図1は、本発明の実施の第1の形態である電子写真感光体1の構成を簡略化して示す部分断面図である。電子写真感光体1は、導電性材料から成るシート状の導電性支持体11と、導電性支持体11上に積層される層であって電荷発生物質を含有する電荷発生層12と、電荷発生層12の上にさらに積層される層であって電荷輸送物質を含有する電荷輸送層13とを含む。電荷発生層12と電荷輸送層13とは、感光層10である積層型光導電層14を構成する。すなわち、感光体1は積層型感光体である。
導電性支持体11は、感光体1の電極としての役割を果たすとともに他の各層12,13の支持部材としても機能する。導電性支持体11の形状は、本実施の形態ではシート状であるけれども、これに限定されることなく、円柱状、円筒状または無端ベルト状などであってもよい。
導電性支持体11を構成する導電性材料としては、たとえばアルミニウム、銅、亜鉛、チタンなどの金属単体、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの合金を用いることができる。またこれらの金属材料に限定されることなく、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンもしくはポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙またはガラスなどの表面に、金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、または導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどを用いることもできる。これらの導電性材料は所定の形状に加工されて使用される。
導電性支持体11の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理、または表面を粗面化するなどの乱反射処理を施してもよい。レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、感光体表面で反射されるレーザ光と感光体内部で反射されるレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥となることがある。導電性支持体11の表面に前述のような処理を施すことによって、この波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
導電性支持体11上に設けられる感光層10は、電荷発生層12および電荷輸送層13の少なくともいずれか一方に、下記一般式(1)で表されるアミン化合物を含有する。
前記一般式(1)において、符号R1およびR2は、同一でも異なってもよく、それぞれ、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル基または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。本発明において、ヘテロシクロアルキル基とは、炭素原子間にヘテロ原子を有するシクロアルカンから炭素原子に結合する水素原子を1個除いてできる1価基のことである。
前記一般式(1)において、符号R1およびR2で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基などの直鎖状アルキル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ネオペンチル基などの分岐鎖状アルキル基などが挙げられ、これらの中でも、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましい。符号R1およびR2で示されるアルキル基が有することのできる置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号R1およびR2で示されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などが挙げられ、これらの中でも、炭素原子数4または5のシクロアルキル基が好ましい。符号R1およびR2で示されるシクロアルキル基が有することのできる置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号R1およびR2で示されるヘテロシクロアルキル基としては、ピロリジニル基、ピペリジル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、イミダゾリジニル基、モルホリニル基などの、ヘテロ原子として、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子またはテルル原子など、好ましくは酸素原子、窒素原子または硫黄原子を有する炭素原子数2〜6、好ましくは炭素原子数4または5のヘテロシクロアルキル基などが挙げられる。符号R1およびR2で示されるヘテロシクロアルキル基が有することのできる置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号R1およびR2で示されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などのフェニルアルキル基、1−ナフチルメチル基、2−(1−ナフチル)エチル基などのナフチルアルキル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニルアルキル基が好ましく、炭素原子数7〜9のフェニルアルキル基がさらに好ましい。符号R1およびR2で示されるアラルキル基が有することのできる置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号R3およびR4は、同一でも異なってもよく、それぞれ、置換基としてアルコキシカルボニル基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアラルキル基を示す。
前記一般式(1)において、符号R3およびR4で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基などの直鎖状アルキル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ネオペンチル基などの分岐鎖状アルキル基などが挙げられ、これらの中でも、炭素原子数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基がさらに好ましい。
前記一般式(1)において、符号R3およびR4で示されるアルキル基が置換基として有することのあるアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、n−ヘキサノキシカルボニル基などの直鎖状アルコキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、4,4−ジメチルブトキシカルボニル基などの分岐鎖状アルコキシカルボニル基などが挙げられ、これらの中でも、炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基が好ましい。符号R3およびR4で示される、置換基としてアルコキシカルボニル基を有するアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、2−メトキシカルボニルエチル基などのアルコキシカルボニルアルキル基が挙げられ、これらの中でも、置換基として炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基を有する炭素原子数1〜8、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましい。
前記一般式(1)において、符号R3およびR4で示されるアルキル基は、アルコキシカルボニル基以外に他の置換基を有してもよい。符号R3およびR4で示されるアルキル基が有することのできるアルコキシカルボニル基以外の他の置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号R3およびR4で示されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などのフェニルアルキル基、1−ナフチルメチル基、2−(1−ナフチル)エチル基などのナフチルアルキル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニルアルキル基が好ましく、炭素原子数7〜9のフェニルアルキル基がさらに好ましい。符号R3およびR4で示されるアラルキル基が有することのできる置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号nは、1を示す。
前記一般式(1)において、符号Xは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、フェニルチオ基(−SC6H5)、フェノキシ基(−OC6H5)または−NR5R6(R5およびR6は、同一でも異なってもよく、それぞれ置換基としてアルコキシ基を有してもよいアルキル基、アリル基、または互いに結合して炭素原子間に酸素原子、イミノ基もしくはN−アルキルイミノ基を有してもよいアルキレン基を示す。)で表される置換アミノ基を示す。
前記一般式(1)において、符号Xで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられ、これらの中でも、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
前記一般式(1)において、符号Xで示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基などの直鎖状アルキル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ネオペンチル基などの分岐鎖状アルキル基などが挙げられ、これらの中でも、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましい。
前記一般式(1)において、符号Xで示されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ヘキサノキシ基などの直鎖状アルコキシ基、イソプロポキシ基、イソヘキサノキシ基などの分岐鎖状アルコキシ基などが挙げられ、これらの中でも、炭素原子数1〜4のアルコキシ基が好ましい。
前記一般式(1)において、符号Xで示されるアルキルチオ基としては、メチルチオ基(−SCH3)、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、n−ヘキシルチオ基などの直鎖状アルキルチオ基、イソプロピルチオ基、t−ブチルチオ基、ネオペンチルチオ基などの分岐鎖状アルキルチオ基などが挙げられ、これらの中でも、炭素原子数1〜4のアルキルチオ基が好ましい。
