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JP3990725B2 - 優れた靭性及び溶接性を持つ高強度2相鋼板 - Google Patents

優れた靭性及び溶接性を持つ高強度2相鋼板 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、建造物及びラインパイプ前駆体として有用な高強度鋼及びその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、フェライト相とマルテンサイト/ベイナイト相から成る2相高強度鋼板であって、鋼板の厚み方向にわたって実質的に均一な微細構造及び機械強度を有し、優れた靭性と溶接性を兼ね備えた鋼板の製造に関するものである。更に詳しくは、本発明は、微細構造が実用的な状態で形成できるような堅実性と融通性と容易性をもって製造される2相高強度鋼の製造に関するものである。
背景技術
比較的柔軟な相であるフェライトと、比較的強靱な相であるマルテンサイト/ベイナイトからなる2相鋼はAr3変態点とAr1変態点との間の温度でアニールを行った後、空冷と水冷の間の冷却速度で室温まで冷却することにより製造される。選択されるアニーリングの温度は、鋼の組成とフェライトとマルテンサイト/ベイナイトの所望の容量比とにより定まる。
低炭素合金2相鋼の発展については多くの文献があり治金学分野で深く探究されてきた。例えば、“Fundamentals of Dual Phase Steels”や“Formable HSLA and Dual Phases Steels”の学会予稿集や、米国特許第4,067,756及び第5,061,325を参照。しかしながら、今まで2相鋼は多くは自動車工業に向けられており、この鋼のユニークな高加工硬化特性はプレス加工や打ち抜き加工時の自動車用シート鋼の成型性改善に利用されてきた。斯くして、2相鋼は薄いシート、典型的には2〜3mm、通常10mm以下のシートに限られてきたし、その降伏的や極限引張強度はそれぞれ50〜60ksi及び70〜90ksi程度であった。又、マルテンサイト/ベイナイト相は微細構造の約10〜40容量%であり、残部は柔軟なフェライト相である。更に、広範囲な応用を阻害する要因として、製造条件に敏感に反応し変化し易いことが挙げられ、このため、所望の物性を得るためには厳密な融通性のない温度その他の固定管理を必要であった。この種の厳密な工程管理の外部では、物性はドラマチックな急激な低下を生じる。このような製造条件に対する感受性のため、2相鋼は実際上一定な状態で製造できず、世界中のほんの一つかみの製鋼工場においてしか製造されていない。
従って、本発明は、2相鋼のもつ高加工硬化特性を成型性の改良のためではなく高い降伏応力、即ち鋼板をラインパイプに形成するとき加えられる1〜3%変形の後に100ksi、好ましくは120ksi以上の降伏応力を達成するために利用することを目的とするものである。斯くして、本明細書で記載された特性を有する2相鋼板はラインパイプの前駆体である。
本発明は、又、少なくとも10mmの厚さにわたって実質的に均一な微細構造を与えることを目的とする。
本発明は、更に、ベイナイト/マルテンサイト相の容量上限を75%以上に拡大するような微細構造の構成相の分布をもたらし、それにより高靭性により特徴づけられた高強度2相鋼を提供することを目的とする。更に、本発明は高い溶接性と優れた熱影響域(HAZ)における耐軟化性とをもつ高強度2相鋼板を提供することを目的とする。
発明の開示
従来の2相鋼においては、構成する相の容積分率は冷却開始温度の僅かな変化に対しても敏感に反応した。
一方、本発明によれば、鋼組成は圧延加工の熱機械的管理により一定に保つことができ、その結果、ラインパイプ前駆体として有用な高強度(即ち、1〜3%変形の後の降伏応力が100ksi以上、好ましくは120ksi以上)2相鋼であって、更に、40〜80容量%、好ましくは50〜80容量%のマルテンサイト/ベイナイト相がフェライトマトリックス中に存在し、ベイナイトがマルテンサイト/ベイナイトの約50%を占めるような2相鋼を製造し得る。
