JP3903647B2 - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機及びプリンターに用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。更に詳しくは、特に帯電安定性に優れ、また定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性に優れ、得られた画像のOHP透明性が良好な静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法において従来一般に広く用いられてきた静電荷現像用トナーは、スチレン/アクリレート系共重合体に、カーボンブラックや顔料のような着色剤と帯電制御剤及び/または磁性体を含む混合物を押出機により溶融混練し、ついで粉砕・分級することによって製造されてきた。しかし、上記のような溶融混練/粉砕法で得られる従来のトナーは、トナーの粒径制御に限界があり、実質的に10μm以下、特に8μm以下の平均粒径のトナーを歩留まり良く製造することが困難であり、今後電子写真に要求される高解像度化を達成するためには十分なものとは言えなかった。
【0003】
また、使用エネルギー低減の観点から低温定着性がトナーに求められており、これを達成するために、混練時に低軟化点のワックスをトナー中にブレンドする方法が提案されている。しかしながら、混練/粉砕法においては樹脂100部に対して4〜5部程度のブレンドが限界であり、十分な低温定着性能のトナーを得ることができなかった。
特開昭63−186253号公報においては、粒径及び粒径分布制御の問題を克服し、高解像度を達成するために、乳化重合/二段凝集法によるトナーの製造方法が提案されている。しかしながら、この方法に於いても凝集工程で導入できるワックスの量に限界があり、低温定着性に関しては十分な改良効果は得られていなかった。すなわち、該特許に基づいて本発明者らがワックスの添加量をふって検討したところ、ワックスの添加量を増やしていくと、得られたトナーの粒径分布が二山となったり、1μm以下の微粉が残存する等の問題点があり、凝集工程後に分級工程が必要となった。また、特開平6−329947号公報に開示された方法は、凝集工程で凝集剤と同時に水に無限溶解する有機溶媒を添加することにより粒径分布の狭い凝集粒子を得ることが可能な方法であるが、制御因子が多いために再現性が悪く、また廃水処理の負担が大きい、等の問題があった。
さらに、得られたトナーの帯電性の制御に関する技術はこれまでに開示されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来用いられていた静電荷像現像用トナーの欠点を克服し、特に帯電安定性に優れ、高解像度、低温定着性、耐オフセット性を満足させる新規のトナーを安価に製造する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、樹脂粒子および着色剤粒子を分散させてなる分散液中で凝集粒子を形成する凝集工程の途中で帯電制御剤を添加することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、
(1)少なくとも樹脂1次粒子および着色剤粒子を分散させてなる分散液中で凝集粒子を形成する凝集工程、及び、(2)該凝集粒子を加熱して融着してトナー粒子を形成する加熱造粒工程、の両工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法において、
【0006】
前記凝集工程を開始して1時間を経過後、凝集工程終了前に、または、凝集工程の開始から終了までの時間の1/10を経過後、凝集工程終了前に帯電制御剤を添加することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法、並びに、
(1)少なくとも樹脂1次粒子および着色剤粒子を分散させてなる分散液中に、更に電解質を添加して混合分散液とし2次粒子を形成した後、次いで加熱して凝集粒子を形成させる凝集工程、(2)該凝集粒子を加熱、融着してトナー粒子を形成する加熱造粒工程、の両工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法において、