前記一般式(1)において、符号Xで示されるアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基(−SO2CH3)、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基などの直鎖状アルキルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、ネオペンチルスルホニル基などの分岐鎖状アルキルスルホニル基などが挙げられ、これらの中でも、炭素原子数1〜4のアルキルスルホニル基が好ましい。
前記一般式(1)において、符号Xで示されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基およびアルキルスルホニル基は、それぞれ置換基を有してもよい。符号Xで示されるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基およびアルキルスルホニル基が有することのできる置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号Xで示されるフェニルチオ基およびフェノキシ基も、それぞれ置換基を有してもよい。符号Xで示されるフェニルチオ基およびフェノキシ基が有することのできる置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
前記一般式(1)において、符号Xが−NR5R6で表される置換アミノ基を示すとき、−NR5R6において符号R5およびR6で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基などの直鎖状アルキル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ネオペンチル基などの分岐鎖状アルキル基などが挙げられ、これらの中でも、炭素原子数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基がさらに好ましい。
−NR5R6において符号R5およびR6で示されるアルキル基が置換基として有することのあるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ヘキサノキシ基などの直鎖状アルコキシ基、イソプロポキシ基、イソヘキサノキシ基などの分岐鎖状アルコキシ基などが挙げられ、これらの中でも、炭素原子数1〜4のアルコキシ基が好ましい。符号R5およびR6で示される、置換基としてアルコキシ基を有するアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−プロポキシエチル基、メトキシプロピル基などのアルコキシアルキル基が挙げられ、これらの中でも、置換基として炭素原子数1〜4のアルコキシ基を有する炭素原子数2〜4のアルキル基が好ましい。
−NR5R6において符号R5およびR6で示されるアルキル基は、アルコキシ基以外に他の置換基を有してもよい。符号R5およびR6で示されるアルキル基が有することのできるアルコキシ基以外の他の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
−NR5R6において符号R5およびR6で示されるアリル基は置換基を有してもよい。符号R5およびR6で示されるアリル基が有することのできる置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
−NR5R6において符号R5およびR6が互いに結合して示すアルキレン基としては、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基などが挙げられ、これらの中でも、炭素原子数4〜8のアルキレン基が好ましく、炭素原子数4または5のアルキレン基がさらに好ましい。符号R5およびR6が互いに結合して示すアルキレン基は置換基を有してもよい。符号R5およびR6が互いに結合して示すアルキレン基が有することのできる置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
−NR5R6において符号R5およびR6が互いに結合して示すアルキレン基が、炭素原子間に有することのあるN−アルキルイミノ基としては、N−メチルイミノ基、N−エチルイミノ基、N−(n−プロピル)イミノ基、N−(n−ブチル)イミノ基、N−(n−ヘキシル)イミノ基などの直鎖状N−アルキルイミノ基、N−イソプロピルイミノ基、N−(t−ブチル)イミノ基、N−ネオペンチルイミノ基などの分岐鎖状N−アルキルイミノ基などが挙げられ、これらの中でも、炭素原子数1〜4のN−アルキルイミノ基が好ましい。
−NR5R6において符号R5およびR6が互いに結合して示す、炭素原子間に酸素原子、イミノ基またはN−アルキルイミノ基を有するアルキレン基としては、オキシジエチレン基(−CH2−CH2−O−CH2−CH2−)、チオジエチレン基(−CH2−CH2−S−CH2−CH2−)などが挙げられ、これらの中でも、炭素原子間に酸素原子、イミノ基またはN−アルキルイミノ基、好ましくは酸素原子、イミノ基または炭素原子数1〜4のN−アルキルイミノ基を有する炭素原子数4〜8、好ましくは炭素原子数4または5のアルキレン基が好ましい。
前記一般式(1)において、符号Xで示される置換アミノ基(−NR5R6)としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などの対称ジアルキルアミノ基、エチルメチルアミノ基、イソプロピルエチルアミノ基などの非対称ジアルキルアミノ基などのジアルキルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基などが挙げられる。
本実施の形態のように、一般式(1)で表されるアミン化合物を感光層10に含有させることによって、感光体1に、耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性を付与することができる。これは、一般式(1)で表わされるアミン化合物が、オゾン、窒素酸化物、塩素酸化物、硫黄酸化物などの酸化性ガスを補足し、電荷輸送層13に含有される電荷輸送物質と酸化性ガスとの電子移動を伴うイオン対の生成反応および/または電荷発生層12に含有される電荷発生物質への酸化性ガスの吸着を妨げるためであると推察される。これによって、感光体1では、疲労劣化が抑制され、繰返し使用されても帯電電位の低下、残留電位の上昇、感度の低下、表面抵抗の低下による解像力の低下などが生じないものと考えられる。
また、一般式(1)で表されるアミン化合物は、感光層10に添加されても、感光体1の帯電性、感度および応答性などの電気特性を低下させることがない。すなわち、本実施の形態では、帯電性、感度および応答性などの電気特性を低下させることなく、感光体1に、耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性を付与することができる。
したがって、本実施の形態のように、感光層10に一般式(1)で表されるアミン化合物を含有させることによって、帯電性、感度および応答性などの電気特性に優れるとともに、耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性に優れ、繰返し使用されても前述の良好な電気特性が低下しない電気的耐久性に優れる感光体1が実現される。
一般式(1)で表されるアミン化合物のうち、感光体1の疲労劣化を抑制するという観点から特に優れた化合物としては、一般式(1)において、
R3およびR4が、それぞれ置換基として炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、または炭素原子数7〜9のフェニルアルキル基であり、
Xが、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数1〜4のアルキルチオ基、炭素原子数1〜4のアルキルスルホニル基、フェニルチオ基、フェノキシ基、または−NR5aR6a(R5aおよびR6aは、それぞれ炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基として炭素原子数1〜4のアルコキシ基を有する炭素原子数2〜4のアルキル基、アリル基、または互いに結合して炭素原子間に酸素原子、イミノ基もしくは炭素原子数1〜4のN−アルキルイミノ基を有してもよい炭素原子数4〜5のアルキレン基を示す。)で表される置換アミノ基であるものを挙げることができる。
これらの中でも、一般式(1)において、
R1およびR2が、それぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基であり、
R3およびR4が、それぞれ置換基として炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、または炭素原子数7〜9のフェニルアルキル基であり、
Xが、水素原子であるか、または−NR5R6においてR5およびR6が互いに結合して炭素原子間に酸素原子を有する炭素原子数4〜5のアルキレン基であるアミン化合物が特に好ましい。
一般式(1)で表されるアミン化合物は、公知であり、たとえば特公昭62−9124号公報および特公平1−34242号公報に開示されている。
一般式(1)で表されるアミン化合物は、たとえば、下記一般式(1a)
(式中、R3,R4,Xおよびnは、一般式(1)において定義したものと同義である。)で表されるケトン化合物をハロゲン化し、得られる下記一般式(1b)
(式中、X’はハロゲン原子を示し、R3,R4,Xおよびnは一般式(1)において定義したものと同義である。)で表されるハロゲン化ケトン化合物をエポキシ化し、得られる下記一般式(1c)
(式中、R5はアルキル基を示し、R3,R4,Xおよびnは一般式(1)において定義したものと同義である。)で表されるエポキシド中間体と下記一般式(1d)
HNR1R2 …(1d)
(式中、R1およびR2は一般式(1)において定義したものと同義である。)で表されるアミン化合物とを反応させることによって製造することができる。
一般式(1a)で表されるケトン化合物のハロゲン化反応は、たとえば以下のように行なうことができる。一般式(1a)で表されるケトン化合物をテトラクロロメタンなどの不活性溶媒に溶解し、この溶液中を40〜80℃に保持しながら、化学量論量の塩素(Cl2)、臭素(Br2)などのハロゲンを加える。得られる反応混合物に窒素を導入し、副生成物である塩化水素(HCl)、臭化水素(HBr)などのハロゲン化水素を除去した後、溶媒を留去する。これによって、前記一般式(1b)で表されるハロゲン化ケトン化合物が得られる。