好ましい態様においてはフェライトマトリックスはバナシウム及びニオビウム炭化物又は炭窒化物及びモリブデン炭化物〔(V,Nb)(C,N)及びMo2C〕の中から選ばれる少なくとも1つ、好ましくは全部の微細折出物の高密度転換(1010cm/cm3)及び分散により更に強化される。バナジウム、ニオビウム及びモリブラン炭化物又は炭窒化物の微細な(直径50Å以下)析出物はAr3変態点以下のオーステナイト−フェライト変態の間に生じる相間析出反応によりフェライト相中に形成される。この析出物は主としてバナジウム及びニオビウム炭化物であって、(V,Nb)(C,N)と表す。このように、組成と圧延工程の熱機械的制御をバランスさせることにより、厚さが少なくとも約15mm、好ましくは少なくとも約20mmで非常に高い強度をもつ2相鋼が製造できる。
2相鋼の強度はマルテンサイト/ベイナイト相の存在に関連しており、この相の存在に関連しており、この相の容量分率を増大させることにより強度を増大させることができる。しかしながら、強度とフェライト相によりもたらされる靭性(延性)とはバランスをとる必要がある。たとえば、マルテンサイト/ベイナイトが少なくとも約40容量%存在する時に2%変形の後の降伏応力は少なくとも約100ksiとなり、マルテンサイト/ベイナイトが少なくとも約60容量%存在する時に少なくとも約120ksiの降伏応力が得られる。
好ましい2相鋼、即ち、フェライト相中に高密度の転位とバナジウム及びニオビウム析出物を有する2相鋼は、Ar3変態点以上の温度における最終圧延と、Ar3変態点と500℃との間の温度への冷却と、それに続く室温までの急冷により製造される。この方法は、フェライト相が適切な成型性を確保すべく析出物を含んではならないような、自動車工業用の通常10mm以下の厚さで50〜60ksiの降伏応力をもつ従来の2相鋼の製造方法とは全く異なっている。
析出物はフェライトとオーステナイトの間の移動する界面に不連続に形成される。しかし、析出物はバナジウムもしくはニオビウム、又はそれら両方が適当の量存在する時ににのみ形成されるものであって、圧延と加熱処理条件は注意深く制御する必要がある。バナジウムとニオビウムは鋼組成において重要な元素である。
図面の説明
第1図は、市販の鋼(点線)及び本発明の鋼(実線におけるフェライト容量%(縦軸)に対する開始−急冷温度(℃、横軸)のプロットである。
第2図(a)及び(b)は、A1の方法条件により生成した2相微細構造の走査電子顕微鏡写真であり、第2図(a)は表面部、(b)は中央(厚さ中間部)である。これらの図において、灰色の部分はフェライト相、より明るい部分はマルテンサイ相である。
第3図はフェライト相中の直径約50Å以下、好ましくは、直径約10〜50Åの範囲のニオビウム及びバナジウム炭化物析出物の透過電子写真である。暗い部分(左側)はマルテンサイト相で明るい部分(右側)はフェライト相である。
第4図は、本発明により製造されたA1鋼(実線)及び市販×100ラインパイプ鋼(点線)のHAZを横切る硬さ(Vickervs 硬さ)変化を示すプロットである。本発明の鋼は、3キロジュール/mmの熱入力におけるHAZ強度の有意な減少がないのに対し、×100鋼では有意の(約15%)HAZ強度(Vikers硬さにより示される)の減少が見られる。
本発明の鋼は高強度、優れた溶接性及び優れた低温靭性を与えるものであり、重量で表し下記の組成を有する:
C:0.05〜0.12%、好ましくは0.06〜0.12%、更に好ましくは0.08〜0.11%
Si:0.01〜0.50%
Mn:0.40〜2.0%、好ましくは1.2〜2.0%、更に好ましくは1.7〜2.0%
Nb:0.03〜0.12%、好ましくは0.05〜0.1%
V:0.05〜0.15%
Mo:0.2〜0.8%
Cr:0.3〜1.0%、水素雰囲気で用いることが好ましい。
Ti:0.015〜0.03%
Al:0.01〜0.03%
Pcm:0.24%以下
残部はFe及び偶発的不純物。
