JP3929757B2 - ディスクブレーキ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パーキングブレーキ兼用型のディスクブレーキに関する。
【0002】
【従来の技術】
パーキングブレーキ兼用型のディスクブレーキに関するものとして、例えば、特表平3−503202号公報に開示されたものがある。このディスクブレーキは、ディスクを介して両側に配置される一対のパッドと、ピストンを有底筒状のシリンダに摺動可能に嵌合させるとともにピストンの摺動によって一対のパッドをディスクに接触させるキャリパとを有している。そして、シリンダ内に配置されるとともに、該シリンダの底部から突出するオペレーティングシャフトの回転運動を直線運動に変換するボールランプ機構と、シリンダ内に配置され、ボールランプ機構の直線運動で移動するプッシュロッドと、シリンダ内においてプッシュロッドに螺合されるとともにピストンに当接し、プッシュロッドで押圧されてピストンをシリンダに対し強制的に摺動させるナット部材と、シリンダ内においてナット部材とプッシュロッドとの位置調整を行うアジャスト部と、プッシュロッドをボールランプ機構の方向に付勢するプッシュロッド付勢スプリングと、プッシュロッド付勢スプリングをプッシュロッドとの間で保持するスプリングカバーとを有している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来のディスクブレーキは、スプリングカバーがシリンダ内周面に形成された係合溝に嵌合される止め輪によって係止されることで、シリンダ内に設けられた内蔵部品をプッシュロッド付勢スプリングの付勢力によりシリンダの底部方向に付勢するようになっている。このため、シリンダの内周面に係合溝を形成する工程と、この係合溝に止め輪を止める工程と、止め輪が係合溝に正確に嵌合しているかを検査する工程とが必要となり、作業工数が増大しコストが増大してしまうという問題があった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、シリンダの内周面に止め輪を係合させることなく内蔵部品のシリンダ底部方向への付勢を行うことにより、シリンダへの係合溝の形成、係合溝への止め輪の係合および止め輪の検査等の工程を省略でき、作業工数を大幅に削減しコストを大幅に低減することができるディスクブレーキの提供を目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1記載のディスクブレーキは、ディスクを介して両側に配置される一対のパッドと、ピストンを有底筒状のシリンダに摺動可能に嵌合させるとともに前記ピストンの摺動によって前記一対のパッドをディスクに接触させるキャリパと、前記シリンダ内に配置されるとともに、該シリンダの外底部からシリンダ外へ突出して回転するとともに軸方向に移動するオペレーティングシャフトの回転運動を直線運動に変換するボールランプ機構と、前記シリンダ内に配置され、前記ボールランプ機構の直線運動で移動するプッシュロッドと、前記シリンダ内に配置され、前記プッシュロッドに螺合されるとともに前記ピストンに当接し、前記プッシュロッドで押圧されて前記ピストンを前記シリンダに対し強制的に摺動させる螺合部材と、前記シリンダ内に配置され、前記プッシュロッドを前記ボールランプ機構の方向に付勢するプッシュロッド付勢スプリングと、前記シリンダ内に配置され、前記プッシュロッド付勢スプリングを前記プッシュロッドとの間で保持するスプリングカバーと、を備えたものであって、前記ボールランプ機構は、円板部と軸部とからなる前記オペレーティングシャフトと、前記軸部を挿通させて前記シリンダの底部に当接するベース板と、前記円板部と前記ベース板との間に介装されるボールとからなり、前記ボールランプ機構、前記プッシュロッド、前記プッシュロッド付勢スプリングおよび前記スプリングカバーを一つの組立体のカートリッジとするとともに、前記シリンダ内に挿入された前記カートリッジを、前記オペレーティングシャフトを介してかつ前記オペレーティングシャフトの回転時における軸方向の移動を許容して前記シリンダの底部方向に押圧するカートリッジ付勢部材を設けてなることを特徴としている。
【0006】
このように、ボールランプ機構、プッシュロッド、プッシュロッド付勢スプリングおよびスプリングカバーを一つの組立体のカートリッジとするとともに、シリンダ内に挿入されたこのカートリッジをカートリッジ付勢部材でシリンダの底部方向に押圧する構成となっているため、シリンダの内周面に止め輪を係合させることなく内蔵部品のシリンダ底部方向への付勢を行うことができる。
【0007】
本発明の請求項2記載のディスクブレーキは、請求項1記載のものに関して、前記シリンダの底部と前記ボールランプ機構とに設けられて互いに嵌合する回止部の嵌合長が、前記オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーと前記シリンダの底部との間の前記オペレーティングシャフトの非作動時における隙間よりも大きく、かつ、該隙間が、前記オペレーティングシャフトの回転時における前記レバーの軸方向移動量の最大値より大きく設定されていることを特徴としている。
【0008】
このように、シリンダの底部とボールランプ機構とに設けられて互いに嵌合する回止部の嵌合長が、オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーとシリンダの底部との間のオペレーティングシャフトの非作動時における隙間よりも大きく設定されているため、オペレーティングシャフトが軸方向に大きく移動しても、シリンダの底部とボールランプ機構との間の回止部が外れる前に、レバーとシリンダの底部とが当接することになり、よって、回止部が外れることを防止する。また、オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーとシリンダの底部との間のオペレーティングシャフトの非作動時における隙間が、オペレーティングシャフトの回転時におけるレバーの軸方向移動量の最大値より大きく設定されているため、レバーは、その回転時における軸方向移動によってシリンダの底部に干渉することがない。
【0009】
本発明の請求項3記載のディスクブレーキは、請求項1または2記載のものに関して、前記シリンダの底部と前記ボールランプ機構とに設けられて互いに嵌合する回止部の嵌合長が、前記カートリッジ付勢部材のセット長と密着長との差よりも大きく、かつ、該差が、前記オペレーティングシャフトの回転時における前記レバーの軸方向移動量の最大値より大きく設定されていることを特徴としている。
【0010】
このように、シリンダの底部とボールランプ機構とに設けられて互いに嵌合する回止部の嵌合長が、カートリッジ付勢部材のセット長と密着長との差よりも大きく設定されているため、オペレーティングシャフトが軸方向に大きく移動しても、シリンダの底部とボールランプ機構との間の回止部が外れる前にカートリッジ付勢部材が密着長となることになり、よって、回止部が外れることを防止する。また、カートリッジ付勢部材のセット長と密着長との差が、オペレーティングシャフトの回転時におけるレバーの軸方向移動量の最大値より大きく設定されているため、レバーは、その回転時における軸方向移動によってカートリッジ付勢部材を密着長まで縮めてしまうことがない。
