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JP4045693B2 - メタクリル酸の製造方法 - Google Patents

メタクリル酸の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はメタクリル酸の製造方法、詳しくはメタクロレインを気相接触酸化して高収率でメタクリル酸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタクロレインを出発原料とし、これを酸化触媒の存在下に分子状酸素または分子状酸素含有ガスを用いて酸化してメタクリル酸を製造する際に使用する触媒に関してはは数多くの提案がなされているものの、なお触媒活性、選択性および寿命の改良が望まれて久しい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、メタクロレインを気相接触酸化してメタクリル酸を高収率、かつ長期間安定して製造する方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
メタクロレインを接触気相酸化してメタクリル酸を製造する反応においては、並列反応、逐次反応などの望ましくない副反応が起こりやすく、メタクリル酸の選択率、ひいては収率が低下する。また、この副反応は触媒の好ましくない酸化還元状態への移行、細孔閉塞などが起こして触媒寿命を短くする原因ともなる。そこで、本発明者らは、鋭意研究の結果、各反応管内の触媒層を2層以上に分割して複数の反応帯を設け、各反応帯内の反応管単位体積当りの触媒活性成分量が原料ガス入口部から出口部に向かって減少するように触媒を充填すると、副反応が抑制されてメタクリル酸の収率が向上するとともに、触媒の劣化が抑制されてメタクリル酸を長期にわたり安定して高収率で製造できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、触媒を充填してなる固定床多管型反応器を用いてメタクロレインを分子状酸素または分子状酸素含有ガスにより気相酸化してメタクリル酸を製造する方法において、
(1)各反応管内の触媒層を管軸方向に2層以上に分割して複数個の反応帯を設け、
(2)各反応帯に充填する触媒に関し、反応管単位体積当りの触媒活性成分量が原料ガス入口部から出口部に向かって減少するようにする、
ことを特徴とするメタクリル酸の製造方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明においては、固定床多管型反応器の各反応管内の触媒層を2層以上に分割して複数個の反応帯を設ける。反応帯の数は多いほど副反応の防止に効果的であるが、工業的見地からは2〜3の反応帯とするのが経済的である。反応帯の分割比は、各反応帯に充填する触媒の組成および形状によって変わるので一概に特定できず、全体としての最適な活性、選択率が得られるように適宜決定すればよい。
【0007】
本発明においては、上記複数個の反応帯に反応管単位体積当りの触媒活性成分量が原料ガス入口部から出口部に向かって減少するように充填する。
【0008】
本発明においては、下記一般式(I)で表される触媒が用いられる。
【0009】
MoaPbAcBdCeOx (I)
(式中、Moはモリブデン、Pはリン、Aはヒ素、アンチモン、ゲルマニウム、ビスマス、ジルコニウム、セレン、セリウム、銅、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、コバルト、スズ、銀、亜鉛、パラジウム、ロジウムおよびテルルから選ばれる少なくとも1種の元素、Bはバナジウム、タングステンおよびニオブから選ばれる少なくとも1種の元素、Cはアルカリ金属、アルカリ土類金属およびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、Oは酸素を表し、a、b、c、d、eおよびxはそれぞれMo、P、A、B、CおよびOの原子数を表し、a=12のとき、b=0.5〜4、c=0.001〜5、d=0.001〜4、e=0.001〜4、x=各々の元素の酸化状態によって定まる数値である
【0010】
本発明で使用する触媒の調製方法および原料については特に制限はなく、この種の触媒の調製に一般に用いられている方法および原料を用いることができる。本発明で使用する触媒は、例えば上記一般式(I)で表される、モリブドバナドリン酸を含有してなる複合酸化物を通常の成型法、例えば押出成型法、打錠成型法などにより成型して得られる成型触媒でも、あるいはこの複合酸化物を炭化ケイ素、α−アルミナ、シリカ−アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどの一般に担体として使用されている不活性担体に担持した担持型触媒でもよい。なお、この担持型触媒の場合、触媒活性成分量とは担体を除いた重量を意味する。
