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JP3956877B2 - センサ用温度補正装置およびセンサの温度補正方法 - Google Patents

センサ用温度補正装置およびセンサの温度補正方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、センサの温度特性変化のゼロ点補正を行うためのセンサ用温度補正装置およびセンサの温度補正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、各種センサは設置場所の温度およびその個々の製品によるバラツキによりその温度特性が変化する。このようなセンサは温度変化要因が複雑であるため、センサの温度特性は一般に単純な線形特性にはならない。すなわち、温度特性を補正するために、センサの環境温度をこの環境温度に依存する温度パラメータ信号として検出し、その温度パラメータ信号に基づいてセンサの検出信号の温度誤差の例えば絶対値補正(絶対補正)を行い、温度の単純線形的な勾配補正を行ったとしても、温度特性変化の補正(ゼロ点補正:オフセット補正)を正確に行うことができない。そこで、このようなセンサの温度特性変化の補正を行うために、温度補正用の信号処理回路が開示されている(振動ジャイロ(角速度センサ)に適用した一例としては、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1の概略的な構成を図6に示す。このとき、振動ジャイロ1から得られた角速度信号は増幅回路2により増幅されるとともに同期検波回路3により同期検波されA/D変換回路4によりデジタル値に変換される。このデジタル値は、マイクロコンピュータ5によって平滑処理される。また一方で温度センサ6からの温度パラメータ信号がA/D変換回路4によりデジタル値に変換されてマイクロコンピュータ5に温度データとして入力される。マイクロコンピュータ5は、平滑処理されたデータを温度データに応じて温度補正し温度特性データとしてEEPROM7に記憶させる。振動ジャイロ1により角速度を通常測定する場合には、マイクロコンピュータ5は、EEPROM7に記憶された温度特性データを取得してゼロ点補正を行い、D/A変換回路8によりアナログ値に変換し補正出力するようになっている。このような信号処理を施すことにより温度特性のゼロ点補正を効率的にかつ完全に図ろうとしている。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−160100号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、温度補正を目的としてマイクロコンピュータ5やEEPROM7等を使用しているため、大幅なコストアップが生じ、さらに、A/D変換回路4およびD/A変換回路8によりA/D,D/A変換処理が行われるため、温度補正に不必要な処理が数多くなされることになり、処理に長時間を要し、しかも特に量子化誤差が多くなるため好ましくない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストアップを抑えながら量子化誤差をなくした状態でセンサの温度補正を短時間で行うことができるセンサ用温度補正装置およびその温度補正方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1または記載の手段を採用することができる。尚、検出されるセンサの環境温度の温度パラメータ信号をf(この信号は例えば検出される環境温度Tに比例)、勾配補正信号生成手段が生成する勾配補正用に選択的に直流信号を生成するときの複数の選択肢をD21…D2n,温度補正前のセンサの検出信号をDdとする。請求項1または記載の発明によれば、まず、センサの環境温度を温度パラメータ信号として検出し、勾配補正信号生成手段が検出された温度パラメータ信号に応じて複数の選択肢D21…D2nの中から選択的に直流信号を出力し、アナログ回路による増幅回路が、当該直流信号を温度パラメータ信号に応じて増幅する。このとき例えば、勾配補正用の直流信号としてD22が選択された場合、増幅回路が、この直流信号を温度パラメータ信号に例えば比例もしくは反比例するように増幅する。すると例えば比例するように増幅された場合の増幅信号は、D22×f×C(ここでCは比例定数)で表わすことができ、この増幅信号は勾配補正用の直流信号D22,および温度パラメータ信号fに比例する。尚、温度パラメータ信号fが環境温度Tに比例する場合には増幅信号は環境温度Tにも比例する。