【0011】
本発明の請求項4記載のディスクブレーキは、請求項1乃至3のいずれか一項記載のものに関して、前記シリンダの底部と前記ボールランプ機構とに設けられて互いに嵌合する回止部の嵌合長が、前記オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーに設けられて前記オペレーティングシャフトを覆うシャフトカバーと前記シリンダの底部との間のオペレーティングシャフトの非作動時における隙間よりも大きく、かつ、該隙間が、前記オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーの前記オペレーティングシャフトの回転時における軸方向移動量の最大値より大きく設定されていることを特徴としている。
【0012】
このように、シリンダの底部とボールランプ機構とに設けられて互いに嵌合する回止部の嵌合長が、オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーに設けられてオペレーティングシャフトを覆うシャフトカバーとシリンダの底部との間のオペレーティングシャフトの非作動時における隙間よりも大きく設定されているため、オペレーティングシャフトが軸方向に大きく移動しても、シリンダの底部とボールランプ機構との間の回止部が外れる前に、シャフトカバーとシリンダの底部とが当接することになり、よって、回止部が外れることを防止する。また、シャフトカバーとシリンダの底部との間のオペレーティングシャフトの非作動時における隙間が、オペレーティングシャフトの回転時におけるレバーの軸方向移動量の最大値より大きく設定されているため、レバーは、その回転時における軸方向移動によってシャフトカバーをシリンダの底部に干渉させることがない。また、シャフトカバーによりオペレーティングシャフトへの異物の付着を防止できる。
【0013】
本発明の請求項5記載のディスクブレーキは、請求項1乃至4のいずれか一項記載のものに関して、前記オペレーティングシャフトと該オペレーティングシャフトを挿通させる前記シリンダの挿通穴との隙間をシールするシールリングと、前記挿通穴のシリンダ内側端部との間の前記オペレーティングシャフトの非作動時における長さが、前記オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーと前記シリンダの底部との間の前記オペレーティングシャフトの非作動時における隙間よりも大きく、かつ、該隙間が、前記オペレーティングシャフトの回転時における前記レバーの軸方向移動量の最大値より大きく設定されていることを特徴としている。
【0014】
このように、オペレーティングシャフトと該オペレーティングシャフトを挿通させるシリンダの挿通穴との隙間をシールするシールリングと、挿通穴のシリンダ内側端部との間のオペレーティングシャフトの非作動時における長さが、オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーとシリンダの底部との間のオペレーティングシャフトの非作動時における隙間よりも大きく、かつ、該隙間が、オペレーティングシャフトの回転時におけるレバーの軸方向移動量の最大値より大きく設定されているため、オペレーティングシャフトが軸方向に大きく移動しても、シールリングが挿通穴よりもシリンダ内に移動するよりも前に、レバーがシリンダの底部に当接することになって、シールリングが挿通穴から外れることを防止する。
【0015】
本発明の請求項6記載のディスクブレーキは、請求項1乃至5のいずれか一項記載のものに関して、前記オペレーティングシャフトを覆う伸縮自在のブーツの一端部が、前記オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーに設けられて前記オペレーティングシャフトを覆うシャフトカバーに係止されていることを特徴としている。
【0016】
このように、オペレーティングシャフトを覆う伸縮自在のブーツの一端部が、オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーに設けられてオペレーティングシャフトを覆うシャフトカバーに係止されているため、ブーツのレバー側開口をシャフトカバーで閉塞させることが可能となる。
【0019】
本発明の請求項7記載のディスクブレーキは、請求項1乃至6のいずれか一項記載のものに関して、前記カートリッジ付勢部材は、前記シリンダの外側に設けられていることを特徴としている。
【0020】
このように、カートリッジ付勢部材は、シリンダの外側に設けられているため、カートリッジ付勢部材を容易に取り付けることができる上、取り付けのための構造も簡素にできる。
【0021】
本発明の請求項8記載のディスクブレーキは、請求項7記載のものに関して、前記カートリッジ付勢部材は、コイルスプリングであって、前記シリンダの底部と前記オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーとの間に介装されており、前記シリンダ側が小径で前記レバー側が大径のテーパ状とされていることを特徴としている。
【0022】
このように、カートリッジ付勢部材が、コイルスプリングであって、シリンダの底部とオペレーティングシャフトから側方に延出するレバーとの間に介装されており、シリンダ側が小径でレバー側が大径のテーパ状とされているため、シリンダ側でカートリッジ付勢部材を位置決めすることができ、しかも、シリンダをレバー側に突出させた場合にこの突出部とレバーとでスプリングを噛み込んでしまうことを防止できる。
【0035】
本発明の請求項9記載のディスクブレーキは、請求項1乃至8のいずれか一項記載のものに関して、前記オペレーティングシャフトにおける側方に延出するレバーの取付位置よりも前記シリンダ側に、前記オペレーティングシャフトを挿通させる前記シリンダの挿通穴よりも大径のリングが設けられていることを特徴としている。
【0036】
このように、オペレーティングシャフトにおける側方に延出するレバーの取付位置よりもシリンダ側に、オペレーティングシャフトを挿通させるシリンダの挿通穴よりも大径のリングが設けられているため、メンテナンス等のためにレバーをオペレーティングシャフトから外しても、リングがシリンダの挿通穴を通過できないことから、オペレーティングシャフトがシリンダ内に入り込んでしまうことを防止できる。
【0037】
【発明の実施の形態】
本発明の第1実施形態のディスクブレーキを図1〜図5を参照して以下に説明する。
【0038】
第1実施形態のディスクブレーキは、車両の非回転部に固定されるキャリア12と、このキャリア12にディスク13を介して両側に配設された状態で摺動可能に支持される一対のパッド14と、キャリア12にディスク13の軸線方向に沿って摺動自在となるよう支持されて一対のパッド14を両側から挟持するキャリパ17とで主に構成されている。
【0039】
