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JP3969966B2 - 光起電力素子の製造方法 - Google Patents

光起電力素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光起電力素子の製造方法に関し、特に光起電力素子の集電電極部の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光起電力素子を応用した太陽電池は、火力発電、水力発電などの既存の発電方法の問題を解決する代替エネルギー源として注目されている。
【0003】
太陽電池の種類としては、結晶系太陽電池、アモルファス系太陽電池、化合物半導体太陽電池等、多種にわたる太陽電池が研究開発されているが、中でもアモルファスシリコン太陽電池は、変換効率こそ結晶系の太陽電池に及ばないものの、大面積化が容易で、かつ光吸収係数が大きく、また薄膜で動作するなどの結晶系太陽電池にはない優れた特徴をもっており、将来を有望視されている太陽電池の一つである。
【0004】
アモルファスシリコン太陽電池の構成としては、例えば、ステンレス等からなる導電性基板の表面上に、裏面電極、半導体層、受光面電極を順次積層した構造が公知である。この受光面電極は、例えば透明導電性酸化物によって形成される。
【0005】
さらに、前記受光面電極の表面上には、電流を集める為の細い金属からなる集電電極が配設される。前記集電電極は、太陽電池の光入射面側に設けられるため、その面積はいわゆるシャドーロスとなり、太陽電池の発電に寄与する有効面積が減少することとなる。この理由から、前記集電電極は、比較的細い櫛状に形成されることが多い。すなわち、前記集電電極は、通常細くかつ長い形状となる為、電気抵抗が小さくなるような材料選定、及び断面形状の設計が要求される。
【0006】
また更に、前記集電電極の表面上には、前記集電電極によって集められた電流を集めるために、バスバー電極と呼ばれる電極が形成される。バスバー電極は、前記集電電極に比べてより太い金属で作成される。
【0007】
上述の電極の例としては、特開平8−236796号公報に金属ワイヤを使用した集電電極が開示されている。図6にその一例の概略図を示す。尚、図6(a)は光起電力素子の平面図、図6(b)は図6(a)中のA−A’断面図である。
【0008】
図6において、601は光起電力素子であり、例えばステンレス基板上に裏面電極層、半導体層、透明電極層が順次形成されており、602は光起電力素子エッジでのショートの影響を回避する為に透明電極層を除去したエッチングラインである。エッチングライン602で囲まれた領域は通常アクテイブエリアと呼ばれ、発電に寄与する領域である。603は絶縁部材であり、604は集電電極を示している。集電電極604は、直径50〜300μmの金属ワイヤ605の周囲を導電性ペースト606等でコーテイングしたものが、透明電極層上に圧着されている。ここで、導電性ペーストとしては、光起電力素子面のピンホール等に直接接触しても出力低下につながるようなショートの無き事、及び金属マイグレーションを防止するという観点から、比抵抗10-1〜102Ωcm程度のペーストが用いられる。607はさらなる集電の為のバスバー電極と呼ばれるもので、集電電極604で集められた電流を光起電力素子外に取り出す目的で設置されている。
【0009】
このような従来構成で、太陽電池の変換効率としては8〜10%程度が実用レベルであるが、近年の太陽電池の変換効率の向上は目覚しいものがあり、とりわけ変換効率を決定するパラメータの中でも、短絡電流(いわゆるIsc)が向上し、10%を超えるような半導体膜が開発されている。
【0010】
しかしながら、変換効率が向上し電流量が増大した場合の大きな問題点は、電流が通過する電極部分での発電ロスが電流量の2乗に比例して増加してしまう点である。すなわち、高効率の半導体膜ができたとしても、発生した電流を取り出す際に、抵抗の大きい部分での発電ロスが大きくなってしまい、本来半導体層の持つ実力の変換効率が大幅にダウンしてしまう点である。従って太陽電池においては、その発生電流量に応じて、適宜集電形態を考慮していく必要がある。
【0011】
先の特開平8−236796号公報で提案した集電電極形態においては、とりわけバスバー電極とワイヤ電極の接合部が、前述の理由によりカーボンペーストのような比抵抗の比較的高い材料で形成されている為、抵抗が高い部分であった。そのため、電流量の増大に伴い、接合部での抵抗ロスが大きくなり、所望の変換効率が出ないという問題がある。
【0012】
この問題を解決する手段としては、例えばバスバー電極とワイヤ電極の接合部にだけ低抵抗の導電性ペースト等で接続し、抵抗ロスを低減するといった技術が着目されている。
【0013】
このような光起電力素子の一例の概略図を図7に示す。尚、図7(a)は光起電力素子の平面図、図7(b)は図7(a)中のA−A’断面図である。
【0014】
図7と図6を比較すると、図7では金属ワイヤ605とバスバー電極607の接続部のカーボンペーストが除去され、代わりに銀ペーストのような低抵抗の導電性ペースト701で接続されている。この場合には、銀ペーストの比抵抗がカーボンペーストの比抵抗の約1/1000である為、抵抗ロスは激減し、所望の変換効率を達成することが可能である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記図7で示される光起電力素子を製造しようとした場合には、以下に詳述する種々の問題点が生ずる場合がある。