【0008】
ここで勾配補正用の直流信号は、温度パラメータ信号に応じて出力されるため、勾配補正信号生成手段の複数の直流信号D21…D2nのレベルがセンサの温度特性に応じてそれぞれ予め定められていれば、センサの温度特性をセンサ使用温度範囲内で複数の線(例えば直線)で近似して補正することができる。この場合、アナログ回路により構成された加減算回路が、絶対補正信号生成手段により生成された直流信号,増幅回路の増幅信号をセンサの検出信号に所定の加減算をして補正する。すなわち、例えば、勾配補正用の直流信号D22に選択されれば、上述したように増幅信号D22×f×Cとセンサの検出信号Ddとが、加減算回路により所定の加減算がなされて補正されたセンサの検出信号が出力される。
【0009】
したがって、例えばセンサの使用温度範囲全体においてセンサ温度特性のゼロ点補正を線近似して行う場合に、上述のようにセンサの環境温度に応じて温度補正用の線の勾配を選択的に複数変化させて補正することができ、しかも、温度補正処理に必要とされる処理としてデジタル処理を削除することができ、量子化誤差をなくすことができ、温度補正処理を極めて短時間で行うことができる。
このようにして、温度の勾配補正および絶対補正を行うことができるが、このような調整時には、例えば絶対補正を行うことにより勾配補正量がずれてしまったり、逆に勾配補正を行うことにより絶対補正量がずれてしまったりすることがある。これは勾配補正および絶対補正に伴うパラメータが独立性を有していないことに起因するものであることが発明者らにより突きとめられている。この場合、手動もしくは自動で補正を行ったとしても、パラメータが相互に関連しあうため、絶対補正および勾配補正の補正量を素早く調整することが難しい。
そこで、請求項1記載の発明では、センサの使用温度範囲全体に渡り所定量の絶対補正を行うための直流信号を絶対補正用に生成する絶対補正信号生成手段を備え、加減算回路は、勾配補正信号生成手段により出力された直流信号および前記増幅回路の増幅信号を第1の所定の加減算を行い、絶対補正信号生成手段の直流信号およびセンサの検出信号を加えて第2の所定の加減算をして補正するように構成されたものであって、勾配補正信号生成手段は、前記加減算回路により第1の所定の加減算が行われた結果が0となる条件を満たす温度を境界温度として当該境界温度の上下で異なる直流信号を選択的に出力するように構成されているところにも特徴を有している。
この場合、増幅回路が増幅する増幅信号は、温度パラメータ信号に依存しており、勾配補正信号生成手段により出力された直流信号は温度パラメータ信号に依存していないので、第1の所定の加減算が行われた結果はある温度において0となる。この温度を境界温度とすると、勾配補正信号生成手段は、境界温度の上下で異なる直流信号を選択的に出力するので、補正用の勾配を境界温度の上下で切り替えることができる。
このとき作業者が、例えば、この境界温度で絶対補正信号生成手段の直流信号を外部から調整すれば、境界温度においては勾配補正信号生成手段が出力する直流信号の影響を受けることがないので、勾配補正量が変化することはない。その後、作業者等が、境界温度の上側温度および下側温度において、勾配補正用の直流信号を外部から調整すれば、絶対補正量が変化することがなくなる。すなわち、パラメータの独立性を確保することができ、補正量の調整を素早く行うことができる。
【0010】
ところで、センサの温度特性は、一般に同種類のセンサであっても個体に応じて特性が異なるため、請求項1記載の発明の勾配補正信号生成手段の直流信号のレベルが、個々のセンサを搭載した装置毎に同レベルで設定されていたとしてもセンサの温度勾配補正が適正に行われるとは限らない。特に、製造ラインでセンサを搭載した装置を数多く製造する場合には調整の点で問題が生じる。
