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JP3914083B2 - 車両用ブレーキ液圧制御装置 - Google Patents

車両用ブレーキ液圧制御装置 Download PDF

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JP3914083B2
JP3914083B2 JP2002092596A JP2002092596A JP3914083B2 JP 3914083 B2 JP3914083 B2 JP 3914083B2 JP 2002092596 A JP2002092596 A JP 2002092596A JP 2002092596 A JP2002092596 A JP 2002092596A JP 3914083 B2 JP3914083 B2 JP 3914083B2
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hydraulic pressure
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庄平 松田
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Honda Motor Co Ltd
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用ブレーキ液圧制御装置に関し、特に、出力ポートを有する調圧バルブシリンダに摺動可能に嵌合される摺動部材に、出力ポートの出力液圧に基づく反力と、ブレーキ操作部材からシミュレータばねを介して入力されるブレーキ操作力とを作用せしめ、反力およびブレーキ操作力が釣り合うように摺動部材が前後に移動するのに伴って液圧供給源からの液圧を調圧して出力ポートから出力させ、その倍力液圧でマスタシリンダを作動せしめることにより、倍力したブレーキ液圧を車輪ブレーキに作用せしめるようにした車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、かかる装置は、たとえば特公昭52−187号公報等で既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなブレーキ液圧制御装置では、液圧供給源の失陥時にもブレーキ操作部材の操作によるマスタシリンダでのブレーキ液圧発生を確保する必要があり、その際、ブレーキ操作フィーリング上、シミュレータばねによる無効ストロークの増大や反力の増大が生じないようにすることが望まれる。そのために、上記従来のものでは、調圧バルブシリンダを軸方向移動可能に貫通するロッドが入力部材およびマスタピストン間に設けられており、倍力液圧室に倍力液圧が発生しないときには前記ロッドでマスタピストンを押すことで無効ストロークおよび反力の増加を抑えるようにしている。
【0004】
しかるに、上記従来のものでは、液圧供給源が正常であるときにも、調圧バルブシリンダおよび摺動部材がともに前進する構成となっているので、ブレーキ液圧制御装置全体のコンパクト化を図る上では不利である。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、コンパクト化を可能としつつ、液圧供給源失陥時の無効ストロークおよび反力の増加を防止し得るようにした車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、車輪ブレーキに接続される出力液圧室に前面を臨ませるとともに後退方向にばね付勢されるマスタピストンが後退限を規制されて第1シリンダ体に摺動可能に嵌合されて成るマスタシリンダと、第1シリンダ体に一体または別体にして同軸に連設される第2シリンダ体と、前記マスタピストンの背面との間に倍力液圧室を形成しつつ後退限を規制されて第2シリンダ体に摺動可能に嵌合されるとともに前記倍力液圧室に通じる出力ポート、液圧供給源に通じる入力ポート、ならびにリザーバに通じる解放ポートが設けられる調圧バルブシリンダと、前記出力ポートおよび前記解放ポートを連通させる後退位置ならびに前記出力ポートおよび前記入力ポートを連通させる前進位置間での摺動を可能とするとともに前記倍力液圧室の液圧に基づく反力が後退位置側に向けて作用するようにして前記調圧バルブシリンダに嵌合される摺動部材と、ブレーキ操作部材からのブレーキ操作力を前進位置側に向けて前記摺動部材に伝達するシミュレータばねとを備える車両用ブレーキ液圧制御装置において
