JP3983166B2 - 光学素子及びこれを用いた偏光面光源並びにこれを用いた表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学素子及びこれを用いた偏光面光源並びにこれを用いた表示装置に関し、特に、入射光を介して励起発光した光を、表裏面の少なくとも一方から所定の振動面を有する直線偏光として出射し得る光学素子及びこれを用いた偏光面光源並びにこれを用いた表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶表示装置のいわゆるバックライトに用いられるサイドライト型導光板として、透光性樹脂板に酸化チタンや硫酸バリウム等の高反射率顔料含有の反射ドット等からなる光出射手段を設け、当該光出射手段を介して、樹脂板内の全反射による伝送光を散乱等によって樹脂板の表裏の一方より出射させるようにしたものが知られている。
【0003】
しかしながら、前記構成を有する導光板からの出射光は、殆ど偏光特性を示さない自然光であるため、液晶表示に際しては、前記出射光を偏光板を介して直線偏光に変換する必要がある。従って、当該偏光板による光の吸収損失が生じるため、光の利用効率が50%を越えることができないという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するべく、いわゆるブリュースター角を利用して直線偏光を得る偏光分離手段や、位相差板を利用した偏光変換手段などを用いて光の利用効率向上を図った種々のバックライトが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12及び特許文献13参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−18873号公報
【特許文献2】
特開平6−160840号公報
【特許文献3】
特開平6−265892号公報
【特許文献4】
特開平7−72475号公報
【特許文献5】
特開平7−261122号公報
【特許文献6】
特開平7−270792号公報
【特許文献7】
特開平9−54556号公報
【特許文献8】
特開平9−105933号公報
【特許文献9】
特開平9−138406号公報
【特許文献10】
特開平9−152604号公報
【特許文献11】
特開平9−293406号公報
【特許文献12】
特開平9−326205号公報
【特許文献13】
特開平10−78581号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、斯かる従来のバックライトでは、十分な偏光が得られないと共に、偏光方向の制御も困難であるため、実用性に乏しいという問題があった。
【0007】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、入射光を介して励起発光した光を、表裏面の少なくとも一方から所定の振動面を有する直線偏光として出射し得ると共に、その偏光方向(振動面)も任意に制御可能な光学素子及びこれを用いた偏光面光源並びにこれを用いた表示装置を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するべく、本発明は、請求項1に記載の如く、透光性樹脂と、前記透光性樹脂に分散分布され、前記透光性樹脂とは複屈折性の相違する微小領域部とを具備して延伸処理することにより板状に形成して配向処理されており、
前記透光性樹脂及び/又は前記微小領域部中に、少なくとも1種以上の発光性材料を含有し、前記微小領域部と前記透光性樹脂との屈折率差について、当該屈折率差が最大値を示す前記微小領域部の軸方向の屈折率差をΔn1とし、前記最大値を示す軸方向に直交する軸方向の屈折率差をΔn2及びΔn3とした場合、
0.03≦Δn1≦0.5
0≦Δn2≦0.03
0≦Δn3≦0.03
であることを特徴とする光学素子を提供するものである。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、従来のように透光性樹脂に反射ドット等からなる特別の光出射手段を設ける必要が無く、入射した励起光によって光学素子内部(発光性材料)で発光した光を、所定の振動面を有する直線偏光として外部に出射することが可能である。また、光学素子の設置角度に応じて(後述するΔn1方向を何れに設定するかに応じて)直線偏光の偏光方向(振動面)を任意に設定可能である。
【0010】
より具体的に説明すれば、側面又は表裏面から光学素子内部に入射した励起光によって励起発光した光の大部分は、光学素子と空気との屈折率差に応じて空気界面で全反射され、光学素子内で伝送される。斯かる伝送光の内、微小領域部と透光性樹脂との屈折率差が最大値(Δn1)を示す前記微小領域部の軸方向(Δn1方向)に平行な振動面を有する直線偏光成分が選択的に強く散乱されることになる。斯かる散乱光の内、全反射角よりも小さい角度で散乱した光は、光学素子から外部(空気)に出射することになる。
【0011】
ここで、透光性樹脂に微小領域部が分散分布されていない場合を考えれば、上記のような選択的な偏光散乱が生じないため、光学素子内の発光材料によって励起発光した光は、立体角の関係上、約80%が透光性樹脂内に閉じ込められて全反射を繰り返している状態である。
【0012】
請求項1に係る発明によれば、前記閉じ込められた光が、微小領域部と透光性樹脂との界面における散乱により、全反射条件が崩れた場合にのみ光学素子外部に出射することになるため、微小領域部のサイズや分布率によって出射効率を任意に制御可能である。
【0013】
一方、前記Δn1方向の散乱において全反射角よりも大きい角度で散乱した光、微小領域部に衝突しなかった光、及び、Δn1方向以外の振動面を有する光は、光学素子内に閉じ込められて全反射を繰り返しつつ伝送され、光学素子内の複屈折位相差等により偏光状態も解消され、Δn1方向条件を満足して(Δn1方向に平行な振動面を有する直線偏光となって)出射する機会を待つことになる。以上の動作が繰り返されることにより、結果的に、光学素子から所定の振動面を有する直線偏光が効率良く出射されることになる。
【0014】
好ましくは、請求項2に記載の如く、前記発光性材料は、紫外光又は可視光を吸収して可視光を発光する蛍光材料とされる。
【0015】
或いは、請求項3に記載の如く、前記発光性材料は、紫外光又は可視光を吸収して可視光の燐光を発光する蓄光材料とすることも可能である。
【0016】
また、好ましくは、請求項4に記載の如く、前記微小領域部は、液晶性材料、若しくは、液晶相を冷却固定したガラス状態の材料、又は、重合性液晶の液晶相をエネルギー線により架橋固定した材料によって形成される。
【0017】
