JP3975716B2 - 繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物及びそれを用いた人工皮革 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物に関するものである。更に詳しくは、造膜性が良好で、耐熱水性、耐摩耗性、耐ブリードアウト性に優れる表皮層を形成する繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物及びそれを用いた人工皮革を提供することにある。
【0002】
【従来の技術】
従来の繊維積層体の表皮層形成方法は、▲1▼ポリウレタン樹脂の有機溶剤溶液を離型紙に塗布し、有機溶剤を揮発することにより表皮層を形成し、更にその上にポリウレタン樹脂の有機溶剤溶液である接着剤を塗布し、そのまま繊維基材と貼り合わせて有機溶剤を揮発、あるいは有機溶剤揮発後に繊維基材と貼り合わせる離型紙転写法、▲2▼ポリウレタン樹脂の有機溶剤溶液を離型紙に塗布し、有機溶剤を揮発することにより表皮層を形成し、表皮層を熱により繊維基材と貼り合わせる熱転写法、▲3▼繊維基材の表面にポリウレタン樹脂の有機溶剤溶液を直接スプレーするスプレー法、▲4▼ポリウレタン樹脂の有機溶剤溶液をグラビアコーター、ナイフコーター、コンマコーター、エアナイフコーター等にて繊維基材に塗布するダイレクトコート法などが知られている。しかし、この際使用される有機溶剤は、通常数種類混合して用いられるため、乾燥工程で揮散した有機溶剤の回収は極めて困難であり、ほとんど大気中に放出されてきたのが現状であり、有機溶剤が揮散するため作業環境も良好ではなく、作業者の健康が懸念される。加工装置も防爆仕様が要求されるため、装置の価格が高くなるという問題もある。さらに沸点の高い有機溶剤、例えばDMF(N,N−ジメチルフォルムアミド)が用いられることもあるが、この場合は沸点の高い有機溶剤が乾燥後も一部繊維積層体中に残留し、その毒性が問題となっている。これらの問題を解決するために、繊維積層体表皮層形成用ポリウレタン樹脂を有機溶剤タイプから水性タイプに移行すべく検討がなされているが、満足すべき物性を有した繊維積層体は得られていない。
【0003】
この大きな理由としては、水性ポリウレタン樹脂をそのまま表皮層に用いた場合、造膜性が不良で、耐摩耗性測定時に水性ポリウレタン樹脂が脱落することが挙げられる。また耐水試験を行うと透明な樹脂が白化し、樹脂の機械的強度及び耐摩耗性が大幅に低下する問題がある。更に乳化剤を用いた水性ポリウレタン樹脂は、経時で粉状あるいは液状の乳化剤が繊維積層体表面にブリードアウトし商品価値が無かった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、有機溶剤を極力あるいは全く含まず、造膜性が良好で、耐水性、耐摩耗性、耐ブリードアウト性に優れる表皮層を形成する繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物及びそれを用いた人工皮革を提供することにある。
【0005】
【課題を解決する手段】
本発明は上記課題を解決する表皮層を形成する繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物及びそれを用いた人工皮革について鋭意研究の結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
即ち、本発明は酸価が5〜40であるポリウレタン樹脂で、且つ乳化剤を含有しない水性ポリウレタン樹脂分散体(A)及び該分散体(A)と反応する架橋剤(B)を含有してなり、前記水性ポリウレタン樹脂分散体(A)の粒子径が200nm以下であり、かつ前記架橋剤(B)が、ポリイソシアネート化合物(B−1)またはポリカルボジイミド化合物(B−2)であることを特徴とする繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物及びそれを用いた人工皮革を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明における繊維積層体とは、ポリウレタン樹脂からなる表皮層が繊維基材と接合された状態のものをいう。また、本発明における表皮層とは、繊維積層体における表面強度・意匠性を向上させるために着色、光沢調整、凹凸模様などを施したポリウレタン樹脂、即ち本発明の樹脂組成物からなる層のことを言う。かかる表皮層は、表面強度・意匠性向上のため数層から構成される場合も含まれる。
【0008】
本発明における繊維基材とは、一般に用いられる繊維基材であれば特に制限はなく公知公用のものを使用することができる。その材質は、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリルなどの合成繊維およびこれらの改良繊維;羊毛、絹、木綿、麻などの天然繊維;アセテート、レーヨンなどの半合成繊維など、あるいはこれらの混用繊維からなる織編布、不織布等の繊維シート状物が挙げられる。更に、これら繊維シート状物に有機溶剤系、水性あるいは無溶剤系ポリウレタン樹脂がコーティング加工(発泡コーティングも含む)あるいは含浸加工されてマイクロポーラスを形成したものも挙げられ、本発明においては特に好ましくはマイクロポーラスを有する繊維シート状物である。