キャリパ17は、一方のパッド14のディスク13に対し反対側に開口部側を対向配置させる有底筒状のシリンダ20と、このシリンダ20の半径方向における一側からディスク13の外周部を跨いで延出するディスクパス部21と、このディスクパス部21のシリンダ20に対し反対側から他方のパッド14のディスク13に対し反対側に対向するように延出する爪部22とを有するキャリパ本体23を有している。
【0040】
また、キャリパ17は、有底筒状に形成されて底部25側をパッド14側に向けてキャリパ本体23のシリンダ20のボア26に摺動自在に嵌合されるピストン28を有している。
【0041】
キャリパ17は、ピストン28をパッド14方向に突出させることによって、このピストン28と爪部22とで一対のパッド14を両側から把持することによりディスク13に接触させるものである。
【0042】
上記ピストン28は、ブレーキペダルへの踏み込み操作による通常制動時には、図示せぬマスタシリンダからシリンダ20内に導入されるブレーキ液圧でシリンダ20から爪部22の方向に突出させられることにより一対のパッド14をディスク13に押圧させて制動力を発生させるものであるが、シリンダ20内には、ピストン28をこのようなブレーキ液圧ではなく機械的に突出させることにより一対のパッド14をディスク13に押圧させて制動力を発生させるパーキングブレーキ機構30が設けられている。
【0043】
パーキングブレーキ機構30は、シリンダ20内に配置されるボールランプ機構32を有している。
【0044】
このボールランプ機構32は、軸部33とこの軸部33の一端側から半径方向外方に広がる円板部34とを有するオペレーティングシャフト35と、このオペレーティングシャフト35の軸部33を挿通させる略有孔円板状のベース板36と、オペレーティングシャフト35の円板部34とベース板36との間に介装される複数のボール37とを有している。オペレーティングシャフト35の円板部34には、さらに半径方向外側に一部突出する複数の回止凸部38が形成されている。
【0045】
シリンダ20の底部40の外面(外底部)40Aに筒状部40Bが形成され、また、シリンダ20の内外を連通する孔40Cが形成されている。この孔40C内には、略円筒状の鋼材に合成樹脂等の絶縁材がコーティングされたものからなるブッシュ41が挿入されている。このブッシュ41は、電食し難く、摺動性が良く、耐久性があれば、どのような材質のものを用いても良い。
【0046】
そして、ボールランプ機構32は、シリンダ20の底部40のブッシュ41の内周面で構成される挿通穴43に、オペレーティングシャフト35の軸部33を挿通させた状態で、そのベース板36をシリンダ20の底部40の内面40Dに当接させている。
【0047】
なお、オペレーティングシャフト35の軸部33には、挿通穴43との隙間をシールするシールリング44が保持されている。
【0048】
また、シリンダ20の底部40の内面40Dおよびボールランプ機構32のベース板36には、互いに嵌合することでベース板36のシリンダ20に対する回り止めを行う回止部46が設けられている。ここで、この回止部46は、具体的には、シリンダ20の底部40に固定された軸部47と、この軸部47を挿入させるようにベース板36に形成された穴部48とで構成されている。
【0049】
ここで、ボールランプ機構32は、オペレーティングシャフト35の円板部34に設けられたボール37を支持するための溝50が円周方向にずれるにしたがって深さを徐々に異ならせており、その結果、オペレーティングシャフト35の回転運動を、オペレーティングシャフト35の軸線方向に沿った直線運動に変換する。
【0050】
オペレーティングシャフト35の円板部34の軸部33に対し反対側の中央部には、円板状の高硬度部材51が一体的に設けられている。この高硬度部材51は、オペレーティングシャフト35の高硬度部材51を除く部分よりも高硬度なものとされている。具体的には、高硬度部材51はHRC(ロックウェル硬さのCスケール)60〜70とされ、オペレーティングシャフト35の高硬度部材51を除く部分はHRC30〜40とされている。なお、オペレーティングシャフト35の高硬度部材51を除く部分は、作動時における折れ等の発生を防止するために硬度が抑えられている。
【0051】
パーキングブレーキ機構30は、ボールランプ機構32の直線運動で移動するプッシュロッド53が、シリンダ20内のボールランプ機構32よりもピストン28側に配置されている。このプッシュロッド53は、軸部54とこの軸部54の一端側から半径方向外方に広がる円板部55とを有する形状をなしており、円板部55には、さらに半径方向外側に一部突出する、プッシュロッド53の回り止めを図るための複数の回止凸部56が形成されている。また、円板部55の軸部54に対し反対側には中央に凹部57が形成されており、この凹部57には、ボール58が嵌合されている。このボール58がボールランプ機構32の高硬度部材51に当接する。
【0052】
パーキングブレーキ機構30は、シリンダ20内においてプッシュロッド53の軸部54の円板部55に対し反対側に多条ネジ60で螺合されるナット部材(螺合部材)61を有している。これにより、ボールランプ機構32のオペレーティングシャフト35の回転運動にともなう軸線方向に沿う直線運動でボール58を介してプッシュロッド53およびナット部材61が軸線方向に直線運動し、ナット部材61がピストン28に当接してこのピストン28をシリンダ20に対し強制的に軸線方向に摺動させる。
【0053】
パーキングブレーキ機構30は、シリンダ20内においてナット部材61とプッシュロッド53との位置調整を行うアジャスト部63を有している。このアジャスト部63は、ピストン28の内周側に形成された係合溝64に係合される止め輪65によってピストン28に支持されるもので、ピストン28がシリンダ20内に導入されたブレーキ液圧によって軸方向に移動する際には、停止状態にあるプッシュロッド53に対し、ナット部材61を回転させながらピストン28に追従させて軸方向に移動させる。また、アジャスト部63は、プッシュロッド53が軸線方向に直線運動する際には、ナット部材61をプッシュロッド53に対し回転させることなく、その結果、多条ネジ60によってナット部材61をプッシュロッド53と一体に直線運動させる。
【0054】
パーキングブレーキ機構30は、シリンダ20内において、ナット部材61の一部とプッシュロッド53の一部とボールランプ機構32の一部とを覆うように設けられた略段付き円筒状のスプリングカバー67と、プッシュロッド53の円板部55とスプリングカバー67のピストン28側との間に介装されたプッシュロッド付勢スプリング68とを有している。
【0055】
スプリングカバー67は、図2および図4に詳細に示すように、そのボールランプ機構32側の端部に形成された、半径方向内方にV字状に切り込まれることにより内側に突出する形状をなす複数の加締部69でボールランプ機構32のベース板36のプッシュロッド53に対し反対側に係止されている。そして、プッシュロッド付勢スプリング68は、プッシュロッド53をボールランプ機構32の方向に付勢することになり、スプリングカバー67は、プッシュロッド付勢スプリング68をプッシュロッド53との間で保持することになる。
【0056】
