JP3922786B2 - 高架橋度ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高架橋度を有するポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィンの発泡体は、機械的物性と熱的物性のバランスに優れ、さらに後に加熱賦形できるので、工業資材として広く利用されている。そのなかでも特に架橋密度が大きい、すなわち架橋度が高い(ゲル分率60%以上)発泡体は、耐熱性、耐クリープ特性が格段に良好で、屋上断熱材等の高温下で使用される用途に好適に用いられている。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂から高架橋度発泡体を製造する方法として、アルコキシシランを側鎖として有する水架橋性の特殊なポリオレフィンであるシラン変性ポリオレフィンを原料として用いる方法が提案されている。例えば特開昭48−100470号公報には、シラン変性ポリエチレン、熱分解型発泡剤およびシラノール縮合触媒よりなる発泡性樹脂組成物から成形体を得て、該成形体を加熱して発泡した後、水架橋して高架橋度発泡体を製造する方法が記載されている。
【0004】
しかし、この方法では、上記組成物から得られた成形体は、その融体強度が弱く、十分な発泡性能を示さない。発泡可能な融体強度を付与するためには、該成形体を30〜50%程度のゲル分率を示すまで架橋する必要がある。
【0005】
発泡前に、上記成形体のシラン変性ポリオレフィンを一部架橋させて、所望の融体強度をもたせる方法が考えられるが、水架橋反応の制御は一般的に容易でなく、安定して30〜50%ゲル分率を保持させることはきわめて難しいため、発泡性能がばらつくという問題がある。
【0006】
また、発泡前に、上記成形体に放射線や電子線、紫外線等を照射し、シラン変性ポリオレフィンを所望の架橋度まで架橋させる方法があるが、これは別途高価な照射設備を必要とし、工程的にも煩雑となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の発泡性樹脂組成物から得られた成形体をそのまま無処理で発泡させることができ、さらに水架橋を加えることにより、簡単に高架橋度の発泡体を得ることができる、高架橋度ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による高架橋度ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂(A) 100重量部とジオキシム化合物0.05〜5重量部を170℃〜ポリオレフィン系樹脂(A) の分解温度の温度範囲で溶融混和して樹脂を改質し、得られた改質樹脂組成物(B) にシラン変性ポリオレフィン(C) を、重量比(A) :(C) =20〜80:80〜20(ただし(A) +(C) =100)で混合し、得られた混合物に熱分解型化学発泡剤を混練し、得られた発泡性樹脂組成物を加熱して発泡剤の分解によって発泡させ、さらに水架橋させることを特徴とする方法である。
【0009】
本発明方法におけるポリオレフィン系樹脂(A) の主体をなすポリオレフィン、およびシラン変性ポリオレフィン(C) の製造原料であるポリオレフィンは、オレフィン性モノマーの単独重合体、または主成分オレフィン性モノマーと他のモノマーとの共重合体であり、特に限定されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ホモタイプポリプロピレン、ランダムタイプポリプロピレン、ブロックタイプポリプロピレン等のポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エレチン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等のエチレンを主成分とする共重合体などが例示され、またこれらの2以上の組合わせであってもよい。
【0010】
本発明方法におけるポリオレフィン系樹脂(A) の主体をなすポリオレフィン、およびシラン変性ポリオレフィン(C) の製造原料であるポリオレフィンとしては、上述したポリエチレンやポリプロピレンの1種もしくは2種以上の組みあわせが好ましい。
【0011】
ポリオレフィン系樹脂とは上記ポリオレフィンの割合が70〜100重量%である樹脂組成物を指す。ポリオレフィン系樹脂を構成するポリオレフィン以外の樹脂は限定されないが、例えば、ポリスチレン、スチレン系エラストマーなどが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂中のポリオレフィンの割合が70重量%を下回ると、ポリオレフィンの特徴である軽量、耐薬品性、柔軟性、弾性等が発揮できないばかりか、発泡に必要な溶融粘度を確保することが困難となる場合があるので好ましくない。
