなどが挙げられる。また、(方法b)で用いられる、加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物としては、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素などが挙げられる。
【0038】
上記のようにして得られた13族元素を含む基を有するポリオレフィンの13族元素を含む基と、官能基構造を有する化合物または加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応は、通常0〜300℃、好ましくは10〜200℃の温度で、0〜100時間、好ましくは0.5〜50時間行われる。置換反応を行った後、加溶媒分解する際の温度は、通常0〜100℃、好ましくは10〜80℃の温度であり、加溶媒分解時間は、0〜100時間、好ましくは0.5〜50時間である。加溶媒分解に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、水などが挙げられる。
【0039】
また、上記一般式(IV)で示される官能基を有するポリオレフィンのうち、Zがエポキシ基であるポリオレフィンは、前記の方法で製造された末端不飽和ポリオレフィンを、例えば特開昭63−305104号公報などに示される方法を用いて不飽和結合をエポキシ化することによっても製造することができる。
具体的には、上記の方法で製造された末端不飽和ポリオレフィンに、1) ギ酸、酢酸などの有機酸と過酸化水素との混合物を反応させる、あるいは、2) m−クロロ過安息香酸などの有機過酸化物を反応させることによって製造することができる。
【0040】
さらに、上記一般式(IV)で示される官能基を有するポリオレフィンのうち、Zが酸無水物基であるポリオレフィンは、上記の方法で製造された末端不飽和ポリオレフィンを、例えばMakromol. Chem. Macromol. Symp., 48/49, 317 (1991)、あるいはPolymer, 43, 6351 (2002) などに示される方法を用いて、例えば無水マレイン酸などと熱反応させることにより末端に酸無水物を導入する方法を用いて製造することができる。
また、上記一般式(IV)で示される官能基を有するポリオレフィンのうち、Zがカルボキシル基であるポリオレフィンは、上記一般式(VIII)で示される水酸基を有するポリオレフィンを酸化することにより水酸基をカルボキシル基に変換する方法を用いて製造することができる。
【0041】
また、上記一般式(IV)で示される官能基を有するポリオレフィンは、既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒を用い、CH2=CHR3で示されるオレフィンと官能基を有するオレフィン類とを共重合することによっても製造することが可能である。官能基を有するオレフィン類を末端に選択的に導入する方法については、例えばJ. Am. Chem. Soc., 124, 1176 (2002)に示されるような方法を例示することができる。R3は、炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子である。
【0042】
このようなCH2 =CHR3 で示されるオレフィンとして具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセンなどが挙げられる。
共重合に用いられる官能基を有するオレフィン類としては、アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、10−ウンデセン−1−オールなどの炭化水素部分が直鎖状である不飽和アルコール類、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸などの不飽和カルボン酸類、アリルアミン、5−ヘキセンアミン、6−ヘプテンアミンなどの不飽和アミン類、(2,7−オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物および上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸無水物基に置き換えた化合物などの不飽和酸無水物類、上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸ハライド基に置き換えた化合物などの不飽和カルボン酸ハライド類、4−エポキシ−1−ブテン、5−エポキシ−1−ペンテン、6−エポキシ−1−ヘキセン、7−エポキシ−1−ヘプテン、8−エポキシ−1−オクテン、9−エポキシ−1−ノネン、10−エポキシ−1−デセン、11−エポキシ−1−ウンデセンなどの不飽和エポキシ化合物類などが挙げられる。
【0043】
上記一般式(I)で示されるポリオレフィン鎖Pの末端にスチリル基を有するポリオレフィンマクロモノマーを製造する際の、上記一般式(III)で示されるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)で示される官能基を有するポリオレフィンとの組み合わせについては、例えば下記に示される組み合わせが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
