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JP3907528B2 - プラズマディスプレイ装置 - Google Patents

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JP3907528B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイ装置に関し、特に、プラズマディスプレイ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話を初めとする情報電子機器が、世の中に広く用いられていることは、周知の事実である。また、これらの情報電子機器のうち、壁掛けテレビや公共表示板などの表示装置もよく知られている。
【0003】
さらにまた、壁掛けテレビや公共表示板などの表示装置は、フラットディスプレイとして、注目を浴びていることも周知の事実である。
【0004】
そして、一般的に、フラットディスプレイとして、上述した壁掛けテレビや公共表示板などに利用されているプラズマディスプレイパネル(以下、PDPとも略称する)も、よく知られている。
【0005】
このPDPは、薄型で大画面表示が比較的容易にできること、視野角が広いこと、応答速度が速いことなど、数多くの特長を有している。
【0006】
このため、上述したように、このPDPは、フラットディスプレイとして、壁掛けテレビや公共表示板などとして利用されている。
【0007】
PDPは、その動作方式により、電極が放電空間(放電ガス)に露出して直流放電の状態で動作させる直流放電型(DC型)と、電極が誘電体層に被覆されて放電ガスには直接露出させず、交流放電の状態で動作させる交流放電型(AC型)とに分類される。DC型では電圧が印加されている期間中放電が発生し、AC型では電圧の極性を反転させることにより放電を持続させる。さらに、AC型には、1セル内の電極数が2電極のものと3電極のものがある。
【0008】
ここで、従来の3電極AC型プラズマディスプレイパネルの構造および駆動方法について述べる。図15は従来のプラズマディスプレイパネルの一例を示すセル断面図である。
【0009】
AC3電極型プラズマディスプレイパネルは、相互に対向する前面基板20と背面基板21と、双方の基板間20、21間に配置された複数の走査電極22、維持電極23及びデータ電極29と、走査電極22、維持電極23及びデータ電極29の各交差部分に行列状に配置された表示セルとを有する。
【0010】
前面基板20としてガラス基板等を用い、走査電極22と維持電極23が所定の間隔を隔てて設けられている。走査電極22と維持電極23の上には配線抵抗を下げるために金属電極32が積層されている。これらの上には透明誘電体層24と、透明誘電体層24を放電から保護するMgO等からなる保護層25が形成されている。一方、背面基板21としてガラス基板等を用い、データ電極29が走査電極22や維持電極23と直交するように設けられている。さらに、データ電極29上には白色誘電体層28、蛍光体層27が設けられている。2枚のガラス基板の間には各セルを囲うように井桁の間隔33が形成されている。隔壁は放電空間26を確保するとともに画素を区切る役割を果たしている。放電空間26内にはHe、Ne、Xe等の混合ガスが放電ガスとして封入されている。
【0011】
図14に従来の3電極AC型プラズマディスプレイパネルの平面図を示す。走査電極22の個々の電極Siおよび維持電極23の個々の電極Ci(i=1〜m)と、データ電極29の個々の電極Dj(j=1〜n)との各交差部分に、表示セル31が行列状に配置される。
【0012】
次にPDPの駆動方法について説明する。現在、主流なのが走査期間と維持期間が分離されている走査維持分離方式(ADS方式)である。以下、この走査維持分離方式の駆動方法について説明する。図16は、3電極AC型プラズマディスプレイパネルの1サブフィールド(以下、SFと略称する)の駆動波形図の一例である。1サブフィールドは予備放電期間2、走査期間3、および維持期間4の3つの期間で構成されている。
【0013】
まず、予備放電期間2について説明する。予備放電期間2の前には、前サブフィールドの維持期間1が存在し、そこで維持放電が行なわれているかいないかで、セル内の各電極上の誘電体層の上に、放電によって発生する電荷である壁電荷の形成量が異なる。
【0014】
このまま次の書込みを行なうと、この異なる壁電荷量の影響を受け、書込み放電をしづらくなったり、誤って書込みを行なってしまったりする。予備放電期間2の役割の一つは、このような前サブフィールドの維持期間1での点灯状態によって異なるセル内の誘電体層上に放電によって発生する電荷である壁電荷状態を初期化リセットすることである。また、この他、表示データに基づいて線順次にデータを書込む際に放電を行ないやすくするプライミング効果を発生させる役割がある。
【0015】
次に走査期間3に入る。走査ベース電圧Vbwは80〜110V程度であり、維持電圧Vsは170V程度である。走査期間3では、走査電極22の個々の電極(S1〜Sm)に順次、走査パルス6が印加される。この走査パルス6に合わせて、データ電極29の個々の電極(D1〜Dn)に表示パターンに応じてデータパルス7が印加される。
【0016】
データパルス7が印加された画素では、走査電極22とデータ電極29の間に高い電圧が印加されるので、電圧印加後、ある程度の遅れ(放電遅れと呼ぶ)を伴って走査電極22とデータ電極29の間で書込放電が発生し、走査電極22側には正の壁電荷が形成される。この放電に伴い、正極性電位に大きくバイアスされている維持電極23と走査電極22の間でも電荷の移動が発生し、維持電極23には負の壁電荷が形成される。
【0017】
一方、データパルス7が印加されない画素では、印加電圧が低くなるので放電が発生せず、壁電荷の状況は変化しない。このように、データパルス7の有無により、2種類の壁電荷の状況を作り出すことができる。
【0018】
走査パルス6を全ラインに印加し終わると維持期間4に移る。維持パルスは全走査電極22と全Y電極23に交互に印加される。維持パルスの電圧値Vsは、書込み放電の発生しなかった画素では、走査電極22と維持電極23との間の放電(面放電と呼ぶ)が開始しない電圧に設定してある。ここでは170Vである。
【0019】
一方、書込放電が発生した画素では、走査電極22側には正壁電荷があり、維持電極23側には負壁電荷が存在するため、走査電極22に印加されるはじめの正の維持パルス(第一維持パルスと呼ぶ)に、この正負の壁電荷が重畳され、放電開始電圧以上の電圧が放電空間に印加され、維持放電が発生する。この放電により、走査電極22側には負の壁電荷が蓄積され、維持電極23側には正の壁電荷が蓄積される。
【0020】
