JP4052488B2 - 殺菌剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、殺菌剤、詳しくは、取扱性がよく、また屋外塗料用または屋外接着剤用として有用な殺菌剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、製紙パルプ工場、冷却水循環工程などの種々の産業用水、切削油などの金属加工用油剤、カゼイン、澱粉糊、にかわ、紙用塗工液、表面サイズ剤、塗料、接着剤、合成ゴムラテックス、印刷インキ、セメント混和剤などの各種産業製品には、有害な微生物が繁殖しやすく、生産性や品質の低下、悪臭の発生などの原因となっている。そのため、これらの微生物の繁殖の防除や殺菌のために数多くの殺菌剤が使用されている。
【0003】
これらの産業用品における有害微生物の発生を抑制ないしは防除する薬剤の1つとしてイソチアゾロン系化合物が知られている。
このイソチアゾロン系化合物は、防かび、防腐、防藻および防酵母において優れた効力を示し、前述したような分野における、工業用の殺菌剤として広く使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、イソチアゾロン系化合物は、皮膚刺激性が強いため、そのままでは取り扱いにくく、取扱性および作業性があまり良好でない。
また、水に対する溶解度が比較的高いため、イソチアゾロン系化合物を含有する殺菌剤を含む塗料や接着剤などを屋外建物に施工しても、イソチアゾロン系化合物が雨水により溶出されて流されてしまい、その効果が持続できないという不具合がある。
【0005】
そこで本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、取扱性および作業性が良好で、かつ、水に対しても溶出しにくく屋外においてもその効果を良好に維持し得る殺菌剤を提供することを、その目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の殺菌剤は、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンとコレステロールとを含有し、前記2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンが前記コレステロールによって包接されていることを特徴としている。
【0012】
また、この殺菌剤は、屋外塗料用または屋外接着剤用として好適に使用し得る。
【0013】
【発明の実施の形態】
【0028】
本発明において、コレステロールとは、分子式がC27H46Oで表わされるステロイドの一種であり、本発明の殺菌剤は、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)と、このコレステロールを含有するものである。OITとコレステロールとを配合する割合は、例えば、OITに対して、コレステロールがモル比で0.5〜6、より好ましくは1〜3の範囲が好ましい。
【0029】
さらに、上記の配合において、OITはコレステロールによって包接される。このようなOITのコレステロール包接化合物は、OITとコレステロールとを適当な溶媒を用いて溶解し混合することによって容易に得ることができる。この際に、溶媒に対して約1重量%以下の水を加えることによって、包接化を促進させることもできる。また、具体的な調製方法としては、例えば、飽和溶液法の直接法、溶剤法、乾燥法の噴霧乾燥法、凍結乾燥法など公知の方法を用いることができる。好ましくは、例えば、溶剤法が用いられる。
【0030】
溶剤法には、例えば、濃縮法および沈殿法があり、濃縮法では、例えば、OITとコレステロールとを、上記した配合割合において、コレステロールに対して1〜1000重量倍、好ましくは10〜500重量倍の溶媒中に加えて、5〜80℃、好ましくは、15〜60℃で0.5〜24時間、好ましくは、1〜10時間攪拌混合することによって、OITをコレステロールによって包接させる。次いで、この溶液をエバポレーションによって除去し、残ったOITのコレステロール包接化合物を、例えば、水やメタノールなど、この包接化合物に対して貧溶媒として作用する溶媒を用いて洗浄し、濾過後、10〜60℃、好ましくは、20〜50℃で1〜48時間減圧乾燥などの乾燥を行ない、OITのコレステロール包接化合物の白色結晶を得る。
【0031】
また、沈殿法では、例えば、OITとコレステロールとを、上記した配合割合において、コレステロールに対して1〜1000重量倍、好ましくは10〜500重量倍の溶媒中に加えて、5〜80℃、好ましくは、15〜60℃で0.5〜24時間、好ましくは、1〜10時間攪拌混合することによって、OITをコレステロールによって包接させる。次いで、この溶液を10℃以下、好ましくは、5℃以下に冷却して、OITのコレステロール包接化合物を沈殿させ、濾過後、10〜60℃、好ましくは、20〜50℃で1〜48時間減圧乾燥などの乾燥を行ない、OITのコレステロール包接化合物の白色結晶を得る。
【0032】
このときに使用される溶媒としては、OITが溶解し、包接化を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール系溶媒、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルエーテルなどのエーテル系溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ソルベントナフサなどの芳香族系溶媒、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの極性溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上併用して用いてもよい。これら溶媒のうち、濃縮法では、例えば、ケトン系溶媒、エステル系溶媒およびハロゲン化炭化水素系溶媒が好ましく、例えば、アセトン、酢酸エチル、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレンがより好ましい。また、沈殿法では、例えば、アルコール系溶媒が好ましく、例えば、メタノールがより好ましい。
【0033】