【0016】
図8に、その問題点を説明する図を示している。図8(a)は低抵抗の導電性ペースト701をドッテイングした後の様子を示しており、図8(b)は、金属バスバーを載置して加熱加圧硬化した後の様子を示している。
【0017】
通常銀ペーストをドッテイングする際には、公知のデイスペンサー装置を用いて図8(a)のような直円形状でドッテイングを行った後、図8(b)のように金属バスバー607を載置し、加熱加圧処理を行う。
【0018】
しかしながら、金属ワイヤ上にドッテイングするという特殊な場合においては、図8(b)で示すように加熱加圧処理の際に、金属ワイヤにそって導電性ペーストが流れ出してしまい、金属バスバー607からはみ出してしまうという現象が起きる場合がある。
【0019】
導電性ペーストが金属バスバーからはみ出した場合の問題点としては、以下が挙げられる。
【0020】
▲1▼.導電性ペーストがアクテイブエリア(エッチングライン602で囲まれた領域)に侵入し、光起電力素子面のピンホール等に直接接触した場合には、短絡故障が起こり、初期変換効率が出なくなってしまう。仮に、初期にたまたまピンホール等に接触せずに故障が起こらなかったとしても、長年使用している間に導電性ペーストの金属フィラに起因して金属マイグレーションが起こり、同様の短絡故障が起こってしまう。特に、薄膜系の太陽電池においては半導体膜が非常に薄い為に、この短絡故障は起こりやすくなってしまう。
【0021】
▲2▼.加圧する装置の圧力印加面が導電性ペーストで汚れてしまった場合、1枚処理する毎に、印加面に付着した銀ペーストを除去する作業が発生してしまう。
【0022】
このような導電性ペーストのはみ出しを起こさないようにする方策としては、単純には図8(a)で示す銀ペースト701の塗布円の直径を小さくすることが挙げられる。具体的には、導電性ペーストを塗布する直円ノズルの直径を小さくすることによって塗布円を小さくし、はみ出しを抑制するという手法である。この手法を使った場合には、確かにはみ出しをなくすことは可能である。
【0023】
しかしながら、塗布円を小さくした場合には、金属ワイヤに導電性ペーストを命中させにくくなるという弊害が生じる場合がある。ドッテイングは、デイスペンサーロボットを使用して一定間隔に銀ペーストを塗布していく必要があるが、ワイヤの位置精度、素子自体の位置精度、塗布位置精度等の関係で、塗布円が小さければ小さい程、ワイヤに命中する確率が低減し、実際に命中しない場合も生じてしまう。そうすると、金属ワイヤと金属バスバーとを導電性ペーストで接合することができず、接合不良を起こし、これもまた初期変換効率が出ないという問題が生じる場合がある。
【0024】
以上の問題点に鑑み、本発明は、金属ワイヤを使用したことによって発生した特有の問題である、導電性ペーストの金属バスバーからのはみ出しと、ワイヤの布線精度による塗布安定性の両方の問題を、一挙に解決する塗布方法を提供することを目的としたものであり、それによって、安定した光起電力素子の製造を実現しようとしたものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究開発を重ねた結果、以下のような光起電力素子の製造方法が最適であることを見出した。
【0026】
すなわち、本発明は、光起電力素子の表面に配置される金属ワイヤからなる集電電極と、金属バスバーとを有し、該集電電極と該金属バスバーとが導電性ペーストにより接続されてなる光起電力素子の製造方法において、前記集電電極上に、前記金属ワイヤの長手方向と直交方向に長手半径、平行方向に短手半径を有する楕円形状の導電性ペーストをドッテイングする工程と、前記導電性ペースト上に前記金属バスバーを載置する工程と、前記金属バスバーを加圧しながら加熱して前記導電性ペーストを硬化させる工程と、を有する光起電力素子の製造方法を提供することを目的とする。
【0027】
前記ドッテイング工程において、楕円形状ノズルから導電性ペーストを吐出させることにより前記ドッテイングを行うことが好ましい。また、前記ドッテイング工程において、ノズルを前記光起電力素子に対して相対的に移動させながら、該ノズルから導電性ペーストを吐出させることにより前記ドッテイングを行うことが好ましい。前記集電電極は、導電性被覆層により被覆された金属ワイヤであることが好ましい。前記ドッテイング工程の前に、導電性ペーストがドッテイングされる箇所の前記導電性被覆層を除去する工程をさらに有することが好ましい。前記導電性ペーストは、導電性粒子と高分子樹脂とからなることが好ましい。
【0028】
本発明の製造方法によれば、ドッテイングされる導電性ペーストが金属ワイヤの長手方向と直交方向に長手半径を持つため、金属ワイヤの位置にある程度のばらつきが生じている場合であっても塗布が命中するようになり、接続安定性を向上することができる。また、ドッテイングされる導電性ペーストが金属ワイヤの長手方向と平行方向に短手半径を持つことによって、導電性ペーストが金属バスバーからはみ出すことを防止でき、光起電力素子の初期特性と、品質を向上することができる。
【0029】
また、上記楕円形状を実現するために、楕円形状のノズルを使用することにより、非常に速いタクトでドッテイングが可能になり、生産性を向上できると共に、塗布量を容易にコントロールすることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施態様例を詳細に説明する。
【0031】
(楕円形状及びノズル)
まず、本発明のドッテイングの楕円形状について、図1を用いて詳述する。