スプリングカバー67には、図2〜図4に示すように、このスプリングカバー67のシリンダ20に対する回り止めのためボールランプ機構32のベース板36の回止凸部38を挿入させるとともに、プッシュロッド53の回止凸部56を回り止めのため挿入させる複数の回止凹部71が設けられている。すなわち、プッシュロッド53の一部を回り止めのため挿入させるプッシュロッド側回止穴と、シリンダ20に対する回り止めのためのシリンダ側回止凹部とが、円周方向における位置を合わせることで、一つの回止凹部71とされ、このような回止凹部71が複数設けられている。
【0057】
そして、第1実施形態においては、パーキングブレーキ機構30は、シリンダ20に組み付ける前段階で、オペレーティングシャフト35およびベース板36を含むボールランプ機構32、ボール58、プッシュロッド53、プッシュロッド付勢スプリング68およびスプリングカバー67が一つの組立体のカートリッジ73とされている。
【0058】
すなわち、スプリングカバー67にプッシュロッド付勢スプリング68を挿入し、プッシュロッド53をプッシュロッド付勢スプリング68の内側に挿入して、プッシュロッド53にボールを介してボールランプ機構32を当接させる。そして、プッシュロッド付勢スプリング68を適宜縮長させた状態で、スプリングカバー67の端部を加締めて加締部69を形成することにより、ボールランプ機構32のプッシュロッド53に対し反対側にスプリングカバー67を係止させる。すると、プッシュロッド付勢スプリング68の付勢力によりプッシュロッド53およびボールランプ機構32がスプリングカバー67から抜け出る方向に付勢されるが、ボールランプ機構32がスプリングカバー67の加締部69で係止されることでこの抜けが規制され、図5に示すように、ボールランプ機構32、プッシュロッド53、ボール58、プッシュロッド付勢スプリング68およびスプリングカバー67が一つの組立体のカートリッジ73となる。
【0059】
このようなカートリッジ73が、オペレーティングシャフト35をシリンダ20の底部40の挿通穴43に挿通させつつ、シリンダ20内に挿入されることになる。そして、シリンダ20から突出するオペレーティングシャフト35には、このオペレーティングシャフト35を覆うように可撓性のゴムブーツ(ブーツ)74が被せられる。また、この状態から、シリンダ20の外側において、オペレーティングシャフト35を内側に挿入させるようにカートリッジ付勢スプリング(カートリッジ付勢部材)75を配置して、オペレーティングシャフト35から側方に延出するようにレバー76をオペレーティングシャフト35に取り付け、ナット77をオペレーティングシャフト35に螺合させる。
【0060】
この状態で、カートリッジ付勢スプリング75は、シリンダ20の底部40とオペレーティングシャフト35から側方に延出するレバー76との間に介装されており、レバー76をシリンダ20から離れる方向に付勢し、その結果、シリンダ20内に挿入されたカートリッジ73をシリンダ20の底部40の方向に押圧することになる。
【0061】
なお、これらゴムブーツ74、レバー76、ナット77およびカートリッジ付勢スプリング75も、パーキングブレーキ機構30の一部を構成する。
【0062】
また、ピストン28にナット部材61を嵌合させるとともに、アジャスト部63を止め輪65でピストン28に係止させることで、ピストン28、ナット部材61およびアジャスト部63を別の組立体としておき、ナット部材61にプッシュロッド53を螺合させることで、キャリパ17が組み立てられる。
【0063】
そして、第1実施形態においては、シリンダ20の底部40とボールランプ機構32とに設けられて互いに嵌合する回止部46の嵌合長Aが、オペレーティングシャフト35から側方に延出するレバー76とシリンダ20の底部40との間のオペレーティングシャフト35の非作動時(レバー76に外部から入力がないパーキングブレーキの非操作時)における隙間Bよりも大きく、かつ、この隙間Bが、オペレーティングシャフト35の回転時におけるレバー76の軸方向移動量の最大値Cより大きく設定されている(すなわちA>B>C)。ここで、回止部46の嵌合長Aは、シリンダ20の底部40とボールランプ機構32との当接面である底部40の内面40Dからの軸部47の突出量とされている。
【0064】
また、レバー76に外部から入力がない非作動時に、オペレーティングシャフト35に保持されたシールリング44と、挿通穴43のシリンダ内側端部との間の長さLが、レバー76とシリンダ20の底部40との間のオペレーティングシャフト35の非作動時における隙間Bよりも大きく、かつ、この隙間Bが、オペレーティングシャフト35の回転時におけるレバー76の軸方向移動量の最大値Cより大きく設定されている(すなわちL>B>C)。
【0065】
さらに、スプリングカバー67の加締部69のボールランプ機構32に対する半径方向の係止長さEが、スプリングカバー67とシリンダ20との半径方向の隙間Fより大きく設定されている(すなわちE>F)。
【0066】
加えて、スプリングカバー67の加締部69の軸方向長Gが、スプリングカバー67とシリンダ20との外径差(φD−φd)より大きく設定されている(すなわちG>(φD−φd))。
【0067】
このような構成のディスクブレーキでは、図示せぬパーキングブレーキが操作されることによりレバー76が回動させられると、ボールランプ機構32のオペレーティングシャフト35がディスク13の方向に移動し、ボール58を介してプッシュロッド53をディスク13の方向に移動させる。すると、プッシュロッド53と一体にナット部材61が移動し、ピストン28をディスク13の方向に移動させて、機械的に一対のパッド14をディスク13に押し付ける。
【0068】
以上に述べた第1実施形態のディスクブレーキによれば、ボールランプ機構32、ボール58、プッシュロッド53、プッシュロッド付勢スプリング68およびスプリングカバー67を一つの組立体のカートリッジ73とするとともに、シリンダ20内に挿入されたこのカートリッジ73をカートリッジ付勢スプリング75でシリンダ20の底部40の方向に押圧する構成となっているため、シリンダ20の内周面に止め輪を係合させることなく内蔵部品の底部40の方向への付勢を行うことができる。したがって、シリンダ20の内周面への係合溝の形成、係合溝への止め輪の係合および止め輪の検査等の工程を省略でき、作業工数を大幅に削減しコストを大幅に低減することができる。
【0069】
しかも、第1実施形態のディスクブレーキによれば、ボールランプ機構32、ボール58、プッシュロッド53、プッシュロッド付勢スプリング68およびスプリングカバー67を一つの組立体のカートリッジ73としていることから、取り扱いが楽になり、市場での作業性が向上するとともに、これらの部品単品寸法を管理すればスプリング荷重、各部品の嵌合長等、シリンダ20の加工精度に影響されず安定させることができる。
【0070】
加えて、第1実施形態のディスクブレーキによれば、カートリッジ付勢スプリング75に、レバー76への入力解除時のレバー戻しのバックアップを兼ねさせることができる。
【0071】
