JP3966670B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、Si を 0.2 %未満、Mnを0.8 %以上含み、Pを0.02質量%未満含む高張力鋼板を下地鋼板とし、該下地鋼板に溶融亜鉛めっきを施してなる、自動車用鋼板として好適な溶融亜鉛めっき鋼板に係り、とくに、めっき外観、めっき密着性、プレス成形性および溶接性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車、家電などの分野では、その使用環境に鑑み、高耐食性を有する表面処理鋼板が要求され、種々の亜鉛系めっき鋼板が開発されて実用化が進んでいる。なかでも、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板などの溶融亜鉛めっき鋼板は、電気亜鉛系めっき鋼板に比べ、製造コストが低廉で、かつ良好な耐食性を有しているため広く使用されている。
【0003】
また、地球温暖化防止の観点から、自動車の燃費向上が大きな課題の1つとなっており、自動車車体の軽量化と、乗員の安全性確保との両立を目指して、使用する鋼板のゲージダウン・高強度化が求められている。
一般に、鋼板の高強度化のために、Si、Mn、P等の固溶強化元素の添加が行われている。しかし、連続式溶融めっき鋼板製造ライン等で鋼板に還元焼鈍を施す際に、Si、Mn等の固溶強化元素は選択酸化されて、表面濃化する。鋼板表面に濃化したこれら固溶強化元素の酸化物により、溶融亜鉛めっき処理に際し、鋼板と溶融亜鉛との濡れ性が著しく低下するため、溶融亜鉛めっき層の密着性が著しく低下する。そして、極端な場合には、溶融亜鉛が鋼板に付着しない、いわゆる不めっきといった現象が生じる。
【0004】
さらに、溶融亜鉛めっきに引き続き、合金化加熱処理を施す場合には、鋼中Pの存在により、合金化が著しく遅延する。このため、合金化を達成するためには、合金化加熱温度を極端に高くするか、あるいは、ライン速度を極端に遅くする必要がある。しかし、合金化加熱温度を極端に高めると、硬くて脆い合金相の生成が助長されてプレス成形時にめっき層が剥離しやすくなり、また、ライン速度を極端に遅くすると、生産性が著しく低下するという問題が生じる。また、合金化加熱温度の上昇や、ライン速度の増加は、従来型の合金化処理装置での合金化処理を困難にすることになる。
【0005】
このような下地鋼板の組成の違い、すなわち鋼種が異なるごとに、合金化加熱温度、ライン速度といった合金化処理条件を頻繁に変更することは、条件の変更に時間を要するため生産能率や歩留りが低下すること、また、処理条件を短時間に安定化させるためにはかなりの熟練を要することなど、安定した合金化処理を維持するには多くの困難が伴うという問題があった。
【0006】
さらに、鋼板中に多量にPが含有されると、Pの粒界偏析により合金化挙動に差が生じ、色調むらが発生するという問題もある。
このような問題に対し、特開平11−50220 号公報には、Mn含有量が0.2 %以上、Nb含有量が0.005 %以上、Ti含有量が0.01%以上のうち1または2以上を満たし、かつP含有量が0.02%以上である高強度鋼板に、硫黄または硫黄化合物をS量として0.1 〜1000mg/m2 付着させた後、水素を含む非酸化性雰囲気で680 ℃以上の温度で焼鈍し、その後少なくとも0.05〜0.30%のAlを含む溶融亜鉛浴に浸漬してめっきを行うP含有高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が提案されている。
【0007】