或いは、請求項5に記載の如く、前記微小領域部は、ガラス転移温度が50℃以上の液晶ポリマーからなり、前記透光性樹脂のガラス転移温度よりも低温でネマチック液晶相を呈するように構成される。
【0019】
また、本発明は、請求項6に記載の如く、請求項1から5のいずれかに記載の光学素子と、当該光学素子に含有された発光性材料を励起し得る波長の光を出射する光源とを備えることを特徴とする偏光面光源としても提供される。
【0020】
好ましくは、請求項7に記載の如く、前記偏光面光源は、前記光源から出射した光を前記光学素子に導くための透光性材料から形成された導光体を更に備えるように構成される。
【0021】
前記光源は、例えば、請求項8に記載の如く、エレクトロルミネッセンス素子から構成することができる。
【0022】
さらに、本発明は、請求項9に記載の如く、請求項6から8のいずれかに記載の偏光面光源を備えることを特徴とする表示装置としても提供される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光学素子の概略構成を示す縦断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る光学素子10は、透光性樹脂1と、透光性樹脂1に分散分布され、透光性樹脂1とは複屈折性の相違する微小領域部2とを具備して板状に形成されている。また、光学素子10は、透光性樹脂1及び/又は微小領域部2中に、少なくとも1種以上の発光性材料3を含有している(図1では、透光性樹脂1中に発光性材料3を含有している例を図示している)。
【0024】
光学素子10の形状は、少なくとも2面の対向する平坦面を有していれば特に制限はないが、面光源への利用や、全反射効率という観点から、図1に示すように、断面矩形のフィルム状、シート状、或いは、プレート状の形状であることが好ましく、特に、取り扱いが容易である点で、フィルム状に形成することが望ましい。光学素子10の厚みは、好ましくは10mm以下、より好ましくは0.1〜5mm、さらに好ましくは0.4mm〜2mmとされる。
【0025】
光学素子10の対向する2面101、102は、発光性材料3で発光した光を全反射によって閉じこめる閉じ込め効率の観点より、鏡面に近い平滑性を有することが好ましい。ただし、光学素子10の対向する2面101、102の平滑性が乏しい場合には、別途平滑性に優れた透光性のフィルムやシートを透明な接着剤や粘着剤で透光性樹脂1に貼着し、当該貼着した透光性のフィルムやシートの平滑な表面を全反射界面とすることでも同様の効果が得られる。
【0026】
発光性材料3は、透光性樹脂1及び微小領域部2のいずれか一方、又は、両方に均一に溶解又は分散されていることが好ましい。発光性材料3によって光の散乱が生じることは望ましくないため、溶解する材料であることがより好ましい。また、発光性材料3を分散する場合には、不必要な光の散乱を抑制するという観点から、その分散サイズはできる限り小さい方が好ましい。発光性材料3は、例えば、光学素子10の形成の際に、透光性樹脂1や微小領域部2を形成する材料に予め発光材料3を必要に応じて他の添加剤と共に配合しておく方法など、適宜な方法によって溶解又は分散させることができる。
【0027】
発光性材料3としては、紫外光又は可視光を吸収して、可視光領域の波長の光を励起発光する適宜な材料の1種又は2種以上を用いることができ、特に制限はない。より具体的には、励起1重項からの発光である蛍光や3重項からの発光である燐光などを放射する有機染料や無機顔料等からなる蛍光材料や蓄光材料を用いることができる。
【0028】
発光性材料3としては、青色、緑色、赤色の発光波長を有する材料をそれぞれ単独で又は混合して用いることが好ましい。例えば、発光性材料3を有機蛍光染料(青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体)とする場合について、以下に具体的に説明する。
【0029】
青色蛍光体として好ましい有機化合物は、溶液状態での蛍光ピーク波長が380nm以上480nm未満であれば特に制限はない。具体的には、特開平6−203963号公報に記載されている、スチルベン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体及びトリススチリルアリーレン誘導体の中から選ばれた少なくとも一種を含有させるのが好ましい。その他の好ましい青色蛍光体としては、アントラセン、ペリレン、コロネン等の多環芳香族やそのアルキル置換体が挙げられる。
【0030】
緑色蛍光体として好ましい有機化合物は、溶液状態での蛍光ピーク波長が480nm以上580nm未満であれば特に制限はない。具体的には、緑色蛍光体として、3−(2’−ペンジミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン535)、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン540)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジノ−<9,9a,1−gh>クマリン(クマリン540A)、3−(5−クロロ−2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン34)、4−トリフルオロメチルーピペリジノ[3,2−g]クマリン(クマリン340)、N−エチル−4−トリフルオロメチルーピペリジノ[3,2−g]クマリン(クマリン355)、N−メチル−4−トリフルオロメチルーピペリジノ[2,3−h]クマリン、9−シアノ−1,2,4,5−3H,6H,10H−テトラヒドロ−1−ベンゾピラノ[9,9a1−gh]キノリジン−10−オン(クマリン337)等のクマリン化合物、2,7−ジクロロフルオレセン等のキサンチン色素、テトラセン、キナクリドン化合物等が挙げられる。
【0031】
赤色蛍光体として好ましい有機化合物は、溶液状態での蛍光ピーク波長が580nm以上650nm以下であれば特に制限はない。具体的には、例えば、欧州公開特許第0281381号公報に記載されている赤色発振レーザー色素として用いられるジシアノメチレンピラン誘導体、ジシアノメチレンチオピラン誘導体、フルオレセイン誘導体、ペリレン誘導体等が挙げられる。
【0032】
これらの有機化合物は、濃度消光を生じないようにするべく、層を形成する有機化合物(透光性樹脂1又は微小領域部2)に対して、0.1〜10モル%、好ましくは0.5〜5モル%の割合で含有させることが必要である。なお、光学素子10の作成プロセスや、使用環境での発光効率の低下を考慮すれば、堅牢性に優れた発光材料3を用いることが好ましい。
【0033】