このようにして得られる本発明の殺菌剤は、その使用目的に応じて、例えば、液剤(水懸濁剤および油剤を含む。)、ペースト剤、粉剤、粒剤などの公知の剤型に製剤化して使用することができる。好ましくは、例えば、液剤が挙げられる。液剤として製剤化するには、OITのコレステロール包接化合物を、適宜溶剤に溶解すればよい。このときに使用される溶媒としては、例えば、上記したOITのコレステロール包接化合物を得るために使用される溶媒を用いることができ、好ましくは、例えば、グリコール系溶媒、より好ましくは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが用いられる。また、とりわけ、OITのコレステロール包接化合物は、水懸濁剤として製剤化するのが好ましく、この製剤化は、例えば、OITのコレステロール包接化合物を、得られる製剤に対して1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%の割合となるように含有させて、攪拌して懸濁させればよい。
【0034】
さらに、本発明の殺菌剤は、その使用目的などにおいて公知の添加剤、例えば、他の殺菌剤、界面活性剤、酸化防止剤などを添加してもよい。
他の殺菌剤としては、例えば、3−ヨード−2−プロピニル−ブチル−カーバメイト、ジヨードメチル−p−トルイルスルホンおよびp−クロロフェニル−3−ヨードプロパルギルフォルマールなどの有機ヨウ素系化合物、例えば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンなどのジチオール系化合物、例えば、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドなどのチオフェン系化合物、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチオカーバメート系化合物、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルなどのニトリル系化合物、例えば、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミドおよびN−(フルオロジクロロメチルチオ)−N,N’−ジメチル−N−フェニル−スルファミドなどのハロアルキルチオ系化合物、例えば、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジンなどのピジリン系化合物、例えば、ジンクピリチオンおよびナトリウムピリチオンなどのピリチオン系化合物、例えば、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾールなどのベンゾチアゾール系化合物、例えば、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジンなどのトリアジン系化合物、例えば、メチル−2−ベンズイミダゾールカーバメイト、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾールなどのイミダゾール系化合物などを挙げることができる。これら殺菌剤は、単独または2種以上併用して用いてもよい。また、これらの配合割合は、その剤型および使用目的によって異なるが、例えば、液剤では、0.1〜80重量%、粉剤では、10〜99.9重量%程度含有させることが好ましい。
【0035】
また、界面活性剤としては、例えば、石鹸類、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン界面活性剤、高分子界面活性剤など、公知の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、ノニオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤が挙げられる。
該ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、酸化エチレンと酸化プロピレンとのブロック共重合物などが挙げられる。
【0036】
該アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、アルキルナフタレンスルホン酸金属塩、ポリカルボン酸型界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸エステル金属塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩、リグニンスルホン酸金属塩などが挙げられ、これら金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
【0037】
また、酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−t−ブチルフェノール]などのフェノール系酸化防止剤、アルキルジフェニルアミン、N,N’−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミンなどのアミン系酸化防止剤などが挙げられる。これら、界面活性剤および酸化防止剤は、例えば、液剤の場合には、液剤100重量部に対して0.1〜5重量部添加される。
【0038】
このようにして得られる本発明の殺菌剤は、皮膚刺激性が弱く、取扱性および作業性が良好であり、例えば、製紙パルプ工場、冷却水循環工程などの産業用水のスライムコントロール、殺菌洗浄などに利用できると共に、切削油などの金属加工用油剤、カゼイン、澱粉糊、にかわ、紙用塗工液、表面サイズ剤、塗料、接着剤、合成ゴムラテックス、印刷インキ、セメント混和剤などにおける防かび、防腐、防藻および防酵母などに適用でき、工業用殺菌剤として有効に利用できる。また、水に対する溶解度が比較的低いため、屋外用の塗料や接着剤に含有させて屋外建物に施工しても、有効成分であるOITが雨水により溶出しにくく、殺菌剤としての効果を良好に持続することができる。
【0039】
なお、本発明の殺菌剤は、その適用対象に応じて添加量を適宜決定すればよいが、約0.005〜20%、好ましくは0.01〜5%程度の有効成分濃度として作用させることが好ましい。