また、第1実施形態のディスクブレーキによれば、シリンダ20の底部40とボールランプ機構32とに設けられて互いに嵌合する回止部46の嵌合長Aが、オペレーティングシャフト35から側方に延出するレバー76とシリンダ20の底部40との間のオペレーティングシャフト35の非作動時における隙間Bよりも大きく設定されているため、オペレーティングシャフト35が軸方向に大きく移動しても、シリンダ20の底部40とボールランプ機構32との間の回止部46が外れる前に、レバー76とシリンダ20の底部40とが当接することになり、よって、回止部46が外れることを防止する。また、隙間Bが、オペレーティングシャフト35の回転時におけるレバー76の軸方向移動量の最大値Cより大きく設定されているため、レバー76は、その回転時における軸方向移動によってシリンダ20の底部40に干渉することがない。したがって、信頼性が向上することになる。
【0072】
なお、これに換えて、シリンダ20の底部40とボールランプ機構32とに設けられて互いに嵌合する回止部46の嵌合長Aを、カートリッジ付勢スプリング75のセット長と密着長との差よりも大きく、かつ、この差が、オペレーティングシャフト35の回転時におけるレバー76の軸方向移動量の最大値Cより大きくなるように設定してもよい。
【0073】
このように構成しても、オペレーティングシャフト35が軸方向に大きく移動した場合に、シリンダ20の底部40とボールランプ機構32との間の回止部46が外れる前にカートリッジ付勢スプリング75が密着長となることになり、よって、回止部46が外れることを防止する。また、カートリッジ付勢スプリング75のセット長と密着長との差が、オペレーティングシャフト35の回転時におけるレバー76の軸方向移動量の最大値Cより大きく設定されているため、レバー76は、その回転時における軸方向移動によってカートリッジ付勢スプリング75を密着長まで縮めてしまうことがない。したがって、信頼性が向上することになる。しかも、カートリッジ付勢スプリング75のセット長と密着長との差を利用するため、回止部46が外れることを防止するための別途構成が不要となる。
【0074】
さらに、第1実施形態のディスクブレーキによれば、オペレーティングシャフト35とこのオペレーティングシャフト35を挿通させるシリンダ20の挿通穴43との隙間をシールするシールリング44と、挿通穴43のシリンダ内側端部との間のオペレーティングシャフト35の非作動時における長さが、オペレーティングシャフト35から側方に延出するレバー76とシリンダ20の底部40との間のオペレーティングシャフト35の非作動時における隙間よりも大きく、かつ、この隙間が、オペレーティングシャフト35の回転時におけるレバー76の軸方向移動量の最大値Cより大きく設定されているため、オペレーティングシャフト35が軸方向に大きく移動しても、シールリング44が挿通穴43よりもシリンダ20内に移動するよりも前に、レバー76がシリンダ20の底部40に当接することになって、シールリング44が挿通穴43から外れることを防止する。したがって、アジャスト部63が作動しない場合があっても液漏れを生じることがなくなる。
【0075】
なお、これに換えて、オペレーティングシャフト35と該オペレーティングシャフト35を挿通させるシリンダ20の挿通穴43との隙間をシールするシールリング44と、挿通穴43のシリンダ内側端部との間のオペレーティングシャフト35の非作動時における長さを、カートリッジ付勢スプリング75のセット長と密着長との差よりも大きく、かつ、この隙間を、オペレーティングシャフト35の回転時におけるレバー76の軸方向移動量の最大値Cより大きく設定してもよい。
【0076】
このように構成しても、オペレーティングシャフト35が軸方向に大きく移動した場合に、シールリング44が挿通穴43よりもシリンダ20内に移動するよりも前に、カートリッジ付勢スプリング75が密着長となることになって、シールリング44が挿通穴43から外れることを防止する。したがって、アジャスト部63が作動しない場合があっても液漏れを生じることがなくなる。しかも、カートリッジ付勢スプリング75のセット長と密着長との差を利用するため、シールリング44が挿通穴43から外れることを防止するための特別な構成が不要となる。
【0077】
さらに、第1実施形態のディスクブレーキによれば、ボールランプ機構32のボール58との当接部分には、高硬度部材51が一体的に設けられているため、ボールランプ機構32側がボール58によって経年的に凹んでしまうことを防止できる。すなわち、ボールランプ機構32のオペレーティングシャフト35の主要部は、加工性を考慮して、硬度が抑えられているが、ボール58と接触する部分に高硬度部材51を設けることで硬度不足による凹みを防止するのである。
【0078】
加えて、第1実施形態のディスクブレーキによれば、カートリッジ付勢スプリング75は、シリンダ20の外側に設けられているため、カートリッジ付勢スプリング75を容易に取り付けることができる上、取り付けのための構造も簡素にできる。
【0079】
その上、第1実施形態のディスクブレーキによれば、スプリングカバー67がボールランプ機構32のプッシュロッド53に対し反対側に係止されているため、スプリングカバー67で、プッシュロッド付勢スプリング68をセット状態に維持することができ、簡素な構造でカートリッジ化を図ることができる。
【0080】
さらに、第1実施形態のディスクブレーキによれば、スプリングカバー67の加締部69のボールランプ機構32に対する半径方向の係止長さが、スプリングカバー67とシリンダ20との半径方向の隙間より大きく設定されているため、シリンダ20内でスプリングカバー67とシリンダ軸心とがずれたとしても、ボールランプ機構32からスプリングカバー67が外れることを防止できる。
【0081】
その上、第1実施形態のディスクブレーキによれば、スプリングカバー67の加締部69の軸方向長が、スプリングカバー67とシリンダ20との半径方向の隙間より大きく設定されているため、経年的に加締部69が外径方向に開いてきたとしても、ボールランプ機構32からスプリングカバー67が外れることを防止できる。
【0082】
さらに、第1実施形態のディスクブレーキによれば、スプリングカバー67は、プッシュロッド53の回止凸部56を回り止めのため挿入させるプッシュロッド側回止穴と、シリンダ20に対する回り止めのためボールランプ機構32の回止凸部38を挿入させるシリンダ側回止凹部とが、円周方向における位置を合わせることにより、一つの回止凹部71とされているため、スプリングカバー67の製作が容易となる。
【0083】
加えて、第1実施形態のディスクブレーキによれば、オペレーティングシャフト35を挿通させるシリンダ20の挿通穴43を、鋼材を樹脂等の絶縁材でコーティングしたものからなるブッシュ41の内周面で形成しているため、シリンダ20のブッシュ41を除く部分とオペレーティングシャフト35との材質相違(具体的には、シリンダ20のブッシュ41を除く部分はアルミニウム合金であり、オペレーティングシャフト35は鉄鋼からなっている)による電食(二つの金属の電位差によって発生する電気化学的腐食)の発生や挿通穴の摩耗を防止することができる。
【0084】