光学素子10は、例えばポリマー類や液晶類等の透明性に優れる適宜な材料の1種又は2種以上を、延伸処理等による適宜な配向処理によって複屈折性の相違する領域が形成される組合せで用いて配向フィルムを得る方法など、適宜な方法で形成することができる。前述したように、発光材料3は、小さなサイズで分散されていることが望ましいため、前記組み合わせる材料の少なくとも一方は、分散される発光材料3と相溶性良く混和するものであることが好ましい。
【0034】
前記材料の組合せ例としては、ポリマー類と液晶類の組合せ、等方性ポリマーと異方性ポリマーの組合せ、異方性ポリマ一同士の組合せなどが挙げられる。なお、微小領域部2の分散分布性などの点より、相分離する組合せとすることが好ましく、組み合せる材料の相溶性によって分散分布性を制御することができる。例えば、非相溶性の材料を溶媒によって溶液化する方法や、非相溶性の材料を加熱溶融下に混合する方法など、適宜な方法によって相分離させることができる。
【0035】
前記材料の組合せで延伸処理によって配向処理する場合、ポリマー類と液晶類の組合せ及び等方性ポリマーと異方性ポリマーの組合せでは、任意の延伸温度や延伸倍率によって、異方性ポリマ一同士の組合せでは、延伸条件を適宜に制御することによって、それぞれ目的とする光学素子10を形成することができる。なお、異方性ポリマーは、延伸方向の屈折率変化の特性に基づいて正負に分類されるが、本実施形態では、正負いずれの異方性ポリマーをも用いることができ、正同士の組合せ、負同士の組合せ及び正負の組合せのいずれをも使用することが可能である。
【0036】
前記ポリマー類の例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの如きエステル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(ASポリマー類)の如きスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系乃至ノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレートの如きアクリル系ポリマー、二酢酸セルロースや三酢酸セルロースの如きセルロース系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミドの如きアミド系ポリマーが挙げられる。
【0037】
また、カーボネート系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン、シリコーン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エーテル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、前記ポリマーの混合物、或いは、フェノール系、メラミン系、アクリル系、ウレタン系、ウレタンアクリル系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型又は紫外線硬化型のポリマー類なども前記透明なポリマー類の例として挙げられる。
【0038】
一方、前記液晶類の例としては、シアノビフェニル系、シアノフェニルシクロヘキサン系、シアノフェニルエステル系、安息香酸フェニルエステル系、フェニルピリミジン系、これらの混合物の如き、室温又は高温でネマチック相やスメクチック相を呈する低分子液晶や架橋性液晶モノマーの他、室温又は高温でネマチック相やスメクチック相を呈する液晶ポリマーなどが挙げられる。前記架橋性液晶モノマーは、通常、配向処理した後、熱や光等による適宜な方法で架橋処理されてポリマーとされる。
【0039】
耐熱性や耐久性等に優れる光学素子10を得るという観点では、ガラス転移温度が好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上、特に好ましくは120℃以上のポリマ一類と、架橋性液晶モノマー又は液晶ポリマーとの組合せを用いることが好ましい。前記液晶ポリマーとしては、主鎖型や側鎖型等の適宜なものを用いることができ、その種類について特に限定はない。粒径分布の均一性に優れる微小領域部2の形成性、熱的安定性、フィルムへの成形性、配向処理の容易性などの点より、液晶ポリマーとして、重合度が好ましくは8以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは15〜5000のものを用いるのが好ましい。
【0040】
液晶ポリマーを用いた光学素子10は、例えばポリマ一類の1種又は2種以上と、微小領域部2を形成するための液晶ポリマーの1種又は2種以上を混合して、液晶ポリマーが微小領域を占める状態で分散含有されたポリマーフィルムを形成し、適宜な方法で配向処理し、複屈折性が相違する領域を形成する方法などによって形成することができる。
【0041】
ここで、微小領域部2と透光性樹脂1との屈折率差について、当該屈折率差が最大値を示す微小領域部2の軸方向の屈折率差をΔn1とし、前記最大値を示す軸方向に直交する軸方向の屈折率差をΔn2及びΔn3とする。前記配向処理による屈折率差△n1、△n2及びΔn3の制御性等の点より、前記液晶ポリマーとしては、ガラス転移温度が50℃以上で、併用のポリマー類(透光性樹脂1)のガラス転移温度よりも低い温度域でネマチック液晶相を呈するものを用いるのが好ましい。その具体例としては、下記の一般式で表されるモノマー単位を有する側鎖型の液晶ポリマーなどが挙げられる。
【0042】
前記一般式において、Xは、液晶ポリマーの主鎖を形成する骨格基であり、線状、分岐状、環状等の適宜な連結鎖によって形成されていればよい。その具体例としては、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリ−α−ハロアクリレート類、ポリ−α−シアノアクリレート類、ポリアクリルアミド類、ポリアクリロニトリル類、ポリフタクリロニトリル類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリウレタン類、ポリエーテル類、ポリイミド類、ポリシロキサン類などが挙げられる。
【0043】
また、Yは、主鎖より分岐するスペーサ基である。屈折率差の制御など光学素子10の形成性などの点より、スペーサ基Yとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、オクチレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エトキシエチレン、メトキシブチレンなどとするのが好ましい。一方、Zは、液晶配向性を付与するメソゲン基である。
【0044】
前記ネマチック配向性の側鎖型液晶ポリマーは、前記一般式で表されるモノマー単位を有するホモポリマーやコポリマー等の適宜な熱可塑性ポリマーであればよく、特にモノドメイン配向性に優れるものが好ましい。