【0011】
そこで、請求項2記載の発明によれば、勾配補正信号生成手段が生成する複数の直流信号のレベルがそれぞれ外部から調整可能になっているため、たとえ製造ライン等でセンサを搭載した装置を数多く製造したとしても、製造ライン等で外部から勾配補正信号生成手段の直流信号のレベルを調整すれば良いため、個々のセンサの温度特性に合わせて調整することができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、絶対補正信号生成手段が、センサの使用温度範囲全体に渡り所定量の絶対補正を行うための直流信号を絶対補正用に生成するようになっている場合に、直流信号のレベルが外部から調整可能になっているため、たとえ使用温度範囲全体に渡りゼロ補正に伴う絶対量が個々のセンサ毎に異なっていたとしても、絶対補正信号生成手段の直流信号のレベルを製造ライン等で調整して絶対量補正を行えば良いため、個々のセンサの温度特性に合わせて調整することができる。
【0017】
尚、本発明における増幅回路は、その増幅率の絶対値が1を超えて増幅するものに限られず、増幅率の絶対値が1以下に増幅(減衰)するものも含まれることを意味している。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、自動車に搭載される角速度センサ(ヨーレートセンサ)用の温度補正装置に適用した第1の実施形態として図1ないし図2を参照しながら説明する。
図1は、概略的な電気的構成をブロック図で示している。自動車(車両)に搭載される角速度センサ(センサ;物理量センサ)11は、例えばPZTセラミックス圧電体からなる振動体を備え例えば音叉形状に形成されて構成されており(図示せず)、周知のようにコリオリの力を利用して自動車の角速度を検出するようになっている。この角速度センサ11は、自動車の横滑りを検出しブレーキの制動状態を制御したり自動車の後輪あるいは前輪の舵角を制御したりするために設けられるセンサであり、特に自動車の走行状態を安定状態に保つために設けられている。この角速度センサ11は、圧電体等に生じる電流や電圧を角速度信号として出力するようになっている。尚、角速度信号は、本発明におけるセンサの検出信号に相当する信号である。
【0019】
この角速度センサ11には、センサ信号増幅回路12が接続されている。センサ信号増幅回路12は、角速度センサ11により検出された角速度信号を増幅するようになっている。
【0020】
ところで、角速度センサ11により検出される角速度信号には、温度変化によりオフセットが生じ、このオフセットが問題になる。そこで、角速度センサ11の温度特性に伴うゼロ点補正が必要となる。そこでゼロ点補正するため、センサ用温度補正装置13がセンサ信号増幅回路12を介して角速度センサ11に接続されて設けられている。この温度補正装置13には、メモリ14が内蔵されており、出力用周辺回路15が、このメモリ14の記憶内容をD/A変換回路16a〜16cを介してアナログ直流信号電圧を直流信号として生成して出力するようになっている。
【0021】
メモリ14は、例えば30〜100ビット程度(望ましくは30ビット)の記憶容量を有するROMからなるものである。このメモリ14には、角速度センサ11の温度特性に応じて勾配補正用や絶対補正用のデータとして予め記憶される(この内容については後述する)。また出力用周辺回路15は、メモリ14に付属して設けられるもので、メモリ14に記憶された記憶内容を10ビットのデジタル値としてD/A変換回路16a〜16cにそれぞれ出力する小規模な回路である。D/A変換回路16a〜16cは、数ビット〜数十ビット(例えば10ビット)程度の分解能を有するデジタルアナログ変換回路により構成されており、それぞれ出力用周辺回路15から出力された10ビットのデジタル値をアナログ直流信号電圧に変換して出力するようになっている。
【0022】
出力用周辺回路15は、D/A変換回路16aを介してアナログ直流信号電圧V1を加算器17に与え、D/A変換回路16bを介してアナログ直流信号電圧を切替スイッチ18の一方の固定接点18aに与え、D/A変換回路16cを介してアナログ直流信号電圧を切替スイッチ18の他方の固定接点18bに与えるようになっている。