【0011】
また、本発明で使用する触媒の形状についても特に制限はなく、ペレット状、球状、リング状、タブレット状など適宜選択することができる。
【0012】
反応管単位体積当りの触媒活性成分量が原料ガス入口部から出口部に向かって減少するようにする代表的な方法を挙げると次のとおりである。
【0013】
▲1▼ 成型触媒の形状を変える。例えば、原料ガス入口部にペレット状の触媒を充填し、出口部にリング状の触媒を充填する。
【0014】
▲2▼ 成型触媒を不活性担体で希釈する。例えば、原料ガス入口部には触媒をそのまま充填し、出口部には触媒と不活性担体とを混合して充填する。
【0015】
▲3▼ 成型触媒の比重を変える。例えば、原料ガス出口部により比重の小さい触媒を充填する。なお、比重の小さい触媒は、例えば触媒調製時に使用する水の量を変えて容易に得られる。
【0016】
▲4▼ 成型触媒と担持型触媒を組み合わせる。例えば、原料ガス入口部には成型型触媒を充填し、出口部には担持型触媒を充填する。
【0017】
▲5▼ 担持型触媒において担持量を変える。例えば、原料ガス入口部には担持量の多い触媒を充填し、出口部には担持量の少ない触媒を充填する。
【0018】
本発明における反応条件については特に制限はなく、一般に用いられている条件下にて実施することができる。例えば、メタクロレイン1〜10容量%、分子状酸素3〜20容量%、水蒸気0〜60容量%、窒素、炭酸ガスなどの不活性ガス20〜80容量%などからなる原料ガスを各反応管の触媒層に導入し、250〜450℃の温度、常圧〜10気圧の圧力下、空間速度(SV)300〜5000hr-1で反応を行えばよい。
【0019】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、望ましくない副反応を効果的に抑制できるので、目的とするメタクリル酸を高収率で製造することができる。
【0020】
また、副反応の抑制により、触媒の劣化が低減され、触媒寿命が延長されるため、目的とするメタクリル酸を長期にわたり安定して、高収率で製造することができる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0022】
なお、転化率、選択率および単流収率は次式による。
【0023】
転化率(モル%)=(反応したメタクロレインのモル数/供給したメタクロレインのモル数)×100
選択率(モル%)=(生成したメタクリル酸のモル数/反応したメタクロレインのモル数)×100
単流収率(モル%)=(生成したメタクリル酸のモル数/供給したメタクロレインのモル数)×100
実施例1
加熱したイオン交換水40リットルにパラモリブデン酸アンモニウム8830gとメタバナジン酸アンモニウム531gとを加え撹拌して溶解した。この水溶液にオルトリン酸(85重量%)625gを加え、続いて硝酸セシウム812gをイオン交換水9リットルに溶解した水溶液を加え、最後に三酸化アンチモン243gを粉体のまま加え、攪拌しながら加熱濃縮した。得られたスラリーを250℃で15時間乾燥した後、粉砕した。
【0024】
<触媒(1)の調製>
上記粉砕した粉体を水で調湿した後、押出成型機で直径5mm、長さ6mmのペレット状に成型し乾燥した後、空気流中400℃で3時間焼成してペレット状触媒(1)を完成した。触媒(1)の反応管単位体積当りの重量は約1.20g/mlであった。
【0025】
<触媒(2)の調製>
上記粉砕した粉体を水で調湿した後、押出成型機で直径5mm、貫通孔内径1.5mm、長さ6mmのリング状に成型し乾燥した後、空気流中400℃で3時間焼成してリング状触媒(2)を完成した。触媒(2)の反応管単位体積当りの重量は約1.02g/mlであった。
【0026】
触媒(1)、(2)の組成は酸素を除いた原子比でいずれも次のとおりであった。Mo121.31.09Cs1.0Sb0.4
<酸化反応>
内径25.4mmの鋼鉄製反応器の原料ガス入口部に触媒(1)750mlを充填し、続いて出口部に触媒(2)750mlを充填した。
【0027】
この触媒層にイソブチレンをMo−Bi−Co−W−Fe酸化物系多元触媒の存在下に気相接触酸化して得られた下記組成
メタクロレイン 3.5容量%
イソブチレン 0.04容量%
メタクリル酸+酢酸 0.24容量%
水蒸気 20容量%、
酸素 9容量%
その他 67.22容量%
の混合ガスを導入し、反応温度290℃、空間速度1200hr-1で反応を行った。結果を表1に示す。
【0028】
比較例1
実施例1で得られた触媒(1)のみを1500ml充填した以外は実施例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