次の維持パルス(第二維持パルスと呼ぶ)は維持電極23側に印加され、上記の壁電荷が重畳されることから維持放電がここでも発生し、第一維持パルスとは逆の極性の壁電荷が、走査電極22側と維持電極23側に蓄積される。これ以降も同様の原理で放電が持続的に発生する。つまりx回目の維持放電により発生した壁電荷による電位差が、(x+1)回目の維持パルスに重畳され維持放電が持続している。この維持放電の持続回数により発光輝度が決定される。
【0021】
以上の予備放電期間2、走査期間3、維持期間4を合わせてサブフィールドと呼ぶ。階調表示を行う場合、1画面の画像情報を表示する期間である1フィールドが、この複数のサブフィードから構成されている。各サブフィールドの維持パルス数を変え、各サブフィールドを点灯させるか非点灯にするかによって階調表示を行うことができる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような走査維持分離AC型プラズマディスプレイパネルおよびプラズマディスプレイの駆動方法では、各走査ラインに画像信号に対応して書込み放電を発生させるために、画像信号に対応して、データパルスが順次、走査期間中に印加される。
【0023】
したがって、データ電極電位は、走査期間中、画像信号に対応して変動することになる。書込み放電により、各電極上に形成される壁電荷は、走査パルス終了後の各電極の電位に影響される。
【0024】
したがって、書込み放電の終了した走査電極ライン以降のデータパルスの印加状態によって、各電極上に形成される壁電荷は異なってくる。特に走査パルス幅を短くした場合は影響が大きい。パネルが高精細になり、走査ライン本数の増加に伴い、走査パルス幅の縮小をしなくてはならなくなると、この走査パルス印加終了後に次の走査電極ラインに書込み放電を発生させるためのデータパルスが印加されない場合は正常に動作していても、データパルスが印加されると、書込み放電は発生するものの、維持期間において維持放電が発生しなくなったり、表示がちらついたりする。これを改善するためには、維持パルス電圧を高くしなければならない。しかし、維持パルス電圧を高くすると、消費電力の増大を招いたり、高耐圧の高価なドライバーを使わなくてはならずコストの増大を招いたりする。
【0025】
本発明の目的は、走査パルス幅を短縮した場合に、自走査電極ラインの走査パルス印加終了後に、他走査電極ラインのデータパルスが印加された場合にも、維持パルス電圧を高くすることなく駆動ができるプラズマディスプレイ装置を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、第一の絶縁基板と第二の絶縁基板とが互いに対向配置され、前記第一の絶縁基板には、走査電極と維持電極とが互いに平行に並べられて構成される電極対が複数配置され、かつ、前記第二の絶縁基板には、前記走査電極及び維持電極に直交する複数のデータ電極が配置された表示パネルを備えるプラズマディスプレイ装置に係り、前記データ電極と同層又は前記データ電極よりも上層の部位に、かつ、前記第一の絶縁基板上に配置された前記維持電極と対向する態様で、前記表示パネルの前記第二の絶縁基板上に設けられた複数の電位固定電極と、個々の前記走査電極に線順次で走査パルスを印加することで、映像信号に対応して前記走査電極毎にデータを書き込む期間である走査期間内であって、個々の前記走査電極に対して、走査パルス印加終了した後、所定の期間経過してから開始される一定の期間、一定電位を対応する前記電位固定電極に供給し続ける電位供給手段とが付加されてなると共に、前記電位供給手段が、前記電位固定電極に前記一定電位を供給する際、前記電位固定電極の電位を対応する前記維持電極の電位よりも低く設定すると共に、前記維持電極と対応する前記電位固定電極の電位差を、前記維持電極側を陰極としたとき、前記維持電極と対応する前記電位固定電極間の対向放電開始電圧以上に設定する一方、前記維持電極側を陽極としたとき、前記維持電極と対応する前記電位固定電極間で対向放電が発生しない電圧に設定する構成になされていることを特徴としている。
【0027】
また、請求項2記載の発明は、第一の絶縁基板と第二の絶縁基板とが互いに対向配置され、前記第一の絶縁基板には、走査電極と維持電極とが互いに平行に並べられて構成される電極対が複数配置され、かつ、前記第二の絶縁基板には、前記走査電極及び維持電極に直交する複数のデータ電極が配置された表示パネルを備えるプラズマディスプレイ装置に係り、前記データ電極と同層又は前記データ電極よりも上層の部位に、かつ、前記第一の絶縁基板上に配置された前記維持電極と対向する態様で、前記表示パネルの前記第二の絶縁基板上に設けられた電位固定電極と、映像信号に対応して前記走査電極毎にデータを書き込む期間である走査期間中一定電位を前記電位固定電極に供給し続ける電位供給手段とが付加されてなると共に、前記電位供給手段が、前記電位固定電極に前記一定電位を供給する際、前記電位固定電極の電位を前記維持電極の電位よりも低く設定すると共に、前記維持電極と前記電位固定電極の電位差を、前記維持電極側を陰極としたとき、前記維持電極と前記電位固定電極間の対向放電開始電圧以上に設定する一方、前記維持電極側を陽極としたとき、前記維持電極と前記電位固定電極間で対向放電が発生しない電圧に設定する構成になされていることを特徴としている。
【0028】
また、請求項3記載の発明は、第一の絶縁基板と第二の絶縁基板とが互いに対向配置され、前記第一の絶縁基板には、走査電極と維持電極とが互いに平行に並べられて構成される電極対が複数配置され、かつ、前記第二の絶縁基板には、前記走査電極及び維持電極に直交する複数のデータ電極が配置された表示パネルを備えるプラズマディスプレイ装置に係り、前記データ電極と同層又は前記データ電極よりも上層の部位に、かつ、前記第一の絶縁基板上に配置された前記維持電極と対向する態様で、前記表示パネルの前記第二の絶縁基板上に設けられた電位固定電極と、全駆動期間に亘り一定電位を前記電位固定電極に供給し続ける電位供給手段とが付加されてなると共に、前記電位供給手段が、前記電位固定電極に前記一定電位を供給する際、前記電位固定電極の電位を前記維持電極の電位よりも低く設定すると共に、前記維持電極と前記電位固定電極の電位差を、前記維持電極側を陰極としたとき、前記維持電極と前記電位固定電極間の対向放電開始電圧以上に設定する一方、前記維持電極側を陽極としたとき、前記維持電極と前記電位固定電極間で対向放電が発生しない電圧に設定する構成になされていることを特徴としている。
【0029】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一に記載のプラズマディスプレイ装置に係り、前記電位固定電極が、格子状の電極形状であることを特徴としている。