【0023】
切替手段として機能する切替スイッチ18は、一般的な複数入力1出力スイッチからなるもので、選択切替端子18dに与えられる選択切替信号(「ハイ」or「ロウ」)に応じて、固定接点18aおよび固定接点18bに与えられるアナログ直流信号電圧を選択的に切替えて可動接点18c側から出力するようになっている。このような接続関係において、メモリ14,出力用周辺回路15,D/A変換回路16b,16cおよび切替スイッチ18により、本発明の勾配補正信号生成手段Aが構成されており、メモリ14,出力用周辺回路15,D/A変換回路16aにより本発明の絶対補正信号生成手段Bが構成されている。
【0024】
切替スイッチ18の選択切替端子18dには、コンパレータ19の出力が与えられている。このコンパレータ19は、抵抗20および感温抵抗21により電源電圧が分圧された電圧が一方の入力端子に与えられ、しきい値電圧Vrefが他方の入力端子に与えられて構成されている。
【0025】
感温抵抗21は、角速度センサ11の周辺に設置され、角速度センサ11の環境温度を抵抗値信号(本発明の温度パラメータ信号)として検出するようになっている。この感温抵抗21は、角速度センサ11の使用温度範囲(例えば−40℃〜85℃)全体に渡り環境温度T毎に一意に抵抗値が決定される抵抗であり、この抵抗値Rtは、
Rt = R0 + Ra×(T−T0) … (1)
で表わされ環境温度Tに比例する。尚、T0は基準温度(常温;例えば25℃)、R0は基準温度における抵抗値を表わしている。
【0026】
したがって、角速度センサ11の環境温度が変化すると、その周辺に位置する感温抵抗21の抵抗値信号が変化し、コンパレータ19の一方の入力端子に与えられる電圧が変化し、コンパレータ19の出力「ハイ」or「ロウ」が切替わるようになっている。このようにして、勾配補正信号生成手段Aは、感温抵抗21により検出された抵抗値信号に応じて選択的に直流信号を勾配補正用に出力するようになっている。
【0027】
さて、切替スイッチ18の可動接点18cから出力されるアナログ直流信号電圧は、加算器17に与えられると共に、抵抗22,感温抵抗23およびオペアンプ24から構成される反転増幅回路25に与えられるようになっている。感温抵抗23は、感温抵抗21と同様に角速度センサ11の周辺に設置され、上述した(1)式と略同様の特性を有しているものである。増幅回路として機能する反転増幅回路25は、可動接点18cが抵抗22を介してオペアンプ24の反転入力端子に接続されるとともに、この反転入力端子からオペアンプ24の出力端子に感温抵抗23が介在して接続されて負帰還アナログ増幅回路により構成されている。
【0028】
この反転増幅回路25は、与えられたアナログ直流信号電圧を、環境温度Tに比例した増幅率で増幅し、加算器17に与えるようになっている。尚、このとき、可動接点18cから出力されるアナログ直流信号電圧をV2とすると、反転増幅回路25から出力されるアナログ直流信号電圧V3は、
V3 = −V2 × Rt/(抵抗22の抵抗値) …(2)
のようになる。このV3は、本発明の増幅回路の増幅信号に相当する。
【0029】
加減算回路としての加算器17は、非反転増幅器および反転増幅器等を組み合わせて構成されており、それぞれ与えられたアナログ直流信号電圧を所定の積算および加減算を行い、さらに、センサ信号増幅回路12から与えられた角速度信号を所定の加減算するようになっている。
【0030】
I.メモリ14に記憶されるデータの内容について
上述したように、メモリ14には、角速度センサ11の温度特性に応じて勾配補正用や絶対補正用のデータとして予め記憶される。このデータの内容を以下、概略的に説明する。
説明の便宜上、D/A変換回路16aから加算器17に与えられるアナログ直流信号電圧をV1とし、センサ信号増幅回路12から与えられる角速度信号の電圧(検出信号)をVsとし、加算器17の各ゲインをA1,A2,A3(図1参照)とする。上述説明した電圧の入出力関係において、加算器17の出力電圧Voutは、
