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JP4055058B2 - ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィドの製造方法 Download PDF

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JP4055058B2
JP4055058B2 JP2002275037A JP2002275037A JP4055058B2 JP 4055058 B2 JP4055058 B2 JP 4055058B2 JP 2002275037 A JP2002275037 A JP 2002275037A JP 2002275037 A JP2002275037 A JP 2002275037A JP 4055058 B2 JP4055058 B2 JP 4055058B2
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  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スルフィド化剤とジハロ芳香族化合物との反応によるポリフェニレンスルフィドに代表されるポリアリーレンスルフィドの製造方法に関するものである。(以下、ポリアリーレンスルフィドはPAS、ポリフェニレンスルフィドをPPSと、それぞれ記す。)さらに具体的には、本発明は、高分子量で安定性に優れるPASを効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
前記PPS等のPASの製造方法としては、例えば、アルカリ金属硫化物、特に結晶水を有する硫化ナトリウム(以下、含水硫化ナトリウムと略称する)を極性溶媒中で加熱して該含水硫化ナトリウムが含有する水を除去し、そこへジクロロベンゼンを加えて加熱重合させる方法がある。しかし、この方法では、原料の一つである含水硫化ナトリウム(含水水硫化ナトリウムと水酸化ナトリウムとの反応生成物を含む)に含有する水分を除くのに、重合溶媒中で物理的に加熱留去する方法によっているので、十分な脱水が困難、すなわち硫化ナトリウム1モルに対して1モル以上の水が系内に残存し、高分子量化が難しいといった問題があった。
【0003】
上記の問題点を解決する技術として、例えば、「有機極性溶媒中でジハロ芳香族化合物とスルフィド化剤とを加熱下で反応させるポリアリーレンスルフィドポリマーの製造方法において、反応系内の水分量を、溶媒1モルに対して0.05〜0.5モルの範囲にコントロールされた状態に保ちつつ、加熱下でジハロ芳香族化合物溶液に含水スルフィド化剤を導入してその含水分を除去し、その間に反応を行うか導入後に反応を行う第1工程と、その後、系内の水分量を溶媒1モルに対して0.05モル以下の範囲に変更して反応を継続する第2工程とより成る2段重合法で、第1工程の転化率を60〜90%とし、第2工程の転化率を90%以上とすることにより高分子量のPPSが製造できることが記載されている。(例えば、特許文献1参照)」
【0004】
【特許文献1】
特開平8−100064号公報(第2−7頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記の方法では、比較的高分子量のポリマーを得ることは可能であるが、重合系内の水分量及び反応率等を厳密に制御する必要であった。本発明の課題は、前記の問題点の解決して高分子量のPASを効率よく製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、下記▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼の知見を得た。
▲1▼重合系内の水分量のみを単純に制御するだけでは高分子量のPASを効率よく製造することは困難である。▲2▼スルフィド化剤としてアルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物の混合物を用いると副反応が抑制できる。▲3▼反応終了時の残存するスルフィド化剤と反応終了時の残存する反応系内の水分量との含有率を特定の範囲に制御することで、反応速度を制御できる。▲4▼反応終了時の残存するジハロ芳香族化合物とスルフィド化剤との割合を特定範囲にすることによって、効率よく高分子量のPASが得られる。
【0006】
本発明は、これらの技術的知見に基づきなされたものである。すなわち、本発明は、有機極性溶媒中で、ジハロ芳香族化合物と結晶水を有する含水スルフィド化剤とを反応させるポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、
1)前記含水スルフィド化剤がアルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物の混合物であり、
2)加熱した有機極性溶媒とジハロ芳香族化合物を含む混合物に前記含水スルフィド化剤を導入しながら反応する方法であって、
且つ、重合に使用する全含水スルフィド化剤1モルに対して、反応系内中の水が1モル未満となるように、含水スルフィド化剤の導入速度を反応系内中の水が反応混合物から除去されるように調整し制御し、重合反応終了時の反応系内の水と重合に使用した全スルフィド化剤とのモル比(水/含水スルフィド化剤)が1未満となるように制御し、
