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JP3922446B2 - 発泡体およびその用途 - Google Patents

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JP3922446B2
JP3922446B2 JP2002273413A JP2002273413A JP3922446B2 JP 3922446 B2 JP3922446 B2 JP 3922446B2 JP 2002273413 A JP2002273413 A JP 2002273413A JP 2002273413 A JP2002273413 A JP 2002273413A JP 3922446 B2 JP3922446 B2 JP 3922446B2
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ジョン シク ヨオン
ギ ヨン ウム
重直 桑原
瑞穂 前田
秀雄 高松
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Kuraray Co Ltd
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、衝撃吸収性に優れ、かつ温度による硬度変化が小さい発泡体およびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、発泡体のベースポリマーとしては、ポリスチレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの樹脂や天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などのエラストマーが用いられている。これらの発泡体は、衝撃を吸収させることを目的として、靴底、床材、緩衝材などの用途をはじめとして広く使用されている。しかし、これらのポリマーはいずれも発泡体を使用する室温付近にtanδ(損失正接)の吸収ピークを有していないことから、衝撃吸収材として用いる場合には発泡倍率を高くして発泡体の硬度を低くし、発泡体の変形量を大きくすることで衝撃を吸収している。その結果、発泡体の力学的性質が低下するために、用途によっては使用できない場合もある。
【0003】
本発明者らの一部は、これらのベースポリマーからなる発泡体の衝撃吸収性を改善することを目的として鋭意検討し、室温付近、具体的には−20℃〜40℃の温度範囲に動的粘弾性測定により得られるtanδの吸収ピークを有する共役ジエン系重合体またはその水添物を用いる発泡体組成物、およびかかる組成物から得られる発泡体が、室温付近にて優れた衝撃吸収性能を有することを見出し、先に出願した(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−345833号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した発泡体は、室温より低温側でその硬度が急激に上昇して柔軟性が損なわれると共に、衝撃吸収性が低下するという問題を有することが判明し、かかる点でなお改良の余地があった。
しかして、本発明の目的は、衝撃吸収性に優れ、かつ温度による硬度変化が小さい発泡体およびその用途を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の目的は、
[1](a)−20℃を超えて40℃以下の温度範囲に動的粘弾性測定により得られるtanδ(損失正接)の吸収ピークを有する、芳香族ビニルモノマーからなる重合体ブロックと共役ジエン系モノマーからなる重合体ブロックより構成されるブロック共重合体および/またはその水添物100質量部に対し、(b)−70℃〜−20℃の温度範囲に動的粘弾性測定により得られるtanδ(損失正接)の吸収ピークを有する、芳香族ビニルモノマーからなる重合体ブロックと共役ジエン系モノマーからなる重合体ブロックより構成されるブロック共重合体および/またはその水添物5〜50質量部;(c)軟化剤5〜50質量部;(d)粘着付与樹脂5〜50質量部を含有する発泡体用重合体組成物であって、該発泡体用重合体組成物100質量部に対して、熱分解型発泡剤0.5〜4質量部および有機過酸化物0.1〜1質量部を含有する発泡体用重合体組成物を発泡および架橋させてなる発泡体であって、ASTM D2240に準じて20℃でタイプC硬度計により測定した設置5秒後における硬度が10〜60の範囲にあり、かつ前記20℃条件での硬度と−10℃条件で同様に測定した硬度との硬度差が10以下であり、さらに15℃において、直径10cm×厚さ15mmの円筒状発泡体に直径10mm、質量6gの球体を50cmの高さから自然落下させて測定した反発弾性率が20%以下であることを特徴とする発泡体、
[2][1]の発泡体用重合体組成物に、さらに成分(a)100質量部に対して(e)エチレン−酢酸ビニル共重合体5〜100質量部および/または(f)無機フィラー5〜100質量部を含む発泡体用重合体組成物を発泡および架橋させてなる発泡体であって、ASTM D2240に準じて20℃でタイプC硬度計により測定した設置5秒後における硬度が10〜60の範囲にあり、かつ前記20℃条件での硬度と−10℃条件で同様に測定した硬度との硬度差が10以下であり、さらに15℃において、直径10cm×厚さ15mmの円筒状発泡体に直径10mm、質量6gの球体を50cmの高さから自然落下させて測定した反発弾性率が20%以下であることを特徴とする発泡体、