図1(a)は本発明のドッテイング終了後の様子を示しており、図1(b)はA部の拡大図を示している。
【0032】
図1中、101は光起電力素子の外周縁、102はエッチングライン、103は絶縁部材、104は金属ワイヤ105を導電性被覆層106で被覆してなる集電電極、107は導電性ペーストを表している。
【0033】
導電性ペースト107は、拡大図でも明らかなように楕円の形状であって、金属ワイヤ105と直交する方向に長手半径(X)、金属ワイヤ105と平行な方向に短手半径(Y)を持つようにドッテイングされている。導電性ペーストの形状をこのようにすることによって、金属ワイヤに直接接触する導電性ペーストを少なくすることができるので、金属ワイヤ(集電電極)に沿って流れ出す導電性ペーストの量も少なくなり、そのはみ出しを抑制することができる。また、好ましくは金属ワイヤと直交する方向に十分広い幅をとれば、位置精度に左右されることなく確実に金属ワイヤ上に塗布が可能となる。
【0034】
長手半径Xと短手半径Yの絶対値、相対比については、特に制限は無く、使用する金属ワイヤ径、金属ワイヤ間隔、絶縁部材103の幅、金属ワイヤと接続を形成する金属バスバーの幅、導電性ペーストの塗布量等の他のパラメータに応じて適宜選択することができる。
【0035】
上記塗布形状は公知のデイスペンサー装置を用いてドッテイングすることで形成可能である。導電性ペーストの吐出部分であるノズルについては適宜選択が可能である。
【0036】
例えば、細めの直円状のノズルを用いて一筆書きのように線状に塗布することで、すなわち、ノズルあるいは被着弾物である光起電力素子を移動させながら、ノズルから導電性ペーストを吐出させることにより、楕円塗布形状を実現する方法がある。ノズルを光起電力素子に対して相対的に移動させればよい。しかしながら、直円状のノズルで線状に塗布する方法は、塗布に費やす時間が長くなって生産タクトが落ちてしまったり、あるいは、できあがりの塗布厚みがノズル径に対応した厚みになってしまうので、比較的塗布量が多くなってしまい、余剰塗布になってしまう等の欠点もある為、図2で示すような楕円ノズルを使用してドッテイングすることがより好適である。
【0037】
楕円ノズルは、楕円形状の塗布が一発塗布で可能なので生産タクトを上げることができる。かつ塗布厚みがノズル径によらないので、余剰塗布にならず、少量塗布を実現することができる。これらの理由から、楕円ノズルは本発明の製造方法に最も好適である。
【0038】
(導電性ペースト)
本発明に使用する導電性ペースト107は、金属ワイヤと金属バスバーの間に配され、金属ワイヤから金属バスバーに流れ込む電流の経路として機能すると同時に、機械的な接着機能を有していることが好ましい。従って、非常に低抵抗であって、かつ金属との接着性が良好であることが好まれる。
【0039】
導電性ペーストの比抵抗としては、ワイヤから電流が流れ込んだ際に、電力ロスが無視できる程度の抵抗であることが必要である。電力ロスを無視できるレベルにする為には、具体的に1×10-5Ωcm以上1×10-3Ωcm以下程度が好ましい。
【0040】
導電性ペーストは、導電性粒子と高分子樹脂とを所望の比率で分散して得られるものであり、適宜選択が可能である。
【0041】
導電性粒子としては、上記比抵抗を実現できる粒子であれば特に制限はなく、金、銀、ニッケル、銅等を主成分とする通常の金属フィラを用いることができる。中でも、できるだけ比抵抗を小さくする目的と、コスト的な兼ね合いから銀、銅、ニッケルを主成分とすることが好適である。
【0042】
また、高分子樹脂成分としては、上述のように金属との接着性が良好であるとともに、耐候性、耐湿性に優れた樹脂が好ましい。例えば、ウレタン、エポキシ、フェノール、ブチラール、アクリル、ポリエステル等が好適な材料として挙げられる。
【0043】
尚、導電性ペースト中には、金属との密着性を向上させる等の目的で、例えばカップリング剤のような添加剤が混入してあっても何等構わない。
【0044】
(集電電極)
本発明に係る集電電極104としては、例えば、図3に示したものが挙げられる。図3(a)の集電電極は、金属ワイヤ105が1種類の導電性被覆層106でコーテイングされた場合である。図3(b)の集電電極は、金属ワイヤ105が2種類の導電性被覆層、すなわち、第1被覆層106aと第2被覆層106bでコーテイングされた場合である。
【0045】
金属ワイヤ105は、線材として工業的に安定に供給されているものが好ましい。また、金属ワイヤ105の材質としては、比抵抗が10-4Ωcm以下の金属を用いることが望ましい。例えば、銅、銀、金、白金、アルミニウム、モリブデン、タングステン等の材料が、電気抵抗が低い為好適に用いられる。中でも、銅、銀、金が電気抵抗が低く、望ましい。また、前記金属ワイヤの表面に腐食防止、酸化防止、導電性樹脂との接着性向上、電気的導通の改良などの目的から、薄い金属層を形成しても良い。金属ワイヤの表面に設ける金属層としては、例えば銀、パラジウム、銀とパラジウムの合金、金などの腐食されにくい貴金属や、ニッケル、錫などの耐食性の良い金属が挙げられる。中でも、金、銀、錫が湿度などの影響を受けにくい為、金属層として好適に用いられる。金属ワイヤの表面に設ける金属層の形成方法としては、例えば、メッキ法、クラッド法が好適に用いられる。
【0046】