なお、特開平11−50220 号公報には、用いる硫黄化合物として、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸ソーダ、亜硫酸ソーダ等の無機硫酸塩、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリ等のチオシアン酸塩、アルキルメルカブタン、チオ尿素などの脂肪族有機物が例示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−50220 号公報に記載された技術では、Mn:0.2 %以上、P:0.02%以上を含む鋼板を使用している。Pを0.02%以上含有する場合には、鋼板粒界に偏析したPがMnの表面濃化を抑制するバリヤー効果を生むのでめっき性には有利であり、硫黄または硫黄化合物を付着させることなく、不めっきを防止することができる。しかし、Pが0.02%未満と鋼中Pが少ない場合には、Mnの表面濃化を抑制する効果が少なくなり、微小な不めっきを完全に防止することはできないという問題があった。
【0009】
また、Pが0.02%以上含有される場合には、スポット溶接性が劣化し、溶接部位から部材破断が発生することがあり、Pで高強度化した鋼板は溶接を必須とする使途には適用できないという問題もある。
このようなことから、Pを0.02%未満に低減しスポット溶接性を改善し、かつ不めっきを防止できる高強度溶融亜鉛めっき鋼板が要望されていた。
【0010】
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、めっき外観、めっき性、めっき密着性、溶接性さらにはプレス成形性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を達成するため、Mn:0.8 質量%以上、P:0.02質量%未満を含有する高張力鋼板の表面に付着して、溶融亜鉛めっき性を改善できる薬剤について鋭意研究した。その結果、高張力鋼板の表面に、硫黄または硫黄化合物を付着させて熱処理を施すことにより、溶融亜鉛めっき性が顕著に改善することを知見した。
【0012】
まず、本発明者らが行った実験結果を説明する。
Mn:1.8 質量%、P:0.01質量%を含有する高張力鋼板の表面に、硫黄化合物を含む水溶液(チオ硫酸アンモニウム水溶液)を塗布して、硫黄化合物をS換算で50mg/m2 付着して、N2+5vol%H2雰囲気中で板温:800 ℃とする焼鈍(熱処理)を施し、さらに熱処理後直ちに浴温:470 ℃、浴組成:Zn−0.14質量%Alとした溶融亜鉛めっき処理を施した。熱処理後の鋼板および溶融亜鉛めっき−合金化処理後の鋼板について、グロー放電分光法(GDS)を用いて、表面から深さ方向のMn、S、Fe、Alの分布を分析した。その結果を図1(熱処理後)および図2(溶融亜鉛めっき−合金化処理後)に示す。なお、比較として、硫黄化合物を付着せずに、鋼板を熱処理した場合のGDS分析結果を図3に示す。
【0013】
図3に示すように、硫黄化合物を付着させずに鋼板を熱処理した場合には、表層にMnの濃化が認められる。これに対し、図1に示すように、硫黄化合物を付着して熱処理した鋼板では、Mnの表層への濃化が著しく抑制されている。そして、鋼板表面と、表面より下の地鉄側にもSとMnの濃化が認められた。これはX線回折法により、MnS が生成していることを確認した。
【0014】
溶融亜鉛めっき−合金化処理を施したのちも、図2に示すように、合金化溶融亜鉛めっき層直下の地鉄中にもMnとSが残存していることがわかる。このように、質量%でMnを0.8 %以上、Pを0.02%未満含む鋼板表面に硫黄化合物アンモニウム塩を付着することにより、Mnの表面濃化が抑制でき、めっき性が改善できるという知見を得た。
【0015】
本発明は、上記した知見に基づいてさらに検討を行い、完成されたものである。
すなわち、本発明は、質量%で、Siを0.2 %未満、Mnを0.8 %以上含み、さらにPを0.02%未満含む組成の高張力鋼板の表面に、硫黄化合物として、 アンモニウム塩とアルカリ金属の無機硫酸塩を複合してS換算で0.1 〜1000mg/m2 付着させたのち、熱処理を施し、ついで溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であり、また、本発明では、前記溶融亜鉛めっき処理後、直ちに合金化処理を施すことが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。なお、とくに断らないかぎり、組成における質量%は単に%と記す。