3)重合反応終了時の残存するジハロ芳香族化合物と前記含水スルフィド化剤とのモル比(ジハロ芳香族化合物/含水スルフィド化剤)が1未満となるように制御することを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明で使用する含水スルフィド化剤は、アルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物の混合物である。前記アルカリ金属硫化物としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等が挙げられる。これらの中でも、硫化ナトリウム、硫化カリウムが好ましく、特に硫化ナトリウムが好ましい。これらのアルカリ金属硫化物はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。また、これら硫化アルカリ金属は、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物とを反応させる、或いは、硫化水素とアルカリ金属水酸化物とを反応させることによっても得られるが、もちろんこのような反応させて得られる物を用いても良い。
【0008】
本発明で使用するアルカリ金属水硫化物としては、例えば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム等が挙げられるが、これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。これらの中でも、水硫化ナトリウム、水硫化カリウムが好ましく、特に水硫化ナトリウムが好ましい。また、これらアルカリ金属水硫化物は、アルカリ金属水硫化物そのものでも、予め硫化水素とアルカリ金属水酸化物とを反応させて得たものであっても、反応系内で硫化水素とアルカリ金属水酸化物とを反応させることによっても得られるものを用いても良い。前記アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物は、硫黄原子1モルに対して1モル以上の結晶水を有するものである。以下に、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物中の、硫黄原子1モルに対して、それぞれ、1モル以上の結晶水を有するものを用いたものを、含水スルフィド化剤と記す。
【0009】
前記上記アルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられるが、これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。また、上記アルカリ金属水酸化物の中では水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。
【0010】
本発明で使用する含水スルフィド化剤は、アルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物の混合物であるが、上述したようにアルカリ金属水酸化物と過剰のアルカリ金属水硫化物を反応させることにより得ても良いし、アルカリ金属水酸化物と過剰の硫化水素を反応させることにより得ても良い。またアルカリ金属硫化物と硫化水素を反応させて得ても良い。
【0011】
アルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物の混合物において、アルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物の割合については特に制限はないが、アルカリ金属硫化物1モルに対してアルカリ金属水硫化物が0.02〜2モルの範囲が好ましく、0.04〜1モルの範囲がより好ましい。このような範囲にするとより高分子量のポリマーが得られる。
【0012】
本発明で使用するジハロ芳香族化合物としては、芳香族核と該核上の2ケのハロ置換基とを有するものであり、且つアルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物との混合物である含水スルフィド化剤による脱ハロゲン化/硫化反応を介して重合体化できれば、特に限定されない。従って、芳香族核は芳香族炭化水素のみからなる場合の外に、この脱ハロゲン化/硫化反応を阻害しない各種の置換基を有していてもよい。
【0013】
前記ジハロ芳香族化合物の例には下記一般式(1)〜(4)で示される化合物が挙げられる。
【化1】
Figure 0004055058
【0014】
前記一般式(1)〜(4)中、Xはハロゲン原子を、またYは水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、カルボキシル基、炭素数1〜18のアルコキシカルボニル基、ナトリウムカルボキシレート基、シアノ基、アミノ基若しくはニトロ基を表す。また、前記Xは塩素または臭素が好ましい。
【0015】
また、一般式(4)中のVは、下記構造式(5)〜(10)で表わされる2価の連結基を表す。
【化2】
Figure 0004055058
(式中、R’及びR”は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基を表す。)
【0016】