[3]履物底用である[1]または[2]の発泡体、および
[4][1]または[2]の発泡体を用いた履物底、を提供することにより達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の発泡体を構成する発泡体用重合体組成物に用いる成分について説明する。
成分(a)は、−20℃を超えて40℃以下の温度範囲に動的粘弾性測定により得られるtanδ(損失正接)の吸収ピークを有する、芳香族ビニルモノマーからなる重合体ブロックと共役ジエン系モノマーからなる重合体ブロックより構成されるブロック共重合体および/またはその水添物である。成分(a)のtanδの吸収ピークは−10℃〜30℃の温度範囲であるのがより好ましい
【0008】
成分(a)において、芳香族ビニルモノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ビニルトルエン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらの中でもスチレンが最も好ましい。
【0009】
成分(a)における芳香族ビニルモノマーの割合は5〜50質量%の範囲であるのが好ましく、5〜30質量%の範囲であるのがより好ましい。成分(a)における芳香族ビニルモノマーの割合が50質量%を超える場合には、tanδの吸収ピーク値が低くなる傾向となり、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の衝撃吸収性が不十分となる。一方、5質量%未満の場合は調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の力学的強度が低下する傾向となる。
【0010】
成分(a)において、共役ジエン系モノマーとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。これらの中でも1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。共役ジエン系モノマーは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0011】
成分(a)の数平均分子量は30000〜800000の範囲であるのが好ましく、50000〜400000の範囲であるのがより好ましい。数平均分子量が30000より小さい場合には、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の力学的強度が低下する傾向となり、一方、800000を越えると成分(a)の溶融粘度が高くなり、加工性が悪くなる傾向となる。なお、本明細書における数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の分子量である。
【0012】
成分(a)の芳香族ビニルモノマーからなる重合体ブロックの数平均分子量は2500〜40000の範囲であるのが好ましく、5000〜20000の範囲であるのがより好ましい。数平均分子量が2500より小さい場合には、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の力学的強度が低下する傾向となり、一方40000を越えると成分(a)の溶融粘度が高くなり、加工性が悪くなる傾向となる。
【0013】
成分(a)の共役ジエン系モノマーからなる重合体ブロックの数平均分子量は10000〜700000の範囲であるのが好ましく、50000〜250000の範囲であるのがより好ましい。数平均分子量が10000より小さい場合には、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の力学的強度が低下する傾向となり、一方700000を越えると成分(a)の溶融粘度が高くなり、加工性が悪くなる傾向となる。
【0014】
成分(a)における芳香族ビニルモノマーからなる重合体ブロックと共役ジエン系モノマーからなる重合体ブロックの結合様式は、線状、分岐状、放射状、あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。例えば、芳香族ビニルモノマーからなる重合体ブロックをA1で、共役ジエン系モノマーからなる重合体ブロックをB1で表したとき、A1−B1−A1型トリブロック共重合体、A1−B1−A1−B1型テトラブロック共重合体、(A1−B1)nX型共重合体(Xはカップリング剤残基を表し、nは2以上の整数を表す)などが挙げられる。
【0015】
本発明の発泡体を構成する発泡体用重合体組成物に用いる成分(b)は、−70℃〜−20℃の温度範囲に動的粘弾性測定により得られるtanδ(損失正接)の吸収ピークを有する、芳香族ビニルモノマーからなる重合体ブロックと共役ジエン系モノマーからなる重合体ブロックより構成されるブロック共重合体および/またはその水添物である。成分(b)のtanδの吸収ピークは−50℃〜−20℃の温度範囲であるのがより好ましい。成分(b)のtanδの吸収ピークが−70℃〜−20℃の温度範囲を超えると、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体において、室温より低温側では硬度が急激に上昇して、柔軟性が損なわれる。
【0016】
