JP4073727B2 - エンジンのデコンプ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンのデコンプ装置に関し、特に、機関弁を開閉するための動弁カム及び被動タイミングギヤを備えた動弁カム軸に、動弁カムの軸方向一側に隣接していて、動弁カムのベース円部より半径方向外方にデコンプカムを突出させて機関弁をエンジンの圧縮行程で僅かに開く作動位置と、同ベース円部より半径方向内方にデコンプカムを退去させて機関弁を解放する非作動位置との間を回動し得るデコンプカム軸を設け、このデコンプカム軸のアームに連結して、遠心力による揺動によりデコンプカム軸を作動位置から非作動位置へ回動する遠心ウエイトを、動弁カム軸に一体的に形成された被動タイミングギヤに取り付けたものゝ改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
かゝるエンジンのデコンプ装置は、例えば実開平4−116610号公報に開示されているように、既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のかゝるデコンプ装置では、上記公報に開示されるように、デコンプカム軸の支持と位置決めのために、特別の支持ブラケットを被動タイミングギヤに固着しているので、部品点数が多く、コストの低減が困難である。
【0004】
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、部品点数が少なく構造が簡単で、コストダウンが可能な前記エンジンのデコンプ装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、機関弁を開閉するための動弁カム及び被動タイミングギヤを備えた動弁カム軸に、動弁カムの軸方向一側に隣接していて、動弁カムのベース円部より半径方向外方にデコンプカムを突出させて機関弁をエンジンの圧縮行程で僅かに開く作動位置と、同ベース円部より半径方向内方にデコンプカムを退去させて機関弁を解放する非作動位置との間を回動し得るデコンプカム軸を設け、このデコンプカム軸のアームに連結して、遠心力による揺動によりデコンプカム軸を作動位置から非作動位置へ回動する遠心ウエイトを、動弁カム軸に一体的に形成された被動タイミングギヤに取り付けた、エンジンのデコンプ装置において、被動タイミングギヤに、デコンプカム軸を回動可能に支承する軸受孔を設け、この軸受孔から被動タイミングギヤの一側面側に突出したデコンプカム軸の一端部にはデコンプカムを形成し、軸受孔から被動タイミングギヤの他側面側に突出したデコンプカム軸の他端部には、遠心ウエイトの軸方向外側で該他端部から屈曲するアームを、またこのアームの先端には、その先端から被動タイミングギヤ側に反転、屈曲して遠心ウエイトの連結溝に係合する連結部を、さらにこの連結部の先端には、被動タイミングギヤ及び遠心ウエイト間で軸方向に位置決めされる膨大部をそれぞれ一体に連設し、前記連結溝の一端は遠心ウエイトの一側面に開放していて、その開放端が、前記連結部を連結溝へ係合させる際の入口となり、前記連結部は、前記遠心ウエイトの被動タイミングギヤへの取り付け前にのみ前記開放端から前記連結溝に係合可能であって、前記取り付けの完了状態では該連結溝から離脱不能であることを特徴とする。
【0006】
尚、前記機関弁及び動弁カムは、後述する本発明の実施例中の排気弁11及び排気用カム20にそれぞれ対応する。
【0007】
この特徴によれば、デコンプカム軸を被動タイミングギヤに設けた軸受孔で支承することで、デコンプカム軸専用の支持ブラケットが不要となり、またデコンプカム軸の軸方向の位置決めのために、遠心ウエイトの連結溝を貫通する連結部の先端に一体に形成した膨大部を、これが遠心ウエイトと被動タイミングギヤとの間に挟まれるように配置したことで、デコンプカム軸のための特別な軸方向位置決め部材も不要となり、これらによりデコンプ装置の部品点数を削減して構造の簡素化を図り、コストの低減に寄与することができる。
【0008】
また連結溝の一端は遠心ウエイトの一側面に開放していて、その開放端が、連結部を連結溝へ係合させる際の入口となり、連結部は、遠心ウエイトの被動タイミングギヤへの取り付け前にのみ前記開放端から連結溝に係合可能であって、前記取り付けの完了状態では該連結溝から離脱不能であるので、連結溝に、連結部に対する外れ止め部材を付設する必要もなく、構造の簡素化を更に図ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0010】