一般式(1)中のmは2を、nは、0〜4の整数を表す。また、一般式(2)中のaは2を、bは0〜6の整数を表す。一般式(3)中でcは0〜2、dは0〜2、eは0〜3、fは0〜2の整数をそれぞれ表わし、且つcとdはc+d=2を満足する。また、一般式(4)中でgは0〜2、hは0〜2で且つi及びjは、0≦i、及びj≦2を満足する整数を表す。
【0017】
前記、一般式(1)〜(4)のジハロ芳香族化合物の具体例としては、p−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、o−ジハロベンゼン、2,5−ジハロトルエン、1,4−ジハロナフタリン、1−メトキシ−2,5−ジハロベンゼン、4,4’−ジハロビフェニル、3,5−ジハロ安息香酸、2,4−ジハロ安息香酸、2,5−ジハロニトロベンゼン、2,4−ジハロニトロベンゼン、2,4−ジハロアニソール、2,5−ジハロアニリン、3,5−ジハロアニリン、p,p’−ジハロジフェニルエーテル、4,4’−ジハロベンゾフェノン、4,4’−ジハロジフェニルスルホン、4,4’−ジハロジフェニルスルホキシド、4,4’−ジハロジフェニルスルフィド等であり、なかでも、p−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、4,4’−ジハロベンゾフェノンおよび4,4’−ジハロジフェニルスルホンが好ましく、その中でもp−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロベンゾフェノンおよび4,4’−ジクロロジフェニルスルホンは特に好適に使用される。
【0018】
ジハロ芳香族化合物の適当な選択組み合わせによって2種以上の異なる反応単位を含む共重合体を得ることもでき、その組み合わせには特に制限はない。p−ジクロロベンゼンと4,4’−ジクロロベンゾフェノンもしくは4,4’−ジクロロフェニルスルホンとを組み合わせて使用すれば、種々の物性に優れたPASを得ることができるので、好ましい。また、p−ジハロベンゼンをジハロ芳香族化合物中70モル%以上、好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上用いて重合すると種々の物性に優れたPASが得られるのでとくに好ましい。また、ジハロベンゼンのみの重合体であるPPSは種々の物性に優れており、中でもジクロロベンゼンの使用は生産性等の点でより好ましい。
【0019】
なお、本発明によるPASは上記ジハロ芳香族化合物の重合体であるが、生成重合体の末端を形成させるため、あるいは重合反応ないし分子量を調節するためにモノハロ化合物を併用することも、分岐または架橋重合体を形成させるためにトリハロ以上のポリハロ化合物を併用することも可能である。これらのモノハロまたはポリハロ化合物を併用する場合は、例えばジハロベンゼンに若干量のトリクロロベンゼンを組み合わせて使用すれば、分岐を持ったフェニレンスルフィド重合体を得ることができ、トリクロロベンゼン等の3個以上のハロゲン原子を置換基として有するポリハロ化合物の使用は得られるポリマーの高粘度化の点で有用である。また、モノハロ化合物または3個以上のハロゲン原子を置換基として有するポリハロ化合物の使用量は目的あるいは反応条件によっても異なるので一概に規定できないが、ジハロ芳香族化合物1モルに対して好ましくは0.1モル%以下、更に好ましくは0.06モル%以下である。トリクロロベンゼンに代表される3個以上のハロゲン原子を置換基として有するポリハロ化合物の使用量が上記範囲の場合には、得られるポリマーのリニアリティーをほとんど損なうことなく、高粘度化できるので好ましい。なお、モノハロ化合物及び3個以上のハロゲン原子を置換基として有するポリハロ化合物は共に必ずしも芳香族化合物でなくとも良い。
【0020】
本発明の重合反応に使用する有機極性溶媒は、活性水素を有しない有機極性溶媒、すなわちアプロチックタイプの有機極性溶媒である。
【0021】
前記有機極性溶媒は、前記重合反応を阻害せず、原料であるジハロ芳香族化合物及びS2−を与える含水スルフィド化剤を反応に必要な濃度に溶解することができる程度の溶解能を持つものであれば、とくに限定されない。これらの中でも、この溶媒は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を有する極性溶媒であることが普通である。更に、この溶媒は原料ジハロ芳香族化合物と同様な脱ハロゲン化/硫化反応に関与しうるものでないことが望ましい。従って例えばハロ芳香族炭化水素ではないことが望ましい。
【0022】
前記有機極性溶媒は、制御された少量の水を重合反応に提供するためのものであるから、溶質としてのこの水が溶媒和しうるものであることが望ましい。
【0023】
また、本発明の製造方法から明らかなように、前記有機極性溶媒の沸点は水の沸点より高いことが望ましい。前述の条件を満足するものとしては、例えば、(1)アミド類、例えば、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−シクロヘキシルピロリドン(NCP)、N−メチルカプロラクタム、テトラメチル尿素(TMU)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等、(2)エーテル化ポリエチレングリコール類、例えばポリエチレングリコールジアルキルエーテル(重合度は2000程度まで、アルキル基はC〜C20程度)等、(3)スルホキシド類、例えば、テトラメチレンスルホキシド、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。前記溶媒の中でも、N−メチルカプロラクタムおよびNMPは、化学的安定性が高いので、特に好ましい。
