JP3930197B2 - オレフィン重合用触媒および重合方法 - Google Patents
オレフィン重合用触媒および重合方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、遷移金属化合物からなるオレフィン重合用触媒、ならびに該オレフィン重合用触媒を用いたオレフィンの重合方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
オレフィン重合用触媒としては、いわゆるカミンスキー触媒がよく知られている。この触媒は非常に重合活性が高く、分子量分布が狭い重合体が得られるという特徴がある。このようなカミンスキー触媒に用いられる遷移金属化合物としては、たとえばビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(特開昭58ー19309号公報参照)や、エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド(特開昭61−130314号公報参照)などが知られている。また重合に用いる遷移金属化合物が異なると、オレフィン重合活性や得られたポリオレフィンの性状が大きく異なることも知られている。さらに最近新しいオレフィン重合用触媒としてジイミン構造の配位子を持った遷移金属化合物(国際公開特許第9623010号参照)が提案されている。
【0003】
ところで一般にポリオレフィンは、機械的特性などに優れているため、各種成形体用など種々の分野に用いられているが、近年ポリオレフィンに対する物性の要求が多様化しており、様々な性状のポリオレフィンが望まれている。また生産性の向上も課題である。
【0004】
このような状況のもと、オレフィン重合活性に優れ、しかも優れた性状を有するポリオレフィンを製造しうるようなオレフィン重合用触媒の出現が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、遷移金属化合物からなり、優れたオレフィン重合活性を有するオレフィン重合用触媒、および該触媒を用いるオレフィンの重合方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1のオレフィン重合用触媒は、
(A)下記式(a)で表される化合物と下記式(e)で表される金属化合物とを結合反応させて得られるものであって、金属原子に対する該金属原子に結合する下記式(a)化合物に由来する配位子のモル比が1〜6である遷移金属
化合物と、
必要に応じて、
(B)(B-1) 有機金属化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
からなることを特徴としている。
【0007】
【化10】
【0008】
(上式中、Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示し、
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示し、
Zは、Nの結合基として、−R13および−R14、=C(R15)R16または=NR17を示し、
R1〜R17は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。)
MXk ・・・ (e)
(上式中、Mは、周期表第3〜11族の遷移金属原子を示し、
kは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、kが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
本発明に係る第2のオレフィン重合用触媒は、
(A)下記式(b)で表される化合物と前記式(e)で表される金属化合物とを結合反応させて得られるものであって、金属原子に対する該金属原子に結合する下記式(b)化合物に由来する配位子のモル比が1〜6である遷移金属化合物と、
必要に応じて
(B)(B-1) 有機金属化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
からなることを特徴としている。
【0009】
【化11】
【0010】
(上式中、Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示し、
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−、または−S−を示し、
R1〜R13は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。)
本発明に係る第3のオレフィン重合触媒は、
(A)下記式(c)で表される化合物と前記式(e)で表される金属化合物とを結合反応させて得られるものであって、金属原子に対する該金属原子に結合する下記式(c)化合物に由来する配位子のモル比が1〜6、好ましくは1〜3である遷移金属化合物と、
必要に応じて
(B)(B-1) 有機金属化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
からなることを特徴としている。
【0011】
【化12】
【0012】
(上式中、Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示し、
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示し、
R1〜R13は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。)
本発明に係る第4のオレフィン重合用触媒は、
(A)下記式(d)で表される化合物と前記式(e)で表される金属化合物とを結合反応させて得られるものであって、金属原子に対する該金属原子に結合する下記式(d)化合物に由来する配位子のモル比が1〜6である遷移金属化合物と、
必要に応じて
(B)(B-1) 有機金属化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
からなることを特徴としている。
【0013】
【化13】
【0014】
(上式中、Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示し、
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示し、
Zは、Nの結合基として、−R13および−R14、=C(R15)R16または=NR17を示し
R1〜R17は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。)
本発明に係る第5のオレフィン重合用触媒は、
(A)下記式(I)で表される遷移金属化合物と、
必要に応じて
(B)(B-1) 有機金属化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
からなることを特徴としている。
【0015】
【化14】
【0016】
(上式中、Mは、周期表第3〜11族の遷移金属原子を示し、
mは、1〜6の整数であり、
Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示し、
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示し、
Zは、Nの結合基として、−R13および−R14、=C(R15)R16または=NR17を示し、
R1〜R17は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、また、mが複数のときは、一つの配位子に含まれるR1〜R17のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R17のうちの1個の基とが結合されていてもよく、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士、R11同士、R12同士、R13同士、R14同士、R15同士、R16同士およびR17同士は互いに同一でも異なっていてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
本発明に係る第6のオレフィン重合用触媒は、
(A)下記式(II)で表される遷移金属化合物と、
必要に応じて
(B)(B-1) 有機金属化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
からなることを特徴としている。
【0017】
【化15】
【0018】
(上式中、Mは、周期表第3〜11族の遷移金属原子を示し、
mは、1〜6の整数であり、
Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示し、
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示し、
R1〜R13は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、また、mが複数のときは、一つの配位子に含まれるR1〜R13のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R13のうちの1個の基とが結合されていてもよく、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士、R11同士、R12同士およびR13同士は互いに同一でも異なっていてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
本発明に係る第7のオレフィン重合用触媒は、
(A)下記式(III)で表される遷移金属化合物と、
必要に応じて
(B)(B-1) 有機金属化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
からなることを特徴としている。
【0019】
【化16】
【0020】
(上式中、Mは、周期表第3〜11族の遷移金属原子を示し、
mは、1〜3の整数であり、
Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示し、
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示し、
R1〜R13は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、また、mが複数のときは、一つの配位子に含まれるR1〜R13のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R13のうちの1個の基とが結合されていてもよく、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士、R11同士、R12同士およびR13同士は互いに同一でも異なっていてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
本発明に係る第8のオレフィン重合用触媒は、
(A)下記式(IV)で表される遷移金属化合物と、
必要に応じて
(B)(B-1) 有機金属化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
からなることを特徴としている。
【0021】
【化17】
【0022】
(上式中、Mは、周期表第3〜11族の遷移金属原子を示し、
mは、1〜6の整数であり、
Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示し、
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示し、
Zは、Nの結合基として、−R13および−R14、=C(R15)R16または=NR17を示し、
R1〜R17は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、また、mが複数のときは、一つの配位子に含まれるR1〜R17のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R17のうちの1個の基とが結合されていてもよく、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士、R11同士、R12同士、R13同士、R14同士、R15同士、R16同士およびR17同士は互いに同一でも異なっていてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
本発明に係る第9のオレフィン重合用触媒は、
(A)下記式(V)で表される遷移金属化合物と、
必要に応じて
(B)(B-1) 有機金属化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
からなることを特徴としている。
【0023】
【化18】
【0024】
(上式中、Mは、周期表第3〜11族の遷移金属原子を示し、
mは0〜6、pは0〜6、qは0〜3、rは0〜6の整数でこれらのうち三つ以上が同時に0になることはなく、m+p+q+r≦6かつm+p+2q≦6を満たし、
A、A'、A''、A'''は、互いに同一でも異なっていてもよい酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または、結合基−R5(A'、A''、A'''に対応してそれぞれ−R5'、−R5''、−R5'''と表す。以下同様。)を有する窒素原子を示し、D、D'、D''、D'''は、互いに同一でも異なっていてもよい−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示し、
Z、Z'''は、互いに同一でも異なっていてもよく、Nの結合基として、−R13および−R14、=C(R15)R16または=NR17を示し、
R1〜R17、R1'〜R13'、R1''〜R13''、R1'''〜R17'''は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、また、m+p+q+r≧2のときは、一つの配位子に含まれるR1〜R17、R1'〜R13'、R1''〜R13''、R1'''〜R17'''のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R17、R1'〜R13'、R1''〜R13''、R1'''〜R17'''のうちの1個の基とが結合されていてもよく、R1、R1'、R1''、R1'''同士、R2、R2'、R2''、R2'''同士、R3、R3'、R3''、R3'''同士、R4、R4'、R4''、R4'''同士、R5、R5'、R5''、R5'''同士、R6'、R6'''同士、R7、R7'、R7''、R7'''同士、R8、R8'、R8''、R8'''同士、R9、R9'、R9''、R9'''同士、R10、R10'、R10''、R10'''同士、R11、R11'、R11''、R11'''同士、R12、R12'、R12''、R12'''同士、R13、R13'、R13''、R13'''同士、R14、R14'''同士、R15、R15'''同士、R16、R16'''同士およびR17、R17'''同士は互いに同一でも異なっていてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)本発明のオレフィン重合触媒では、前記式(a)〜(d)、(I)〜(V)においてD(式(V)におけるD'、D''、D'''を含む)を−C(R7)(R8)−とする化合物であることが好ましい。
【0025】
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒では、前記遷移金属化合物(A)と、(B-1):有機金属化合物、(B-2):有機アルミニウムオキシ化合物、および(B-3):遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)に加えて、担体(C)を含んでいてもよい。
【0026】
本発明に係るオレフィンの重合方法は、前記のような触媒の存在下に、オレフィンを重合または共重合させることを特徴としている。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のオレフィン重合用触媒ならびにこの触媒を用いたオレフィンの重合方法について具体的に説明する。
なお、本明細書において「重合」という語は、単独重合だけでなく、共重合をも包含した意味で用いられることがあり、「重合体」という語は、単独重合体だけでなく、共重合体をも包含した意味で用いられることがある。
【0028】
本発明のオレフィン重合用触媒は、
(A)前記遷移金属化合物と、
必要に応じて
(B)(B-1) 有機金属化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とから形成されている。
【0029】
まず、本発明の遷移金属化合物(A)とともに、必要に応じて添加されるオレフィン重合用触媒を形成する各触媒成分について説明する。
(A)遷移金属化合物
本発明で用いられる第1の遷移金属化合物は、下記式(a)で表わされる化合物(以後(a)〜(d)式の化合物を「配位子前駆体」と呼ぶ場合がある。)と下記式(e)で表わされる金属化合物とを結合反応させて得られるものである。ここで、結合反応とは、結合を目的とする反応であって特に限定されない。
【0030】
【化19】
【0031】
式(a)中、Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示す。
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示す。これらの中では、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−が好ましく、−C(R7)(R8)−が特に好ましい。
Zは、Nの結合基として、−R13および−R14、=C(R15)R16または=NR17を示す。(ここで「−」および「=」はそれぞれ単結合、二重結合を表す。以下同様。)
R1〜R17は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。但し、R13またはR14は水素原子以外のものであることが好ましい。