Vout = Vs+A1×V1+A2×V2+A3×V3 …(3)
であり、(1)(2)式を代入すると、
Vout
=Vs+A1×V1+{A2−A3×Rt/(抵抗22の抵抗値)}×V2
=Vs+A1×V1+[A2−A3×{R0+Ra×(T−T0)}/(抵抗22の抵抗値)]×V2 …(4)
となる。電圧はすべて仮想GND電位(電源電圧の半分の電位)を基準としている。この(4)式が本発明の第2の所定の加減算(所定の加減算)に相当しており、センサの検出信号Vs(第1項)を除いた第2項および第3項が温度補正装置3による温度補正項を示している。また、(4)式の第3項は本発明の第1の所定の加減算に相当している。すなわち、切替スイッチ18により切替えられ出力されたアナログ直流信号電圧V2と反転増幅回路25の増幅信号電圧V3とを第1の所定の加減算を行った結果が第3項である。
【0031】
この場合、(4)式が示すように、加算器17の出力電圧Voutは、温度Tに比例した電圧になるが、温度Tに比例する比例係数は、加算器17のゲインA3や加算器17に与えられる電圧V2等により決定されるため、図1に示す加算器17のゲインA3を調整したり、電圧V2を変化させることで比例係数を調整することができる。この比例係数の調整により温度の勾配補正を行うことができる。
【0032】
また(4)式の第2項等は、出力電圧Voutの絶対値の補正項を示しており、電圧V1を変化させる等することにより、この出力電圧Voutを絶対値的に調整することができることを示している。この調整により、角速度センサ11の使用温度範囲全体に渡り所定量の絶対補正を行うことができる。
【0033】
メモリ14に記憶されるデータは、このような角速度センサ11の勾配補正用の電圧V2を表わすデータを2種類と、絶対補正用の電圧V1を表わすデータであり、これらのデータは、角速度センサ11の温度特性に応じて予め定められる。
【0034】
尚、上述したように、コンパレータ19には、抵抗20および感温抵抗21により電源電圧の分圧電圧が一方の入力端子に与えられ、しきい値電圧Vrefが他方の入力端子に与えられるが、このコンパレータ19に与えられる電圧や、反転増幅回路25を構成する抵抗22の値等も角速度センサ11の温度特性等に応じて予め定められる。
【0035】
上記構成の角速度センサ11の温度補正の動作(作用)を図2をも参照しながら説明する。
本実施形態では説明を便宜的に行うため、角速度センサ11の温度特性が図2(a)に実線で示すようになっており、角速度センサ11の使用温度範囲として、常温T1(25℃)を略中心として下限温度T2(−40℃)〜上限温度T3(+85℃)の範囲となることを前提として以下説明する。この角速度センサ11は、温度が上昇するに連れて出力されるアナログ信号電圧も非線形的に例えば2次曲線状に上昇する温度特性を有している。また、図2(b)は、メモリ14に予め定められている勾配補正量や絶対補正量を図示している。すなわち、絶対補正量は、角速度センサ11の使用温度範囲に渡り所定量に設定されており、勾配補正量は、常温T1より低温側では高温側に比較して低く設定されている。このとき、上限温度T3,常温T1または下限温度T2においては、勾配補正量および絶対補正量が加えられるとゼロ点に調整できる量で予め調整されている。出力用周辺回路15は、メモリ14から読み出した絶対補正電圧,2つの勾配補正電圧(図2(b)参照)を、アナログ直流信号電圧としてそれぞれD/A変換回路16a〜16cを介して出力する。このときの絶対補正電圧は直流信号電圧V1であり、勾配補正電圧は直流信号電圧V21,V22である。
【0036】
図2(b)において、角速度センサ11の使用温度範囲T2〜T3の全範囲において、絶対補正電圧V1に対応して補正される。
感温抵抗21および23は、角速度センサ11の環境温度を抵抗値(信号)の変化により検出するが、常温T1よりも高いときには、切替スイッチ18は固定接点18b側に切替えられる。したがって、勾配補正電圧V22が加算器17にアナログ直流信号電圧V2として与えられる。すなわち、図2(b)に示すように角速度センサ11の使用温度範囲T1〜T3の範囲において、勾配補正電圧V22に対応して補正される。