(1)上記一般式(III)において、Yがカルボキシル基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)において、Zが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(2)上記一般式(III)において、Yがカルボキシル基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)において、Zがアミノ基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(3)上記一般式(III)において、Yが水酸基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)において、Zがエポキシ基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(4)上記一般式(III)において、Yが水酸基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)において、Zがカルボキシル基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(5)上記一般式(III)において、Yが水酸基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)において、Zが酸無水物基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(6)上記一般式(III)において、Yが水酸基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)において、Zが酸ハロゲン基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(7)上記一般式(III)において、Yが酸ハロゲン基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)において、Zが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(8)上記一般式(III)において、Yが酸ハロゲン基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)において、Zがアミノ基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(9)上記一般式(III)において、Yがハロゲンを含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)において、Zが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(10)上記一般式(III)において、Yがエポキシ基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)において、Zが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(11)上記一般式(III)において、Yがアミノ基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)において、Zがカルボキシル基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(12)上記一般式(III)において、Yがアミノ基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)において、Zが酸ハロゲン基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(13)上記一般式(III)において、Yがアミノ基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)において、Zが酸無水物基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(14)上記一般式(III)において、Yがイソシアナート基を含む基であるスチレン誘導体と、上記一般式(IV)において、Zが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
【0044】
本発明の末端にスチリル基を有するポリオレフィンマクロモノマーを製造する際の上記一般式(IV)で示される官能基を有するポリオレフィンに対する上記一般式(III)で示されるスチレン誘導体の使用量は、官能基を有するポリオレフィンに対して、通常0.01〜100倍モル、好ましくは0.1〜10倍モルである。
【0045】
反応溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘキセンなどの脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、2,4-ジクロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても、複数を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0046】
上記一般式(III)で示されるスチレン誘導体と上記一般式(IV)で示される官能基を有するポリオレフィンとの反応に際しては、反応を効率よく進行させるために、必要に応じて縮合剤を添加することができる。
縮合剤としては、例えば濃硫酸、五酸化二リン、無水塩化亜鉛などの無機脱水縮合剤類、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド)塩酸塩などのカルボジイミド類、ポリリン酸、無水酢酸、カルボニルジイミダゾール、p−トルエンスルホニルクロリドなどが挙げられる。