次に、本発明の第2実施形態のディスクブレーキを図6〜図9を参照して第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
【0085】
第2実施形態では、スプリングカバー67が第1実施形態に対し相違している。
すなわち、第2実施形態のスプリングカバー67は、このスプリングカバー67のシリンダ20に対する回り止めのためボールランプ機構32のベース板36の回止凸部38を挿入させるシリンダ側回止凹部81と、プッシュロッド53の回止凸部56を回り止めのため挿入させるプッシュロッド側回止穴82とが、円周方向における位置をずらしている。
【0086】
このような第2実施形態のディスクブレーキによれば、スプリングカバー67が、プッシュロッド53の回止凸部56を回り止めのため挿入させるプッシュロッド側回止穴82と、シリンダ20に対する回り止めのためベース板36の回止凸部38を挿入させるシリンダ側回止凹部81とについて、円周方向における位置をずらしているため、スプリングカバー67の強度が向上し、耐久性を向上させることができる。
【0087】
次に、本発明の第3実施形態のディスクブレーキを図10を参照して第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
【0088】
第3実施形態では、レバー76におけるシリンダ20の側に、オペレーティングシャフト35を内側に挿通させることによりこれを覆う略有底円筒状のシャフトカバー84が底部において当接させられており、このシャフトカバー84とシリンダ20の底部40との間にカートリッジ付勢スプリング75が介装されている。
【0089】
そして、第3実施形態のディスクブレーキによれば、シリンダ20の底部40とボールランプ機構32とに設けられて互いに嵌合する回止部46の嵌合長Aが、レバー76に設けられてオペレーティングシャフト35を覆うシャフトカバー84とシリンダ20の底部40との間のオペレーティングシャフト35の非作動時における隙間B’よりも大きく設定されており、かつ、この隙間B’が、オペレーティングシャフト35から側方に延出するレバー76のオペレーティングシャフト35の回転時における軸方向移動量の最大値Cより大きく設定されている。
【0090】
このような第3実施形態のディスクブレーキによれば、シリンダ20の底部40とボールランプ機構32とに設けられて互いに嵌合する回止部46の嵌合長Aが、レバー76に設けられてオペレーティングシャフト35を覆うシャフトカバー84とシリンダ20の底部40との間のオペレーティングシャフト35の非作動時における隙間B’よりも大きく設定されているため、オペレーティングシャフト35が軸方向に大きく移動しても、シリンダ20の底部40とボールランプ機構32との間の回止部46が外れる前に、シャフトカバー84とシリンダ20の底部40とが当接することになり、よって、回止部46が外れることを防止する。また、隙間B’が、オペレーティングシャフト35の回転時におけるレバー76の軸方向移動量の最大値Cより大きく設定されているため、レバー76は、その回転時における軸方向移動によってシャフトカバー84をシリンダ20の底部40に干渉させることがない。また、シャフトカバー84によりオペレーティングシャフト35やスプリングへの異物の付着を防止できる。したがって、信頼性が向上することになる。
【0091】
次に、本発明の第4実施形態のディスクブレーキを図11を参照して第3実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。なお、第3実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
【0092】
第4実施形態では、オペレーティングシャフト35を覆う伸縮自在のゴムブーツ74の一端部が、レバー76に当接してオペレーティングシャフト35を覆うシャフトカバー84に係止されている。すなわち、シャフトカバー84には、レバー76に当接した状態でもこのレバー76に対し隙間を形成する円弧状の凹部86が形成されており、この凹部86とレバー76との間にゴムブーツ74の一端部が挟持されているのである。
【0093】
このように、オペレーティングシャフト35を覆う伸縮自在のゴムブーツ74の一端部が、レバー76に当接してオペレーティングシャフト35を覆うシャフトカバー84に係止されているため、ゴムブーツ74のレバー76側開口をシャフトカバー84で閉塞させることが可能となる。したがって、ゴムブーツ74のレバー76側開口からの異物の進入を防止することができる。
【0094】
次に、本発明の第5実施形態のディスクブレーキを図12を参照して第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
【0095】
第5実施形態では、オペレーティングシャフト35におけるレバー76の取付位置よりもシリンダ20の側に、オペレーティングシャフト35を挿通させるシリンダ20の挿通穴43よりも大径のリング88が取り付けられている。
【0096】
また、第5実施形態では、カートリッジ付勢スプリング75は、シリンダ20の側が小径でレバー76の側が大径のテーパ状とされている。
【0097】
このような第5実施形態のディスクブレーキによれば、オペレーティングシャフト35におけるレバー76の取付位置よりもシリンダ20の側に、シリンダ20の挿通穴43よりも大径のリング88が設けられているため、メンテナンス等のためにレバー76をオペレーティングシャフト35から外しても、リング88がシリンダ20の挿通穴43を通過できないことから、オペレーティングシャフト35がシリンダ20内に入り込んでしまうことを防止できる。
【0098】
また、カートリッジ付勢スプリング75は、シリンダ20の側が小径でレバー76側が大径のテーパ状とされているため、シリンダ20の側でカートリッジ付勢スプリング75を位置決めすることができ、しかも、シリンダ20をレバー76側に突出させた場合にこの突出部とレバー76とでスプリングを噛み込んでしまうことを防止できる。したがって、レバー76のストローク不足や異音が発生するのを防止できる。
【0099】
次に、本発明の第6実施形態のディスクブレーキを図13を参照して第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
【0100】
第6実施形態では、スプリングカバー67のシリンダ20の底部40側の端部に、複数の凸部90が突出形成されており、図示は略すが、シリンダ20の底部40には、これら凸部90をそれぞれ嵌合させることによりスプリングカバー67の回り止めを行うシリンダ側回止凹部が形成されている。
【0101】
このような第6実施形態のディスクブレーキによれば、スプリングカバー67の凸部90をシリンダ20のシリンダ側回止凹部に嵌合させることにより、カートリッジ73のシリンダ20に対する回り止めを行うため、カートリッジ73のシリンダ20に対する回り止めのために別途の部材を設ける必要がなくなる。したがって、部品点数およびコストを低減できる。