成分(b)において、芳香族ビニルモノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ビニルトルエン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらの中でもスチレンが最も好ましい。
【0017】
成分(b)における芳香族ビニルモノマーの割合は5〜70質量%の範囲であるのが好ましく、30〜60質量%の範囲であるのがより好ましい。成分(b)における芳香族ビニルモノマーの割合が70質量%を超える場合には、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の温度による硬度変化が大きくなる傾向となり、5質量%未満の場合は、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の力学的強度が低下する傾向となる。
【0018】
成分(b)において、共役ジエン系モノマーとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。これらの中でも1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。共役ジエン系モノマーは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0019】
成分(b)の数平均分子量は30000〜800000の範囲であるのが好ましく、50000〜400000の範囲であるのがより好ましい。数平均分子量が30000より小さい場合には、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の強度が低くなる傾向となり、一方、800000を越えると成分(b)の溶融粘度が高くなり、加工性が悪くなる傾向となる。
【0020】
成分(b)の芳香族ビニルモノマーからなる重合体ブロックの数平均分子量は2500〜70000の範囲であるのが好ましく、5000〜50000の範囲であるのがより好ましい。数平均分子量が2500より小さい場合には、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の力学的強度が低下する傾向となり、一方70000を越えると成分(b)の溶融粘度が高くなり、加工性が悪くなる傾向となる。
【0021】
成分(b)の共役ジエン系モノマーからなる重合体ブロックの数平均分子量は10000〜700000の範囲であるのが好ましく、50000〜250000の範囲であるのがより好ましい。数平均分子量が10000より小さい場合には、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の力学的強度が低下する傾向となり、一方700000を越えると成分(b)の溶融粘度が高くなり、加工性が悪くなる傾向となる。
【0022】
成分(b)における芳香族ビニルモノマーからなる重合体ブロックと共役ジエン系モノマーからなる重合体ブロックの結合様式は、線状、分岐状、放射状、あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。例えば、芳香族ビニルモノマーからなる重合体ブロックをA2で、共役ジエン系モノマーからなる重合体ブロックをB2で表したとき、A2−B2−A2型トリブロック共重合体、A2−B2−A2−B2型テトラブロック共重合体、(A2−B2)nX型共重合体(Xはカップリング剤残基を表し、nは2以上の整数を表す)などが挙げられる。
【0023】
本発明で用いる発泡体用重合体組成物において、成分(b)の配合量は成分(a)100質量部に対して5〜50質量部の範囲である。成分(b)の配合量が成分(a)100質量部に対して5質量部以下では、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の温度による硬度変化が大きくなり、一方50質量部を超えると、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の衝撃吸収性が不十分となる。
【0024】
共にブロック共重合体である成分(a)および成分(b)は、アルキルリチウム化合物を開始剤とするアニオン重合により得られる。重合方法としては、(イ)アルキルリチウム化合物を開始剤として芳香族ビニルモノマー、共役ジエン系モノマーを逐次重合させる方法;(ロ)芳香族ビニルモノマーをまず重合させて続いて共役ジエン系モノマーを重合し、次いでカップリング剤を加えてカップリングさせる方法;(ハ)ジリチウム化合物を開始剤として共役ジエン系モノマー、次いで芳香族ビニルモノマーを逐次重合させる方法などが挙げられる。
【0025】
アルキルリチウム化合物の例としては、アルキル残基の炭素原子数が1〜10のアルキルリチウム化合物が挙げられるが、特にメチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウム、ペンチルリチウムが好ましい。カップリング剤としてはジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジブロモベンゼンなどが挙げられる。また、ジリチウム化合物としてはナフタレンジリチウム、ジリチオヘキシルベンゼンなどが挙げられる。
【0026】
これらのアルキルリチウム化合物、ジリチウム化合物などの開始剤およびカップリング剤の使用量は、求める成分(a)および成分(b)の数平均分子量により決定されるものであるが、重合に用いられる全モノマー100質量部に対し、概ね開始剤0.01〜0.2質量部、カップリング剤0.04〜0.8質量部の範囲で用いられる。