【0024】
前記有機極性溶媒の使用量は、使用する溶媒の種類及び系内の溶媒に対する水分量によっても異なるが均一な重合反応が可能な反応系の粘度を保持すること、また、ある程度の生産性を維持するためには、重合に用いる含水スルフィド化剤中の硫黄原子1モル当り1.0〜8.0モルの範囲が好ましい。また、生産性を更に考慮すると、重合に用いる含水スルフィド化剤中の硫黄原子1モル当り1.0〜6.0モルの範囲が好ましく、また、更に好ましい使用溶媒量は重合に用いる含水スルフィド化剤中の硫黄原子1モル当り1.2〜5.0モルである。
【0025】
重合系内の水分量、あるいは含水スルフィド化剤の水分量を調整するための水は、反応を阻害するものが含まれなければ良く、そのため蒸留水、イオン交換水等、反応を阻害するアニオンやカチオン等を除いた水が好ましい。
【0026】
本発明の重合反応に存在させる水分は、加水分解反応などの併発を回避させるために、なるべく少ない方が良い。他方、重合反応が全く無水の状態である場合は、反応速度が著しく遅くなるといった問題がある。従って、本発明の重合反応において反応系内に存在すべき水分量は、重合に使用した該含水スルフィド化剤1モルに対して、重合反応終了時1モル未満でなければならない。また、反応が円滑に進行する点からは、重合に使用した該含水スルフィド化剤1モルに対して、0.02モル以上存在させることが好ましい。これらの中でも重合に使用した該含水スルフィド化剤1モルに対して0.03〜0.60の範囲が好ましく、0.05〜0.40の範囲が特に好ましい。上記範囲を満たす場合には、反応速度の制御の制御性、及び高分子量化の両立がより容易に行える。
【0027】
本発明においては、有機極性溶媒中で、ジハロ芳香族化合物と含水スルフィド化剤とを反応させるポリアリーレンスルフィドの製造において、含水スルフィド化剤がアルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物の混合物であり、重合反応終了時の反応系内の水と重合に使用した全該含水スルフィド化剤とのモル比(水/含水スルフィド化剤)が1未満で、重合反応終了時の残存するジハロ芳香族化合物と含水スルフィド化剤とのモル比(ジハロ芳香族化合物/含水スルフィド化剤)が1より小さいことを特徴とする
【0028】
含水スルフィド化剤を用いる本発明の製造方法の特徴を満たすためには脱水が必要となるが、本発明としては脱水と重合を同時に行っても良いし、あるいは脱水と重合を別々に行っても良いし、あるいは重合を行いながら適宜脱水を行っても良い。
【0029】
脱水と重合を同時に行う方法としては、例えば重合反応が実質的に進行し得る温度、200〜300℃、好ましくは210〜280℃、更に好ましくは215〜260℃の温度に有機極性溶媒(有機極性溶媒に対して0.5モル以下の水を含んでいて良い)及びジハロ芳香族化合物の混合物を加熱して、反応系内の水分量が上記範囲内にコントロールされ得る速度で含水スルフィド化剤を混合物に導入して余分の水を系外に除去し、反応系内の水分量を上記範囲内にコントロールした後、さらに200〜300℃、好ましくは210〜280℃の温度に加熱して40時間以下、好ましくは0.5〜20時間、更に好ましくは1〜10時間加熱して重合反応を行う方法でも良い。
【0030】
また、脱水と重合を別々に行う方法としては、例えば重合反応が、ほとんど進行しない温度、即ち120〜200℃、好ましくは150〜190℃に有機極性溶媒(有機極性溶媒に対して0.5モル以下の水を含んでいて良い)及びジハロ芳香族化合物の混合物を保ち、反応系内の水分量を含水スルフィド化剤1モルに対して1モル未満にコントロールされ得る速度で含水スルフィド化剤を混合物に導入して余分の水を系外に除去し、反応系内の水分量を含水スルフィド化剤1モルに対して1モル未満にコントロールした後、調製した有機極性溶媒、ジハロ芳香族化合物及び含水スルフィド化剤の混合物を重合反応が実質的に進行する温度、即ち、200〜300℃、好ましくは210〜280℃の温度に加熱して40時間以下、好ましくは0.5〜20時間、更に好ましくは1〜10時間加熱して重合反応を行う方法でも良い。
【0031】
また、重合を行いながら適宜脱水を行う方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
【0032】
▼重合反応がほとんど進行しない温度、即ち120〜200℃、好ましくは150〜190℃に有機極性溶媒(有機極性溶媒に対して0.5モル以下の水を含んでいて良い)及びジハロ芳香族化合物の混合物を保ち、反応系内の水分量がコントロールできる速度で含水スルフィド化剤を混合物に導入して余分の水を系外に除去し、反応系内の水分量を反応系内の含水スルフィド化剤1モルに対して1モル未満にコントロールした後、調製した有機極性溶媒、ジハロ芳香族化合物及び含水スルフィド化剤の混合物を重合反応が実質的に進行する温度、即ち、200〜300℃、好ましくは210〜280℃の温度に加熱して0.1〜40時間、好ましくは0.5〜20時間、更に好ましくは1〜10時間加熱して重合反応を行い、重合反応を行っている間に、必要に応じて更に連続的にあるいは一時的にあるいは断続的に系内の水分を除去して更に水分量を低減する重合方法。
【0033】