【0032】
R1〜R17は、互いに同一であっても異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基であることが好ましい。
より具体的には、R1〜R17が水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリーロキシ基、アリールチオ基、アシル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、イミド基、アミノ基、イミノ基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、メルカプト基、アルミニウム含有基またはヒドロキシ基であることが好ましい。但し、R13またはR14は水素原子以外のものであることが好ましい。
R1〜R4は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基または炭化水素置換シロキシ基であることが好ましく、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基または炭化水素置換シリル基であることが特に好ましい。
また、R5 〜R17は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、アルミニウム含有基であることが好ましく、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、アルミニウム含有基であることが特に好ましい。
【0033】
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基として具体的には、メチル、エチル、n-ブロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、 tert-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル、アリル(allyl)、イソプロペニルなどの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;エチニル、プロパルギルなど炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニルなどの炭素数5〜30の環状不飽和炭化水素基;フェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール(aryl)基;トリル、iso-プロピルフェニル、t-ブチルフェニル、ジメチルフェニル、ジ-t-ブチルフェニルなどのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
【0034】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロフェニル、クロロフェニルなどの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0035】
また、上記炭化水素基は、水素原子が他の炭化水素基で置換されていてもよく、たとえば、ベンジル、クミルなどのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
【0036】
さらにまた、上記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチオシアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を有していてもよい。
【0037】
これらのうち、特に、メチル、エチル、n-ブロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基等が好ましい。
【0038】
ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
【0039】
R1〜R17として示される酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基としては、上記炭化水素基に含まれていてもよい置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0040】
R4は水素以外の置換基であることが好ましい。すなわち、R4はハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基が好ましい。特に、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリーロキシ基、アリールチオ基、アシル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、アミノ基、イミド基、イミノ基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、シアノ基、ニトロ基またはヒドロキシ基であることが好ましい。R4 として好ましい炭化水素基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;フェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニリル、トリフェニリルなどの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;および、これらの基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基などの置換基がさらに置換した基などが好ましく挙げられる。R4として好ましい炭化水素置換シリル基としては、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチル-t-ブチルシリル、ジメチル(ペンタフルオロフエニル)シリルなどが挙げられる。特に好ましくは、トリメチルシリル、トリエチルフェニル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチル-t-ブチルシリル、ジメチル(ペンタフルオロフエニル)シリルなどが挙げられる。R4 としては特に、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の分岐状アルキル基、およびこれらの基の水素原子を炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基で置換した基(クミル基など)、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基から選ばれる基であることが好ましく、あるいはフェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラニル、フェナントリルなどの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基、または炭化水素置換シリル基であることも好ましい。
ホウ素含有基としては、上記炭化水素基に含まれていてもよい置換基として例示したものと同様のもののほか、アルキル基置換ホウ素、アリール基置換ホウ素、ハロゲン化ホウ素、アルキル基置換ハロゲン化ホウ素等の基が挙げられる。
アルキル基置換ホウ素としては、(Et)2B−、(iPr)2B−、(iBu)2B−、(Et)3B、(iPr)3B、(iBu)3B;アリール基置換ホウ素としては、(C6H5)2B−、(C6H5)3B、(C6F5)3B、(3,5-(CF3)2C6H3)3B;ハロゲン化ホウ素としては、BCl2−、BCl3;アルキル基置換ハロゲン化ホウ素としては、(Et)BCl−、(iBu)BCl−、(C6H5)2BClなどが挙げられる。このうち三置換のホウ素については、配位結合した状態であることがある。ここで、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基を表す。
【0041】
アルミニウム含有基としては、アルキル基置換アルミニウム、アリール基置換アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム、アルキル基置換ハロゲン化アルミニウム等の基が挙げられる。
アルキル基置換アルミニウムとしては、(Et)2Al−、(iPr)2Al−、(iBu)2Al−、(Et)3Al、(iPr)3Al、(iBu)3Al;アリール基置換アルミニウムとしては、(C6H5)2Al−;ハロゲン化アルミニウムとしては、AlCl2−、AlCl3;アルキル基置換ハロゲン化アルミニウムとしては、(Et)AlCl−、(iBu)AlCl−などが挙げられる。このうち三置換のアルミニウムについては、配位結合した状態であることがある。ここで、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基を表す。
【0042】
ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基などが挙げられる。このうち炭化水素置換シリル基として具体的には、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチル-t-ブチルシリル、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリルなどが挙げられる。これらの中では、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、トリフェニルシリルなどが好ましい。特にトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリルが好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシなどが挙げられる。
【0043】
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムおよびスズに置換したものが挙げられる。
次に上記で説明したR1〜R17の例について、より具体的に説明する。
【0044】
酸素含有基のうち、アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n-ブロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、 tert-ブトキシなどが、アリーロキシ基としては、フェノキシ、2,6-ジメチルフェノキシ、2,4,6-トリメチルフェノキシなどが、アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p−クロロベンゾイル基、p-メトキシベンゾイル基などが、エステル基としては、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、p-クロロフェノキシカルボニルなどが好ましく例示される。
【0045】
窒素含有基のうち、アミド基としては、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルベンズアミドなどが、アミノ基としては、ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジフェニルアミノなどが、イミド基としては、アセトイミド、ベンズイミドなどが、イミノ基としては、メチルイミノ、エチルイミノ、プロピルイミノ、ブチルイミノ、フェニルイミノなどが好ましく例示される。
【0046】
イオウ含有基のうち、アルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ等が、アリールチオ基としては、フェニルチオ、メチルフェニルチオ、ナフチルチオ等が、チオエステル基としては、アセチルチオ、ベンゾイルチオ、メチルチオカルボニル、フェニルチオカルボニルなどが、スルホンエステル基としては、スルホン酸メチル、スルホン酸エチル、スルホン酸フェニルなどが、スルホンアミド基としては、フェニルスルホンアミド、N-メチルスルホンアミド、N-メチル-p-トルエンスルホンアミドなどが好ましく挙げられる。
【0047】
R1〜R17は、これらのうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0048】
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−、−S−のいずれかを示す。
−C(R7)(R8)−の好ましい例としては、メチレン、ジメチルメチレン、1,2-エチレン、ジメチル-1,2-エチレン、1,3-トリメチレン、1,4-テトラメチレン、1,2-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレンなどのアルキレン基、ジフェニルメチレン、ジフェニル-1,2-エチレンなどのアリールアルキレン基などの炭素数1から20の2価の炭化水素基が挙げられる。これらの中ではメチレンが特に好ましい。
【0049】
−Si(R9)(R10)−の好ましい例としては、メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n-ブロピル)シリレン、ジ(i-プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(p-トリル)シリレン、ジ(p-クロロフェニル)シリレンなどのアルキルシリレン、アルキルアリールシリレン、アリールシリレン基、テトラメチル-1,2-ジシリレン、テトラフェニル-1,2-ジシリレンなどのアルキルジシリレン、アルキルアリールジシリレン、アリールジシリレン基などの2価のケイ素含有基が挙げられる。
【0050】
R11としては、酸素含有基であることも好ましく、この場合アルコキシ基、アリーロキシ基、アリールアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基、フェノキシ基などが好ましい。
【0051】
上記式(a)の化合物と結合反応させる金属化合物は、次式(e)で表わされる。
MXk ・・・ (e)
式(e)中、Mは周期表第3〜11族の遷移金属原子(3族にはランタノイドも含まれる)を示し、好ましくは3〜10族(3族にはランタノイドも含まれる)の金属原子であり、より好ましくは3〜5族および8〜10族の金属原子であり、特に好ましくは4族または5族の金属原子である。具体的には、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどであり、好ましくはスカンジウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、鉄、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどであり、より好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、鉄、コバルト、ロジウムなどであり、特に好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウムである。
【0052】
kは、Mの価数を満たす数で、具体的には0〜6の整数である。例えば2価金属ではk=2、3価金属ではk=3、4価金属ではk=4、5価金属ではk=5、6価金属ではk=6である。例えばTi(IV)の場合k=4、Ti(III)の場合k=3などとなる。
【0053】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。
【0054】
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基としては、前記式(a)のR1〜R17で例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシルなどのアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの炭素原子数が3〜30のシクロアルキル基;ビニル、プロペニル、シクロヘキセニルなどのアルケニル基;ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどのアリールアルキル基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、ナフチル、メチルナフチル、アントリル、フェナントリルなどのアリール基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの炭化水素基には、ハロゲン化炭化水素、具体的には炭素原子数1〜30の炭化水素基の少なくとも一つの水素がハロゲン置換した基も含まれる。これらのうち、炭素原子数が1〜20のものが好ましい。
【0055】
また、ヘテロ環式化合物残基としては、前記式(a)のR1〜R17で例示したものと同様のものが挙げられる。
酸素含有基としては、前記式(a)のR1〜R17で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、ヒドロキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどのアルコシキ基;フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシなどのアリーロキシ基;フェニルメトキシ、フェニルエトキシなどのアリールアルコキシ基;アセトキシ基;カルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
イオウ含有基としては、前記式(a)のR1〜R17で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、メチルスルフォネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p-トルエンスルフォネート、トリメチルベンゼンスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p-クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネートなどのスルフォネート基;メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンジルスルフィネート、p-トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネートなどのスルフィネート基;アルキルチオ基;アリールチオ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