【0045】
ネマチック配向性の液晶ポリマーを用いた光学素子10は、例えば、ポリマーフィルムを形成するためのポリマー類と、そのポリマー類のガラス転移温度よりも低い温度域でネマチック液晶相を呈し、ガラス転移温度が好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上の液晶ポリマーとを混合して、液晶ポリマーが微小領域を占める状態で分散含有されたポリマーフィルムを形成した後、その微小領域部2を形成する液晶ポリマーを加熱処理してネマチック液晶相に配向させ、その配向状態を冷却固定する方法などによって形成することができる。
【0046】
配向処理前の微小領域部2を分散含有するポリマーフィルム(透光性樹脂1)、すなわち、配向処理対象のフィルムは、例えば、キャスティング法、押出成形法、射出成形法、ロール成形法、流延成形法などの適宜な方法によって形成することができる他、モノマー状態で展開し、それを加熱処理や紫外線等の放射線処理などにより重合してフィルム状に製膜する方法などによっても形成することができる。
【0047】
微小領域部2の均等分布性に優れる光学素子10を得るという点では、溶媒を介した形成材の混合液をキャスティング法や流延成形法等によって製膜する方法が好ましい。その場合、溶媒の種類、混合液の粘度、混合液展開層の乾燥速度などによって微小領域部2の大きさや分布性などを制御することができる。微小領域部2の小面積化には、混合液の低粘度化や混合液展開層の乾燥速度の急速化などが有効である。
【0048】
配向処理対象のフィルムの厚みは、適宜に決定すればよいが、一般には、配向処理性などの点より、好ましくは1μm〜3mm、より好ましくは5μm〜1mm、特に好ましくは10〜500μmとされる。なお、フィルムの形成に際しては、例えば、分散剤、界面活性剤、色調調節剤、難燃剤、離型剤、酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することができる。
【0049】
配向処理は、例えば、1軸、2軸、逐次2軸、Z軸等による延伸処理方法、圧延方法、ガラス転移温度又は液晶転移温度以上の温度で電場又は磁場を印加して急冷し配向を固定化する方法、製膜の際に流動配向させる方法、等方性ポリマーの僅かな配向に基づいて液晶を自己配向させる方法など、配向によって屈折率を制御し得る適宜な方法の1種又は2種以上を用いて行うことができる。従って、得られる光学素子10としては、延伸フィルムとなる場合もあるし、非延伸フィルムとなる場合もある。なお、延伸フィルムとする場合、脆性ポリマーを用いることもできるが、延び性に優れるポリマーを用いるのが好ましい。
【0050】
また、微小領域部2が液晶ポリマーからなる場合には、例えば、ポリマーフィルム中に分散分布する液晶ポリマーがネマチック液晶相等の目的とする液晶相を呈する温度に加熱して溶融させ、それを配向規制力の作用下に配向させて急冷し、配向状態を固定化する方法などによっても配向処理することができる。微小領域部2の配向状態は、光学特性のバラツキ防止などの観点より、モノドメイン状態にあることが好ましい。
【0051】
なお、前記配向規制力としては、例えば、ポリマーフィルムを適宜な倍率で延伸処理する方法による延伸力、フィルム形成時のシェアリングカ、電界や磁界など、液晶ポリマーを配向させることができる適宜な規制力を適用でき、その1種又は2種以上の規制力を作用させて、液晶ポリマーを配向処理することができる。
【0052】
光学素子10における微小領域部2以外の部分、つまり透光性樹脂1は、複屈折性を示すものであってもよいし、等方性のものであってもよい。光学素子10の全体が複屈折性を示すものは、フィルム形成用のポリマー類として配向複屈折性のものを用いて、前述した製膜過程における分子配向などによって得ることができる。なお、必要に応じて、例えば、延伸処理等の公知の配向処理を施し、複屈折性を付与乃至制御することも可能である。また、微小領域部2以外の部分が等方性の光学素子10は、例えば、フィルム形成用のポリマー類として等方性のものを用いて、そのフィルムを当該ポリマー類のガラス転移温度以下の温度領域で延伸処理する方法などによって得ることができる。
【0052】
前述のように、透光性樹脂1と微小領域部2とは複屈折性が相違している。具体的には、前述のように、微小領域部2と透光性樹脂1との屈折率差について、当該屈折率差が最大値を示す微小領域部2の軸方向(Δn1方向)の屈折率差をΔn1とし、前記最大値を示す軸方向に直交する軸方向(Δn2方向、Δn3方向)の屈折率差をΔn2及びΔn3とした場合、後述する全反射の点より、Δn1は適度に大きいことが好ましく、Δn2及びΔn3は小さければ小さいほど良く、できるだけゼロであることが好ましい。本実施形態に係る光学素子10は、0.03≦Δn1≦0.5、0≦Δn2≦0.03、0≦Δn3≦0.03となるように制御されており、より好ましくは、さらにΔn2=Δn3とされる。なお、斯かる屈折率差は、使用材料の屈折率や配向処理などによって制御することができる。
【0053】
斯かる屈折率差Δn1、Δn2及びΔn3とすることにより、光学素子10内部に入射した励起光によって励起発光した光の内、△n1方向の直線偏光が強く散乱され、臨界角(全反射角)よりも小さい角度で散乱されることにより光学素子10から外部に出射する光量を増やすことができる一方、それ以外の方向の直線偏光は散乱され難く、全反射を繰り返すことにより、光学素子10の内部に閉じ込めることができる。
【0054】
なお、微小領域部2の各軸方向と透光性樹脂1との屈折率差(Δn1、Δn2及びΔn3)は、透光性樹脂1が光学的等方性のものである場合には、微小領域部2の各軸方向の屈折率と透光性樹脂1の平均屈折率との差を意味し、透光性樹脂1が光学的異方性のものである場合には、透光性樹脂1の主光軸方向と微小領域部2の主光軸方向とが通常は一致しているため、それぞれの軸方向における各屈折率の差を意味する。
【0055】
△n1方向は、光学素子10から出射される直線偏光の振動面に平行であるため、斯かる△n1方向は光学素子10の対向する2面101、102に平行であることが好ましい。なお、2面101、102に平行である限り、△n1方向は、光学素子10を適用する液晶セル等に応じた適宜な方向とすることができる。
【0056】