本発明におけるマイクロポーラスとは、付着した樹脂中に均一な多数の孔が分散している状態を示す。尚、繊維の太さおよび形状は特に限定されず、極細繊維を用いることも可能である。例えば、極細繊維化に際して海島型、分割または剥離型、直紡型、オレンジピール型いずれの繊維を用いても良く、海島繊維を使用する場合、極細化方法としては海成分又は島成分をトルエン等の有機溶剤処理による溶解溶出法、アルカリ等による分解溶出法、高圧水流によるウォータージェット法などが挙げられるが、極細化方法について特に限定されるものではない。更に床革等の天然皮革素材も繊維基材に含む。
【0009】
本発明における人工皮革とは、上記繊維積層体の内、繊維シート状物に有機溶剤系、水性あるいは無溶剤系ポリウレタン樹脂がコーティング加工(発泡コーティングも含む)あるいは含浸加工されてマイクロポーラスを形成した基材からなるものである。
【0010】
本発明において使用される水性ポリウレタン樹脂分散体(A)は、乳化剤を使用せずにポリウレタン樹脂の分子中に遊離カルボキシル基を導入することにより該樹脂が親水性を有し水中に分散しているものである。このウレタン樹脂に遊離カルボキシル基を導入した場合、酸価が5未満であると、ポリウレタン分散体の粒子径が大きくなり、安定な分散体が得られず、40を超えると、造膜性が低下して、皮膜強度が低下する。このため、カルボキシル基は酸価が5〜40になるように導入することが好ましく、特に好ましくは酸価が10〜30である。
尚、酸価とはウレタン樹脂1g中に含まれる酸分(酸基)を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数をいう。また、樹脂にカルボキシル基を有するものにするにはカルボキシル基含有親水性化合物をジイソシアネ−トと反応させることにより行えばよい。
【0011】
また、本発明にて使用される水性ポリウレタン樹脂分散体(A)の粒子径は、200nm以下にすることが好ましく、特に好ましくは150nm以下である。かかる粒子径が上記範囲であれば、表皮層形成時の造膜性が良好で、加工時のクラックが発生しない。ここで言う粒子径とは、レーザー粒径解析システム PAR III(大塚電子株式会社製)により、動的光散乱法で測定し、MARQUADT法で解析した平均粒径:d(nm)の値をいう。
【0012】
本発明のような特性を備えたカルボキシル基含有ウレタン樹脂の具体例としては、分子内に少なくとも1個以上の活性水素を有し、かつ、カルボン酸塩あるいはカルボキシル基を少なくとも1個有する親水性化合物(A−1)、有機ポリイソシアネ−ト化合物(A−2)、数平均分子量が300〜10000のポリオ−ル化合物(A−3)、低分子量ポリヒドロキシル化合物(A−4)および/またはポリアミン系鎖伸長剤(A−5)、必要に応じて、親水性化合物(A−1)のカルボキシル基を中和するための中和剤(A−6)を反応させることにより得られるものである。
【0013】
ここで、親水性化合物(A−1)としては、分子内に少なくとも1個以上の活性水素を有し、かつ、カルボン酸塩あるいはカルボキシル基を少なくとも1個有する親水性化合物であれば公知公用の化合物が使用でき、特に次の具体例に限定されるものではない。具体的化合物としては、2,2−ジメチロ−ルプロピオン酸、2,2−ジメチロ−ルブタン酸、2,2−ジメチロ−ル酪酸、2,2−ジメチロ−ル吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸等のカルボン酸含有化合物およびこれらの誘導体またはこれらを共重合させて得られるポリエステルポリオ−ル及びポリエーテルポリオール等が挙げられ、これらは単独でも、併用でもよい。さらに、これらの親水性化合物に加えて、本発明の効果を低減させない範囲で、分子量が300〜20000のポリオキシエチレングリコ−ル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコ−ルまたはそのモノアルキルエ−テル等のノニオン基含有化合物、あるいはスルホン酸基、リン酸基含有の親水性化合物を併用しても差し支えない。
【0014】
また、有機ポリイソシアネ−ト化合物(A−2)の具体例としては、フェニレンジイソシアネ−ト、トリレンジイソシアネ−ト、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、ナフタレンジイソシアネ−ト等の芳香族ジイソシアネ−トやヘキサメチレンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、シクロヘキサンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト等の脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネ−トが挙げられるが、これらの具体例によって何等限定されるものではない。また、これらは単独で使用しても構わないし、2種以上を同時に使用しても何等問題はない。
【0015】
(C)のポリオ−ル化合物としては、数平均分子量が300〜10000、好ましくは500〜5000の高分子ポリオ−ルであり、例えば、ポリエステルポリオ−ル、ポリエ−テルポリオ−ル、ポリカ−ボネ−トポリオ−ル、ポリアセタ−ルポリオ−ル、ポリアクリレ−トポリオ−ル、ポリエステルアミドポリオ−ル、ポリチオエ−テルポリオ−ル、ポリブタジエン系等のポリオレフィンポリオ−ル等が挙げられる。
【0016】