電解質を添加後、凝集工程終了前に帯電制御剤を添加することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法、に存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる樹脂1次粒子の形態は、水中に分散された分散液であれば、基本的にはいかなるものでも構わない。水中に分散された分散液とは、必要に応じて乳化剤等を用い、樹脂を最大でも3μm以下の粒子として分散させたものである。樹脂1次粒子の平均粒径は、1μm以下が好ましく、さらには0.8μm以下、特に0.5μm以下の粒径のものが好適に用いられる。なお、粒径分布、平均粒径は、例えば日機装社製マイクロトラックUPAを用いて測定することができる。樹脂1次粒子中に3μm以上の粒径が含まれると凝集工程で粒径分布の揃った小粒径トナーを製造することが困難となる。平均粒径が1μmよりも大きい場合には、得られたトナーの形状が悪かったり、着色剤、帯電制御剤等の添加剤が不均一になったりするためトナー用途には不適当である。
【0008】
樹脂としては、ポリエステル、スチレン/アクリレート系共重合体、ポリウレタン等が用いられる。中でもポリエステルやスチレン/アクリレート系共重合体が好ましい。ポリエステルの場合、重合したポリエステルを乳化剤等を用いて樹脂分散液として用いればよいし、スチレン/アクリレート系共重合体の場合、乳化重合を行い、この分散液をそのまま次の工程に用いることができる。
その際、重合体のガラス転移温度は40〜80℃となることが好ましい。ガラス転移温度が80℃を越えると定着温度が高くなりすぎたり、OHP透明性の悪化が問題となることがあり、一方重合体のガラス転移温度が40℃未満の場合は、トナーの保存安定性が悪くなりすぎて問題を生じることがある。
【0009】
樹脂を乳化剤を用いて分散液とする場合、公知のカチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤の中から選ばれる少なくともひとつの乳化剤の存在下で乳化して得られる。これらの界面活性剤は2種以上を併用してもよい。
カチオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、等があげられる。
また、アニオン界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、等があげられる。さらに、ノニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖、等があげられる。
【0010】
スチレン/アクリレート系共重合体の場合、乳化重合を行い、この分散液をそのまま次の工程に用いることができる。用いるモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチルヘキシル、等の(メタ)アクリル酸エステル、を挙げることができる。この中で、スチレン、ブチルアクリレート、等が特に好ましい。
【0011】
また、酸性極性基又は塩基性極性基を有するモノマーを共重合してもよい。酸性極性基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、等のカルボキシル基を有するモノマー、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー、等があげられる。また、塩基性極性基を有するモノマーとしては、アミノスチレン及びその4級塩、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、等の窒素含有複素環含有モノマー、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び、これらのアミノ基を4級化したアンモニウム塩を有する(メタ)アクリル酸エステル、更には、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、アクリル酸アミドを挙げることができる。
【0012】
乳化剤としては、前記のものから1種又は2種以上の併用系が選択される。
また、低温定着性、耐オフセット性を満足させるために、ワックス等を添加することが好ましい。ワックスを予め分散してエマルジョンとし凝集の工程で添加してもよいが、特に乳化重合の際に、樹脂のシード重合に供する事が好ましい。
ワックスとしては公知のワックス類の任意のものを使用することができるが、具体的には低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス、パラフィンワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス、水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス、ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン、アルキル基を有するシリコーン、ステアリン酸等の高級脂肪酸、長鎖脂肪酸アルコール、ペンタエリスリトール等の長鎖脂肪酸多価アルコール、及びその部分エステル体、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、等が例示される。
【0013】