【0012】
改質樹脂組成物を得るには、ポリオレフィン系樹脂とジオキシム化合物を所定条件で溶融混和する。具体的には、スクリュー押出機やニーダーなどの混練装置に上記両物質を所要量ずつ投入し、溶融混和する。この溶融混和温度は170℃以上かつポリオレフィン系樹脂の分解温度(通常約300℃)以下、好ましくは200℃〜250℃である。溶融混和温度が170℃を下回ると改質が不十分で、最終的に得られる発泡体の発泡倍率が十分高くならないことがあり、約300℃を越えるとポリオレフィン系樹脂が分解し易くなる。
【0013】
本発明方法で用いるジオキシム化合物とは、以下の一般式で示されるような、オキシム基(化学式I)またはその水素原子が他の原子団(主に炭化水素基)で置換された構造(化学式II)を分子内に2個有する化合物であり、例えばp−キノンジオキシム(化学式III )、p,p−ジベンゾイルキノンジオキシム(化学式IV)が例示される。ジオキシム化合物は2種以上の組合わせで使用することもできる。
【0014】
【化1】
【0015】
【化2】
【0016】
【化3】
【0017】
【化4】
【0018】
ジオキシム化合物の添加量はポリオレフィン系樹脂(A) 100重量部に対して0.05〜5重量部であり、好ましくは0.2〜3重量部である。この添加量が0.05重量部未満であると、発泡に必要な溶融粘度を付与できず、5重量部を越えると、架橋度が上がりすぎ、押出成形性が悪くなる(例えば、高負荷がかかる、メルトフラクチャーが発生する)上に、後で添加する発泡剤を樹脂組成物中に均一に混練できず、不必要にゲル分率が上がりすぎ、発泡不良となる。加えて、未反応物のジオキシムが製品中に残留する割合が多くなり、人体に刺激を及ぼすと共に、原料に対する製品生成効率が低くなる。
【0019】
上記溶融混和に用いる混練装置は、スクリュー押出機の他、一般的にプラスチック成形加工で使用されうる溶融混練装置であればよく、例えばニーダー、ローター、連続混練機などが例示される。このうち連続運転が行えるスクリュー押出機が好ましく、1軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、3本以上のスクリューを備えた多軸スクリュー押出機などがいずれも好適に用いられる。1軸スクリュー押出機としては、一般的なフルフライト型スクリューに加え、不連続フライト型スクリュー、ピンバレル、ミキシングヘッドなどを有する押出機なども用いられる。また、上記2軸スクリュー押出機としては、噛み合い同方向回転型押出機、噛み合い異方向回転型押出機、非噛み合い異方向回転型押出機などが好適に使用し得る。なお、押出機の後段に真空ベントを設けることは、樹脂組成物中に揮発物が残存するのを防ぐのに効果的である。
【0020】
スクリュー押出機を用いる場合、ポリオレフィン系樹脂(A) は通常はホッパーから押出機へ投入されるが、定量性を増すため、スクリュー式フィーダー、重量管理式フィーダーなどを用いることも好ましい。
【0021】
ジオキシム化合物は、ポリオレフィン系樹脂(A) と同時にホッパーから押出機へ投入してもよいが、定量フィーダー等を用い、ポリオレフィン系樹脂(A) と同じ位置で押出機内に投入するか、押出機にてポリオレフィン系樹脂(A) が溶融する位置より後流部に設けられた注入孔から、サイドフィーダー等を用い、押出機途中で投入してもよい。
【0022】
次に、上記工程で得られた改質樹脂組成物(B) にシラン変性ポリオレフィン(C) を、ポリオレフィン系樹脂(A) に対し、重量比(A) :(C) =20〜80:80〜20(ただし(A) +(C) =100)の割合で混合する。
【0023】
改質樹脂組成物(A) の割合が20重量%未満であると、発泡に必要な溶融粘度が得られず、80重量%を越えると、架橋度が上がりすぎ、押出成形性が悪くなる(例えば、高負荷がかかる、メルトフラクチャーが発生する)上に、後で添加する発泡剤を樹脂組成物中に均一に混練できず、不必要にゲル分率が上がりすぎ、発泡不良となる。改質樹脂組成物(A) の好ましい割合は30〜70重量%である。
【0024】