本発明では、めっきの下地鋼板として、Si を 0.2 %未満、Mnを0.8 %以上、Pを0.02%未満含有する高張力鋼板を用いる。Mn含有量が0.8 %未満では、焼鈍時のMnの表面濃化が少なく、めっき性は良好であり、また合金化の遅延はなく耐パウダリング性も良好であり、本発明の効果が明確とならないため、本発明の対象外とする。なお、本発明では、Mnは冷間圧延性の観点から5%以下とするのが好ましい。5%を超える過剰のMnの含有は、鋼板を硬質化させ、冷間圧延を困難にする。
【0017】
また、本発明では、P含有量を0.02%未満とする。P含有量が0.02%を超えると、スポット溶接性が劣化し、溶接部位から部材破断が発生するため、Pは0.02%未満に限定する。また、本発明では Si 含有量を 0.2 %未満とする。
上記した以外の化学成分は、熱処理時の鋼板表面と表面より下の地鉄側のMn、Sの濃化、さらに好ましくはMnS の生成を阻害しない元素であれば、とくに限定する必要はなく、所望の特性に応じ適宜含有することができる。例えば、C:0.0005〜0.5 %、S:0.05以下、Nb:0.001 〜0.20%以下、Ti:0.1 以下、B:0.005 %以下、Cr:0.05%以下が、それぞれ個別に許容できる。
【0018】
本発明では、上記した組成のSi、Mn、Pを含有する高張力鋼板の表面に、硫黄化合物(S成分)を付着させる。なお、鋼板の表面は、好ましくはアルカリ脱脂、酸洗等により、親水性の表面としておくことが好ましい。親水性の表面としておくことにより、S成分が均一に付着する。
硫黄化合物としては、硫黄化合物である硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸ソーダ、亜硫酸ソーダ等のアルカリ金属の無機硫酸塩と、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム等のアンモニウム塩とを複合して使用する。なお、Na、K等のアルカリ金属を含む薬剤を使用すると、鋼板表面に融点の低い金属酸化物が生成し、熱処理炉内のロールに付着しロール表面を傷めることがあり、アンモニウム塩と併用する。
【0019】
これら硫黄化合物を、水または有機溶剤に溶解あるいは混合したり、前処理液(例えば脱脂液、あるいは水洗液)中に混合したり、あるいは冷間圧延時の防錆油中に混合したりして用いることができる。また、付着性を高めるために界面活性剤を添加してもよく、また、反応性を高めるために反応促進剤を添加してもよい。溶液中の硫黄化合物の濃度は、付着膜厚との関係で決定されるが、多くても50%以下、乾燥のしやすさから1〜30%とするのが好ましい。
【0020】
また、硫黄化合物の鋼板への付着方法は、とくに限定するものではなく、設備的あるいはコスト的に有利な方法を用いればよい。例えば、硫黄化合物を溶解した液を、ロールコーターで塗布して付着する方法、布状物で塗布して付着する方法、スプレーで噴霧して付着する方法、あるいは電気めっき法、無電解めっき法、蒸着法等で付着する方法などが好適である。
【0021】
硫黄化合物の鋼板表面への付着量は、S換算で0.1 〜1000mg/m2 とする。付着量が0.1mg/m2未満では熱処理時にMnの表面濃化を抑制するには不十分であり、めっき性が低下し、不めっきが発生するとともに、合金化処理時に合金化の遅滞が生じる。
付着量が多くなるにしたがい、表面濃化の抑制効果は向上するが、硫黄化合物をS換算で1000mg/m2 超えて付着させると、効果が飽和し、付着量に見合う効果が期待できず、経済的に不利となるうえ、めっき性に悪影響を与える場合がある。なお、好ましくは5 〜200mg/m2である。より好ましくは10〜120mg/m2である。なお、付着量の好適範囲は、熱処理炉内のガス流量、水素濃度、ライン速度等の製造条件により変動するため、上記した範囲内で製造設備に最適の付着量を採用するのが好ましい。なお、付着量の調整は、溶解液の濃度調整、リンガーロールの押付け圧等によるのが好ましい。
【0022】
上記したように、表面に、硫黄化合物を付着させた鋼板はついで、溶融亜鉛めっきを施す前に、熱処理を施される。なお、熱処理前に、自然乾燥、あるいは強制乾燥、あるいは乾燥のための加熱を行ってもよい。あるいは、硫黄化合物を付着させのち直ちに熱処理に供してもよい。