【0037】
逆に常温T1以下のときには、切替スイッチ18は固定接点18a側に切替えられる。したがって、勾配補正電圧V21が加算器17にアナログ直流信号電圧V2として与えられる。すなわち、図2(b)に示すように角速度センサ11の使用温度範囲T2〜T1の範囲において、勾配補正電圧V21に対応して補正される。
【0038】
使用温度範囲T2〜T3において、電圧V21,V22は反転増幅回路25により増幅され、加算器17は(4)式により加減算してVoutとして出力する。このときの補正後の出力結果を図2(c)に実線で示している。理想的なゼロ点位置に対して補正後の結果は線形的に直線近似される。
【0039】
また図2(c)には、絶対補正電圧V1および勾配補正電圧V22に対応して全使用温度範囲T2〜T3において単純線形的に補正した結果も点線で示している。勾配補正電圧V21およびV22に対応して補正した結果は、単純線形的に補正した結果よりも温度範囲T2〜T1においてゼロ点に近く、明らかに良好な特性を示している。
【0040】
このように補正が行われる状態で角速度センサ11による角速度の検出が実際に行われる。すなわち、角速度センサ11により角速度信号が検出されれば、角速度センサ11の温度特性の影響が補正された状態で出力Voutから角速度センサ11の出力を得ることができる。
【0041】
このような第1の実施形態によれば、角速度センサ11の環境温度を当該環境温度に比例する抵抗値信号として感温抵抗21,23により検出すると共に、出力用周辺回路15が絶対補正を行うための絶対補正電圧V1,勾配補正用の勾配補正電圧V21,V22を角速度センサ11の温度特性に応じて予め定めて生成し、この生成されたアナログ直流信号電圧を切替スイッチ18が温度パラメータ信号に応じて選択的に切替えて出力し、選択切替されたアナログ直流信号電圧を感温抵抗23の抵抗値に比例するように増幅し、加算器17は、切替スイッチ18により切替えられ出力されたアナログ直流信号電圧V2,絶対補正電圧V1,反転増幅回路25による増幅信号電圧V3および角速度センサ11の検出信号電圧Vsを(4)式により算出して補正しているので、角速度センサ11の使用温度範囲全体において環境温度に応じて温度補正用の直線勾配を複数に変化させて補正することができ、コストアップを抑えながら温度補正することができ、量子化誤差をなくすことができ、温度補正処理を極めて短時間で行うことができる。
【0042】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態の内容を示すもので、第1の実施形態と異なるところは、勾配補正信号生成手段が生成する直流信号がそれぞれ外部から調整可能になっているところ等にある。本実施形態は請求項2ないし4の発明に対応する。 具体的な構成としては、第1の実施形態で説明を行った出力用周辺回路15およびメモリ14に代えて、電源電圧を可変抵抗21a,21b〜23a,23bにより分圧し、それぞれバッファ24〜26を介してアナログ直流信号電圧を加算器17および切替スイッチ18に出力するように構成している(図3参照)。
【0043】
このように温度補正装置30を構成することにより、製造ライン等でセンサを搭載した装置を数多く製造するときに、個々の温度補正装置30毎に調整を行う必要があったとしても、出力Voutをモニタしながら調整を行うことができる。
【0044】
このように、温度の勾配補正および絶対補正を行うことができるが、特にこの図3のように可変抵抗21a,21b〜23a,23bの値を変化させて調整を手動で行うものでは、可変抵抗21a,21bの値を調整して絶対補正を行うことにより勾配補正量がずれてしまったり、逆に可変抵抗22a,22b,23a,23bの値を調整して勾配補正を行うことにより絶対補正量がずれてしまったりすることがある。この場合、パラメータが交錯することにより絶対補正および勾配補正の補正量を同時に調整することが難しい。
【0045】
そこで、感温抵抗21および23,抵抗20および22,加算器の各ゲイン(加減算の度合)A2〜A3に所定の依存関係を持たせて夫々の値を設定することにより、パラメータに独立性を持たせてこの問題を解決することができる。