光学素子10における微小領域部2は、当該微小領域部2における散乱効果の均質性などの点より、できるだけ均等に分散分布していることが好ましい。微小領域部2の大きさ、特に散乱方向である△n1方向の長さは、後方散乱(反射)や波長依存性に影響する。光利用効率の向上、波長依存性による着色の防止、微小領域部2の視覚化による視認阻害の防止ないし鮮明な表示の阻害防止、さらには製膜性やフィルム強度などの点より、微小領域部2の好ましい大きさ、特に△n1方向の長さは、好ましくは0.05〜500μm、より好ましくは0.1〜250μm、特に好ましくは1〜100μmである。なお、微小領域部2は、通常、ドメインの状態で光学素子10内に存在するが、その△n2方向等の長さについては特に限定はない。
【0057】
光学素子10中に占める微小領域部2の割合は、△n1方向の散乱性などの点より適宜に決定することができるが、一般には、フィルム強度なども踏まえ、好ましくは0.1〜70重量%、より好ましくは0.5〜50重量%、特に好ましくは1〜30重量%とされる。
【0058】
本実施形態に係る光学素子10は、当該光学素子10に含有された発光性材料3を励起し得る波長の光を出射する光源と組み合わせることにより、偏光面光源を形成することが可能である。光源と光学素子10との配置は特に制限はないが、光学素子10に効果的に励起光が入射されることが望ましい。斯かる観点より、図2に示すように、励起光源9を光学素子10の側面に配置した構成や、図3に示すように、励起光源9がエレクトロルミネッセンス素子のような面光源であり、その上部に光学素子10の平坦面が対向するように配置した構成とするのが好ましい。光学素子10は、図2に示すように、そのまま配置した状態でも良い他、励起光源9や透光性の支持体と、透光性の接着層などを介して一体化された状態としてもよい。さらに効率的に、励起光源からの光を光学素子10内へ導くための導光板を設けることも好ましい。前記導光板としては、特に制限はないが、例えば透光性の樹脂よりなる平板や楔形の板や、さらに当該樹脂に反射ドットを設けたものなど、一般に液晶ディスプレイのバックライト用に用いられるものが好適に使用できる。
【0059】
本実施形態に係る光学素子10は、単層で形成することができる他、2層以上を重畳したものとして形成することも可能である。当該光学素子10の重畳化により、厚み増加以上の相乗的な散乱効果を発揮させることができる。斯かる重畳体は、散乱効果を増加させる等の点より、△n1方向が各層で平行関係となるように重畳したものが好ましい。重畳数は、2層以上の適宜な数とすればよい。
【0060】
重畳する光学素子10は、△n1、△n2及びΔn3が互いに同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。また、各光学素子10に含まれる発光性材料3についても、同じ材料であっても異なる材料であっても良い。なお、△n1方向等についての各層での平行関係は、前述のように互いに平行であることが好ましいものの、作業誤差によるズレなどは許容される。また、各光学素子10内で△n1方向等にバラツキがある場合には、その平均方向が平行関係となるように重畳するのが好ましい。
【0061】
光学素子10と光源、支持体、導光板等との重畳体や、光学素子10同士の重畳体は、全反射界面が最表面となるように、接着層等を介して接着されることにより形成される。接着層としては、例えば、ホットメルト系や粘着系などの適宜な接着剤を用いることができる。反射損を抑制する点より、光学素子10との屈折率差が小さい接着層を用いることが好ましく、光学素子10の透光性樹脂1や微小領域部2を形成する樹脂によって接着することも可能である。前記接着剤としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等の透明な粘着剤など、適宜な接着剤を用いることができ、特に制限はない。ただし、光学特性の変化を防止する点などより、硬化や乾燥に高温プロセスを必要としなかったり、長時間の硬化や乾燥処理を必要としないものが好ましい。また、加熱や加湿の条件下で、浮きや剥がれ等の剥離現象を生じないものが好ましい。
【0062】
従って、メチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の改良成分からなるアクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が0℃以下となる組み合わせで共重合した、重量平均分子量が10万以上のアクリル系重合体をベースポリマーとするアクリル系粘着剤などが、接着剤として好ましく用いられる。なお、アクリル系粘着剤は、透明性、耐候性、耐熱性などに優れる利点も有する。
【0063】
光学素子10ヘの接着層の付設は、適宜な方法で行うことができる。具体的には、例えば、トルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒に、粘着剤成分を溶解又は分散させて10〜40重量%程度の粘着剤液を調整し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方法によって光学素子10上に直接付設する方法や、或いは、これに準じてセパレータ上に接着層を形成し、それを光学素子10上に移着する方法などが挙げられる。なお、付設する接着層は、異なる組成や種類等のものの重畳層とすることも可能である。
【0064】
接着層の厚さは、接着力等に応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmとされる。また、接着層には、必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤や酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することも可能である。
【0065】
なお、図2に示す例では、以上に説明したような接着層8を介して光学素子10に平滑性に優れた透光性シート4が貼着されており、当該貼着した透光性シート4の平滑な表面(上面)が全反射界面とされている。
【0066】
光学素子10は、当該光学素子10内を光が伝送する過程で、適当に偏光状態が解消される必要があることから、光学素子10全体で又は部分的に位相差を有するように構成することが好ましい。なお、基本的には光学素子10の遅相軸(Δn1方向の軸)と、散乱されにくい直線偏光の偏光軸(振動面)とは直交関係にあるため、位相差による偏光変換は生じ難いものの、僅かな散乱によって見かけの角度が変化し、偏光変換が生じるものと考えられる。
【0067】
斯かる偏光変換を生じさせる点より、一般には光学素子10が5nm以上の面内位相差を有することが好ましいが、当該光学素子10の厚みに応じてその値は変化する。なお、斯かる位相差は、光学素子10に複屈折性の微粒子を含有させる方法や表面に付着させる方法、透光性樹脂1を複屈折性とする方法、それらを併用する方法の他、複屈折性フィルムを一体化積層する方法等、適宜な方法で付与することができる。
【0068】