【0102】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の請求項1記載のディスクブレーキによれば、ボールランプ機構、プッシュロッド、プッシュロッド付勢スプリングおよびスプリングカバーを一つの組立体のカートリッジとするとともに、シリンダ内に挿入されたカートリッジをカートリッジ付勢部材でシリンダの底部方向に押圧する構成となっているため、シリンダの内周面に止め輪を係合させることなく内蔵部品のシリンダ底部方向への付勢を行うことができる。したがって、シリンダへの係合溝の形成、係合溝への止め輪の係合および止め輪の検査等の工程を省略でき、作業工数を大幅に削減しコストを大幅に低減することができる。
【0103】
本発明の請求項2記載のディスクブレーキによれば、シリンダの底部とボールランプ機構とに設けられて互いに嵌合する回止部の嵌合長が、オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーとシリンダの底部との間のオペレーティングシャフトの非作動時における隙間よりも大きく設定されているため、オペレーティングシャフトが軸方向に大きく移動しても、シリンダの底部とボールランプ機構との間の回止部が外れる前に、レバーとシリンダの底部とが当接することになり、よって、回止部が外れることを防止する。また、オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーとシリンダの底部との間のオペレーティングシャフトの非作動時における隙間が、オペレーティングシャフトの回転時におけるレバーの軸方向移動量の最大値より大きく設定されているため、レバーは、その回転時における軸方向移動によってシリンダの底部に干渉することがない。したがって、信頼性が向上することになる。
【0104】
本発明の請求項3記載のディスクブレーキによれば、シリンダの底部とボールランプ機構とに設けられて互いに嵌合する回止部の嵌合長が、カートリッジ付勢部材のセット長と密着長との差よりも大きく設定されているため、オペレーティングシャフトが軸方向に大きく移動しても、シリンダの底部とボールランプ機構との間の回止部が外れる前にカートリッジ付勢部材が密着長となることになり、よって、回止部が外れることを防止する。また、カートリッジ付勢部材のセット長と密着長との差が、オペレーティングシャフトの回転時におけるレバーの軸方向移動量の最大値より大きく設定されているため、レバーは、その回転時における軸方向移動によってカートリッジ付勢部材を密着長まで縮めてしまうことがない。したがって、信頼性が向上することになる。しかも、カートリッジ付勢部材のセット長と密着長との差を利用するため、回止部が外れることを防止するための別途構成が不要となる。
【0105】
本発明の請求項4記載のディスクブレーキによれば、シリンダの底部とボールランプ機構とに設けられて互いに嵌合する回止部の嵌合長が、オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーに設けられてオペレーティングシャフトを覆うシャフトカバーとシリンダの底部との間のオペレーティングシャフトの非作動時における隙間よりも大きく設定されているため、オペレーティングシャフトが軸方向に大きく移動しても、シリンダの底部とボールランプ機構との間の回止部が外れる前に、シャフトカバーとシリンダの底部とが当接することになり、よって、回止部が外れることを防止する。また、シャフトカバーとシリンダの底部との間のオペレーティングシャフトの非作動時における隙間が、オペレーティングシャフトの回転時におけるレバーの軸方向移動量の最大値より大きく設定されているため、レバーは、その回転時における軸方向移動によってシリンダの底部にシャフトカバーを干渉させることがない。また、シャフトカバーによりオペレーティングシャフトへの異物の付着を防止できる。したがって、信頼性が向上することになる。
【0106】
本発明の請求項5記載のディスクブレーキによれば、オペレーティングシャフトと該オペレーティングシャフトを挿通させるシリンダの挿通穴との隙間をシールするシールリングと、挿通穴のシリンダ内側端部との間のオペレーティングシャフトの非作動時における長さが、オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーとシリンダの底部との間のオペレーティングシャフトの非作動時における隙間よりも大きく、かつ、該隙間が、オペレーティングシャフトの回転時におけるレバーの軸方向移動量の最大値より大きく設定されているため、オペレーティングシャフトが軸方向に大きく移動しても、シールリングが挿通穴よりもシリンダ内に移動するよりも前に、レバーがシリンダの底部に当接することになって、シールリングが挿通穴から外れることを防止する。したがって、アジャスト部が作動しない場合があっても液漏れを生じることがなくなる。
【0107】
本発明の請求項6記載のディスクブレーキによれば、オペレーティングシャフトを覆う伸縮自在のブーツの一端部が、オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーに設けられてオペレーティングシャフトを覆うシャフトカバーに係止されているため、ブーツのレバー側開口をシャフトカバーで閉塞させることが可能となる。したがって、ブーツのレバー側開口からの異物の進入を防止することができる。
【0109】
本発明の請求項7記載のディスクブレーキによれば、カートリッジ付勢部材は、シリンダの外側に設けられているため、カートリッジ付勢部材を容易に取り付けることができる上、取り付けのための構造も簡素にできる。
【0110】
本発明の請求項8記載のディスクブレーキによれば、カートリッジ付勢部材が、コイルスプリングであって、シリンダの底部とオペレーティングシャフトから側方に延出するレバーとの間に介装されており、シリンダ側が小径でレバー側が大径のテーパ状とされているため、シリンダ側でカートリッジ付勢部材を位置決めすることができ、しかも、シリンダをレバー側に突出させた場合にこの突出部とレバーとでスプリングを噛み込んでしまうことを防止できる。したがって、レバーのストローク不足や異音が発生するのを防止できる。
【0117】
本発明の請求項9記載のディスクブレーキによれば、オペレーティングシャフトにおける側方に延出するレバーの取付位置よりもシリンダ側に、オペレーティングシャフトを挿通させるシリンダの挿通穴よりも大径のリングが設けられているため、メンテナンス等のためにレバーをオペレーティングシャフトから外しても、リングがシリンダの挿通穴を通過できないことから、オペレーティングシャフトがシリンダ内に入り込んでしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態のディスクブレーキを示す主断面図である。
【図2】 本発明の第1実施形態のディスクブレーキのスプリングカバーを示す斜視図である。
【図3】 本発明の第1実施形態のディスクブレーキを示す図1におけるZ1−Z1線に沿う断面図である。
【図4】 本発明の第1実施形態のディスクブレーキを示す図1におけるY1−Y1線に沿う断面図である。
【図5】 本発明の第1実施形態のディスクブレーキのボールランプ機構、プッシュロッド、ボール、プッシュロッド付勢スプリングおよびスプリングカバーからなる組立体のカートリッジを示す断面図である。