熱処理では、加熱温度を600 ℃以上、好ましくは950 ℃以下とする。加熱温度が600 ℃未満では、鋼板表層におけるMnとSの濃化、さらにMnS 等の硫黄化合物の生成が遅く、長時間の加熱を必要とし生産能率を低下させ経済的でない。加熱温度が950 ℃を超えると、再結晶のためには高すぎ、経済的に不利になるという問題がある。また、熱処理時の雰囲気は、非酸化性あるいは還元性とするのが好ましい。事前に酸化処理を行ってもよい。なお、熱処理における加熱保持時間は、再結晶の観点から0〜120 sとするのが好ましい。また、加熱方式はオールラジアントチューブ方式、ガス加熱方式、誘導加熱方式等の連続方式、あるいはバッチ式の加熱方式等、従来公知の方法がいずれも適用できる。
【0023】
鋼板表面に硫黄化合物を付着させたのち、熱処理を行うことにより、鋼板表面に付着したS成分は、鋼板の地鉄中に拡散し、鋼板中に均一に分散したMn等と反応してMnS 等の硫黄化合物を生成する。この硫黄化合物は、鋼板結晶粒内に限らず、結晶粒界にも生成し、硫黄濃化層を形成する。この結果、Mnの表面濃化(表層でのMn酸化物の生成)を抑制するとともに、この硫黄濃化層が一種のバリヤー層となることにより、Mnの鋼板表層への拡散経路あるいは雰囲気ガス成分の鋼板中の拡散経路を遮断し、Mnの表面濃化(表層でのMn酸化物の生成)を抑制する。なお、硫黄化合物は一部がめっき層中に含まれてもよい。
【0024】
上記した熱処理を施された鋼板は、直ちに溶融亜鉛めっき処理を施される。
溶融亜鉛めっき処理は、浴温:450 〜550 ℃の溶融亜鉛浴に鋼板(下地鋼板)を浸漬して行うのが好ましい。
溶融亜鉛浴としては、従来から使用されている、0.1 〜0.2 質量%Alあるいはさらに0.005 〜0.05質量%のFeを含有する組成の溶融亜鉛浴を用いるのが好ましい。溶融亜鉛浴中のAl含有量が、0.1 質量%未満ではめっき処理において鋼板と亜鉛が反応しやすく、Fe−Zn合金相が大量に生成する。このため、めっき密着性が劣化する。また、Al含有量が0.2 質量%を超えると、鋼板とAlが反応して、厚いFe−Al合金相を生成する。このため、めっき処理後の合金化が著しく遅延する。
【0025】
めっき処理時の溶融亜鉛浴の浴温は450 〜550 ℃であればよい。浴温が450 ℃未満では、めっき処理時の適正なFe−Al合金相の生成が抑制される。一方、浴温が550 ℃を超えると、Fe−Zn合金相の生成が促進され、めっき密着性が劣化するとともに、亜鉛浴を保持する溶解炉で亜鉛による浸食が促進され、溶解炉の壁面が劣化する。また、めっき浴中には、Fe、Si、Mg、Mn、Ni、Pb、Sb、Sn、La、In、Ce、Cd、Co等の不可避的不純物が含有されていても問題はない。
【0026】
溶融亜鉛めっきの付着量の調整は、通常公知のガスワイピング等の方法でよく、めっき層の防錆性、およびめっき層の密着性の観点からめっき層の付着量は20〜120g/m2 程度とするのが好ましい。
めっき処理後、合金化処理を行うことにより、合金化溶融亜鉛めっき鋼板としてもよい。合金化処理後のめっき層の平均Fe含有率は、7〜13質量%とするのが好適である。めっき層の平均Fe含有率が7質量%未満では、一部η相(Zn相)が残存し、合金化が完了せず、あるいは表層に比較的軟質なζ相(Fe含有率の低いFe−Zn合金相)が大量に残存し、プレス成形時の耐フレーキング性を劣化する。一方、めっき層の平均Fe含有率が13質量%を超えると、めっき層と下地鋼板との界面に硬くて脆いΓ相(Fe含有率の高いFe−Zn合金相)が残存し、プレス成形時の耐パウダリング性を劣化する。
【0027】
合金化処理における鋼板の加熱温度は、450 〜600 ℃とするのが好ましい。加熱温度が450 ℃未満では、めっき層のFe含有率を7質量%以上とするために、長時間の加熱処理や、長大な合金化炉を必要とし、あるいは鋼板の搬送速度を低速するなどの処置が必要となり、生産性が低下する。一方、加熱温度が600 ℃を超えると、硬くて脆いΓ相が短時間加熱で生成し、耐パウダリング性が劣化する。