これらのワックスの中で定着性を改善するためにより好ましいのは、融点が100℃以下のワックスであり、更に好ましいワックスの融点は40〜90℃の範囲、特に好ましいのは50〜80℃の範囲である。融点が100℃を越えると定着温度低減の効果が乏しくなる。
また、本発明では、樹脂1次粒子を得る際に顔料をワックスと同時にシードとして用いたり、着色剤をモノマー又はワックスに溶解又は分散させて用いたりしても構わないが、樹脂1次粒子と同時に着色剤粒子を凝集させて会合粒子を形成し、トナーとすることが好ましい。この際、樹脂1次粒子は必要に応じて2種類以上用いてもよい。
【0014】
ここで用いられる着色剤粒子としては、無機顔料又は有機顔料、有機染料のいずれでも良く、またはこれらの組み合わせでもよい。これらの具体的な例としては、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染顔料など、公知の任意の染顔料を単独あるいは混合して用いることができる。フルカラートナーの場合にはイエローはベンジジンイエロー、モノアゾ系、縮合アゾ系染顔料、マゼンタはキナクリドン、モノアゾ系染顔料、シアンはフタロシアニンブルーをそれぞれ用いるのが好ましい。着色剤は、通常、バインダー樹脂100重量部に対して3〜20重量部となるように用いられる。
【0015】
これらの着色剤も乳化剤の存在下で水中に乳化させエマルジョンの状態で用いるが、平均粒径としては、0.01〜3μm のものを用いるのが好ましい。
本発明では、樹脂1次粒子と着色剤粒子を分散させてなる分散液中で凝集粒子を形成するが、凝集粒子を形成する工程(凝集工程)を開始して1時間を経過した以降、または凝集粒子を形成する工程の開始から終了までの時間の1/10を経過した以降で、凝集工程終了までに帯電制御剤を添加することを特徴とする。
凝集粒子を形成する工程(凝集工程)とは、樹脂1次粒子と少なくとも着色剤粒子を混合して室温付近で0.5から2時間攪拌し、均一化し、その後、樹脂のTg付近までゆっくり、または段階的に昇温し、目的とする粒径になり、安定するまで保持する工程をさす。帯電制御剤は、この工程中少なくとも、室温付近で均一化し、昇温を始める段階以降であって、Tg付近で温度を保持する段階までの間に添加する。
【0016】
凝集工程の最初から帯電制御剤を添加すると、帯電制御剤はトナー粒子内部により多く分布し、良好な帯電性を示さない。一方、凝集粒子を形成する次の工程、すなわち凝集粒子を加熱して融着してトナー粒子を形成する工程(加熱造粒工程)で帯電制御剤を添加すると、帯電制御剤粒子がトナー中にあまり取り込まれずにやはり良好な帯電性を示さない。
添加の方法は、一度に添加してもよいし、徐々に添加してもよいし、段階的に何度かに分けて添加してもよい。この場合、帯電制御剤も水中で平均粒径、0.01〜3μm のエマルジョンとして使用する。樹脂1次粒子や着色剤粒子より後から帯電制御剤を添加することで、トナーのより表面に帯電制御剤が分布し、良好な帯電性が得られるとともに、安定した帯電性が得られる。特に非磁性1成分方式ではその効果は顕著である。
【0017】
帯電制御剤の添加量は、樹脂100部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5部、さらに好ましくは0.1〜2重量部である。
本発明では、樹脂1次粒子と着色剤粒子を分散させてなる分散液中で凝集粒子を形成する凝集工程として、樹脂1次粒子および着色剤粒子を分散させた分散液中に、更に重合体固形分100部に対して電解質を0.01部−100部添加して混合分散液とし2次粒子を形成した後、帯電制御剤を添加し加温して凝集粒子を形成させることとすることもできる。電解質を添加することでさらに小粒径で粒径分布のシャープなトナーを製造することが可能となる。
この場合、帯電制御剤は、電解質を添加終了後以降、加温してTg付近で保持する段階までの間に添加する。
【0018】
本発明で使用する電解質としては、有機の塩、無機塩のいずれでも良いが、好ましくは、1価、あるいは2価以上の多価の金属塩を用いると良い。このような塩の具体例としては、NaCl、KCl、LiCl、Na2 SO4 、K2 SO4 、Li2 SO4 、MgCl2 、CaCl2 、MgSO4 、CaSO4 、ZnSO4 、Al2 (SO4 )3 、Fe2 (SO4 )3 、等があげられる。
電解質を添加するにあたって、混合分散液の温度は40℃以下に保つことが好ましく、より好ましくは30℃以下の温度範囲、更に好ましくは20℃以下の温度範囲に保って電解質添加を行うと良い。温度が40℃以上の条件で電解質を添加すると急速な凝集が起こり、粒径制御が困難となったり、得られた粒子のかさ密度が低く問題となることがある。
【0019】