窒素含有基として具体的には、前記式(a)のR1〜R17で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、アミノ基;メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基;フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
ホウ素含有基として具体的には、BR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。
リン含有基として具体的には、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン基;トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィンなどのトリアリールホスフィン基;メチルホスファイト、エチルホスファイト、フェニルホスファイトなどのホスファイト基(ホスフィド基);ホスホン酸基;ホスフィン酸基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
ケイ素含有基として具体的には、前記式(a)のR1〜R17で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、フェニルシリル、ジフェニルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどの炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニルなどのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
【0060】
ゲルマニウム含有基として具体的には、前記式(a)のR1〜R17で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した基が挙げられる。
【0061】
スズ含有基としては、前記式(a)のR1〜R17で例示したものと同様のものが挙げられ、より具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をスズに置換した基が挙げられる。
【0062】
ハロゲン含有基として具体的には、PF6、BF4などのフッ素含有基、ClO4、SbCl6などの塩素含有基、IO4などのヨウ素含有基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
アルミニウム含有基として具体的には、AlR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
これらの中では、ハロゲン原子、アルキル基が好ましく、さらには塩素、臭素、メチル基が好ましい。
なお、kが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0065】
前記(e)式のMXkの具体例として、TiCl3、TiCl4、TiBr3、TiBr4、Ti(CH2C6H5)4 、Ti(N(Me)2)4 、ZrCl4、ZrBr4、Zr(CH2C6H5)4 、Zr(N(Me)2)4 、HfBr4、HfCl4、VCl4、VCl5、VBr4、VBr5、NbCl5、NbBr5、TaCl5、TaBr4、Ti(acac)3、FeCl2、FeCl3、FeBr2、FeBr3、CoCl2、CoCl3、CoBr2、CoBr3、RhCl2、RhCl3、RhBr2、RhBr3、NiCl2、NiBr2、PdCl2、PdBr2、および、これらのTHF(テトラヒドロフラン)、アセトニトリル、ジエチルエーテルなどとの錯体などが挙げられる。
【0066】
前記式(a)で表される化合物と、前記式(e)で表される金属化合物とを反応させて得られる遷移金属化合物では、金属原子に対して該金属原子に結合する前記式(a)化合物に由来する配位子のモル比が1〜6であることが好ましく、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1または2である。
この反応生成物のモル比は、単離された遷移金属化合物の元素分析、X線結晶構造解析、マススペクトル、NMR、IRなどで分析することにより確認することができる。
【0067】
本発明で用いられる第2の遷移金属化合物は、下記式(b)で表わされる化合物と前記式(e)で表わされる金属化合物とを結合反応させて得られるものである。
【0068】
【化20】
【0069】
式(b)中、Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示す。
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示す。これらの中では、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−が好ましく、−C(R7)(R8)−が特に好ましい。
【0070】
R1〜R13は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。また、R6は水素原子以外のものであることが好ましい。
R1〜R13は、互いに同一であっても異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基であることが好ましい。
より具体的には、R1〜R13が水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリーロキシ基、アリールチオ基、アシル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、イミド基、アミノ基、イミノ基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、メルカプト基、アルミニウム含有基またはヒドロキシ基であることが好ましい。
R1〜R4は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基または炭化水素置換シロキシ基であることが好ましく、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基または炭化水素置換シリル基であることが特に好ましい。
また、R5 〜R17は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、アルミニウム含有基であることが好ましく、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、アルミニウム含有基であることが特に好ましい。
R1〜R13の具体例としては、前記式(a)におけるR1〜R17と同様の基が挙げられる。
また、Dの具体例としては、前記式(a)におけるDと同様の基が挙げられる。
【0071】
前記式(b)で表される化合物と、前記式(e)で表される金属化合物とを反応させて得られる遷移金属化合物では、金属原子に対して該金属原子に結合する前記式(b)化合物に由来する配位子のモル比が1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1または2である。
【0072】
本発明で用いられる第3の遷移金属化合物は、下記式(c)で表わされる化合物と前記式(e)で表わされる金属化合物とを結合反応させて得られるものである。
【0073】
【化21】
【0074】
式(c)中、Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示す。
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−、または−S−を示す。これらの中では、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−が好ましく、−C(R7)(R8)−が特に好ましい。
【0075】
R1〜R13は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
R1〜R13は、互いに同一であっても異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基であることが好ましい。
より具体的には、R1〜R13が水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリーロキシ基、アリールチオ基、アシル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、イミド基、アミノ基、イミノ基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、メルカプト基、アルミニウム含有基またはヒドロキシ基であることが好ましい。
R1〜R4は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基または炭化水素置換シロキシ基であることが好ましく、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基または炭化水素置換シリル基であることが特に好ましい。
また、R5 〜R17は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、アルミニウム含有基であることが好ましく、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、アルミニウム含有基であることが特に好ましい。
R1〜R13の具体例としては、前記式(a)におけるR1〜R17と同様の基が挙げられる。
また、Dの具体例としては、前記式(a)におけるDと同様の基が挙げられる。
【0076】
前記式(c)で表される化合物と、前記式(e)で表される金属化合物とを反応させて得られる遷移金属化合物では、金属原子に対して該金属原子に結合する前記式(c)化合物に由来する配位子のモル比が、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜3である。
【0077】
本発明で用いられる第4の遷移金属化合物は、下記式(d)で表わされる化合物と前記式(e)で表わされる金属化合物とを結合反応させて得られるものである。
【0078】
【化22】
【0079】
式(d)中、Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示す。
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示す。これらの中では、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−が好ましく、−C(R7)(R8)−が特に好ましい。
Zは、Nの結合基として、−R13および−R14、=C(R15)R16または=NR17を示す。これらのなかでは、−R13および−R14、または=C(R15)R16であることが好ましい。
【0080】
R1〜R17は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。また、R6、R13またはR14のいずれか1つは水素原子以外のものであることが好ましい。
R1 〜R17は、互いに同一であっても異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基であることが好ましい。
より具体的には、R1 〜R17が水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリーロキシ基、アリールチオ基、アシル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、イミド基、アミノ基、イミノ基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、メルカプト基またはヒドロキシ基であることが好ましい。但し、R13またはR14は水素原子以外のものであることが好ましい。
R1 〜R4 は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基または炭化水素置換シロキシ基であることが好ましく、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基または炭化水素置換シリル基であることが特に好ましい。
また、R5 〜R17は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、アルミニウム含有基であることが好ましく、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、アルミニウム含有基であることが特に好ましい。
R1〜R17の具体例としては、前記式(a)におけるR1〜R17と同様の基が挙げられる。
また、Dの具体例としては、前記式(a)におけるDと同様の基が挙げられる。
【0081】
前記式(d)で表される化合物と、前記式(e)で表される金属化合物とを反応させて得られる遷移金属化合物では、金属原子に対して該金属原子に結合する前記式(d)化合物に由来する配位子のモル比が1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは1または2である。
【0082】
前記式(a)〜(d)で表される化合物と、前記式(e)で表される金属化合物との結合反応方法は、特に制限されるものではないが、例えば、後に記載する様に、(a)〜(d)式の化合物をそのまま(e)式の金属化合物、例えば遷移金属ハロゲン化物や遷移金属アルキル化物等と反応させるか、または、(a)〜(c)式の化合物では、塩基と反応させてアニオンとした後(e)式の金属化合物、例えば遷移金属ハロゲン化物や遷移金属アルキル化物等と反応させる方法によって行われる。
【0083】
本発明に係る第5の遷移金属化合物は下記式(I)で表される化合物である。
【0084】
【化23】
【0085】
(上式でN……Mにおける原子間の……は配位結合していることを示すが、本発明では配位結合していないものも含まれる。)
式(I)中、Mは、周期表第3〜11族の遷移金属原子(3族にはランタノイドも含まれる)を示し、好ましくは3〜10族(3族にはランタノイドも含まれる)の金属原子であり、より好ましくは3〜5族および8〜10族の金属原子であり、特に好ましくは4族または5族の金属原子である。具体例としては、前記式(e)におけるMと同様なものが挙げられる。
【0086】
mは、1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2の整数である。
Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示す。
【0087】
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示す。これらの中では、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−が好ましく、−C(R7)(R8)−が特に好ましい。
Dがヘテロ原子を含む場合は、上式(I)においてMとDとが配位結合していてもよい。なお、配位結合の存在は、IR、NMR、X線結晶構造解析により確認できる。
【0088】
Zは、Nの結合基として、−R13および−R14、=C(R15)R16または=NR17を示す。これらのなかでは、−R13および−R14、または=C(R15)R16であることが好ましい。
R1〜R17は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。また、R13またはR14は水素原子以外のものであることが好ましい。
【0089】
mが複数のときは、一つの配位子に含まれるR1〜R17のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R17のうちの1個の基とが結合されていてもよい。R13同士、R14同士、R15同士、R16同士またはR17同士が結合される場合は、その結合の主鎖が3個以上の原子で形成されるものが好ましい。さらに、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士、R11同士、R12同士、R13同士、R14同士、R15同士、R16同士、R17同士は互いに同一でも異なっていてもよい。R1〜R17の具体例としては、前記式(a)におけるR1〜R17と同様の基が挙げられる。
【0090】
また、Dの具体例としては前記式(a)におけるDと同様の基が挙げられる。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。Xの具体例としては前記式(e)におけるXと同様の基が挙げられる。
【0091】
nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0092】
前記式(I)で表される遷移金属化合物において、mが2であり、一つの配位子に含まれるR1〜R17のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R17のうちの1個の基とが連結されている化合物は、たとえば下記式(I-a)で表される化合物である。
【0093】
【化24】
【0094】