記マスタピストンに後方から当接することを可能として第2シリンダ体に摺動可能に嵌合される前記調圧バルブシリンダには、前記摺動部材が前記前進位置からさらに前進することを可能として嵌合され
前端を閉じた有底円筒状に形成されるとともに前記前端を前記摺動部材の後端に一体または別体にして同軸に連接せしめたストロークシリンダが、前記摺動部材を前記前進位置からさらに前進させるように前進する際には前記調圧バルブシリンダに前進方向の力を付与し得るようにして該調圧バルブシリンダの後方に配置され、
記ブレーキ操作部材に連なる入力ピストンが、前記ストロークシリンダの前記前端との間にストローク液室を形成してストロークシリンダに相対摺動可能に嵌合され
記ストローク液室が、前記摺動部材を前記前進位置からさらに前進させるようにして前記調圧バルブシリンダに前記ストロークシリンダが近接するのに応じて閉弁する開閉弁を介して、前記リザーバに接続されることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、液圧供給源が正常である場合には、ブレーキ操作部材のブレーキ操作に応じたブレーキ操作力がシミュレータばねを介して摺動部材に前進方向に作用し、該摺動部材が調圧バルブシリンダ内で前進位置に摺動することに応じて、液圧供給源からの液圧が調圧バルブシリンダの入力ポートから出力ポートを経て倍力液圧室に作用する。この倍力液圧室の液圧は反力として摺動部材に後退方向に作用することになり、摺動部材はブレーキ操作力および反力がバランスするようにして前進位置および後退位置間を移動し、それに応じてブレーキ操作力を増幅した倍力液圧を倍力液圧室で得ることができ、この倍力液圧室の液圧でマスタシリンダのマスタピストンを作動せしめることにより、倍力したブレーキ液圧を車輪ブレーキに作用せしめることができる。また液圧供給源の失陥時には、倍力液圧室に倍力液圧が生じることはなく、摺動部材に後退方向の反力が作用することはないので、ブレーキ操作力の増大に応じてストロークシリンダは、摺動部材を前進位置からさらに前進させるように前進して調圧バルブシリンダに近接し、それによりリザーバおよびストローク液室間の開閉弁が閉弁してストローク液室が液圧ロック状態となる。これにより、シミュレータばねの作動が抑制されることになり、ブレーキ操作部材から入力されるブレーキ操作力が、入力ピストンからストロークシリンダに伝わり、さらにストロークシリンダから調圧バルブシリンダに前進方向の力が付与されることになり、調圧バルブシリンダがマスタピストンを押すことで、マスタシリンダからブレーキ液圧を出力することが可能となる。すなわち液圧供給源の失陥時には、シミュレータばねによる無効ストロークおよび反力の増加を抑えることができ、しかも液圧供給源が正常であるときには、調圧バルブシリンダは、その前面に倍力液圧室の液圧が作用するので前進することはなく、調圧バルブシリンダの前進ストロークを確保する必要がないので、ブレーキ液圧制御装置全体のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0009】
図1〜図8は本発明の一実施例を示すものであり、図1は非作動状態でのブレーキ液圧制御装置の縦断面図、図2はブレーキ液圧制御装置の前部拡大図、図3はブレーキ液圧制御装置の後部拡大図、図4は液圧供給源が正常な状態で小さなブレーキ操作力を入力したときの図1に対応した縦断面図、図5は液圧供給源が正常な状態での操作特性を示す図、図6は液圧供給源が正常な状態で中程度のブレーキ操作力を入力したときの図1に対応した縦断面図、図7は液圧供給源が正常な状態で大きなブレーキ操作力を入力したときの図1に対応した縦断面図、図8は液圧供給源が異常な状態でのブレーキ操作時の図1に対応した縦断面図である。
【0010】
先ず図1において、このブレーキ液圧制御装置は、たとえばタンデム型であるマスタシリンダMと、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル1から入力されるブレーキ操作力に応じて液圧供給源2の液圧を調圧して前記マスタシリンダMに作用せしめる液圧ブースタ3と、前記ブレーキペダル1および液圧ブースタ3間に介装されるシミュレータばね4とを備える。
【0011】
マスタシリンダMは、前端を閉じた有底円筒状の第1シリンダ体5と、前部出力液圧室6に前面を臨ませて第1シリンダ体5に摺動可能に嵌合される前部マスタピストン8と、前部マスタピストン8を後方側に向けてばね付勢する前部戻しばね10と、後部出力液圧室7に前面を臨ませて第1シリンダ体5に摺動可能に嵌合される後部マスタピストン9と、後部マスタピストン9を後方側に向けてばね付勢する後部戻しばね11とを備える。