【0046】
この解決法として、(4)式の第3項に示すV2に依存する部分を0にすることが望ましい。すなわち、A2=A3×Rt/(抵抗22の抵抗値)…(5)の関係を満たすようにすることが望ましい。この(5)式が、本発明の第1の所定の加減算が行われた結果が0となる条件に相当している。
【0047】
すなわち、温度調整装置30を構成するときには、切替スイッチ18の切替温度がある所望の境界温度Tzとなるように抵抗20の値を設定すると共に、切替スイッチ18により切替出力されるアナログ直流信号電圧として、境界温度Tzの上下で異なるアナログ直流信号電圧が選択的に出力されるように構成する。そこで感温抵抗21および23の特性に合わせて抵抗22の抵抗値や加算器17のゲインA2,A3を(5)式の関係を満たすように設定することが望ましい。この場合、この境界温度Tzを常温にするように設定すると、常温で設定を行うことができるため、なお望ましい。
【0048】
この場合、温度Tが境界温度Tzのときに温度補正作業を行うときには、温度Tに依存する(4)式の第3項がなくなる。したがって、作業者が可変抵抗21a及び21bの抵抗値を調整することにより絶対補正電圧V1の調整を行えば、勾配補正量を変化させることなく絶対補正量を調整することができる。この後、作業者が例えば環境温度をT3まで上昇させた後、可変抵抗23a及び23bを調整することにより勾配補正電圧V22を調整すれば、絶対補正量を変化させることなく高温側の勾配補正量を調整することができる。さらに、この後、作業者が環境温度をT2まで下降させた後、可変抵抗23a及び23bの抵抗値を調整することにより勾配補正電圧V21を調整すれば、絶対補正量および高温側の勾配補正量を変化させることなく低温側の勾配補正量を調整することができる。すなわち、パラメータの独立性を確保することができ、補正量の調整を素早く行うことができる。
【0049】
このような第2の実施形態によれば、抵抗20,22,加算器17のゲインA2,A3の値を(5)式を満たすように予め設定したので、可変抵抗21a及び21bによる絶対補正量の調整、可変抵抗22a及び22b並びに23a及び23bによる勾配補正量の調整をお互いのパラメータに依存することなく独立に行うことができ、補正量の調整を素早く行うことができる。
【0050】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のように変形もしくは拡張が可能である。
第1の実施形態においては、メモリ14に記憶される実施形態を示したが、このメモリ14と同等規模の記憶容量(例えば100ビット程度)を有するものであれば、このメモリ14に代えて、EEPROM等のように電気的に書換え可能なメモリで形成してもよい。この場合、この電気的に記憶内容を書換えることにより、勾配補正用のアナログ直流信号電圧や絶対補正用のアナログ直流信号電圧を外部から調整可能に構成することができる。
【0051】
センサの温度特性は、第1の実施形態で示した角速度センサ11の特性のものに限られず、非線形的に変化するセンサであれば何れの特性を有するセンサにも本発明の手段,方法を適用することができる。
【0052】
本発明のセンサとしては、温度センサ以外のセンサであれば、どのような物理量を検出するセンサにも適用することができる。例えば、自動車(車両)内で使用されるセンサとしては、前記の角速度センサの他にエアバッグやブレーキ制御用に使用される加速度センサ(Gセンサ)や、吸気圧やブレーキ油圧等の測定に用いられる圧力センサが代表的であり、材料としては半導体センサやセラミックで構成されているセンサ等が代表的である。
【0053】
上述実施形態においては、2つの勾配補正用のアナログ直流信号電圧を生成して勾配補正を行う実施形態を示したが、図4に示すように、切替スイッチ18に代えて、マルチプレクサ等で構成される多入力切替スイッチ(切替手段)40を適用し、生成される勾配補正用のアナログ直流信号電圧をn個のうちの何れかを切替えるように構成しても良い。この多入力切替スイッチ40は、温度に応じてn個の異なる入力電圧を選択的に切替えることができるスイッチを示している。