電解質を添加した後に得られる混合分散液の平均粒径は、通常3μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。平均粒径が3μmを越えると次の工程で凝集させた凝集粒子の形状が葡萄の房状となり、得られたトナーの強度が悪くなり問題となる。電解質を添加した後で、帯電制御剤を添加することで、電解質によって凝集した粒子の表面に帯電制御剤が分布するため、良好な帯電性、及び安定した帯電性が得られる。
帯電制御剤としては、公知の任意のものを単独ないしは併用して用いることができる。カラートナー適応性(帯電制御剤自体が無色ないしは淡色でトナーへの色調障害がないこと)を勘案すると、正荷電性としては4級アンモニウム塩化合物が、負荷電性としてはサリチル酸もしくはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウムなどとの金属塩、金属錯体や、ベンジル酸の金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物等が好ましい。その使用量はトナーに所望の帯電量により決定すればよいが、通常はバインダー樹脂100重量部に対し0.01〜10重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部、更に好ましくは0.1〜2重量部用いる。
【0020】
上記のようにして得られた凝集粒子は、加熱、融着してトナー粒子とする。
この行程での加熱温度は、通常、(Tg+20℃)〜(Tg+80℃)の範囲である。通常はこの加熱造粒工程の間に粒子間の融着が更に進み、トナー粒子の形状も丸くすることができ、必要に応じて形状を制御できる。この加熱造粒工程の時間は通常1時間から24時間であり、好ましくは2時間から10時間である。
【0021】
本発明のトナーを製造するに当たっては、凝集粒子の粒径が実質的に最終的なトナーの粒径まで成長した後に、更に同種又は異なった種類のバインダー樹脂エマルジョンを添加し、粒子を表面に付着させることにより、表面近傍のトナー性状を修飾する事も可能である。
また、本発明のトナーは、必要により流動化剤等の添加剤と共にもちいることができる。そのような流動化剤としては、具体的には、疎水性シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の微粉末を挙げることができ、通常、バインダー樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部用いられる。
【0022】
さらに、本発明のトナーは、マグネタイト、フェライト、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、導電性チタニア等の無機微粉末やスチレン樹脂、アクリル樹脂等の抵抗調節剤や滑剤などが内添剤又は外添剤として用いられる。これらの添加剤の使用量は所望する性能により適宜選定すれば良く、通常バインダー樹脂100重量部に対し0.05〜10重量部程度が好適である。
本発明の静電荷像現像用トナーは2成分系現像剤又は非磁性1成分系現像剤のいずれの形態で用いてもよい。特に、非磁性1成分方式では、良好な帯電性および帯電安定性を示し、その効果は顕著である。2成分系現像剤として用いる場合、キャリアとしては、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉等の磁性物質またはそれらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性キャリア等公知のものを用いることができる。樹脂コーティングキャリアの被覆樹脂としては一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル共重合系樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、またはこれらの混合物等が利用できる。
【0023】
【実施例】
以下に実施例により本発明を具体的に説明する。
以下の例で「部」とあるのは「重量部」を意味する。また、重合体粒子の平均粒径及び分子量は、それぞれ下記の方法により測定した。
平均粒径:日機装社製マイクロトラックUPA又はコールター社製コールターカウンターマルチサイザーII型によって測定した。
【0024】
帯電量:得られたトナー10gを非磁性1成分の現像槽(九州松下社製Phaser550現像槽:ゴムローラー、ウレタン製ブレード)に投入し、ローラーを一定数回転させた後、ローラー上のトナーを吸引し、帯電量と吸引したトナー重量から単位体積あたりの帯電量を求めた。また、初期の帯電量と、10分間回転させた後の帯電量を測定し帯電安定性を評価した。10分後の帯電量が、初期に対して60%以上を○、30%以上を△、それ未満を×と評価した。
【0025】
