JP3923901B2 - 剥皮被害防護ネット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹木が熊や鹿などの鳥獣により剥皮されるのを防護するために使用される剥皮被害防護ネットに関する。
【0002】
【従来の技術】
周知の如く、林業では、近年、熊や鹿などの鳥獣による造林木の樹皮剥ぎの被害が深刻な問題となっている。樹皮を剥ぐ理由は、例えば熊についての調査によると、被害木に残った歯形や糞の分析から幹の軟らかな部分を春から夏の食糧とする為といわれている。
【0003】
ところで、樹皮剥ぎを受けると、多くは樹皮部から腐朽し材木としての価値が著しく低下し、更に幹の全周を剥がされると枯死する。特に、林内の大径木から被害を受ける傾向があり、被害額を大きくしているのが現状である。
【0004】
従来、造林木の被害を軽減させる方法として、猟銃や有害鳥獣駆除による捕殺の他、枝うち後の枝条を立木山側に集積させる、忌避剤を樹木に塗布する、トタン板を巻き付ける、ポリエチレンテープを巻き付ける、荒縄を巻き付ける等の手法が採用されている。
【0005】
また、従来、上記防護資材としては、例えばグリーンコップ製の商品名:ワイルド、あるいは大同商事製の商品名:バークガード、あるいは大同商事製の商品名:ネトロンシートが挙げられる。前記ワイルドは、白及び緑色のポリエチレン製ネットで経方向に伸縮性は少ないが緯方向に伸縮性を有することを特徴とする防護資材である。前記バークガードは、ネット状に成型されたポリプロピレン製ネットである。前記ネトロンシートは、ネット状に成型されたポリエチレン製ネットである。
【0006】
更に、従来、防護資材として、柔軟性を有するシート状のツリープロテクター本体と、この本体に一体的に設けられ、該本体を巻回した状態で保持する,係止片及びスリットとからなるツリープロテクターが知られている(特許文献1)。更には、不織布シートと、高開口率のネット状補強材とを接合一体とした複合シート材により構成された植栽木保護カバーが知られている(特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】
実用新案登録第3067313号(段落[0010]〜[0012]及び図1、図2参照)
【0008】
【特許文献2】
特開2002−45057号(段落[0007]〜[0009]及び図1、図2参照)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、樹皮剥ぎの防護は広域な林分を対象とする為、使用する防護資材には、施工性が簡易で効果の持続期間が長い、作業経費が安価である等の特性が必要である。また、樹皮剥ぎが発生している地域は積雪が多い為、長期間設置しておくと積雪で潰されて樹木から滑脱するばかりか、場合によっては破損し、飛散することが予測される。
【0010】
このように破損した資材は、育林作業の支障になるばかりか、そのままでは動植物に絡みつくといった、自然環境に影響を与えかねないという問題を有している。また、破損して使えなくなったり、役目を終えたりした資材についても、山林から回収し、麓まで運ぶ作業を必要とし、近年の林業従事者の高齢化と相まって大きな負担となっている。
【0011】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、繊維を構成要素とする生分解性を有する網状構造体と、この網状構造体を樹木にセットする,繊維を構成要素とする生分解性を有する紐状締結体とを具備した構成にすることにより、破損して放置されたり、役目を終えて土中に埋設しても自然界の微生物で生分解することにより、環境に負荷を与えないとともに、回収や運搬作業の必要のない剥皮被害防護ネットを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、前記繊維として、編み組織と捲縮形状を有する繊維を用いることにより、樹木の生長に伴う樹木の増大に対して対応できる十分な伸縮性を有するとともに、樹木に直接巻き付けることができ、もって従来のようにネットを保持することを目的として樹木の周囲に所定間隔で設置される支柱を必要とせず、施工性が簡便な剥皮被害防護ネットを提供することを目的とする。
【0013】
更に、本発明は、網状構造体及び紐状締結体の構成要素である繊維として捲縮形状で嵩高性を有する生分解性マルチフィラメント、モノフィラメント、フラットヤーンを用いることにより、樹皮との絡み合いを増して樹木からの滑落を防止できる剥皮被害防護ネットを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る剥皮被害防護ネットは、樹木に取り付けられて樹木が熊や鹿などの鳥獣により剥皮されるのを防護するための剥皮被害防護ネットにおいて、
