JP3952817B2 - トナー製造装置、トナーの製造方法およびトナー - Google Patents
トナー製造装置、トナーの製造方法およびトナー Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トナー製造装置、トナーの製造方法およびトナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法としては、多数の方法が知られているが、一般には、光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成する工程(露光工程)と、該潜像をトナーを用いて現像する現像工程と、紙等の転写材にトナー画像を転写する転写工程と、定着ローラを用いた加熱、加圧等により、前記トナー画像を定着する工程とを有している。
【0003】
このような電子写真法で用いられるトナーの製造方法としては、粉砕法、重合法、スプレードライ法が用いられている。
【0004】
粉砕法は、主成分である樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう。)と、着色剤とを含む原料を、樹脂の軟化点以上の温度で混練して混練物を得、その後、前記混練物を冷却、粉砕する方法である。このような粉砕法は、原料の選択の幅が広く、比較的容易にトナーを製造することができる点で優れている。しかしながら、粉砕法で得られるトナーは、各粒子間での形状のバラツキが大きく、その粒径分布も広くなりやすいという欠点を有している。その結果、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等のバラツキが大きくなり、トナー全体としての信頼性が低下する。
【0005】
重合法は、樹脂の構成成分である単量体を用いて、液相中等で、重合反応を行い、目的とする樹脂を生成することにより、トナー粒子を製造するものである。このような重合法は、得られるトナー粒子の形状を、比較的真球度の高いもの(幾何学的に完全な球形に近い形状)にすることができるという点で優れている。しかしながら、重合法では、各粒子間で粒径のバラツキを十分に小さくすることができない場合がある。また、このような重合法では、通常、重合性単量体を分散させる水性媒体との界面的特性を利用することにより、得られる粒子の大きさを整えているが、このような界面的特性を利用する場合、通常、水性媒体中に、界面活性剤等の薬剤を添加することが必須となる。その結果、得られるトナーは、これらの薬剤の影響を受け、電気的特性(帯電特性)や耐湿性等の耐環境性に劣るものになる場合がある。また、重合法では、樹脂材料の選択の幅が狭く、目的とする特性のトナーを得るのが困難となる場合がある。
【0006】
スプレードライ法は、高圧のガスを用いて、溶媒に溶解したトナー製造用の原料を噴霧させることにより、微細化された粉末をトナーとして得る方法である。スプレードライ法では、前述したような粉砕工程が不要であるという利点がある。しかしながら、このようなスプレードライ法では、高圧のガスを用いて、原料の噴霧を行うため、原料の噴霧条件を正確に制御するのが困難である。このため、例えば、目的とする形状、大きさのトナー粒子を効率良く製造するのが困難である。また、スプレードライ法では、噴霧により形成された粒子の大きさのバラツキが大きいため、各粒子の移動速度のバラツキも大きい。このため、噴霧された原料が固化する前に、噴霧された粒子間での衝突、凝集が起こり異形状の粉末が形成され、最終的に得られるトナー粒子の形状、大きさのバラツキがさらに大きくなることもある。このように、スプレードライ法で得られるトナーは、各粒子間での形状、大きさのバラツキが大きいため、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等のバラツキが大きくなり、トナー全体としての信頼性が低下する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを提供すること、また、このようなトナーを製造することができるトナー製造装置およびトナーの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(29)の本発明により達成される。
【0009】
(1) 流動性を有する原料を用いてトナーを製造する装置であって、
前記原料を吐出するヘッド部と、該ヘッド部から吐出された前記原料を固化させ、粒状とする固化部とを有し、
前記ヘッド部が、前記原料を貯留する原料貯留部と、前記原料貯留部に貯留された前記原料に熱エネルギーを与え、前記原料貯留部内に気泡を発生させる発熱体と、前記気泡の体積変化により前記原料を吐出する吐出部とを有することを特徴とするトナー製造装置。
【0010】
(2) 前記発熱体は、交流電圧の印加により発熱するものである上記(1)に記載のトナー製造装置。
【0011】
(3) 前記ヘッド部から吐出された前記原料を搬送する搬送手段を有する上記(1)または(2)に記載のトナー製造装置。
【0012】
(4) 前記搬送手段がガス流を供給するガス流供給手段である上記(3)に記載のトナー製造装置。
【0013】