前記金属ワイヤの断面形状は、円形であっても矩形であってもよく、所望に応じて適宜選択される。前記金属ワイヤの直径は、電気抵抗ロスとシャドウロスの和が最小となる様に設計して選択される値である。具体的には、例えばJIS−C−3202に示されるエナメル線用の直径25μmから1mmまでの銅線が好適に用いられる。より好ましくは、その直径を25μm以上200μm以下とすることで光電変換効率の良い光起電力素子が得られる。25μmより細い場合は、ワイヤが切れやすく製造が困難となり、また、電気ロスも大きくなる。また200μmより太い場合は、シャドウロスが大きくなったり、または光起電力素子表面の凹凸が大きくなって表面被覆層に使用するEVA(エチレンビニルアセテート)などの充填材を厚くしなければならなくなる。
【0047】
前記金属ワイヤは、公知の伸線機によって所望の直径に成型して作られる。伸線機を通過した金属ワイヤは硬質であるが、伸びやすさや曲げやすさなどは所望の特性に応じて公知の方法でアニールし、軟質にしてもよい。
【0048】
一方、図3(a)で示す導電性被覆層106は単層構成の被覆層であり、熱硬化性導電性接着剤あるいは熱可塑性導電性接着剤により形成される。これらは熱圧着工程により集電電極本体と光起電力素子基板と機械的、電気的に接続する機能を持つ。
【0049】
また、図3(b)で示す導電性被覆層106は、2層構成の被覆層であり、第1被覆層106aと第2被覆層106bから成る。第1被覆層106aは熱硬化性導電性接着剤により形成され、電極金属の保護、機械的、電気的な接続を行う。また、電極金属によるマイグレーションを防止し、さらに集電電極から光起電力素子の欠陥部分に流れ込む電流を抑制する機能を持つ。第2被覆層106bもまた熱硬化性導電性接着剤により形成され、熱圧着工程により集電電極本体と光起電力素子基板と機械的、電気的に接続する機能を持つ。第2被覆層106bを構成する導電性接着剤は被覆後に未硬化の状態としておき、接着工程を経た後、処理をするほうが望ましい。
【0050】
導電性被覆層106は、導電性接着剤から成り、導電性粒子と高分子樹脂とを分散して得られる。これらの導電性接着剤の比抵抗としては、光起電力素子によって発生する電流を集電するのに無視しうる抵抗であり、かつ、シャントが生じない様に適度な抵抗値とすることが必要であり、具体的には0.1Ωcm以上100Ωcm以下程度が好ましい。0.1Ωcmより小さい場合はシャント封止機能が少なくなり、100Ωcmより大きい場合は電気抵抗ロスが大きくなる為である。
【0051】
導電性粒子は、導電性を付与するための顔料であり、その材料としては、例えば、カーボンブラック、グラファイトなどやIn23、TiO2、SnO2、ITO、ZnO及び前記材料に適当なドーパントを添加した酸化物半導体材料等が好適に用いられる。これらの材料はマイグレーション性が少ない為、例えば薄膜系の半導体層を有する光起電力素子においても使用可能である。特に、カーボンブラック及びグラファイトを導電性粒子として使用した場合には、接着剤自体が黒色化する為、後述する製造工程での光ビームの吸収がよくなり、金属ワイヤの露出が容易となる為、好適である。
【0052】
前記導電性粒子の粒径は、形成する前記被覆層の厚みよりも小さくする必要があるが、小さすぎると粒子同士の接触点での抵抗が大きくなる為、所望の比抵抗が得られなくなる。このような事情から前記導電性粒子の平均粒径としては0.02μm以上15μm以下が好ましい。また、異なる2種類以上の導電性粒子を混合して、比抵抗や導電性樹脂内での分散度を調節してもよい。
【0053】
前記導電性粒子と前記高分子樹脂とは、所望の比抵抗を得る為、好適な比率で混合されるが、導電性粒子を増加すると比抵抗は低くなるが樹脂の比率が少なくなる為、塗膜としての安定性は悪くなる。また、高分子樹脂を増加すると導電性粒子同士の接触が不良となり、高抵抗化する。従って、良好な比率は、用いる高分子樹脂と導電性粒子及び所望の物性値によって適宜選択されるものである。具体的には、導電性粒子が5体積%から95体積%とすることで良好な比抵抗が得られる。
【0054】
高分子樹脂としては、金属ワイヤに塗膜を形成しやすく、作業性に優れ、柔軟性があり、耐候性が優れた樹脂が好ましい。このような特性をもつ高分子樹脂としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂がある。
【0055】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン、エポキシ、フェノール、ポリビニルホルマール、アルキド樹脂あるいはこれらを変性した樹脂等が好適な材料として挙げられる。とりわけ、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂はエナメル線用絶縁被覆材料として用いられており柔軟性は生産性の面で優れた材料である。
【0056】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール、フェノキシ、ポリアミド、ポリアミドイミド、メラミン、ブチラール、アクリル、スチレン、ポリエステル、フッ素などが好適な樹脂として挙げられる。とりわけ、ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が、柔軟性、耐湿性、接着性の面で優れた材料であり、光起電力素子の集電電極材料として好適に用いられる。
【0057】
尚、導電性接着剤中には、金属との密着性を向上させる等の目的で、例えばカップリング剤のような添加剤が混入してあっても何ら構わない。
【0058】
導電性被覆層106の厚みとしては、適宜選択して構わないが、5μm以上30μm以下の範囲が好ましい。5μmより薄い場合には、均一にコーテイングすることが難しくピンホールが発生しやすくなると同時に、接着層としての機能が不足することがある。また、30μmより厚い場合には、シャドーロスが極端に大きくなってくる。
