JP4041715B2 - インクジェット記録用インク組成物、これを用いた記録方法及び記録物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、信頼性及び印字品質が良好で、OD値が高く、しかも定着性が良好なインクジェット記録用インク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
インクジェット記録方法は、インクの小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。インクとしては、一般に各種の水溶性染料を水または水と水溶性有機溶剤との混合物に溶解させたものが使用されている。このような水溶性染料を含むインクにより形成された画像は耐水性や耐光性に劣ることが一般に指摘されている。
【0003】
これに対して、顔料を水性媒体に分散させて得られたインクは、耐水性及び耐光性に優れる。例えば、カーボンブラックを界面活性剤や高分子分散剤で分散した水性顔料インクが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、これらのインクでは、記録物の印字濃度を上げる為に着色剤のインク含有量を増やすと、それに伴いインク粘度も急激に増加してしまう場合があった。またカーボンブラックをインク中に安定に分散させるためには過剰の界面活性剤または高分子分散剤が必要であり、気泡発生や消泡性低下を原因とする印字安定性の悪化を引き起こす場合があった。
【0004】
これらの課題を解決するために、カーボンブラック表面に一定量以上の表面活性水素あるいはその塩を導入して、界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤がなくてもカーボンブラック単独で水系溶媒に分散させることができる、自己分散型カーボンブラック分散液が開示されている(例えば、特許文献3、4参照)。また、カーボンブラック表面にスルホン酸基を導入する方法が開示されている(例えば、特許文献5参照)。さらに、上述の表面改質カーボンブラックとグリコールエーテル類を含むインクジェットインクが提案されている(例えば、特許文献6参照)。上記のような分散剤を必要としない、いわゆる自己分散型顔料は、着色剤としてインクに用いた場合、画像のOD値(Optical Density;光学濃度)が高くなる、またインク中の粘度を適正な範囲に合わせやすいため取扱いが容易である、分散剤と種々の添加溶媒との相溶性を考慮する必要がない、等の特徴により種々開発されている。その表面にはカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン基、アンモニウム基等の親水性官能基が、直接あるいはアルキル基、アリール基等を介して間接に結合してなるアニオン型の表面改質された物が一般的である。
【0005】
しかし、このような自己分散型顔料を使用したインクジェット記録用インク組成物では、OD値が高いが、記録媒体へのインクの定着性(特に、インク中の顔料の定着性)が不十分で、耐擦性に劣るという問題があった。
【0006】
従って、本発明の課題は、信頼性及び印字品質が良好で、OD値が高く、しかも定着性が良好で耐擦性に優れるインクジェット記録用インク組成物を提供することにある。
【0007】
【特許文献1】
特開昭64−6074号公報
【特許文献2】
特開昭64−31881号公報
【特許文献3】
特開平8−3498号公報
【特許文献4】
特開平10−120958号公報
【特許文献5】
特開平10−110127号公報
【特許文献6】
特開平10−95941号公報
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究した結果、自己分散型顔料とともに、特定のゼータ電位を有する一または複数の樹脂粒子を含むインク組成物が、前記課題を解決し得るとの知見を得た。
【0009】
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、自己分散型顔料と、少なくともpH6におけるゼータ電位が10〜―10mVである樹脂粒子とを含むことを特徴とするインクジェット記録用インク組成物を提供することにより、前記課題を解決したものである。
【0010】
また、本発明は、前記インク組成物を使用して記録媒体に画像を形成することを特徴とする記録方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、前記インク組成物を使用して記録媒体に画像が形成されてなることを特徴とする記録物を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のインクジェット記録用インク組成物を、その好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0013】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、いわゆるインクジェット記録方式によって、紙等の記録媒体に文字や図形等の画像を記録形成するためにインクジェットプリンタのプリンタヘッドから液滴として吐出するための記録液として用いられるものである(以下、本発明のインクジェット記録用インク組成物を、単に「本発明のインク組成物」ということもある)。
【0014】
本発明のインク組成物は、自己分散型顔料と、少なくともpH6におけるゼータ電位が10〜―10mVである樹脂粒子とを含むものである。
【0015】
さらに本発明のインク組成物は、自己分散型顔料と、pH6におけるゼータ電位が10〜−10mVである樹脂粒子と、−20〜−55mVである樹脂粒子とを少なくとも含むものである。
【0016】