【0047】
また、上記一般式(III)で示されるスチレン誘導体と上記一般式(IV)で示される官能基を有するポリオレフィンとの反応は塩基性触媒の存在下で行うのが好ましい。具体的には、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリンなどの有機アミン類、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム,n−ブチルリチウムなどのアルカリ金属化合物類などが挙げられる。
【0048】
なお、上記一般式(III)で示されるスチレン誘導体および上記一般式(IV)で示される官能基を有するポリオレフィンのうち、官能基としてカルボキシル基を持つ場合には、まず、例えば五塩化リンや塩化チオニルなどと反応させて酸クロリド化合物とし、これとそれぞれ対応する上記一般式(IV)で示される官能基を有するポリオレフィンおよび上記一般式(III)で示されるスチレン誘導体とを適当な溶媒中、反応させることによっても製造することができる。
【0049】
また、上記一般式(III)で示されるスチレン誘導体のうち、ハロゲン原子を含む基を持つ場合には、まず、Zが水酸基を有する官能基である上記一般式(IV)で示される官能基を有するポリオレフィンを金属アルコキシド化剤でアルコキシドに変換し、これとハロゲン原子を含む基を有する上記一般式(III)で示されるスチレン誘導体とを適当な溶媒中、反応させることによっても製造することができる。金属アルコキシド化剤としては、例えば金属ナトリウム、金属カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ソーダアミドなどが挙げられる。
【0050】
上記一般式(II)で表される、末端にアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するポリオレフィンマクロモノマー(C2)は、例えば末端に水酸基を有するポリオレフィンとアクリル酸ハライド、メタクリル酸ハライド、アクリル酸またはメタクリル酸とを反応させることにより得られる。
【0051】
末端に水酸基を有するポリオレフィンは、例えば上記一般式(IV)で表される末端に官能基を有するポリオレフィンのうち、Zが水酸基であるものと同様の方法で製造される。得られた末端に水酸基を有するポリオレフィンとアクリル酸ハライド、メタクリル酸ハライド、アクリル酸またはメタクリル酸との反応は、例えば以下のようにして行われる。
▲1▼トリエチルアミン等の塩基存在下、末端に水酸基を有するポリオレフィンをアクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等のアクリル酸ハライドまたはメタクリル酸ハライドと反応させる方法。
▲2▼酸触媒の存在下、末端に水酸基を有するポリオレフィンをアクリル酸またはメタクリル酸と反応させる方法。
【0052】
反応に際し、アクリル酸ハライド、メタクリル酸ハライド、アクリル酸またはメタクリル酸は、ポリオレフィン末端の水酸基1モルに対し、0.1〜100モル、好ましくは0.2〜50モルの範囲で用いられる。反応温度は、通常−100〜150℃、好ましくは0〜120℃であり、反応時間は通常0.1〜48時間、好ましくは0.5〜12時間である。
【0053】
このようにして上記一般式(I)で表されるポリオレフィンマクロモノマー(C1)、上記一般式(II)で表されるポリオレフィンマクロモノマー(C2)が製造される。
【0054】
セグメント(A)の製造
セグメント(A)は、上記のようにして得られた下記一般式(I)で表されるマクロモノマー(C1)および下記一般式(II)で表されるマクロモノマー(C2)
【0055】
【化8】
Figure 0004079804
【0056】
【化9】
Figure 0004079804
〔式(I)(II)中、R1は水素原子またはメチル基であり、Xはヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基であり、P1はCH2=CHR2(R2は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である。〕から選ばれるマクロモノマーを単独重合あるいは2種類以上を共重合、または(C1)および(C2)から選ばれる少なくとも1種類のマクロモノマーと炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物から選ばれる1種以上のモノマー(D)とを共重合するすることにより製造することができる。重合方法は、ラジカル重合、アニオン重合方法が好んで用いられる。
【0057】
ラジカル重合においては、開始剤として、例えばChem. Rev., 101, 3661 (2001)で開示されているように、ニトロキシドを有する基を含み、熱的な開裂によりラジカルを発生させるものや、Chem. Rev., 101, 2921 (2001)やChem. Rev., 101, 3689 (2001)などで開示されているように、末端ハロゲン原子を有する基を含み、ルテニウムや銅の塩化物またはそれらの遷移金属原子を有する錯体を添加することによりラジカルを発生させるものなど、一般にリビングラジカル重合開始剤として用いられるものを使用することができる。具体的には、過酸化ベンゾイルやジクミルパーオキシドなどの過酸化物と2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)や4−オキソ−TEMPOなどのニトロキシル化合物の付加物類、四塩化炭素、クロロホルムなどのハロアルカン類、トリクロロアセトン、ジクロロメチルフェニルケトンなどのハロケトン類、トリクロロ酢酸メチル、ジクロロ酢酸メチル、2−クロロイソ酪酸エチル、2−ブロモイソ酪酸エチル、2−クロロプロピオン酸エチル、2−ブロモプロピオン酸エチルなどのハロエステル類、クロロフェニルエタン、ブロモフェニルエタン、ベンジルクロリドなどのハロアルキルベンゼン類、ベンゼンスルホン酸クロリド、トルエンスルホン酸クロリド、メチルスルホン酸クロリドなどのスルホン酸ハライド類などが挙げられる。
