JP3935492B2 - 高強度および優れた曲げ加工性を備えた銅合金および銅合金板の製造方法 - Google Patents
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ここで、上記抽出残渣法は、10質量%の酢酸アンモニウム濃度のメタノール溶液300mlに、10gの前記銅合金を浸漬し、この銅合金を陽極とする一方、白金を陰極として用いて、電流密度10mmA/cm2 で定電流電解を行い、この銅合金のマトリックスのみを溶解させた前記溶液を、目開きサイズ0.1μm のポリカーボネート製メンブレンフィルターによって吸引ろ過し、このフィルター上に未溶解物残渣を分離抽出するものとする。
また、上記抽出残渣中の上記Mg量は、前記フィルター上の未溶解物残渣を王水と水とを1対1の割合で混合した溶液によって溶解した後に、ICP発光分光法によって分析して求めるものとする。
一方、サイズ(粒径)が小さな微細Mg化合物は、強度向上に寄与し、曲げ加工性を低下させない。
先ず、前記各種用途用として、必要強度や導電率、更には、高い曲げ加工性や耐応力緩和特性を満たすための、本発明Cu−Mg−P−Fe系合金における化学成分組成を、以下に説明する。
Feは、Fe−P系などの微細な析出物を形成して、強度や導電率を向上させるのに必要な元素である。0.01%未満の含有では、微細な析出物粒子が不足するため、これらの効果を有効に発揮させるには、0.01%以上の含有が必要である。但し、1.0%を超えて過剰に含有させると、析出粒子の粗大化を招き、強度と曲げ加工性が低下する。したがって、Feの含有量は0.01〜1.0%の範囲とする。
Pは、脱酸作用を有する他、MgやFeと微細な析出物を形成して、銅合金の強度や導電率を向上させるのに必要な元素である。0.01%未満の含有では微細な析出物粒子が不足するため、0.01%以上の含有が必要である。但し、0.4%を超えて過剰に含有させると、粗大なMg−P析出粒子が増加するのに伴い、Mg残査量も過剰に増加するため、強度や曲げ加工性が低下し、熱間加工性も低下する。したがって、Pの含有量は0.01〜0.4%の範囲とする。
Mgは、Pとの微細な析出物を形成して、強度や導電率を向上させるのに必要な元素である。0.1%未満の含有では本発明の微細な析出物粒子が不足するため、これらの効果を有効に発揮させるには、1.0%以上の含有が必要である。但し、1.0%を超えて過剰に含有させると析出粒子が粗大化して破壊の起点となるため、強度だけでなく曲げ加工性も低下する。したがって、Mgの含有量は0.1〜1.0%の範囲とする。
銅合金に、更にNi、Coの一種または二種を0.01〜1.0%含有しても良い。Ni、Coは、Mgと同様に、銅合金中に、(Ni、Co)−P系あるいは(Ni、Co)−Fe−P系、などの微細な析出物粒子として分散して、強度や導電率を向上させる。これらの効果を有効に発揮させるには0.01%以上の含有が必要である。但し、1.0%を超えて過剰に含有させると、析出粒子の粗大化を招き、強度だけでなく曲げ加工性も低下する。したがって、選択的に含有させる場合のNi、Coの一種または二種の含有量は0.01〜1.0%の範囲とする。
銅合金に、更にZn、Snの一種または二種を含有しても良い。Znは、電子部品の接合に用いる、Snめっきやはんだの耐熱剥離性を改善し、熱剥離を抑制するのに有効な元素である。この様な効果を有効に発揮させるには、0.005%以上含有することが好ましい。しかし、過剰に含有すると、却って溶融Snやはんだの濡れ広がり性を劣化させるだけでなく、導電率を大きく低下させる。したがって、Znは、耐熱剥離性向上効果と導電率低下作用とを考慮した上で、0.005〜3.0質量%、好ましくは0.005〜1.5質量%の範囲で、選択的に含有させる。
Snは、銅合金中に固溶して強度向上に寄与する。この様な効果を有効に発揮させるには、0.01%以上含有することが好ましい。しかし、過剰に含有すると、その効果が飽和し、導電率を大きく低下させる。したがって、Snは強度向上効果と導電率低下作用とを考慮した上で、0.01〜5.0質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%の範囲で、選択的に含有させる。
その他の元素は基本的に不純物であって、できるだけ少ない方が好ましい。例えば、Al、Cr、Ti、Be、V、Nb、Mo、Wなどの不純物元素は、粗大な晶・析出物が生成し易くなる他、導電率の低下も引き起こし易くなる。従って、総量で0.5質量% 以下の極力少ない含有量にすることが好ましい。この他、銅合金中に微量に含まれているB、C、Na、S、Ca、As、Se、Cd、In、Sb、Pb、Bi、MM(ミッシュメタル)等の元素も、導電率の低下を引き起こし易くなるので、これらの総量で0.1質量% 以下の極力少ない含有量に抑えることが好ましい。
より具体的には、(1)Mn、Ca、Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Ni、Au、Ptの含有量を、これらの元素全体の合計で1.0質量%以下、(2)Hf、Th、Li、Na、K、Sr、Pd、W、S、Si、C、Nb、Al、V、Y、Mo、Pb、In、Ga、Ge、As、Sb、Bi、Te、B、ミッシュメタルの含有量を、これらの元素全体の合計で0.1質量%以下とすることが好ましい。