また、上述においては、反転増幅回路25が感温抵抗23の抵抗値信号に比例するようにアナログ直流信号電圧V2を増幅する実施形態を示したが、図5に示すように、第1の実施形態の抵抗22と感温抵抗23の配置位置を入れ替えて反転増幅回路41を構成することにより感温抵抗23の抵抗値信号に反比例するようにアナログ直流信号電圧V2を増幅するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態を示す電気的構成図
【図2】 (a)〜(c)動作を説明するための図
【図3】 本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【図4】 本発明の他の実施形態を示す図1相当図
【図5】 本発明の他の実施形態を示す図1相当図
【図6】 従来例を示す説明図
【符号の説明】
11は角速度センサ(センサ)、13は温度補正装置(センサ用温度補正装置)、14はメモリ、15は出力用周辺回路、17は加算器(加減算回路)、18は切替スイッチ、19はコンパレータ、21,23は感温抵抗、25は反転増幅回路(増幅回路)、40は多入力切替スイッチ、Aは勾配補正信号生成手段、Bは絶対補正信号生成手段である。

Claims (4)

  1. センサの環境温度を当該環境温度に依存する温度パラメータ信号として検出し、この温度パラメータ信号に基づいてセンサの検出信号を補正するセンサ用温度補正装置において、
    前記検出された温度パラメータ信号に応じて選択的に直流信号を勾配補正用に出力する勾配補正信号生成手段と、
    アナログ回路により構成され、前記勾配補正信号生成手段により出力された直流信号を前記検出された温度パラメータ信号に応じて増幅する増幅回路と、
    アナログ回路により構成され、前記増幅回路の増幅信号および前記センサの検出信号を、所定の加減算をして補正する加減算回路と
    センサの使用温度範囲全体に渡り所定量の絶対補正を行うための直流信号を絶対補正用に生成する絶対補正信号生成手段とを備え、
    前記加減算回路は、前記勾配補正信号生成手段により出力された直流信号および前記増幅回路の増幅信号を第1の所定の加減算を行い、当該加減算が行われた結果に前記絶対補正信号生成手段の直流信号および前記センサの検出信号を加えて第2の所定の加減算をして補正するように構成されたものであって、
    前記勾配補正信号生成手段は、前記加減算回路により第1の所定の加減算が行われた結果が0となる条件を満たす温度を境界温度として当該境界温度の上下で異なる前記直流信号を選択的に出力するように構成されていることを特徴とするセンサ用温度補正装置。
  2. 前記勾配補正信号生成手段が生成する直流信号のレベルは、外部から調整可能になっていることを特徴とする請求項1記載のセンサ用温度補正装置。
  3. センサの使用温度範囲全体に渡り所定量の絶対補正を行うための直流信号を絶対補正用に生成する絶対補正信号生成手段を備えたものであって、
    前記絶対補正信号生成手段が生成する直流信号のレベルは、外部から調整可能になっていることを特徴とする請求項1または2記載のセンサ用温度補正装置。
  4. センサの環境温度を当該環境温度に依存する温度パラメータ信号として検出する過程と、
    前記検出された温度パラメータ信号に応じて勾配補正用に直流信号を選択的に生成する過程と、
    前記勾配補正用の直流信号を検出された温度パラメータ信号に応じて増幅する過程と、
    前記センサの使用温度範囲全体に渡り所定量の補正を行うための絶対補正用の直流信号を生成する過程と、
    前記勾配補正用の直流信号および前記増幅された信号を第1の所定の加減算すると共に当該加減算が行われた結果に前記絶対補正用の直流信号および前記センサの検出信号を加えて第2の所定の加減算をして補正する過程と、
    前記第1の所定の加減算が行われた結果が0となる条件を満たす温度を境界温度として当該境界温度の上下で異なる勾配補正用の直流信号を選択的に出力する過程とを備えたことを特徴とするセンサの温度補正方法。
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