【0028】
なお、合金化処理時の鋼板加熱方式は、とくに限定されることはなく、ガス加熱方式、誘導加熱方式、通電加熱方式等がいずれも適用可能である。
上記した製造方法で得られた溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板の地鉄表面上に溶融亜鉛めっき層、あるいは合金化溶融亜鉛めっき層を有し、さらに前記溶融亜鉛めっき層あるいは合金化溶融亜鉛めっき層と前記鋼板の地鉄との界面から、地鉄側に硫黄濃化層を有するめっき鋼板である。硫黄濃化層中には硫黄化合物としては、MnS が析出している。硫黄濃化層には、単にSが濃化しただけでもよいのはいうまでもない。
【0029】
【実施例】
表1に示す組成の冷延鋼板にアルカリ脱脂、酸洗を施したのち、表2に示す種類と濃度の薬剤(硫黄化合物)を含む水溶液を、バーコータにより鋼板表面に均一に塗布した後、直ちにドライヤー乾燥させた。硫黄化合物としては、硫酸アンモニウムとチオ硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムと硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウムを使用した。なお、水溶液中の硫黄化合物の濃度は、3%、10%、30%とした。なお、比較例として、薬剤を全く付着させない場合についても実施した。また、薬剤の付着量は、薬剤が付着した鋼板を80℃加温水中に浸漬し、攪拌して付着物を溶解したのち、溶解液中のS量を原子吸光法により定量した。
【0030】
ついで、これら鋼板に、溶融めっきシミュレーターを用いて、熱処理および溶融亜鉛めっき処理を施した。熱処理条件は、
板温 : 850 ℃
保持時間: 60秒
雰囲気 : N2−5vol %H2(露点:−40℃)
とした。また、溶融亜鉛めっき処理条件は、
浴組成 : 0.14質量%Al−Zn
浴温 : 470 ℃(≒めっき板温)
浸漬時間: 2秒
付着量 : 片面30g/m2
とした。
【0031】
なお、全ての鋼板について、溶融亜鉛めっき処理後、さらに合金化処理を行った。合金化処理条件は、
板温 : 460, 490, 520 ℃の3水準
とし、溶融亜鉛めっき層中の平均Fe含有量が9〜11質量%となるように保持時間を調整した。
【0032】
まず、溶融亜鉛めっき処理後の鋼板について、めっき性試験、およびボールインパクト試験を実施し、めっき性およびめっき密着性を評価した。なお、試験方法は下記の通りとした。
(1)めっき性試験
溶融亜鉛めっき鋼板のめっき表面を、10倍に拡大して、目視で不めっき発生状況を観察しめっき性を評価した。なお、不めっき個所が1m2当たり5個所以上の場合を×、5個所未満〜1個所以上の場合を△、不めっきなしの場合を○とした。
(2)ボールインパクト試験(めっき密着性試験)
ボールインパクト試験は、直径1/2 インチ(12.7mm)の半球状突起の上に載せた溶融亜鉛めっき鋼板上に、1kgの重りを1mの高さから落下させたのち、セロハン粘着テープをはり付け、引き剥がして、めっき層の剥離状態を調査した。めっき剥離ありを×、めっき剥離なし、めっき亀裂ありを△、めっき剥離、亀裂なしを○、としてめっき密着性を評価した。
【0033】
ついで、合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、外観試験、耐パウダリング試験、カップ絞り試験およびスポット溶接試験を実施した。
(3)外観試験
各合金化溶融亜鉛めっき鋼板の外観を、目視で観察し、異物付着あるいは色調ムラあるいは合金化ムラ等の状況を調査した。その観察結果を、○:異物付着、色調ムラおよび合金化ムラなく良好、△:微細な異物付着あるいはうすい色調ムラあるいは微細な筋状の合金化ムラが発生、×:明瞭な異物付着あるいは明瞭な色調ムラあるいは明瞭な筋状の合金化ムラ、局部的な焼けムラ発生として評価した。
(4)耐パウダリング試験