【0059】
(金属バスバー)
本発明に係る金属バスバーは、集電電極を流れる電流を更に一端に集める為の集電部である。このような観点から、金属バスバーに使用する材料としては、比抵抗が低く、かつ工業的に安定して供給されている材料が望ましい。
【0060】
このような材料としては、加工性が良く、安価な銅が好適に用いられる。また、銅を用いる場合には、腐食防止、酸化防止等の目的で、表面に薄い金属層を設けてもよい。この表面金属層としては、例えば、銀、パラジウム、パラジウムと銀の合金、または金などの腐食されにくい貴金属や、ニッケル、半田、錫などの耐食性の良い金属が好適に用いられる。表面金属層の形成方法としては、例えば作成が比較的容易な蒸着法、メッキ法、クラッド法が好適に用いられる。
【0061】
金属バスバーの厚みは、50μm以上200μm以下が好ましい。50μm以上とすることで、光起電力素子の発生電流密度に十分対応できるだけの断面積を確保できるとともに、実質上機械的接合部材として使用することができる。一方、金属バスバーは厚くする程、抵抗ロスを小さくすることができるが、200μm以下とすることで表面被覆材によるなだらかな被覆が可能となる。
【0062】
金属バスバーは、光起電力素子の形態によっては何枚設けても良く、特に1枚と限定されるものではない。また、ここで用いる金属バスバーは、設ける対象となる光起電力素子の長さとほぼ同程度の長さを有するものが好ましい。
【0063】
(光起電力素子)
本発明における光起電力素子としては特に何ら限定はなく、単結晶、薄膜単結晶、多結晶、薄膜多結晶、アモルファスの太陽電池に適用できる他、例えば、ショットキー型の太陽電池にも適用可能である。本発明は、導電性ペーストがはみ出した際に金属マイグレーションの影響を受けやすい薄膜系の光起電力素子に特に有効である。
【0064】
ここでは代表例として、金属ワイヤが集電電極としてよく使用されるアモルファスシリコン太陽電池について詳述する。その一例の断面図を図4に示す。
【0065】
図4(a),(b),(c)は、基板と反対側の表面から光入射させるタイプのアモルファスシリコン系太陽電池(光起電力素子)400の模式的断面図である。図において、401は基板、402は下部電極、403、413、423はn型半導体層、404、414、424はi型半導体層、405、415、425はp型半導体層、406は透明導電膜からなる上部電極、407は集電電極が用いられるグリッド電極を表す。
【0066】
基板401は、アモルファスシリコンのような薄膜の太陽電池の場合においては、半導体層を機械的に支持する部材であり、かつ電極としても使われる。従って、基板401は、半導体層を成膜する時の加熱温度に耐える耐熱性が要求されるが導電性のものでも電気絶縁性のものでもよい。
【0067】
導電性の基板の材料としては、例えばFe、Ni、Cr、Al、Mo、Au、Nb、Ta、V、Ti、Pt、Pb、Ti等の金属またはこれらの合金、例えば真鍮、ステンレス鋼等の薄板及びその複合体やカーボンシート、亜鉛メッキ鋼板等が挙げられる。電気絶縁性の基板の材料としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ等の耐熱性合成樹脂のフィルムまたはシート又はこれらとガラスファイバー、カーボンファイバー、ホウ素ファイバー、金属繊維等との複合体、及びこれらの金属の薄板、樹脂シート等の表面に異種材質の金属薄膜及び/またはSiO2、Si34、Al23、AlN等の絶縁性薄膜をスパッタ法、蒸着法、鍍金法等により表面コーティング処理を行ったもの及び、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。
【0068】
下部電極402は、半導体層403、404、405、413、414、415、423、424、425で発生した電力を取り出す為の一方の電極であり、半導体層403に対してはオーミックコンタクトとなる仕事関数を持つことが要求される。材料としては例えば、Al、Ag、Pt、Au、Ni、Ti、Mo、W、Fe、V、Cr、Cu、ニクロム、SnO2、In23、ZnO、ITO等のいわゆる金属体または合金及び透明導電性酸化物(TCO)等が用いられる。下部電極の表面は平滑であることが好ましいが、光の乱反射を起こさせる場合にはテクスチャー化してもよい。また、基板401が導電性である場合、下部電極を設けなくても良い。下部電極402は、例えば、メッキ、蒸着、スパッタ等の公知の方法で形成することができる。
【0069】
アモルファス半導体層は、n層403、i層404、p層405を一組としたシングル構成(図4の(a))だけでなく、pin接合またはpn接合を2組または3組重ねたダブル構成(図4の(b))やトリプル構成(図4の(c))も好適に用いられる。特に、i層である404、414、424を構成する半導体材料としては、a−Siの他に、a−SiGe、a−SiC等のいわゆるIV族及びIV族合金系アモルファス半導体が挙げられる。アモルファス半導体層の成膜方法としては、例えば、蒸着法、スパッタ法、高周波プラズマCVD法、マイクロプラズマCVD法、ECR法、熱CVD法、LPCVD法等公知の方法を所望に応じて用いる。成膜装置としては、バッチ式の装置や連続成膜装置等が所望に応じて使用できる。
【0070】
上部電極406は、アモルファスシリコンのようにシート抵抗が高い場合必要であり、かつ、光入射側に位置する為に透明であることが必要である。かかる上部電極406の材料としては、例えば、SnO2、In23、ZnO、CdO、CdSnO4、ITO等の金属酸化物が挙げられる。