▼重合反応が進行し得る温度、200〜300℃、好ましくは210〜280℃、更に好ましくは215〜260℃の温度に有機極性溶媒(有機極性溶媒に対して0.5モル以下の水を含んでいて良い)及びジハロ芳香族化合物の混合物を加熱して、反応系内の水分量がコントロールされ得る速度で含水スルフィド化剤を混合物に導入して余分の水を系外に除去し、反応系内の水分量を反応系内の含水スルフィド化剤1モルに対して1モル未満になるようにコントロールした後、さらに200〜300℃、好ましくは210〜280℃の温度に加熱して40時間以下、好ましくは0.5〜20時間、更に好ましくは1〜10時間加熱して重合反応を行い、重合反応を行っている間に、連続的にあるいは一時的にあるいは断続的に系内の水分を除去して更に水分量を低減する重合方法。
【0034】
上記重合方法の中でも、生産性等の点から、重合を行いながら適宜脱水をする方法が好ましい。これらの中でも重合反応が実質的に進行し得る温度に有機極性溶媒及びジハロ芳香族化合物の混合物を加熱して、反応系内の水分量がコントロールされ得る速度で含水スルフィド化剤を混合物に導入して余分の水を系外に除去し、反応系内の水分量をコントロールした後、さらに重合反応を行い、重合反応を行っている間に、必要に応じて連続的にあるいは一時的にあるいは断続的に系内の水分を除去して更に水分量を低減する重合方法が好ましく、特に重合工程全般を通じて反応系内の水分量が、反応系内の含水スルフィド化剤1モルに対して1モル未満になっている重合方法(前記▲▼)が最も好ましい。
【0035】
上記の含水スルフィド化剤を導入する速度は反応系内の水分量を該有機極性溶媒1モルに対して目的の範囲にコントロールできるように余分の水を系外に除去できる速度であれば特に制限はない。導入時間はコントロールする水分量、導入する際の温度、含水スルフィド化剤の含水率等によっても異なるので一概には規定できないが、含水スルフィド化剤を0.1〜20時間、好ましくは0.5〜10時間かけて導入することが好ましい。この時間内であると、反応系の水分量あるいは温度等を制御しやすく、また生産性も良い。
【0036】
また、含水スルフィド化剤を導入する温度もコントロールする水分量、導入する際の速度、含水スルフィド化剤の含水率あるいは反応の形式によっても異なるので一概には規定できないが、脱水と重合を別々に行うのであれば、120〜200℃、好ましくは150〜190℃で導入すると良い。また、脱水と重合を同時に行うのであれば、200〜300℃、好ましくは210〜280℃、更に好ましくは215〜260℃の温度で導入すれば良い。
【0037】
重合反応は、200〜300℃、好ましくは210〜280℃の温度に加熱して0.1〜40時間、好ましくは0.5〜20時間、更に好ましくは1〜10時間加熱して行うことが好ましい。この範囲内であると反応の進行がスムーズである。
【0038】
なお、重合時の水の除去方法としては、反応系の温度・圧力をコントロールすることによって容易に行える。即ち、水、溶媒、ジハロ芳香族化合物の各蒸気圧曲線によりコントロールすべき温度・圧力が容易に推定でき、その温度・圧力でコントロールすれば所望の系内水分量にすることができる。
【0039】
本発明の製造方法において使用するジハロ芳香族化合物及び含水スルフィド化剤の使用量には、重合反応終了時の残存するジハロ芳香族化合物と残存する含水スルフィド化剤とのモル比(ジハロ芳香族化合物/含水スルフィド化剤)が1未満であれば、特に制限はない。例えば、ジハロ芳香族化合物と含水スルフィド化剤とを添加する方法としては、下記の(a)、(b)の方法が挙げられる
(a)予め、重合反応終了時の残存するジハロ芳香族化合物と残存する含水スルフィド化剤とのモル比(ジハロ芳香族化合物/含水スルフィド化剤)が1未満となるように、ジハロ芳香族化合物と含水スルフィド化剤とを仕込んで、反応してもよい。また、(b)重合反応終了時の残存するジハロ芳香族化合物と残存する含水スルフィド化剤とのモル比(ジハロ芳香族化合物/含水スルフィド化剤)が1以上になるように、ジハロ芳香族化合物と含水スルフィド化剤とを仕込んだ後、重合途中でジハロ芳香族化合物を系外に除去して、重合反応終了時の残存するジハロ芳香族化合物と残存する含水スルフィド化剤とのモル比(ジハロ芳香族化合物/含水スルフィド化剤)が1未満となるように調整してもよい。これらの中でも、前記(a)が好ましい。
【0040】
前記(a)または(b)の方法の何れの場合でも、重合反応終了時の残存するジハロ芳香族化合物と残存する含水スルフィド化剤とのモル比(ジハロ芳香族化合物/含水スルフィド化剤)が1未満であることが必須であり、1以上の場合には本発明の目的であるポリマーの高分子量化が達成できず、好ましくない。但し、あまり小さすぎるとポリマーの分解反応により、分子量低下が起こりえるため、0.05以上であることが好ましい。これらの中でも、重合反応終了時の残存するジハロ芳香族化合物と残存する含水スルフィド化剤とのモル比(ジハロ芳香族化合物/含水スルフィド化剤)が0.1〜0.5の範囲が特に好ましい。この範囲を満たす場合には分解反応を併発することなく、より高分子量化を達成し得る。
【0041】
従って前記(a)または(b)の方法の何れの場合でも、〔(全使用ジハロ芳香族化合物(モル))−(系外に除去したジハロ芳香族化合物(モル))〕と〔(全使用含水スルフィド化剤(モル))−(系外に除去した硫黄分(モル))〕との比が0.90より大きく1より小さい範囲が物性の優れたポリマー、即ちより高分子量のポリマーを得るのに好ましい。上記範囲を満たす場合には、前記の残存するモノマー比の好ましい範囲を満足しやすいので好ましい。また、上記範囲が0.92〜0.99の場合には高分子量化の点で更に好ましい。