バナジウムとニオビウムの濃度の合計は0.1重量%以上であり、更に好ましくはバナジウム及びニオビウムの濃度は各0.04%以上である。以下に述べるように幾分かのMnの存在は窒化チタニウム粒子を妨げる粒子成長のためには望ましいが、良く知られた不純物であるN、P、Sは極少化させる。好ましくはN濃度は0.001〜0.01重量%、Sは0.01重量%以下、Pは0.01重量%以下である。この組成においては、鋼はホウ素を一切加えないという意味でホウ素を含まず、ホウ素濃度は5ppm以下,好ましくは1ppm以下である。
一般に、本発明の2相鋼は、通常の仕方で上記の組成をもつ鋼ビレットを形成し、このビレットを実質的にすべて、好ましくはすべての炭窒化バナジウム及び炭化ニオビウムを溶解するのに十分な温度、好ましくは1150〜1250℃に加熱することにより製造される。この状態では実質的にすべてのニオビウム、バナジウム及びモリブデンは溶けている。次いでビレットを1回もしくはそれ以上熱間圧延して、オーテスナイトの再結晶する第一の温度範囲で約30〜70%の減少を与える程度第一の減縮(reduction)を行う。減縮したビレットを1回もしくはそれ以上熱間圧延して、オーステナイトが再結晶しないがAr3変態点以上の第2の、若干低い温度範囲で約30〜70%の減少を与える程度第2の圧延減縮(rolling reduction)を行う。次いでAr3変態点と約500℃との間の温度に冷却する。この場合20〜60%のオーストテナイトはフェライトに変態する。更に、少なくとも25℃/秒、好ましくは少なくとも35℃/秒の速度で400℃以下まで水冷して、ビレットを固化する。この温度範囲ではフェライトへの変態は生成しない。必要に応じ、圧延したラインパイプとして有用な前駆体である高強度綱板を室温まで空冷する。その結果、粒径は極めて均一で10μm以下、好ましくは5μm以下である。
高強度綱は種々の物性を有する必要があるが、これらの物性は元素と機械的処理との組合わせにより得られる。本発明における種々の合含元素の役割とその好ましい濃度範囲を次下に説明する。
炭素は、微細構造がいかなるものであれ、すべたの綱と熔接において強化するマトリックスを提供するとともに、微細なNbC及びVC粒子の形成により(それらが十分微細で数多ければ)強化する析出物を提供する。更に、熱間圧延の間NbC析出物は再結晶を遅らせ粒子成長を防げる役割を果たし、これによりオーステナイト粒子の精製手段を提供する。このことは強度及び低温靭性の改善をもたらす。炭素は、又、固化性を改善する。即ち綱を冷却した時により硬い強靱な微細構造を形成する能力がある。炭素含量が0.01%より少ないと上記した強化効果は得られず、一方、0.12%を越えると綱は冷間割れを起し易くなり、しかも鋼板及びその溶接時の熱影響域(HAZ)の靭性は低下する。
マンガンは鋼及び溶接におけるマトリックス強化作用を有し、又、固化性に強く寄与する。最小限0.4%Mnが必要な高強度を得るために必要である。炭素と同様、過剰量は鋼板及び溶接に有害であり、しかも溶接の際の冷間割れを引き起こす。従って、上限は2%である。この上限は、又、連続鋳造ラインパイプ鋼における中心線偏析(これは水素誘起割れ(HIC)を引き起こす助けとなる要因である)を防止する上でも必要である。
ケイ素は脱酸素の目的で鋼にいつも加えられ、その役割のためには少なくとも0.01%が必要である。一方、0.5%を越えるとHAZ靭性に悪影響を与え、受け入れられない程度までHAZ靭性が減少してしまう。
ニオビウムは鋼の圧延微細構造の粒子精製を促進させるために加えられる。これにより強度及び靭性がともに改善される。熱間圧延時の炭化あニオビウムの析出により再結晶を遅らせ粒子成長を妨げ、これによりオーテスナイト粒子精製の手段を提供する。又、NbC析出物の形成を通じて焼戻し時に強化効果を更に与える。しかし、過剰ニオビウムは溶説性及びHAZ靭性に害を与えるので上限は0.12%とするのが良い。