図1は本発明のデコンプ装置を備えるエンジンの縦断面図、図2は図1及び図3の2−2線拡大断面図(デコンプカムの作動状態を示す。)、図3は図2の3−3線断面図、図4はデコンプカムの非作動状態を示す、図2との対応図、図5は図4の5−5線断面図である。
【0011】
先ず、図1及び図2において、四サイクルエンジンEは、クランクケース1、このクランクケース1の上端に一体に連設されるシリンダブロック2と、このシリンダブロック2の上端に接合されるシリンダヘッド3とからなるエンジン本体4を有する。クランクケース1に収容、支持されるクランク軸5は、シリンダブロック2のシリンダボア2a内を昇降するピストン6にコンロッド7を介して連接される。またシリンダブロック2には、シリンダヘッド3の燃焼室3aに開口する吸気ポート8及び排気ポート9が並んで形成されると共に、これらポート8,9を開閉する吸気弁10及び排気弁11が昇降可能に取り付けられ、これらは弁ばね12,13によりそれぞれ閉弁方向に付勢される。
【0012】
上記吸気弁10及び排気弁11を開閉駆動する動弁機構14がクランクケース1に設けられる。この動弁機構14は、クランクケース1の相対向する左右両側壁に一体に形成された左右一対の軸受ボス28,28′により、クランク軸5と平行な姿勢で両端部を支承される動弁カム軸15と、この動弁カム軸15をクランク軸5に連動、連結するタイミングギヤ列16とを備える。タイミングギヤ列16は、クランク軸5に固設された駆動タイミングギヤ16aと、動弁カム軸15に排気用カム20の一側に隣接して一体に形成されて駆動タイミングギヤ16aから2分の1の減速比で駆動される被動タイミングギヤ16bとからなっている。
【0013】
動弁カム軸15には、その回転に伴ない一対のタペット17,18を介して吸気弁10及び排気弁11をそれぞれ開弁方向にリフトし得る吸気用カム19及び排気用カム20を一体に備えている。上記タペット17,18は、クランクケース1に上壁に昇降可能に支承されながら、各下端のフランジ17a,18aを対応する吸気用カム19及び排気用カム20の外周面に摺動可能に当接させている。以下、吸気用カム19に当接するタペット17を吸気用タペットと呼び、排気用カム20に当接するタペット18を排気用タペットと呼ぶことにする。
【0014】
排気用タペット18のフランジ18aと被動タイミングギヤ16bとの間に、本発明のデコンプ装置21が設けられる。
【0015】
図2及び図3に示すように、デコンプ装置21は、被動タイミングギヤ16bに形成された軸受孔22に回転自在に支承されて動弁カム軸15と平行に配置されるデコンプカム軸23を備える。このデコンプカム軸23は軸受孔22を貫通して被動タイミングギヤ16bの内外両側方に延びており、その内方に延びた内端部には、排気用カム20のベース円部の一側に隣接して排気用タペット18のフランジ18aの下方にもぐり込むデコンプカム24が一体に形成される。このデコンプカム24は、デコンプカム軸23の外周面が延長した半円弧面24aと、この半円弧面24aの両端縁間を接続する平坦面24bとを有しており、その半円弧面24aは、排気用タペット18のフランジ18aの下面に対向する回転位置にくると、排気用カム20のベース円部より半径方向外方に僅かに突出するようになっていて、排気用タペット18を僅かにリフトして排気弁11を微小開度開くことができ、一方、平坦面24bは、図4及び図5に示すように、排気用タペット18の下面に対向する回転位置にくると、排気用カム20のベース円部より半径方向内方に退去するようになっていて、排気用タペット18を解放する。デコンプカム24が排気用タペット18を僅かにリフトするときのデコンプカム軸23の回転位置を作動位置Oと呼び、デコンプカム24が排気用タペット18を解放するときのデコンプカム軸23の回転位置を非作動位置Nと呼ぶ。
【0016】
デコンプカム軸23の、被動タイミングギヤ16b外側方向に突出する外端部には半径方向に延びるアーム25が、またこのアーム25の先端には、それから被動タイミングギヤ16b側にする連結部26が、さらにこの連結部26の先端には、膨大部27を順次一体に連設される。このように、デコンプカム24、アーム25、連結部26及び膨大部27を備えるデコンプカム軸23は、1本の鋼線から形成される。
【0017】