ここで、前記ポリエステルポリオ−ルとしては、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、1,8−オクタンジオ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、テトラエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル(分子量300〜6000)、ジプロピレングリコ−ル、トリプロピレングリコ−ル、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ビスフェノ−ルA、水素添加ビスフェノ−ルA、ハイドロキノンおよびそれらのアルキレンオキシド付加体等のグリコ−ル成分と、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p′−ジカルボン酸、およびこれらのジカルボン酸無水物あるいはエステル形成性誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸およびこれらのヒドロキシ安息香酸のエステル形成性誘導体等の酸成分とから脱水縮合反応によって得られるポリエステルの他にε−カプロラクトン等の環状エステル化合物開環重合反応によって得られるポリエステルおよびこれらの共重合ポリエステル等が挙げられる。
【0017】
また、前記ポリエ−テルポリオ−ルとしては、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、グリセリン、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ソルビト−ル、蔗糖、アコニット糖、トリメリット酸、ヘミメリット酸、リン酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノ−ルアミン、ピロガロ−ル、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタル酸、1,2,3−プロパントリチオ−ル等の活性水素原子を少なくとも2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマ−の1種または2種以上を常法により付加重合させたものが挙げられる。
【0018】
さらに、ポリカ−ボネ−トポリオ−ルとしては、1,4−ブタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ジエチレングリコ−ル等のグリコ−ルとジフェニルカ−ボネ−ト、ホスゲンとの反応によって得られる化合物が挙げられる。尚、上述のポリオール化合物に関する具体例によって本発明が何等限定されるものではない。また、これらは単独で使用しても構わないし、2種以上を同時に使用しても何等問題はない。
【0019】
以上のポリオ−ル化合物のうち、ポリエーテル系ポリオ−ルまたはポリカーボネート系ポリオ−ルが表皮層形成後の耐水性及び耐久性の点で好ましい。
【0020】
(D)の低分子量ポリヒドロキシル化合物の具体例としては、分子量300以下の分子内に少なくとも2個以上の水酸基を含有する化合物で、例えば、ポリエステルポリオ−ルの原料として用いたグリコ−ル成分、グリセリン、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ソルビト−ル、ペンタエリスリト−ル等が挙げられるが、これらの具体例によって何等限定されるものではない。また、これらは単独で使用しても構わないし、2種以上を同時に使用しても何等問題はない。
【0021】
ポリアミン系鎖伸長剤(A−5)としては、エチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、トリエチレンテトラアミン等が挙げられるが、これらの具体例によって何等限定されるものではない。また、これらは単独で使用しても構わないし、2種以上を同時に使用しても何等問題はない。
【0022】
更に、中和剤(A−6)としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基や、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノ−ルアミン、ジイソプロピルアミノエタノ−ル、トリエタノ−ルアミン等の三級アミン類、アンモニア等の揮発性塩基が挙げられ、これらは単独でも構わないし、2種以上を同時に使用しても構わない。尚、この中で特に揮発性塩基が好ましい。また、中和期としてはカルボキシル基含有親水化合物(A−1)がウレタン化反応を起こす反応前、反応中、反応後のいずれでも差し支えない。
【0023】
ポリウレタン水性分散体の合成方法は、特に制限がなく、本発明の効果を損なわない限り公知慣用の方法でよく、反応途中で有機溶剤を使用した場合には、ウレタン化反応終了後に減圧下除去する。また、水性ウレタン樹脂は造膜性改善のために例えばアルキレングリコ−ル誘導体、あるいは脂肪族ジカルボン酸のジアルキルエステル、N−メチル−2−ピロリドン等のような造膜助剤を含有させてもよいが、その使用量は必要最低限に留めるべきである。
【0024】
本発明において使用される架橋剤(B)は、水性ポリウレタン樹脂分散体(A)と反応するものであれば公知公用の化合物を使用することができ、ポリイソシアネート化合物(B−1)あるいはポリカルボジイミド化合物(B−2)が好適である。その中、無溶剤であるものがより好ましい。更に水性ポリウレタン樹脂分散体(A)への分散性を有するものが最も好ましく、水に分散性を有する化合物あるいはその水分散体からなる架橋剤、或いは水性ポリウレタン樹脂分散体(A)のポリウレタン樹脂が分散媒として作用する場合には、水に対して非分散性である架橋剤も用いることが出来る。
【0025】