【0058】
本発明に係るラジカル重合は、必要に応じて触媒の共存下で実施される。このような触媒としては、CuBr、CuCl、RuCl、RuCl2、FeCl、FeCl2などを例示することができる。触媒を用いる場合、その使用量はポリオレフィン末端に存在するラジカル重合開始能を有する末端基の量によるが、通常、ラジカル重合開始能を有する末端基の量に対し、0.1〜100等量、好ましくは0.5〜50等量である。また、反応系中での触媒の溶解性を上げるために、配位性の脂肪族アミン類や芳香族アミン類などを添加することや、反応促進剤としてのアルコキシアルミニウムを添加することもできる。
【0059】
使用できる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば何れでも使用することができるが、例えば、具体例として、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロルエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒等をあげることができる。また、水を溶媒として、懸濁重合、乳化重合することもできる。これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
【0060】
反応温度は重合反応が進行する温度であれば何れでも構わず、所望する重合体の重合度、使用するラジカル重合開始剤および溶媒の種類や量によって一様ではないが、通常、−100℃〜250℃である。好ましくは−50℃〜180℃であり、更に好ましくは0℃〜160℃である。反応は場合によって減圧、常圧または加圧の何れでも実施できる。上記重合反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0061】
このようにして得られたグラフトポリマーセグメント(A)は、末端に開始剤に由来するハロゲン原子やニトロキシド化合物などを含有しているため、マクロ開始剤として引き続きラジカル重合することによりポリマー鎖を伸ばすことができる。
【0062】
アニオン重合においては、アニオン重合開始剤として、通常のアニオン重合において用いられる開始剤はいずれも使用することができ、例えば、ブチルリチウム、プロピルリチウム、エチルリチウム、メチルリチウム等の有機リチウム化合物や、Grignard試薬等を用いることができる。
【0063】
使用できる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、モノグリム、ジグリムなどのエーテル系溶媒などが用いられる。これらの溶媒は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。中でも、芳香族炭化水素とエーテル系溶媒が好ましく用いられる。重合は、通常−100℃〜100℃、好ましくは−80℃〜80℃、より好ましくは−70℃〜70℃の重合温度で、1分間〜500時間、好ましくは10分間〜300時間、より好ましくは15分間〜150時間かけて実施される。
【0064】
このようにして得られたグラフトポリマーセグメント(A)は、末端に重合開始剤に由来するリチウム原子などを有しており、マクロ開始剤として引き続きアニオン重合によりポリマー鎖を伸ばすことができる。
【0065】
本発明のブロックポリマーの製造法
上記で得られたグラフトポリマーセグメント(A)は末端にラジカル重合またはアニオン重合開始能を有する基を有しているため、セグメント(A)の重合に引き続いてセグメント(B)を重合することができる。セグメント(B)の重合は、例えば上記で得られたグラフトポリマーセグメントを開始剤として、上記の付加重合可能なモノマー(E)をラジカル重合またはアニオン重合する方法や、上記(C1)および(C2)から選ばれるマクロモノマーを単独あるいは2種類以上を組み合わせて、または(C1)および(C2)から選ばれる少なくとも1種類のマクロモノマーと上記モノマー(D)とを組み合わせて共重合する方法により実施される。また、グラフトポリマーセグメント(A)の製造に際して、ラジカル重合開始剤として水酸基を有する特定の化合物、例えば、2−フェニル−2−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イロキシ)−エタノール、1−(2−ヒドロキシ−1−フェニルエトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール、2−ブロモプロピオン酸2−ヒドロキシエチルなどを用いた場合には、セグメント(A)の末端に水酸基が導入されるため、これを開環重合開始剤に変換することにより、上記の開環重合可能なモノマー(F)を開環重合することもできる。
【0066】
グラフトポリマーセグメント(A)をマクロ開始剤としてラジカル重合する際には、例えば上記のグラフトポリマーセグメント(A)をラジカル重合により製造する際の重合条件と同一の条件が適用できる。