本発明のインク組成物は、前記の構成からなるため、自己分散型顔料によるインク組成物の形成画像の十分なOD値を維持しつつ、ゼータ電位の異なる両樹脂それぞれの特性を活かし、これによりインク組成物におけるOD値と定着性とのバランスをとりながら、かかるOD値及び定着性の双方を特に高めたものである。また、前記の構成からなる本発明のインク組成物は、信頼性、にじみ、及び耐擦性についても良好なものである。
【0017】
本発明に使用される自己分散型顔料は、顔料の表面に−COOH、−SO3H、−CHO、−OH及びこれらの塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上等の官能基(分散性付与基)を有するように処理された顔料であって、分散剤を別途配合せずとも、水系インク組成物中で均一に分散し得るものである。尚、ここでいう「分散」とは、自己分散型顔料が分散剤なしに水中に安定に存在している状態をいい、分散している状態のもののみならず、溶解している状態のものも含むものとする。自己分散型顔料が配合されたインク組成物は、自己分散型顔料以外の自己分散型ではない顔料及び分散剤の配合された通常のインク組成物と比べて、分散安定性が高く、また、インク組成物の粘度が適度なものとなるので、顔料をより多く含有させることが可能となり、特に普通紙に対して発色性に優れた文字や図形等の画像を形成することができる。更に、自己分散型顔料が配合されたインク組成物は、印字品質の向上に有効な浸透剤(後述する)を配合しても流動性の低下を生じることがないので、該浸透剤を併用することにより印字品質も高められる。
【0018】
自己分散型顔料を形成し得る顔料としては、通常のインクジェット記録用インク組成物におけるものと同様のものが用いられ、例えば、カーボンブラック、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キナクリドン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等の有機顔料、チタン白、亜鉛華、鉛白、カーボンブラック系、ベンガラ、朱、カドミウム赤、黄鉛、群青、コバルト青、コバルト紫、ジンクロメート等の無機顔料が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水相に分散可能なら、何れも使用できる。これらのうち、特にアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キナクリドン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、ジオキサジン顔料、及びアントラキノン顔料系を用いることが好ましい。尚、「顔料」とは、水や溶剤、油等に通常不溶の粒子状の固体をいう。
【0019】
自己分散型顔料を調製するには、真空プラズマ等の物理的処理や化学的処理により、官能基又は官能基を含んだ分子を顔料の表面に配位、グラフト等の化学的結合をさせること等によって得ることができる。例えば、特開平8−3498号公報に記載の方法によって得ることができる。また、自己分散型顔料は、市販品を利用することも可能であり、好ましい例としては、オリエント化学工業(株)製の「マイクロジェットCW1」、「マイクロジェットCW2」、キャボット社製の「CAB−O−JET 200」、「CAB−O−JET 300」等が挙げられる。
【0020】
自己分散型顔料は、例えば、次のようにして調製される。
【0021】
〔自己分散型顔料の一調製方法例(顔料の表面酸化処理−スルホン化処理)〕
溶剤に顔料を添加し、これをハイスピードミキサー等で高速剪断分散するか、又はビーズミルやジェットミル等で衝撃分散してスラリー状の顔料分散液を得る。該顔料分散液をゆっくり攪拌しながら、硫黄を含む処理剤(スルファミン酸、発煙硫酸、硫酸、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、アミド硫酸等)を添加し、該顔料分散液を60〜200℃に加熱処理して、前記顔料表面に前記分散性付与基を導入する。該顔料分散液から溶剤を除去した後、水洗、限外濾過、逆浸透、遠心分離、濾過等を繰り返して前記硫黄を含む処理剤を取り除いて、自己分散型顔料を得る。
【0022】
また、自己分散型顔料は、インクの保存安定性の向上や、ノズルの目詰まり防止の観点から、その平均粒径が10〜300nmであることが好ましく、40〜150nmであることが更に好ましい。
【0023】
自己分散型顔料の含有量は、十分なOD値が得られる点及びインク組成物の液安定性の点で、本発明のインク組成物中、好ましくは2〜15重量%であり、更に好ましくは4〜10重量%である。
【0024】
本発明においてゼータ電位は、ゼータサイザー3000(Malvern (株) 製)により測定された値である。普通紙、インクジェット専用紙のpHは、弱酸性〜中性であるのが一般的であるため、pH6でのゼータ電位の値が−10mV以上の樹脂粒子は、記録媒体上で凝集を起こし、樹脂が固体または微粒子のまま残るため、OD値を高めることができるが、定着性(耐擦性)は樹脂が記録媒体上に残ることから悪化する。pH6でのゼータ電位の値が−20mV以下の樹脂粒子は、分散安定性が良好であり、記録媒体上に浸透するため、定着性(耐擦性)は向上するが、OD値は低くなるという特性がある。本発明のインク組成では、特定のゼータ電位の樹脂粒子を複数含む事により、OD値を高めることができ、且つ定着性を高めることを見出した。但し、ゼータ電位が10mV以上は分散安定性が悪く、−55mV以下のものは常温での膜化温度がはやく、取り扱いが不便である。
【0025】
その結果、本発明のインク組成に使用されるpH6におけるゼータ電位が10〜−10mVである樹脂粒子と、−20〜−55mVである樹脂粒子とを少なくとも含む場合に、分散安定性が良好で凝集または沈降を生じさせず、また紙面上において高いOD値と定着性を実現するインク組成物が実現できる。