【0029】
比較例2
実施例1で得られた触媒(2)のみを1500ml充填した以外は実施例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
【0030】
比較例3
実施例1において触媒(1)と(2)とを前後逆に充填した以外は実施例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
【0031】
実施例2
実施例1で用いたと同じ反応器の原料ガス入口部に触媒(1)750mlを充填し、出口部には触媒(1)600mlおよび直径5mmのα−アルミナ150mlの混合物を充填した。以下、実施例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
【0032】
実施例3
<触媒(3)の調製>
実施例1の触媒(1)の調製において、触媒(1)を成型する際、粉に添加する水の量を1.8倍にし、押出成型機で直径5mm、長さ6mmのペレット状に成型した後、空気流中400℃で3時間焼成してペレット状触媒(3)を完成した。この触媒(3)の反応管単位体積当りの重量は0.95g/mlであった。<酸化反応>
実施例1と同様に、反応器の原料ガス入口部に触媒(1)750mlを充填し、出口部には触媒(3)750mlを充填して反応を行った。結果を表1に示す。
【0033】
実施例4
<触媒(4)の調製>
実施例1と同様にして得られたスラリー中に担体としての直径5mmのα−アルミナ1600mlを浸漬し、撹拌しながら加熱することにより触媒活性成分を担持させた。これを空気流中400℃で3時間焼成して担持型触媒(4)を完成した。触媒活性成分の担持量は担体100ml当り20gであった。
【0034】
以下、実施例1と同様に、原料ガス入口部に触媒(1)750mlを充填し、出口部には触媒(4)750mlを充填して反応を行った。結果を表1に示す。実施例5
実施例1と同様に原料ガス入口部に触媒(1)500mlを充填し、出口部には触媒(2)1000mlを充填して反応を行った。結果を表1に示す。
【0035】
実施例6
実施例1と同様に原料ガス入口部に触媒(1)1000mlを充填し、出口部には触媒(2)500mlを充填して反応を行った。結果を表1に示す。
【0036】
表1から本発明の方法によれば高い選択率が得られることがわかる。
【0037】
実施例7
実施例1、実施例2および比較例1の反応を4000時間連続して行った。結果を表2に示す。
【0038】
表2から本発明の方法によれば劣化が抑制されることがわかる。
【0039】
【表1】
Figure 0004045693
【0040】
【表2】
Figure 0004045693

Claims (2)

  1. 触媒を充填してなる固定床多管型反応器を用いてメタクロレインを分子状酸素または分子状酸素含有ガスにより気相酸化してメタクリル酸を製造する方法において、触媒として、下記一般式(I):
    MoaPbAcBdCeOx
    (式中、Moはモリブデン、Pはリン、Aはヒ素、アンチモン、ゲルマニウム、ビスマス、ジルコニウム、セレン、セリウム、銅、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、コバルト、スズ、銀、亜鉛、パラジウム、ロジウムおよびテルルから選ばれる少なくとも1種の元素、Bはバナジウム、タングステンおよびニオブから選ばれる少なくとも1種の元素、Cはアルカリ金属、アルカリ土類金属およびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、Oは酸素を表し、a、b、c、d、eおよびxはそれぞれMo、P、A、B、CおよびOの原子数を表し、a=12のとき、b=0.5〜4、c=0.001〜5、d=0.001〜4、e=0.001〜4、x=各々の元素の酸化状態によって定まる数値である)で表される触媒を用い、(1)各反応管内の触媒層を管軸方向に2層以上に分割して複数個の反応帯を設け、(2)各反応帯に充填する触媒に関し、反応管単位体積当たりの触媒活性成分量が原料ガス入口部から出口部に向かって減少するようにする、ことを特徴とするメタクリル酸の製造方法。
  2. (1)原料ガス入口部にペレット状の触媒を充填し、出口部にリング状の触媒を充填する、(2)成型触媒を不活性担体で希釈する、(3)成型触媒の比重を変える、(4)成型触媒と担持型触媒とを組み合わせる、または(5)担持型触媒において担持量を変える、ことにより、反応管単位体積当たりの触媒活性成分量が原料ガス入口部から出口部に向かって減少するようにする請求項1記載のメタクリル酸の製造方法。
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