(5) 前記ヘッド部を複数個有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のトナー製造装置。
【0014】
(6) 互いに隣接する前記吐出部の間に、気体を噴射するガス噴射口を有する上記(5)に記載のトナー製造装置。
【0015】
(7) 複数個の前記ヘッド部のうち、少なくとも隣り合う2つで、前記原料の吐出タイミングが異なる上記(5)または(6)に記載のトナー製造装置。
【0016】
(8) 前記固化部に電圧を印加するための電圧印加手段を有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のトナー製造装置。
【0017】
(9) 前記吐出部は、略円形状をなすものであり、その直径が5〜500μmである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のトナー製造装置。
【0018】
(10) 上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のトナー製造装置を用いることを特徴とするトナーの製造方法。
【0019】
(11) 流動性を有する原料を用いてトナーを製造する方法であって、
気泡の体積変化によりヘッド部から前記原料を間欠的に吐出し、気流により固化部内を搬送させつつ固化させ、粒状とすることを特徴とするトナーの製造方法。
【0020】
(12) 前記ヘッド部が、前記原料を貯留する原料貯留部と、前記原料貯留部に貯留された前記原料に熱エネルギーを与え、前記原料貯留部内に気泡を発生させる発熱体と、前記気泡の体積変化により前記原料を吐出する吐出部とを有するものである上記(11)に記載のトナーの製造方法。
【0021】
(13) 前記発熱体に交流電圧を印加することにより、前記熱エネルギーを発生させる上記(12)に記載のトナーの製造方法。
【0022】
(14) 前記発熱体に印加する交流電圧の周波数は、1〜50kHzである上記(13)に記載のトナーの製造方法。
【0023】
(15) 前記ヘッド部から吐出する前記原料は、ほぼ一方向に流れるガス中に放出される上記(11)ないし(14)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0024】
(16) 前記ヘッド部を複数個有する上記(11)ないし(15)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0025】
(17) 互いに隣接する前記吐出部の間から気体を噴射しつつ、前記原料を吐出する上記(16)に記載のトナーの製造方法。
【0026】
(18) 複数個の前記ヘッド部のうち、少なくとも隣り合う2つからの前記原料の吐出タイミングをずらす上記(16)または(17)に記載のトナーの製造方法。
【0027】
(19) 前記固化部に、前記原料と同じ極性の電圧を印加した状態で、前記原料を吐出する上記(11)ないし(18)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0028】
(20) 前記ヘッド部から吐出する前記原料の初速度は、0.1〜10m/秒である上記(11)ないし(19)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0029】
(21) 前記吐出口から吐出される前記原料の粘度は、1〜1000cpsである上記(11)ないし(20)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0030】
(22) 前記ヘッド部から吐出される前記原料は、その成分の少なくとも一部を溶媒に溶解させたものである上記(11)ないし(21)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0031】
(23) 前記ヘッド部から吐出される前記原料は、その成分の少なくとも一部が溶融した状態のものである上記(11)ないし(21)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0032】
(24) 前記ヘッド部から吐出される前記原料の一滴分の吐出量が0.05〜500plである上記(11)ないし(23)のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【0033】
(25) 上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のトナー製造装置を用いて製造されたことを特徴とするトナー。
【0034】
(26) 上記(10)ないし(24)のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とするトナー。
【0035】
(27) 重量基準の平均粒径が2〜20μmである上記(25)または(26)に記載のトナー。
【0036】
(28) 各粒子間での重量基準の粒径の標準偏差が1.5μm以下である上記(25)ないし(27)のいずれかに記載のトナー。
【0037】
(29) 下記式(I)で表される平均円形度Rが0.95以上である上記(25)ないし(28)のいずれかに記載のトナー。