【0030】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一に記載のプラズマディスプレイ装置に係り、前記維持電極と対向する前記データ電極の線幅が、前記走査電極と対向する前記データ電極の線幅より細いことを特徴としている。
【0031】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5の何れか一に記載のプラズマディスプレイ装置に係り、前記電位固定電極が、前記維持電極と対向する前記データ電極上に絶縁体層を介して設けられていることを特徴としている。
【0032】
また、請求項7記載の発明は、請求項6記載のプラズマディスプレイ装置に係り、前記電位固定電極が前記データ電極と直交して、前記維持電極毎に設けられていることを特徴としている。
【0033】
請求項8記載の発明は、請求項7記載のプラズマディスプレイ装置に係り、前記電位固定電極が、前記維持電極と対向する部分のうち、前記データ電極と交差する部分の線幅が、他の部分の線幅より細くなっていることを特徴としている。
【0034】
請求項9記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一に記載のプラズマディスプレイ装置に係り、前記電位固定電極が、前記データ電極と同層に形成され、前記電位固定電極が前記維持電極と対向する部分の面積が、前記データ電極が前記維持電極と対向する部分の面積よりも1画素内において大きく、かつ、前記電位固定電極が前記走査電極と対向する部分の面積が、前記データ電極が前記走査電極と対向する部分の面積よりも、1セル内において小さいことを特徴としている。
【0035】
請求項10記載の発明は、請求項1記載のプラズマディスプレイ装置に係り、前記所定の期間が2μsec以内であることを特徴としている。
【0036】
請求項11記載の発明は、請求項1記載のプラズマディスプレイ装置に係り、前記一定の期間が2μsec以上であることを特徴としている。
【0037】
請求項12記載の発明は、1、2又は3記載のプラズマディスプレイ装置に係り、前記電位固定電極の電位を常に接地させることを特徴としている。
【0038】
請求項13記載の発明は、請求項1乃至12のいずれか一に記載のプラズマディスプレイ装置に係り、前記電極が誘電体層に被覆されて放電ガスには直接露出させず、交流放電の状態で動作させる交流放電型であることを特徴としている。
【0041】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の第一の実施の形態について図を参照して詳細に説明する。図1に、本発明の第一の実施の形態であるプラズマディスプレイ装置が備えるプラズマディスプレイパネルの1セルの断面図を示し、図2に平面図を示す。図1の断面図は、図2のA−A間の断面を示している。
【0042】
パネル全体の平面構造は、図14の従来のプラズマディスプレイパネルの平面図に、電位固定電極34が維持電極23と同方向に形成されている構造となっている。
【0043】
具体的寸法について、セルピッチが横方向0.27mm、縦方向0.81mmの場合を例に述べる。上下2枚の絶縁性基板20、21としては、例えば、厚さ2〜5mm程度のソーダライムガラス基板を用いる。上部絶縁性基板20には走査電極22と維持電極23として、酸化スズまたは酸化インジウムからなる透明電極が対になる形で設けられ、電極幅は250〜300μm程度とし、放電ギャップは70〜120μm程度とした。各透明電極の上の一部には配線抵抗を下げるために金属電極32を設けている。電極の上には誘電体層24を10〜50μm程度形成し、さらにその上にはMgOが保護層25として形成されている。
【0044】
一方、下部絶縁性基板21にはAgなどでデータ電極29が電極幅100〜150μmで形成されている。その上には白色誘電体層28が設けられている。この上にAgなどで、データ電極29と直交するように電位固定電極34を形成する。電位固定電極34の電極幅は100〜200μm程度とした。さらにその上に、隔壁33を高さ100〜150μm程度で形成し、最後に蛍光体9を塗布する。このときセル毎に蛍光体の種類をRGB(赤、緑、青)に塗り分けると、フルカラー表示が可能となる。上記の2枚の絶縁性基板を張り合わせ、放電ガスとしてHe、Ne、Xeの混合ガスを200〜600torr封入し、封止することにより完成する。
【0045】
次に、本発明の第一の実施の形態であるプラズマディスプレイ装置を駆動する方法について説明する。図10に1サブフィールドの駆動波形を示す。本発明では、電位固定電極34を常に接地電位(波形Fm)としている。予備放電期間2及び維持期間4の走査電極波形(S1〜Sm)、維持電極波形(C1〜Cm)、データ電極波形(D1〜Dn)のそれぞれは、図16の従来駆動波形と同じである。また、この期間の電位固定電極波形(F1〜Fm)はデータ電極波形(D1〜Dm)と同じであるので、この期間での駆動状態はほぼ従来と同じであると考えられる。
【0046】
一方、走査期間3においては、映像信号に応じて、データパルス7が印加されたり、されなかったりする。図15に示すような従来のセル構造においては、このデータパルス6の印加状態によって、データ電極29の電位が変動する。これに対して、本発明の第一の実施の形態のように、電位固定電極34をデータ電極上に配置し、維持電極23とともに電位を固定することにより、走査期間3中の維持電極23と電位固定電極34の対向間電位差は一定となる。
【0047】
次に、走査パルス6が印加された際に、データパルス7が印加され、書込み放電が発生した場合の、壁電荷形成状態について述べる。書込み放電は、走査電極22とデータ電極29の間の対向放電空間に、外部から印加される電圧に加え壁電荷による電圧である壁電圧も含めて、走査電極22を陰極としてデータ電極29との間で放電が発生する最小の電圧である対向放電開始電圧(以下、特に断らない場合は、走査電極22または維持電極23を陰極として、対向する基板上にあるデータ電極29や電位固定電極との間で放電が発生する、放電空間に印加される最小の電圧を単に、対向放電開始電圧と呼ぶ)を超える電圧が対向放電空間に印加されることにより、走査電極22とデータ電極29の間で放電が発生する。この放電により、放電空間内には多くの空間電荷が発生するため、セル内の他の電極間でも、この放電をトリガーとして放電が発生したり、電界により電荷が引き寄せられることにより壁電荷が形成される。ここで、走査パルス6幅が短く、走査パルス6期間内では、ほとんど放電が発生するだけの場合を考えると、壁電荷の形成量は走査パルス6終了後の電極電位に大きく影響される。書込み放電のような強い放電が発生した場合、放電箇所と電極の位置にもよるが、各電極間には、おおよそ外部から印加された電圧分の壁電圧が形成されると考えられる。
【0048】