式(I-a)中、A、D、Z、R1〜R17、M、Xは、それぞれ前記式(I)のA、D、Z、R1〜R17、M、Xと同じであり、A'はAと同一でも異なっていてもよい酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基として−R5'を有する窒素原子を示す。D'はDと同一でも異なっていてもよく、−C(R7')(R8')−、−Si(R9')(R10')−、−P(O)(R11')−、−P(R12')−、−SO−、または−S−を示す。これらの中では−C(R7')(R8')−が好ましい。Z'はZと同一でも異なっていてもよく、Nの結合基として、−R13'および−R14'、=C(R15')R16'または=NR17'を示す。
【0095】
R1'〜R17'はそれぞれ前記式(I)のR1〜R17と同じ意味を表わし、好ましくは次のような基が挙げられる。
すなわちR1'〜R17'は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、具体的には前記式(a)のR1〜R17と同様の原子または基を示す。但し、R13'またはR14'は水素原子以外のものであることが好ましい。R1'〜R17'のうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基は、互いに連結して脂肪族環、芳香族環または窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよい。
【0096】
Yは、R1〜R17から選ばれる少なくとも1以上の基と、R1'〜R17'から選ばれる少なくとも1以上の基とを結合する結合基または単結合である。結合基は特に制限されるものではないが、好ましくは主鎖が原子3個以上、より好ましくは4個以上20個以下、特に好ましくは4個以上10個以下で構成された構造を有する。なお、この結合基は置換基を有していてもよい。
【0097】
Yで示される結合基としては、酸素、イオウ、炭素、窒素、リン、ケイ素、セレン、スズ、ホウ素などの中から選ばれる少なくとも1種の元素を含む基が挙げられ、具体的には−O−、−S−、−Se−などのカルコゲン原子含有基;−NH−、−N(CH3)2−、−PH−、−P(CH3)2−などの窒素またはリン原子含有基;−CH2−、−CH2−CH2−、−C(CH3)2−などの炭素原子数が1〜20の炭化水素基;ベンゼン、ナフタレン、アントラセンなどの炭素原子数が6〜20の環状不飽和炭化水素残基;ピリジン、キノリン、チオフェン、フランなどのヘテロ原子を含む炭素原子数が3〜20のヘテロ環式化合物残基;−SiH2−、−Si(CH3)2−などのケイ素原子含有基、−SnH2−、−Sn(CH3)2−などのスズ原子含有基;−BH−、−B(CH3)−、−BF−などのホウ素原子含有基など、または単結合が挙げられる。
【0098】
以下に、前記式(I)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
なお、下記具体例においてMは周期表第3〜11族の遷移金属原子であり、具体例としてはスカンジウム、イットリウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどであり、好ましくはスカンジウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、鉄、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどであり、より好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、鉄、コバルト、ロジウムなどであり、特に好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウムである。
【0099】
Xは、Cl、Br等のハロゲン、もしくはメチル等のアルキル基を示すが、これらに限定されるものではない。また、Xが複数ある場合は、これらは同じであっても、異なっていてもよい。
【0100】
nは金属Mの価数により決定される。例えば、2個のモノアニオン種が金属に結合している場合、2価金属ではn=0、3価金属ではn=1、4価金属ではn=2、5価金属ではn=3になる。金属がTi(IV)の場合は、n=2となり、Zr(IV)の場合は、n=2となり、Hf(IV)の場合は、n=2となる。
【0101】
以下の化合物例示中、Meはメチル基、Etはエチル基、iPrはi-プロピル基、tBuはtert-ブチル基、Phはフェニル基を示す。
【0102】
【化25】
【0103】
【化26】
【0104】
【化27】
【0105】
【化28】
【0106】
【化29】
【0107】
【化30】
【0108】
【化31】
【0109】
【化32】
【0110】
【化33】
【0111】
【化34】
【0112】
本発明に係る第6の遷移金属化合物は下記式(II)で表される化合物である。
【0113】
【化35】
【0114】
(上式でA……Mにおける原子間の……は配位結合していることを示すが、本発明では、配位結合していないものも含まれる。)
式(II)中、Mは、周期表第3〜11族の遷移金属原子(3族にはランタノイドも含まれる)を示し、好ましくは3〜10族(3族にはランタノイドも含まれる)の金属原子であり、より好ましくは3〜5族および8〜10族の金属原子であり、特に好ましくは4族または5族の金属原子である。具体例としては、前記式(e)におけるMと同様なものが挙げられる。
【0115】
mは、1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2の整数である。
Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示す。
【0116】
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−、または−S−を示す。これらの中では、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−が好ましく、−C(R7)(R8)−が特に好ましい。
R1〜R13は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。また、R6は水素原子以外のものであることが好ましい。
【0117】
mが複数のときは、一つの配位子に含まれるR1〜R13のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R13のうちの1個の基とが結合されていてもよく、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士、R11同士、R12同士、R13同士は互いに同一でも異なっていてもよい。R1〜R13の具体例としては、前記式(a)におけるR1〜R17と同様の基が挙げられる。
【0118】
また、Dの具体例としては前記式(a)におけるDと同様の基が挙げられる。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。Xの具体例としては前記式(e)におけるXと同様の基が挙げられる。
【0119】
nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0120】
以下に、前記式(II)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
なお、下記具体例においてMは周期表第3〜11族の遷移金属原子であり、具体例としてはスカンジウム、イットリウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどであり、好ましくはスカンジウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、鉄、コバルト、ロジ
ウム、ニッケル、パラジウムなどであり、より好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、鉄、コバルト、ロジウムなどであり、特に好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウムである。
【0121】
Xは、Cl、Br等のハロゲン、もしくはメチル等のアルキル基を示すが、これらに限定されるものではない。また、Xが複数ある場合は、これらは同じであっても、異なっていてもよい。
【0122】
nは、金属Mの価数により決定される。例えば、2個のモノアニオン種が金属に結合している場合、2価金属ではn=0、3価金属ではn=1、4価金属ではn=2、5価金属ではn=3になる。金属がTi(IV)の場合は、n=2となり、Zr(IV)の場合は、n=2となり、Hf(IV)の場合は、n=2となる。
【0123】
【化36】
【0124】
【化37】
【0125】
【化38】
【0126】
【化39】
【0127】
本発明に係る第7の遷移金属化合物は、下記式(III)で表される化合物である。
【0128】
【化40】
【0129】
式(III)中、Mは、周期表第3〜11族の遷移金属原子(3族にはランタノイドも含まれる)を示し、好ましくは3〜10族(3族にはランタノイドも含まれる)の金属原子であり、より好ましくは3〜5族および8〜10族の金属原子であり、特に好ましくは4族または5族の金属原子である。具体例としては、前記式(e)におけるMと同様なものが挙げられる。
【0130】
mは、1〜3、好ましくは1〜2の整数である。
Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示す。
【0131】
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示す。これらの中では、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−が好ましく、−C(R7)(R8)−が特に好ましい。
R1〜R13は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0132】
mが複数のときは、一つの配位子に含まれるR1〜R13のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R13のうちの1個の基とが結合されていてもよく、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士、R11同士、R12同士、R13同士は互いに同一でも異なっていてもよい。R1〜R13の具体例としては、前記式(a)におけるR1〜R17と同様の基が挙げられる。
【0133】
また、Dの具体例としては前記式(a)におけるDと同様の基が挙げられる。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。Xの具体例としては前記式(e)におけるXと同様の基が挙げられる。
【0134】
nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0135】
以下に、前記式(III)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
なお、下記具体例においてMは周期表第3〜11族の遷移金属原子であり、具体例としてはスカンジウム、イットリウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどであり、好ましくはスカンジウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、鉄、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどであり、より好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、鉄、コバルト、ロジウムなどであり、特に好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウムである。
【0136】
Xは、Cl、Br等のハロゲン、もしくはメチル等のアルキル基を示すが、これらに限定されるものではない。また、Xが複数ある場合は、これらは同じであっても、異なっていてもよい。
【0137】
nは、金属Mの価数により決定される。1個のジアニオンが金属に配位している場合、2価金属ではn=0、3価金属ではn=1、4価金属ではn=2、5価金属ではn=3である。例えば、金属MがTi(IV)ではn=2、Zr(IV)ではn=2、Hf(IV)ではn=2、Co(II)ではn=0、Fe(II)ではn=0、Rh(II)ではn=0、Ni(II)ではn=0、Pd(II)ではn=0となる。
【0138】
【化41】
【0139】
【化42】
【0140】
【化43】
【0141】
【化44】
【0142】
本発明に係る第8の遷移金属化合物は下記式(IV)で表される化合物である。
【0143】
【化45】
【0144】
(上式でA……M、N……Mにおける二つの原子間の……は配位結合していることを示すが、本発明では、これらのうちのいずれか一方が配位結合していないものも含まれる。)
式(IV)中、Mは、周期表第3〜11族の遷移金属原子(3族にはランタノイドも含まれる)を示し、好ましくは3〜10族(3族にはランタノイドも含まれる)の金属原子であり、より好ましくは3〜5族および8〜10族の金属原子であり、特に好ましくは8〜10族の金属原子である。具体例としては、前記式(e)におけるMと同様なものが挙げられる。
【0145】
mは、1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2の整数である。
Aは、酸素原子、イオウ原子、セレン原子、または結合基−R5を有する窒素原子を示す。
【0146】
Dは、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示す。これらの中では、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−が好ましく、−C(R7)(R8)−が特に好ましい。
Dがヘテロ原子を含む場合は、上式(IV)においてMとDとが配位結合していてもよい。
【0147】
Zは、Nの結合基として、−R13および−R14、=C(R15)R16または=NR17を示す。これらのなかでは、−R13および−R14、または=C(R15)R16であることが好ましい。
R1〜R17は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。また、R6、R13またはR14のうちのいずれか一つは水素原子以外のものであることが好ましい。
【0148】
mが複数のときは、一つの配位子に含まれるR1〜R17のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R17のうちの1個の基とが結合されていてもよい。R14同士、R15同士、R16同士またはR17同士が結合される場合は、その結合の主鎖が3個以上の原子で形成されるものが好ましい。さらに、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士、R11同士、R12同士、R13同士、R14同士、R15同士、R16同士、R17同士は互いに同一でも異なっていてもよい。R1〜R17の具体例としては、前記式(a)におけるR1〜R17と同様の基が挙げられる。
【0149】
また、Dの具体例としては前記式(a)におけるDと同様の基が挙げられる。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。Xの具体例としては前記式(e)におけるXと同様の基が挙げられる。
【0150】
nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0151】
以下に、前記式(IV)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
なお、下記具体例においてMは周期表第3〜11族の遷移金属原子であり、具体例としてはスカンジウム、イットリウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどであり、好ましくはスカンジウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどであり、より好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどであり、特に好ましくは鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムである。
【0152】
Xは、Cl、Br等のハロゲン、もしくはメチル等のアルキル基を示すが、これらに限定されるものではない。また、Xが複数ある場合は、これらは同じであっても、異なっていても良い。
【0153】
nは、金属Mの価数により決定される。例えば、2座配位子が金属に配位している場合、2価金属ではn=2、3価金属ではn=3、4価金属ではn=4、5価金属ではn=5である。例えば、金属MがTi(IV)ではn=4、Zr(IV)ではn=4、Hf(IV)ではn=4、Co(II)ではn=2、Fe(II)ではn=2、Rh(II)ではn=2、Ni(II)ではn=2、Pd(II)ではn=2となる。
【0154】
【化46】
【0155】
【化47】
【0156】
【化48】
【0157】
本発明に係る第9の遷移金属化合物は下記式(V)で表される化合物である。
【0158】
【化49】
【0159】
(上式で原子間の……は配位結合していることを示すが、本発明には、A−M結合に隣接するN……MとA'……Mが配位結合していないものも含まれる。また、A'''……Mとそれに隣接するN……Mについては、それらのいずれか一方が配位結合していないものも含まれる。)
式(V)中、Mは、周期表第3〜11族の遷移金属原子(3族にはランタノイドも含まれる)を示し、好ましくは3〜10族(3族にはランタノイドも含まれる)の金属原子であり、より好ましくは3〜5族および8〜10族の金属原子である。具体例としては前記式(e)におけるMと同様なものが挙げられる。
【0160】
mは0〜6、pは0〜6、qは0〜3、rは0〜6の整数で、これらのうち三つ以上が同時に0になることはなく、m+p+q+r≦6かつm+p+2q≦6の関係を満たす。
【0161】
A、A'、A''、A'''は、互いに同一でも異なっていてもよい酸素原子、イオウ原子、セレン原子、又は、結合基−R5(A'、A''、A'''に対応してそれぞれ−R5'、−R5''、−R5'''と表す。以下同様。)を有する窒素原子を示す。