本実施形態に係る光学素子10を適用した偏光面光源においては、光学素子10の表裏面のうち一方の面から偏光を効率良く出射させるため、図2に示すように、反射層5を適宜配置すればよい。図2に示す例では、反射層5が光学素子10の裏面(下面)側に配置されており、光学素子10の裏面から出射する光を反射層5を介して偏光状態を変化させることなく反転させ、出射光を光学素子10の表面に集中させて輝度を向上させることが可能である。
【0069】
反射層5としては、偏光状態を維持させる点より、鏡面であることが好ましく、そのため金属や誘電体多層膜からなる反射面とするのが好ましい。斯かる金属としては、例えば、アルミニウム、銀、クロム、金、銅、錫、亜鉛、インジウム、パラジウム、白金、或いはそれらの合金など、適宜な金属を用いることができる。
【0071】
反射層5は、蒸着による金属薄膜の付設層等として光学素子10に直接密着させることもできるが、完全反射は困難であり、当該反射層5による若干の吸収が生じる。従って、光学素子10内を伝送する光に全反射が繰り返される点を考慮すると、直接密着させたのでは反射層5による吸収損失が懸念されるため、これを防止するべく、光学素子10と反射層5とは、単に重ねて置くだけの配置(つまり両者の間には空気層が介在することになる)とするのが好ましい。
【0070】
従って、反射層5としては、例えば支持基材にスパッタリングや蒸着等によって金属薄膜を付設した反射板や、金属箔や金属の圧延シートなどの板状のものを用いるのが好ましい。前記支持基材としては、ガラス板や樹脂シートなどの適宜なものを用いることができる。特に、反射層5としては、反射率、色味、取扱性などの点より、銀やアルミニウム等を樹脂シートに蒸着したものが好ましく用いられる。
【0071】
一方、誘電体多層膜からなる反射層5としては、例えば特表平10−511322号公報に記載のフィルムなどを適宜用いることが可能である。
【0072】
なお、反射層5は、図2に示すように光学素子10の裏面に配置する他、光学素子10の表面や側面、導光板を配置する場合には、その表裏面や側面など、必要に応じて適宜な場所に配置すれば良い。
【0073】
図2に示すように、本実施形態に係る光学素子10を適用した偏光面光源において、光学素子10からの光の取り出し面側(上面側)には、偏光維持性のレンズシート7や光拡散層6を配置することができる他、波長カットフィルター(図示せず)や位相差フィルム(図示せず)などを適宜配置することも可能である。
【0074】
レンズシート7は、光学素子10からの出射光(直線偏光)を、その偏光度を維持しつつ光路制御し、視認に有利な正面方向への指向性を向上させ、散乱性の出射光の強度ピークを正面方向とすることなどを目的とする。
【0075】
レンズシート7としては、一方の面(裏面)より入射した散乱光を光路制御し、他方の面(表面)よりシート面に垂直な方向(正面方向)に効率良く出射し得る適宜なものを用いることができ、特に限定はない。従って、偏光維持性の点を除き、例えば特開平5−169015号公報に記載されているような従来のいわゆるサイドライト型導光板で使用される各種のレンズ形態を有するいずれのレンズシートをも用いることができる。
【0076】
レンズシート7としては、例えば、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上の全光線透過率を示し、クロスニコル間に配置した場合に、偏光解消による漏れ光の透過率が、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下であるが如く、光透過度に優れると共に、出射光の偏光特性が解消されないものを用いるのが好ましい。
【0077】
一般に、偏光の解消は複屈折や多重散乱によって生じることから、偏光維持性を示すレンズシート7は、例えば、複屈折を低減することや、内部で伝送される光の平均反射(散乱)回数を減らすことなどによって達成できる。具体的には、例えば、前述した光学素子10に使用するポリマーとして例示した、三酢酸セルロース系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ノルボルネン系樹脂のような複屈折率の小さい樹脂(光学的等方性の良好な樹脂)を1種又は2種以上用いて、偏光維持性を示すレンズシート7を作成することができる。
【0078】
レンズシート7としては、例えば、屈折率が相違する樹脂を含有することもある透明な樹脂基材の表面又は内部に光重合体等を介して屈折率を制御した凸レンズ型や屈折率分布型(GI型)のレンズ領域(特に微小なレンズ領域)を多数形成したもの、透明な樹脂基材に設けた多数の貫通孔に屈折率が相違する重合体を充填してレンズ領域を形成したもの、或いは、多数の球状レンズを単層配置してそれを薄膜で固定したものなど、適宜なレンズ形態を有するものとすることができる。しかしながら、屈折率の相違による光路制御の点などより、図2に示すように、レンズシート7の表面に凹凸構造からなるレンズ形態71を有するものが好ましい。
【0079】
斯かるレンズ形態71を形成する凹凸構造としては、レンズシート7を透過した光の光路を制御してその透過光を正面方向に集光する機能を発揮するものであれば良く、例えば、断面三角形等の線状の溝や突起をストライプ状や格子状に多数配列したもの、或いは、三角錐、四角錐、その他の多角錐、円錐等の底面形状を有する錐体状の微小突起を点状に多数配列したものなどを挙げることができる。なお、上記線状又は点状の凹凸構造は、球状レンズ、非球面レンズ、半円筒レンズなどであってもよい。
【0080】
線状又は点状の凹凸構造を有するレンズシート7は、例えば、所定の凹凸構造が形成されるように形成した型に、樹脂液や樹脂形成用のモノマーを充填し、必要に応じて重合処理して前記型の凹凸構造を転写する方法や、前記型に樹脂シートを加熱圧着してその凹凸構造を転写する方法など、適宜な方法で形成することができる。なお、レンズシート7は、支持シートにレンズ形態を付加したもののように、同種又は異種の樹脂層の2層以上の重畳層として形成しても良い。
【0081】
レンズシート7は、光学素子10の光出射側に、1層又は2層以上配置することができる。2層以上配置する場合、各レンズシート7は同じものであっても良いし、異なるものであっても良いが、全体として偏光維持性を保持することが好ましい。レンズシート7を光学素子10に隣接させて配置する場合には、前述した反射層5の場合と同様に、光学素子10との間に空隙が生じるように、つまり両者の間に空気層を介在させて配置することが好ましい。また、その空隙は、全反射の点より、入射光の波長よりも十分に大きいことが好ましい。
【0082】