【0067】
グラフトポリマーセグメント(A)をマクロ開始剤としてアニオン重合する際には、例えば上記のグラフトポリマーセグメント(A)をアニオン重合により製造する際の重合条件と同一の条件が適用できる。
【0068】
グラフトポリマーセグメント(A)の末端に水酸基を有する場合は、この末端水酸基を金属カリウムや水素化カリウムなどのカリウム化合物や、トリメチルアルミニウムやトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム化合物などと反応させて金属アルコキシドに変換することで、上記の開環重合可能なモノマー(F)を重合することができる。その際の重合条件は、上記グラフトポリマーセグメント(A)をアニオン重合により製造する際の重合条件と同一の条件が適用できる。
【0069】
◆◆(方法2)セグメント(B)の重合を行った後、引き続きセグメント(A)の重合を行う方法◆◆
最初にセグメント(B)の製造について説明した後、次いでセグメント(A)の重合方法について説明する。
【0070】
セグメント(B)の製造法
セグメント(B)の重合は、例えば上記セグメント(A)の製造に使用される開始剤と同様の開始剤を用い、上記の付加重合可能なモノマー(E)を重合する方法や、上記(C1)および(C2)から選ばれるマクロモノマーを単独あるいは2種類以上を組み合わせて、または(C1)および(C2)から選ばれる少なくとも1種類のマクロモノマーと上記モノマー(D)とを組み合わせて共重合する方法により実施される。このようにして得られるセグメント(B)の末端には、上記と同様、開始剤に由来する官能基が存在し、引き続きポリマー鎖を伸ばすことが可能である。重合に用いる溶媒や反応温度などの各重合条件は、例えばセグメント(A)の製造時と同様の条件が適用できる。
【0071】
セグメント(A)の重合方法
上記で得られたポリマーセグメント(B)は末端にラジカル重合またはアニオン重合開始能を有する基を有しているため、セグメント(B)の重合に引き続いてセグメント(A)を重合することができる。セグメント(A)の重合は、例えば上記で得られたポリマーセグメント(B)をマクロ開始剤として、上記(C1)および(C2)から選ばれるマクロモノマーを単独であるいは2種類以上を組み合わせて、または(C1)および(C2)から選ばれる少なくとも1種類のマクロモノマーと炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物から選ばれる1種以上のモノマー(D)とを組み合わせて共重合することにより実施される。
【0072】
ポリマーセグメント(B)をマクロ開始剤としてラジカル重合する際には、例えば上記のグラフトポリマーセグメント(A)をラジカル重合により製造する際の重合条件と同一の条件が適用できる。
【0073】
ポリマーセグメント(B)をマクロ開始剤としてアニオン重合する際には、例えば上記のグラフトポリマーセグメント(A)をアニオン重合により製造する際の重合条件と同一の条件が適用できる。
【0074】
◆◆(方法3)セグメント(A)およびセグメント(B)をそれぞれ別個に重合した後、両セグメントをカップリングする方法◆◆
セグメント(A)およびセグメント(B)の製造について説明した後、次いでセグメント(A)とセグメント(B)をカップリングする方法について説明する。
〔セグメント(A)の製造法〕
グラフトポリマーセグメント(A)は、上記(C1)(C2)から選ばれるマクロモノマーを単独あるいは2種類以上を組み合わせて、または(C1)および(C2)から選ばれる少なくとも1種類のマクロモノマーと炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物から選ばれる1種以上のモノマー(D)とを組み合わせて重合させて得ることができる。
ラジカル重合に際しては、用いられる開始剤はラジカル重合開始能を有する基と、水酸基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、アミノ基、エポキシ基から選ばれる官能基の両方を有する構造を持つことが必要である。そのような開始剤の具体的な構造としては、下図に示す構造が例示される。
【0075】
【化10】
Figure 0004079804
【0076】
また、ラジカル重合開始能を有する基と、水酸基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、アミノ基、エポキシ基から選ばれる官能基の両方を有する構造を持つ化合物の具体例としては、2,2'アゾビス(2−シアノプロパノール)、3,3'−アゾビス(3−シアノブタノール)、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタノール)、5,5'−アゾビス(5−シアノヘキサノール)、6,6'−アゾビス(6−シアノヘプタノール)、7,7'−アゾビス(7−シアノオクタノール)、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、5,5'−アゾビス(5−シアノヘキサン酸)、6,6'−アゾビス(6−シアノヘプタン酸)、7,7'−アゾビス(7−シアノオクタン酸)、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸クロリド)、5,5'−アゾビス(5−シアノヘキサン酸クロリド)、6,6'−アゾビス(6−シアノヘプタン酸クロリド)、7,7'−アゾビス(7−シアノオクタン酸クロリド)などの官能基含有アゾ化合物類なども挙げられる。