【0026】
本発明において、適用できる樹脂粒子としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられるが特に限定されない。これらの樹脂は、使用に際して1種又は2種以上で用いられ、同一系統の樹脂でも異なる樹脂系統を組み合わせてもよいが、pH6におけるゼータ電位が10〜−10mVである樹脂粒子と、−20〜−55mVである樹脂粒子の少なくともいずれかが、不飽和単量体の乳化重合によって得られた樹脂粒子エマルジョン(いわゆる「アクリルエマルジョン」)からなることが好ましい。
【0027】
アクリルエマルジョンは公知の乳化重合法により得る事ができる。例えば不飽和単量体(不飽和ビニルモノマー)を重合開始剤、及び界面活性剤を存在させた水中において乳化重合することによって得る事ができる。
【0028】
不飽和単量体としては、一般的に乳化重合で使用されるアクリル酸エステル単量体類、メタクリル酸エステル単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビニルエステル単量体類、ビニルシアン化合物単量体類、ハロゲン化単量体類、オレフィン単量体類、ジエン単量体類が挙げられる。さらに具体例としては、メチルアクリレート、エリルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクデシルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、及び酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、等のビニルシアン化合物類;塩化ビニリデン、塩化ビニル、等のハロゲン化単量体類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;ブタジエン、クロロブレン等のジエン類;ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン等のビニル単量体類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N‘−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;2−ヒドロキシエリルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有単量体が挙げられ、これらを単独または二種以上混合して使用することができる。
【0029】
また、重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体も使用することができる。重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体の例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2‘−ビス(4―アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエントキシフェニル)プロパン等のジアクリレート化合物、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、等のトリアクリレート化合物、ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のテトラアクリレート化合物、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のヘキサアクリレート化合物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレンクリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,2‘−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物、メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼンが挙げられ、これらを単独または二種以上混合して使用することができる。
【0030】
また、乳化重合の際に使用される重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、さらには中和剤等も常法に準じて使用してよい。中和剤としては、アンモニア、無機アルカリの水酸化物、例えば水酸化ナトリウム等が好ましい。
【0031】
本発明において、pH6におけるゼータ電位が10〜−10mVである樹脂粒子と、−20〜−55mVである樹脂粒子の含有量は、本発明のインク組成物中、好ましくは0.5〜5重量%、更に好ましくは1〜4重量%である。
【0032】
また、pH6におけるゼータ電位が10〜−10mVである樹脂粒子と、−20〜−55mVである樹脂粒子との重量比(前者/後者)は、OD値と定着性というバランスの点で、1:10〜10:1であることが好ましい。
【0033】
また、樹脂粒子エマルジョンは、前述した自己分散型顔料の分散安定性向上の観点から、アニオン性であることが好ましい。尚、同様の観点から、表面がカチオン性の顔料(例えば、表面処理によりカチオン基で分散させたもの)を用いる場合は、樹脂粒子エマルジョンはカチオン性であることが好ましい。
【0034】
樹脂粒子エマルジョンは、例えば、次のようにして製造される。
【0035】
〔樹脂粒子エマルジョンの一製造方法例〕
滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー及び攪拌機を備えた反応容器に、イオン交換水100部を入れ、窒素雰囲気下、温度70℃で攪拌しながら、重合開始剤0.2部を添加する。これに、別途調製したモノマー溶液を滴下し重合反応させて、1次物質を調製する。その後、温度70℃で、該1次物質に、重合開始剤の10%水溶液2部を添加して攪拌し、更に別途調製した反応液を添加し攪拌して重合反応させ、重合反応物を得る。該重合反応物を、中和剤で中和してpHが8〜8.5になるように調整した後、0.3μmのフィルターでろ過し粗大粒子を除去して、ポリマー微粒子を分散質とするエマルジョンを得る。
【0036】
重合開始剤としては、通常のラジカル重合に用いられるものと同様のものが用いられ、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシド等が挙げられる。特に、前述の如く、重合反応を水中で行う場合には、水溶性の重合開始剤が好ましい。
【0037】
また、重合反応で用いられる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムの他、一般にアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤として用いられているもの等が挙げられる。
【0038】
また、重合反応で用いられる連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、ジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテン等が挙げられる。
【0039】
本発明のインク組成物は、通常、溶剤として水、好ましくはイオン交換水を含有する水系のインク組成物である。
【0040】
また、本発明のインク組成物は、溶剤として、水以外に、有機溶剤を併用することもできる。このような有機溶剤としては、水と相溶性を有し、記録媒体へのインク組成物の浸透性及びノズルの目詰まり防止性を向上させると共に、後述する浸透剤等のインク組成物中の成分の溶解性を向上させるものが好ましく、例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類、2−ピロリドン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を、本発明のインク組成物中に好ましくは0〜10重量%で用いることができる。
【0041】
本発明のインク組成物には、印字品質を向上させる点から、アセチレングリコール系界面活性剤を含有させることが好ましい。このようなアセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、又はこれらの物質それぞれにおける複数の水酸基それぞれにエチレンオキシ基若しくはプロピレンオキシ基を平均1〜30個付加してなる物質等が挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤としては、市販品を用いることもでき、例えば、「オルフィンE1010」及び「オルフィンSTG」(何れも、商品名、日信化学工業(株)製)等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0042】
アセチレングリコール系界面活性剤の含有量は、本発明のインク組成物中、好ましくは0.1〜3重量%であり、更に好ましくは0.5〜1.5重量%である。
【0043】
本発明のインク組成物には、記録媒体への定着性を更に向上させて記録する文字や図形等の画像の耐擦性を高めるために、浸透剤を含有させることが好ましい。このような浸透剤としては、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(DEGmBE)、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル(DEGmtBE)、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(TEGmBE)、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(PGmBE)、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(DPGmBE)からなる群から選ばれる1種又は2以上が好ましく、特に、DEGmBE、TEGmBE、DPGmBEが好ましい。
【0044】
浸透剤の含有量は、インク組成物の浸透性及び速乾性を向上させてインクの滲み発生を有効に防止できる点で、本発明のインク組成物中、好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは2〜10重量%である。
【0045】
また、本発明のインク組成物には、前記浸透剤と同様に、文字や図形等の画像の耐擦性を高めるために、前記アセチレングリコール系界面活性剤以外の界面活性剤を含有させることもできる。そのような界面活性剤としては、例えば、両性界面活性剤として、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体等、非イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系、ジメチルポリシロキサン等のシリコン系界面活性剤、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等の含フッ素系界面活性剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0046】