本発明で架橋剤として使用し得るポリイソシアネート化合物(B−1)としては、水に対して非分散性である化合物及び水分散性を有する化合物があげられ、例えばポリイソシアネート単独、あるいはこれらのイソシアヌレート型あるいはビューレット型、アロファネート型の少なくとも3官能以上のポリイソシアネート化合物、2官能以上のポリオール等の活性水素含有化合物との反応により得られる末端イソアネート基含有ウレタンプレポリマー等の実質的に疎水性のポリイソシアネート類;カルボキシル基含有化合物、スルホン酸基含有化合物、あるいはノニオン性親水基含有化合物をポリイソシアネート類に反応して得られる水分散性ポリイソシアネート類;並びにこれらの混合物が挙げられる。この内、耐水性向上の面からは脂肪族或いは脂環族ポリイソシアネートからなり、水に対して非分散性で水性ポリウレタン樹脂分散体(A)には分散するポリイソシアネートが好ましい。また水性ポリウレタン樹脂分散性体(A)への分散性の面からはノニオン性親水基含有化合物を反応して得られる脂肪族或いは脂環族ポリイソシアネートからなる水分散性ポリイソシアネートが好ましい。
【0026】
また、ポリカルボジイミド化合物(B−2)としては、水に対して非分散性である化合物及び分散性を有する化合物があげられ、例えば1種または2種以上のイソシアネートからなる疎水性ポリカルボジイミド類;スルホン酸基含有化合物、あるいはノニオン性親水基含有化合物をカルボジイミド類に反応して得られる水分散性のポリカルボジイミド類;並びにこれらの混合物が挙げられる。この内、耐水性向上の面からはジシクロヘキシルメタンジイソシアネート或いはテトラメチルキシリレンジイソシアネートからなり、水に対して非分散性で水性ポリウレタン樹脂分散体(A)には分散するポリカルボジイミドが好ましい。また水性ポリウレタン樹脂分散性体(A)への分散性の面からはノニオン性親水基含有化合物を反応して得られるジシクロヘキシルメタンジイソシアネート或いはテトラメチルキシリレンジイソシアネートからなる水分散性ポリカルボジイミドが好ましい。尚、上記ポリイソシアネート化合物、及びポリカルボジイミド化合物は同種、異種を問わず、2種以上を併用しても構わない。
【0027】
本発明での架橋剤(B)は、最終的に得られる繊維積層体表皮層、特に耐水性、耐摩耗性等の表皮耐久性を発現するために、前記水性ポリウレタン樹脂分散体(A)と反応することにより得られる樹脂の流動開始温度が140℃以上になるように配合することが望ましい。特に好ましくは耐水性の点で160℃以上であることが望ましい。ここで言う流動開始温度とは、樹脂が溶融し流動を開始する温度であり、島津フロ−テスタ−(島津製作所製、CFT−500A)で、口径1mm、長さ1mmのダイスを用いて、荷重98N、昇温速度=3℃/分で測定した値を言う。
【0028】
かかる流動開始温度にするための前記水性ポリウレタン樹脂分散体(A)と、架橋剤(B)との配合比は、100/0.1〜100/50(固形分重量比)が好ましく、更には100/1〜100/25(固形分重量比)が特に好ましい。
【0029】
本発明の水性樹脂組成物には会合型増粘剤(C)を併用するのが好ましい。かかる会合型増粘剤(C)は、繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物を増粘し、加工適性を付与するために使用される。このような会合型増粘剤は公知であり、例えば特開昭54−80349号公報、特開昭58−213074号公報、特開昭60−49022号公報、特公昭52−25840号公報、特開平9−67563号公報、特開平9−71766号公報等に記載されたウレタン系の会合型増粘剤や、特開昭62−292879号公報、特開平10−121030号公報記載のノニオン性ウレタンモノマーを会合性モノマーとして他のアクリルモノマーと共重合して得られる会合性増粘剤、あるいはWO9640815記載のアミノプラスト骨格を有する会合型増粘剤等が挙げられる。
【0030】
これら会合型増粘剤の市販品の例としては、例えばRHEOX社のRHEOLATE 216,266、Bernd Schwegmann社製のSchwego Pur8020,Pur8050、MUNZING CHEMIE GMBH社製のTafigel PUR40,PUR45,PUR60、BASF社製のCollacral PU85、ヘキスト社製のBORCHIGEL L75N、ローム・アンド・ハース社製のプライマル QR−708,RM−825,RM−870,RM−1020,RM−2020NPR,SCT−200,SCT−270,RM−8W,RM−4,TT−935、第一工業製薬社製のDKシックナーSCT−275、旭電化社製のアデカノールUH−420,UH540,UH−550,UH−750、サンノプコ社製のSNシックナー603,612,A−803,A−812,A−814、三洋化成社製のエレミノールN62、ビスライザーAP−2、Sud−Chemie社製のOPTIFLO L150,M210,H400等が挙げられる。
【0031】
これらの会合型増粘剤の中でも、特に末端に疎水基を含有し、分子鎖中にウレタン結合を含有するウレタン系の会合型増粘剤が好ましく、具体的には下記構造式(1)〜(6)を有する会合型増粘剤、あるいはこれらの反応混合物が挙げられる。
【0032】
(1) R1-X-(PEG-X-R2-X)m-PEG-X-R1'
(R1,R1':炭素数8〜36のアルキル基あるいは芳香環を有する炭化水素基でR1とR1'は同一でも異なっていても良い、R2:NCO基を除く炭素数6〜36のジイソシアネート残基、X:ウレタン結合、PEG:分子量1,500〜33,000のポリエチレングリコール残基、m:0以上の整数)
【0033】
(2) R1-Y-R2-(X-PEG-X-R3)m-X-PEG-X-R2-Y-R1'