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のトナー製造装置、トナーの製造方法およびトナーの好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0042】
図1は、本発明のトナー製造装置の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図、図2は、図1のトナー製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。
【0043】
[構成材料]
まず、本発明のトナーの製造に用いる原料6について説明する。本発明のトナーは、流動性を有する原料6を用いて製造されるものである。原料6中には、通常、少なくとも、主成分としての樹脂(またはその前駆体としてのモノマー、ダイマー、オリゴマー等)と、着色剤とが含まれている。
【0044】
以下、原料6を構成する、主成分としての樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう)、着色剤およびその他の成分について説明する。
【0045】
1.樹脂(バインダー樹脂)
樹脂(バインダー樹脂)としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、後述する固化部3において、原料6を重合反応させることによりトナーを製造する場合には、通常、上記の樹脂材料のモノマー、ダイマー、オリゴマー等を用いる。
【0046】
原料6中における樹脂の含有量は、特に限定されないが、50〜95wt%であるのが好ましく、80〜94wt%であるのがより好ましい。
【0047】
2.着色剤
着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
原料6中における着色剤の含有量は、特に限定されないが、1〜10wt%であるのが好ましく、2〜7wt%であるのがより好ましい。着色剤の含有量が前記下限値未満であると、着色剤の種類によっては、十分な濃度の可視像を形成するのが困難になる可能性がある。一方、着色剤の含有量が前記上限値を超えると、最終的に得られるトナーの定着特性や帯電特性が低下する可能性がある。
【0049】
3.溶媒
原料6中には、流動性を付与するための溶媒が含まれていてもよい。この場合、溶媒としては、原料6を構成する成分の少なくとも一部を溶解するものであればいかなるものであってもよいが、後述する固化部3で容易に除去されるものであるのが好ましい。
【0050】
このような溶媒としては、例えば、水、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルテトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒等の有機溶媒等から選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
【0051】
4.ワックス
また、原料6中には、ワックスが含まれていてもよい。ワックスは、通常、離型性を向上させる目的で用いられるものである。このようなワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、綿ロウ、木ロウ等の植物系ワックス・ロウ、ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス・ロウ、モンタンワックス、オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス・ロウ、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油ワックス・ロウ等の天然ワックス・ロウや、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス(ポリエチレン樹脂)、ポリプロピレンワックス(ポリプロピレン樹脂)、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド、エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス・ロウ等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ワックスとしては、さらに低分子量の結晶性高分子樹脂を使用してもよく、例えば、ポリn−ステアリルメタクリレート、ポリn−ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n−ステアリルアクリレート−エチルメタクリレートの共重合体等)等、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子等を使用することもできる。
【0052】
原料6中におけるワックスの含有量は、特に限定されないが、5wt%以下であるのが好ましく、3wt%以下であるのがより好ましい。ワックスの含有量が多すぎると、最終的に得られるトナー粒子中において、ワックスが遊離、粗大化して、トナー粒子表面へのワックスのしみ出し等が顕著に起こり、トナーの転写効率が低下する傾向を示す。