【0027】
重合の際には、溶媒を使用するのが好ましい。溶媒としては、開始剤に対して不活性で、反応に悪影響を及ぼさない有機溶媒を用いるのが好ましく、特に炭素原子数が6〜12の脂肪族または芳香族炭化水素が好ましく、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、ベンゼン、キシレンなどが挙げられる。
【0028】
重合は、いずれの重合法による場合も、通常、0〜80℃の温度範囲で、0.5〜50時間の範囲で行われる。
【0029】
なお、成分(a)を得るためには、イソプレン、1,3−ブタジエンなどの共役ジエン系モノマーからなる重合体ブロックにおけるミクロ構造の3,4−結合および1,2−結合を増す方法が挙げられる。より詳細には、成分(a)を得るためには、重合の際に共触媒としてルイス塩基を用いる。ルイス塩基としては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン、N−メチルモルホリンなどのアミン系化合物が挙げられる。これらのルイス塩基の使用量は、開始剤として用いるアルキルリチウム化合物、ジリチウム化合物のリチウムのモル数に対して概ね0.1〜1000倍の範囲である。
【0030】
上記した方法による反応後、成分(a)、成分(b)は、反応液をメタノールなどのこれらの重合体の貧溶媒に注いで凝固させるか、または、反応液をスチームと共に熱水中に注いで溶媒を共沸によって除去(スチームストリッピング)した後、加熱あるいは減圧乾燥することにより得ることができる。
【0031】
また、本発明の発泡体を構成する発泡体用重合体組成物において成分(a)および/または成分(b)の水添物を用いる場合、上記で得られたブロック共重合体を、公知の方法により水添することでかかる水添物を得ることができる。水添反応としては、水添触媒の存在下、反応および水添触媒に対して不活性な溶媒に未水添状態の成分(a)または成分(b)を溶解させた状態で、分子状水素を反応させる方法が好ましく用いられる。なお、成分(a)または成分(b)を重合させた反応液をそのまま水添反応に付すことも可能である。水添触媒としては、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Niなどの金属をカーボン、アルミナ、珪藻土などの単体に担持させたものなどの不均一触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物などの組み合わせからなるチーグラー系触媒などが用いられる。反応は、通常、水素圧力が0.1〜20MPa、反応温度が20℃〜250℃、反応時間が0.1〜100時間の範囲で行われる。
【0032】
上記した方法による水添反応後、水添された成分(a)、成分(b)は、反応液をメタノールなどのこれらの重合体の貧溶媒に注いで凝固させるか、または、反応液をスチームと共に熱水中に注いで溶媒を共沸によって除去(スチームストリッピング)した後、加熱あるいは減圧乾燥することにより得ることができる。
【0033】
本発明の発泡体を構成する発泡体用重合体組成物に用いる軟化剤(c)としては、一般にゴム、プラスチックスに用いられる軟化剤を特に制限無く使用でき、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸誘導体;ホワイトオイル、ミネラルオイル、エチレンとα−オレフィンのオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、低分子量ポリイソプレンなどが挙げられる。これらの中でもプロセスオイル、ホワイトオイルが好ましい。軟化剤(c)の配合量は、成分(a)100質量部に対して5〜50質量部の範囲であり、10〜40質量部の範囲がより好ましい。軟化剤(c)の配合量が成分(a)100質量部に対して50質量部を超えると、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体のべとつきが激しくなり、また5質量部未満では、発泡体の硬度が室温より低温側で急激に上昇して柔軟性が損なわれる。
【0034】
本発明の発泡体を構成する発泡体用重合体組成物に用いる粘着付与樹脂(d)としては、例えばロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環式族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。粘着付与樹脂(d)の配合量は、(a)成分100質量部に対して5〜50質量部の範囲であり、15〜35質量部の範囲がより好ましい。粘着付与樹脂(d)の配合量が成分(a)100質量部に対して50質量部を越えると、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の力学的強度が実用的なレベルに達せず、一方5質量部未満では、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の温度による硬度変化が大きくなる。
【0035】
本発明の発泡体を構成する発泡体用重合体組成物の成分として必要に応じてさらに添加することのできるエチレン−酢酸ビニル共重合体(e)は、工業的に生産され、市販されているものを使用でき、その酢酸ビニル単位の含有量、数平均分子量などの物性に特に制限はない。エチレン−酢酸ビニル共重合体(e)を添加する場合、その配合量は、成分(a)100質量部に対して100質量部以下の範囲であり、60質量部以下の範囲がより好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体(e)の配合量が成分(a)100質量部に対して100質量部を越えると、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の衝撃吸収性が低下する。