【0042】
なおジハロ芳香族化合物の残存量については通常ガスクロマトグラフ法によって求められる。また、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物等の含水スルフィド化剤の残存量は、例えば硝酸銀滴定法によって求めることができる。
【0043】
本発明の重合反応においては、接液部がチタンあるいはクロムあるいはジルコニウム等でできた重合缶を用い、通常、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、特に、経済性及び取扱いの容易さの面から窒素が好ましい。
【0044】
反応圧力については、使用した原料及び溶媒の種類や量、あるいは反応温度等に依存するので一概に規定できないので、特に制限はない。また、反応液の調整及び重合体の生成反応は一定温度で行う1段反応でも良いし、段階的に温度を上げていく多段階反応でも良いし、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応でもかまわない。
【0045】
本発明では、有機極性溶媒中で、ジハロ芳香族化合物と含水スルフィド化剤とを反応させるポリアリーレンスルフィドポリマーの製造において、含水スルフィド化剤がアルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物の混合物であり、重合反応終了時の反応系内の水と重合に使用した全該含水スルフィド化剤とのモル比(水/含水スルフィド化剤)が1未満で、重合反応終了時の残存するジハロ芳香族化合物と含水スルフィド化剤とのモル比(ジハロ芳香族化合物/含水スルフィド化剤)が1より小さいことを特徴とするが、前処理工程あるいは後処理工程などの付加的な工程があっても良い。
【0046】
本発明においては、重合反応終了後の後処理を、常法によって行うことができる。例えば、重合反応終了後、反応混合物をそのまま、あるいは水で、あるいは反応溶媒等の有機溶媒で希釈して、必要に応じて酸あるいは塩基を加えた後、濾別し、更に必要に応じて中和を行い、水洗、濾別および乾燥をすることによって行うことができる。また、別法としては、反応混合物をそのまま、あるいは酸または塩基を加えた後、減圧下または常圧下で加熱して溶媒だけを留去し、ついで缶残固形物に必要に応じて酸あるいは塩基を加え、水あるいはアセトン等のケトン類あるいはメタノール等のアルコール類あるいは反応溶媒等の有機溶媒で1回または2回以上洗浄し、それから必要に応じて中和し、水洗、濾別および乾燥をすることによって行うことができる。なお、上記の洗浄及び濾別操作を行う温度には特に制限はない。また、酸、塩基の代わりに、塩化アンモニウム等の塩などで処理してももちろんかまわない。
【0047】
単離した重合体は実質的に水等の溶媒が蒸発する温度に加熱して乾燥を行う。乾燥は真空下で行っても良いし、空気中あるいは窒素のような不活性ガス雰囲気下で行っても良い。
【0048】
本発明により得られる重合体は従来のPASに比べて高分子量であるので、そのまま各種成形材料等に利用できるが、空気あるいは酸素富化空気中あるいは減圧下で熱処理することにより増粘することが可能であり、必要に応じてこのような増粘操作を行った後、各種成形材料等に利用しても良い。この熱処理温度は処理時間によっても異なるし処理する雰囲気によっても異なるので一概に規定できないが、通常は180℃以上で行うことが好ましい。熱処理温度が180℃未満では増粘速度が非常に遅く生産性が悪く好ましくない。熱処理は押出機等を用いて重合体の融点以上で、溶融状態で行っても良い。但し、重合体の劣化の可能性あるいは作業性等から、融点プラス100℃以下で行うことが好ましい。
【0049】
本発明により得られた重合体は、従来のPAS同様そのまま射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形のごとき各種溶融加工法により、耐熱性、成形加工性、寸法安定性等に優れた成形物にすることができる。しかしながら強度、耐熱性、寸法安定性等の性能をさらに改善するために、本発明の目的を損なわない範囲で各種充填材と組み合わせて使用することも可能である。充填材としては、繊維状充填材、無機充填材等が挙げられる。
【0050】
また、成形加工の際に添加剤として本発明の目的を逸脱しない範囲で少量の、離型剤、着色剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、発泡剤、防錆剤、難燃剤、滑剤、カップリング剤を含有せしめることができる。更に、同様に下記のごとき合成樹脂及びエラストマーを混合して使用できる。これら合成樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ四弗化エチレン、ポリ二弗化エチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等が挙げられ、エラストマーとしては、ポリオレフィン系ゴム、弗素ゴム、シリコーンゴム、等が挙げられる。
【0051】
本発明の重合体及びその組成物は、従来の方法で得られるPPS同様耐熱性、寸法安定性等が優れるので、例えば、コネクタ・プリント基板・封止成形品などの電気・電子部品、ランプリフレクター・各種電装部品などの自動車部品、各種建築物や航空機・自動車などの内装用材料、あるいはOA機器部品・カメラ部品・時計部品などの精密部品等の射出成形・圧縮成形品、あるいは繊維・フィルム・シート・パイプなどの押出成形・引抜成形品等として幅広く利用可能である。