本発明では、前記した通り、強度の向上に有効な、微細なMg化合物を多く存在させるとともに、粗大なMg化合物を少なく制御することによって、高強度および優れた曲げ加工性をバランスよく備えた銅合金を得る。
ここで、銅合金中のMgを含む酸化物、晶出物および析出物の抽出分離法について説明する。銅合金中の銅および固溶元素(マトリックス)のみを溶解し、銅合金中の晶出物、析出物、酸化物を溶失させることなく抽出分離するには、銅合金のマトリックスである銅が酸素共存下のアンモニアに溶解するという性質を利用する。このための溶解溶液としては、酢酸アンモニウムのアルコール溶液を用いることが好ましい。この他、硝酸アンモニウムのアルコール溶液を用いても可能であるが、測定に再現性を持たせるために、本発明では、酢酸アンモニウムのアルコール溶液を用いることとする。
このようにして回収された前記フィルター上の未溶解物抽出残渣は、王水と水とを1対1の割合で混合した溶液(「王水1+1」溶液)によって溶解した後、ICP(誘導結合高周波:Inductivety Coupled Plasma )発光分光法によって分析し、抽出残渣中の上記Mg量を求める。
次に、銅合金の組織を上記本発明規定の組織とするための、好ましい製造条件について以下に説明する。本発明銅合金は基本的に銅合金板であり、これを幅方向にスリットした条や、これら板条をコイル化したものが本発明銅合金の範囲に含まれる。
引張試験は、JIS13号B試験片を用いて、5882型インストロン社製万能試験機により、室温、試験速度10.0mm/min、GL=50mmの条件で、引張強度、0.2%耐力を測定した。
銅合金板試料の導電率は、ミーリングにより、幅10mm×長さ300mm の短冊状の試験片を加工し、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により電気抵抗を測定して、平均断面積法により算出した。
銅合金板試料の曲げ試験は、日本伸銅協会技術標準に従って行った。板材を幅10mm、長さ30mmに切出し、曲げ半径0.05mmでGood Way(曲げ軸が圧延方向に直角)曲げを行い、曲げ部における割れの有無を50倍の光学顕微鏡で目視観察した。割れの無いものを○、割れが生じたものを×と評価した。
Claims (7)
- 質量%で、Fe:0.01〜1.0%、P:0.01〜0.4%、Mg:0.1〜1.0%を各々含有し、残部銅および不可避的不純物からなる銅合金であって、下記抽出残渣法により目開きサイズ0.1μm のフィルター上に抽出分離された抽出残渣における下記Mg量が、前記銅合金中のMg含有量に対する割合で60%以下であるように、銅合金中のMgの酸化物、晶出物、析出物のサイズが制御されていることを特徴とする高強度および優れた曲げ加工性を備えた銅合金。
ここで、上記抽出残渣法は、10質量%の酢酸アンモニウム濃度のメタノール溶液300mlに、10gの前記銅合金を浸漬し、この銅合金を陽極とする一方、白金を陰極として用いて、電流密度10mmA/cm2 で定電流電解を行い、この銅合金のマトリックスのみを溶解させた前記溶液を、目開きサイズ0.1μm のポリカーボネート製メンブレンフィルターによって吸引ろ過し、このフィルター上に未溶解物残渣を分離抽出するものとする。
また、上記抽出残渣中の上記Mg量は、前記フィルター上の未溶解物残渣を王水と水とを1対1の割合で混合した溶液によって溶解した後に、ICP発光分光法によって分析して求めるものとする。 - 前記銅合金が、更にNi、Coの一種または二種を0.01〜1.0%含有する請求項1に記載の銅合金。
- 前記銅合金が、更にZn:0.005〜3.0%を含有する請求項1または2に記載の銅合金。
- 前記銅合金が、更にSn:0.01〜5.0%を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の銅合金。
- 前記銅合金が、Mn、Ca、Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Ni、Au、Ptの含有量を、これらの元素の合計で1.0質量%以下とした請求項1乃至4のいずれか1項に記載の銅合金。
- 前記銅合金が、Hf、Th、Li、Na、K、Sr、Pd、W、S、Si、C、Nb、Al、V、Y、Mo、Pb、In、Ga、Ge、As、Sb、Bi、Te、B、ミッシュメタルの含有量を、これらの元素の合計で0.1質量%以下とした請求項1乃至5のいずれか1項に記載の銅合金。
- 請求項1乃至6のいずれかの銅合金の板を製造する方法であって、銅合金の鋳造、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍により銅合金板を得るに際し、銅合金溶解炉での合金元素の添加完了から鋳造開始までの所要時間を1200秒以内とし、更に、鋳塊の加熱炉より鋳塊を抽出してから熱延終了までの所要時間を1200秒以下とする銅合金板の製造方法。
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