本発明のインク組成物には、ノズルの目詰まりを防止して信頼性をより高めるために、水溶性グリコール類を含有させることが好ましい。このような水溶性グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の二価のアルコールや、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の三価以上のアルコール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。水溶性グリコール類の含有量は、本発明のインク組成物中に好ましくは1〜30重量%である。
【0047】
また、本発明のインク組成物には、前記水溶性グリコール類と同様に、ノズルの目詰まり防止のために、糖類や、防黴剤・防腐剤を含有させることもできる。
【0048】
糖類としては、例えば、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、アルギン酸及びその塩、シクロデキストリン類、セルロース類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を、本発明のインク組成物中に好ましくは0〜15重量%で用いることができる。
【0049】
また、防黴剤・防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(AVECIA社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を、本発明のインク組成物中に好ましくは0.01〜0.5重量%で用いることができる。
【0050】
本発明のインク組成物には、目詰まり防止や吐出安定性といった信頼性確保の点で、EDTA等のキレート剤を含有させることが好ましく、本発明のインク組成物中に好ましくは0.01〜0.5重量%で用いることができる。
【0051】
本発明のインク組成物は、自己分散型顔料の表面がアニオン性である場合、印字濃度の向上及び液安定性の観点から、そのpHを6〜11とすることが好ましく、7〜10とすることが更に好ましい。インク組成物のpHを前記範囲内とするためには、pH調整剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の無機アルカリ類、アンモニア、トリエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリプロパノールアミン等の炭素数6〜10の3級アミン類等を含有させることが好ましい。pH調整剤は、その1種又は2種以上を、本発明のインク組成物中に好ましくは0.01〜2重量%で用いることができる。
【0052】
本発明のインク組成物には、更に必要に応じて、表面張力調整剤、粘度調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、酸素吸収剤等の各種添加剤を含有させることができ、これらの1種又は2種以上が用いられる。
【0053】
本発明のインク組成物は、吐出安定性を向上させて信頼性をより高める観点から、その表面張力を20〜40mN/mとすることが好ましく、25〜34mN/mとすることが更に好ましい。表面張力を前記範囲内とするために、前記表面張力調整剤を含有させることもできる。インク組成物の表面張力は、JIS K
3211に従い、測定される。
【0054】
本発明のインク組成物は、吐出安定性を向上させて信頼性をより高める観点から、その20℃における粘度を2〜10mPa・s、特に3〜6mPa・sとすることが好ましい。インク組成物の粘度を前記範囲内とするために、前記粘度調整剤を含有させることもできる。前記粘度調整剤としては、ロジン類、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチ等が挙げられる。
【0055】
本発明のインク組成物を調製する方法は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミル等を使用して調製することができる。本発明のインク組成物の調製に際しては、粗大粒子を除去することが好ましい。例えば、前述の各成分を配合して得られた混合物(インク)を、金属フィルターやメンブランフィルター等のフィルターにてろ過することにより、300nm以上の粒子を除去する。このような処理を行うことによって、ノズルに目詰まりしない信頼性のより高いインク組成物が得られる。
【0056】
本発明のインク組成物は、その色の種類等に制限されるものではなく、種々のカラーインク組成物(シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ダークイエロー、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレット等)、ブラックインク組成物、ライトブラックインク組成物等として使用できる。使用に際しては、本発明のインク組成物を単独で、若しくはその複数種からなるインクセットとして、又は、本発明のインク組成物の一種若しくは複数種とその他のインク組成物の一種若しくは複数種とからなるインクセットとして用いることができる。
【0057】
本発明のインク組成物は、その画像を形成するための記録媒体として、特に制限されることなく、普通紙、インクジェット用専用紙、プラスチック、フィルム、金属等の種々の記録媒体に適用することができる。
【0058】
また、本発明によれば、前述したインク組成物を使用して記録媒体に画像を形成する記録方法が提供される。本発明の記録方法の一実施形態は、インクジェット記録方式によって、前述のインク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うものである。本発明の記録方法を実施することによって、高い信頼性で以ってインク組成物を吐出させることができ、形成される画像の印字品質が良好で、OD値が高く、定着性が良好で耐擦性に優れた画像を得ることができる。