一般式(1b)で表されるハロゲン化ケトン化合物のエポキシ化は、たとえば以下のように行なうことができる。一般式(1b)で表されるハロゲン化ケトン化合物をメタノールなどの溶媒中に溶解し、この溶液を、メタノールなどの溶媒中に化学量論量の金属アルコキシドが溶解している溶液中に還流温度で滴下する。金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシドなどの、炭素原子数1〜4のアルコールのナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩が好適に用いられる。反応終了後、溶媒を留去し、必要に応じて精製し、一般式(1c)で表されるエポキシド中間体を得る。なお、一般式(1c)において、符号R5で示されるアルキル基は、金属アルコキシドのアルキル基に対応する。
一般式(1c)で表されるエポキシド中間体と一般式(1d)で表されるアミン化合物との反応は、たとえば以下のようにして行なわれる。一般式(1c)で表されるエポキシド中間体を、無溶媒下または少量のトルエン、キシレンなどの溶媒存在下で、化学量論量の一般式(1d)で表されるアミン化合物で架橋させ、温度100〜200℃にて約10〜20時間反応させる。なお、この反応は、一般式(1d)で表されるアミン化合物が、ジメチルアミン、ジエチルアミンなどの、前記一般式(1d)においてR1およびR2が炭素原子数1〜4である低沸点アミン化合物の場合には、加圧下、たとえばオートクレープ中で行なう。反応混合物をベンゼンなどで希釈し、希塩酸などの希酸で抽出し、得られる水性酸溶液を水酸化ナトリウムなどの塩基でアルカリ性にしてエーテルなどで抽出し、水洗後溶媒を留去し、必要に応じて精製する。これによって、一般式(1)で表されるアミン化合物が得られる。
また、一般式(1)で表されるアミン化合物は、前記一般式(1b)で表されるハロゲン化ケトン化合物を、前記一般式(1d)で表されるアミン化合物と反応させることによって製造することもできる。この場合には、一般式(1b)で表されるハロゲン化ケトン化合物を必要に応じてトルエンなどの溶媒で希釈し、一般式(1d)で表されるアミン化合物2モル当量と混合し、温度100〜200℃にて10〜20時間反応させる。なお、この反応も、一般式(1d)で表されるアミン化合物が、ジメチルアミン、ジエチルアミンなどの、前記一般式(1d)においてR1およびR2が炭素原子数1〜4である低沸点アミン化合物の場合には、加圧下、たとえばオートクレープ中で行なう。反応混合物に対して、前述のエポキシド中間体と一般式(1d)との反応によって得られる反応混合物と同様に後処理を施し、必要に応じて精製することによって、一般式(1)で表されるアミン化合物が得られる。
一般式(1)で表されるアミン化合物の具体例としては、たとえば以下の表1〜表3に示す例示化合物No.1〜No.20を挙げることができるけれども、一般式(1)で表されるアミン化合物は、これらに限定されるものではない。
一般式(1)で表されるアミン化合物は、たとえば前述の表1〜表3に示す例示化合物からなる群から選ばれる1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
一般式(1)で表されるアミン化合物は、電荷発生層12および電荷輸送層13のいずれに含有されてもよく、また電荷発生層12および電荷輸送層13の両方に含有されてもよい。特に、電荷輸送層13には、一般式(1)で表されるアミン化合物を添加することが好ましい。
一般式(1)で表されるアミン化合物は、電荷輸送物質100重量部に対して1重量部以上、20重量部以下の範囲内で使用されることが好ましい。特に一般式(1)で表されるアミン化合物を電荷輸送層13に添加する場合には、一般式(1)で表されるアミン化合物は、電荷輸送層13に含有される電荷輸送物質100重量部に対して1重量部以上、20重量部以下の割合で電荷輸送層13に含有されることが好ましい。このことによって、帯電性、感度および応答性などの電気特性、ならびに耐酸化性ガス性に特に優れる電子写真感光体が実現される。一般式(1)で表されるアミン化合物が、電荷輸送物質100重量部に対して1重量部未満の割合で感光層10、特に電荷輸送層13に含有されると、オゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスに対する耐性が充分に得られず、繰返し使用時に帯電電位の低下および感度の低下などが起きるおそれがある。また一般式(1)で表されるアミン化合物が、電荷輸送物質100重量部に対して20重量部を超える割合で感光層10、特に電荷輸送層13に含有されると、感度および応答性が低下し、繰返し使用時に残留電位の上昇などが生じるおそれがある。
感光層10は、前述のように電荷発生物質を含有する電荷発生層12と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層13とが積層されて成る積層型光導電層14で構成される。このように電荷発生機能と電荷輸送機能とを別々の層に担わせることによって、各層12,13を構成する材料を独立して選択することが可能になるので、電荷発生機能および電荷輸送機能それぞれに最適な材料を選択することができる。したがって、本実施の形態の感光体1は、帯電性、感度および光応答性などの電気特性、ならびに繰返し使用時の電気特性の安定性すなわち電気的耐久性に特に優れる。
感光層10を構成する電荷発生層12は、光を吸収することによって電荷を発生する電荷発生物質を含有し、必要に応じて前述の一般式(1)で表されるアミン化合物をさらに含有する。電荷発生物質として有効な物質としては、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料、インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料、ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料、オキソチタニウムフタロシアニンなどの金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類およびチオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料、ならびにセレンおよび非晶質シリコンなどの無機光導電性材料などを挙げることができる。
これらの電荷発生物質の中でも、オキソチタニウムフタロシアニンを用いることが好ましい。オキソチタニウムフタロシアニンは、電荷発生能力および電荷注入能力に優れるので、光を吸収することによって多量の電荷を発生するとともに、発生した電荷をその内部に蓄積することなく、電荷輸送層13に含有される電荷輸送物質に効率よく注入することができる。したがって、電荷発生物質としてオキソチタニウムフタロシアニンを用いることによって、特に優れた感度を有し、さらに解像度にも優れる感光体1が実現される。オキソチタニウムフタロシアニンは、フタロシアニン基に含まれるベンゼン環の水素原子が、塩素原子もしくはフッ素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基またはスルホン酸基などの置換基で置換されたものであってもよく、また中心金属に配位子が配位したものであってもよい。
電荷発生物質は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が組合わされて使用されてもよい。
電荷発生物質は、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料、メチレンブルーおよびメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料、カプリブルーおよびメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料、シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料またはチオピリリウム塩染料などの増感染料と組合わされて使用されてもよい。
電荷発生層12には、結着性を向上させるために、バインダ樹脂が含有されてもよい。電荷発生層12に用いられるバインダ樹脂としては、たとえばポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。共重合体樹脂の具体例としては、たとえば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂およびアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などを挙げることができる。バインダ樹脂はこれらに限定されるものではなく、この分野において一般に用いられる樹脂をバインダ樹脂として使用することができる。バインダ樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
電荷発生物質とバインダ樹脂とを含んで構成される電荷発生層12において、電荷発生物質の重量W1とバインダ樹脂の重量W2との比W1/W2は、100分の10(10/100)以上100分の99(99/100)以下であることが好ましい。前記比W1/W2が10/100未満であると、感光体1の感度が低下する可能性がある。前記比W1/W2が99/100を超えると、電荷発生層12の膜強度が低下する可能性がある。また電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し、消去されるべき部分以外の表面電荷が露光によって減少し、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ぽちと呼ばれる画像のかぶりが多くなるおそれがある。
電荷発生層12の形成方法としては、前述の電荷発生物質を導電性支持体11の表面に真空蒸着する方法、適当な溶剤中に前述の電荷発生物質および必要に応じて前述のバインダ樹脂を加え、従来公知の方法によって分散および/または溶解させて電荷発生層用塗布液を調製し、得られた塗布液を導電性支持体11の表面に塗布する方法などが用いられる。電荷発生層12に前述の一般式(1)で表されるアミン化合物を添加する場合には、たとえば、適当な溶剤に前述の電荷発生物質、一般式(1)で表されるアミン化合物および必要に応じて前述のバインダ樹脂を加え、分散および/または溶解させて電荷発生層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体11の表面に塗布することによって、電荷発生層12を形成することができる。
電荷発生層用塗布液に使用される溶剤としては、たとえばジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。これらの溶剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて混合溶剤として使用されてもよい。
電荷発生物質は、溶剤中に分散される前に、予め粉砕機によって粉砕処理されてもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルおよび超音波分散機などを挙げることができる。