【0053】
ワックスの軟化点は、特に限定されないが、50〜180℃であるのが好ましく、60〜160℃であるのがより好ましい。
【0054】
また、原料6中には、前記樹脂、着色剤、溶媒、ワックス以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、磁性粉末、帯電制御剤、分散在等が挙げられる。
【0055】
前記磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
【0056】
前記帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
【0057】
前記分散剤としては、例えば、金属石鹸、無機金属塩、有機金属塩、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0058】
前記金属石鹸としては、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等)、オレイン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)等が挙げられる。
【0059】
前記無機金属塩、前記有機金属塩としては、例えば、カチオン性成分として、周期律表の第IA族、第IIA族、および第IIIA族の金属からなる群より選ばれる元素のカチオンを含み、アニオン性成分として、ハロゲン、カーボネート、アセテート、サルフェート、ボレート、ニトレート、およびホォスフェートからなる群より選ばれるアニオンを含む塩等が挙げられる。
【0060】
また、添加剤としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム等を用いてもよい。
【0061】
[トナー製造装置]
本発明のトナー製造装置1は、流動性を有するトナー製造用の原料6を吐出するヘッド部2と、ヘッド部2から吐出された原料6を搬送させつつ固化させ、粒状とする固化部3と、ヘッド部2に原料6を供給するフィーダー4と、製造されたトナー粒子9を回収する回収部5とを有している。
【0062】
ヘッド部2は、原料貯留部21と、発熱体22と、吐出部23とを有している。
【0063】
原料貯留部21は、筒状を成しており、その内部に、流動性を有する状態の原料6が貯留されている。原料6は、例えば、その成分の少なくとも一部が溶媒に溶解した溶液の状態(以下、単に「溶液状態」ともいう)のものであってもよいし、その成分の少なくとも一部が溶融した状態(以下、単に「溶融状態」ともいう)のものであってもよい。
【0064】
発熱体22は、電圧の印加等により、熱エネルギーを発生する機能を有するものである。発熱体22で発生した熱エネルギーは、原料貯留部21内に貯留された原料6を急速に加熱し、膜沸騰等により、原料貯留部21内に気泡12を発生させる。
【0065】
原料貯留部21内に発生した気泡12の体積変化により、原料貯留部21に貯留された原料6は、吐出部23から固化部3に吐出される。
【0066】
なお、原料貯留部21と発熱体22との間には、原料6と発熱体22とが直接接触するのを防止する保護膜24が設けられている。
【0067】
吐出部23の形状は、特に限定されないが、略円形状であるのが好ましい。これにより、吐出される原料6、トナー粒子9の真球度を高めることができる。
【0068】
吐出部23が略円形状のものである場合、その直径(ノズル径)は、例えば、5〜500μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。吐出部23の直径が前記下限値未満であると、吐出部23付近での目詰まりが発生し易くなる。一方、吐出部23の直径が前記上限値を超えると、吐出される液滴状の原料6の大きさを制御するのが困難となる。
【0069】
上記のような熱エネルギーの発生を繰り返し行うことにより、原料貯留部21内の気泡12の体積が経時的に変化し(原料貯留部21内に間欠的に気泡12が発生し)、これにより、原料貯留部21内から粒状の原料6が繰り返し吐出される。
【0070】
このように、本発明では、発熱体が熱エネルギーを発生することにより、気泡を発生させ、この気泡の体積変化により、流動性を有する原料を粒状に吐出させ、これを固化することによりトナーを得る点に特徴を有する。
【0071】
従来、流動性を有する原料を用いてトナーを製造する方法としては、スプレードライ法が知られていた。スプレードライ法は、高圧のガスを用いて、溶媒に溶解したトナー製造用の原料を噴霧させることにより、微細化された粉末をトナーとして得る方法である。しかしながら、このようなスプレードライ法は、以下のような問題点を有していた。
【0072】