【0040】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の殺菌剤は、皮膚刺激性が弱く、取扱性および作業性が良好であり、また、水に対する溶解度が比較的低いため、塗料や接着剤に含有させて屋外建物に施工しても、有効成分であるOITが雨水により溶出しにくく、殺菌剤としての効果を良好に持続することができる。
【0041】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
実施例1
コレステロール2.0gと、OIT0.37gとに、クロロホルム30mlを加え、室温で2時間攪拌した。次いでエバポレーションによって溶媒を除去し、メタノール50mlで洗浄した後、40℃で24時間減圧乾燥し、OITのコレステロール包接化合物の粉末(白色結晶)2.0g(収率84%)を得た。この粉末を液体クロマトグラフィーで定量して、OITの含有率を求めた。OITの含有率は、14.0重量%であった。
【0042】
また、包接化を確認するために、粉末X線解析および赤外吸収スペクトルを測定するとともに、溶解度を調べた。なお、溶解度は、粉末1gを水20mlに加えて、毎分200回の振とうを2時間与えた後、メンブレンフィルタで濾過し、濾液を液体クロマトグラフィーで定量することにより求めた。
赤外吸収スペクトルを図1に示すとともに、粉末X線のデータおよび溶解度を下記に示す。
粉末X線データ:面間隔(Å) 23.860(I/Io;100)、16.980(I/Io;47)、6.267(I/Io;47)、5.771(I/Io;57)、5.260(I/Io;47)
溶解度:78ppm
実施例2
コレステロール2.0gとOIT0.37gにメタノール100gを加え、50℃で溶解させた。その後、室温で2時間攪拌し、さらに5℃で2時間攪拌した。生じた沈殿を吸引濾過した後、40℃で24時間減圧乾燥し、OITのコレステロール包接化合物の粉末(白色結晶)1.5g(収率63%)を得た。この粉末を液体クロマトグラフィーで定量して、OITの含有率を求めた。OITの含有率は、14.8重量%であった。
【0043】
また、包接化を確認するために、実施例1と同様の操作によって溶解度を調べた。結果を下記に示す。
溶解度:104ppm
比較例1
比較例として、OITのプロピレングリコール溶液(OIT含量約45重量%)を調製した。なお、実施例1と同様の操作による溶解度は下記の通りであった。
溶解度:627ppm
抗菌力測定
グルコース寒天培地を用いた倍数希釈法(1000〜2.0μg/ml、10段階希釈)で、細菌は33℃、18時間、かびおよび酵母は28℃、3日間培養し、最小発育阻止濃度(MIC、μg/ml)を求めた。
【0044】
試料は、実施例1のOITのコレステロール包接化合物と、比較例1のOITを用い、いずれもOITが8重量%となるように調製した。
なお、供試菌は以下の通りである。
No.1:バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis、枯草菌、グラム陽性菌)
No.2:スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus、黄色ぶどう球菌、グラム陽性菌)
No.3:エシュリアヒア・コリー(Escheriachia coli、大腸菌、グラム陰性菌)
No.4:シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa 、緑膿菌、グラム陰性菌)
No.5:セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens、霊菌、グラム陰性菌)
No.6:アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger、黒かび)
No.7:ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum 、青かび)
No.8:クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides クロカワかび)
No.9:ムコール・スピネッセンス(Mucor spinescens 、毛かび)
No.10 :ロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra、赤色酵母)
No.11 :サッカロマイセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae 、白色酵母)
これらの菌に対する抗菌力は、最小発育阻止濃度(MIC、μg/ml)で表1の通りであった。
【0045】
【表1】
【0046】
この結果から、コレステロールによって包接化されたOITは、包接化されていないOITと同等の抗菌力を有することがわかる。
塗料からの溶出試験
水性リシン塗料各100gに、実施例1のOITのコレステロール包接化合物および比較例1のOITを、OITが塗料中に0.15重量%含有されるようにそれぞれ配合した。
【0047】
次に、JIS Z 2911(1992)に準じ、3cm×3cmの濾紙に、調製された各塗料を約0.5g塗布して1日乾燥後、100mlの水中に入れて3日間振とうした。その後、水中のOITを液体クロマトグラフィーで定量し、水中に溶出したOITの溶出率を求めた。
その結果、溶出率はOITの全量に対して、実施例1では、30重量%、比較例1では、80重量%であった。このことより、コレステロールによって包接化されたOITは、水によって溶出しにくいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の赤外吸収スペクトルである。
Claims (2)
- 2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンとコレステロールとを含有し、前記2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンが前記コレステロールによって包接されていることを特徴とする、殺菌剤。
- 屋外塗料用または屋外接着剤用として使用される請求項1に記載の殺菌剤。
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