生分解性を有する網状構造体と、この網状構造体を樹木にセットする,繊維を構成要素とする生分解性を有する紐状締結体とを具備し、前記網状構造体は、織編み組織を有し、かつ捲縮形状を有する繊維を構成要素としていることを特徴とする。
こうした構成のネットによれば、自然界の微生物で生分解する性質を有するので、ネットが樹木から脱落した際や破損、飛散した際、その役目を終えて回収した際に、処分の為の運搬作業を必要としないという長所を有する。
【0015】
本発明に係る剥皮被害防護ネットは、前記繊維として、編み組織と捲縮形状を有する繊維を用いることを特徴とする。こうした構成にすれば、樹木の生長に伴う樹木の増大に対して対応できる十分な伸縮性を有し、また、樹木に直接巻き付けることができる。従って、従来のネットを保持することを目的とする樹木の周囲に所定間隔で設置される支柱を必要とせず、施工性が簡便になる。
【0016】
本発明に係る剥皮被害防護ネットは、前記繊維として、捲縮形状で嵩高性を有する生分解性マルチフィラメント、モノフィラメント、フラットヤーンを用いることを特徴とする。こうした構成にすれば、樹皮との絡み合いを増して樹木からの滑落を防止できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明において、網状構造体や紐状締結体の材料としては、例えば生分解性を有する脂肪族ポリエステル、変性芳香族ポリエステル、多糖類やポリビニルアルコールが用いられる。前記脂肪族ポリエステルとしては、微生物が生産する熱可塑性樹脂であるポリヒドロキシアルカネート類、化学的に合成された熱可塑性樹脂があり、次に挙げられた代表的なモノマー成分の単独重合体又は共重合体である。但し、ここに挙げた成分に限定されることなく、他の成分を含むことは勿論のことである。
【0018】
(微生物生産タイプ)
微生物生産タイプの熱可塑性樹脂としては、3−ヒドロキシプロピネート、3−ヒドロキシブチレート、4−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバリレート、5−ヒドロキシバリレート、3−ヒドロキシカプロレート、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエートが挙げられ、そのポリヒドロキシアルカネート共重合体としては、ポリ(ヒドロキシブチレート)と炭素数3〜12のその他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体が例示され、具体的には例えば下記のものが挙げられる。
【0019】
(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシプロピネート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシプロピネート)−(4−ヒドロキシブチレート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシバリレート)−(3−ヒドロキシヘキサノエート)−(3−ヒドロキシヘプタノエート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシバリレート)−(3−ヒドロキシヘキサノエート)−(3−ヒドロキシヘプタノエート)−(3−ヒドロキシオクタノエート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシバリレート)−(3−ヒドロキシヘプタノエート)−(3−ヒドロキシオクタノエート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシバリレート)−(3−ヒドロキシヘキサノエート)−(3−ヒドロキシヘプタノエート)−(3−ヒドロキシオクタノエート)−(3−ヒドロキシノナノエート)−(3−ヒドロキシデカノエート)−(3−ヒドロキシウンデカノエート)−(3−ヒドロキシウラレート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−(4−ヒドロキシブチレート)コポリマーが好適であるが、特にこれらに限定されない。
【0020】
(化学合成タイプ)
化学合成タイプの熱可塑性樹脂としては、例えばε−カプロラクトン、ラクチド酸、エチレンサクシネート、ブチレンアジペート、ブチレートサクシネートが挙げられる。
前記変性芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリ(サクシネート/テレフタレート)、ポリ(サクシネート/カーボネート)が挙げられる。
前記多糖類としては、例えば、セルロース誘導体(セルロースアセテート、セルロースカプロレート)、キチン、キトサンが挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0021】