【0012】
図2を併せて参照して、第1シリンダ体5は前端が端壁5aで閉じられるシリンダ孔5bを有しており、前部マスタピストン8は前記端壁5aとの間に前部出力液圧室6を形成してシリンダ孔5bに摺動可能に嵌合されており、前部出力液圧室6に通じる前部出力液圧路12が第1シリンダ体5に接続され、この前部出力液圧路12が車輪ブレーキ14Aに接続される。前部マスタピストン8の外周および第1シリンダ体5の内周間には環状の前部補給室15が形成され、この前部補給室15はリザーバRに連通される。
【0013】
リザーバR内は、マスタシリンダ用貯留室16と、液圧供給源用貯留室17とに隔壁18で区画されており、しかもマスタシリンダ用貯留室16は前部貯留室16aと後部貯留室16bとに隔壁19で区画される。そして前部補給室15は前部貯留室16aに連通される。
【0014】
前部補給室15および前部出力液圧室6間で前部マスタピストン8の外周には前部補給室15から前部出力液圧室6へのブレーキ液の流通を許容するカップシール20が装着され、前部補給室15および後部出力液圧室7間で前部マスタピストン8の外周には前部補給室15および後部出力液圧室7間をシールする環状のシール部材21が装着される。
【0015】
後部マスタピストン9は、シリンダ孔5bに摺動可能に嵌合される大径ピストン22と、大径ピストン22の中央部を液密にかつ摺動自在に貫通する小径ピストン23とで構成されるものであり、小径ピストン23の前端には、大径ピストン22の前端中央部に係合する係合鍔23aが設けられる。
【0016】
後部出力液圧室7は、前部マスタピストン8および後部マスタピストン9間で第1シリンダ体5内に形成されるものであり、後部出力液圧室7に通じる後部出力液圧路13が第1シリンダ体5に接続され、この後部出力液圧路13が他の車輪ブレーキ14Bに接続される。
【0017】
後部マスタピストン9における大径ピストン22の外周および第1シリンダ体5の内周間には環状の後部補給室25が形成され、この後部補給室25はリザーバRの後部貯留室16bに常時連通される。しかも後部補給室25および後部出力液圧室7間で大径ピストン22の外周には後部補給室25から後部出力液圧室7へのブレーキ液の流通を許容するカップシール26が装着され、後部マスタピストン9がその背面を臨ませる倍力液圧室28および後部補給室25間で後部マスタピストン9の外周には後部補給室25および倍力液圧室28間をシールする環状のシール部材27が装着される。
【0018】
後部マスタピストン9における小径ピストン23の前端には第1リテーナ77が当接され、前部マスタピストン8の後端には第2リテーナ78が当接される。後部戻しばね11は、第1および第2リテーナ77,78間に縮設されており、第1および第2リテーナ77,78は、小径ピストン23および前部マスタピストン8に実質的には固定される。
【0019】
また第1および第2リテーナ77,78の中央部を軸方向移動可能に貫通するロッド79が前部および後部マスタピストン8,9と同軸に配置されており、該ロッド79の前端には第2リテーナ78の中央部に前方側から係合、当接する前部係合鍔79aが設けられ、ロッド79の後部には第1リテーナ77の中央部に後方側から当接する後部係合鍔79bが設けられ、前部マスタピストン8およびロッド79間には、前部係合鍔79aを第2リテーナ78に係合、当接させるようにロッド79を後方側に付勢するばね80が設けられ、このばね80のばね荷重は後部戻しばね11に比べて小さく設定される。
【0020】
このように前部係合鍔79aを第2リテーナ78に係合せしめたロッド79の後部係合鍔79bが第1リテーナ77に係合することにより、前部および後部マスタピストン8,9間の最大間隔が規制される。
【0021】
前記後部戻しばね11で後方側にばね付勢された後部マスタピストン9の後退限は、シリンダ孔5bの内面から半径方向内方に張り出すようにして第1シリンダ体5の後端に設けられたストッパ29に、後部マスタピストン9における大径ピストン22の外周部が前方から当接することで規制される。而して後部マスタピストン9が後退限にあるときには前部マスタピストン8も後退限にあり、前部マスタピストン8の後退限位置では、前部出力液圧室8がリザーバRの前部貯留室16aに直接連通する。
【0022】
後部マスタピストン9における大径ピストン22の内周および小径ピストン23の外周間には、後部補給室25に通じる環状室81が形成されており、後部出力液圧室7および環状室81間をシールする環状のシール部材82が小径ピストン23の外周に摺接するようにして大径ピストン22の内周に装着され、倍力液圧室28および環状室81間をシールする環状のシール部材83が大径ピストン22の内周に摺接するようにして小径ピストン23の外周に装着される。