なお、レンズシート7のレンズ形態が線状の凹凸構造からなる場合には、正面方向への光路制御等の点より、その線方向が光学素子10の光軸方向(出射偏光の振動面方向)と平行状態又は直交状態となるように配置することが好ましい。また、斯かるレンズシート7を2層以上配置する場合には、光路制御の効率の点より、上下の層で線方向が交差するように配置することが好ましい。
【0083】
光拡散層6は、光学素子10からの出射光の偏光度を維持しつつ拡散させて発光を均一化したり、レンズシート7の凹凸構造が視覚化されるのを緩和したりして、視認性を向上させることなどを目的とする。
【0084】
光拡散層6としては、前述したレンズシート7と同様に、光透過度に優れると共に、出射光の偏光特性を維持するものを用いるのが好ましい。従って、光拡散層6は、レンズシート7について例示したような複屈折率の小さい樹脂を用いて形成するのが好ましく、例えば、その樹脂中に透明粒子を分散含有させたり、表面に微細凹凸構造を有する樹脂層とすること等により、偏光維持性を示す光拡散層6を形成することができる。
【0085】
なお、前述した樹脂中に分散含有させる透明粒子としては、例えば、シリカ、ガラス、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性を有することもある無機系微粒子、或いは、アクリル系ポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、シリコーン系樹脂、ベンゾグアナミン、メラミン・ベンゾグアナミン縮合物、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物のような架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などが挙げられる。
【0086】
また、前記透明粒子としては、1種又は2種以上を用いることができ、その粒径は、光の拡散性やその拡散の均等性などの点より、1〜20μmとするのが好ましい。一方、粒形は任意であるものの、一般には(真)球形やその2次凝集体などが用いられる。また、特に、偏光維持性の点より、樹脂との屈折率比が0.9〜1.1の透明粒子を用いるのが好ましい。
【0087】
以上に説明した透明粒子含有の光拡散層6は、例えば、樹脂の溶融液に透明粒子を混合してシート等に押出し成形する方法、樹脂の溶液やモノマーに透明粒子を配合しシート等にキャスティングして必要に応じ重合処理する方法、透明粒子含有の樹脂液を所定面や偏光維持性の支持フィルム等に塗工する方法など、公知の適宜な方法によって形成することができる。
【0088】
一方、表面に微細凹凸構造を有する光拡散層6は、例えば、サンドブラスト等によるバフ処理やエンボス加工等によって樹脂からなるシートの表面を粗面化する方法、樹脂シートの表面に突起を有する透光性材料の層を形成する方法など、適宜な方法で形成することができる。ただし、空気等の気泡や酸化チタン微粒子など、樹脂との屈折率差が大きい凹凸(突起)を形成する方法は、偏光を解消し易いため好ましくない。
【0089】
光拡散層6における表面の微細凹凸構造は、光の拡散性やその拡散の均等性などの点より、入射光の波長以上で且つ100μm以下の表面粗さを有し周期性の無い凹凸からなるものが好ましい。
【0090】
なお、上記した透明粒子含有型や表面微細凹凸型の光拡散層6の形成に際しては、特にその樹脂からなるベース層に、光弾性や配向による位相差の増加が生じることを抑制することが偏光維持性の点より好ましい。
【0091】
光拡散層6は、板状物等による独立層として配置することもできる一方、レンズシート7に密着一体化した従属層として配置することも可能である。光拡散層6の配置位置が光学素子10に隣接する場合には、レンズシート7の場合と同様に、光学素子10との間に空隙が生じるように配置することが好ましい。なお、2層以上の光拡散層6を配置する場合、各光拡散層6は同じものであっても良いし、異なるものであっても良いが、全体として偏光維持性を保持することが好ましい。
【0092】
前述した波長カットフィルターは、励起光源9からの直接光が、本実施形態に係る偏光面光源で照明される液晶表示素子などに進入することを防止する目的で用いられる。特に、励起光が紫外線である場合には、紫外線による液晶や偏光板の劣化を防止する必要があるため、波長カットフィルターが好適に用いられる。また、波長カットフィルターは、不必要な波長の可視光線を排除する目的で用いることもできる。
【0093】
前記波長カットフィルターとしては、例えば、可視光に対して透光性を有する樹脂に、目的とする波長を吸収する材料(サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤など)を分散したり塗布したフィルムや、透光性のフィルム上にコレステリック液晶を敷設したフィルムの他、誘電体多層膜の反射によって目的波長の光を反射させるものなどが挙げられる。また、波長カットフィルターを別途設けず、光学素子10やその他の光学部材に例えば紫外線吸収剤などを配合して波長カットの機能をもたせることも可能である。
【0094】
前述した位相差フィルムは、光学素子10から出射された直線偏光を任意の偏光状態へ変換する目的で用いられる。例えば、位相差フィルムとしての1/4波長板をその遅層軸方向が出射される直線偏光と45°の角度となるように配置して円偏光に変換したり、位相差フィルムとして1/2波長板を用いて、出射される直線偏光の偏光軸を回転させることなどが可能である。
【0095】
前記位相差フィルムとしては、一般に液晶セルの補償に用いられるようなポリマーフィルムによって構成されるものや、透光性のフィルム上に液晶ポリマーなどを配向して敷設したものなど、任意のものを用いることができる。
【0096】
以上に説明したレンズシート7、光拡散層6、波長カットフィルターなどは、それぞれ単層で又は積層して用いることができる。さらに、上部に配置される液晶表示素子などと接着層等を介して密着させることも可能である。ただし、前述した凹凸構造を有するレンズシート7や表面微細凹凸型の光拡散層6の場合には、液晶表示素子との間に空隙を設けた配置が好ましい。
【0097】
また、レンズシート7、光拡散層6、波長カットフィルター等は、偏光を効率良く取り出すという観点より、光学素子10内での臨界角条件の制御を妨げないようにするべく、光学素子10との間に空隙を介して配置されることが好ましい。
【0098】
以上に説明した本実施形態に係る光学素子10及び当該素子を適用した偏光面光源は、励起光源9より入射した光を用いて、光学素子10から直線偏光として出射し得ると共に、その偏光方向(振動面)を制御可能であるため、例えば、液晶表示装置など直線偏光を利用する種々の装置や用途に好適に用いることが可能である。
【0099】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示すことにより、本発明の特徴をより一層明らかにする。