チタニウムは少量加えると、綱の圧延構造及びHAZにおける粒子径の精製を促すTiN微細粒子の形成に効果的である。これにより靭性が改善される。チタニウムはTi/N比が2.0〜3.4の範囲となるように加えられる。過剰のチタニウムは粗いTiN又はTiC粒子の形成により鋼と熔接の靭性を低下させる。チタニウム含量が0.002%より少なくなると十分微細な粒子径が得られず、一方0.04%を越えると靭性の低下を引き起こす。
アルミニウムは脱酸素を目的として鋼に加えられる。この目的のためには少なくとも0.002%のAlが必要である。アルミニウム含量が多すぎると、即ち、0.05%より多くなるとAl23型の含有物を形成する傾向があり、これは鋼及びそのHAZの靭性に有害となる。
バナジウムは、焼戻し時の鋼及び溶接後冷却した際のHAZにVC粒子を形成することにより強化する析出物を与えるべく加えられる。溶融時、バナジウムは鋼の硬化性を促進する効果がある。従って、バナジウムは高強度鋼のHAZ強度の維持に有効である。過剰のバナジウムは溶接時冷間割れを引起し、又、鋼とそのHAZの靭性を低下させるため0.15%が上限である。バナジウムは、又、直径50Å以下、好ましくは10〜50Åの炭窒化バナジウム粒子の相間析出を通じて共析フェライトに対する強化作用を有する。
モリブデンは直接急冷時に鋼の硬化性を増大させるため、強靱なマトリックス微細構造が生成すると共にMo2C及びNbMo粒子の形成により再加熱時に析出強化を与える。過剰のモリブデンは熔接時に冷間割れを起し、綱及びHAZの靭性を低下させるため、上限を0.8%とする。
クロムは直接急冷時の硬化性を増大させる。又、耐腐飾性及び耐HIC性を向上させる。特に、鋼表面にCr23リッチ酸化物フィルムを形成することにより水素の侵入を防止するために好ましい。モリブデンと同様、過剰なクロムは溶接時の冷間割れを引起し、又鋼及びそのHAZの靭性を低下させるため、上限を1.0%とする。
窒素が鋼製造の際、鋼においては、少量の窒素は、熱間圧延時の粒子成長防止してそれにより圧延鋼及びそのHAZにおいて粒子精製を促進するような微細TiN粒子の生成するので好都合である。TiNの必要な容量分率を得るために少なくとも0.001%の窒素が必要である。一方、過剰の窒素は鋼及びそのHAZの靭性を低下させるので、上限を0.01%とする。
熱機械的処理の目的は2つに大別される。即ち、精製された平らなオーステナイト粒子の生成と、2相に高密度の転位とせん断バンドの導入である。
第一の目的は、オーステナイト再結晶温度の上下の温度且つAr3以上の温度における強い圧延により満足させられる。再結晶温度以上の圧延によりオーステナイト粒子サイズは連続して精製され、一方再結晶温度以下の圧延によりオーステナイト粒子は平坦化される。斯くして、オーステナイトがフェライトへ変態し始めるAr3以下の温度への冷却により、オーステナイトとフェライトの微細な混合物が形成され、Ar1以下への急冷によりフェライトとマルテンサイト/ベイナイトの微細混合物への変態が始まる。
第2の目的は、20〜60%のオーステナイトがフェライトに変態したAr1とAr3の間の温度において、平坦化したオーステナイト粒子を第3の圧延減縮させることにより達成される。
本発明において行われる熱機械的処理は構成相の好ましい微細分布を誘起させる点で重要である。
オーステナイトが再結晶する範囲及びオーステナイトが再結晶しない範囲の両範囲の境界温度は、圧延前の加熱温度、炭素含量、ニオビウム含量、及び圧延時の減縮率に依存する。この温度は実験的にもしくはモデル計算により各綱組成に応じて容易に決定できる。
ラインパイプは周知のU−O−E法により綱板から形成される。この方法では、板材をU字型に成型し、次いでO字型し、その後1〜3%膨張させる。成型及び膨張は付随する加工強化効果によりラインパイプに最高の強度を与える。
以下本発明を実施例により説明する。
下記の化学組成で表される500ポンドの一溶かしの合金を真空誘導融解し、インゴットに鋳造し、鍛錬して4インチ厚の板材(スラブ)とし、1240℃で2時間加熱し、表2のスケジュールに従い熱間圧延した。
Figure 0003990725