すなわち、スプレードライ法では、高圧のガスを用いて、原料の噴霧を行うため、原料の噴霧条件を正確に制御するのが困難であった。このため、例えば、目的とする形状、大きさのトナー粒子を効率良く製造するのが困難であった。また、スプレードライ法では、噴霧により形成された粒子の大きさのバラツキが大きい(粒度分布の幅が大きい)ため、各粒子の移動速度のバラツキも大きい。このため、噴霧された原料が固化する前に、噴霧された粒子間での衝突、凝集が起こり異形状の粉末が形成され、最終的に得られるトナー粒子の形状、大きさのバラツキがさらに大きくなることもあった。このように、スプレードライ法で得られるトナーは、各トナー粒子間での形状、大きさのバラツキが大きいため、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等のバラツキも大きく、トナー全体としての信頼性も低い。
【0073】
これに対し、本発明では、熱エネルギーの発生を繰り返し行うことにより、原料貯留部内の気泡の体積を経時的に変化させ(原料貯留部内に間欠的に気泡を発生させ)、原料を一滴づつ間欠的に吐出するため、安定した形状のトナーを得ることができるとともに、製造されるトナー粒子を真球度の高いもの(幾何学的に完全な球形に近い形状)にすることが比較的容易にできる。
【0074】
また、本発明では、発熱体からの熱エネルギーの発生周期、吐出部の開口面積(ノズル径)、原料の温度・粘度、原料の一滴分の吐出量等を比較的正確にコントロールすることができ、製造すべきトナーを所望の形状、大きさに制御することが容易にできる。
【0075】
また、本発明では、発熱体が発生する熱エネルギーを用いるため、熱エネルギーの発生周期等を制御することにより、原料を所定間隔で吐出することができる。このため、吐出される粒状の原料同士が、衝突、凝集するのを効果的に防止することができ、従来のスプレードライ法を用いた場合に比べて、異形状の粉末等を形成し難い。
【0076】
また、原料の一滴分の吐出量、熱エネルギーの発生周期等をコントロールすることにより、トナーの製造量等を容易かつ確実に管理することができる。
【0077】
前記熱エネルギーの発生は、いかなる方法で行ってもよいが、発熱体22に交流電圧を印加することにより行うものであるが好ましい。交流電圧の印加により熱エネルギーを発生させることにより、気泡12の発生周期や、気泡12の経時的な体積変化率を正確に制御することが容易にできる。その結果、トナーの製造量やトナー粒子9の大きさ等を正確にコントロールすることができる。
【0078】
交流電圧の印加により熱エネルギーを発生させる場合、発熱体22に印加する交流電圧の周波数は、特に限定されないが、1〜50kHzであるのが好ましく、5〜30kHzであるのがより好ましい。交流電圧の周波数が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、交流電圧の周波数が前記上限値を超えると、粒状の原料6の吐出が追随できなくなり、原料6一滴分の大きさのバラツキが大きくなる。
【0079】
またヘッド部2から固化部3に吐出される原料6の初速度は、例えば、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、2〜8m/秒であるのがより好ましい。原料6の初速度が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、原料6の初速度が前記上限値を超えると、得られるトナー粒子9の真球度が低下する傾向を示す。
【0080】
また、ヘッド部2から吐出される原料6の粘度は、特に限定されないが、例えば、1〜1000cpsであるのが好ましく、1〜300cpsであるのがより好ましい。原料6の粘度が前記下限値未満であると、吐出される粒子(粒状の原料6)の大きさを十分に制御するのが困難となり、得られるトナー粒子9のバラツキが大きくなる場合がある。一方、原料6の粘度が前記上限値を超えると吐出すべき原料6に優先して気泡が吐出する、いわゆる空打ち現象が発生し易くなり、得られるトナー粒子9の大きさ、形状や、トナー製造量の制御が困難となる。
【0081】
また、原料6の一滴分の吐出量は、特に限定されないが、0.05〜500plであるのが好ましく、0.1〜50plであるのがより好ましい。原料6の一滴分の吐出量をこのような範囲の値にすることにより、最終的に得られるトナー粒子9を適度な粒径のものにすることができる。
【0082】
図示の構成のトナー製造装置1は、ヘッド部2を複数個有している。そして、これらのヘッド部2から、それぞれ、粒状の原料6が固化部3に吐出される。
【0083】
各ヘッド部2は、ほぼ同時に原料6を吐出するものであってもよいが、少なくとも隣り合う2つのヘッド部で、原料6の吐出タイミングが異なるように制御されたものであるのが好ましい。これにより、隣接するヘッド部2から吐出された粒状の原料6が固化する前に、原料粒子同士が衝突し、凝集するのをより効果的に防止することができる。
【0084】
また、図2に示すように、トナー製造装置1は、ガス流供給手段10を有しており、このガス流供給手段10から供給されたガスが、ダクト101を介して、ヘッド部2−ヘッド部2間に設けられた各ガス噴射口7から、ほぼ均一の圧力で噴射される構成となっている。これにより、吐出部23から間欠的に吐出された粒状の原料6の間隔を保ちつつ、原料6を搬送し、固化させることができる。その結果、吐出される粒状の原料6同士の衝突、凝集がより効果的に防止される。
【0085】