【0052】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0053】
使用原料
1.含水スルフィド化剤
含水フレーク状硫化ナトリウム(以下、Na2S・xH2Oと略称する。純度−Na2S:58.9重量%、NaSH:1.3重量%)はナガオ(株)製品を使用した。また、含水フレーク状水硫化ナトリウム(以下、NaSH・yH2Oと略称する。純度−NaSH:71.2重量%、Na2S:2.7重量%)はナガオ(株)製品を使用した。
【0054】
2.溶媒
N−メチルピロリドン(以下、NMPと略称する)はBASFジャパン(株)製品を使用した。
【0055】
3.ジハロ芳香族化合物
p−ジクロロベンゼン(以下、p−DCBと略称する)は保土谷化学(株)製品を使用した。
【0056】
4.水
水道水を蒸留した後イオン交換を施したものを使用した。
【0057】
5.水酸化ナトリウム(以下、NaOHと略称する)
和光純薬工業(株)試薬を使用した。
【0058】
6.1,3,5−トリクロロベンゼン(以下、TCBと略称する)
東京化成(株)試薬を使用した。
【0059】
物性評価
得られた重合体の溶融粘度(η)は、東洋精機(株)製キャピログラフ1Bを用いて測定した(300℃、剪断速度100/秒、ノズル孔径1mm、長さ10mm)。
【0060】
分子量は、(株)センシュー科学製高温ゲルパーミエーションクロマトグラフ(高温GPC)SSC−7000を用いて測定した(溶媒:1−クロロナフタレン、温度:210℃、検出器:UV検出器(360nm)、サンプル注入量:200μl(濃度:0.2重量%)。流速1ml/分)。なお、分子量はポリスチレン換算で算出し、分子量分布のピークトップの値Mpで比較を行った。
【0061】
実施例1
温度センサー、冷却塔、滴下槽、滴下ポンプ、留出物分離槽を連結した攪拌翼付ステンレス製(チタンライニング)4リットルオートクレーブにp−DCB 735.0g(5.0モル)、NMP 1983g(20モル)、水 36.0g(2.0モル)を室温で仕込み、攪拌しながら窒素雰囲気下で100℃まで20分かけて昇温し、系を閉じ、更に220℃まで40分かけて昇温し、その温度で内圧を0.22MPaにコントロールして、Na2S・xH2O 600g、NaSH・yH2O 90g、水170gの混合液(Na2S:4.56モル、NaSH:1.28モル、水分50.3wt%)を3時間かけて滴下した。滴下中は同時に脱水操作を行い、水は系外に除去し、水と共に留出するp−DCBは連続的にオートクレーブに戻した。なお、脱水操作とp−DCBを戻す操作は240℃昇温完了まで行い、昇温完了時に系を密閉した。
【0062】
その後、そのままの温度圧力で1時間保持した後、1時間かけて、内圧を0.17MPaに下げながら、内温を240℃まで昇温し、その温度で1時間保持して反応を終了し、室温まで冷却した。留出液の分析結果は、水が450g、NMP18gであった。結果的に、反応終了時の反応系内の水分量は全使用含水スルフィド化剤に対して0.18(モル/モル)であった。なお、p−DCBについては、留出した全量をオートクレーブ内に戻したので、系外に除去したp−DCBは実質的に0であった。また系外に飛散した硫化水素量は19gであった。従って反応の実質的なモル比〔(仕込みp−DCB(モル))−(系外に除去したp−DCB(モル))〕/〔(全使用含水スルフィド化剤(モル))−(系外に除去したHS(モル))〕は0.95であった。得られた反応スラリーを一部サンプリングし、ガスクロマトグラフにより残存DCB量を測定し、自動滴定装置を用いた硝酸銀滴定により残存スルフィド化剤量を測定した。その結果は、仕込みのDCB1モルに対して残存DCB:1.5モル%、残存NaS:3.5モル%、残存NaSH:4.4モル%であった。得られた反応スラリー200gを1リットルの水に注いで80℃で1時間攪拌した後、濾過した。このケーキを再び500ミリリットルの湯で1時間攪拌、洗浄した後、濾過した。この操作を4回繰り返し、濾過後、熱風乾燥機で120℃−10時間乾燥して白色粉末状のポリマーを得た。得られたポリマーの溶融粘度は1900ポイズであり、分子量(Mp)は42400であった(精製法−1)。また、また、得られた反応スラリー200gを減圧下(−0.08MPa)、120℃に加熱することにより反応溶媒を留去し、残査に1リットルの水を注いで80℃で1時間攪拌した後、濾過した。このケーキを再び500ミリリットルの湯で1時間攪拌、洗浄した後、濾過した。この操作を3回繰り返し、更に500ミリリットルの水を加え、200℃で1時間攪拌後、濾過し、熱風乾燥機で120℃−10時間乾燥して白色粉末状のポリマーを得た。得られたポリマーの溶融粘度は1940ポイズであった(精製法−2)。得られた反応スラリー200gにNMPを100g加え、80℃で1時間攪拌した後、濾過した。このケーキを再び500ミリリットルの湯で1時間攪拌、洗浄した後、濾過した。この操作を4回繰り返し、濾過後、熱風乾燥機で120℃−10時間乾燥して白色粉末状のポリマーを得た。得られたポリマーの溶融粘度は2360ポイズであった(精製法−3)。結果を表1に示す。
【0063】
実施例2、3
表1に示すような条件で、実施例1と同様に実施した。結果は表1に示すとおりである。
【0064】
実施例4