【0023】
小径ピストン23の前部には、該小径ピストン23が後退限にある状態で環状室81および後部出力液圧室7間を連通するセンターバルブ型のリリーフ弁84が設けられており、該リリーフ弁84は、小径ピストン23の前端中央部に設けられた凹部85の閉塞端中央部に開口するとともに前記環状室81に通じるようにして小径ピストン23に設けられる弁孔86と、該弁孔86の凹部85への開口端を閉鎖することを可能として前記凹部85に収納される弁体87とで構成されるものであり、ばね80で後方すなわち弁孔86側に付勢されるロッド79の後端に前記弁体87が形成され、第1リテーナ77には凹部85内を後部出力液圧室7に通じさせる複数の連通孔88…が設けられる。
【0024】
このようなリリーフ弁84によれば、後部マスタピストン9の大径ピストン22がストッパ29に当接した後退限位置から後部戻しばね11を圧縮しつつ前進したとき、ならびにストッパ29に当接した大径ピストン22を置き去りにして小径ピストン23が後部戻しばね11を圧縮しつつ前進したときに、弁体87が凹部85の閉塞端に着座して弁孔86を閉鎖し、環状室81および後部出力液圧室7間が遮断状態となる。一方、大径ピストン22および小径ピストン23がともに後退限位置にある状態では、弁体87が凹部85の閉塞端から離れて弁孔86を開放し、環状室81および後部出力液圧室7間が連通状態となる。
【0025】
図3を併せて参照して、液圧ブースタ3は、第2シリンダ体30と、第2シリンダ体30に摺動可能に嵌合される調圧バルブシリンダ31と、該調圧バルブシリンダ31に摺動可能に嵌合される摺動部材としてのスプール弁32とを備える。
【0026】
第2シリンダ体30は、マスタシリンダMの第1シリンダ体5に一体または別体にして同軸に連設されるものであり、この実施例では第1シリンダ体5の外面に面一に連なる外面を有して第1シリンダ体5に一体に連設される。
【0027】
第2シリンダ体30には、前方側の大径孔30aと、大径孔30aよりも小径である後方側の小径孔30bとが、前方に臨む環状の規制段部30cを両孔30a,30b間に形成するようにして同軸に設けられ、この実施例では、大径孔30aがマスタシリンダMにおけるシリンダ孔5bと同径、同軸となるようにして第2シリンダ体30に形成され、ストッパ29がシリンダ孔5bおよび大径孔30a間に配置される。また第2シリンダ体30の後端すなわち第1シリンダ体5とは反対側の端部は、第2シリンダ体30に固定される蓋部材33で液密に閉じられる。
【0028】
調圧バルブシリンダ31は、マスタシリンダMにおける後部マスタピストン9との間に倍力液圧室28を形成するとともに前記蓋部材33との間に液圧解放室34を形成して第2シリンダ体30の大径孔30aに摺動可能に嵌合されており、規制段部30cに前方側から当接することにより、調圧バルブシリンダ31の後退限が規制される。
【0029】
調圧バルブシリンダ31の外周および大径孔30aの内周間には環状室36が形成されており、この環状室36および倍力液圧室28間をシールする一対のシール部材37…と、前記環状室36および液圧解放室34間をシールする一対のシール部材38…とが調圧バルブシリンダ31の外周に装着される。
【0030】
液圧供給源2は、リザーバRの液圧供給源用貯留室17に吸入口が連なるポンプ39と、該ポンプ39の吐出口に接続されるアキュームレータ40とで構成されており、この液圧供給源2が前記環状室36に接続される。また液圧解放室34は、リザーバRの液圧供給源用貯留室17に接続される。
【0031】
調圧バルブシリンダ31の中央部には、装着孔41と、前方に臨む環状の第1段部42を装着孔41との間に形成するようにして装着孔41よりも小径に形成される摺動孔43と、後方に臨む環状の第2段部44を摺動孔43との間に形成して摺動孔43よりも大径に形成されるばね収容孔45とが、前方側から順にかつ調圧バルブシリンダ31の軸方向全長にわたって設けられる。
【0032】
装着孔41には、マスタシリンダMの後部マスタピストン9における小径ピストン23の後端に当接し得る当接突部46aを閉塞端外面に備えて有底筒状に形成される保持部材46が圧入され、この保持部材46には、前記摺動孔43の前端を閉じる円盤状の弾性部材47が保持される。しかも弾性部材47の前面および保持部材46間には倍力液圧室28に通じる反力液圧室48が形成される。
【0033】