【0077】
ラジカル重合に際しての反応溶媒や反応温度などの諸条件については、例えば上記のグラフトポリマーセグメント(A)を製造する際の条件と同様の条件が適用できる。
このようにして得られたグラフトポリマーセグメント(A)は、重合に用いた開始剤に由来する水酸基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、アミノ基、エポキシ基から選ばれる官能基を末端に有する。
【0078】
ポリマーセグメント(B)の製造法
セグメント(B)の製造は、上記セグメント(A)の製造に使用される、ラジカル重合開始能を有する基と、水酸基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、アミノ基、エポキシ基から選ばれる官能基の両方を有する構造を持つ開始剤と同様の開始剤を用い、例えば上記の付加重合可能なモノマー(E)をラジカル重合する方法や、上記(C1)(C2)から選ばれるマクロモノマーを単独あるいは2種類以上を組み合わせて、または(C1)および(C2)から選ばれる少なくとも1種類のマクロモノマーと上記モノマー(D)とを組み合わせて重合する方法により実施される。
【0079】
ラジカル重合に際しての反応溶媒や反応温度などの諸条件については、例えば上記のグラフトポリマーセグメント(A)を製造する際の条件と同様の条件が適用できる。
このようにして得られるポリマーセグメント(B)は、上記と同様、重合に用いた開始剤に由来する水酸基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、アミノ基、エポキシ基から選ばれる官能基を末端に有する。
【0080】
本発明のブロックポリマーの製造法
上記の方法でそれぞれ個別に製造されたセグメント(A)および(B)を、例えばそれぞれのセグメントの末端に存在する官能基同士を反応させることにより、本発明のブロックポリマーを製造することができる。
【0081】
本発明のブロックポリマーを製造する際の、グラフトポリマーセグメント(A)の末端に存在する官能基と、ポリマーセグメント(B)の末端に存在する官能基との組み合わせについては、例えば下記に示される組み合わせが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
(1)末端にカルボキシル基を有するセグメント(A)と、末端に水酸基を有するセグメント(B)。
(2)末端にカルボキシル基を有するセグメント(A)と、末端にアミノ基を有するセグメント(B)。
(3)末端に水酸基を有するセグメント(A)と、末端にエポキシ基を有するセグメント(B)。
(4)末端に水酸基を有するセグメント(A)と、末端にカルボキシル基を有するセグメント(B)。
(5)末端に水酸基を有するセグメント(A)と、末端に酸ハロゲン基を有するセグメント(B)。
(6)末端に酸ハロゲン基を有するセグメント(A)と、末端に水酸基を有するセグメント(B)。
(7)末端に酸ハロゲン基を有するセグメント(A)と、末端にアミノ基を有するセグメント(B)。
(8)末端にハロゲンを含む基を有するセグメント(A)と、末端に水酸基を有するセグメント(B)。
(9)末端にエポキシ基を有するセグメント(A)と、末端に水酸基を有するセグメント(B)。
(10)末端にアミノ基を有するセグメント(A)と、末端にカルボキシル基を有するセグメント(B)。
(11)末端にアミノ基を有するセグメント(A)と、末端に酸ハロゲン基を有するセグメント(B)。
【0082】
本発明のブロックポリマーを製造する際のセグメント(A)に対するセグメント(B)の使用量は、セグメント(A)に対して、通常0.01〜100倍モル、好ましくは0.1〜10倍モルである。
【0083】
反応溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘキセンなどの脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、2,4-ジクロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても、複数を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0084】
上記セグメント(A)の末端官能基と上記セグメント(B)の末端官能基との反応に際しては、反応を効率よく進行させるために、必要に応じて縮合剤を添加することができる。
縮合剤としては、例えば濃硫酸、五酸化二リン、無水塩化亜鉛などの無機脱水縮合剤類、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド)塩酸塩などのカルボジイミド類、ポリリン酸、無水酢酸、カルボニルジイミダゾール、p−トルエンスルホニルクロリドなどが挙げられる。
【0085】
また、上記セグメント(A)の末端官能基と上記セグメント(B)の末端官能基との反応は塩基性触媒の存在下で行うのが好ましい。具体的には、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリンなどの有機アミン類、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム、n−ブチルリチウムなどのアルカリ金属化合物類などが挙げられる。
【0086】
なお、上記末端に官能基を有するセグメント(A)と上記末端に官能基を有するセグメント(B)のうち、官能基としてカルボキシル基を持つ場合には、まず、例えば五塩化リンや塩化チオニルなどと反応させて酸クロリド化合物とし、これとそれぞれ対応する上記末端に官能基を有するセグメント(A)および上記末端に官能基を有するセグメント(B)とを適当な溶媒中、反応させることによっても製造することができる。