電荷発生物質を溶剤中に分散させる際に用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミルおよびサンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器および分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択する。
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に基体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、好適に用いられる。浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置を設けてもよい。なお、塗布方法はこれらに限定されるものではなく、塗布液の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を適宜選択することができる。
電荷発生層12の層厚は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1μm以下である。電荷発生層12の層厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感光体1の感度が低下するおそれがある。電荷発生層12の層厚が5μmを超えると、電荷発生層12内部での電荷移動が感光層10表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感光体1の感度が低下するおそれがある。
電荷発生層12上に設けられる電荷輸送層13は、電荷発生層12に含まれる電荷発生物質で発生した電荷を受入れ、これを輸送する能力を有する電荷輸送物質と、電荷輸送物質を結着させるバインダ樹脂とを含んで構成することができる。電荷輸送層13には、必要に応じて前述の一般式(1)で表されるアミン化合物が含有される。
電荷輸送物質としては、電荷発生物質で発生した電荷を輸送することのできるものであれば特に制限されず、種々の化合物を用いることができ、たとえば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体などを挙げることができる。また、これらの化合物から生じる基を主鎖または側鎖に有するポリマー、たとえばポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリ(1−ビニルピレン)およびポリ(9−ビニルアントラセン)なども挙げられる。電荷輸送物質は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
電荷輸送層13を構成するバインダ樹脂には、電荷輸送物質との相溶性に優れるものが選択されて使用される。電荷輸送層13に用いられるバインダ樹脂としては、たとえばポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂およびこれらを構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含むビニル共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂およびフェノール樹脂などが挙げられる。またこれらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂も挙げられる。これらの樹脂の中でも、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂またはポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗率が1013Ω・cm以上であって電気絶縁性に優れており、また皮膜性および電位特性などにも優れているので、好適に用いられる。バインダ樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
電荷輸送層13において、電荷輸送物質の重量Aとバインダ樹脂の重量Bとの比A/Bは、30分の10(10/30)以上、12分の10(10/12)以下であることが好ましい。前記比A/Bが10/30を大きく下回り、バインダ樹脂の比率が高くなり過ぎると、感光体1の感度が低下するおそれがある。また電荷輸送層13を浸漬塗布法によって形成する場合に前記比A/Bが10/30未満であると、塗布液の粘度が増大して塗布速度が低下し、生産性が著しく悪くなるおそれがある。また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層13に白濁が発生する可能性がある。また前記比A/Bが10/12を大きく上回り、バインダ樹脂の比率が低くなり過ぎると、感光層10の耐刷性が低下して繰返し使用による膜減り量が増加し、感光体1の帯電性が低下するおそれがある。
電荷輸送層13には、本発明の好ましい特性を損なわない範囲内で、可塑剤、レベリング剤、または無機化合物もしくは有機化合物の微粒子などの各種添加剤を添加してもよい。可塑剤またはレベリング剤を添加することによって、電荷輸送層13の成膜性、可撓性および/または表面平滑性を向上させることができる。無機化合物または有機化合物の微粒子を添加することによって、電荷輸送層13の機械的強度を増強し、また電気特性を向上させることができる。可塑剤としては、たとえばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などを挙げることができる。レベリング剤としては、たとえばシリコーン系レベリング剤などを挙げることができる。
電荷輸送層13は、たとえば、前述の電荷発生層12を塗布によって形成する場合と同様に、適当な溶媒中に、前述の電荷輸送物質およびバインダ樹脂、ならびに必要に応じて前述の一般式(1)で表されるアミン化合物および前述の添加剤を溶解および/または分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、得られた塗布液を電荷発生層12の表面に塗布することによって形成することができる。
電荷輸送層用塗布液に使用される溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、ならびにN,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤などを挙げることができる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。これらの溶媒は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が混合されて使用されてもよい。また前述の溶剤に、必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。
電荷輸送層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前述のように種々の点で優れているので、電荷輸送層13を形成する場合にも好適に用いられる。
電荷輸送層13の層厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上40μm以下である。電荷輸送層13の層厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下するおそれがある。電荷輸送層13の層厚が50μmを超えると、感光体1の解像度が低下する可能性がある。
積層型光導電層14には、本発明の好ましい特性を損なわない範囲内で、電子受容物質および色素などの増感剤を1種または2種以上添加してもよい。増感剤を添加することによって、感光体1の感度が向上し、さらに繰返し使用による残留電位の上昇および疲労などが一層抑えられ、電気的耐久性が向上する。これらの増感剤は、積層型光導電層14を構成する電荷発生層12および電荷輸送層13のいずれに含有されてもよく、また電荷発生層12および電荷輸送層13の両方に含有されてもよい。
電子受容物質としては、たとえば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、4−クロルナフタル酸無水物などの酸無水物、テトラシアノエチレン、テレフタルマロンジニトリルなどのシアノ化合物、4−ニトロベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、アントラキノン、1−ニトロアントラキノンなどのアントラキノン類、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノンなどの多環もしくは複素環ニトロ化合物、またはジフェノキノン化合物などの電子吸引性材料などを用いることができる。またこれらの電子吸引性材料を高分子化したものなどを用いることもできる。
色素としては、たとえばキサンテン系色素、チアジン色素、トリフェニルメタン色素、キノリン系顔料または銅フタロシアニンなどの有機光導電性化合物を用いることができる。これらの有機光導電性化合物は光学増感剤として機能する。
感光層10は、本実施の形態では、電荷発生層12および電荷輸送層13が導電性支持体11上にこの順序で積層されて成る積層型光導電層14で構成される。感光層10は、以上の構成に限定されるものではなく、たとえば、電荷輸送層13および電荷発生層12が導電性支持体11上にこの順序で積層されて成る積層型光導電層で構成されてもよい。
図2は、本発明の実施の第2の形態である電子写真感光体2の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施形態の電子写真感光体2は、図1に示す実施の第1形態の電子写真感光体1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
電子写真感光体2において注目すべきは、導電性支持体11と積層型光導電層14との間に、中間層15が設けられていることである。すなわち、本実施の形態では、感光層16は、導電性支持体11上に積層される中間層15と、中間層15上に積層される積層型光導電層14とを含んで構成される。
たとえば、導電性支持体11と積層型光導電層14との間に中間層15が設けられていない場合、導電性支持体11から積層型光導電層14に電荷が注入され、感光体2の帯電性が低下し、露光される部分以外の表面電荷が減少し、画像にかぶりなどの欠陥の発生することがある。特に、反転現像プロセスを用いて画像を形成する場合には、露光によって表面電荷の減少した部分にトナーが付着してトナー画像が形成されるので、露光以外の要因で表面電荷が減少すると、白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ぽちと呼ばれる画像のかぶりが発生し、画質の著しい劣化が生じるおそれがある。このように、導電性支持体11と積層型光導電層14との間に中間層15がない場合には、導電性支持体11または積層型光導電層14の欠陥に起因して微小な領域での帯電性の低下が生じ、黒ぽちなどの画像のかぶりが発生し、著しい画像欠陥となる可能性がある。