【0100】
<実施例1>
ノルボルネン系樹脂(JSR社製、アートン、ガラス転移温度182℃)950部(重量部、以下同じ)、下記の化学式で表される液晶ポリマー(ガラス転移温度80℃、ネマチック液晶化温度100〜290℃)50部、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン540)2部を溶解させた20重量%ジクロロメタン溶液を用いてキャスト法により厚み100μmのフィルムを形成し、それを180℃で3倍に延伸処理したのち急冷して光学素子を形成した。
【化1】
【0101】
前記光学素子は、ノルボルネン系樹脂からなる透明フィルム中に液晶ポリマーが延伸方向に長軸な状態でほぼ同じ形状のドメイン状に分散したものであり、屈折率差△n1が0.23で、△n2及び△n3がそれぞれ0.029であった。なお、斯かる屈折率差の測定に際しては、ノルボルネン系樹脂を単独で上記と同条件により延伸処理したものと、前記液晶ポリマーを単独で配向膜上に塗布し配向固定したものとについて、それぞれアッベ屈折率計により屈折率を測定し、それらの差を前記Δn1、Δn2及びΔn3として算出した。クマリンは、ノルボルネン系樹脂に溶解した形で存在していた。また、微小領域部(液晶ポリマーのドメイン)の平均径を偏光顕微鏡観察による位相差に基づく着色によって測定したところ、△n1方向の長さが約5μmであった。
【0102】
<実施例2>
クマリンの代わりに、トリス(8−キノリノラート)アルミニウムの微粉末を分散混合した点を除き、実施例1に準じて光学素子を形成した。屈折率差Δn1、Δn2及びΔn3は、実施例1と同じ値であった。
【0103】
<実施例3>
実施例1の光学素子とガラス板(厚み3mm)とをアクリル粘着剤を用いて貼り合せた後、当該ガラス板の貼り合せ面とは反対側の面に、ポリエチレンテレフタレートシートに銀蒸着を施した鏡面反射シートを配置し、斯かる積層体の一側面にブラックライト蛍光灯冷陰極管を鏡面反射シートからなるランプリフレクタによって固定して偏光面光源を形成した。
【0104】
<比較例>
液晶ポリマーを配合しなかった点を除き、実施例1に準じて光学素子を形成した。
【0105】
<評価>
実施例1、2及び比較例の光学素子に、ブラックライト蛍光灯(中心波長360nm)を照射すると、それぞれ中心波長505nm及び中心波長525nmの緑色の発光が確認された。市販の偏光子(偏光度=99.99)を用いて、発光した光のΔn1方向及びΔn2方向の各直線偏光成分の出射強度を測定したところ、比較例の光学素子ではほぼ1:1(延伸方向をΔn1方向とした)であり、直線偏光が出射されなかったのに対し、実施例1の光学素子では6:1、実施例2の光学素子では4:1の割合で直線偏光が出射していることが分かった。
【0106】
また、実施例3の偏光面光源は、光学素子のΔn1方向の直線偏光が面状に発光していることが分かった。
【0107】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に係る光学素子によれば、従来のように透光性樹脂に反射ドット等からなる特別の光出射手段を設ける必要が無く、入射した励起光によって光学素子内部(発光性材料)で発光した光を、所定の振動面を有する直線偏光として外部に出射することが可能である。また、光学素子の設置角度に応じて、直線偏光の偏光方向(振動面)を任意に設定可能であるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の一実施形態に係る光学素子の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】 図2は、図1に示す光学素子を適用した偏光面光源の概略構成例を示す縦断面図である。
【図3】 図3は、図2に示す偏光面光源において他の励起光源を用いた場合の概略構成例を部分的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
1…透光性樹脂 2…微小領域部 3…発光性材料 4…透光性シート
5…反射層 6…光拡散層 7…レンズシート 8…接着層
9…励起光源 10…光学素子
Claims (9)
- 透光性樹脂と、前記透光性樹脂に分散分布され、前記透光性樹脂とは複屈折性の相違する微小領域部とを具備して延伸処理することにより板状に形成して配向処理されており、
前記透光性樹脂及び/又は前記微小領域部中に、少なくとも1種以上の発光性材料を含有し、前記微小領域部と前記透光性樹脂との屈折率差について、当該屈折率差が最大値を示す前記微小領域部の軸方向の屈折率差をΔn1とし、前記最大値を示す軸方向に直交する軸方向の屈折率差をΔn2及びΔn3とした場合、
0.03≦Δn1≦0.5
0≦Δn2≦0.03
0≦Δn3≦0.03
であることを特徴とすることを特徴とする光学素子。 - 前記発光性材料は、紫外光又は可視光を吸収して可視光を発光する蛍光材料であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
- 前記発光性材料は、紫外光又は可視光を吸収して可視光の燐光を発光する蓄光材料であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
- 前記微小領域部は、液晶性材料、若しくは、液晶相を冷却固定したガラス状態の材料、又は、重合性液晶の液晶相をエネルギー線により架橋固定した材料によって形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光学素子。
- 前記微小領域部は、ガラス転移温度が50℃以上の液晶ポリマーからなり、前記透光性樹脂のガラス転移温度よりも低温でネマチック液晶相を呈することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光学素子。
- 請求項1から5のいずれかに記載の光学素子と、
当該光学素子に含有された発光性材料を励起し得る波長の光を出射する光源とを備えることを特徴とする偏光面光源。 - 前記光源から出射した光を前記光学素子に導くための透光性材料から形成された導光体を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の偏光面光源。
- 前記光源は、エレクトロルミネッセンス素子から構成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の偏光面光源。
- 請求項6から8のいずれかに記載の偏光面光源を備えることを特徴とする表示装置。
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