【0071】
(製造方法)
次に、本発明に係る光起電力素子の製造方法の一例を、アモルファスシリコン太陽電池の場合を例に挙げて図5(a)〜(f)を用いて詳述する。図5(a)〜(f)は光起電力素子を光入射側から見た場合の正面図である。
【0072】
(a)基板上に下部電極、光起電力層(半導体層)および上部電極(透明導電膜)が積層された光起電力素子501を任意の大きさで準備する。
【0073】
(b)最表面に位置する透明導電膜を除去したライン(所謂エッチングライン)502を形成する。これは、光起電力素子の周辺に存在する短絡箇所が、素子効率に影響を及ぼさないようにする場合の処理であって、短絡箇所がない場合や短絡の程度が無視できるような場合には特に設ける必要はない。
また、光起電力素子501の端部に、例えば両面粘着テープのような絶縁部材503を配置する。絶縁部材503は、後に集電電極や金属バスバーが、光起電力素子501の短絡部と接触してショートすることを防止する目的で配置されるものであり、ショートの危険性がない場合については、エッチングライン同様設ける必要はない。
【0074】
(c)次に、導電性被覆層を有する金属ワイヤからなる集電電極504を適当なピッチ間隔で透明導電層上に載置する。この時点では、光起電力素子の端部の絶縁部材503上のみで集電電極504は固定されている。
【0075】
(d)さらに、後工程で金属バスバーを載置する位置の導電性被覆層を除去する為に、例えばレーザー光を照射することによって、金属ワイヤを露出(505部)させる。
レーザー光の出力強度は、小さすぎると導電性被覆層を除去できず、逆に大きすぎると絶縁部材503に損傷が起きたり、金属ワイヤが溶融してしまう為、適宜選択することによって、導電性被覆層だけが選択的に除去され、金属面を綺麗に露出することが可能である。
上記除去工程は、図5に示すように光起電力素子上で行うことができるが、先に別の場所で除去を行ったワイヤを光起電力素子上に貼り付けることも可能である。
【0076】
(e)さらに、金属ワイヤが露出した部分505上に、前述の方法で導電性ペースト506を楕円形状にドッテイングする。
【0077】
(f)さらに、導電性ペースト506上に、金属バスバー507を配置する。バスバーを載置した後は、金属バスバー部を加圧しながら加熱して導電性ペーストを硬化させ、接続部を形成すると同時に、光起電力素子全面を加圧しながら加熱することによって、金属ワイヤ周囲の導電性被覆層を硬化して透明導電層上に固定する。
【0078】
以上の工程により、導電性ペースト506のはみ出しを抑制するとともに、金属ワイヤの位置精度に左右されることなく確実に金属ワイヤ上に導電性ペーストを塗布することができ、光起電力素子の初期特性と品質を向上することができる。
【0079】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0080】
まず、実施例及び比較例で使用した集電電極について説明する。
【0081】
(集電電極の作成)
集電電極としては、図3(b)で示すように金属ワイヤの周囲に導電性被覆層が2層コートされたものを作成した。
【0082】
金属ワイヤ105として、直径100μmの銀クラッド銅ワイヤ(直径98μmの周囲に銀を1μmの厚みでクラッドしたもの)を準備した。
【0083】
次に、第1被覆層106aとして、カーボン入りウレタン系樹脂ペースト(自社製)をワイヤ105の周囲に5μm±1μmの厚みで塗布した。第1被覆層については、塗布後にIRオーブンにて標準硬化条件である280℃1分の履歴を通すことによって、完全な硬化膜を作成した。
【0084】
次に、別のカーボン入りウレタン系樹脂ペースト(自社製)を使用して、第2被覆層106bを形成した。第2被覆層は、20μm±1μmの厚みで塗布を行い、120℃1分の条件で乾燥した。この条件は、ペースト中に存在する硬化剤の解離温度以下であって、第2被覆層は単に溶剤が揮発してタックが無くなった状態にある。
【0085】
このようにして、直径150μmの集電電極を作成した。
【0086】
(実施例1)
本実施例では、図4(c)に示す層構成でpin型トリプル構成のアモルファス太陽電池(光起電力素子)Aを作成した。
【0087】
まず、十分に脱脂、洗浄したSUS430BA基板401を不図示のDCスパッタ装置に入れAgを450nm堆積し、その後ZnOを1000nm堆積して下部電極402を形成した。基板を取り出し、不図示のマイクロ波プラズマCVD成膜装置に入れ、n層403にシリコン層、i層404にシリコンゲルマニウム層、p層405にシリコン層の順でボトム層を形成した。次に、同様にしてn層413にシリコン層、i層414にシリコンゲルマニウム層、p層415にシリコン層の順でミドル層を順次形成し、更に、n層423、i層424、p層425の順で全てシリコン層のトップ層を形成し、半導体層を堆積した。その後、不図示のスパッタ装置に入れ、反射防止効果を兼ねた機能を有する透明導電膜406としてITOを70nm成膜した。
【0088】
以上のようにして下部電極、光起電力層(半導体層)および上部電極(透明導電膜)を積層した太陽電池基板(光起電力素子)を用いて、図5に示すような光起電力素子を製造した。
【0089】
まず、太陽電池基板501(図5(a))を、大きさは30cm×30cmでセルの有効面積が900cm2となるように塩化第2鉄を主成分とするエッチングペーストと市販の印刷機を用い不要部分の透明導電膜を除去した。次に有効面積外であって、対向する2辺の位置に図5(b)で示すような絶縁部材503を設けた。絶縁部材503としては、厚み100μmのポリイミド基材両面粘着テープを添付することによって形成した。