【0087】
このようにして本発明のブロックポリマーが製造される。
上記の方法により生成したブロックポリマーは、重合に用いた溶媒や未反応のモノマーの留去あるいは非溶媒による再沈殿などの公知の方法を用いることにより単離される。
【0088】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0089】
〔実施例1〕
(1)マクロモノマーの合成
[末端Al化エチレン−プロピレン共重合体(EPR)の合成]
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製オートクレーブに精製トルエン800mlを入れ、エチレン20リットル/h、プロピレン80リットル/hを吹き込むことにより液相および気相を飽和させた。その後、50℃にてMAOをAl換算で20ミリモルおよびジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド0.02ミリモルを加えて重合を開始した。常圧下、50℃で120分間重合させた後、少量のイソブチルアルコールを添加して重合を停止した。反応液を1N塩酸水溶液100mlで5回洗浄し、さらに水100mlで2回洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、グラスフィルター(G3)でろ過して硫酸マグネシウムを除去した。ろ液を濃縮し、得られたオイル状物質を10時間真空乾燥して無色透明のオイル状EPR118.7gを得た。該ポリマーの分子量(EPR換算)をGPCにより測定したところ、Mwが1690、Mnが430、Mw/Mnは4.0であった。また、IR分析により該ポリマーのプロピレン含量は49mol%であり、末端ビニリデン基は1000炭素当たり27.5個含まれていた。得られた末端ビニリデン基含有EPR100gを充分窒素置換した1Lのガラス製反応器に入れ、トルエン500mlおよびジイソブチルアルミニウムヒドリド50mlを加えて110℃で6時間加熱攪拌を行った。このようにして末端Al化EPRを含むトルエン溶液を得た。
【0090】
[末端OH化EPRの合成]
上記にて得られたトルエン溶液を105℃に保ち、窒素ガスを乾燥空気に切り替え、該温度を保ちながら100リットル/hの流量で7時間供給しつづけた後、溶液を分液漏斗に移し、1N塩酸水溶液300mlで3回洗浄し、さらに水200mlで2回洗浄した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した後、グラスフィルター(G3)でろ過し、ろ液を濃縮後、得られた黄色オイル状物質を10時間真空乾燥して107.9gのオイル状ポリマーを得た。
該ポリマー100mgを25℃で0.6mlの重クロロホルムに溶解させて得たサンプルを1H−NMR(日本電子製JEOL GSX−270)を用いて分析をおこなったところ、3.3−3.6ppmにヒドロキシル基に隣接するメチレン基に基づくシグナルが認められた。すなわち、以下の構造の末端を有するEPRが存在することを確認した。また、積分値からOH基含量は2.8mol%と算出された。
【0091】
【化11】
Figure 0004079804
【0092】
[EPRマクロモノマーの合成]
充分窒素置換した200ml2口フラスコに、上記にて得られた末端OH化EPR50gを入れ、乾燥トルエン60mlおよびトリエチルアミン13.0ml、メタクリル酸クロリド18.3mlを加えて室温で18時間攪拌した。得られた反応液を1N塩酸水溶液200mlで3回洗浄し、さらに水200mlで3回洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。グラスフィルター(G3)で硫酸マグネシウムをろ別し、得られたろ液を濃縮して57.2gの黄褐色オイル状ポリマーを得た。このポリマー32.4gをヘキサンに溶解し、カラムクロマトグラフィーにより精製して微黄色オイル状ポリマー22.4gを得た。該ポリマーの分子量(EPR換算)をGPCにより測定したところ、Mwが1400、Mnが580、Mw/Mn=2.3であった。
【0093】
該ポリマー100mgを25℃で0.6mlの重クロロホルムに溶解させて得たサンプルを1H−NMR(日本電子製JEOL GSX−270)を用いて分析をおこなったところ、EPRに基づくシグナルの他に以下のシグナルが検出された。δ1.95ppm(s、3H;=C−C3)、δ3.8−4.1ppm(m、2H;−COO−C2−)、δ5.55ppm(s、1H;C2=)、δ6.1ppm(s、1H;C2=)。すなわち、以下の構造の末端を有するEPRマクロモノマーが存在することを確認した。また、積分値からメタクリル基含量は3.8mol%と算出された。
【0094】
【化12】
Figure 0004079804
【0095】
(2)ポリメタクリル酸メチル−g−EPRグラフトポリマーの合成