調圧バルブシリンダ31には、環状室36を介して液圧供給源2に通じる入力ポート51と、倍力液圧室28に通じる出力ポート52と、液圧解放室34を介してリザーバRに通じる解放ポート53とが設けられており、入力ポート51は摺動孔43の前部寄り内面に開口され、出力ポート52は入力ポート51よりも後方側で摺動孔43の内面に開口される。また摺動孔43の後端が解放ポート53として機能する。
【0034】
スプール弁32の外周には、出力ポート52に常時通じる環状凹部54が設けられており、該スプール弁32は、環状凹部54を介して前記入力ポート51および前記出力ポート52を連通させる前進位置と、環状凹部54を介して前記出力ポート52および解放ポート53を連通させる後退位置(図1および図3で示す位置)との間で摺動することを可能として摺動孔43に摺動可能に嵌合される。
【0035】
ところで、前進位置にある状態で前記スプール弁32の前端は弾性部材47に接触するのであるが、該スプール弁32は、弾性部材47を前方に撓ませて前記前進位置からさらに前進することも可能である。またスプール弁32が後退位置にあるときに該スプール弁32の前端および弾性部材47間には空間55が生じることになるが、この空間55の加減圧によってスプール弁32の作動が不円滑となることを回避するために、調圧バルブシリンダ31には、前記空間55を液圧解放室34に通じさせる通路56が設けられる。
【0036】
スプール弁32の後端には半径方向外方に張り出す鍔部32aが設けられており、この鍔部32aおよび調圧バルブシリンダ31間に設けられる弁ばね57で、スプール弁32は後方側に向けてばね付勢される。而して弁ばね57の一部はばね収容孔45に収容されるものであり、弁ばね57は第2段部44と鍔部32aとの間に縮設される。
【0037】
スプール弁32の後端には、前端を閉じた有底円筒状に形成されて調圧バルブシリンダ31の後方に配置されるストロークシリンダ58の前記前端が一体または別体にして同軸に連接されるものであり、この実施例では、スプール弁32とは別体であるストロークシリンダ58の閉塞された前端中央がスプール弁32の後端に当接され、弁ばね57が発揮するばね力により、スプール弁32およびストロークシリンダ58は、実質的には一体に作動する。
【0038】
ストロークシリンダ58には、入力ピストン59が相対摺動可能に嵌合されており、この入力ピストン59とストロークシリンダ58の閉塞された前端との間にストローク液室60が形成される。またストロークシリンダ58の前記前端には、ストローク液室60を液圧解放室34に通じさせ得る通路61が設けられており、ストローク液室60が液圧解放室34に通じている限り、ストロークシリンダ58および入力ピストン59の軸方向相対摺動が許容される。
【0039】
またストロークシリンダ58の前端および調圧バルブシリンダ31の後端間には、前記スプール弁32をその前進位置からさらに前進させるようにして調圧バルブシリンダ31にストロークシリンダ58が近接するのに応じて閉弁する開閉弁62が設けられるものであり、この開閉弁62は、ストロークシリンダ58の前端への前記通路61の開口端を囲むような環状に形成される弁体63が、調圧バルブシリンダ31の後端に弾性的に接触したときに前記通路61および液圧解放室34間を遮断するようにしてストロークシリンダ58の前端に設けられて成るものである。
【0040】
而して、前記開閉弁62が閉弁した状態では、ストロークシリンダ58の前進動作に応じて該ストロークシリンダ58から開閉弁62の弁体63を介して調圧バルブシリンダ31に前進方向の力が伝達されるものであり、ストロークシリンダ58は、スプール弁32をその前進位置からさらに前進させるように前進する際には調圧バルブシリンダ31に前進方向の力を付与しつつ前進することが可能である。
【0041】
入力ピストン59には、蓋部材33を液密にかつ摺動自在に貫通するピストンロッド64が一体に連設される。このピストンロッド64の後部には、ブレーキペダル1に連なる入力ロッド65の前端が首振り可能に連接されており、ブレーキペダル1の操作に応じたブレーキ操作力が入力ピストン59に入力され、このブレーキ操作力は入力ピストン59からシミュレータばね4を介して前記スプール弁32にその前進位置側に向けて作用する。
【0042】
シミュレータばね4は、セット荷重の異なる複数たとえば3つの第1〜第3コイルばね66,67,68を含むものであり、入力ピストン59と、スプール弁32の後端に同軸に当接したストロークシリンダ58との間に介装される。
【0043】