【0090】
次に前述の集電電極ワイヤを30cm程度の長さに切断し、図5(c)のように載置した。集電電極ワイヤ504は、布線機を使用して6mmの間隔で50本載置し、その両端部分は粘着テープの粘着力により固定した。布線精度はσ値で±0.2mmであった。
【0091】
その後、図5(d)に示すように絶縁テープ上に存在するワイヤの直上からレーザー光を照射し、2mm長だけワイヤの被覆層を除去し、銀クラッド銅ワイヤを露出させた。このとき、レーザーとしてはQスイッチYAGレーザーを使用した。レーザーの照射条件としては、出力30W、パルス周波数12kHz、スキャン速度1200mm/秒で行った。
【0092】
次に、銀クラッドワイヤが露出した部分505に、図5(e)のように市販の銀ペーストをドッテイングしていった。ドッテイングは、市販のロボットデイスペンサー装置を用い、楕円ノズルを用いて自動吐出した。使用した楕円ノズルは、内径が長手半径1mm、短手半径100μmのものを使用した。また、ドッテイング量としては、1箇所につき0.5mgとなるようにデイスペンサー装置の条件を調節して行った。このようにしてドッテイングを行った場合、塗布形状としては、金属ワイヤと直交方向に直径約2.1mm、金属ワイヤと平行方向に直径約400μmの楕円形状506が観察された。
【0093】
さらに、ドッテイングをおこなった部分の上から両面粘着テープと平行に金属バスバーを図5(f)のように載置した。金属バスバー507としては、厚み100μmの銀メッキ銅を用いた。この状態で、全体を不図示の加熱加圧装置により圧着することによって、アクテイブエリア内においては集電電極ワイヤをITO上に接着固定し、かつ、金属バスバー部ではドッテイングした銀ペーストが硬化し、バスバーとワイヤーを接着固定することができた。
【0094】
以上の工程によって、アモルファス太陽電池(光起電力素子)Aを10個作成した。
【0095】
完成したアモルファス太陽電池(光起電力素子)Aに対して、以下の評価を行った。
【0096】
まず、10個のアモルファス太陽電池A、すなわち1000個の接続箇所に対して、銀ペーストが金属バスバーからはみだしていないかどうかをCCD顕微鏡で外観検査した。その結果、銀ペーストのはみ出しが観察された箇所は1000箇所中0箇所であり、全くはみ出しは見られなかった。
【0097】
次に、AM1.5グローバルの太陽光スペクトルで100mW/cm2の光量の擬似太陽光源(以下シミュレータと呼ぶ)を用いて、変換効率を測定したところ、10枚とも約12.8%±0.1%という所望の変換効率が得られた。
【0098】
さらに、上記測定後、金属バスバーとワイヤが接続されているかどうかを確認する為に、金属バスバーをワイヤから剥離していき、接続状態を1000箇所観察した。その結果、1000箇所全てにおいて、ワイヤとバスバーが銀ペーストで接合されていることが分かった。
【0099】
以上の結果より、本発明の製造方法によって、銀ペーストのはみ出しが全くなく、かつ安定した接続が確立できることが明らかとなった。
【0100】
(比較例1)
比較例1では、アモルファス太陽電池(光起電力素子)Bを10個作成した。
【0101】
比較例1では、楕円ノズルを使用する代わりに、直円ノズルを使用して銀ペーストを図8(a)の701のような円形状にドッテイングした点だけが実施例1とは異なっており、その他は実施例1と同様に作成した。
【0102】
直円ノズルとしては、半径が1mmのものを使用したところ、できあがりの塗布形状としては直径2.1mmの円形状が観察された。尚、ドッテイング量としては、実施例1と同様0.5mgで行った。
【0103】
完成したアモルファス太陽電池(光起電力素子)Bに対して、実施例1と同様の評価を行った。
【0104】
まず、10個のアモルファス太陽電池B、すなわち1000個の接続箇所に対して、銀ペーストが金属バスバーからはみだしていないかどうかをCCD顕微鏡で外観検査した。その結果、銀ペーストのはみ出しが観察された箇所は1000箇所中1000箇所であり、全ての接続箇所においてはみ出しが観察された。
【0105】
次に、前述のシミュレータを用いて、変換効率を測定したところ、5枚ほどは、約12.8%±0.1%という所望の変換効率が得られたが、残り5枚については、変換効率の高いものから12.6%、12.4%、12.4%、12.2%、12.0%であった。このような変換効率のバラツキは、特性が良かった5枚については、たまたまはみ出した銀ペーストがアクテイブエリアのピンホール部に接触しなかったこと、及び、逆に特性の悪い5枚については、シャント抵抗の値が低く、アクテイブエリアのピンホール部に接触したことにより、効率が低下したことにより生じたものと予想される。
【0106】
さらに、上記測定後、金属バスバーとワイヤが接続されているかどうかを確認する為に、金属バスバーをワイヤから剥離していき、接続状態を1000箇所観察した。その結果、接続部に関しては1000箇所全てにおいて良好で、ワイヤとバスバーが銀ペーストで接合されていることが分かった。
【0107】
この結果より、大きめの円形状でドッテイングを行った場合には、接合は安定して形成できるものの、銀ペーストのはみ出しが生じてしまい、短絡故障が起きてしまうことが明らかとなった。
【0108】
(比較例2)
比較例2では、アモルファス太陽電池(光起電力素子)Cを10個作成した。
【0109】