被動タイミングギヤ16bの外側面に形成された環状凹部29において、その底面に遠心ウエイト30が動弁カム軸15と平行な枢軸31により揺動可能に取り付けられる。この遠心ウエイト30は、動弁カム軸15の一側を迂回するように湾曲した弓形をなしていて、その凹状の内側面を動弁カム軸15の外周面に当接させる第1位置Aと、凸状の外側面のストッパ突起30aを環状凹部29の内周面に当接させる第2位置Bとの間を揺動することができる。この遠心ウエイト30と被動タイミングギヤ16bとの間には、遠心ウエイト30を上記第1位置A側に付勢する戻しばね32が接続される。
【0018】
遠心ウエイト30は、枢軸31に支持される基端部を除き、環状凹部29の底面との間に一定の間隙を置くように形成されており、この遠心ウエイト30の自由端部には、遠心ウエイト30の凹状内側面に開口する連結溝33が設けられ、この連結溝33に前記デコンプカム軸23の連結部26が係合されると共に、遠心ウエイト30と環状凹部29底面との間に挟まれるように前記膨大部27が配置される。そして、連結溝33の一端は遠心ウエイト30の一側面に開放していて、その開放端が、連結部26を連結溝33へ係合させるための入口となっており、従って、連結部26は、遠心ウエイト30の被動タイミングギヤ16bへの取り付け前にのみ連結溝33に、その開口端から係合されるもので、遠心ウエイト30の取り付け状態では、連結溝33の開口端から離脱しないようになっている。したがって、連結溝33には、連結部26に対する外れ止め部材を付設する必要がない。
【0019】
また膨大部27は連結溝33の溝幅より大径になっていて、遠心ウエイト30と被動タイミングギヤ16bとの間で軸方向の動きが規制されるようになっており、これによってデコンプカム軸23全体の軸方向位置が決定される。
【0020】
而して、遠心ウエイト30が第1位置A及び第2位置B間を揺動すると、連結溝33に係合したアーム25が回動してデコンプカム軸23が作動位置O及び非作動位置N間を回動されるようになっている。
【0021】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0022】
エンジンの運転停止状態では、図2及び図3に示すように、遠心ウエイト30は戻しばね32の付勢力をもって第1位置Aに保持される。これに伴いデコンプカム軸23は作動位置Oを占めるので、デコンプカム24の半円弧面24aが排気用カム20のベース円部より半径方向外方に僅かに突出することになる。
【0023】
そこで、エンジンEを始動すべく、例えばリコイル式スタータを手動操作してクランク軸5をクランキングすると、排気用カム20のベース円部が排気用タペット18を通過する圧縮行程において、前記デコンプカム24に半円弧面24aが排気用タペット18をリフトして、排気弁11を僅かに開けるので、燃焼室3aの圧縮圧力の一部が外部に放出され、クランキング荷重の増加が緩和されるため、始動操作を軽快に行うことができる。
【0024】
エンジンEが始動され、被動タイミングギヤ16bの回転速度が所定値以上に上昇すると、図5に示すように、遠心ウエイト30がそれに働く遠心力の増加により戻しばね32のセット荷重に抗して枢軸31周りに揺動しながらアーム25を回動して、デコンプカム軸23を図4に示すように非作動位置Nへ制御する。したがって、今度はデコンプカム24は、その平坦面24bを排気用タペット18に対向させて、それから退去するので、排気用カム20はデコンプカム24に干渉されることなく、本来のカムプロファイルに従い排気弁11を的確に開閉することになる。
【0025】
このようなデコンプ装置21において、デコンプカム軸23を被動タイミングギヤ16bに設けた軸受孔22で支承するようにしたので、その支持のための専用のブラケットが不要となる。またデコンプカム軸23の軸方向の位置決めのためには、遠心ウエイト30の連結溝33を貫通した連結部26の先端に一体に形成した膨大部27を、これが遠心ウエイト30と被動タイミングギヤ16bとの間に挟まれるように配置したので、デコンプカム軸23のための特別な軸方向位置決め部材も不要となる。こうして、デコンプ装置21の部品点数を削減して、構造の簡素化を図り、コストの低減に寄与することができる。
【0026】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、その要旨の範囲を逸脱することなく、種々の設計変更が可能である。例えば、図示例では、デコンプカム24により排気用タペット18をリフトするようにしたが、吸気用タペット17をリフトするように構成することもできる。
【0027】
【発明の効果】