ピストンロッド64には、蓋部材33に前方側から対向するようにして半径方向外方に張り出す鍔部64aが一体に設けられており、この鍔部64aの背面に後端を係合可能とするとともに鍔部64aを相対移動可能に貫通する第1リテーナ69の前端が、ストロークシリンダ58の中間部外周に設けられた係合段部58aに当接される。而してセット荷重が最も小さい第1コイルばね66は、第1リテーナ69の前端および鍔部64a間に縮設される。
【0044】
ストロークシリンダ58の前部には半径方向外方に張り出す鍔部58bが一体に設けられており、ピストンロッド64の鍔部64aに後方側から係合し得る第2リテーナ70の前端が前記鍔部58bの後面に当接される。
【0045】
第2リテーナ70には、前方側に臨む環状の第1段部71と、第1段部71の前方に配置されて前方に臨む環状の第2段部72とが形成されており、第1コイルばね66よりもセット荷重を大きくして第1コイルばね66を同心状に囲繞する第2コイルばね67が、第1段部71に前方から当接係合し得る第3リテーナ73と第2リテーナ70の前端との間に縮設される。
【0046】
また第2コイルばね67よりもセット荷重が大きく設定されて第2コイルばね67を同心状に囲繞する第3コイルばね68が、第2段部72に前方から当接係合し得る第4リテーナ74と第2リテーナ70の前端との間に縮設される。
【0047】
しかも第3リテーナ73は、ストロークシリンダ58に対して入力ピストン59およびピストンロッド64が前進する際に、ピストンロッド64の鍔部64aを後方から当接させ得る形状に形成されており、第4リテーナ74は、前記鍔部64aで前方側に押される第3リテーナ73を後方から当接させ得る形状に形成される。
【0048】
このようなシミュレータばね4では、ブレーキペダル1からのブレーキ操作入力により、ストロークシリンダ58に対して入力ピストン59およびピストンロッド64が前進するのに応じて、ピストンロッド64の鍔部64aは、第1〜第3コイルばね66〜68を順次圧縮しつつ前進することになる。
【0049】
すなわちシミュレータばね4は、セット荷重が異なる第1〜第3コイルばね66〜67を直列接続して構成されることになり、しかも第1〜第3コイルばね66〜68は同心円状に配置されるものであるので、第2シリンダ体30の軸線に沿う方向でシミュレータばね4をコンパクトに構成し、ブレーキ液圧制御装置のコンパクト化に寄与することができる。
【0050】
次にこの実施例の作用について説明すると、液圧供給源2が正常であって充分高圧の液圧が液圧ブースタ2に供給される状態で、ブレーキペダル1をブレーキ操作したときには、シミュレータばね4における第1コイルばね66のセット荷重よりも弁ばね57のセット荷重が小さく設定されているので、先ずピストンロッド64は弁ばね57を圧縮しつつ前進し、入力ピストン59およびストロークシリンダ58は相対位置を一定に保ちつつ前進する。このストロークシリンダ58の前進に応じて液圧ブースタ3のスプール弁32が前進位置に前進する。
【0051】
スプール弁32がストロークシリンダ58からのブレーキ操作力の作用に応じて調圧バルブシリンダ31内で前進位置に摺動することに応じて、液圧供給源2からの液圧が調圧バルブシリンダ31の入力ポート51から出力ポート52を経て倍力液圧室28に作用する。この倍力液圧室28の液圧は反力液圧室48から弾性部材47に作用し、前進位置にあるスプール弁32に弾性部材47から後退方向に向けて反力が作用することになり、スプール弁32はブレーキ操作力および反力がバランスするようにして前進位置および後退位置間を移動し、それに応じてブレーキ操作力を増幅した倍力液圧を倍力液圧室28で得ることができ、この倍力液圧室28の液圧でマスタシリンダMの後部マスタピストン9を前進作動せしめることができ、さらに前部マスタピストン8を前進作動せしめることにより、倍力したブレーキ液圧を車輪ブレーキ14A,14Bに作用せしめることができる。
【0052】
ブレーキペダル1から入力されるブレーキ操作力がさらに大きくなると、図4で示すように、ピストンロッド64はシミュレータばね4の第1コイルばね66を圧縮しつつ前進し、入力ピストン59はストロークシリンダ58に対して相対的に前進し、比較的小さなブレーキ操作力を倍力したブレーキ液圧を車輪ブレーキ14A,14Bに作用せしめることができる。
【0053】
この際のブレーキペダル1のストロークに対してブレーキ操作力は、図5の0−A−B−Cと変化するものであり、A−B間は弁ばね57を圧縮させる部分に対応した特性であり、B−C間は第1コイルばね66を圧縮させる部分に対応した特性である。
【0054】