充分窒素置換した100mlシュレンク管に、上記にて得られたEPRマクロモノマー1.01gを入れ、メタクリル酸メチル(MMA)1.07mlおよびあらかじめ臭化銅357.4mgとN,N,N',N',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン2.49ミリモルをo−キシレン3mlに溶解した溶液1.2ml、2−ブロモイソ酪酸エチルのo−キシレン溶液(0.5M)0.2mlを加えて90℃で6時間加熱攪拌した。得られた反応液をメタノール400ml中に注ぎ攪拌したところ、粘性の高い白色ポリマーが析出した。上澄みを除き、容器の底に残った白色ポリマーをヘキサン3mlで3回、さらにメタノール3mlで3回洗浄した後、10時間真空乾燥して0.13gの黄色固体状ポリマーを得た。該ポリマーの分子量(PS換算)をGPCにより測定したところ、Mwが69000、Mnが15000、Mw/Mn=4.7であった。また、生成ポリマー中の各ユニットの含有量は、NMR分析によりMMA87mol%、EPR13mol%であった。
【0096】
(3)(PMMA−g−EPR)−b−(PMMA−g−EPR)ブロックポリマーの合成
充分窒素置換した100mlシュレンク管に、上記(1)にて得られたEPRマクロモノマー0.41gを入れ、MMA4.28mlおよびあらかじめ臭化銅46.6mgとN,N,N',N',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン0.33ミリモルをo−キシレン3mlに溶解した溶液0.93ml、上記(2)にて得られたPMMA−g−EPRグラフトポリマー0.1gを加えて90℃で6時間加熱攪拌した。得られた反応液をメタノール400ml中に注ぎ攪拌したところ白色固体が析出した。これをグラスフィルターでろ過し、フィルター状の白色固体をヘキサン10mlで3回、メタノール10mlで3回洗浄後、10時間真空乾燥して1.9gの黄色固体状ポリマーを得た。該ポリマーの分子量(PS換算)をGPCにより測定したところ、(2)で得られたPMMA−g−EPRグラフトポリマー成分に加えて、Mwが135000、Mnが34000、Mw/Mn=4.0の成分が存在することが分かった。また、生成ポリマー中の各ユニットの含有量は、NMR分析によりMMA92mol%、EPR8mol%であった。したがって、上記(2)で得られたPMMA−g−EPRグラフトポリマーに異なる組成のPMMA−g−EPRグラフトポリマーがつながったブロックポリマーが生成したことが判明した。
【0097】
【発明の効果】
ポリオレフィン製造用触媒として工業的に広く用いられている固体状チタン触媒やメタロセン触媒等の遷移金属化合物を成分として含有する配位重合触媒により製造したポリオレフィンマクロモノマーを用いることにより、リビング重合によって得られる分子量分布(Mw/Mn)の狭いポリプロピレン系重合体に限定されることなく様々な種類のポリオレフィンを側鎖に導入した成形加工性の良好なグラフトポリマーセグメントを有するブロックポリマー、およびその製造方法を提供することができる。

Claims (4)

  1. 下記一般式(I)で表される、ポリオレフィン鎖を有するマクロモノマー(C1)、および下記一般式(II)で表される、ポリオレフィン鎖を有するマクロモノマー(C2)
    Figure 0004079804
    Figure 0004079804
    〔式(I)、式(II)において、Rは水素原子またはメチル基であり、Xはヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基であり、PはCH=CHR(Rは炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子から選ばれる基または原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である。〕
    から選ばれるマクロモノマーを単独重合あるいは2種類以上を共重合、または(C1)および(C2)から選ばれる少なくとも1種類のマクロモノマーと炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物から選ばれる1種以上のモノマー(D)とを共重合することにより、ポリオレフィン側鎖を有するグラフトポリマーセグメント(A)を製造し、引き続き付加重合可能なモノマー(E)または開環重合可能なモノマー(F)を重合することにより極性基を有するポリマーセグメント(B)を製造するか、極性基を有するポリマーセグメント(B)を製造し、引き続きポリオレフィン側鎖を有するグラフトポリマーセグメント(A)を製造するか、またはポリオレフィン側鎖を有するグラフトポリマーセグメント(A)および極性基を有するポリマーセグメント(B)をそれぞれ別個に製造した後、両セグメントをカップリングすることを特徴とする、ポリオレフィン側鎖を有するグラフトポリマーセグメント(A)と、極性基を有するポリマーセグメント(B)とが結合したブロックポリマーの製造方法。
  2. 上記一般式(I)において、Xで示される基が、カルボン酸エステル基、アミド基、エーテル基、カルバミン酸エステル基から選ばれる基を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 付加重合可能なモノマー(E)が炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物であり、開環重合可能なモノマー(F)がオキシラン化合物またはラクトン化合物である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. ポリオレフィン鎖P1の分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上である請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法
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