本発明方法で用いるシラン変性ポリオレフィン(C) とは、上述したポリオレフィンにアルコキシシランが側鎖として化学結合したものである。このようなシラン変性ポリオレフィンは、例えば特公昭48−1711号公報に示されるように、ビニルトリメトキシシラン等の不飽和基を有する有機シラン化合物を、有機過酸化物等から生じる遊離ラジカルによってポリオレフィンに反応・結合させることにより、製造することができる。また、ポリオレフィン系樹脂の重合段階で、オレフィン性モノマーに、不飽和基を有する有機シラン化合物を共重合させることによっても製造することができる。
【0025】
上述のようなシラン変性ポリオレフィンは、水が存在すると、側鎖として結合されているアルコキシシランのアルコキシ基同士が互いに加水分解と縮合を起こし、架橋結合が生じる物質である。ジブチル錫ジラウレートのような有機金属化合物の存在下では、この水架橋反応の速度が増大する。
【0026】
更に、上記工程で得られた混合物に熱分解型化学発泡剤を混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
【0027】
本発明で用いる熱分解型化学発泡剤は、加熱により分解ガスを発生するものであれば特に限定されるものではない。熱分解型化学発泡剤の代表的な例は、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)である。これらは単独で用いてもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。その中でもアゾジカルボンアミドが特に好適に用いられる。
【0028】
熱分解型化学発泡剤は、ポリオレフィン系樹脂(A) +シラン変性ポリオレフィン(C) 100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは2〜35重量部の範囲で所望の発泡倍率に応じて適宜の量で使用される。
【0029】
このようにして、ポリオレフィン系樹脂(A) とジオキシム化合物から得られた改質樹脂組成物(B) にシラン変性ポリオレフィン(C) を混合し、得られた混合物に熱分解型化学発泡剤を混練して発泡性樹脂組成物を得るには、上述の改質用の溶融混練装置と、これとは別の発泡剤混和用の混練装置(構造は改質用の溶融混練装置のそれと同じであってもよい)とを用いて、同発泡剤が実質的に分解しない最高温度以下で両者を混合する。この溶融混練の態様としては下記のものがある。
【0030】
(a) 改質用の回分式あるいは連続式の溶融混練装置において、ポリオレフィン系樹脂(A) とジオキシム化合物を溶融混和し、得られた改質樹脂組成物(B) を同溶融混練装置から取り出して固化、造粒などを行った後、同樹脂組成物(B) を発泡剤混和用の回分式あるいは連続式の混練装置に移し、これにシラン変性ポリオレフィン(C) および発泡剤を投入し、三者を溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
【0031】
(b) 改質用の回分式の溶融混練装置において、ポリオレフィン系樹脂とジオキシム化合物を190℃以上の温度で溶融混和して改質を行い、得られた改質樹脂組成物を同混練装置内で、例えば185℃の温度まで冷却した後、これにシラン変性ポリオレフィン(C) および発泡剤を追加投入し、三者を溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
【0032】
(c) 改質用のスクリュー押出機(連続式の溶融混練装置)において、ポリオレフィン系樹脂とジオキシム化合物を190℃以上の温度で溶融混和し、得られた改質樹脂組成物を185℃以下の温度まで降温させた後、さらに同スクリュー押出機の途中に設けた供給口よりシラン変性ポリオレフィン(C) および発泡剤を投入し、三者を溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
【0033】
(d) 連続操作のもう一つの形態では、2台のスクリュー押出機などを連結して、1台目でポリオレフィン系樹脂とジオキシム化合物を溶融混和し、得られた改質樹脂組成物を上記と同様に降温させた後、同樹脂組成物を2台目に移し、これにシラン変性ポリオレフィン(C) および発泡剤を投入し、三者を溶融混練し、発泡性樹脂組成物を得る。
【0034】
混合物に熱分解型化学発泡剤を混練してなる発泡性樹脂組成物は、必要に応じて賦形されてもよい。賦形の方法は押出成形の他、プレス成形、ブロー成形、カレンダリング成形、射出成形など、プラスチックの成形加工で一般的に行われる方法が適用可能である。
【0035】
特に、上記(a)(b)の方法にしたがって得られる発泡性樹脂組成物を、回分式の発泡剤混和用混練装置より取り出し、これをスクリュー押出機に投入して連続的にシート形状に賦形する方法、あるいは、上記(a)(c)(d) の方法にしたがって、スクリュー押出機より吐出する発泡性樹脂組成物を、直接賦形する方法が、生産性の観点より好ましい。