定着試験:未定着のトナー像を担持した記録紙を用意し、加熱ローラの表面温度を100℃から200℃まで変化させ、定着ニップ部に搬送し、排出されたときの定着状態を観察した。定着時に加熱ローラにトナーのオフセットが生じず、定着後の記録紙上のトナーが十分に記録紙に接着している温度領域を定着温度領域とする。このオフセットが生じない定着温度の下限温度をTL、上限温度をTUとしたとき、TU−TLをその定着温度幅とした。定着機の加熱ローラは、離型層がPFA(テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)でできており、ニップ幅は4mmで評価した。
【0026】
実施例1
<樹脂1次粒子の形成>
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えたガラス製反応器に以下の量の乳化剤、脱塩水を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温した。
【0027】
【表1】
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.5部
脱イオン水 372部
【0028】
その後、下記のモノマー類、乳化剤水溶液、開始剤を添加し、6.5時間乳化重合を行った。
【0029】
【表2】
スチレン 79部
アクリル酸ブチル 21部
アクリル酸 3部
トリクロロブロモメタン 0.5部
乳化剤水溶液 26部
8%過酸化水素水溶液 11部
8%アスコルビン酸水溶液 11部
【0030】
重合反応終了後冷却し、乳白色の重合体分散液を得た(以下、重合体分散液Aと略す)。得られた重合体分散液平均粒子径は185nm、重量平均分子量は64,000、Tgは65℃であった。
<凝集工程>
【0031】
【表3】
重合体分散液A 100部(固形分として)
赤色色素カミン2Bの水分散液 6.7部(固形分として)
ポリプロピレン水分散液 5部(固形分として)
【0032】
以上の混合物を分散攪拌しながら60℃まで1℃/分で昇温し、そこで2時間保持した。その後負帯電制御剤フェノールアミド化合物(20%分散液)0.1部(固形分として)を滴下した。その後70℃に昇温し、さらに2時間保持し、凝集反応を終了した。
<加熱造粒工程>
凝集反応終了後、更に会合粒子の結合強度を上げるため、95℃に昇温し、5時間保持した。その後得られた会合粒子のスラリーを冷却し、桐山ロートで濾過、水洗し、凍結乾燥することによりトナーを得た。
【0033】
<トナーの評価>
得られたトナーのコールターカウンターによる体積平均粒径は7.2μmであった。このようにして得られたトナーの帯電性を評価したところ、初期帯電量は、−17.8μC/g、帯電安定性は○であった。また、定着温度は、TL162℃、TU200℃以上でTU−TLは38℃以上であった。
【0034】
比較例1
凝集工程において、負帯電制御剤フェノールアミド化合物(20%分散液)
0.65部(固形分として)を最初から混合した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
得られたトナーのコールターカウンターによる体積平均粒径は6.8μmであった。このようにして得られたトナーの帯電性を評価したところ、初期帯電量は、+1.8μC/gであり負帯電しなかった。
【0035】
比較例2
負帯電制御剤フェノールアミド化合物(20%分散液)0.65部(固形分として)を凝集工程終了後、95℃に昇温したところで添加した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。反応終了後、得られた会合粒子のスラリーを冷却し、桐山ロートで濾過したところ、濾液に黄白色のものが見られた。このようにして得られたトナーの帯電性を評価したところ、初期帯電量は、+1.4μC/gであり負帯電しなかった。
【0036】
比較例3
負帯電制御剤フェノールアミド化合物を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。このようにして得られたトナーの帯電性を評価したところ、初期帯電量は、+0.4μC/gであり負帯電しなかった。
これら比較例1〜3に示したように、実施例1に対して、比較例1では負帯電制御剤を最初から添加、比較例2では凝集工程終了後添加、比較例3では添加しないとトナーの初期帯電は、各々正帯電であった。これに対して、実施例1のように、凝集工程を1時間経過した以降に負帯電制御剤を添加した場合は、負に帯電し、安定性も良好であった。
【0037】
実施例2
トナー粒子を下記の混合物を用いて形成する以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子を得た。
【0038】
【表4】
重合体分散液A 100部(固形分として)
青色色素フタロシアニンブルーの水分散液 6.7部(固形分として)