【図6】 本発明の第2実施形態のディスクブレーキを示す主断面図である。
【図7】 本発明の第2実施形態のディスクブレーキのスプリングカバーを示す斜視図である。
【図8】 本発明の第2実施形態のディスクブレーキを示す図6におけるZ2−Z2線に沿う断面図である。
【図9】 本発明の第2実施形態のディスクブレーキを示す図1におけるY2−Y2線に沿う断面図である。
【図10】 本発明の第3実施形態のディスクブレーキを示す主断面図である。
【図11】 本発明の第4実施形態のディスクブレーキを示す主断面図である。
【図12】 本発明の第5実施形態のディスクブレーキを示す主断面図である。
【図13】 本発明の第6実施形態のディスクブレーキのスプリングカバーを示す斜視図である。
【符号の説明】
13 ディスク
14 パッド
17 キャリパ
20 シリンダ
28 ピストン
32 ボールランプ機構
35 オペレーティングシャフト
40 底部
43 挿通穴
44 シールリング
46 回止部
51 高硬度部材
53 プッシュロッド
58 ボール
61 ナット部材(螺合部材)
63 アジャスト部
67 スプリングカバー
68 プッシュロッド付勢スプリング
69 加締部
71 回止凹部(プッシュロッド側回止穴,シリンダ側回止凹部)
73 カートリッジ
74 ゴムブーツ(ブーツ)
75 カートリッジ付勢スプリング(カートリッジ付勢部材)
76 レバー
82 プッシュロッド側回止穴
81 シリンダ側回止凹部
84 シャフトカバー
88 リング
90 凸部
Claims (9)
- ディスクを介して両側に配置される一対のパッドと、
ピストンを有底筒状のシリンダに摺動可能に嵌合させるとともに前記ピストンの摺動によって前記一対のパッドをディスクに接触させるキャリパと、
前記シリンダ内に配置されるとともに、該シリンダの外底部からシリンダ外へ突出して回転するとともに軸方向に移動するオペレーティングシャフトの回転運動を直線運動に変換するボールランプ機構と、
前記シリンダ内に配置され、前記ボールランプ機構の直線運動で移動するプッシュロッドと、
前記シリンダ内に配置され、前記プッシュロッドに螺合されるとともに前記ピストンに当接し、前記プッシュロッドで押圧されて前記ピストンを前記シリンダに対し強制的に摺動させる螺合部材と、
前記シリンダ内に配置され、前記プッシュロッドを前記ボールランプ機構の方向に付勢するプッシュロッド付勢スプリングと、
前記シリンダ内に配置され、前記プッシュロッド付勢スプリングを前記プッシュロッドとの間で保持するスプリングカバーと、
を備えたディスクブレーキにおいて、
前記ボールランプ機構は、円板部と軸部とからなる前記オペレーティングシャフトと、前記軸部を挿通させて前記シリンダの底部に当接するベース板と、前記円板部と前記ベース板との間に介装されるボールとからなり、
前記ボールランプ機構、前記プッシュロッド、前記プッシュロッド付勢スプリングおよび前記スプリングカバーを一つの組立体のカートリッジとするとともに、前記シリンダ内に挿入された前記カートリッジを、前記オペレーティングシャフトを介してかつ前記オペレーティングシャフトの回転時における軸方向の移動を許容して前記シリンダの底部方向に押圧するカートリッジ付勢部材を設けてなることを特徴とするディスクブレーキ。 - 前記シリンダの底部と前記ボールランプ機構とに設けられて互いに嵌合する回止部の嵌合長が、前記オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーと前記シリンダの底部との間の前記オペレーティングシャフトの非作動時における隙間よりも大きく、かつ、該隙間が、前記オペレーティングシャフトの回転時における前記レバーの軸方向移動量の最大値より大きく設定されていることを特徴とする請求項1記載のディスクブレーキ。
- 前記シリンダの底部と前記ボールランプ機構とに設けられて互いに嵌合する回止部の嵌合長が、前記カートリッジ付勢部材のセット長と密着長との差よりも大きく、かつ、該差が、前記オペレーティングシャフトの回転時における前記レバーの軸方向移動量の最大値より大きく設定されていることを特徴とする請求項1または2記載のディスクブレーキ。
- 前記シリンダの底部と前記ボールランプ機構とに設けられて互いに嵌合する回止部の嵌合長が、前記オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーに設けられて前記オペレーティングシャフトを覆うシャフトカバーと前記シリンダの底部との間の前記オペレーティングシャフトの非作動時における隙間よりも大きく、かつ、該隙間が、前記オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーの前記オペレーティングシャフトの回転時における軸方向移動量の最大値より大きく設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載のディスクブレーキ。
- 前記オペレーティングシャフトと該オペレーティングシャフトを挿通させる前記シリンダの挿通穴との隙間をシールするシールリングと、前記挿通穴のシリンダ内側端部との間の前記オペレーティングシャフトの非作動時における長さが、前記オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーと前記シリンダの底部との間の前記オペレーティングシャフトの非作動時における隙間よりも大きく、かつ、該隙間が、前記オペレーティングシャフトの回転時における前記レバーの軸方向移動量の最大値より大きく設定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載のディスクブレーキ。
- 前記オペレーティングシャフトを覆う伸縮自在のブーツの一端部が、前記オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーに設けられて前記オペレーティングシャフトを覆うシャフトカバーに係止されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載のディスクブレーキ。
- 前記カートリッジ付勢部材は、前記シリンダの外側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載のディスクブレーキ。
- 前記カートリッジ付勢部材は、コイルスプリングであって、前記シリンダの底部と前記オペレーティングシャフトから側方に延出するレバーとの間に介装されており、前記シリンダ側が小径で前記レバー側が大径のテーパ状とされていることを特徴とする請求項7記載のディスクブレーキ。
- 前記オペレーティングシャフトにおける側方に延出するレバーの取付位置よりも前記シリンダ側に、前記オペレーティングシャフトを挿通させる前記シリンダの挿通穴よりも大径のリングが設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項記載のディスクブレーキ。
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