【0162】
D、D'、D''、D'''は、互いに同一でも異なっていてもよい−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−、−P(O)(R11)−、−P(R12)−、−SO−または−S−を示す。これらの中では、−C(R7)(R8)−、−Si(R9)(R10)−が好ましく、−C(R7)(R8)−が特に好ましい。
D、D'''がヘテロ原子を含む場合は、上式(V)においてMとD、MとD'''が配位結合していてもよい。
【0163】
Z、Z'''は、互いに同一でも異なっていてもよく、Nの結合基として、−R13および−R14、=C(R15)R16または=NR17を示す。これらの中では、−R13および−R14、または=C(R15)R16が好ましい。
R1〜R17、R1'〜R13'、R1''〜R13''、R1'''〜R17'''は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。また、R13またはR14のいずれかと、R6'と、R6'''、R13'''またはR14'''のうちのいずれか一つとは、水素原子以外のものであることが好ましい。
【0164】
また、m+p+q+r≧2のときは、一つの配位子に含まれるR1〜R17、R1'〜R13'、R1''〜R13''、R1'''〜R17'''のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R17、R1'〜R13'、R1''〜R13''、R1'''〜R17'''のうちの1個の基とが結合されていてもよい。R13、R13'''同士、R14、R14'''同士、R15、R15'''同士、R16、R16'''同士または、R17、R17'''同士が結合される場合は、その結合の主鎖が3個以上の原子で形成されるものが好ましい。さらに、R1、R1'、R1''、R1'''同士、R2、R2'、R2''、R2'''同士、R3、R3'、R3''、R3'''同士、R4、R4'、R4''、R4'''同士、R5、R5'、R5''、R5'''同士、R6'、R6'''同士、R7、R7'、R7''、R7'''同士、R8、R8'、R8''、R8'''同士、R9、R9'、R9''、R9'''同士、R10、R10'、R10''、R10'''同士、R11、R11'、R11''、R11'''同士、R12、R12'、R12''、R12'''同士、R13、R13'、R13''、R13'''同士、R14、R14'''同士、R15、R15'''同士、R16、R16'''同士およびR17、R17'''同士は互いに同一でも異なっていてもよい。R1〜R17、R1'〜R13'、R1''〜R13''、R1'''〜R17'''の具体例としては、前記式(a)におけるR1〜R17と同様の基が挙げられる。
【0165】
また、D、D'、D''、D'''の具体例としては前記式(a)におけるDと同様の基が挙げられる。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。Xの具体例としては前記式(e)におけるXと同様の基が挙げられる。
【0166】
nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0167】
以下に、前記式(V)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
なお、下記具体例においてMは周期表第3〜11族の遷移金属原子であり、具体例としてはスカンジウム、イットリウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどであり、好ましくはスカンジウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウムなどである。
【0168】
Xは、Cl、Br等のハロゲン、もしくはメチル等のアルキル基を示すが、これらに限定されるものではない。また、Xが複数ある場合は、これらは同じであっても、異なっていても良い。
【0169】
nは、金属Mの価数により決定される。
【0170】
【化50】
【0171】
上記(I)ないし(V)の遷移金属化合物の一例として、さらに詳しくは、例えば以下のような化合物が列挙されるがこれに限定されるものではない。
【0172】
【化51】
【0173】
【化52】
【0174】
【化53】
これらのうち、TiをZrまたはHfに置き換えた化合物も列挙できる。
以上のような遷移金属化合物(A)は、1種単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0175】
また、本発明のオレフィン重合用触媒には、上記遷移金属化合物(A)とともに他の遷移金属化合物、例えば窒素、酸素、イオウ、ホウ素またはリンなどのヘテロ原子を含有する配位子からなる公知の遷移金属化合物を組み合わせて用いることもできる。以下、組み合わせて用いることのできる他の遷移金属化合物について説明する。
【0176】
他の遷移金属化合物
上記遷移金属化合物(A)以外の遷移金属化合物として、具体的には、下記のような遷移金属化合物を用いることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
(a-1) 下記式で表される遷移金属イミド化合物:
【0177】
【化54】
【0178】
式中、Mは、周期表第8〜10族の遷移金属原子を示し、好ましくはニッケル、パラジウムまたは白金である。
R21〜R24は、互いに同一でも異なっていてもよい炭素数1〜50の炭化水素基、炭素数1〜50のハロゲン化炭化水素基、炭化水素置換シリル基または窒素、酸素、リン、イオウおよびケイ素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む置換基で置換された炭化水素基を示す。
R21〜R24で表される基は、これらのうちの2個以上、好ましくは隣接する基が互いに連結して環を形成していてもよい。
【0179】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基または窒素含有基を示し、qは、0〜4の整数である。qが2以上の場合には、Xで示される複数の基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
(a-2) 下記式で表される遷移金属アミド化合物:
【0180】
【化55】
【0181】
式中、Mは、周期表第3〜6族の遷移金属原子を示し、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであることが好ましい。
R’およびR”は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜50の炭化水素基、炭素数1〜50のハロゲン化炭化水素基、炭化水素置換シリル基、または、窒素、酸素、リン、硫黄およびケイ素から選ばれる少なくとも1種の元素を有する置換基を示す。
【0182】
Aは、周期表第13〜16族の原子を示し、具体的には、ホウ素、炭素、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄、ゲルマニウム、セレン、スズなどが挙げられ、炭素またはケイ素であることが好ましい。
mは、0〜2の整数であり、nは、1〜5の整数である。nが2以上の場合には、複数のAは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0183】
Eは、炭素、水素、酸素、ハロゲン、窒素、硫黄、リン、ホウ素およびケイ素から選ばれる少なくとも1種の元素を有する置換基である。mが2の場合、2個のEは、互いに同一でも異なっていてもよく、あるいは互いに連結して環を形成していてもよい。
【0184】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜20の炭化水素基、炭素原子数が1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基または窒素含有基を示し、pは、0〜4の整数である。pが2以上の場合には、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよい。
これらのうち、Xはハロゲン原子、炭素原子数が1〜20の炭化水素基またはスルホネート基であることが好ましい。
(a-3) 下記式で表される遷移金属ジフェノキシ化合物:
【0185】
【化56】
【0186】
式中、Mは周期表第3〜11族の遷移金属原子を示し、lおよびmはそれぞれ0または1の整数であり、AおよびA’は炭素原子数1〜50の炭化水素基、炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素、または、酸素、硫黄またはケイ素を含有する置換基を持つ炭素原子数1〜50の炭化水素基、または炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基であり、AとA’は同一でも異なっていてもよい。
【0187】
Bは、炭素原子数1〜50の炭化水素基、炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基、R1R2Zで表される基、酸素または硫黄であり、ここで、R1およびR2は炭素原子数1〜20の炭化水素基または少なくとも1個のヘテロ原子を含む炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、Zは炭素、窒素、硫黄、リンまたはケイ素を示す。
【0188】
nは、Mの価数を満たす数である。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基または窒素含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、或いは互いに結合して環を形成していてもよい。(a-4) 下記式で表される少なくとも1個のヘテロ原子を含むシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物:
【0189】
【化57】
【0190】
式中、Mは周期表3〜11族の遷移金属原子を示す。
Xは、周期表第13、14または15族の原子を示し、Xのうちの少なくとも1つは炭素以外の元素である。
【0191】
Rは、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素基置換シリル基、又は窒素、酸素、リン、イオウおよびケイ素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む置換基で置換された炭化水素基を示し、2個以上のRが互いに連結して環を形成していてもよい。
【0192】
aは、0または1であり、bは、1〜4の整数であり、bが2以上の場合、各[((R)a)5−X5]基は同一でも異なっていてもよく、さらにR同士が架橋していてもよい。
【0193】
cは、Mの価数を満たす数である。
Yは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基または窒素含有基を示す。cが2以上の場合は、Yで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、また、Yで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
(a-5) 式RB(Pz)3MXnで表される遷移金属化合物:
式中、Mは周期表3〜11族遷移金属化合物を示し、Rは水素原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基を示し、Pzはピラゾリル基または置換ピラゾリル基を示す。
【0194】
nは、Mの価数を満たす数である。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基または窒素含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、あるいは互いに結合して環を形成してもよい。
(a-6) 下記式で示される遷移金属化合物:
【0195】
【化58】
【0196】
式中、Y1およびY3は、互いに同一であっても異なっていてもよい周期表第15族の元素であり、Y2は周期表第16族の元素である。
R21〜R28は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基またはケイ素含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
(a-7) 下記式で表される化合物と周期表第8〜10族の遷移金属原子との化合物:
【0197】
【化59】
【0198】
式中、R31〜R34は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基であり、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
(a-8) 下記式で示される遷移金属化合物:
【0199】
【化60】
【0200】
式中、Mは、周期表第3〜11族の遷移金属原子を示し、
mは、0〜3の整数であり、nは、0または1の整数であり、pは、1〜3の整数であり、qは、Mの価数を満たす数である。
【0201】
R41〜R48は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基または窒素含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
【0202】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基または窒素含有基を示し、qが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またはXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0203】
Yは、ボラータベンゼン環を架橋する基であり、炭素、ケイ素またはゲルマニウムを示す。
Aは、周期表第14、15または16族の元素を示す。
(a-9) 前記(a-4)以外のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物。
【0204】
(a-10) マグネシウム、チタン、ハロゲンを必須成分とする化合物。
次に、必要に応じて用いられる(B)成分の各化合物について説明する。
(B-1) 有機金属化合物
本発明で必要に応じて用いられる(B-1)有機金属化合物として、具体的には下記のような周期表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物がある。
(B-1a)一般式Ra mAl(ORb)nHpXq
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
(B-1b)一般式M2AlRa 4
(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)で表される1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
(B-1c)一般式RaRbM3
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである。)で表される2族または12族金属のジアルキル化合物。
【0205】
前記の(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物としては、次のような化合物を例示できる。
一般式Ra mAl(ORb)3-m
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは、好ましくは1.5≦m≦3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式Ra mAlX3-m
(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは好ましくは0<m<3である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式Ra mAlH3-m
(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは好ましくは2≦m<3である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式Ra mAl(ORb)nXq
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0206】
(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物として、より具体的には、
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチルアルミニウム、トリ3-メチルブチルアルミニウム、トリ2-メチルペンチルアルミニウム、トリ3-メチルペンチルアルミニウム、トリ4-メチルペンチルアルミニウム、トリ2-メチルヘキシルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
(i-C4H9)xAly(C5H10)z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
Ra 2.5Al(ORb)0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6-ジ-t- ブチル-4-メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどが挙げられる。
【0207】
また(B-1a)に類似する化合物も使用することができ、たとえば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物も挙げるられる。このような化合物として、具体的には、