【0059】
また、本発明によれば、前述したインク組成物を使用して記録媒体に画像が形成されてなる記録物が提供される。本発明の記録物は、印字品質が良好で、OD値が高く、定着性が良好で耐擦性に優れた画像を有するものである。
【0060】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何等限定されるものではない。
樹脂粒子を分散粒子とする水性エマルジョンを下記の方法によって調整した。
【0061】
<エマルジョン1>
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム3gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン520g、ブチルアクリレート380g、メタクリル酸30g、およびエチレングリコールジメタクリレート2gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水とアンモニア水とを添加して固形分40重量%、pH8に調整した。得られた水性エマルジョンのゼータ電位は4mVであった。
【0062】
<エマルジョン2>
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム1gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン615g、ブチルアクリレート295g及びメタクリル酸30gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液とを添加して固形分40重量%、pH8に調整した。得られた水性エマルジョンのゼータ電位は−5mVであった。
【0063】
<エマルジョン3>
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム3gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン675g、ブチルアクリレート235g、メタクリル酸30gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液とを添加して固形分40重量%、pH8に調整した。得られた水性エマルジョンのゼータ電位は―10mVであった。
【0064】
<エマルジョン4>
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム1gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン365g、ブチルアクリレート545g、メタクリル酸30gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液とを添加して固形分40重量%、pH8に調整した。得られた水性エマルジョンのゼータ電位は−53mVであった。
【0065】
<エマルジョン5>
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム3gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン300g、ブチルアクリレート640g、メタクリル酸30gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と5%水酸化ナトリウム水溶液とを添加して固形分40重量%、pH8に調整した。得られた水性エマルジョンのゼータ電位は−23mVであった。
【0066】
<エマルジョン6>
攪拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム3を仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム1gを添加し、溶解後、予めイオン交換水300g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにメチルメタクリレート310g、ブチルアクリレート620g、メタクリル酸30gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液とを添加して固形分40重量%、pH8に調整した。得られた水性エマルジョンのゼータ電位は−37mVであった。
【0067】
表1に示す配合量(インク組成物の全重量に対する各成分の重量%)で、顔料、エマルジョン、有機溶剤、及びイオン交換水(残量、表1に示さず)を混合攪拌し、孔径5μm金属フィルターにてろ過、真空ポンプを用いて脱気処理をして、実施例1〜6及び比較例1〜4のそれぞれのインク組成物を得た。
【0068】
【表1】
【0069】
表1中の顔料1は、自己分散型顔料である、オリエント化学工業(株)製の「マイクロジェットCW1」(商品名)〔平均粒径;110nm〕であり、顔料2は自己分散型顔料である、キャボット社製の「CAB−O−JET 300」(商品名)〔平均粒径;130nm〕である。
【0070】
また、表1中のエマルジョンは、全て、分散媒が水で分散質が樹脂粒子である、水系分散液であり、その詳細は、上記エマルジョン1〜6に示す通りである。尚、ゼータ電位はゼータサイザー3000(Malvern (株) 製)により測定した値である。
【0071】
また、表1中の有機溶剤についての詳細は、次の通りである。
【0072】
TEGmBE ;トリエチレングリコールモノブチルエーテル
GL ;グリセリン
TEG ;トリエチレングリコール
1,2−HD ;1,2−ヘキサンジオール
2P ;2−ピロリドン
TPA ;トリプロパノールアミン
オルフィンE1010;アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業(株)製)