【0036】
こうして得られた発泡性樹脂組成物またはその賦形物は、適切な温度条件で加熱することにより、一定圧力下で所望の発泡倍率に発泡させることができる。上記加熱は、通常は熱分解型化学発泡剤の分解温度から、分解温度+100℃までの温度範囲で行われる。これを行うための発泡装置としては、一般的に、空気雰囲気中で運転する、縦型または横型発泡炉、熱風恒温槽や、あるいはオイルバス、メタルバス、ソルトバスなどの熱浴が用いられる。
【0037】
このような方法によって製造される発泡体は、水分と接触させると水架橋を起こし、さらに架橋密度を上げることができる。
【0038】
水架橋は、発泡性樹脂組成物中に含まれている微量水分によって、加熱発泡中に生じる場合もあるが、得られた発泡体を、高温熱水処理法、水中浸漬法等のように、80℃以上の温度条件下で積極的に水分と接触する方法が好ましい。
【0039】
この水架橋工程での効率を改善する目的で、系中に予めシラノール縮合触媒を導入することも効果的である。このシラノール縮合触媒は、アルコキシシランのアルコキシ基の加水分解および脱水縮合を促進する触媒として一般的に用いられている化合物であればよく、例えばジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、酢酸第一錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン等の化合物が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上の組合わせで用いてもよい。
【0040】
本発明方法によって得られた発泡体は、高架橋度を有する。架橋度はゲル分率によって定量化でき、本発明方法によって製造された水架橋発泡体のゲル分率は60%以上であり、より好ましくは70%以上である。ゲル分率が60%未満であると、耐熱性、耐クリープ特性において、十分な性能を示さないことがある。
【0041】
本発明の方法により製造された水架橋発泡体の発泡倍率(発泡体の比容)は、好ましくは10倍(cc/g)以上、より好ましくは12倍(cc/g)以上である。発泡倍率が10倍未満であると、断熱性、緩衝性、遮音性、柔軟性、浮揚性などに優れた発泡体が得られないことがある。
【0042】
本発明で得られる高架橋度発泡体には、本発明を阻害しない範囲で必要に応じ、プロセス熱安定剤、他の酸化防止剤や紫外線吸収剤、有機および無機充填剤、顔料、染料、加工助剤等の各種添加剤の1種もしくは2種以上が含有されていてもよい。
【0043】
【作用】
本発明方法では、ポリオレフィン系樹脂をジオキシム化合物の添加により改質することで、本来弱かったポリオレフィン系樹脂の融体強度を増大させることができ、したがって該成形体をその後特に架橋処理せずとも発泡可能にすることができる。
【0044】
また、改質樹脂組成物(B) にシラン変性ポリオレフィン(C) を所要割合で混合することで、発泡後の水架橋により容易に高架橋度発泡体を得ることができる上に、上記ポリオレフィン系樹脂の改質によって悪化した成形性を改良することもできる。
【0045】
これにより、流動性を保持したまま十分な発泡性を有する発泡性成形体を得ることができ、加熱発泡後に水架橋を行うことで簡単に高架橋度を発泡体を製造することが可能となる。
【0046】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例によってより具体的に説明する。
【0047】
(実施例1)
i)発泡性樹脂組成物の製造
始めに、本発明方法において、樹脂の改質および発泡剤混練および混合に使用する装置について、説明をする。
【0048】
図1中、改質用スクリュー押出機(1) は、その後端部にポッパー(11)を備え、先端の連結管を介して、発泡剤および樹脂混練用スクリュー押出機(2) の長さ中間部に連結している。発泡剤および樹脂混練用スクリュー押出機(2) は先端寄りに発泡剤供給フィーダー(3) を有し、先端に成形ダイ(4) を有する。これら2基のスクリュー押出機(1) およびスクリュー押出機(2) の各先端部には揮発分吸引ポンプ(5)(6)がそれぞれ接続され、またこれら押出機は樹脂温度測定用の熱電対(7) (8) (9) (10)を備えている。
【0049】
改質用スクリュー押出機(1) はBT40(プラスチック工学研究所社製)同方向回転2軸スクリュー押出機であり、これはセルフワイピング2条スクリューを備え、そのL/Dは35、Dは39mmである。
【0050】