各合金化溶融亜鉛めっき鋼板から採取した曲げ試験片(30mm幅×40mm長さ)に、90゜曲げ戻しを行った後、めっき面にセロハン粘着テープをはり付け、引き剥がして、テープに付着するZn量により耐パウダリング性を評価した。幅24mmのテープに付着するZn量が1000 cps以下を○、1000超2000 cps以下を△、2000 cps超を×として評価した。
(5)カップ絞り試験
各合金化溶融亜鉛めっき鋼板から採取した試験片(φ73mm円板)に、洗浄油を両面に塗油したのち、ポンチ径:33mm、しわ押え圧:500kgf(4.90kN)として、絞り比2.0 のカップを成形した。これらカップの側壁部にセロハン粘着テープをはり付け、引き剥がして、テープに付着するZn量を測定し、摺動性を評価した。幅24mmテープに付着するZn量が200cps以下を○、200 超300cps以下を△、300cps超を×として評価した。
(6)スポット溶接試験
一部の合金化溶融亜鉛めっき鋼板(板厚:0.8mm )について、各めっき鋼板ごとに重ねあわせ、Cu−Cr合金製の円錐台頭型電極(先端径:5mmφ)を用い、加圧力:200kgf(1.96kN)、初期加圧時間:30サイクル、通電時間:10サイクル、保持時間:5サイクル、溶接電流:9kAの溶接条件で連続打点を行い、電極交換までの連続打点数をスポット溶接性の一つの指標とした。連続打点数が3000点以上を○、3000未満〜2000点以上を△、2000点未満を×とした。また、スポット溶接部の引張剪断強度を求め、スポット溶接性の一つの指標とした。引張剪断強度が15kN以上を○、15kN未満を×とした。
【0034】
これらの結果を表2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0039】
本発明例は、いずれもめっき外観、めっき性、めっき密着性などのめっき品質や、溶接性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板となっている。
これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、いずれもめっき品質あるいは溶接性のいずれかが劣化していた。また、本発明例はいずれも、合金化速度が速く、合金化が促進されていることがわかる。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、合金化が遅延している。なお、比較例である Na を含む薬剤を単独で塗布した場合には、めっき外観にロールによるすり疵と考えられる若干の不良が見られた。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、Si を 0.2 %未満、Mnを0.8 質量%以上、Pを0.02%未満含有する高張力鋼板を下地鋼板として溶融亜鉛めっき処理あるいはさらに合金化処理を施しても、不めっき、合金化の遅滞等はなく、めっき外観、めっき密着性、めっき性および溶接性に優れためっき鋼板を生産性よく製造することができ、めっき品質の要求レベルの高い自動車用として適用拡大が可能となり、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を適用した熱処理後の鋼板断面における各元素の深さ方向分布状況を示すグラフである。
【図2】本発明の方法を適用した溶融亜鉛めっき処理−合金化処理後の鋼板断面における各元素の深さ方向分布状況を示すグラフである。
【図3】比較例の熱処理後の鋼板断面における各元素の深さ方向分布状況を示すグラフである。
Claims (2)
- 質量%で、Siを0.2 %未満、Mnを0.8 %以上含み、さらにPを0.02%未満含む組成の高張力鋼板の表面に、硫黄化合物としてアンモニウム塩とアルカリ金属の無機硫酸塩を複合してS換算で0.1 〜1000mg/m2 付着させたのち、熱処理を施し、ついで溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記溶融亜鉛めっき処理後、直ちに合金化処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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