本実施形態の感光体2では、前述のように導電性支持体11と積層型光導電層14との間には中間層15が設けられているので、導電性支持体11からの積層型光導電層14への電荷の注入を防止することができる。したがって、感光体2の帯電性の低下を防ぐことができ、露光される部分以外での表面電荷の減少を抑え、画像にかぶりなどの欠陥が発生することを防止することができる。
また本実施の形態のように、導電性支持体11の表面に中間層15を設けることによって、導電性支持体11表面の欠陥を被覆して均一な表面を得ることができるので、積層型光導電層14の成膜性を高めることができる。また中間層15が導電性支持体11と積層型光導電層14とを接着する接着剤として機能するので、積層型光導電層14の導電性支持体11からの剥離を抑えることができる。
本実施の形態においても、感光層16は、前述の一般式(1)で表されるアミン化合物を含有する。一般式(1)で表されるアミン化合物は、感光層16を構成する中間層15、電荷発生層12および電荷輸送層13のいずれに含有されてもよく、また中間層15、電荷発生層12および電荷輸送層13のすべての層に含有されてもよい。
特に、電荷発生層12および電荷輸送層13の少なくとも一方、好ましくは電荷輸送層13には、一般式(1)で表されるアミン化合物が含有されることが好ましい。このように、電荷発生層12および電荷輸送層13の少なくとも一方に一般式(1)で表されるアミン化合物を含有させることによって、酸化性ガスと電荷輸送物質との電子移動を伴うイオン対の生成反応および/または酸化性ガスの電荷発生物質への吸着を効果的に抑制することができる。したがって、一般式(1)で表されるアミン化合物が電荷発生層12および電荷輸送層13に含有されない場合に比べ、感光体2の耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性を向上させることができる。
感光層16における一般式(1)で表されるアミン化合物の使用量は、実施の第1形態と同様に、電荷輸送物質100重量部に対して1重量部以上、20重量部以下の範囲内であることが好ましい。
中間層15としては、各種樹脂材料で構成される樹脂層またはアルマイト層などが用いられる。中間層15として用いられる樹脂層を構成する樹脂材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびポリアミド樹脂などの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。また、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびエチルセルロースなども挙げられる。これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂が好適に用いられる。好ましいアルコール可溶性ナイロン樹脂としては、たとえば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロンなどを共重合させた、いわゆる共重合ナイロン、ならびにN−アルコキシメチル変性ナイロンおよびN−アルコキシエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂などを挙げることができる。
中間層15には、金属酸化物粒子などの粒子を含有させることが好ましい。中間層15にこれらの粒子を含有させることによって、中間層15の体積抵抗値を調節し、導電性支持体11から積層型光導電層14への電荷の注入をより確実に防止することができるとともに、各種の環境下において感光体2の電気特性を維持し、環境安定性を向上させることができる。金属酸化物粒子としては、たとえば酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび酸化スズなどの粒子を挙げることができる。
中間層15は、たとえば適当な溶剤中に、前述の樹脂、ならびに必要に応じて前述の一般式(1)で表されるアミン化合物および金属酸化物粒子などの各種添加剤を加え、溶解および/または分散させて中間層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体11の表面に塗布することによって形成することができる。
中間層用塗布液の溶剤には、水もしくは各種有機溶剤、またはこれらの混合溶剤が用いられる。その中でも、水、メタノール、エタノールもしくはブタノールなどの単独溶剤、または水とアルコール類、2種類以上のアルコール類、アセトンもしくはジオキソランなどとアルコール類、ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなどの塩素系溶剤とアルコール類などの混合溶剤が好ましく、特に、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
前述の金属酸化物粒子などの粒子を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機またはペイントシェーカなどを用いる公知の分散方法を使用することができる。
中間層用塗布液中において、樹脂および金属酸化物の合計重量Cと、中間層用塗布液に使用されている溶剤の重量Dとの比C/Dは、1/99〜40/60であることが好ましく、より好ましくは2/98〜30/70である。また樹脂の重量Eと金属酸化物の重量Fとの比E/Fは、90/10〜1/99であることが好ましく、より好ましくは70/30〜5/95である。
中間層用塗布液の塗布方法としては、スプレイ法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などを挙げることができる。これらの中でも、特に浸漬塗布法は、前述のように、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、中間層15を形成する場合にも好適に用いられる。
中間層15の層厚は、0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上10μm以下である。中間層15の層厚が0.01μmよりも薄いと、実質的に中間層15として機能しなくなり、導電性支持体11の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性支持体11からの積層型光導電層14への電荷の注入を防止することができなくなる可能性があり、感光体2の帯電性の低下が生じるおそれがある。中間層15の層厚を20μmよりも厚くすることは、中間層15を浸漬塗布法によって形成する場合に、中間層15の形成が困難になるとともに、中間層15上に積層型光導電層14を均一に形成することができず、感光体2の感度が低下するおそれがあるので好ましくない。
図3は、本発明の実施の第3の形態である電子写真感光体3の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施形態の電子写真感光体3は、図2に示す実施の第2形態の電子写真感光体2に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
電子写真感光体3において注目すべきは、中間層15上に、電荷発生物質と電荷輸送物質との両方を含有する単一の層から成る単層型光導電層140が設けられていることである。すなわち、感光体3は、単層型感光体である。中間層15と単層型光導電層140とは、感光層17を構成する。
本実施の形態の単層型感光体3は、オゾン発生の少ない正帯電型画像形成装置用の感光体として好適であり、また中間層15上に塗布されるべき層が単層型光導電層140の一層のみであるので、製造原価および歩留が実施の第2形態の積層型感光体2に比べて優れている。
本実施の形態においても、感光層17は、前述の一般式(1)で表されるアミン化合物を含有する。一般式(1)で表されるアミン化合物は、感光層17を構成する中間層15および単層型光導電層140のいずれに含有されてもよく、また中間層15および単層型光導電層140の両方に含有されてもよい。特に、単層型光導電層140には、一般式(1)で表されるアミン化合物が含有されることが好ましい。このように、単層型光導電層140に一般式(1)で表されるアミン化合物を含有させることによって、酸化性ガスと電荷輸送物質との電子移動を伴うイオン対の生成反応および酸化性ガスの電荷発生物質への吸着を効果的に抑制することができる。したがって、一般式(1)で表されるアミン化合物が単層型光導電層140に含有されない場合に比べ、感光体3の耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性を向上させることができる。
一般式(1)で表されるアミン化合物は、実施の第1形態と同様に、電荷輸送物質100重量部に対して、1重量部以上、20重量部以下の範囲内で使用されることが好ましい。特に、単層型光導電層140に添加される場合には、一般式(1)で表されるアミン化合物は、実施の第1形態において電荷輸送層13に添加される場合と同様に、電荷輸送物質100重量部に対して1重量部以上、20重量部以下の割合で単層型光導電層140に含有されることが好ましい。
単層型光導電層140は、前述の電荷発生物質および電荷輸送物質、ならびに必要に応じて前述の一般式(1)で表されるアミン化合物を、バインダ樹脂で結着して形成することができる。バインダ樹脂としては、実施の第1形態において電荷輸送層13のバインダ樹脂として例示したものなどを用いることができる。単層型光導電層140における電荷輸送物質の重量A’とバインダ樹脂の重量B’との比A’/B’は、実施の第1形態の電荷輸送層13における電荷輸送物質の重量Aとバインダ樹脂の重量Bとの比A/Bと同様に、10/12〜10/30であることが好ましい。
単層型光導電層140には、実施の第1形態による電荷輸送層13と同様に、可塑剤、レベリング剤、無機化合物または有機化合物の微粒子、電子受容物質、色素などの増感剤などの各種添加剤を添加してもよい。
単層型光導電層140は、実施の第1形態の感光体1に設けられる電荷輸送層13と同様の方法で形成することができる。たとえば、前述の電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤などの適当な溶剤に、前述の電荷発生物質、電荷輸送物質およびバインダ樹脂、ならびに必要に応じて前述の一般式(1)で表されるアミン化合物および各種添加剤を加え、溶解および/または分散させて光導電層用塗布液を調製し、この塗布液を浸漬塗布法などによって中間層15の表面に塗布することによって、単層型光導電層140を形成することができる。