(C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2などが挙げられる。
【0208】
前記(B-1b)に属する化合物としては、
LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4などが挙げられる。
またその他にも、(B-1)有機金属化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウムなどを使用することもできる。
【0209】
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、たとえばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組合せ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組合せなどを使用することもできる。
(B-1)有機金属化合物のなかでは、有機アルミニウム化合物が好ましい。
【0210】
上記のような(B-1)有機金属化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物
本発明で必要に応じて用いられる(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0211】
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0212】
なお該アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0213】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物が挙げられる。
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
【0214】
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
【0215】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわちベンゼンに対して不溶性または難溶性であるものが好ましい。
【0216】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物の例としては、下記一般式(i)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。
【0217】
【化61】
【0218】
式中、R20は炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。
R21は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。
【0219】
前記一般式(i)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(ii)で表されるアルキルボロン酸と、
R20−B−(OH)2 ・・・ (ii)
(式中、R20は上記と同じ基を示す。)
有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、−80℃〜室温の温度で1分〜24時間反応させることにより製造できる。
【0220】
前記一般式(ii)で表されるアルキルボロン酸の具体的なものとしては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-ブロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸等が挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。
【0221】
これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物が挙げられる。
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0222】
上記のような (B-2)有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
(B-3) 遷移金属化合物 ( A ) と反応してイオン対を形成する化合物
本発明で必要に応じて用いられる遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)(以下、「イオン化イオン性化合物」という。)は、前記遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物である。従って、少なくとも前記遷移金属化合物(A)と接触させてイオン対を形成するものは、この化合物に含まれる。
このような化合物としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などが挙げられる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物もあげることができる。
【0223】
具体的には、ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、たとえば、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0224】
イオン性化合物としては、たとえば下記一般式(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0225】
【化62】
【0226】
式中、R22としては、H+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。
R23〜R26は、互いに同一でも異なっていてもよい有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。
【0227】
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0228】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0229】
R22としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0230】
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩なども挙げられる。
【0231】
トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0232】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、たとえばN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0233】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(VII )または(VIII)で表されるホウ素化合物なども挙げられる。
【0234】
【化63】
【0235】
(式中、Etはエチル基を示す。)
【0236】
【化64】
【0237】
ボラン化合物として具体的には、たとえば
デカボラン(14);
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0238】
カルボラン化合物として具体的には、たとえば
4-カルバノナボラン(14)、1,3-ジカルバノナボラン(13)、6,9-ジカルバデカボラン(14)、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3- ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウンデカボラン(13)、2,7-ジカルバウンデカボラン(13)、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート(14)、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウム7-カルバウンデカボレート(13)、トリ(n-ブチル)アンモニウム7,8-ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウム2,9-ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8- エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8- ブチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8- アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8- ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8- ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8- ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8- ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8- ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8- ジメチル-7,8- ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8- ジメチル-7,8- ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8- ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7- カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7- カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7- カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7- カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0239】
ヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素もしくは錫からなる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子からなっている。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジンン酸、ゲルマノタングストバナジンン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、これらの酸の塩、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、およびトリフェニルエチル塩等の有機塩、およびイソポリ化合物を使用できるが、この限りではない。
【0240】
ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物としては、上記の化合物の中の1種に限らず、2種以上用いることができる。
上記のような (B-3)イオン化イオン性化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0241】
本発明に係る遷移金属化合物を触媒とする場合、高い重合活性でオレフィン重合体が得られ、またその分子量は高い。例えば助触媒成分としてのメチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)とを併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示す。また助触媒成分としてトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのイオン化イオン性化合物(B-3)を用いると、良好な活性で非常に分子量の高いオレフィン重合体が得られる。
【0242】
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、前記遷移金属化合物(A)、必要に応じて(B-1)有機金属化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(B-3)イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)とともに、さらに必要に応じて後述するような担体(C)を用いることもできる。
【0243】
(C)担体
本発明で必要に応じて用いられる(C)担体は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0244】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al2O3、MgO、ZrO、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物を使用、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2−MgO、SiO2−Al2O3、SiO2−TiO2、SiO2−V2O5、SiO2−Cr2O3、SiO2−TiO2−MgOなどを使用することができる。これらのうち、SiO2および/またはAl2O3を主成分とするものが好ましい。
【0245】
なお、上記無機酸化物は、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO4)3、BaSO4、KNO3、Mg(NO3)2、Al(NO3)3、Na2O、K2O、Li2Oなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差し支ない。
【0246】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が10〜300μm、好ましくは20〜200μmであって、比表面積が50〜1000m2/g、好ましくは100〜700m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3〜3.0cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。
【0247】
無機塩化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によってを微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0248】
本発明で担体として用いられる粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、本発明で担体として用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2 型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。
【0249】
このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α−Zr(HAsO4)2・H2O、α−Zr(HPO4)2、α−Zr(KPO4)2・3H2O、α−Ti(HPO4)2、α−Ti(HAsO4)2・H2O、α−Sn(HPO4)2・H2O、γ―Zr(HPO4)2、γ−Ti(HPO4)2、γ−Ti(NH4PO4)2・H2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。
【0250】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20オングストローム以上の細孔容積が0.1cc/g以上のものが好ましく、0.3〜5cc/gのものが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20〜3×104オングストロームの範囲について測定される。
半径20オングストローム以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
【0251】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0252】
本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al13O4(OH)24]7+、[Zr4(OH)14]2+、[Fe3O(OCOCH3)6]+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。
【0253】
これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)などを加水分解して得た重合物、SiO2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物などが挙げられる。
【0254】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0255】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
【0256】
有機化合物としては、粒径が10〜300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびびそれらの変成体を例示することができる。
【0257】
本発明に係るオレフイン重合用触媒は、前記遷移金属化合物(A)、必要に応じて(B-1)有機金属化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(B-3)イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)、必要に応じて担体(C)と共に、さらに必要に応じて後述するような特定の有機化合物(D)を含むこともできる。