ここに記載した代表的なモノマー成分の単独叉は共重合体の一部としては、例えばBiomax(デュポン(株)の商品名)、Bionolle(昭和高分子(株)の商品名)、Celgreen(ダイセル化学工業(株)の商品名)、Ecoflex(BASFジャパン(株)の商品名)、Lacea(三井化学(株)の商品名)、Lacty((株)島津製作所の商品名)が知られている。
【0022】
本発明に使用される生分解性を有する材料には、例えば特開平7−133435号公報、特開平8−231834号公報、特開平11−279272号公報に記載されているように、所望の物性を損なわない程度に必要に応じて滑剤や充填剤等を用いてもよい。
【0023】
前記生分解性資材は、上述した脂肪族ポリエステル、変性芳香族ポリエステル、多糖類やポリビニルアルコール等の内、2種以上を混合あるいは複合して製造することができる。ここで、「混合」とは、複数の異なる生分解性材料を混ぜ合わせて資材を構成する繊維や紐の原料として使用することを意味する。また、「複合」とは、異なる生分解性材料を原料とする複数の繊維を組み合わせて織編機等で織編物を製作することを意味する。前記織編機としては、織機、経編機、緯編機、丸編機、製網機等の織編物を作製する機械全てを指す。
【0024】
生分解性繊維は自然界の微生物で分解される為、これで作られた資材を長期間設置することにより、破損、飛散しても、育林作業へ支障を来したり、動植物に絡み付いたりするなどの自然環境への悪影響を防止することができる。また、樹皮剥ぎの防護は広域な林分を対象とする為、通常の資材では回収作業も多大な労力を必要とするが、生分解性繊維で作られた資材であれば、現地山林の適当な場所に埋設すれば分解してしまうので、回収作業を省略することが可能である。従って、林業従業者の高齢化対策としても有効な資材である。
【0025】
本発明において、対象となる鳥獣は主に熊や鹿であるが、これに限定されずに、樹木に被害を加える動物全てを対象とする。
【0026】
本発明において、剥皮被害防護ネットは、繊維を構成要素とする生分解性を有する網状構造体と、この構造体を樹木に巻き付ける生分解性を有する紐状締結体を備えている。ここで、前記網状構造体、紐状締結体は夫々繊維からなり、この繊維は前述した材料を用いて公知の溶融紡糸、溶液紡糸叉はゲル紡糸等の手法を用いて作製する。
【0027】
上記網状構造体は、織編み組織を有し、かつ捲縮形状を有する繊維を構成要素としている。この理由は、樹木の成長に伴う樹脂径の増大に対して対応できること、樹木に適度に巻き付いて滑脱を防止すること等を目的として、充分な伸縮性を有する織編物にするためである。捲縮性の付与は、例えば仮撚り加工法、押し込み加工法、加撚解撚法等の公知の方法で行うことができる。ここで、捲縮性を有する繊維は、織編物を構成する全ての繊維に用いても良いし、その一部に用いても良い。また、この際に用いる繊維については、その形態が嵩高性等の点からは複数の繊維からなるマルチフィラメントの方が好ましいが、伸縮性が得られるものであれば、その他、例えばモノフィラメント、フラットヤーンでもよい。
【0028】
本発明において、樹木からの滑脱防止性を高めるためには、捲縮性の構成比率を増加することが効果的であり、この方法として、フラットヤーンと捲縮糸を合わせ(並列に並べる、絡み合わせる等)、経糸あるいは緯糸あるいは両方に配列させて編んでも良い。
【0029】
本発明において、前記紐状締結体は、網状構造体の場合と同様、前述した材料を原料として作製された生分解性繊維を用い、製紐、製綱、加熱ノズルによる溶融固着等の方法で作製される。
【0030】
本発明において、前記網状構造体及び紐状締結体は、生分解性を有する複数の異なる材料を混合して作製した繊維や複数の異なる材料で作製した繊維を組み合わせて複合することにより作製してもよい。ここで、複数の異なる材料とは、生分解性を有した材料を指すが、天然素材である絹や綿、麻等を生分解性繊維と組み合わせても良い。
【0031】
図7は、本発明に係る剥皮被害防護ネットを造林木(樹木)1に取り付けた実際の使用例を示す。上記剥皮被害防護ネットは、繊維を構成要素とする生分解性を有する網状構造体2と、この網状構造体2を造林木1に固定する生分解性を有する紐(紐状締結体)3とから構成されている。ここで、前記網状構造体2は帯状になっており、経糸としての生分解性プラスチック製フラットヤーン2aと、このフラットヤーン2aとともに編まれた緯糸としての生分解性プラスチック製フラットヤーン2bとから構成されている。また、前記紐3は、前記網状構造体2の端部を、例えば造林木1の高さ方向に沿う上端、下端及び中央部の3箇所で止めている。なお、紐は、図7に示すように必ずしも3箇所で止める必要はなく、網状構造体が滑落せず、伸縮性を失わない程度に適宜設定すればよい。また、紐による網状構造体の止め方も任意に設定することができる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の各実施例及び比較例について説明する。但し、本発明の内容はこれらによって限定されるものではない。