(R1,R1':炭素数8〜36のアルキル基あるいは芳香環を有する炭化水素基でR1とR1'は同一でも異なっていても良い、R2,R3:NCO基を除く炭素数6〜36のジイソシアネート残基でR2とR3は同一でも異なっていても良い、X:ウレタン結合、Y:ウレタン結合あるいはウレア結合、PEG:分子量1,500〜33,000のポリエチレングリコール残基、m:0以上の整数)
【0034】
(3)
R1-(OA)p-X-R2-(X-PEG-X-R3)m-X-(AO)q-R1'
(R1,R1':炭素数8〜36のアルキル基あるいは芳香環を有する炭化水素基でR1とR1'は同一でも異なっていても良い、R2,R3:NCO基を除く炭素数6〜36のジイソシアネート残基でR2とR3は同一でも異なっていても良い、X:ウレタン結合、A:炭素数2〜4の炭化水素で少なくともエチレンを含む炭化水素残基、m:0以上の整数、p,q:1〜200の整数でpとqは同一でも異なっていても良い)
【0035】
(4)
【化1】
【0036】
(R1,R1',R1":炭素数8〜36のアルキル基あるいは芳香環を有する炭化水素基で、R1、R1'とR1"は同一でも異なっていても良い、R4:NCO基を除く多官能ポリイソシアネート残基、A:炭素数2〜4の炭化水素で少なくともエチレンを含む炭化水素残基、X:ウレタン結合、i,j,k:0以上の整数でかつ(i+j+k)が3以上の整数、p,q,r:1〜200の整数で、p、qとrは同一でも異なっていても良い)
【0037】
(5)
【化2】
【0038】
(R1,R1',R1":炭素数8〜36のアルキル基あるいは芳香環を有する炭化水素基で、R1、R1'とR1"は同一でも異なっていても良い、R4:NCO基を除く多官能ポリイソシアネート残基、A:炭素数2〜4の炭化水素で少なくともエチレンを含む炭化水素残基、X:ウレタン結合、Y:ウレタン結合あるいはウレア結合、i,j,k:0以上の整数でかつ(i+j+k)が3以上の整数、p,q:1〜200の整数で、pとqは同一でも異なっていても良い)
【0039】
(6)
【化3】
【0040】
(R1,R1',R1":炭素数8〜36のアルキル基あるいは芳香環を有する炭化水素基で、R1、R1'とR1"は同一でも異なっていても良い、R5:活性水素を除く多官能ポリオールあるいはポリアミン残基、A:炭素数2〜4の炭化水素で少なくともエチレンを含む炭化水素残基、X:ウレタン結合、i,j,k:0以上の整数でかつ(i+j+k)が3以上の整数、p,q,r:1〜200の整数で、p、qとrは同一でも異なっていても良い)
【0041】
更に本発明の水系ウレタン樹脂組成物の効果的な増粘性を得るためには、会合型増粘剤の末端の疎水基が、特に下記構造式(X)で表される骨格を有する事が好ましい。
Ra−Ph− (X)
(R:炭素数1〜9のアルキル基、アリール基あるいはアルキルアリール基
a:1〜3の整数
Ph:フェニル環残基 )
具体的には、ノニルフェニル、ジノニルフェニル、オクチルフェニル、ジオクチルフェニル等のアルキルフェニル基;モノスチレン化フェニル、ジスチレン化フェニル、トリスチレン化フェニル、モノスチレン化メチルフェニル、ジスチレン化メチルフェニル、及びこらの混合物を含むスチレン化フェニル基;トリベンジルフェニル等のベンジルフェニル基;p−(α−クミル)フェニル基等が挙げられ、これら単独で使用されるか、あるいは併用しても差し支えない。
【0042】
本発明の会合型増粘剤(C)は、増粘性と水分散性の両立を図る為、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等の有機溶剤を含有するものもある。しかし好ましくは有機溶剤を極力少なく或いは全く含まず、水分散性のものが良好で、且つ少量の添加で増粘効果が高いものである。
【0043】
またこれらの会合型増粘剤(C)の使用量は、固形分比で水系ウレタン樹脂100重量部に対して0〜10重量部である。会合型増粘剤の使用量が10重量部を越えると、耐水性が低下し不適当である。
【0044】
本発明の水性樹脂組成物にはレベリング剤(D)を併用するのが好ましい。かかるレベリング剤(D)としては特に限定はなく公知慣用のものが使用出来、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル系、脂肪酸ジエタノールアミド系、ショ糖エステル系等のノニオン型炭化水素系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸エステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート系、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等のアニオン型炭化水素系界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩系等のカチオン型炭化水素系界面活性剤、ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アミドベタイン型等の両性炭化水素系界面活性剤、イミダゾリン型ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等の高分子型炭化水素系界面活性剤、アセチレングリコール系の特殊界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を挙げることが出来、これらは単独で使用してもよく2種以上を同時に用いても構わないが、酸価が5〜40である乳化剤非含有のポリウレタン水性ポリウレタン樹脂分散体(A)及び/又は該水性ポリウレタン樹脂分散体(A)と反応する架橋剤(B)の配合物に添加することにより効果的に表面張力を低下させるものが好ましく、特に表面張力を30mN/m以下と出来るものが好ましい。