以上のように本発明の第1の特徴によれば、エンジンのデコンプ装置において、被動タイミングギヤに、デコンプカム軸を回動可能に支承する軸受孔を設け、この軸受孔から被動タイミングギヤの一側面側に突出したデコンプカム軸の一端部にはデコンプカムを形成し、軸受孔から被動タイミングギヤの他側面側に突出したデコンプカム軸の他端部には、遠心ウエイトの軸方向外側で該他端部から屈曲するアームを、またこのアームの先端には、その先端から被動タイミングギヤ側に反転、屈曲して遠心ウエイトの連結溝に係合する連結部を、さらにこの連結部の先端には、被動タイミングギヤ及び遠心ウエイト間で軸方向に位置決めされる膨大部をそれぞれ一体に連設したので、デコンプカム軸専用の支持ブラケットが不要となり、またデコンプカム軸の軸方向の位置決めのために、遠心ウエイトの連結溝を貫通する連結部の先端に一体に形成した膨大部を、これが遠心ウエイトと被動タイミングギヤとの間に挟まれるように配置したことで、デコンプカム軸のための特別な軸方向位置決め部材も不要となり、これらによりデコンプ装置の部品点数を削減して構造の簡素化を図り、コストの低減に寄与することができる。
【0028】
また特に連結溝の一端は遠心ウエイトの一側面に開放していて、その開放端が、連結部を連結溝へ係合させる際の入口となり、連結部は、遠心ウエイトの被動タイミングギヤへの取り付け前にのみ前記開放端から連結溝に係合可能であって、前記取り付けの完了状態では該連結溝から離脱不能であるので、連結溝に、連結部に対する外れ止め部材を付設する必要もなく、構造の一層の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のデコンプ装置を備えるエンジンの縦断面図
【図2】 図1及び図3の2−2線拡大断面図(デコンプカムの作動状態を示す。)
【図3】 図2の3−3線断面図
【図4】 デコンプカムの非作動状態を示す、図2との対応図
【図5】 図4の5−5線断面図
【符号の説明】
N・・・・非作動位置
O・・・・作動位置
11・・・機関弁(排気弁)
15・・・動弁カム軸
16b・・被動タイミングギヤ
20・・・動弁カム(排気用カム)
21・・・デコンプ装置
22・・・軸受孔
23・・・デコンプカム軸
24・・・デコンプカム
25・・・アーム
26・・・連結部
27・・・膨大部
30・・・遠心ウエイト
31・・・枢軸
Claims (1)
- 機関弁(11)を開閉するための動弁カム(20)及び被動タイミングギヤ(16b)を備えた動弁カム軸(15)に、動弁カム(10)の軸方向一側に隣接していて、動弁カム(20)のベース円部より半径方向外方にデコンプカム(24)を突出させて機関弁(11)をエンジンの圧縮行程で僅かに開く作動位置(O)と、同ベース円部より半径方向内方にデコンプカム(24)を退去させて機関弁(11)を解放する非作動位置(N)との間を回動し得るデコンプカム軸(23)を設け、このデコンプカム軸(23)のアーム(25)に連結して、遠心力による揺動によりデコンプカム軸(23)を作動位置(O)から非作動位置(N)へ回動する遠心ウエイト(30)を、動弁カム軸(15)に一体的に形成された被動タイミングギヤ(16b)に取り付けた、エンジンのデコンプ装置において、
被動タイミングギヤ(16b)に、デコンプカム軸(23)を回動可能に支承する軸受孔(22)を設け、この軸受孔(22)から被動タイミングギヤ(16b)の一側面側に突出したデコンプカム軸(23)の一端部にはデコンプカム(24)を形成し、軸受孔(22)から被動タイミングギヤ(16b)の他側面側に突出したデコンプカム軸(23)の他端部には、遠心ウエイト(30)の軸方向外側で該他端部から屈曲するアーム(25)を、またこのアーム(25)の先端には、その先端から被動タイミングギヤ(16b)側に反転、屈曲して遠心ウエイト(30)の連結溝(33)に係合する連結部(26)を、さらにこの連結部(26)の先端には、被動タイミングギヤ(16b)及び遠心ウエイト(30)間で軸方向に位置決めされる膨大部(27)をそれぞれ一体に連設し、
前記連結溝(33)の一端は遠心ウエイト(30)の一側面に開放していて、その開放端が、前記連結部(26)を連結溝(33)へ係合させる際の入口となり、
前記連結部(26)は、前記遠心ウエイト(30)の被動タイミングギヤ(16b)への取り付け前にのみ前記開放端から前記連結溝(33)に係合可能であって、前記取り付けの完了状態では該連結溝(33)から離脱不能であることを特徴とする、エンジンのデコンプ装置。
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