(実施例1)
まず、Bionolle(3001)(昭和高分子(株)製の商品名、重量平均分子量;190,000、MFR(190℃、2.16kg荷重);1.4g/10min,Tm;94℃、Tg:−45℃)に、約20重量%のLacty(5400)((株)島津製作所製の商品名、重量平均分子量;135,000、MFR(190℃、2.16kg荷重);5.0g/10min,Tm;177℃、Tg:61.9℃)を混合した物を材料として用い、インフレーションフィルム押出機にて温度230℃でシート状に押出し、スリットカッターで裁断し、延伸熱処理することで、1100dtexの経糸及び緯糸用のフラットヤーンを得た。次に、このフラットヤーンを用いて、経編機で編み、網状構造体を作成した。更に、フラットヤーン10本を纏め、約100℃に加熱した直径10mmのノズルに通すことで融着させ、紐状締結体としての紐を作製した。
【0033】
図1及び図2は、実施例1に係る網状構造体11を示し、図1は網状構造体の平面図、図2は図1の拡大平面図を示す。網状構造体11は、帯状になっており、前記生分解性プラスチック(BionolleとLactyを混合)製からなるフラットヤーン(経糸)12と、このフラットヤーン12とともに編まれた同材料の生分解性プラスチック製フラットヤーン(緯糸)13から構成されている。一方のフラットヤーン13は、隣り合う他方のフラットヤーン12,12同士を連結するように編まれている。
【0034】
得られた網状構造体(編物)の伸度は、経方向49%、緯方向116%であった。また、上記網状構造体及び紐は、図7に示すような状態で造林木の下部側にセットされる。
【0035】
(実施例2)
まず、上記実施例1に示す方法で1100dtexの経糸及び緯糸用のフラットヤーンを得た。一方、上記Lacty(5400)を原料として温度230℃で溶融紡糸し、延伸熱処理と同時に押込み法で550dtexの捲縮糸を作製した。更に、550dtexの捲縮糸を3本合わせて1750dtexの繊維を得た。次に、これらの繊維を用い、経編機で全体をフラットヤーンとし、捲縮糸を緯糸用フラットヤーン10本毎に緯糸として挿入して編んだ。
【0036】
図3及び図4は、実施例2に係る網状構造体11を示し、図3は網状構造体の平面図、図4は図3の拡大平面図を示す。網状構造体11は、帯状になっており、前記生分解性プラスチック(BionolleとLactyを混合)製からなるフラットヤーン(経糸)12と、このフラットヤーン12とともに編まれた同材料の生分解性プラスチック製フラットヤーン(緯糸)13及びLacty(5400)製の捲縮糸(緯糸)14から構成されている。一方のフラットヤーン13及び捲縮糸14は、隣り合う他方のフラットヤーン12,12同士を連結するように編まれている。
【0037】
得られた編物の伸度は、経方向49%、緯方向124%であった。また、実施例2の網状構造体11は、紐を用いて図7に示すような状態で造林木の下部側にセットされる。
【0038】
(実施例3)
上記実施例1,2で示す方法で得られたフラットヤーン及び捲縮糸を用い、経編機で捲縮糸を経糸用フラットヤーン4本に対して1本ずつ交互に配列させて編んだ。
図5及び図6は、実施例3に係る網状構造体11を示し、図5は網状構造体の平面図、図6は図5の拡大平面図を示す。網状構造体11は、帯状になっており、前記生分解性プラスチック(BionolleとLactyを混合)製からなるフラットヤーン(経糸)12及びLacty(5400)製からなる捲縮糸15と、前記フラットヤーン12,捲縮糸15とともに編まれた生分解性プラスチック(BionolleとLactyを混合)製フラットヤーン(緯糸)13から構成されている。一方のフラットヤーン13は、隣り合う他方のフラットヤーン12,12同士、あるいは隣り合うフラットヤーン12,捲縮糸15同士を連結するように編まれている。
【0039】
得られた編物の伸度は、経方向44%、緯方向109%であった。また、実施例3の網状構造体11は、紐を用いて図7に示すような状態で造林木の下部側にセットされる。
【0040】
上記3種の実施例1〜3の何れも、形状が網であり緯方向の伸度が大きいために柔軟性に富み、造林木への巻きつけ作業を容易に行うことが可能であった。また、重量も非常に軽い為、運搬作業も容易であった。更に、網状構造体及び紐状締結体を土中に埋設したところ、約1年で形状を留めない状態まで分解した。
【0041】
(比較例1)
図8に示すように、土木資材や鹿の角研ぎ、食害防止に用いられている、成型により得られたポリエチレン製ネット21を用いた。このネット21の伸度は、経方向6%、緯方向5%であった。