比較例2では、半径150μmの直円ノズルを使用して銀ペーストを円形状にドッテイングした点だけが比較例1とは異なっており、その他は比較例1と同様に作成した。
【0110】
直円ノズルとして半径が150μmのものを使用したところ、できあがりの塗布形状は比較例1のものより小さい直径約350μmの円形状が観察された。尚、ドッテイング量としては、比較例1と同様0.5mgで行った。
【0111】
完成したアモルファス太陽電池Cについて、比較例1と同様の評価を行った。
【0112】
まず、10個のアモルファス太陽電池C、すなわち1000個の接続箇所について、銀ペーストが金属バスバーからはみだしていないかどうかをCCD顕微鏡で外観検査した。その結果、銀ペーストのはみ出しが観察された箇所は1000箇所中0箇所であり、全ての接続箇所においてはみ出しが観察されなかった。
【0113】
次に、前述のシミュレータを用いて、変換効率を測定したところ、10枚の変換効率は、12.6%、12.5%、12.3%、12.3%、12.1%、11.9%、11.8%、11.8%、11.6%、11.3%であり、所望の変換効率が達成できたのは1枚も存在しなかった。特性のなかでもシリーズ抵抗が高かったことから、接合がうまくできていない為に抵抗が上昇したことが原因であると考えられる。
【0114】
確認の為に、金属バスバーをワイヤから剥離して、1000箇所の接続状態を観察したところ、10枚全てにおいて、全く接続されていない箇所が複数箇所見られた。
【0115】
比較例1と2の結果より、小さめの円形状でドッテイングを行った場合には、はみ出しは全く生じなくなるが、接合ができない箇所が多発し、安定した効率が得られないことが明らかとなった。
【0116】
また、図9に示すように、導電性被覆層を全面には有しないような集電電極104aであっても本発明を適用でき、導電性ペーストのはみ出しを防止することができる。
【0117】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の製造方法によって金属ワイヤと金属バスバーの接合状態が安定し、かつ導電性ペーストのはみ出しがない光起電力素子を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様例の楕円形状のドッテイングの一例を示す概略図である。
【図2】本発明で好適に用いられる楕円ノズルの模式的概略図である。
【図3】集電電極の模式的断面図である。
【図4】本発明に好適に用いられるアモルファスシリコン系太陽電池(光起電力素子)の一例の構成を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の光起電力素子の製造方法を説明する概略図である。
【図6】従来の光起電力素子の概略図である。
【図7】接合部に導電性ペーストを使用した光起電力素子の概略図である。
【図8】従来の光起電力素子のドッテイング部分の概略拡大図である。
【図9】本発明の楕円形状のドッテイングの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
101、400、501、601 光起電力素子(太陽電池基板)
102、502、602 エッチングライン
103、503、603 絶縁部材
104、104a、407、504、604 集電電極
105、505、605 金属ワイヤ
106、606 導電性被覆層
107、506、701 導電性ペースト
507、607 金属バスバー
401 基板
402 下部電極
403、413、423 n型半導体層
404、414、424 i型半導体層
405、415、425 p型半導体層
406 上部電極

Claims (6)

  1. 光起電力素子の表面に配置される金属ワイヤからなる集電電極と、金属バスバーとを有し、該集電電極と該金属バスバーとが導電性ペーストにより接続されてなる光起電力素子の製造方法において、
    前記集電電極上に、前記金属ワイヤの長手方向と直交方向に長手半径、平行方向に短手半径を有する楕円形状の導電性ペーストをドッテイングする工程と、
    前記導電性ペースト上に前記金属バスバーを載置する工程と、
    前記金属バスバーを加圧しながら加熱して前記導電性ペーストを硬化させる工程と、
    を有することを特徴とする光起電力素子の製造方法。
  2. 前記ドッテイング工程において、楕円形状ノズルから導電性ペーストを吐出させることにより前記ドッテイングを行うことを特徴とする請求項1に記載の光起電力素子の製造方法。
  3. 前記ドッテイング工程において、ノズルを前記光起電力素子に対して相対的に移動させながら、該ノズルから導電性ペーストを吐出させることにより前記ドッテイングを行うことを特徴とする請求項1に記載の光起電力素子の製造方法。
  4. 前記集電電極は、導電性被覆層により被覆された金属ワイヤであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光起電力素子の製造方法。
  5. 前記ドッテイング工程の前に、導電性ペーストがドッテイングされる箇所の前記導電性被覆層を除去する工程をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の光起電力素子の製造方法。
  6. 前記導電性ペーストは、導電性粒子と高分子樹脂とからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光起電力素子の製造方法。
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