したがって、図16に示すような従来のプラズマディスプレイの駆動波形の場合、走査電極22と維持電極23の間には、おおよそ(Vs−Vbw)の壁電圧が形成されることになる。一方、維持電極23とデータ電極34との間に形成される壁電圧については、次走査ラインの書込み時のデータパルス7の有無により変化すると考えられる。データパルス7が印加されると、維持電極23とデータ電極29の間には、おおよそ(Vs−Vd)の壁電圧が形成され、データパルスが印加されないと、おおよそVsの壁電圧が形成される。
【0049】
この違いにより、維持期間4での最初の維持パルスによる維持放電(第一維持と呼ぶ)の強度が異なり、第一維持による走査電極22と維持電極23の間に形成される壁電荷量が異なってくる。
【0050】
これは、壁電圧がVsとなると、第一維持において、走査電極22と維持電極23の間で発生する面放電の他に、維持電極23とデータ電極29が共に接地された際に、上記壁電圧により、維持電極23とデータ電極29の間で弱い対向放電が発生するためである。これに対し、Vs−Vdの場合は、電位差が小さいため、ほとんどこの弱い対向放電が発生せず、維持放電が弱くなり、その後の維持パルスによって維持放電が安定的に持続しなくなる。
【0051】
図17に、走査パルス6終了後のデータ電極電位Vdaを模擬的に変化させたときの、最小維持電圧Vdsminを○で示す。最小維持電圧Vdsminとは、点灯表示が正常に表示できる、最小の維持電圧Vsのことである。走査パルス幅は1μsecである。
【0052】
図17で、Vda=0Vのときが、次走査ライン書込み時にデータパルスが印加されなかった場合である。これに対し、データパルス電圧Vdを65Vとすると、Vda=65Vのときが、次走査ライン書込み時にデータパルスが印加された場合となる。データパルスが印加された場合は、されなかった場合に比べて約6Vの最小維持電圧Vdsminの上昇が見られる。
【0053】
これに対して、本発明の第一の実施の形態のプラズマディスプレイの場合、維持電極23および電位固定電極34の電位差は、走査期間3の間、常に壁電圧Vsに固定されている。このため、書込み放電により、維持電極23と電位固定電極34の間には、おおよそVsの壁電圧が形成される。
【0054】
このように、電位固定電極23を設けることにより、データパルスの有無により、データ電極29の電位が変動しても、維持電極23と電位固定電極34の対向電極間電位は一定となり、一定量の壁電圧を形成することができる。図17に、Vdsminの走査パルス終了後のデータ電極電位Vda依存性を▲で示す。図からも分るように、走査パルス終了後のデータ電極電位Vdaが上昇しても、○で示す従来のようにVdsminが上昇することはない。
【0055】
また、図10の駆動波形を、さらに図11のように、走査期間3の維持電極23電位を維持電圧Vsより高い電圧VswとするとVdsminをさらに引き下げることができる。特に、電圧Vswを、維持電極23を陰極としたときの、維持電極23と電位固定電極34の間の対向放電開始電圧以上に設定する。ここでの対向放電開始電圧とは、壁電荷が形成されていない状態で対向電極間にその電圧以上の電圧が印加された場合に放電が開始する電圧と考えてよい。
【0056】
この対向放電開始電圧は、印加する電圧の極性によって大きく異なる。維持電極23の誘電体層上には保護層25としてMg0膜が形成されており、この保護層が形成されている側を陰極とすると、正電荷の衝突により2次電子が放出され、新たな電子が放電空間に供給され、低い電圧で放電が持続する。
【0057】
一方、陰極側にMgO層が存在しないと、新たな2次電子の供給がないため、高い電圧を印加しないと放電が持続しなくなる。したがって、維持電極23を陰極としたときの維持電極23と電位固定電極34の間の対向放電開始電圧に電圧Vswを設定しても、走査期間3では、誤放電は発生せず、書き込み放電が発生しない限り放電は発生しない。
【0058】
実際には、走査期間3では、維持電極23と電位固定電極34には、走査電極22と維持電極23の間で維持放電の発生する放電ギャップから遠い位置にほぼ同等の壁電圧が形成されており、ここでの対向放電空間にかかる電位差が最も高いと考えられるので、維持電極23を陽極としたときの維持電極23と電位固定電極34の間の対向放電開始電圧未満に設定すれば、放電は発生しない。
【0059】
書込み放電発生後には、維持電極23と電位固定電極34とに形成される壁電圧の合計はほぼ両者の電極の電位差に等しくなる。したがって、上記のように電圧Vswを設定することにより、書込み放電後の維持電極23と電位固定電極34とに形成される壁電圧の合計は、ほぼ、維持電極23と電位固定電極34の間の電位差を、維持電極23を陰極としたときの、維持電極23と電位固定電極34の間の対向放電開始電圧以上にすることができる。
【0060】
このような壁電圧が形成された状態で、維持期間4での第一維持において、維持電極23の低電位側の電位と電位固定電極34の電位を等しくすることにより、この対向空間には壁電圧Vswだけの壁電荷が印加される。
【0061】
壁電圧Vswは、維持電極23を陰極としたときの、維持電極23と電位固定電極34の間の対向放電開始電圧以上であることから、第一維持では、対向放電が確実に発生する。このように走査電極22と維持電極23の間の面放電の発生に加え、第一維持で確実に対向放電が発生することにより、放電強度が大きくなり、十分な壁電荷量が走査電極22と維持電極23上に形成され、それ以降の維持パルスによって確実に維持放電が持続するようになる。
【0062】
本発明の第一の実施の形態での最小維持電圧Vdsminを図17に●で示す。走査パルス終了後のデータ電極電位Vdaの影響を受けず、Vdaに対して一定のVdsminとなっているとともに、従来のVdsminに比べ、大きく電圧が低くなっている。これは、Vswを維持電極23を陰極としたときの、維持電極23と電位固定電極34の間の対向放電開始電圧以上にしているためである。
【0063】
この対向放電開始電圧以上にしている期間は、必ずしも走査期間3の全期間である必要はない。走査パルス印加前の電圧をVsに下げてもまったく同様のVdsmin特性が得られた。また、走査パルス印加終了直後から10μsec以上経ってから、維持電極23の電位をVswからVsに引き下げても影響はない。一方、走査パルス終了から2μsec以上経ってから、維持電極電位をVsからVswに引き上げても、Vdsminは170Vとなり、電圧Vswに引き上げた効果は得られない。また、たとえ走査パルス印加終了後、2μsec以内に維持電極電位を電圧Vswに引き上げたとしても、Vsw電位を2μsec以上継続しなければ、その効果はきわめて弱いものとなり、Vdsminを引き下げることがほとんどできなかった。
【0064】