ブレーキペダル1から入力されるブレーキ操作力が中程度まで大きくなると、図6で示すように、ピストンロッド64の鍔部64aは、第3リテーナ73に後方から当接し、ピストンロッド64は第2コイルばね67を圧縮しつつ前進し、中程度のブレーキ操作力に応じた倍力液圧が倍力液圧室28で得られ、中程度のブレーキ操作力を倍力したブレーキ液圧を車輪ブレーキ14A,14Bに作用せしめることができる。この際のブレーキペダル1のストロークに対してブレーキ操作力は図5のC−D間で示すように変化し、ストロークに対するブレーキ操作力の変化量がブレーキ操作力が小さかったときに比べて大きくなる。
【0055】
さらにブレーキペダル1から入力されるブレーキ操作力が大きくなると、図7で示すように、ピストンロッド64の鍔部64aは、第3リテーナ73を介して第4リテーナ74に後方から当接し、ピストンロッド64は第3コイルばね68を圧縮しつつ前進し、大きなブレーキ操作力に応じた倍力液圧が倍力液圧室28で得られ、大きなブレーキ操作力を倍力したブレーキ液圧を車輪ブレーキ14A,14Bに作用せしめることができる。この際のブレーキペダル1のストロークに対してブレーキ操作力は図5のD−E間で示すように変化し、ストロークに対するブレーキ操作力の変化量がブレーキ操作力が中程度だったときに比べて大きくなる。
【0056】
すなわちセット荷重が異なる複数たとえば3つの第1〜第3コイルばね66〜68を直列に接続してシミュレータばね4を構成したことにより、図5で示すように、ブレーキペダル1のストロークに対するブレーキ操作力の変化を複数段階に変化させることができ、ブレーキ操作フィーリングの向上に寄与することができる。
【0057】
さらに液圧供給源2の失陥時には、倍力液圧室28に倍力液圧が生じることはなく、スプール弁32に後退方向の反力が作用することはないので、ブレーキ操作力の増大に応じてスプール弁32が前進位置に移動した後には、図8で示すように、弾性部材47を撓ませてスプール弁32が前進位置からさらに前進するのに応じてストロークシリンダ58が調圧バルブシリンダ31に近接するように前進する。これにより、ストロークシリンダ58および調圧バルブシリンダ31間の距離が縮まるのに応じて開閉弁62が閉弁し、ストロークシリンダ58および入力ピストン59間のストローク液室60が液圧ロック状態となる。
【0058】
このようにストローク液室60が液圧ロック状態となると、シミュレータばね4の作動が抑制されることになり、ブレーキペダル1から入力されるブレーキ操作力が、入力ピストン64からストロークシリンダ58および調圧バルブシリンダ31を介して、該調圧バルブシリンダ31に固定されている保持部材46に作用することになり、この保持部材46から後部マスタピストン9の小径ピストン23に前進方向の押圧力が作用することになり、それによりマスタシリンダMからブレーキ液圧を出力することが可能となる。
【0059】
すなわち液圧供給源2の失陥時には、シミュレータばね4による無効ストロークおよび反力の増加を抑えることができる。しかも液圧供給源2が正常であるときには、調圧バルブシリンダ31は、その前面に倍力液圧室28の液圧が作用するので前進することはなく、調圧バルブシリンダ31の前進ストロークを確保する必要がないので、ブレーキ液圧制御装置全体のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0060】
さらにマスタシリンダMにおける後部マスタピストン9を、大径ピストン22と、その大径ピストン22に相対摺動可能に嵌合される小径ピストン23とで構成し、液圧供給源2の失陥時には小径ピストン23を前進作動せしめているので、入力されたブレーキ操作力に応じて後部出力液圧室7および前部出力液圧室6で得られるブレーキ液圧を、単一の後部マスタピストンとして場合に比べて高圧とすることができる。
【0061】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0062】
たとえば上記実施例では、摺動部材をスプール弁としたが、ポペット弁とすることも可能である。またマスタシリンダをタンデム型のものではなく、単一のマスタピストンを有するものとすることも可能である。
【0063】
また上記実施例では複数のコイルばね66〜68でシミュレータばね4を構成するようにしたが、単一のシミュレータばねを用いるようにしてもよい。
【0064】
さらに上記実施例では、ストロークシリンダ58がスプール弁32をその前進位置からさらに前進させるように前進する際には、調圧バルブシリンダ31にストロークシリンダ58から前進方向の力が付与されていたが、ストロークシリンダ58から摺動部材を介して調圧バルブシリンダに前進方向の力が付与されるように構成することもできる。