【0039】
このようにして得られたトナーの帯電性を評価したところ、初期帯電量は、−26.2μC/g、帯電安定性は○であった。
参考例
ベヘンサンベヘニルをドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとノニルフェニルエーテルの存在下に高圧剪断をかけて乳化し、エステルワックスのエマルジョン(ワックスエマルジョンAと呼ぶ)を得た。得られたエマルジョンの固形分濃度は30.0%であり、UPAで測定した平均粒径は840nmであった。
【0040】
実施例3
<樹脂粒子の形成>
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えたガラス製反応器に以下の量のワックスエマルジョンA、脱塩水を仕込み、窒素気流下で90℃に昇温した以外は実施例1と同様にして重合体分散液Bを得た。
【0041】
【表5】
ワックスエマルジョンA 35部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.45部
脱イオン水 400部
【0042】
得られた重合体分散液Bの重量平均分子量は93,000であった。
<凝集工程>
【0043】
【表6】
重合体分散液B 110部(固形分として)
青色色素フタロシアニンブルーの水分散液 6.7部(固形分として)
【0044】
以上の混合物をディスパーザーで分散攪拌しながら20℃でNaCl水溶液を110分かけて添加した(固形分として20部)。その後、30分攪拌を続け、その後、負帯電制御剤フェノールアミド化合物(20%分散液)2部(固形分として)を滴下した。その後、15分攪拌後、更に攪拌しながら65℃に昇温して2時間保持し凝集工程を終了した。
<加熱造粒工程>
凝集工程終了後、更に会合粒子の結合強度を上げるため、95℃に昇温し、5時間保持した。その後得られた会合粒子のスラリーを冷却し、桐山ロートで濾過、水洗し、凍結乾燥することによりトナーを得た。
【0045】
<トナー粒子の評価>
得られたトナーのコールターカウンターによる体積平均粒径は7.0μmであった。このようにして得られたトナーの帯電量を評価したところ、初期帯電量は、−26.3μC/g、帯電安定性は○であった。また、定着性を評価したところ、TL138、TU200℃以上、TU−TLは62℃以上であった。
【0046】
実施例4
<樹脂粒子の形成>
実施例1と同様にして重合体分散液Aを得た。
<凝集工程及び加熱造粒工程>
【0047】
【表7】
重合体分散液A 100部(固形分として)
ワックスエマルションA 10部(固形分として)
青色色素フタロシアニンブルーの水分散液 6.7部(固形分として)
【0048】
以上の混合物をディスパーザーで分散攪拌しながら20℃でAl2 (SO4 )3 水溶液を1時間かけて添加した(固形分として0.6部)。その後、15分攪拌を続け、その後、負帯電制御剤フェノールアミド化合物(20%分散液)2部(固形分として)を滴下した。その後、15分攪拌後、更に攪拌しながら65℃に昇温して0.5時間保持し、更に会合粒子の結合強度を上げるため、95℃に昇温し、5時間保持した。その後得られた会合粒子のスラリーを冷却し、桐山ロートで濾過、水洗し、凍結乾燥することによりトナーを得た。
【0049】
<トナーの評価>
得られたトナーのコールターカウンターによる体積平均粒径は5.3μmであった。このようにして得られたトナーの帯電性を評価したところ初期帯電量は、−47.5μC/g、帯電安定性は△であった。また、定着性を評価したところ、TL160℃、TU200℃以上、TU−TLは40℃以上であった。
【0050】
比較例4
負帯電制御剤フェノールアミド化合物(20%分散液)5部(固形分として)を最初から添加する以外は実施例4 と同様にしてトナーを得た。得られたトナーのコールターカウンターによる体積平均粒径は6.0μmであった。
このようにして得られたトナーの帯電性を評価したところ初期帯電量は、+17.6μC/gであり、負帯電しなかった。
【0051】
比較例5
負帯電制御剤フェノールアミド化合物(20%分散液)を添加しない以外は実施例4 と同様にしてトナーを得た。 得られたトナーのコールターカウンターによる体積平均粒径は7.1μmであった。
このようにして得られたトナーの帯電性を評価したところ初期帯電量は、+0.5μC/gであり、負帯電しなかった。
これら比較例4、5に示したように、実施例4に対して、比較例4では負帯電制御剤を最初から添加、比較例5では添加しないとトナーの初期帯電は、各々正帯電であった。これに対して、実施例4のように、電解質を添加した後に負帯電制御剤を添加した場合は、負に帯電し、安定性も良好であった。
【0052】
実施例5