発泡剤および樹脂混練用スクリュー押出機(2) はTEX−44型(日本製鋼所社製)同方向回転2軸スクリュー押出機であり、これはセルフワイピング2条スクリューを備え、そのL/Dは45.5、Dは47mmである。
【0051】
成形ダイはシート形状Tダイ(幅200mm×厚み1mm)である。
【0052】
(a) 発泡性シート作成
上記構成の装置において、まず、改質用スクリュー押出機(1) にポリオレフィン系樹脂およびジオキシム化合部をその後端ホッパー(11)から投入し、全区間設定温度220℃、150rpmで両者を溶融混和し、改質樹脂組成物を得た。このとき、押出機内で発生した揮発分は吸引ポンプ(5) により真空引きした。
【0053】
ポリオレフィン系樹脂はポリプロピレン(日本ポリケム社製「ノバテックPP
EG8」)であり、その供給量は5kg/hとした。
【0054】
ジオキシム化合物はキノンジオキシム(大内新興化学社製「バルノックGM−P」)であり、その供給量はポリオレフィン系樹脂100重量部に対して1.5重量部とした。
【0055】
改質用スクリュー押出機(1) において熱電対(7) で測定した樹脂の変性温度は228℃であった。
【0056】
次に、ポリオレフィン系樹脂とジオキシム化合物の混練によって得られた改質樹脂組成物を、改質用押出機(1) より連結部を経て発泡剤および樹脂混練用スクリュー押出機(2) に供給した。また、発泡剤および樹脂混練用スクリュー押出機(2) にシラン変性ポリオレフィンをその後端ホッパーから投入し、改質用押出機(1) から来る改質樹脂組成物と充分に混練分散させた。シラン変性ポリオレフィンはシラン変性ポリプロピレン(三菱化学社製「リンクロン XPM−800HM」)であり、その供給量は5kg/hとした。シラン変性ポリオレフィンにはシラノール縮合触媒としてシラノール縮合触媒マスターバッチ(三菱化学社製「PZ010S」)をシラン変性ポリオレフィン100重量部に対して5重量部の割合で供給した。
【0057】
そののち、この押出機(2) のフィーダー(3) から発泡剤を供給し、分散させ、押出機先端のTダイ(4) よりシート状の成形物を得た。発泡剤はアゾジカルボンアミド(ADCA)であり、その供給量は樹脂分(ポリオレフィン系樹脂+シラン変性ポリオレフィン+シラノール縮合触媒マスターバッチ)100重量部に対して15重量部とした。押出機条件は、シリンダーバレル:185℃、スクリュー回転数:30rpm、押出量は5kg/h、Tダイ温度:170℃とした。
【0058】
こうして、発泡性シートを作成した。
【0059】
(b) 発泡性シートの評価
得られた発泡性シートのゲル分率を下記の方法で求めた。すなわち、発泡性シートを200メッシュの金属網で包み、130℃のキシレン中で24時間加熱して溶融分をキシレン中に溶出させ、次いで金属網中に残った固形分を80℃の真空乾燥器で乾燥し、得られた不溶分を秤量し、
不溶分重量/発泡性シート重量×100
なる式で、発泡性シートのゲル分率を算出した。
【0060】
得られた発泡性シートのゲル分率は31%であった。
【0061】
(c) 水架橋発泡体の作成
得られた発泡性シートを100mm角に切断し、この切断片を230℃の熱風乾燥器内に5分間放置し、発泡させた。得られた発泡体を十分冷却した後、95℃の熱水槽中に24時間放置し、水架橋を行った。
【0062】
(d) 水架橋発泡体の評価
得られた水架橋発泡体の発泡倍率(発泡体サンプルの比容測定値)およびゲル分率を測定した。
【0063】
発泡体のゲル分率は、上述した発泡性シートのゲル分率と同じ方法で求めた。
【0064】
得られた水架橋発泡体の発泡倍率は29cc/gであり、ゲル分率は73%であった。
【0065】
(実施例2)
実施例1の(a) 発泡性シート作成工程において、ポリオレフィン系樹脂としてポリエチレン(ダウケミカル社製「アフィニティ PL1880」)を供給量4kg/hで供給し、ジオキシム化合物としてキノンジオキシム(大内新興化学社製「バルノックGMP」)をポリオレフィン系樹脂100重量部に対して1.0重量部の供給量で供給し、熱電対(7) で測定した樹脂の変性温度は225℃とし、一方、シラン変性ポリオレフィンとしてシラン変性ポリエチレン(日本ポリケム社製「リンクロン HE−707N」)を供給量6kg/hで供給し、シラノール縮合触媒としてシラノール縮合触媒マスターバッチ(三菱化学社製「HZ070」)をシラン変性ポリオレフィン100重量部に対して5重量部の割合で供給した以外、実施例1と同じ操作を行った。
【0066】
得られた発泡性シートのゲル分率は35%であり、得られた水架橋発泡体の発泡倍率は30cc/g、ゲル分率は70%であった。
【0067】