このように本発明の第一の実施の形態を用いれば、データパルスの印加の有無による影響を受けないばかりか、電圧Vswを、維持電極23を陰極としたときの、維持電極23と電位固定電極34の間の対向放電開始電圧以上に設定することにより、最小維持電圧Vdsminを大幅に低くすることができ、走査パルス幅が短い場合でも、低い耐圧の維持ドライバを用いることができる。
【0065】
次に、具体的電圧の設定値について説明する。はじめに、前サブフィールドの維持期間1が終了すると、予備放電期間2になる。ここでの波形は、基本的に図16の従来波形と同じであり、Vsを160V、Vpを380Vとした。各鋸歯状波のスロープの幅は50μsec程度とした。予備放電期間2は、前SFの維持放電によって誘電体層上に蓄積された電荷(壁電荷)をリセットし、さらに書込み放電を起こりやすくさせるためのプライミング放電を発生させる期間である。主に、最初の鋸歯状波で維持期間に形成された壁電荷のリセットが行なわれ、後ろの2つの鋸歯状波でプライミング放電を発生させ、その後プライミング放電で発生した壁電荷を調整している。
【0066】
次に、走査期間3に移行する。走査電極22には、走査ベース電圧Vbwが印加されており、線順次で走査パルス6が順次印加されている。走査ベース電圧Vbwは110V程度とし、走査パルス幅は1μsecとし、電位はGNDとした。維持電極23の電位はVsw固定としている。また、電位固定電極34は接地されている。ここで、本セルの対向放電開始電圧であるが、走査電極22とデータ電極29の間、維持電極23と電位固定電極34の間ともに185Vであった。図18に最小維持電圧Vdsminの電圧Vsw依存性を示す。
【0067】
電圧Vswを185V以上にすると急激に最小維持電圧Vdsminが減少することが分る。本発明の第一の実施の形態では、電圧Vswがこの対向放電開始電圧以上になるように、電圧Vswを190〜210Vとした。
【0068】
最後に、維持期間4に入る。ここは従来と同様であり、走査期間3で書込み放電が発生した場合のみ、走査電極22と維持電極23の面放電ギャップ近傍に大きな壁電荷が形成されているため維持放電が発生し、点灯状態となる。このようにして、点灯、非点灯を制御することができる。維持パルスの電圧は、Vs=160Vとしている。
【0069】
次に、本発明の第二の実施の形態について、図3のセル平面図を参照しながら説明する。本発明の第二の実施の形態の駆動波形は、本発明の第一の実施の形態の駆動波形と同じである。
【0070】
本発明の第一の実施の形態では、データ電極29と電位固定電極34が、誘電体層28を介して対向する部分の面積が大きく、この電極間容量が大きくなってしまうため、データ電極電位の変動による無効電力が大きくなり、データドライバの発熱が問題となる。
【0071】
本発明の第二の実施の形態では、このデータ電極29と電位固定電極34の間の容量を減らすとともに、書込み放電に関しては、確実に放電が発生するような構造となっている。
【0072】
本発明の第二の実施の形態のセル構造は、データ電極29の形状が、電位固定電極34と対向する部分では細く、走査電極22と対向する部分では太くなっている以外は本発明の第一の実施の形態と同じである。維持電極23と電位固定電極34が対向する部分の面積は、本発明の第一の実施の形態と同じであり、Vdsminは本発明の第一の実施の形態と同じ値が得られた。
【0073】
データ電極29の線幅は、電位固定電極34と対向する部分を40〜80μm、走査電極22と対向する部分を120〜170μmとした。このようにすることにより、電位固定電極34とデータ電極29間の容量を小さくすることができ、無効電流が減少し、消費電力を低減することができ、発熱を抑えることができた。また走査電極22と対向するデータ電極29の面積は大きくとっているので、書込み放電の確率を高めることができ、放電遅れを小さくすることができた。
【0074】
次に、本発明の第三の実施の形態について図4のセル平面図を参照しながら説明する。本発明の第三の実施の形態の駆動波形は本発明の第一の実施の形態と同じである。
【0075】
本発明の第三の実施の形態のセル構造は、電位固定電極34の線幅を細くし、放電ギャップ寄りに設けたこと以外は本発明の第二の実施の形態と同じである。維持放電への移行性では、書込み放電時の放電ギャップ寄りの壁電荷の形成状態が重要となってくる。データ電極29および維持電極23との容量を減らすために、電位固定電極34の線幅をできるだけ細くし、放電ギャップ寄りの維持電極23と電位固定電極34の対向間に所望の壁電圧を形成するために、電極位置を放電ギャップ寄りにしている。電位固定電極34の幅は、40〜50μm程度とした。このような構造でも、本発明の第二の実施の形態とほぼ同様のVdsminが得られた。また、無効電流を減らすことができ、消費電力を低減することができた。
【0076】
次に、本発明の第四の実施の形態について図5のセル平面図を参照しながら説明する。本発明の第四の実施の形態の駆動波形は本発明の第一の実施の形態と同じである。
【0077】
本発明の第四の実施の形態のセル構造は、本発明の第三の実施の形態の電位固定電極34と同じ線幅の電極を、もう一本、電位固定電極として追加したこと以外は本発明の第三の実施の形態と同じである。2つの電位固定電極34の間隔は40〜60μm程度とした。
【0078】
このように、電極を追加することにより、データ電極29、維持電極23と電位固定電極34との線間容量は増大するものの、2つに分離されているので、本発明の第二の実施の形態よりは線間容量は小さい。
【0079】
一方、電位固定電極34をもう一本追加することで、壁電荷の蓄積状態としては、実効的に間にスリットの入っていないべたの1枚電極と同じ状態とすることができた。
【0080】
このことにより、第一維持での放電が本発明の第三の実施の形態よりも、強く確実なものとなった。従来のセルや、本発明の第三の実施の形態では、維持放電では、第一維持から10回目の維持パルス印加ぐらいまでは、維持期間4後半の維持放電に比べ弱い放電であり、不安定な状態である。
【0081】
これに対し、本発明の第四の実施の形態のように、電位固定電極34をさらにもう一本追加することにより、第一維持からほぼ定常的な維持放電に近い強さの維持放電を発生させることができた。このように、第一維持から安定的な放電にすることができることにより、Vdsminの値は、本発明の第二の実施の形態とまったく同じ値を得ることができたとともに、維持パルス数の少ない、下位の階調のサブフィールドでも、安定的な表示が得られるようになった。
【0082】
次に、本発明の第五の実施の形態について図6のセル平面図を参照しながら説明する。本発明の第五の実施の形態は、データ電極29や維持電極23と電位固定電極34との間の容量は低く抑えながら、実効的な電位固定電極34の面積は広く取り、維持電極23と電位固定電極34の間に形成される壁電荷を、放電ギャップから離れた領域まで形成することができる本発明の第四の実施の形態の別の形態である。
【0083】