合金及び熱機械的処理は強靱な炭窒化物前駆体、特にニオビウム及びバナジウムに対して下記のようなバランスとなるように設計された。
・組成物の約1/3は急冷前にオーステナイトとして析出する。この析出物は再結晶化を妨げるとともに、オーステナイト結晶粒の成長を阻止し、その結果変態前に微細なオーステナイト結晶粒を生成させる。
・組成物の約1/3はオーステナイト−フェライト変態中に中間臨界領域(intercritical region)及び変態点下領域(subcritical region)を通って析出する。この析出物はフェライト相を強靱にさせる。
・組成物の約1/3は固溶体中にHAZ析出物としてとどまり、他の鋼で見られる通常の軟化を改善又は除去する。
100mm四方の初期の鍛錬された板材に対する熱機械的圧延のスケジュールを以下に示す。
Figure 0003990725
フェライト及び他のオーステナイト分解生成物の量を変えるために種々の最終温度からの急冷を行った結果を表3に示す。
Figure 0003990725
フェライト相は初析晶(又は「残留フェライト」)及び共析晶(又は「変態フェライト」)の両方を含み、全フェライト体積分率を表す。
定量的な冶金学的分析法を用い、変態したオーステナイトの量を、急冷を行った最終温度の関数として追跡した。そのデータを第1図にプロットするとともに、表3にまとめた。最終温度からの急冷速度は、厚さ方向部分に20mmを越える厚さの所望の2相微細構造を生成させるため、20〜100℃/秒、より好ましくは30〜40℃/秒の範囲とする。
第1図から、急冷開始温度が660℃から560℃まで下がると、35〜50%の間のいたるところでオーステナイトが変態することがわかる。さらに、急冷開始温度がさらに下がると、鋼はそれ以上変態せず、全体として約50%変態したままとなる。
鋼は第2相ないしマルテンサイト/ベイナイト相の大きな容積割合をもつため、通常劣った延性と劣った靱性により特徴づけられているが、本発明の鋼は、十分な延性を維持し、UOEプロセスにおける成形及び伸張を可能にする点で注目される。マルテンサイトパケットのような微細構造ユニットの有効寸法を10ミクロン以下に維持するとともに、該マルテンサイトパケット内の個々の特徴部を1ミクロン以内に維持することにより、延性が保持される。第2図は走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、処理条件A1のためのフェライト及びマルテンサイトを含む2相微細構造を示す。板の厚さにわたって顕著な均一性の微細構造が全2相鋼において観察された。
第3図はA1鋼のフェライト領域に析出した中間層の非常に微細な分散を示す透過型電子顕微鏡写真である。共析フェライトは一般に第2相における境界面の近くに見られ、試料の全体にわたって均一に分散し、且つその容積分率は鋼が急冷される温度を低下させると減少する。
本発明で見出された主たるものは、オーステナイト相が約50%変態の後のさらなる変態に対して極めて安定なことである。これはオーステナイトの安定化メカニズムとオースエージ効果のためである。
(a)オーステナイト安定化:少なくとも3つの安定化メカニズムがあり、本発明の鋼においてさらにフェライト相に変態することを阻止するように作用する。
(1)熱安定化:オーステナイト変態の間に変態フェライト相から非変態オーステナイトまでカーボンを分割させる強い駆動力が、すべて共通に熱安定化としてグループ化されたいくつかの効果を導く。このメカニズムは、通常オーステナイト中のCのいくらかの増加、さらに詳細には、オーステナイト/フェライト境界面におけるC濃度スパイクをもたらし、局所的に更に変態が起きることを阻止する。また、Cは変態の最前線において転位に対して増加するように偏析し、この最前線を不動化させ、変態をその場所に凍結させる。
(2)濃度スパイク:Cと、Mnのごときその他の強力なオーステナイト安定化材は変態中に残りのオーステナイトに移動する。しかし拡散が遅くかつ十分な時間がないため、有意な分割均一化は生じず、オーステナイト変態最前線においてCとMnの局所的な濃度スパイクが発生する。これは鋼の焼入性を局所的に高め、安定性を導く。