【0258】
(D)有機化合物成分
本発明において、(D)有機化合物成分は、必要に応じて、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物およぴスルホン酸塩等が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0259】
アルコール類およびフェノール性化合物としては、通常、R31−OHで表されるものが使用され(ここで、R31は炭素原子数1〜50の炭化水素基または炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基を示す。)、アルコール類としては、R31がハロゲン化炭化水素のものが好ましい。また、フェノール性化合物としては、水酸基のα,α’-位が炭素数1〜20の炭化水素で置換されたものが好ましい。
【0260】
カルボン酸としては、通常、R32−COOHで表されるものが使用される。R32は炭素原子数1〜50の炭化水素基または炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基を示し、特に炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基が好ましい。リン化合物としては、P−O−H結合を有するリン酸類、P−OR、P=O結合を有するホスフェート、ホスフィンオキシド化合物が好ましく使用される。
【0261】
スルホン酸塩としては、下記一般式(IX)で表されるものが使用される。
【0262】
【化65】
【0263】
式中、Mは周期表1〜14族の元素である。
R33は水素、炭素原子数1〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
Xは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜20の炭化水素基、炭素原子数が1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
mは1〜7の整数であり、nは1≦n≦7である。
【0264】
図1に、本発明に係るオレフイン重合触媒の調製工程を示す。
次に、オレフイン重合方法について説明する。
本発明に係るオレフイン重合方法は、上記の触媒の存在下にオレフインを(共)重合させることからなる。
重合の際、成分(A)を重合器に添加する方法、各成分の使用法、添加方法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
(1) 成分(A)と、(B-1)有機金属化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物および(B-3) イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の成分(B)(以下単に「成分(B)」という。)とを任意の順序で重合器に添加する方法。
(2) 成分(A)と成分(B)とを予め接触させた触媒を重合器に添加する方法。
(3) 成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒成分、およぴ成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0265】
(4)成分(A)を担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(5) 成分(A)と成分(B)とを担体(C)に担持した触媒を重合器に添加する方法。
(6) 成分(A)と成分(B)とを担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0266】
(7)成分(B)を担体(C)に担持した触媒成分、および成分(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(8) 成分(B)を担体(C)に担持した触媒成分、成分(A)、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
(9) 成分(A)を担体(C)に担持した成分、および成分(B)を担体(C)に担持した成分を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0267】
(10)成分(A)を担体(C)に担持した成分、成分(B)を担体(C)に担持した成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
(11)成分(A)、成分(B)、および有機化合物成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(12)成分(B)と成分(D)をあらかじめ接触させた成分、およぴ成分(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0268】
(13)成分(B)と成分(D)を担体(C)に担持した成分、および成分(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(14)成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒成分、および成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(15)成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒成分、および成分(B)、成分(D)を任意め順序で重合器に添加する方法。
【0269】
(16)成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒成分、およぴ成分(B)と成分(D)をあらかじめ接触させた成分を任意の順序で重合器に添加する方法。(17)成分(A)を担体(C)に担持した成分、成分(B)、および成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(18)成分(A)を担体(C)に担持した成分、および成分(B)と成分(D)をあらかじめ接触させた成分を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0270】
(19) 成分(A)と成分(B)と成分(D)を予め任意の順序で接触させた触媒成分を重合器に添加する方法。
(20)成分(A)と成分(B)と成分(D)を予め接触させた触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
(21)成分(A)と成分(B)と成分(D)を担体(C)に担持した触媒を重合器に添加する方法。
(22)成分(A)と成分(B)と成分(D)を担体(C)に担持した触媒成分、およぴ成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0271】
上記の担体(C)に成分(A)、必要に応じて成分(B)が担持された固体触媒成分はオレフインが予備重合されていてもよい。
本発明に係るオレフインの重合方法では、上記のようなオレフイン重合触媒の存在下に、オレフインを重合または共重合することによりオレフイン重合体を得る。
本発明では、重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。
【0272】
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロへキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、オレフイン自身を溶媒として用いることもできる。
【0273】
上記のようなオレフイン重合用触媒を用いて、オレフインの重合を行うに際して、成分(A)は、反応容積1リットル当り、通常10-12〜10-2モル、好ましくは10-10〜10-3モルとなるような量で用いられる。本発明では、成分(A)を、比較的薄い濃度で用いた場合であっても、高い重合活性でオレフインを重合することができる。
【0274】
また、成分(B)を必要に応じて用いる場合、成分(B-1)は、成分(B-1)と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-1)/M〕が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となるような量で用いられる。成分(B-2)は、成分(B-2)中のアルミニウム原子と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-2)/M〕が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となるような量で用いられる。
成分(B-3)は、成分(B-3)と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-3)/M〕が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
【0275】
成分(D)は、成分(B)に対して、成分(B-1)の場合、モル比〔(D)/(B-1)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で、成分(B-2)の場合、成分(D)と成分(B-2)中のアルミニウム原子とのモル比〔(D)/(B-2)〕が通常0.001〜2、好ましくは0.005〜1となるような量で、成分(B-3)の場合、モル比〔(D)/(B-3)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で用いられる。
【0276】
また、このようなオレフィン重合触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常、−50〜200℃、好ましくは0〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常、常圧〜100kg/cm2、好ましくは常圧〜50kg/cm2の条件であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0277】
得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。
さらに、使用する成分(B)の違いにより調節することもできる。
【0278】
このようなオレフィン重合触媒により重合することができるオレフィンとしては、炭素原子数が2〜20のα−オレフィン、たとえばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン;
炭素原子数が3〜20の環状オレフィン、たとえばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン;
極性モノマー、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸などのα,β−不飽和カルボン酸、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸 tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステルなどの不飽和グリシジルエステル、塩化ビニル、フッ化ビニル、フッ化アリルなどのハロゲン化オレフィンなどが挙げられる。
【0279】
さらにビニルシクロヘキサン、ジエンまたはポリエンなどを用いることもできる。
このジエンまたはポリエンとしては、炭素原子数4〜30、好ましくは4〜20で二個以上の二重結合を有する環状又は鎖状の化合物である。具体的には、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,3- ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン;
7-メチル-1,6-オクタジエン、4−エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン。
さらに芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m−エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノもしくはポリアルキルスチレン;
メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどの官能基含有スチレン誘導体;および
3-フェニルプロピレン、4-フェニルプロピレン、α-メチルステレンなどが挙げられる。
【0280】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、高い重合活性を示し、また分子量分布の狭い重合体を得ることができる。さらに、2種以上のオレフィンを共重合したときに、組成分布が狭いオレフィン共重合体を得ることができる。
【0281】
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、α−オレフィンと共役ジエンとの共重合に用いることもできる。
ここで用いられるα−オレフィンとしては、上記と同様の炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが挙げられる。なかでもエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンが好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。これらのα−オレフィンは、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0282】
また共役ジエンとしては、たとえば1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエンなどの炭素原子数が4〜30、好ましくは4〜20の脂肪族共役ジエンが挙げられる。
これらの共役ジエンは、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0283】
また、本発明ではα−オレフィンと極性モノマーを共重合させることもできる。用いられる極性モノマーとしては、前記したものと同様のものが挙げられる。本発明では、さらに、α−オレフィンと非共役ジエンまたはポリエンを共重合させることも出来る。用いられる非共役ジエンまたはポリエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン等を挙げることができる。
【0284】
次に、遷移金属化合物の製造方法について説明する。
遷移金属化合物の製造方法
本発明に係る遷移金属化合物は、特に限定されることなく、配位子を形成する化合物(配位子前駆体)と金属化合物とを反応させることにより合成することができ、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0285】
用いられる配位子前駆体は、例えば、前記式(a)〜(d)の化合物であり、o-位に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を導入したアシルベンゼン類化合物と、アニリン類化合物もしくはアミン類化合物とを反応させ、イミン部を還元もしくはN-アルキル化等の付加反応を行うことにより得られる。たとえばAが酸素原子の場合の具体的な配位子前駆体の合成法は、以下のようになる。
【0286】
(1)サリチルアルデヒド類化合物またはo-ホルミルアニリン化合物と、1級アミン類もしくは窒素部が無置換のアニリン類とを溶媒に溶解または直接混合し、室温から還流条件で1〜48時間程度反応させることで対応するイミン化合物が生成する。ここで用いられる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール溶媒やトルエン等の炭化水素溶媒を用いることができる。この時、蟻酸、酢酸、トルエンスルホン酸等の酸触媒を用いてもよい。反応中、ディーンシュタークを用いて系中の水を除くことは反応進行に効果的である。脱水剤としてモレキュラーシーブ、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム等を用いることもできる。
【0287】
ここで得られたイミン化合物を白金等の触媒存在下水素添加するか、リチウムアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウム等の水素化剤を用いて水素添加することで前述の(b)または(c)で、Dが−C(R7 )(R8 )−である化合物が得られ、またイミン部を、例えばアルキルリチウムやGrignard試薬でイミン部のアルキル化等の付加反応をすることで前述の化合物(a)または(d)において、Dが−C(R7 )(R8 )−である化合物が得られる。
【0288】
(2)Si含有アミン化合物を合成する場合は、例えばフェノール類またはアニリン類のオルトシリル化反応により得られた、Siのo-位に酸素、硫黄、または窒素含有置換基を持つフェニル基を有するハロゲン化シラン化合物と、アミン類もしくはアニリン類を上記と同様に反応させ、次いで上記と同様にイミン部を水素添加することで前述の(b)または(c)で、Dが−Si(R9 )(R10)−である化合物が得られ、またイミン部をアルキル化等の付加反応をすることで前述の化合物(a)または(d)において、Dが−Si(R9 )(R10)−である化合物が得られる。
【0289】
(3)またリン含有アミン化合物を合成する場合は、例えばフェノール類またはアニリン類のオルト位をオキシリン化またはリン化することにより得られた、POまたはPのo-位に酸素、硫黄、または窒素含有置換基を持つフェニル基を導入したオキシハロゲン化リン化合物と、アミン類もしくはアニリン類を上記と同様に反応させ、次いで上記と同様にイミン部を水素添加することで前述の(b)または(c)で、Dが−P(O)(R11)−または−P(R12)−である化合物が得られ、またイミン部をアルキル化等の付加反応をすることで前述の化合物(a)または(d)において、Dが−P(O)(R11)−または−P(R12)−である化合物が得られる。