本発明の第五の実施の形態の駆動波形は本発明の第一の実施の形態と同じである。本発明の第五の実施の形態のセル構造は、電位固定電極34の形状が、データ電極29と交差する部分の線幅を細くしている以外は、本発明の第二の実施の形態とおなじである。このように交差部分の面積を小さくしているのは、電位固定電極34とデータ電極29間の容量を小さくするためである。細い部分は、面放電ギャップ寄りに寄せてあり、書き込み時に維持電極23と電位固定電極34の間に形成される壁電荷をなるべく放電ギャップ寄りに形成するようにしている。電位固定電極34の幅は、太い部分で100〜200μm程度であり、交差部分の細い部分は50μm程度とした。本実施例では本発明の第四の実施の形態とほぼ同様のVdsminを得ることができ、また、維持パルス数の少ない、下位の階調のサブフィールドでも、安定的な表示が得られた。
【0084】
次に、本発明の第六の実施の形態について図7のセル平面図を参照しながら説明する。本発明の第六の実施の形態も、電極間容量を低く抑えつつ、壁電荷は維持電極23と対向するほぼ全面に形成できるような、本発明の第四および第五の実施の形態の別の実施形態である。
【0085】
本発明の第六の実施の形態の駆動波形は本発明の第一の実施の形態と同じである。本発明の第六の実施の形態のセル構造は、電位固定電極34の形状が、メッシュ状になっている以外は、本発明の第二の実施の形態と同じである。
【0086】
このようにメッシュ状にすることにより、交差部分の面積を小さくし、電位固定電極34とデータ電極29間の容量および電位固定電極34と維持電極23間の容量を小さくしている。メッシュ状の線幅は10〜40μm程度とし、メッシュ状の穴の部分は40〜50μm角となるようにした。
【0087】
このようなメッシュ形状の電極とすることにより、容量は減少するが、穴の部分が50μm角以下であれば、書込み放電による放電の広がり状態は、電位固定電極34の形状が、本発明の第二の実施の形態のように大きな電極面積を持ったものとほぼ同様の状態を得ることができた。このようなメッシュ電極構造にすることにより、線間容量を低く抑え、かつ、本発明の第五の実施の形態と同様のVdsminや、維持放電の安定性を得ることができた。
【0088】
次に、本発明の第七の実施の形態について図8のセル平面図を参照しながら説明する。本発明の第七の実施の形態の駆動波形は、本発明の第一の実施の形態と同じである。
【0089】
また、本発明の第七の実施の形態のセル構造は、電位固定電極34以外は本発明の第二の実施の形態とおなじであり、データ電極29を形成する際に、データ電極29と同層に電位固定電極34が形成されている。
【0090】
したがって、電位固定電極34の端子取り出しは、データ電極29と同じ、図6紙面上下方向となる。このような構造にすることにより、電位固定電極34とデータ電極29を一度に形成することができ、プロセス数を増やすことなく電位固定電極34を追加することができる。
【0091】
データ電極29の線幅を維持電極23と対向する部分で50μm程度に細くしてある。データ電極29との間隔が30μm程度できるように電位固定電極34が形成されている。これにより、維持電極23と対向する部分の面積では、データ電極29よりも電位固定電極34の方が大きくすることができる。これにより、データ電極29の電位の変動による、対向放電空間にかかる電圧の変動を抑制することができる。これにより、本発明の第一の実施の形態とほぼ同等の最小維持電圧Vdsmin特性を得ることができた。
【0092】
次に、本発明の第八の実施の形態について図9のセル平面図を参照しながら説明する。本発明の第八の実施の形態の駆動波形は本発明の第一の実施の形態と同じである。
【0093】
本発明の第八の実施の形態のセル構造は、電位固定電極34形状及びデータ電極29形状以外は、本発明の第七の実施の形態とおなじであり、本発明の第七の実施の形態と同様に、データ電極29を形成する際に、データ電極29と同層に電位固定電極34が形成されている。走査電極22および維持電極23の線幅は、隔壁33交差する部分を細くしてある。
【0094】
これは、データ電極29や電位固定電極34との容量を小さくするためであり、これまでの本発明の第一から第五の実施の形態にも適用できる。セルの放電空間部分では、維持電極23は電位固定電極としか対向しておらず、本発明の第七の実施の形態より、確実にデータ電極電位の影響を排除することができる。
【0095】
次に、本発明の第九の実施の形態について図12の駆動波形を参照しながら説明する。本発明の第九の実施の形態の駆動波形は、上述の本発明の第一から第八の実施の形態のいずれの形状のセルにも適用できる。
【0096】
本駆動波形は、走査期間3の維持電極23の電位を維持パルス電圧のVsと同じにすることにより、維持電極23の電源電位数を減らす変わりに、電位固定電極34の電位を負電位にしている。ここで、電位固定電極34の電位Vfwは、維持電極23と電位固定電極34の電位差が対向放電開始電圧の185V以上になるように設定した。
【0097】
具体的には、維持パルス電圧Vsを160Vに設定し、電位Vfwは−30〜―60Vとした。このようにすることにより、図11の駆動波形と同じように、書込み時に維持電極23と電位固定電極34との間に、おおよそ(Vs−Vfw)の壁電圧を形成することができ、第一維持でこの2電極間で対向放電が発生するようにでき、図8と同様の最小維持電圧Vdsminを得ることができる。
【0098】
次に、本発明の第十の実施の形態について図13の駆動波形を参照しながら説明する。本発明の第十の実施の形態のセル構造は従来のセル構造と同じである。本発明の第十の実施の形態のセルの対向放電開始電圧は185Vである。本発明の第十の実施の形態の駆動波形の維持期間4の波形は従来の駆動波形と同じである。
【0099】
走査期間3の維持電極23の電圧Vswは、データパルス7が印加されても、維持電極23とデータ電極29との間にかかる電圧が対向放電開始電圧以上になるよう、Vswを高くしてある。このように維持電極23の電位を高くすると、走査パルス6が印加されるタイミングでは、走査電極22と維持電極23の間にも高い電圧Vswが印加される。
【0100】
本発明の第十の実施の形態では、走査パルス印加時にこのような高い電圧が印加されても、走査電極22と維持電極23の間で誤放電が発生しないように、予備放電期間2で走査電極22と維持電極23の間の放電ギャップ近傍の壁電荷を調整している。
【0101】
本発明の第十の実施の形態の予備放電期間2の駆動波形は、図16の従来の駆動波形と比較すると、走査期間3の直前の走査電極22と維持電極23の電位差がVswと高い電位差になるように設計されている。予備放電期間2では、走査電極22にVp電圧が印加された時点で、走査電極22上には大きな負の壁電圧が形成され、維持電極23には正の壁電圧が形成されていると考えられる。