【0036】
本発明の発泡体を構成する発泡体用重合体組成物の成分として必要に応じてさらに添加することのできる無機フィラー(f)としては、各種ゴム、プラスチックスに一般的に使用される無機フィラーを特に制限無く使用することができる。かかる無機フィラー(f)としては、例えばタルク、クレー、マイカ、ケイ酸カルシウム、ガラス、ガラス中空球、ガラス繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ホウ酸亜鉛、ドーソナイト、ポリリン酸アンモニウム、カルシウムアルミネート、ハイドロタルサイト類、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、活性炭、炭素中空球、チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素、雲母などが挙げられる。これらの中でも炭酸カルシウムが好ましい。無機フィラー(f)を添加する場合、その配合量は、成分(a)100質量部に対して100質量部以下の範囲であり、80質量部以下の範囲がより好ましい。無機フィラー(f)の配合量が成分(a)100質量部に対して100質量部を超えると、調製した発泡体用重合体組成物から得られる発泡体の表面がざらつくなどの欠点が顕在化する。
【0037】
本発明の発泡体を構成する発泡体用重合体組成物は、上記した成分(a)、成分(b)、軟化剤(c)、粘着付与樹脂(d)および必要に応じてさらにエチレン−酢酸ビニル共重合体(e)および/または無機フィラー(f)を所定量で配合し、ロール、ニーダーなどを用いて混練して得ることができる。
【0038】
上記発泡体用重合体組成物には、本発明の主旨を損なわない範囲で他のポリマーを含有していてもよい。かかるポリマーとしては、例えばエチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、1,2−ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマーなどのアセタール系樹脂、ポリメチルメタアクリレート系樹脂等のアクリル系樹脂などが挙げられる。
【0039】
また、上記した発泡体用重合体組成物には、必要に応じて他の添加剤、例えば熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、撥水剤、防水剤、親水性付与剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、電磁波シールド性付与剤、透光性調整剤、蛍光剤、摺動性付与剤、透明性付与剤、アンチブロッキング剤、金属不活性化剤、防菌剤などをさらに添加してもよい。
【0040】
本発明の発泡体は、上記してきた発泡体用重合体組成物を公知の方法で発泡させることにより得ることができる。例えば、上記した成分(a)、成分(b)、軟化剤(c)、粘着付与樹脂(d)およびさらに必要に応じてエチレン−酢酸ビニル共重合体(e)および/または無機フィラー(f)を所定量で配合して発泡体用重合体組成物を調製する際に、熱分解型発泡剤および有機過酸化物を添加し、熱分解型発泡剤および有機過酸化物が分解しない温度でロール、ニーダーなどを用いて混練して組成物を調製し、得られた該組成物を密閉式金型に仕込み、プレス装置で加圧しながら所定温度(熱分解型発泡剤が分解する温度)で加熱することにより得られる(発泡と架橋を同時に行う)。また、前記方法において、密閉式金型中で加圧しながら加熱して熱分解型発泡剤を部分的に分解させた段階で冷却、放圧して中間発泡体を得、得られた中間発泡体を常圧下で加熱(例えば熱媒循環ジャケットを備えた発泡機中での加熱)することにより発泡体を得る、二段発泡法を適用することもできる。
【0041】
上記した熱分解型発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、ジエチルアゾジカルボキシレートなどのアゾ化合物;ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリニトロトリメチルトリアミンなどのニトロソ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ジスルホンヒドラジドジフェニルスルホンなどのスルホニルヒドラジド化合物;重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウムなどの無機発泡剤などが挙げられる。これらの熱分解型発泡剤は、発泡体用重合体組成物100質量部に対して0.5〜4質量部の範囲で用いる。
【0042】
また、上記有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイド、イソプロピルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイドなどが挙げられる。これらの有機過酸化物は、発泡体用重合体組成物100質量部に対して0.1〜1質量部の範囲で用いる。
【0043】