【0290】
(4)SO含有アミン化合物を合成する場合は、例えばフェノール類またはアニリン類のオルトチオニル化により得られた、SOのo-位に酸素、硫黄、または窒素含有置換基を持つフェニル基を導入したハロゲン化チオニル化合物と、アミン類もしくはアニリン類を上記と同様に反応させ、次いで上記と同様にイミン部を水素添加することで前述の(b)または(c)で、Dが−SO−である化合物が得られ、またイミン部をアルキル化等の付加反応をすることで前述の化合物(a)または(d)において、Dが−SO−である化合物が得られる。
【0291】
(5)S含有アミン化合物を合成する場合は、例えばフェノール類またはアニリン類のオルト位にハロゲン化硫黄基を有する化合物と、アミン類もしくはアニリン類を上記と同様に反応させ、次いで上記と同様にイミン部を水素添加することで前述の(b)または(c)で、Dが−S−である化合物が得られ、またイミン部をアルキル化等の付加反応をすることで前述の化合物(a)または(d)において、Dが−S−である化合物が得られる。
【0292】
(6)上記(1)〜(5)で得られた(b)または(c)を用い、これとさらに、ホルミル基やケトン基を有する化合物とのイミノ化反応を行うことで(a)または(d)においてZがNR17である化合物を合成することができる。
【0293】
配位子前駆体の合成ルートの一例を以下に示す。
【0294】
【化66】
【0295】
次に、こうして得られた配位子前駆体を金属化合物(例えば、前述のMXkで表される化合物)と反応させることで対応する遷移金属化合物を合成することができる。例えば(a)をアニオン化してMXkと反応させることで、遷移金属化合物(I)が得られる。また、(b)をアニオン化してMXkと反応させることで、遷移金属化合物(II)が得られる。(c)をジアニオン化してMXkと反応させることで、遷移金属化合物(III)が得られる。(d)をMXkと反応させることで、遷移金属化合物(IV)が得られる。配位子の数、すなわち式(I)ないし(IV)でいうmは、反応させる配位子とMXkの比率を変えることで調節することができる。
【0296】
具体的には、合成した配位子を溶媒に溶解し、必要に応じて塩基と接触させて塩を調製した後、金属ハロゲン化物、金属アルキル化物等の金属化合物と低温下で混合し、−78℃から室温、もしくは還流条件下で、約1〜48時間攪拌する。溶媒としては、このような反応に普通のものを使用できるが、なかでもエーテル、THF等の極性溶媒、トルエン等の炭化水素溶媒などが好ましく使用される。また、塩を調製する際に使用する塩基としては、n-ブチルリチウム等のリチウム塩、水素化ナトリウム等のナトリウム塩等の金属塩や、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基が好ましいが、この限りではない。反応する配位子の数は、遷移金属M含有化合物と配位子との仕込み比を変えることにより調整することが出来る。また、複数の種類の配位子が配位する遷移金属化合物を合成するには、例えば前記式(a)〜(d)の化合物のうち2種類以上を溶媒に溶解したものを用いて反応を行ってもよいし、或いは反応途中で異なる種類の化合物を逐次的に加えてもよい。各化合物の仕込み比を変えることで、対応する配位子の割合を調整することができる。
【0297】
化合物の性質によっては、塩調製を経由せず、配位子前駆体と金属化合物とを直接反応させることで、対応する遷移金属化合物を合成することもできる。たとえば、前記式(a)〜(c)の化合物と遷移金属ハロゲン化物と反応させて調製する。また、(d)の化合物を遷移金属ハロゲン化物と反応させて調製する。
【0298】
さらに、合成した遷移金属化合物中の金属Mを、常法により別の遷移金属と交換することも可能である。また、例えばR1〜R17の何れかがHである場合には、合成の任意の段階において、H以外の置換基を導入することができる。
また、イミン含有金属錯体を還元することで対応するアミン含有金属錯体を合成することもできる。
【0299】
【発明の効果】
本発明により、高い重合活性を有するオレフィン重合用触媒が提供される。さらに、本発明に係るオレフィンの重合方法によれば、高い重合活性でオレフィン(共)重合体を製造できる。
【0300】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0301】
合成実施例で得られた化合物の構造は、270MHz1H−NMR(日本電子GSH−270型)、FT−IR(SHIMAZUFTIR−8200D型)、FD−質量分析(日本電子SX−102A型)、金属含有量分析(乾式灰化・希硝酸溶解後ICP法により分析、機器:SHIMAZUICPS−8000型)、炭素、水素、窒素含有量分析(ヘラウス社CHNO型)等を用いて決定した。また、極限粘度[η]は、135℃デカリン中で測定した。
【0302】
以下に本発明に係る遷移金属化合物の具体的な合成例を示すとともに、オレフィン重合の具体的な実施例を示す。
(合成例1)
<配位子(L1)の合成>
エタノール中、室温で3-t-ブチルサリチルアルデヒドとアニリンを作用させることで対応するイミン体が得られた。(収率95%)
次に、窒素雰囲気下、このイミン体0.11g(4.0mmol)のTHF15ml溶液に、n-Bu2SnH2 0.47g(2.0mmol)とn-Bu2SnCl2 0.63g(2.0mmol)の混合液を室温で一括添加し、そのまま20分撹拌した。これにヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)0.70ml(4.0mmol)とヨウ化メチル0.25ml(4.0mmol)を添加し、60℃で3時間撹拌した。
この反応液をメタノールでクエンチ後、シリカゲルカラムで精製することで、下記式に示す配位子(L1)を0.74g得た。(収率69%)
【0303】
【化67】
【0304】
FD-質量分析:(M+)269
1H-NMR(CDCl3): 1.42(s,9H) 2.76(s,3H) 4.33(s,2H) 6.75-7.40(m,8H) 11.80(s,1H)
<化合物(A-1)の合成>
充分に乾燥、アルゴン置換した100mlの反応器に、化合物L1;0.40g(1.50mmol)とジエチルエーテル10mlを仕込み、−78℃に冷却し攪拌した。これにn-ブチルリチウム0.98ml(1.60mmol/ml-n-ヘキサン溶液、1.58mmol)を5分かけて滴下し、その後ゆっくりと室温まで昇温し、室温で4時間攪拌を続け、リチウム塩溶液を調製した。この溶液を−78℃に冷却し、四塩化チタン溶液1.50ml(0.5mmol/ml-ヘプタン溶液、0.75mmol)を徐々に滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで昇温しながら攪拌を続けた。さらに室温で4時間攪拌した後、反応液を減圧濃縮し、析出した固体を塩化メチレン20mlに溶解し、不溶物を除去した。得られたろ液を減圧濃縮し、析出した固体をジエチルエーテルとヘキサンの混合溶液で洗浄、さらにヘキサンでリスラリー洗浄し、これを減圧乾燥させることにより下記式で示される茶褐色粉末の化合物(A−1)を0.06g(収率12%)得た。
【0305】
【化68】
【0306】
元素分析 : Ti;7.4%(7.3%) …( )内は計算値
1H-NMR(CDCl3): 1.46(s,18H) 3.24(s,6H) 4.55(brs,4H) 6.50-6.80,7.25-7.70(m,16H)
(合成例2)
<化合物(B-1)の合成>
充分にアルゴン置換した100mlの反応器に上記で得られた化合物L1;0.56g(2.1mmol)をジエチルエーテル15mlに溶解し、−78℃に冷却し撹拌した。これにn−ブチルリチウム1.36ml(n-ヘキサン溶液、1.60N、2.17mmol)を5分かけて滴下し、その後ゆっくりと室温まで昇温した。室温で4時間撹拌後、−78℃に冷却したZrCl4・2THF錯体0.39g(1.03mmol)のTHF15ml溶液に徐々に添加した。添加後、ゆっくりと室温まで昇温し、さらに加熱環流を4時間行った。この反応液を減圧濃縮し、析出した固体を塩化メチレン20mlで洗浄し、不溶物を除去した。得られた塩化メチレン溶液を減圧濃縮し、析出した固体を塩化メチレン・ヘキサン混合液で再沈し、さらにヘキサンでリスラリー洗浄後、減圧乾燥させることにより下記式で示される黄色の粉末の化合物(B−1)を0.36g(収率18%)得た。
【0307】
【化69】
【0308】
元素分析 : Zr;13.1%(13.0%) …( )内は計算値
1H-NMR(CDCl3): 1.42(s,18H) 3.75(s,6H) 4.45(brs,4H) 6.40-7.00,7.10-7.70(m,16H)
(合成例3)
<配位子(L2)の合成>
エタノール中、室温で3-t-ブチルサリチルアルデヒドとアニリンを作用させることで対応するイミン体を得た。次に、窒素雰囲気下室温で、このイミン体2.02g(8.0mmol)のメタノール20ml溶液に、NaBH4 0.66g(16.0mmol)のメタノール10ml溶液を徐々に添加し、そのまま30分撹拌した。これを氷水でクエンチし、シリカゲルカラムで精製することにより、下記式の白色結晶の化合物(L2)を2.01g得た。(収率99%)
【0309】
【化70】
【0310】
FD-質量分析:(M+)255
1H-NMR(CDCl3): 1.42(s,9H) 4.13(s,2H) 6.75-7.30(m,8H)
<化合物(A-2)の合成>
上記で合成したL2を用い、合成例1と同様の条件でオレンジ色粉末の下記式化合物(A-2)を合成した。(収率7%)
【0311】
【化71】
【0312】
FD-質量分析 : (M+) 626
元素分析 : Ti;7.8%(7.6%) …( )内は計算値
(合成例4)
<化合物(B-2)の合成>
合成例3で合成したL2を用い、合成例2と同様の条件で黄色粉末の下記式化合物(B−2)を合成した。(収率10%)
【0313】
【化72】
【0314】
FD-質量分析 : (M+) 669
元素分析 : Zr;13.3%(13.6%) …( )内は計算値
(合成例5)
<化合物(A-3)の合成>
充分に乾燥、アルゴン置換した100mlの反応器に、合成例3で合成した化合物L2;0.38g(1.50mmol)とジエチルエーテル10mlを仕込み、−78℃に冷却し、攪拌した。これにn-ブチルリチウム1.92ml(1.60mmol/ml-n-ヘキサン溶液、3.08mmol)を5分かけて滴下し、その後ゆっくりと室温まで昇温し、室温で4時間攪拌を続け、リチウム塩溶液を調製した。この溶液を−78℃に冷却し、四塩化チタン溶液3.0ml(0.5mmol/ml-ヘプタン溶液、1.50mmol)を徐々に滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで昇温しながら攪拌を続けた。さらに室温で4時間攪拌した後、反応液を減圧濃縮し、析出した固体を塩化メチレン20mlに溶解し、不溶物を除去した。得られたろ液を減圧濃縮し、析出した固体をジエチルエーテルとヘキサンの混合溶液で洗浄、さらにヘキサンでリスラリー洗浄し、これを減圧乾燥させることにより下記式で示されるオレンジ色粉末の化合物(A−3)を0.47g(収率84%)得た。
【0315】
【化73】
【0316】
FD-質量分析:(M+)372
1H-NMR(CDCl3): 1.43(s.9H) 4.84(brs,2H) 6.50-6.80,7.25-7.40(m,8H)
元素分析 : Ti;12.6%(12.9%) …( )内は計算値
(合成例6)
<化合物(B-3)の合成>
合成例3で合成したL2とZrCl4・2THFを用い、合成例5と同様の条件で黄色粉末の下記式化合物(B−3)を合成した。(収率10%)
【0317】
【化74】
【0318】
FD-質量分析 : (M+) 414
元素分析 : Zr;21.9%(22.0%) …( )内は計算値
(実施例1)
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、液相および気相をエチレン100リットル/hrで飽和させる。その後、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)を0.25mmol、引き続き化合物(A−1)を0.005mmol、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TrB)を0.006mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で30分反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレンを0.08g得た。
チタン1molあたりの重合活性は32kg/mol・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は32.9dl/gであった。
(実施例2)
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、エチレン100リットル/hrで液相および気相をエチレンで飽和させた。その後、メチルアルミノキサン(MAO)をアルミニウム原子換算で1.1875mmol、引き続き、合成例1で得られた化合物(B-1)を0.005mmol加え重合を開始した。常圧のエチレンガス雰囲気下、25℃で30分間反応させた後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を大量のメタノールに投入してポリマーを全量析出させた後、塩酸を加えてグラスフィルターで濾過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、ポリエチレンを0.07g得た。ジルコニウム1molあたりの重合活性28kg/mol・hr、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は22.8dl/gであった。
(実施例3)
合成例2で得られた化合物(B−1)を用い、実施例1と同様の条件で重合反応を30分行った結果、ポリエチレンを0.14g得た。
ジルコニウム1molあたりの重合活性は56kg/mol・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は9.44dl/gであった。
(実施例4)
合成例3で得られた化合物(B−2)を用い、実施例1と同様の条件で重合反応を30分行った結果、ポリエチレンを0.20g得た。
ジルコニウム1molあたりの重合活性は80kg/mol・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は4.20dl/gであった。
(実施例5)
合成例4で得られた化合物(A−2)を用い、実施例2と同様の条件で重合反応を30分行った結果、ポリエチレンを0.03g得た。チタン1molあたりの重合活性は12kg/mol・hrであった。
(実施例6)
合成例4で得られた化合物(A−3)を用い、実施例1と同様の条件で重合反応を30分行った結果、ポリエチレンを0.17g得た。
チタン1molあたりの重合活性は68kg/mol・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は23.2dl/gであった。
(実施例7)
合成例4で得られた化合物(A−3)を用い、実施例2と同様の条件で30分重合反応を行った結果、ポリエチレンを0.13g得た。
チタン1molあたりの重合活性は52kg/mol・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は19.0dl/gであった。
(参考例1)
合成例5で得られた化合物(B−3)を用い、実施例2と同様の条件で重合反応を30分行った結果、ポリエチレンを0.25g得た。
チタン1molあたりの重合活性は100kg/mol・hrであり、得られたポリエチレンの極限粘度[η]は2.5dl/gであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るオレフィン重合用触媒の調製工程を示す説明図である。
Claims (3)
- (A)下記式(I)で表される遷移金属化合物
mは、1〜2の整数であり、
Aは、酸素原子、イオウ原子またはセレン原子を示し、
Dは、−C(R7)(R8)−または−Si(R9)(R10)−を示し、
Zは、Nの結合基として、−R13および−R14を示し、
R1〜R4およびR7〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を示し、R13は炭化水素基を示し、R14は水素原子または炭化水素基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R7同士、R8同士、R9同士、R10同士、R13同士、R14同士は互いに同一でも異なっていてもよく、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)と、
(B) (B-1a) 一般式R a m Al ( OR b ) n H p X q
(式中、R a およびR b は、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1〜15の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物
からなることを特徴とするオレフィン重合用触媒。 - さらに担体(C)を含むことを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
- 請求項1または2に記載のオレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合または共重合させることを特徴とするオレフィンの重合方法。
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