単層型光導電層140の層厚は、5μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上50μm以下である。単層型光導電層140の層厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下するおそれがある。単層型光導電層140の層厚が100μmを超えると、生産性が低下する可能性がある。
図4は、本発明の実施の第4の形態である電子写真感光体4の構成を簡略化して示す部分断面図である。本実施の形態の電子写真感光体4は、図1に示す実施の第1形態の電子写真感光体1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
電子写真感光体4において注目すべきは、積層型光導電層14の上層であって感光層18の最外層に表面保護層21が設けられ、感光層18が積層型光導電層14と表面保護層21とを含んで構成されることである。このことによって、感光層18の耐摩耗性を向上させることができる。
感光層18には、実施の第1形態による感光層10と同様に、一般式(1)で表されるアミン化合物が含有される。このことによって、帯電性、感度および応答性などの電気特性に優れるとともに、耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性に優れ、繰返し使用されても前述の良好な電気特性が低下しない電気的耐久性に優れる感光体4が実現される。特に本実施の形態では、積層型光導電層14の表面には表面保護層21が設けられるので、オゾンおよび窒素酸化物などの酸化性ガスによる疲労劣化を一層抑制し、電気的耐久性を向上させることができる。
一般式(1)で表されるアミン化合物は、感光層18を構成する電荷発生層12、電荷輸送層13および表面保護層21のいずれに含有されてもよく、また電荷発生層12、電荷輸送層13および表面保護層21のすべての層に含有されてもよい。特に、電荷発生層12および電荷輸送層13の少なくとも一方、好ましくは電荷輸送層13には、一般式(1)で表されるアミン化合物が含有されることが好ましい。
感光層18における一般式(1)で表されるアミン化合物の使用量は、実施の第1形態と同様に、電荷輸送物質100重量部に対して1重量部以上、20重量部以下の範囲内であることが好ましい。
表面保護層21としては、樹脂などで構成される層が用いられる。表面保護層21に使用される樹脂(以下、バインダ樹脂とも称する)としては、ポリスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが好適に用いられる。これらの中でも、摩耗特性および電気的特性を考慮すると、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。これらの樹脂は、1種が単独で用いられてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
表面保護層21には、耐摩耗性を向上する目的でフィラーを添加することが好ましい。フィラーとしては、有機性フィラーおよび無機性フィラーのいずれを用いてもよい。有機性フィラーとしては、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、アモルファスカーボン粉末などが挙げられる。無機性フィラーとしては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化スズ、スズをドープした酸化インジウムなどの金属酸化物、チタン酸カリウムなどのチタン酸のアルカリ金属塩などの無機材料が挙げられる。これらの中でも、耐摩耗性の観点からは、無機性フィラーを用いることが好ましい。無機性フィラーは好適な硬さを有するので、無機性フィラーを用いることによって、特に優れた耐摩耗性が得られる。無機性フィラーの中でも、金属酸化物が好ましく、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタンが特に好ましい。
表面保護層21に添加されるフィラーは、分散性の向上、表面性改質などを目的として、無機物および/または有機物で表面処理されていてもよい。有機物で表面処理されたフィラーとしては、撥水性処理として、シランカップリング剤で処理されたもの、フッ素系シランカップリング剤で処理されたもの、高級脂肪酸で処理されたものなどが挙げられる。無機物で表面処理されたフィラーとしては、アルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカなどで表面処理されたものなどが挙げられる。
表面保護層21に添加されるフィラーの平均一次粒径は、表面保護層21の光透過性および耐摩耗性の観点から、0.01μm以上、0.5μm以下であることが好ましい。フィラーの平均一次粒径が0.01μm未満であると、表面保護層21の耐摩耗性が充分に得られず、感光体4の寿命が短くなるおそれがある。フィラーの平均一次粒径が0.5μmを超えると、露光時に照射される光が表面保護層21で散乱されやすくなり、解像度が低下する可能性がある。
表面保護層21中のフィラーの含有量は、表面保護層21を構成する全固形分の5重量%以上、50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以上、30重量%以下である。表面保護層21中のフィラーの含有量が50重量%を超えると、耐摩耗性は良好になるけれども、残留電位が上昇するおそれがある。また表面保護層21の光透過性が低下し、露光時に照射される光が電荷発生層12に充分に到達できず、感度が低下するおそれもある。表面保護層21中のフィラーの含有量が5重量%未満であると、表面保護層21の耐摩耗性が不足し、感光体4の寿命が短くなる可能性がある。
表面保護層21には、応答性を向上させるために、電荷輸送層13に用いられる前述の電荷輸送物質を添加してもよい。
表面保護層21は、たとえば、適当な溶剤中に、前述のバインダ樹脂、ならびに必要に応じて前述のフィラー、一般式(1)で表されるアミン化合物および電荷輸送物質などを加え、分散および/または溶解させて塗布液を調製し、この塗布液を積層型光導電層14の表面に塗布することによって形成することができる。
表面保護層21の層厚は、0.1μm以上、10μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上、8μm以下である。感光体は、長期間にわたって繰返し使用されるので、機械的耐久性に優れ、摩耗しにくいものであることが必要である。しかしながら、感光体が画像形成装置に搭載されて使用される際には、コロナ放電器などから発生するオゾンおよび窒素酸化物などが感光体表面に付着し、被転写材の画像形成面方向に画像が流れる、いわゆる画像流れが発生するおそれがある。この画像流れを防止するために、感光層18は、ある一定速度以上の速度で摩耗されるように構成される。このため、長期的な繰返し使用を考慮した場合には、表面保護層21の層厚は、0.1μm以上であることが好ましい。表面保護層21の層厚が0.1μm未満であると、表面保護層21が短期間に消失し、感光体4の寿命が短くなる可能性がある。また表面保護層21の層厚が10μmよりも大きいと、繰返し使用による残留電位の上昇および微細ドット再現性の低下などの解像度の低下などが生じる可能性がある。
本発明の電子写真感光体は、以上に述べた図1〜図4に示す実施の第1形態〜第4形態の電子写真感光体1〜4の構成に限定されるものではなく、一般式(1)で示されるアミン化合物を感光層に含有するものであれば、他の異なる構成であってもよい。
たとえば、図5に示す感光体5のように、導電性支持体11上に、前述の図2に示す実施の第2形態と同様の中間層15および積層型光導電層14と、前述の図4に示す実施の第4形態と同様の表面保護層21とを含んで構成される感光層19が設けられるものであってもよい。この場合にも、感光層19には、前述の一般式(1)で表されるアミン化合物が含有される。一般式(1)で表されるアミン化合物は、感光層19を構成する中間層15、電荷発生層12、電荷輸送層13および表面保護層21のいずれに含有されてもよく、また中間層15、電荷発生層12、電荷輸送層13および表面保護層21の全ての層に含有されてもよい。特に、電荷発生層12および電荷輸送層13の少なくとも一方、好ましくは電荷輸送層13には、一般式(1)で表されるアミン化合物が含有されることが好ましい。
また、本発明の電子写真感光体は、図6に示す感光体6のように、導電性支持体11上に、前述の図3に示す中間層15および単層型光導電層140と、前述の図4に示す実施の第4形態と同様の表面保護層21とを含んで構成される感光層20が設けられる構成であってもよい。この場合にも、感光層20には、前述の一般式(1)で表されるアミン化合物が含有される。一般式(1)で表されるアミン化合物は、感光層20を構成する中間層15、単層型光導電層140および表面保護層21のいずれに含有されてもよく、また中間層15、単層型光導電層140および表面保護層21の全ての層に含有されてもよい。特に、単層型光導電層140には、一般式(1)で表されるアミン化合物が添加されることが好ましい。
以上の感光層19または感光層20においても、一般式(1)で表されるアミン化合物の使用量は、実施の第1形態と同様に、電荷輸送物質100重量部に対して1重量部以上、20重量部以下の範囲内であることが好ましい。
次に、本発明の電子写真感光体を備える本発明の画像形成装置について説明する。なお、本発明の画像形成装置は、以下の記載内容に限定されるものではない。
図7は、本発明の画像形成装置の実施の一形態である画像形成装置100の構成を簡略化して示す配置側面図である。図7に示す画像形成装置100は、本発明の電子写真感光体として、たとえば前述の図1に示す実施の第1形態の感光体1と同様の層構成を有する円筒状の感光体7を搭載する。以下図7を参照して画像形成装置100の構成および画像形成動作について説明する。
画像形成装置100は、図示しない装置本体に回転自在に支持される前述の感光体7と、感光体7を回転軸線44まわりに矢符41方向に回転駆動させる図示しない駆動手段とを備える。駆動手段は、たとえば動力源としてモータを備え、モータからの動力を図示しない歯車を介して感光体7の芯体を構成する支持体に伝えることによって、感光体7を所定の周速度で回転駆動させる。
感光体7の周囲には、帯電器32と、露光手段30と、現像器33と、転写器34と、クリーナ36とが、矢符41で示される感光体7の回転方向の上流側から下流側に向かってこの順序で設けられる。クリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
帯電器32は、感光体7の表面43を所定の電位に帯電させる帯電手段である。帯電器32は、たとえばコロナ放電帯電器などの非接触式の帯電手段である。
露光手段30は、たとえば半導体レーザなどを光源として備え、光源から画像情報に応じて出力されるレーザビームなどの光31で、帯電された感光体7の表面43を露光し、これによって感光体7の表面43に静電潜像を形成させる。