しかし、比較例1によるポリエチレン製ネット21の場合、伸縮性が無く硬い為に、根曲がり部に密着し難く、造林木への巻き付け作業が困難であった。また、重量が重い為に運搬作業も困難であった。
【0042】
(比較例2)
比較例2では、土木資材や鹿の角研ぎ、食害防止に用いられている、成型により得られたポリプロピレン製ネットを用いた。ここで、このネットの形状は比較例1と略同様な平面形状を有している。また、このネットの伸度は、経方向19%、緯方向17%であった。しかし、比較例2によるポリプロピレン製ネットの場合、やはり、平面形状がネット状である為に、造林木への巻き付け作業が困難であった。また、積雪による変形も全体の50%に認められた。
【0043】
(比較例3)
比較例3では、獣の耕作地等への進入を防ぐ為に開発された、ポリエチレン製ネットを用いた。ここで、ネットは、ポリエチレン製フラットヤーン(経糸)と経糸と同材料のフラットヤーン(緯糸)を配列させて編まれて得られたものである。このネットの伸度は、経方向27%、緯方向56%であった。
【0044】
上記3種の比較例1〜3は何れも、剥皮被害に対する効果も得られたが、放置しても分解しない為、回収作業を必要とした。
【0045】
下記表1は、上記実施例1〜3及び比較例1〜3における剥皮被害防護ネットの重量、破断強度、破断伸度、生分解性の有無、取付作業性及び1年目の剥皮被害率をまとめたものである。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明によれば、繊維を構成要素とする生分解性を有する網状構造体と、この網状構造体を樹木にセットする,繊維を構成要素とする生分解性を有する紐状締結体とを具備した構成にすることにより、破損して放置されたり、役目を終えて土中に埋設しても自然界の微生物で生分解することにより、環境に負荷を与えないとともに、回収や運搬作業の必要のない剥皮被害防護ネットを提供できる。
【0048】
また、本発明によれば、前記繊維として、編み組織と捲縮形状を有する繊維を用いることにより、樹木の生長に伴う樹木の増大に対して対応できる十分な伸縮性を有するとともに、樹木に直接巻き付けることができ、もって従来のようにネットを保持することを目的として樹木の周囲に所定間隔で設置される支柱を必要とせず、施工性が簡便な剥皮被害防護ネットを提供できる。
【0049】
更に、本発明によれば、網状構造体及び紐状締結体の構成要素である繊維として捲縮形状で嵩高性を有する生分解性マルチフィラメント、モノフィラメント、フラットヤーンを用いることにより、樹皮との絡み合いを増して樹木からの滑落を防止できる剥皮被害防護ネットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1に係る剥皮被害防護ネットの網状構造体の平面図。
【図2】 図1の要部の拡大平面図。
【図3】 本発明の実施例2に係る剥皮被害防護ネットの網状構造体の平面図。
【図4】 図3の要部の拡大平面図。
【図5】 本発明の実施例3に係る剥皮被害防護ネットの網状構造体の平面図。
【図6】 図5の要部の拡大平面図。
【図7】 実施例1に係る剥皮被害防護ネットの実際の使用例を示す説明図。
【図8】 比較例1に係る剥皮被害防護ネットの平面図。
【符号の説明】
1…造林木(樹木)、2,11…網状構造体、2a,12…フラットヤーン(経糸)、2b,13,14…フラットヤーン(緯糸)、3…紐(紐状締結体)、15…捲縮糸。
Claims (4)
- 樹木に取り付けられて樹木が熊や鹿などの鳥獣により剥皮されるのを防護するための剥皮被害防護ネットにおいて、
生分解性を有する網状構造体と、この網状構造体を樹木にセットする,繊維を構成要素とする生分解性を有する紐状締結体とを具備し、前記網状構造体は、織編み組織を有し、かつ捲縮形状を有する繊維を構成要素としていることを特徴とする剥皮被害防護ネット。 - 樹木に取り付けられて樹木が熊や鹿などの鳥獣により剥皮されるのを防護するための剥皮被害防護ネットにおいて、
繊維を構成要素とする生分解性を有する網状構造体と、この網状構造体を樹木にセットする,繊維を構成要素とする生分解性を有する紐状締結体とを具備し、前記繊維が捲縮形状でかつ嵩高性を有する,生分解性マルチフィラメント、モノフィラメント、フラットヤーンのいずれかであることを特徴とする剥皮被害防護ネット。 - 前記網状構造体、紐状締結体は、脂肪族ポリエステル、変性芳香族ポリエステル、多糖類叉はポリビニルアルコールのうちいずれか一つを材料として製造されることを特徴とする請求項 1 又は2に記載の剥皮被害防護ネット。
- 前記網状構造体、紐状締結体は、脂肪族ポリエステル、変性芳香族ポリエステル、多糖類叉はポリビニルアルコールのうち、2種以上を混合あるいは複合して製造されることを特徴とする請求項 1 又は2に記載の剥皮被害防護ネット。
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