(3)化学安定化:鋼中のいくらかのMnとMnバンドの存在のため、変態しないままのオーステナイト領域はより高いMn濃度となり、その結果この領域の焼入性が全合金の焼入性を越えて十分に高められる。そして用いる冷却速度と熱機械的処理のため、オーステナイト−フェライト変態が安定となる。
(b)オースエージ:これは本発明の鋼における主要なファクターである考えられる。本発明の鋼のようにオーステナイト相が、固溶体中に過飽和状態で溶解している大きな量のNb及びVを有している場合、及びオーステナイト変態温度が十分低い場合、過剰なNb及びVは微細な析出/前析出(pre-precipitation)現象を導く。この前析出は通常のオーステナイトにおける転位と、殊に変態最前線を不動化させる変態における転位とを含み、オーステナイトのさらなる変態を安定化させる。
表4は条件A1、A2、A3により処理された合金の引張力データを示す。
Figure 0003990725
パイプ成形において2%展伸の後の降伏強度は、微細構造の優れた加工硬化特性のため、少なくとも100ksi、好ましくは少なくとも130ksiの最小所望強度に合致する。
表5は、条件A1及びA2により処理されたL−T(longitudinal)合金試料及びT(transverse)合金試料について−40℃で行ったシャルピー−V−ノッチ衝撃靱性(ASTM規格E−23)を示す。
Figure 0003990725
上記の表に得られた衝撃エネルギー値は本発明の鋼の優れた靱性を示している。
本発明のキーとなる特長は、良好な溶接性をもつ高強度鋼であり、また優れたHAZ耐軟化性を有する鋼である。低温割れ感受性おYびHAZ軟化性を観察するため、研究室でのシングル・ビード溶接テストを行った。第4図に本発明の鋼のデータの例を示す。このプロットは、例えば市販のX100ラインパイプ鋼のような従来の鋼と比較して、本発明の2相の鋼はHAZにおいてなんら顕著な軟化を受けていないことを如実に示す。これに対してX100は母材に比べて15%軟化を示す。本発明ではHAZにおいて母材の強度の少なくとも95%、より好ましくは98%を有している。これらの強度は溶接熱入力が約1−5キロジュール/mmの範囲の時に得られる。

Claims (8)

  1. フェライト相とマルテンサイト/ベイナイト相から成り、かつ1〜3%の変形の後、少なくとも100ksiの降伏応力をもつ2相鋼の製造方法であって、
    (a)鋼ビレットを、すべての炭窒化バナジウム及び炭窒化二オビウムを溶解するのに十分な温度に加熱する工程、
    (b)オーステナイトが再結晶する温度範囲で、前記ビレットを、第1圧下率になるまで1回以上圧延して平板に成形する工程、
    (c)オーステナイト再結晶温度未満で、かつAr3変態点を超える温度範囲で、前記平板を、第二圧下率になるまで一回以上圧延する工程、
    (d)前記更に圧下された平板を、Ar3変態点と500℃との間の温度に冷却する工程、及び
    (e)最終の圧延板を、400℃以下の温度に水冷する工程、
    を含むことを特徴とする2相鋼の製造方法。
  2. 工程(a)の温度は、1150〜1250℃である請求の範囲第1項の方法。
  3. 前記第1圧下率は、30〜70%であり、第2圧下率は、30〜70%である請求の範囲第1項の方法。
  4. 工程(d)の冷却は、空冷である請求の範囲第1項の方法。
  5. 工程(d)の冷却は、鋼の20〜60容量%がフェライト相に変態するまで行う請求の範囲第1項の方法。
  6. 工程(e)の冷却は、少なくとも25℃/秒の速度で行う請求の範囲第1項の方法。
  7. 前記板は、状もしくはラインパイプ材に成形される請求の範囲第1項の方法。
  8. 前記状もしくはラインパイプ材は、U−O−E法により1〜3%膨張させられる請求の範囲第7項の方法。
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