【0045】
かかる表面張力にするための前記レベリング剤(D)の配合比は0.001〜1%(見かけ重量比)が好ましく、効果の発現する範囲内においてブリードアウトを避ける為、可能な限り少量とすることが好ましい。
【0046】
本発明の繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、水に加えてその他の水性分散体や水分散液、例えば酢ビ系、エチレン酢ビ系、アクリル系、アクリルスチレン系等のエマルジョン;スチレン・ブタジエン系、アクリロニトリル・ブタジエン系、アクリル・ブタジエン系等のラテックス;ポリエチレン系、ポリオレフィン系等のアイオノマー;ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、エポキシ樹脂等の各種水性分散体、水分散液を併用してもよい。
【0047】
また加工適性付与或いは表皮層性能向上の為、各種添加剤を添加することもでき、例えば、ウレタン化触媒;酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線防止剤等の各種安定剤;鉱物油系、シリコーン系等の消泡剤、可塑剤、顔料等の着色剤、可使時間延長剤等を配合して使用することも出来る。
【0048】
本発明の繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物の表皮層形成方法は、従来公知のいずれの方法でもよい。例えば▲1▼離型紙に塗布し、水分を蒸発させることにより表皮層を形成し、更にその上に接着剤を塗布し、そのまま繊維基材と貼り合わせて水分を蒸発、あるいは水分蒸発後に繊維基材と貼り合わせる離型紙転写法▲2▼離型紙に塗布し、水分を蒸発させることにより表皮層を形成し、熱により表皮層を繊維基材と貼り合わせる熱転写法▲3▼繊維基材の表面に直接スプレーするスプレー法▲4▼グラビアコーター、ナイフコーター、コンマコーター、エアナイフコーター等にて繊維基材に塗布するダイレクトコート法等が挙げられるが、表皮層の性能面より離型紙転写法が最も好ましい。塗布厚みは、乾燥後で5〜100μmとなればよく、好ましくは5〜50μmである。
【0049】
上記表皮層形成方法に於ける離型紙転写法において使用される接着剤は表皮層と繊維基材を貼り合わせることの出来るものであればいずれでも良いが、特に性能面よりポリウレタン接着剤が好ましい。例えば一液型熱転写ポリウレタン樹脂、二液型ポリウレタン樹脂とポリイソシアネート系架橋剤、反応性ホットメルト型ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ポリウレタン樹脂等が挙げられる。また本発明の主旨から上記のポリウレタン接着剤は水性あるいは無溶剤とすることが望ましい。
【0050】
本発明の繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物の乾燥方法は、従来公知の乾燥方法であれば広く使用することができる。例えば、熱風乾燥機、赤外線照射式乾燥機、マイクロ波照射式乾燥機、あるいは、これらのうち少なくとも2種類以上を併用した乾燥装置等を挙げることができる。乾燥条件は、該繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物の水分が蒸発し、架橋が起きるのに必要な条件であれば特に限定はなく、一般に80〜150℃で10秒〜2分間程度乾燥される。ただし過乾燥は、表皮層、接着層、繊維基材の熱劣化、変質を起こす。また乾燥不足の場合は水分が十分に蒸発せず、表皮層の離型紙からの浮き等の外観不良、架橋不足による強度低下等の問題を引き起こす。100〜130℃で30秒〜1分間程度の乾燥が好ましい。
【0051】
また本発明により得られた繊維積層体は、更に、表面処理、揉み加工等の後加工を施しても構わない。
【0052】
本発明の繊維積層体表皮形成用水性樹脂組成物は、酸価が5〜40のポリウレタン樹脂であり、好ましくは粒子径が200nm以下である乳化剤非含有の水性ポリウレタン樹脂分散体(A)と該水性ポリウレタン樹脂分散体(A)と反応する架橋剤(B)を基本成分とし、好適には(A)と(B)が反応してなる樹脂の流動開始温度が140℃以上であり、これに会合型増粘剤(C)を加えることができ、更に会合型増粘剤(C)の有無に関わらずレベリング剤(D)を加えることができ、特に、架橋剤(B)の成分が無溶剤で水分散体(A)に分散性を有するポリイソシアネート化合物(B−1)あるいはポリカルボジイミド化合物(B−2)からなるものを用いた場合には、DMFなどの有機溶剤を極力あるいは全く含まないことによるメリットがあり、しかも有機溶剤系と同等の性能の繊維積層体表皮層、特に人工皮革を得る為に適したものである。
【0053】
而して、得られる人工皮革は、車両、家具、衣料、靴、鞄、袋物、サンダル、雑貨等に使用することができる。
【0054】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。実施例中の「部」は、「重量部」を示す。
【0055】
繊維基材(以下基材という)の作成例
【0056】
(基材1)市販のナイロントリコット起毛布
【0057】
(基材2)目付100g/m2のポリエステル不織布にハイドラン WLI−602(水分散性ポリウレタン樹脂 大日本インキ化学工業(株)製)/ハイドランアシスター T2(増粘剤 大日本インキ化学工業(株)製)/ダイラック HP−9451(水分散性黒顔料 大日本インキ化学工業(株)製)/水=62.5/0.5/2/35(部)で配合した配合液を含浸し、マングルロールでウエットピックアップ 150%になるように絞った。絞り後直ちに95℃のスチーム下に1分間暴露しポリウレタン樹脂を凝固させた。次いで100℃の乾燥機で30分間乾燥した。