【0102】
その後、走査電極22と維持電極23の電極電位の極性を反転させ、走査電極22の電位を徐々に引き下げていくことにより、走査電極22とデータ電極29の間で弱い持続的な放電(弱放電と呼ぶ)が発生すると共に、走査電極22と維持電極23との間でも弱放電が発生する。
【0103】
この走査電極22と維持電極23の間の弱放電により、面放電ギャップ近傍の走査電極22の負壁電圧は減少し、維持電極23側には負の壁電圧が形成されるようになる。このときのランプ波形の最終到達電位差であるVswを大きくすることにより、より走査電極22の負壁電圧は減少し、維持電極23の負壁電圧は増大する。放電ギャップ近傍の維持電極23の負壁電圧を走査電極22の負壁電圧より大きくすることにより、走査電極22と維持電極23の面放電空間にかかる電圧はVswよりも小さくすることができる。
【0104】
本発明の第十の実施の形態例では、このようにして走査パルス印加時の誤放電を防止している。走査電極22に印加されているランプ波形がVp電圧から直接下がるような波形になっているのは、維持電極23へのVsw印加と同時に走査電極22の電位を引き下げることによる、走査電極22と維持電極23の面の誤放電を防止するためである。
【0105】
具体的な駆動波形の設定電圧は以下の通りである。維持パルス電圧は160V、データパルス電圧は65Vとした。走査期間3の維持電極23の電位Vswは、データパルス6が印加されても、維持電極23とデータ電極29の電位差が対向放電開始電圧以上になるように250V〜270Vとした。
【0106】
これにより、65Vのデータパルスが印加されても、維持電極23とデータ電極29の間には185V〜205Vの電圧が印加されることになる。
【0107】
さらにデータパルスが印加されなければ、250V〜270Vの電圧が印加されることになる。したがって、いずれの場合も、対向放電開始電圧以上の壁電圧が、書込み放電によっておおよそ形成され、第一維持に対向放電が発生する。
【0108】
維持電極23側を陽極にした場合の対向放電開始電圧は350V程度であるので、これだけの電圧が印加されても、書込み放電が発生しなければ維持電極23とデータ電極29の間では放電は発生しない。この対向放電開始電圧以上にしている期間は、必ずしも走査期間3の全期間である必要はない。走査パルス印加前の電圧をVsに下げてもまったく同様のVdsmin特性が得られた。また、走査パルス印加終了直後から10μsec以上経ってから、維持電極23の電位を電圧Vswから電圧Vsに引き下げても影響はない。
【0109】
一方、走査パルス終了から2μsec以上経ってから、維持電極電位を電圧Vsから電圧Vswに引き上げても、Vdsminは170Vとなり、電圧Vswに引き上げた効果は得られない。また、たとえ走査パルス印加終了後、2μsec以内に維持電極電位をVswに引き上げたとしても、Vsw電位を2μsec以上継続しなければ、その効果はきわめて弱いものとなり、Vdsminを引き下げることがほとんどできなかった。
【0110】
このような波形を用いることにより、電位固定電極34がない従来のセル構造でも、本発明の第一の実施の形態と同様のVdsmin特性を得ることができる。
【0111】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、走査パルスを短縮しても、正常に駆動できる最低の維持電圧Vdsminを低く抑えることができるようになった。具体的には、走査パルスを1μsecにまで短縮すると、従来、走査パルス終了後にデータパルスが印加されることも考慮すると維持パルス電圧を最低でも176Vにまで上げなければならなかったが、本発明のプラズマディスプレイ装置を用いれば、維持パルス電圧を143Vにまで下げることが可能となった。
【0112】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの1セルの断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの1セルの平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの1セルの平面図である。
【図4】本発明の第3実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの1セルの平面図である。
【図5】本発明の第4実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの1セルの平面図である。
【図6】本発明の第5実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの1セルの平面図である。
【図7】本発明の第6実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの1セルの平面図である。
【図8】本発明の第7実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの1セルの平面図である。
【図9】本発明の第8実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの1セルの平面図である。
【図10】本発明の第1実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの駆動波形を示す図である。
【図11】本発明の第1実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの他の駆動波形を示す図である。
【図12】本発明の第9実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの駆動波形を示す図である。
【図13】本発明の第10実施形態におけるプラズマディスプレイパネルの駆動波形を示す図である。
【図14】従来の3電極AC型プラズマディスプレイパネルの平面図である。
【図15】従来の3電極AC型プラズマディスプレイパネルの1セルの断面図である。
【図16】従来の3電極AC型プラズマディスプレイパネルの駆動波形示す図である。
【図17】走査パルス終了後のデータ電極電位Vdaと最小維持電圧Vdsminの関係を示した図である。
【図18】最小維持電圧VdsminのVsw依存性を示す図である。
【符号の説明】
1 前サブフィールド維持期間
2 予備放電期間
3 走査期間
4 維持期間
5 1サブフィールド
6 走査パルス
7 データパルス
8 書込み壁電荷形成パルス
9 維持ベース電圧
20 上部絶縁性基板
21 下部絶縁性基板
22 走査電極
23 維持電極
24 透明誘電体層
25 保護層
26 放電空間セル
27 蛍光体層
28 白色誘電体層
29 データ電極
30 ディスプレイ表示画面
31 1セル