オルフィンSTG ;アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業(株)製)
EDTA ;エチレンジアミン四酢酸二水素ナトリウム(キレート剤)
プロキセルXL2 ;防黴剤(アビシア(株)製)
調製した各インク組成物を用いて、インクジェットプリンターEM−930C(セイコーエプソン(株)製)で720dpiの解像度で文字及びベタ印字の印刷を行った。記録媒体としては、Copyplus(Hammermill社製)、Xerox 4024(Xerox社製)、Xerox P、Xerox R(以上、富士ゼロックス(株)製)、専用普通紙(セイコーエプソン(株)製)の5種の紙を使用して印字を行い、得られたサンプル(記録物)を用いて、下記に示す試験1〜6について評価した。
【0073】
〈試験1;光学濃度(OD値)〉
印刷後、サンプル(記録物)を一般環境下で1時間放置した。放置後、ベタ部分についてグレタグ濃度計(グレタグ(株)製)を用いて光学濃度を測定し、下記基準に基づき判定した。
A;光学濃度が1.3以上。
B;光学濃度が1.1以上1.3未満。
C;光学濃度が1.1未満。
【0074】
〈試験2;耐擦性(耐ラインマーカー性)〉
印字後、サンプル(記録物)を24時間自然乾燥させた後、ゼブラ(社)製のイエロー水性蛍光ペンZEBRA PEN2(登録商標)を用いて、印刷文字を筆圧300g/15mmで擦り、汚れの有無を目視で確認した。その結果を下記基準に基づき判定した。
A;同一部分を2回擦っても全く汚れが生じない。
B;1回の擦りでは汚れが生じないが、2回の擦りでは汚れが発生する。
C;1回の擦りで汚れが発生する。
【0075】
〈試験3;耐水性〉
サンプル(記録物)の印字部に水滴を滴下し、乾燥させた後の印字画像(文字及びベタ印字)の状態を目視で確認した。その状態を下記基準に基づき判定した。
A;水滴の跡が全く残らない。
B;水滴の跡が少し残る。
C;水滴の跡がかなり残る。
【0076】
〈試験4;吐出安定性〉
調製した各インク組成物を用いて、常温にて、インクジェットプリンターEM−930Cでベタ及び線のパターンを連続印字した。印刷100ページ内でのインクのドット抜けや飛行曲がりの際に正常印刷への復帰動作として行うプリンターノズルのクリーニングの回数を評価し、下記基準に基づき判定した。
A;クリーニング0回。
B;クリーニング1又は2回。
C;クリーニング3回以上。
【0077】
〈試験5;保存安定性〉
アルミパックにインク組成物50gを入れた状態で70℃の環境下に1週間放置した。放置後、異物(沈降物)の発生の有無について、また、異物の発生がないものについては、更に物性(粘度、表面張力、pH、粒径)の変化について、下記基準に基づき判定した。
A;異物の発生がなく、物性の変化もない。
B;異物の発生はないが、物性が若干変化する。
C;異物が発生する。
【0078】
〈試験6;目詰まり性〉
インクジェットプリンターEM−930Cを用いて、各インクをヘッドに充填し、全ノズルよりインク組成物が吐出していることを確認した後、インクカートリッジがない状態で、かつホームポジション外の位置(ヘッドがプリンタに備えたキャップの位置からずれており、ヘッドにキャップがされていない状態)で40℃の環境下に1週間放置した。放置後に、再び全ノズルよりインク組成物が吐出するまでに要したクリーニングの回数を調べ、下記基準に基づき判定した。
A;クリーニング1回。
B;クリーニング2〜4回。
C;クリーニング5回以上。
【0079】
以上の評価結果を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、信頼性及び印字品質が良好で、OD値が高く、しかも定着性が良好で耐擦性に優れるインクジェット記録用インク組成物が提供される。
【0082】
本発明のインクジェト記録用インク組成物は、吐出安定性及び保存安定性に優れ、インクジェット記録用プリンタのノズルの目詰まり防止性が良好であることから、信頼性が高いものである。また、本発明のインクジェット記録用インク組成物は、その記録画像(印字物)の印字品質が良好で、特に、OD値が高く優れた発色性を有し、さらに記録画像の定着性が良好なことから耐擦性にも優れたものである。さらに、本発明のインクジェット記録用インク組成物は、その記録画像の耐水性をも有するものである。
Claims (5)
- 自己分散型顔料と、pH8の水系溶媒中におけるゼータ電位が10〜−10mVであるアクリル系樹脂粒子と、−20〜−55mVであるアクリル系樹脂粒子とを少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録用インク組成物。
- 前記pH8におけるゼータ電位が10〜―10mVであるアクリル系樹脂粒子と、−20〜−55mVであるアクリル系樹脂粒子との重量比(前者/後者)が、1:10〜10:1である、請求項1記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 前記pH8におけるゼータ電位が10〜―10mVであるアクリル系樹脂粒子と−20〜−55mVであるアクリル系樹脂粒子の少なくともいずれかが、不飽和単量体の乳化重合によって得られた樹脂粒子エマルジョンからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インク組成物。
- 請求項1〜3の何れかに記載のインク組成物を使用して記録媒体に画像を形成することを特徴とする記録方法。
- 請求項1〜3の何れかに記載のインク組成物を使用して記録媒体に画像が形成されてなることを特徴とする記録物。
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