(比較例1)
実施例1の(a) 発泡性シート作成工程において、 改質用スクリュー押出機(1) の設定温度を全区間で160℃とし、熱電対(7) で測定した樹脂の変性温度は168℃とした以外、実施例1と同じ操作を行った。
【0068】
得られた発泡性シートのゲル分率は10%であり、得られた水架橋発泡体の発泡倍率は9cc/g、ゲル分率は42%であった。
【0069】
(比較例2)
実施例1の(a) 発泡性シート作成工程において、ジオキシム化合物としてキノンジオキシム(大内新興化学社社製「バルノックGMP」)をポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.01重量部の供給量で供給し、熱電対(7) で測定した樹脂の変性温度は224℃とした以外、実施例1と同じ操作を行った。
【0070】
得られた発泡性シートのゲル分率は5%であり、得られた水架橋発泡体の発泡倍率は4cc/g、ゲル分率は39%であった。
【0071】
(比較例3)
実施例1の(a) 発泡性シート作成工程において、ジオキシム化合物としてキノンジオキシム(大内新興化学社社製「バルノックGMP」)をポリオレフィン系樹脂100重量部に対して7重量部の供給量で供給し、熱電対(7) で測定した樹脂の変性温度は235℃とした以外、実施例1と同じ操作を行った。
【0072】
得られた発泡性シートのゲル分率は60%であり、得られた水架橋発泡体の発泡倍率は7cc/g、ゲル分率は89%であった。
【0073】
(比較例4)
実施例1の(a) 発泡性シート作成工程において、シラン変性ポリオレフィン(三菱化学社製「リンクロン XPM−800HM」)の供給量を45kg/hとした以外、実施例1と同じ操作を行った。
【0074】
得られた発泡性シートのゲル分率は10%であり、得られた水架橋発泡体の発泡倍率は10cc/g、ゲル分率は78%であった。
【0075】
(比較例5)
実施例1の(a) 発泡性シート作成工程において、シラン変性ポリオレフィン(三菱化学社製「リンクロン XPM−800HM」)の供給量を0.55kg/hとした以外、実施例1と同じ操作を行った。
【0076】
得られた発泡性シートのゲル分率は56%であり、得られた水架橋発泡体の発泡倍率は12cc/g、ゲル分率は64%であった。
【0077】
実施例1〜2および比較例1〜5の構成および評価結果を表1にまとめて示す。
【0078】
【表1】
【0079】
上記表中、
PP(EG8):ポリプロピレン(日本ポリケム社製「ノバテックPP EG8」
PE(PL):ポリエチレン(ダウケミカル社製「アフィニティ PL1880」)
QDO:キノンジオキシム(大内新興化学社製「バルノックGM−P」
XPM:シラン変性ポリプロピレン(三菱化学社製「リンクロン XPM−800HM」)
HE:シラン変性ポリエチレン(日本ポリケム社製「リンクロン HE−707N」)
【0080】
【発明の効果】
本発明方法によれば、ジオキシム化合物に用いて、ポリオレフィン系樹脂を改質することで、発泡性樹脂組成物の成形後、特に架橋処理を施すことなくこれをそのままの状態で加熱発泡することができる。
【0081】
また、上記組成物にシラン変性ポリオレフィンを一定割合含ませることで、発泡性樹脂組成物の押出成形性が向上し、さらに発泡後、簡単な熱水処理のみで、高架橋度を有する発泡体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は樹脂の改質および発泡剤およびシラン変性ポリオレフィン混練に使用する連続式発泡性シート製造装置を示す概略図である。
【符号の説明】
1:改質用スクリュー押出機
2:発泡剤および樹脂混練用スクリュー押出機
3:発泡剤供給フィーダー
4:成形ダイ
5、6:揮発分吸引ポンプ
7、8、9、10:熱電対
11:ホッパー
Claims (1)
- ポリオレフィン系樹脂(A) 100重量部とジオキシム化合物0.05〜5重量部を170℃〜ポリオレフィン系樹脂(A) の分解温度の温度範囲で溶融混和して樹脂を改質し、得られた改質樹脂組成物(B) にシラン変性ポリオレフィン(C) を、重量比(A) :(C) =20〜80:80〜20(ただし(A) +(C) =100)で混合し、得られた混合物に熱分解型化学発泡剤を混練し、得られた発泡性樹脂組成物を加熱して発泡剤の分解によって発泡させ、さらに水架橋させることを特徴とする高架橋度ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
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