【0058】
(基材3)市販のテトロン/レーヨン起毛布を10%DMF水溶液に浸漬し、ウエットピックアップが80%となるように絞り前処理を行った。その起毛布上にクリスボン 8006HV(有機溶剤系ポリウレタン樹脂 大日本インキ化学工業(株)製)/クリスボン MP−870(有機溶剤系ポリウレタン樹脂 大日本インキ化学工業(株)製)/クリスボン アシスター SD−7(湿式加工用成膜助剤 大日本インキ化学工業(株)製)/クリスボンアシスター SD−11(湿式加工用成膜助剤)/ダイラック L−5442(黒顔料 大日本インキ化学工業(株)製)/DMF=70/30/1/1/1/100(部)で配合した配合液を1,000g/m2塗布した。塗布後、直ちに30℃に調整した10%DMF水溶液中に5分間浸漬し、ポリウレタン樹脂を成膜させた。次いで60℃の温水中で、DMFが完全に抽出されるまで20分間洗浄した。その後マングルロールで絞り、120℃の乾燥機で20分間乾燥した。
【0059】
(合成例1)
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)500 部、2,2−ジメチロ−ルプロピオン酸36部、ネオペンチルグリコール18部、イソホロンジイソシアネ−ト206部、80%水加ヒドラジン13部、トリエチルアミン27部を反応させることにより、不揮発分(%)=35、酸価=20、粒子径=50nm、流動開始温度=100℃の水性ポリウレタン分散体を得た。
【0060】
(合成例2)
ポリカーボネートジオール(分子量2000)500部、2,2−ジメチロ−ルプロピオン酸32部、イソホロンジイソシアネ−ト147部、80%水加ヒドラジン9部、トリエチルアミン25部を反応させることにより、不揮発分(%)=35、酸価=20、粒子径=50nm、流動開始温度=100℃の水性ポリウレタン分散体を得た。
【0061】
(合成例3)
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)500部、ネオペンチルグリコール45部、イソホロンジイソシアネ−ト203部、80%水加ヒドラジン13部からなるポリウレタンをノニルフェノール型乳化剤10部により分散させることにより、不揮発分(%)=35、酸価=0、粒子径=320nm、流動開始温度=100℃の水性ポリウレタン分散体を得た。
【0062】
(合成例4)
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(分子量2000)500部、2,2−ジメチロ−ルプロピオン酸112部、イソホロンジイソシアネ−ト323部、80%水加ヒドラジン21部、トリエチルアミン84部を反応させることにより、不揮発分(%)=30、酸価=50、粒子径=30nm、流動開始温度=120℃の水性ポリウレタン分散体を得た。
【0063】
(実施例1)
合成例1の水性ポリウレタン分散体/DILAC HS−7210(水分散性白顔料 大日本インキ化学工業(株)製)/ハイドラン アシスター C1(水分散性ポリイソシアネート系架橋剤 大日本インキ化学工業(株)製)/ハイドラン アシスター T1(会合型増粘剤 大日本インキ化学工業(株)製)=100/10/4/0.5(部)で配合した繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物を離型紙(DN−AT−AP−T フラット 大日本印刷。味の素製)上に塗布厚100μm
(wet)で塗布した。直ちにワーナーマチス(乾燥機)を用い70℃で1分間予備乾燥し、その後120℃で2分間乾燥を行い、水分を完全に蒸発させ、ポリウレタン樹脂フィルム(以下表皮層という)を得た。その上にハイドラン WLA−311(水分散性ポリウレタン樹脂 大日本インキ化学工業(株)製)/ハイドラン アシスター C1/ハイドラン アシスター T1=100/10/1(部)で配合したポリウレタン接着剤配合液を塗布厚120μm(wet)で塗布した。塗布後ワーナーマチスを用い70℃で1分間乾燥を行い、乾燥直後に基材1の貼り合わせを行った。その後120℃で2分間キュアリングを行い、更に40℃で2日間エージングを行い、離型紙から剥離し、繊維積層体を得た。尚、本繊維積層体表皮形成用水性樹脂組成物反応後の皮膜流動開始温度を測定したところ、190℃であった。
【0064】
(実施例2)
貼り合わせに基材2を使用した以外は、実施例1と同様に加工を行った。
【0065】
(実施例3)
貼り合わせに基材3を使用した以外は、実施例1と同様に加工を行った。
【0066】
(実施例4)
繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物のポリウレタン水性分散体に合成例2を用いた以外は、実施例1と同様に加工を行った。尚、本繊維積層体表皮形成用水性樹脂組成物反応後の皮膜流動開始温度を測定したところ、195℃であった。
【0067】
(実施例5)
繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物のハイドラン アシスター C1配合量を2部とした以外は、実施例1と同様に加工を行った。尚、本繊維積層体表皮形成用水性樹脂組成物反応後の皮膜流動開始温度を測定したところ、160℃であった。
【0068】
(実施例6)
繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物にハイドラン アシスター W1(レベリング剤)を0.2部追加した以外は、実施例1と同様に加工を行った。尚、本繊維積層体表皮形成用水性樹脂組成物反応後の皮膜流動開始温度を測定したところ、190℃であった。
【0069】
(実施例7)
繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物のハイドラン アシスター C1をバーノックDN−980−S(無溶剤ポリイソシアネート 大日本インキ化学工業(株)製)に変えた以外は、実施例1と同様に加工を行った。尚、本繊維積層体表皮形成用水性樹脂組成物反応後の皮膜流動開始温度を測定したところ、190℃であった。
【0070】
(実施例8)
繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物のハイドラン アシスター C1 4部をハイドラン アシスター C4(水分散体ポリカルボジイミド 大日本インキ化学工業(株)製)8部に変えた以外は、実施例1と同様に加工を行った。尚、本繊維積層体表皮形成用水性樹脂組成物反応後の皮膜流動開始温度を測定したところ、220℃であった。
【0071】
(比較例1)
繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物の水性ポリウレタン分散体に合成例3を用いた以外は、実施例1と同様に加工を行った。尚、本繊維積層体表皮形成用水性樹脂組成物反応後の皮膜流動開始温度を測定したところ、187℃であった。
【0072】
(比較例2)
繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物の水性ポリウレタン分散体に合成例4を用いた以外は、実施例1と同様に加工を行った。尚、本繊維積層体表皮形成用水性樹脂組成物反応後の皮膜流動開始温度を測定したところ、191℃であった。
【0073】
(比較例3)
繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物のハイドラン アシスター C1を無添加とした以外は、実施例1と同様に加工を行った。尚、本繊維積層体表皮形成用水性樹脂組成物反応後の皮膜流動開始温度を測定したところ、98℃であった。
【0074】
これらの評価結果を以下の表に示す。
【0075】
【表1】
【表2】
【表3】
【0076】
〈評価方法〉
造膜性:
離型紙上に配合液を100g/m2塗布し、ワーナーマチスにて70℃・2分、120℃・2分加熱し、水分蒸発後のフィルムの状態を観察した。
〈判定〉○:クラック無し
×:クラック有り
【0077】
耐熱水性:
離型紙上に配合液を100g/m2塗布し、ワーナーマチスにて70℃・2分、120℃・2分加熱し、水分蒸発後のフィルムを得た。
そのフィルムを95℃の熱水に30分間浸漬し、浸漬後のフィルムの状態を観察した。
〈判定〉○:溶解せず
×:溶解
【0078】
耐摩耗性:
実施例・比較例で得られた加工布の表面を、染色堅牢度試験(JIS L−0823)で学振型摩耗試験を行い、目視にて表面の摩耗状態を観察した。荷重は500gである。
〈判定〉○:摩耗せず
×:摩耗
【0079】
耐ブリードアウト性:
実施例・比較例で得られた加工布を、100℃の乾燥機中に1週間静置し、表面のブリード物を観察した。
〈判定〉○:ブリードなし
×:ブリードあり
【0080】
以上の実施例・比較例より、本発明の繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物は、造膜性が良好で、耐熱水性、耐摩耗性、耐ブリードアウト性に優れることを確認した。
【0081】
【発明の効果】
本発明は、有機溶剤を極力あるいは全く含まず、造膜性が良好で、耐水性、耐摩耗性、耐ブリードアウト性に優れる表皮層を形成する繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物及びそれを用いた人工皮革を提供することができる。
Claims (6)
- 酸価が5〜40であるポリウレタン樹脂で、且つ乳化剤を含有しない水性ポリウレタン樹脂分散体(A)及び該分散体(A)と反応する架橋剤(B)を含有してなり、前記水性ポリウレタン樹脂分散体(A)の粒子径が200nm以下であり、かつ前記架橋剤(B)が、ポリイソシアネート化合物(B−1)またはポリカルボジイミド化合物(B−2)である繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物。
- 水性ポリウレタン樹脂分散体(A)と架橋剤(B)が反応してなる樹脂の流動開始温度が140℃以上である請求項1に記載の繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物。
- 会合型増粘剤(C)を含有する請求項1または2に記載の繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物。
- レベリング剤(D)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物。
- 架橋剤(B)が有機溶剤を含有せず、水性ポリウレタン樹脂分散体(A)に分散性を有する化合物あるいはその水分散体からなる請求項1〜4のいずれかに記載の繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の繊維積層体表皮層形成用水性樹脂組成物を用いた人工皮革。
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