本発明の範囲となる発泡体は、上記してきた発泡体用重合体組成物を発泡させてなる発泡体であって、ASTM D2240に準じて20℃でタイプC硬度計により測定した設置5秒後における硬度が10〜60の範囲にあり、かつ前記20℃条件での硬度と−10℃条件で同様に測定した硬度との硬度差が10以下であり、さらに15℃において、直径10cm×厚さ15mmの円筒状発泡体に直径10mm、質量6gの球体を50cmの高さから自然落下させて測定した反発弾性率が20%以下であることを特徴とする発泡体である。この要件を満足することにより、本発明の発泡体は衝撃吸収性に優れ、かつ温度による硬度変化が小さいという特性を有する。
【0044】
本発明の発泡体は、衝撃吸収性に優れ、かつ温度による硬度変化が小さく、それらの特性を活かして、例えば履物(スポーツシューズ、医療用シューズ、サンダルなど)の底や本体の材料、テニスラケット、ゴルフクラブ、バットなどのグリップ、プロテクターなどのスポーツ用品、ドア、窓枠材、床材などの建築用資材、アシストグリップ、ハンドル、エアバックカバーなどの自動車内装部品、モールなどの自動車外装部品、OA機器の各種キートップ、テレビ、ステレオ、掃除機などの家電部品などの広範な用途に有効に使用することができる。これらの用途の中でも、本発明の発泡体用重合体組成物から得られる発泡体は、衝撃吸収性に優れ、かつ温度による硬度変化が小さいという特性により、特に履物底用途に適している。
【0045】
本発明の発泡体から製造した履物底は、前記した優れた特性により、良好な衝撃吸収性を有し、その上、通常使用する温度範囲でその硬度変化が小さいため、足(脚)腰に与えるダメージが小さい。
【0046】
本発明の発泡体を履物底に用いる場合は、履物の製造において従来から採用されている既知の方法によって履物底を形成することができる。例えば、甲皮などの履物の本体部分を射出成形装置の型に配置した状態で、本発明の発泡体を構成する発泡体用重合体組成物に熱分解型発泡剤及び有機過酸化物を添加した組成物を射出成形して、成形と同時に発泡および架橋させた履物底を本体部分に接合させてもよいし、発泡体用重合体組成物から得られる発泡体を用いて履物底を予め製造しておいて、それを履物本体の底部分に接着剤などを用いて接着してもよい。
【0047】
【実施例】
以下、実施例によって、本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。なお、参考例および実施例中の各種測定値は以下の方法により求めた。
【0048】
成分(a)または成分(b)の水添率
水添反応前後のブロック共重合体のヨウ素価を測定し、その比より算出した。
成分(a)または成分(b)のtanδの吸収ピーク温度
レオバイブロン(オリエンテック社製)DDV−IIIを用い、110Hzにて粘弾性スペクトルを測定することにより求めた。
成分(a)または成分(b)のスチレン含有量
H―NMRスペクトルを測定して算出した。
【0049】
発泡体の反発弾性率
実施例および比較例で得られた発泡体から、直径10cm×厚さ15mmの円筒状発泡体試験片を作成した。この試験片を平面に置き、雰囲気温度15℃条件にて、直径10mm、質量6gの球体を50cmの高さから試験片上に自然落下させ、そのときの球体の跳ね返り高さを測定して、下式により反発弾性率を算出した。反発弾性率が小さいほど衝撃吸収性能に優れる。
反発弾性率(%)=100×Hr/50
[Hr:球体の跳ね返り高さ(cm)]
【0050】
発泡体の硬度
実施例および比較例で得られた発泡体を用いて、ASTM D2240に準じてタイプC硬度計を用いて、−10℃および20℃の2種類の温度雰囲気下において、それぞれ設置5秒後の硬度を求めた。また、−10℃における硬度と20℃における硬度との差を求め、硬度差とした。
【0051】
参考例1
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン1300ml、開始剤としてsec−ブチルリチウム2.3ml、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン6mlを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン36mlを加えて3時間重合させ、引き続いてイソプレン380mlを加えて4時間重合を行い、その後さらにスチレン36mlを添加して、合計で10時間重合させた。得られた重合反応液をメタノール10000ml中に注いで再沈殿操作を行い、析出した固体を濾別して50℃で20時間乾燥することによりスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、これを共重合体(I)と略称する)を得た。得られた共重合体(I)のスチレン含有量は20質量%、数平均分子量は140000、tanδの吸収ピーク温度は5℃であった。
【0052】
参考例2
参考例1において、溶媒としてシクロヘキサン1300ml、開始剤としてsec−ブチルリチウム3.8ml、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン12ml、重合させるモノマーとしてスチレン39ml、イソプレン410ml、スチレン39mlを逐次添加して重合させた以外は参考例1と同様の方法で重合反応を行い、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、これを共重合体(II)と略称する)を得た。得られた共重合体(II)のスチレン含有量は20質量%、数平均分子量は100000、tanδの吸収ピーク温度は30℃であった。