32 金属トレース電極
33 隔壁
34 電位固定電極
35 放電ギャップ
36 非放電ギャップ

Claims (13)

  1. 第一の絶縁基板と第二の絶縁基板とが互いに対向配置され、前記第一の絶縁基板には、走査電極と維持電極とが互いに平行に並べられて構成される電極対が複数配置され、かつ、前記第二の絶縁基板には、前記走査電極及び維持電極に直交する複数のデータ電極が配置された表示パネルを備えるプラズマディスプレイ装置であって、
    前記データ電極と同層又は前記データ電極よりも上層の部位に、かつ、前記第一の絶縁基板上に配置された前記維持電極と対向する態様で、前記表示パネルの前記第二の絶縁基板上に設けられた複数の電位固定電極と、
    個々の前記走査電極に線順次で走査パルスを印加することで、映像信号に対応して前記走査電極毎にデータを書き込む期間である走査期間内であって、個々の前記走査電極に対して、走査パルスの印加が終了した後、所定の期間経過してから開始される一定の期間、一定電位を対応する前記電位固定電極に供給し続ける電位供給手段とが付加されてなると共に、
    前記電位供給手段が、前記電位固定電極に前記一定電位を供給する際、前記電位固定電極の電位を対応する前記維持電極の電位よりも低く設定すると共に、前記維持電極と対応する前記電位固定電極の電位差を、前記維持電極側を陰極としたとき、前記維持電極と対応する前記電位固定電極間の対向放電開始電圧以上に設定する一方、前記維持電極側を陽極としたとき、前記維持電極と対応する前記電位固定電極間で対向放電が発生しない電圧に設定する構成になされていることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
  2. 第一の絶縁基板と第二の絶縁基板とが互いに対向配置され、前記第一の絶縁基板には、走査電極と維持電極とが互いに平行に並べられて構成される電極対が複数配置され、かつ、前記第二の絶縁基板には、前記走査電極及び維持電極に直交する複数のデータ電極が配置された表示パネルを備えるプラズマディスプレイ装置であって、
    前記データ電極と同層又は前記データ電極よりも上層の部位に、かつ、前記第一の絶縁基板上に配置された前記維持電極と対向する態様で、前記表示パネルの前記第二の絶縁基板上に設けられた電位固定電極と、
    映像信号に対応して前記走査電極毎にデータを書き込む期間である走査期間中一定電位を前記電位固定電極に供給し続ける電位供給手段とが付加されてなると共に、
    前記電位供給手段が、前記電位固定電極に前記一定電位を供給する際、前記電位固定電極の電位を前記維持電極の電位よりも低く設定すると共に、前記維持電極と前記電位固定電極の電位差を、前記維持電極側を陰極としたとき、前記維持電極と前記電位固定電極間の対向放電開始電圧以上に設定する一方、前記維持電極側を陽極としたとき、前記維持電極と前記電位固定電極間で対向放電が発生しない電圧に設定する構成になされていることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
  3. 第一の絶縁基板と第二の絶縁基板とが互いに対向配置され、前記第一の絶縁基板には、走査電極と維持電極とが互いに平行に並べられて構成される電極対が複数配置され、かつ、前記第二の絶縁基板には、前記走査電極及び維持電極に直交する複数のデータ電極が配置された表示パネルを備えるプラズマディスプレイ装置であって、
    前記データ電極と同層又は前記データ電極よりも上層の部位に、かつ、前記第一の絶縁基板上に配置された前記維持電極と対向する態様で、前記表示パネルの前記第二の絶縁基板上に設けられた電位固定電極と、
    全駆動期間に亘り一定電位を前記電位固定電極に供給し続ける電位供給手段とが付加されてなると共に、
    前記電位供給手段が、前記電位固定電極に前記一定電位を供給する際、前記電位固定電極の電位を前記維持電極の電位よりも低く設定すると共に、前記維持電極と前記電位固定電極の電位差を、前記維持電極側を陰極としたとき、前記維持電極と前記電位固定電極間の対向放電開始電圧以上に設定する一方、前記維持電極側を陽極としたとき、前記維持電極と前記電位固定電極間で対向放電が発生しない電圧に設定する構成になされていることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
  4. 前記電位固定電極が、格子状の電極形状であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載のプラズマディスプレイ装置。
  5. 前記維持電極と対向する前記データ電極の線幅が、前記走査電極と対向する前記データ電極の線幅より細いことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載のプラズマディスプレイ装置。
  6. 前記電位固定電極が、前記維持電極と対向する前記データ電極上に絶縁体層を介して設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に記載のプラズマディスプレイ装置。
  7. 前記電位固定電極が前記データ電極と直交して、前記維持電極毎に設けられていることを特徴とする請求項6記載のプラズマディスプレイ装置。
  8. 前記電位固定電極が、前記維持電極と対向する部分のうち、前記データ電極と交差する部分の線幅が、他の部分の線幅より細くなっていることを特徴とする請求項7記載のプラズマディスプレイ装置。
  9. 前記電位固定電極が、前記データ電極と同層に形成され、前記電位固定電極が前記維持電極と対向する部分の面積が、前記データ電極が前記維持電極と対向する部分の面積よりも1画素内において大きく、かつ、前記電位固定電極が前記走査電極と対向する部分の面積が、前記データ電極が前記走査電極と対向する部分の面積よりも、1セル内において小さいことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載のプラズマディスプレイ装置。
  10. 前記所定の期間が2μsec以内であることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ装置。
  11. 前記一定の期間が2μsec以上であることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ装置。
  12. 前記電位固定電極の電位を常に接地させることを特徴とする請求項1、2又は3記載のプラズマディスプレイ装置。
  13. 前記電極が誘電体層に被覆されて放電ガスには直接露出させず、交流放電の状態で動作させる交流放電型である請求項1乃至12のいずれか一に記載のプラズマディスプレイ装置
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