【0065】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、液圧供給源の失陥時には、シミュレータばねによる無効ストロークおよび反力の増加を抑えることができ、しかも液圧供給源が正常であるときには、調圧バルブシリンダの前進ストロークを確保する必要がないので、ブレーキ液圧制御装置全体のコンパクト化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】非作動状態でのブレーキ液圧制御装置の縦断面図である。
【図2】ブレーキ液圧制御装置の前部拡大図である。
【図3】ブレーキ液圧制御装置の後部拡大図である。
【図4】液圧供給源が正常な状態で小さなブレーキ操作力を入力したときの図1に対応した縦断面図である。
【図5】液圧供給源が正常な状態での操作特性を示す図である。
【図6】液圧供給源が正常な状態で中程度のブレーキ操作力を入力したときの図1に対応した縦断面図である。
【図7】液圧供給源が正常な状態で大きなブレーキ操作力を入力したときの図1に対応した縦断面図である。
【図8】液圧供給源が異常な状態でのブレーキ操作時の図1に対応した縦断面図である。
【符号の説明】
1・・・ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル
4・・・シミュレータばね
5・・・第1シリンダ体
7・・・出力液圧室
9・・・マスタピストン
14B・・・車輪ブレーキ
28・・・倍力液圧室
30・・・第2シリンダ体
31・・・調圧バルブシリンダ
32・・・摺動部材としてのスプール弁
51・・・入力ポート
52・・・出力ポート
53・・・解放ポート
58・・・ストロークシリンダ
59・・・入力ピストン
60・・・ストローク液室
62・・・開閉弁
M・・・マスタシリンダ
R・・・リザーバ

Claims (1)

  1. 車輪ブレーキ(14B)に接続される出力液圧室(7)に前面を臨ませるとともに後退方向にばね付勢されるマスタピストン(9)が後退限を規制されて第1シリンダ体(5)に摺動可能に嵌合されて成るマスタシリンダ(M)と、第1シリンダ体(5)に一体または別体にして同軸に連設される第2シリンダ体(30)と、前記マスタピストン(9)の背面との間に倍力液圧室(28)を形成しつつ後退限を規制されて第2シリンダ体(30)に摺動可能に嵌合されるとともに前記倍力液圧室(28)に通じる出力ポート(52)、液圧供給源(2)に通じる入力ポート(51)、ならびにリザーバ(R)に通じる解放ポート(53)が設けられる調圧バルブシリンダ(31)と、前記出力ポート(52)および前記解放ポート(53)を連通させる後退位置ならびに前記出力ポート(52)および前記入力ポート(51)を連通させる前進位置間での摺動を可能とするとともに前記倍力液圧室(28)の液圧に基づく反力が後退位置側に向けて作用するようにして前記調圧バルブシリンダ(31)に嵌合される摺動部材(32)と、ブレーキ操作部材(1)からのブレーキ操作力を前進位置側に向けて前記摺動部材(32)に伝達するシミュレータばね(4)とを備える車両用ブレーキ液圧制御装置において
    記マスタピストン(9)に後方から当接することを可能として第2シリンダ体(30)に摺動可能に嵌合される前記調圧バルブシリンダ(31)には、前記摺動部材(32)が前記前進位置からさらに前進することを可能として嵌合され
    前端を閉じた有底円筒状に形成されるとともに前記前端を前記摺動部材(32)の後端に一体または別体にして同軸に連接せしめたストロークシリンダ(58)が、前記摺動部材(32)を前記前進位置からさらに前進させるように前進する際には前記調圧バルブシリンダ(31)に前進方向の力を付与し得るようにして該調圧バルブシリンダ(31)の後方に配置され、
    記ブレーキ操作部材(1)に連なる入力ピストン(59)が、前記ストロークシリンダ(58)の前記前端との間にストローク液室(60)を形成してストロークシリンダ(58)に相対摺動可能に嵌合され
    記ストローク液室(60)が、前記摺動部材(32)を前記前進位置からさらに前進させるようにして前記調圧バルブシリンダ(31)に前記ストロークシリンダ(58)が近接するのに応じて閉弁する開閉弁(62)を介して、前記リザーバ(R)に接続されることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
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