【0053】
参考例3
参考例1において、溶媒としてシクロヘキサン900ml、開始剤としてsec−ブチルリチウム3.0ml、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン6ml、重合させるモノマーとしてスチレン35ml、イソプレン350ml、スチレン35mlを逐次添加して重合させた以外は参考例1と同様の方法で重合反応を行い、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を得た。
続いて、得られたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体40gをシクロヘキサン500mlに溶解し、水添触媒としてPd−C(Pd担持量:5質量%)を該共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりPd−Cを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、これを共重合体(III)と略称する)を得た。得られた共重合体(III)のスチレン含有量は20質量%、数平均分子量は120000、tanδの吸収ピーク温度は−10℃であり、水添率は80%であった。
【0054】
参考例4
参考例1において、溶媒としてシクロヘキサン1200ml、開始剤としてsec−ブチルリチウム2.5ml、重合させるモノマーとしてスチレン125ml、ブタジエン240ml、スチレン125mlを逐次添加して重合させた以外は参考例1と同様の方法で重合反応を行い、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、これを共重合体(IV)と略称する)を得た。得られた共重合体(IV)のスチレン含有量は60重量%、数平均分子量は200000、tanδの吸収ピーク温度は−45℃であった。
【0055】
実施例1〜3および比較例1〜3
発泡体用重合体組成物としての各成分、および熱分解性発泡剤(商品名「セルコム JTR」、クンヤンケミカル社製;アゾジカルボンアミド)ならびに有機過酸化物(商品名「カヤクミル D」、日本化薬社製;ジクミルパーオキサイド)を、表1に示した配合に基づき、ニーダーおよびロールにより120℃で混練して組成物を調製し、該組成物を密閉式金型に仕込み、プレス装置にて15MPaで加圧しながら、160℃で20分間加熱することで発泡体を得た。得られた発泡体の物性を表1に併せて示す。
【0056】
【表1】
Figure 0003922446
【0057】
表1より、実施例1〜3で得られる発泡体は、反発弾性率が小さく良好な衝撃吸収性を示すと共に、20℃と−10℃における硬度差が少なく、温度による硬度変化が小さいことがわかる。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、衝撃吸収性に優れ、かつ温度による硬度変化が小さい発泡体を得ることができる。得られる発泡体は、その特性を活かして各種の用途、特に履物底用途に有効に利用することができる。

Claims (4)

  1. (a)−20℃を超えて40℃以下の温度範囲に動的粘弾性測定により得られるtanδ(損失正接)の吸収ピークを有する、芳香族ビニルモノマーからなる重合体ブロックと共役ジエン系モノマーからなる重合体ブロックより構成されるブロック共重合体および/またはその水添物100質量部に対し、(b)−70℃〜−20℃の温度範囲に動的粘弾性測定により得られるtanδ(損失正接)の吸収ピークを有する、芳香族ビニルモノマーからなる重合体ブロックと共役ジエン系モノマーからなる重合体ブロックより構成されるブロック共重合体および/またはその水添物5〜50質量部;(c)軟化剤5〜50質量部;(d)粘着付与樹脂5〜50質量部を含有する発泡体用重合体組成物であって、該発泡体用重合体組成物100質量部に対して、熱分解型発泡剤0.5〜4質量部および有機過酸化物0.1〜1質量部を含有する発泡体用重合体組成物を発泡および架橋させてなる発泡体であって、ASTM D2240に準じて20℃でタイプC硬度計により測定した設置5秒後における硬度が10〜60の範囲にあり、かつ前記20℃条件での硬度と−10℃条件で同様に測定した硬度との硬度差が10以下であり、さらに15℃において、直径10cm×厚さ15mmの円筒状発泡体に直径10mm、質量6gの球体を50cmの高さから自然落下させて測定した反発弾性率が20%以下であることを特徴とする発泡体。
  2. 請求項1記載の発泡体用重合体組成物に、さらに成分(a)100質量部に対して(e)エチレン−酢酸ビニル共重合体5〜100質量部および/または(f)無機フィラー5〜100質量部を含む発泡体用重合体組成物を発泡および架橋させてなる発泡体であって、ASTM D2240に準じて20℃でタイプC硬度計により測定した設置5秒後における硬度が10〜60の範囲にあり、かつ前記20℃条件での硬度と−10℃条件で同様に測定した硬度との硬度差が10以下であり、さらに15℃において、直径10cm×厚さ15mmの円筒状発泡体に直径10mm、質量6gの球体を50cmの高さから自然落下させて測定した反発弾性率が20%以下であることを特徴とする発泡体。
  3. 履物底用である請求項1または請求項2記載の発泡体。
  4. 請求項1または請求項2記載の発泡体を用いた履物底。
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