現像器33は、感光体7の表面43に形成された静電潜像を現像剤によって現像し、可視像であるトナー画像を形成する現像手段であり、感光体7に対向して設けられ感光体7の表面43にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体7の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持するとともにその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
転写器34は、感光体7の表面43に形成されたトナー画像を、感光体7の表面43から転写材である記録紙51上に転写させる転写手段である。転写器34は、たとえば、コロナ放電帯電器などの帯電手段を備え、記録紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー画像を記録紙51上に転写させる非接触式の転写手段である。
クリーナ36は、トナー画像が転写された後の感光体7の表面を清掃する清掃手段であり、感光体表面43に押圧され、転写器34による転写動作後に感光体7の表面43に残留するトナーを前記表面43から剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。
また、感光体7と転写器34との間を通過した後に記録紙51が搬送される方向には、転写されたトナー画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
画像形成装置100による画像形成動作について説明する。まず、図示しない制御部からの指示に応じて、感光体7が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動され、露光手段30からの光31の結像点よりも感光体7の回転方向の上流側に設けられる帯電器32によって、その表面43が正または負の所定電位に均一に帯電される。
次いで、制御部からの指示に応じて、露光手段30から、帯電された感光体7の表面43に対して光31が照射される。光源からの光31は、画像情報に基づいて、主走査方向である感光体7の長手方向に繰返し走査される。感光体7を回転駆動させ、光源からの光31を画像情報に基づいて繰返し走査することによって、感光体7の表面43に対して画像情報に対応する露光を施すことができる。この露光によって、光31が照射された部分の表面電荷が減少し、光31が照射された部分の表面電位と光31が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、感光体7の表面43に静電潜像が形成される。また、感光体7への露光と同期して、記録紙51が、図示しない搬送手段によって矢符42方向から転写器34と感光体7との間の転写位置に供給される。
次いで、光源からの光31の結像点よりも感光体7の回転方向の下流側に設けられる現像器33の現像ローラ33aから、静電潜像の形成された感光体7の表面43にトナーが供給される。これによって、静電潜像が現像され、感光体7の表面43に可視像であるトナー画像が形成される。感光体7と転写器34との間に記録紙51が供給されると、転写器34によってトナーと逆極性の電荷が記録紙51に与えられ、これによって感光体7の表面43に形成されたトナー画像が記録紙51上に転写される。
トナー画像の転写された記録紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧される。これによって、記録紙51上のトナー画像が記録紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された記録紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
一方、トナー画像が記録紙51に転写された後に、さらに矢符41方向に回転する感光体7は、その表面43がクリーナ36に備わるクリーニングブレード36aによって擦過され、清掃される。このようにしてトナーが除去された感光体7の表面43は、除電ランプからの光によって電荷が除去される。これによって感光体7の表面43の静電潜像が消失する。その後、感光体7はさらに回転駆動され、再度感光体7の帯電から始まる一連の動作が繰返される。以上のようにして、連続的に画像が形成される。
画像形成装置100に備わる感光体7は、前述のように、一般式(1)で示されるアミン化合物を感光層に含有するものであり、帯電性、感度および応答性などの電気特性に優れるとともに、耐酸化性ガス性に優れ、繰返し使用されても前述の良好な電気特性が低下せず、優れた電気的耐久性を有する。したがって、長期間にわたって安定して高品質の画像を形成することのできる信頼性の高い画像形成装置100が実現される。
本発明の画像形成装置は、以上に述べた図7に示す画像形成装置100の構成に限定されるものではなく、本発明に係る感光体を使用することができるものであれば、他の異なる構成であってもよい。
たとえば、本実施形態の画像形成装置100では、帯電器32は、非接触式の帯電手段であるけれども、これに限定されることなく、たとえば帯電ローラなどの接触式の帯電手段であってもよい。また転写器34は、押圧力を用いずに転写を行う非接触式の転写手段であるけれども、これに限定されることなく、押圧力を利用して転写を行う接触式の転写手段であってもよい。接触式の転写手段としては、たとえば、転写ローラを備え、記録紙51の感光体7の表面43との当接面の反対側の表面から転写ローラを感光体7に対して押圧し、感光体7と記録紙51とを圧接させた状態で、転写ローラに電圧を印加することによって、トナー画像を記録紙51上に転写させるものなどを用いることができる。
次に、実施例および比較例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するけれども、本発明は以下の記載内容に限定されるものではない。
まず、外径40mm、長手方向の長さ340mmのアルミニウム製円筒状導電性支持体上に種々の条件にて感光層を形成し、実施例および比較例として準備した感光体について説明する。
(実施例1)
酸化チタン(商品名:TTO55A、石原産業株式会社製)7重量部および共重合ナイロン樹脂(商品名:CM8000、東レ株式会社製)13重量部を、メタノール159重量部と1,3−ジオキソラン106重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカにて8時間分散処理して中間層用塗布液を調製した。この塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体を前記塗布槽に浸漬した後引上げ、自然乾燥して層厚1μmの中間層を導電性支持体上に形成した。
次いで、電荷発生物質として、Cu−Kα特性X線(波長:0.154nm(1.54Å))に対するX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角2θ(誤差:2θ±0.2°)27.2°に明確な回折ピークを示す結晶型のオキソチタニウムフタロシアニン結晶2重量部と、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−2、積水化学工業株式会社製)1重量部と、メチルエチルケトン97重量部とを混合し、ペイントシェーカにて分散して電荷発生層用塗布液を調製した。この塗布液を先に形成した中間層と同様の浸漬塗布法にて中間層上に塗布し、 自然乾燥して層厚0.4μmの電荷発生層を形成した。なお、本発明において、ブラッグ角2θとは、入射X線と回折X線との成す角度のことであり、いわゆる回折角を表す。
次いで、電荷輸送物質して下記構造式(2)で表される電荷輸送物質1Aの5重量部と、バインダ樹脂としてポリエステル樹脂(商品名:Vylon290、東洋紡株式会社製)2.4重量部およびポリカーボネート樹脂(商品名:G400、出光興産株式会社製)5.6重量部と、前述の表2に示す例示化合物No.14のアミン化合物0.25重量部とを混合し、テトラヒドロフラン47重量部を溶剤として電荷輸送層用塗布液を調製した。この塗布液を中間層と同様の浸漬塗布法にて先に形成した電荷発生層上に塗布し、温度120℃で1時間乾燥して層厚22μmの電荷輸送層を形成した。以上のようにして、実施例1の感光体を作製した。
(実施例2)
電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14に代えて、表1に示す例示化合物No.2を用いること以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感光体を作製した。
(実施例3)
電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14に代えて、表1に示す例示化合物No.7を用いること以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感光体を作製した。
(実施例4)
電荷輸送層の形成に際し、電荷輸送物質として、前記構造式(2)で表される電荷輸送物質1Aに代えて、下記構造式(3)で表される電荷輸送物質1Bを用いること以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感光体を作製した。
(実施例5)
電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14の配合量を0.05重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、実施例5の感光体を作製した。
(実施例6)
電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14の配合量を1.0重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感光体を作製した。
(実施例7)
電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14の配合量を0.025重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、実施例7の感光体を作製した。
(実施例8)
電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14の配合量を1.15重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、実施例8の感光体を作製した。
(実施例9)
電荷発生層の形成に際し、電荷発生層用塗布液に例示化合物No.14のアミン化合物0.1重量部を添加し、電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14のアミン化合物を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9の感光体を作製した。
(実施例10)