トナー粒子の形成時、添加する負帯電制御剤フェノールアミド化合物(20%分散液)を0.65部(固形分として)にする以外は、実施例3と同様にしてトナーを得た。得られたトナーのコールターカウンターによる体積平均粒径は7.6μm であった。このようにして得られたトナーの帯電性を評価したところ、初期帯電量は、−19.4μC/gであり、帯電安定性は○であった。また、定着性を評価したところ、TL150℃、TU200℃以上でTU−TLは50℃以上であった。
【0053】
実施例6
<樹脂粒子の形成>
実施例1と同様にして重合体分散液Aを得た。
<凝集工程及び加熱造粒工程>
【0054】
【表8】
重合体分散液A 100部(固形分として)
青色色素フタロシアニンブルーの水分散液 6.7部(固形分として)
【0055】
以上の混合物をディスパーザーで分散攪拌しながら20℃でAl2 (SO4 )3 水溶液を1時間かけて添加した(固形分として0.6部)。その後、15分攪拌を続け、その後、負帯電制御剤フェノールアミド化合物(20%分散液)2部(固形分として)を滴下した。その後、15分攪拌後、更に攪拌しながら65℃に昇温して0.5時間保持し、更に会合粒子の結合強度を上げるため、95℃に昇温し、5時間保持した。その後得られた会合粒子のスラリーを冷却し、桐山ロートで濾過、水洗し、凍結乾燥することによりトナーを得た。
【0056】
<トナー粒子の評価>
得られたトナーのコールターカウンターによる体積平均粒径は5.2μmであった。このようにして得られたトナーの帯電性を評価したところ初期帯電量は、−26.6μC/g、帯電安定性は○であった。また、定着性を評価したところ、TL160℃、TU200℃以上、TU−TLは40℃以上であった。
【0057】
【発明の効果】
本発明の方法では、凝集工程を開始して1時間を経過した以降、または凝集工程の開始から終了までの時間の1/10を経過した以降で、凝集工程終了より前に帯電制御剤を添加することで、特に、帯電安定性に優れ、高解像度、低温定着性、耐オフセット性を満足させるトナーを得ることができる。
すなわち実施例1では、凝集工程開始後1時間以上経過してから、帯電制御剤を添加したところ、良好な帯電性および帯電安定性を示したのに対し、比較例1では負帯電制御剤を最初から添加、比較例2では凝集工程終了後添加、比較例3では添加しなかった場合トナーの初期帯電は、各々正帯電であった。
さらに本発明では、凝集工程で電解質を添加する場合に、電解質添加後、凝集工程終了前に帯電制御剤を添加することにより、特に、帯電安定性に優れ、高解像度、低温定着性、耐オフセット性を満足させるトナーを得ることができる。
すなわち実施例4では、電解質を添加後に、帯電制御剤を添加したところ、良好な帯電性および帯電安定性を示したのに対し、比較例4では負帯電制御剤を最初から添加、比較例5では添加しなかった場合、トナーの初期帯電は、各々正帯電であった。
Claims (5)
- (1)少なくとも樹脂1次粒子および着色剤粒子を分散させてなる分散液中で凝集粒子を形成する凝集工程、及び、(2)該凝集粒子を加熱、融着してトナー粒子を形成する加熱造粒工程、の両工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法において、
凝集工程を開始して1時間を経過後、凝集工程終了前に、または、凝集工程の開始から終了までの時間の1/10を経過後、凝集工程終了前に帯電制御剤を添加することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。 - (1)少なくとも樹脂1次粒子および着色剤粒子を分散させてなる分散液中に、更に電解質を添加して混合分散液とし2次粒子を形成した後、次いで加熱して凝集粒子を形成させる凝集工程、(2)該凝集粒子を加熱、融着してトナー粒子を形成する加熱造粒工程、の両工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法において、
電解質を添加後、凝集工程終了前に帯電制御剤を添加することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。 - 凝集工程の途中で添加する帯電制御剤が、水中に分散された分散液である請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 凝集工程の途中で添加する帯電制御剤の量が、樹脂粒子100重量部に対して0.1重量部から5重量部である請求項1〜3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 樹脂1次粒子が、ワックス微粒子をシードとするシード重合法により得られた粒子である請求項1〜4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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