滴下時間を5時間にする以外は実施例1と同様に実施した。結果を表2に示す。
【0065】
実施例5
昇温前にTCB0.45g(0.0025モル)を追加で仕込む以外は実施例1と同様に実施した。結果を表2に示す。
【0066】
実施例6
p−DCBの仕込量を750g(5.1モル)として実施例1と同様に反応を行った。ただし、滴下中は留出したp−DCBを連続的に全量オートクレーブに戻し、昇温工程では留出したp−DCBのオートクレーブに戻す量を制御して、オートクレーブ内より15g系外に抜き出した。結果を表2に示す
【0067】
比較例1
Na2S・xH2Oの使用量を668g、NaSH・yH2Oを使用せずその代わりにNaOHを10g使用し、水を140g使用して実施例1と同様に実施した。滴下した混合液の組成はNa2S:5.20モル、NaOH:0.10モル、水分50.3wt%であった。得られたポリマーは精製法−1で210ポイズと実施例に比較して低粘度であった。
【0068】
比較例2
220℃滴下時のコントロールする圧力を0.55MPa、240℃昇温時のコントロールする圧力を0.90MPaとする以外は実施例4と同様に実施した。反応終了時の水の量は全使用スルフィド化剤に対して1.13(モル/モル)であった。得られたポリマーは精製法−1で120ポイズと実施例に比較して低粘度であった。
【0069】
比較例3
使用するDCBの量を793.8g(5.4モル)とする以外は実施例1と同様に実施した。残存したモノマーは、仕込みのDCB1モルに対して残存DCB:8.9モル%、残存Na2S:3.2モル%、残存NaSH:3.9モル%であった。得られたポリマーは精製法−1で150ポイズと実施例に比較して低粘度であった。
【0070】
【表1】
Figure 0004055058
【0071】
【表2】
Figure 0004055058
【0072】
なお、表1及び2中の「反応実質モル比」とは、次式で算出される値を表す。反応実質モル比=〔(仕込みp−DCB(モル))−(系外に除去したp−DCB(モル))〕/〔(全使用含水スルフィド化剤(モル))−(系外に除去したHS(モル))〕
【0073】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、有機極性溶媒中で、ジハロ芳香族化合物と含水スルフィド化剤とを反応させるポリアリーレンスルフィドポリマーの製造において、含水スルフィド化剤としてアルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物の混合物を用い、かつ水分量及びモノマー比を特定範囲にコントロールすることにより、PASの高分子量化が達成できる。従って靱性等の力学的強度が向上した製品を、高い生産性で提供できる。

Claims (5)

  1. 有機極性溶媒中で、ジハロ芳香族化合物と結晶水を有する含水スルフィド化剤とを反応させるポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、
    1)前記含水スルフィド化剤がアルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物の混合物であり、
    2)加熱した有機極性溶媒とジハロ芳香族化合物を含む混合物に前記含水スルフィド化剤を導入しながら反応する方法であって、
    且つ、重合に使用する全含水スルフィド化剤1モルに対して、反応系内中の水が1モル未満となるように、含水スルフィド化剤の導入速度を反応系内中の水が反応混合物から除去されるように調整し制御し、重合反応終了時の反応系内の水と重合に使用した全含水スルフィド化剤とのモル比(水/含水スルフィド化剤)が1未満となるように制御し、
    3)重合反応終了時の残存するジハロ芳香族化合物と前記含水スルフィド化剤とのモル比(ジハロ芳香族化合物/含水スルフィド化剤)が1未満となるように制御することを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  2. 含水スルフィド化剤中のアルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物との混合比が、アルカリ金属硫化物1モルに対してアルカリ金属水硫化物が0.04〜1モルの範囲である請求項記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. 〔(全使用ジハロ芳香族化合物(モル))−(系外に除去したジハロ芳香族化合物(モル))〕と〔(全使用含水スルフィド化剤(モル))−(系外に除去した硫黄分(モル))〕との比が0.92〜0.99の範囲である請求項1または2記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4. 該ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする請求項1〜の何れか一つに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  5. 該ポリアリーレンスルフィドが0.1モル%以下の分岐構造を含むポリフェニレンスルフィドである請求項1〜の何れか一つに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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