電荷発生層の形成に際し、電荷発生層用塗布液に例示化合物No.2のアミン化合物0.1重量部を添加し、電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14のアミン化合物を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、実施例10の感光体を作製した。
(比較例1)
電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14のアミン化合物を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の感光体を作製した。
(比較例2)
電荷輸送層の形成に際し、電荷輸送物質として前記構造式(2)で表される電荷輸送物質1Aに代えて前記構造式(3)で表される電荷輸送物質1Bを用い、例示化合物No.14のアミン化合物を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の感光体を作製した。
(比較例3)
電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14に代えて、下記構造式(4)で表されるトリアルキルアミン化合物(以下、添加化合物2Aとも称する)を用いること以外は、実施例1と同様にして、比較例3の感光体を作製した。
N(n−C10H21)3 …(4)
(比較例4)
電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14に代えて、下記構造式(5)で表される芳香族アミン化合物(以下、添加化合物2Bとも称する)を用いること以外は、実施例1と同様にして、比較例4の感光体を作製した。
(比較例5)
電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14に代えて、下記構造式(6)で表されるヒンダードアミン化合物(商品名:TINUVIN622、分子量3100〜4000、日本チバガイギー株式会社製)を用いること以外は、実施例1と同様にして、比較例5の感光体を作製した。以下、下記構造式(6)で表されるヒンダードアミン化合物を添加化合物2Cとも称する。なお、TINUVIN622は、下記構造式(6)においてm=11〜14の化合物の混合物である。
(比較例6)
電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14に代えて、下記構造式(7)で表される3級アミン化合物(以下、添加化合物2Dとも称する)を用いること以外は、実施例1と同様にして、比較例6の感光体を作製した。
(比較例7)
電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14に代えて、下記構造式(8)で表されるヒンダードフェノール化合物(以下、添加化合物2Eとも称する)を用いること以外は、実施例1と同様にして、比較例7の感光体を作製した。
(比較例8)
電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14に代えて、下記構造式(9)で表されるベンゾトリアゾール化合物(以下、添加化合物2Fとも称する)を用いること以外は、実施例1と同様にして、比較例8の感光体を作製した。なお、下記構造式(9)において、t−Buは、t−ブチル基を示す。
(比較例9)
電荷発生層の形成に際し、電荷発生層用塗布液に、比較例5で用いた前述の構造式(6)で表されるヒンダードアミン化合物(添加化合物2C)0.1重量部を添加し、電荷輸送層の形成に際し、例示化合物No.14のアミン化合物を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例9の感光体を作製した。
以上のようにして作製した実施例1〜10および比較例1〜9の各感光体を、感光体の帯電手段としてコロナ放電帯電器を備える市販のデジタル複写機AR−C280(商品名、シャープ株式会社製)にそれぞれ装着し、以下のようにして初期の電気特性および電気的耐久性を評価した。なお、前述のデジタル複写機AR−C280は、感光体表面を負に帯電して反転現像プロセスで画像を形成する負帯電型の画像形成装置である。
まず、デジタル複写機AR−C280(商品名、シャープ株式会社製)から現像器を取外し、代わりに現像部位に画像形成過程における感光体の表面電位を測定できるように表面電位計(商品名:model 344、トレック社製)を設けた。この複写機を用い、温度25℃、相対湿度20%の環境下において、レーザ光による露光を施さなかった場合の感光体の表面電位を帯電電位V0(V)として測定し、レーザ光によって露光を施した場合の感光体の表面電位を露光電位VL(V)として測定した。以上の測定結果を初期の電気特性の評価指標とした。初期の電気特性は、帯電電位V0の絶対値が大きいほど帯電性に優れると評価し、露光電位VLの絶対値が小さいほど応答性に優れると評価した。
次に、前述の複写機から表面電位計を取出して再び現像器を搭載した。この複写機を用いて所定のパターンのテスト画像を記録用紙2万枚に形成させた。複写機を2万枚の画像形成が終了した時点から24時間放置した後に、再び現像器を取出して現像部位に前述の表面電位計を設け、24時間放置時にコロナ放電帯電器の直下に配置されていた部分(以下、帯電器直下部分と称する)および24時間放置時にコロナ放電帯電器の直下以外の位置に配置されていた部分(以下、帯電器直下外部分と称する)について、初期と同様にして帯電電位V0(V)および露光電位VL(V)をそれぞれ測定した。
測定結果から、帯電器直下部分の帯電電位V0をV0(1)とし、帯電器直下外部分の帯電電位V0をV0(2)として、V0(1)とV0(2)との差の絶対値を帯電電位変化量ΔV0(V)(=|V0(2)−V0(1)|)として求めた。また帯電器直下部分の露光電位VLをVL(1)とし、帯電器直下外部分の露光電位VLをVL(2)として、VL(1)とVL(2)との差の絶対値を露光電位変化量ΔVL(V)(=|VL(2)−VL(1)|)として求めた。帯電電位変化量ΔV0が小さいほど、また露光電位変化量ΔVLが小さいほど、電気的耐久性に優れると評価した。
以上の評価結果を表4に示す。なお、表4では、電荷輸送物質をCTM(Charge
Transport Material)と略称する。
実施例1〜10と比較例1,2との比較から、一般式(1)で表されるアミン化合物が感光層に添加された実施例1〜10の感光体は、一般式(1)で表されるアミン化合物が感光層に添加されていない比較例1,2の感光体に比べ、帯電電位変化量ΔV0および露光電位変化量ΔVLが小さく、24時間放置時のコロナ帯電器直下部分のV0およびVLの低下度合いが小さいことが判った。このことから、一般式(1)で表されるアミン化合物を感光層に添加することによって、コロナ放電帯電器から放出されるオゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスから感光体を保護し、感光体の疲労劣化を抑制できることが判る。また実施例1〜8と実施例9,10との比較から、一般式(1)で表されるアミン化合物による感光体の疲労劣化抑制効果は、一般式(1)で表されるアミン化合物を電荷輸送層および電荷発生層のいずれに添加しても発揮されることが判る。
これに対し、比較例1,2の感光体は、実施例1〜10の感光体に比べ、帯電電位変化量ΔV0および露光電位変化量ΔVLが大きく、24時間の放置によってコロナ放電帯電器直下部分のV0およびVLが著しく低下していることが判る。これは、コロナ放電帯電器から放出されるオゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスが感光層に著しい損傷を与えたためであると推察される。
また、実施例1〜4と比較例3〜6との比較および実施例9,10と比較例9との比較から、一般式(1)で表されるアミン化合物が感光層に添加された実施例1〜4,9および10の感光体は、公知の添加化合物2A、2B、2Cまたは2Dが感光層に添加された比較例3〜6,9の感光体に比べ、初期の露光電位VLの絶対値が小さく、応答性に優れることが判る。これに対し、比較例3〜6,9の感光体は、実施例1〜4,9,10の感光体に比べ、帯電電位変化量ΔV0および露光電位変化量ΔVLは同程度であるけれども、初期から露光電位VLの絶対値が大きく応答性に劣り、2万枚画像形成後には露光電位VLの絶対値の大幅な上昇が見られる。このことから、添加化合物2A、2B、2Cおよび2Dは、オゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスによる感光体の疲労劣化の抑制には効果を発揮するけれども、これらの添加化合物を感光層に添加することによって応答性の低下が生じることが判る。
また、実施例1〜4と比較例7,8との比較から、一般式(1)で表されるアミン化合物が感光層に添加された実施例1〜4の感光体は、添加化合物2Eまたは2Fが感光層に添加された比較例7,8の感光体に比べ、帯電電位変化量ΔV0および露光電位変化量ΔVLが小さく、電気的耐久性に優れることが判る。これに対し、比較例7,8の感光体は、実施例1〜4の感光体に比べ、帯電電位変化量ΔV0および露光電位変化量ΔVLが大きく、24時間の放置によってコロナ放電帯電器直下部分のV0およびVLが著しく低下していることが判る。このことから、添加化合物2Eおよび2Fは、オゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスによる感光体の疲労劣化に対する抑制効果がないことが判る。
また、実施例1,5,6と実施例7,8との比較から、一般式(1)で表されるアミン化合物が電荷輸送物質100重量部に対して1〜20重量部の割合で電荷輸送層に添加された実施例1,5および6の感光体は、一般式(1)で表されるアミン化合物の添加量が電荷輸送物質100重量部に対して1重量部未満であり、前記範囲を小さい方に外れる実施例7の感光体に比べ、帯電電位変化量ΔV0が小さく、オゾン、窒素酸化物などの酸化性ガスによる感光体の疲労劣化を効果的に抑制できることが判る。また一般式(1)で表されるアミン化合物の添加量が電荷輸送物質100重量部に対して20重量部を超え、前記範囲を大きい方に外れる実施例8の感光体に比べ、2万枚の画像形成後の露光電位VLの絶対値が小さく、応答性に優れることが判る。このことから、一般式(1)で表されるアミン化合物を感光層に添加する際の添加量は、感光層に含有される電荷輸送物質100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下の割合であることが好ましいことが判る。
以上のように、一般式(1)で表されるアミン化合物を感光層に含有させることによって、帯電性、感度および応答性などの電気特性に優れるとともに、耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性に優れ、繰返し使用されても前述の良好な電気特性が低下しない電気的耐久性に優れる電子写真感光体を得ることができた。