また、ガス流供給手段10から供給されたガスをガス噴射口7から噴射することにより、固化部3において、ほぼ一方向(図中、下方向)に流れるガス流を形成することができる。このようなガス流が形成されると、固化部3内の粒状の原料6(トナー粒子9)をより効率良く搬送することができる。
【0086】
また、ガス噴射口7からガスが噴射されることにより、各ヘッド部2から吐出される粒子の間に気流カーテンが形成され、例えば、隣り合うヘッド部から吐出された各粒子間での衝突、凝集をより効果的に防止することが可能となる。
【0087】
また、ガス流供給手段10には、熱交換器11が取り付けられている。これにより、ガス噴射口7から噴射されるガスの温度を好ましい値に設定することができる。すなわち、原料6が、溶液状態のものである場合には、比較的高い温度のガスを噴射させ、また、溶融状態のものである場合には、比較的低い温度のガスを噴射させることができる。その結果、固化部3に吐出された粒状の原料6を効率良く固化させることができる。
【0088】
また、このようなガス流供給手段10を有すると、ガス流の供給量を調整すること等により、吐出部23から吐出された原料6の固化速度等を容易にコントロールすることも可能となる。
【0089】
ガス噴射口7から噴射されるガスの温度は、原料6中に含まれる樹脂、溶媒の組成等により異なるが、通常、以下のような範囲の値であるのが好ましい。
すなわち、原料6が溶液状態のものである場合、ガス噴射口7から噴射されるガスの温度は、例えば、50〜350℃であるのが好ましく、100〜300℃であるのがより好ましい。これにより、得られるトナー粒子9の形状の均一性を保ちつつ、原料6中に含まれる溶媒を効率良く除去することができ、トナーの生産性をさらに優れたものとすることができる。
【0090】
また、原料6が溶融状態のものである場合、ガス噴射口7から噴射されるガスの温度は、例えば、0〜100℃であるのが好ましく、5〜50℃であるのがより好ましい。これにより、得られるトナー粒子9の形状の均一性を保ちつつ、粒状の原料6を冷却固化することができ、トナーの生産性をさらに優れたものとすることができる。
【0091】
ヘッド部2から吐出された粒状の原料6は、固化部3を搬送されつつ固化することにより、トナー粒子9となる。
固化部3は、筒状のハウジング31で構成されている。
【0092】
粒状の原料6は、前述したガス噴射口7から噴射されるガスにより固化されるものであってもよいし、それ以外の手段により固化されるものであってもよい。例えば、ハウジング31の内側または外側に設置された熱源、冷却源により、原料6を固化してもよい。また、ハウジング31は、熱媒体または冷却媒体の流路が形成されたジャケットであってもよい。また、ヘッド部2から吐出される原料6が溶液状態のものである場合、ハウジング31内を減圧状態とすることにより、原料6中の溶媒を除去し、固化したトナー粒子9を得ることもできる。
【0093】
また、トナー粒子9は、前述したような溶液状態の原料6から溶媒を除去する方法や、溶融状態の原料6を冷却固化する方法に限定されるものではない。例えば、原料6が、樹脂材料の前駆体(例えば、前記樹脂材料に対応するモノマー、ダイマー、オリゴマー等)を含むものである場合、固化部3において重合反応を進行させることにより、トナー粒子9を得るような方法であってもよい。
【0094】
また、ハウジング31には、電圧を印加するための電圧印加手段8が接続されている。電圧印加手段8で、ハウジング31の内面側に、粒状の原料6(トナー粒子9)と同じ極性の電圧を印加することにより、これにより、以下のような効果が得られる。
【0095】
通常、トナー粒子は、正または負に帯電している。このため、トナー粒子と異なる極性に帯電した帯電物があると、トナー粒子は、当該帯電物に、静電的に引き付けられ付着するという現象が起こる。一方、トナー粒子と同じ極性に帯電した帯電物があると、当該帯電物とトナー粒子とは、互いに反発しあい、前記対象物表面にトナーが付着するという現象を効果的に防止することができる。したがって、ハウジング31の内面側に、粒状の原料6(トナー粒子9)と同じ極性の電圧を印加することにより、ハウジング31の内面に原料6(トナー粒子9)が付着するのを効果的に防止することができる。これにより、異形状のトナー粉末の発生をより効果的に防止することができるとともに、トナー粒子9の回収効率も向上する。
【0096】
ハウジング31は、回収部5付近に、図1中の下方向に向けて、その内径が小さくなる縮径部311を有している。このような縮径部311が形成されることにより、トナー粒子9の回収を効率良く回収することができる。なお、前述したように、吐出部23から吐出された原料6は、固化部3において固化されるが、回収部5付近においてはこのような固化はほぼ完全に完了しており、縮径部311付近では、各粒子が接触しても凝集等の問題はほとんど発生しない。
【0097】
粒状の原料6を固化することにより得られたトナー粒子9は、回収部5に回収される。
【0098】
以上のようにして得られたトナーに対しては、必要に応じて、分級処理、外添処理等の各種処理を施してもよい。
分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
【0099】
また、外添処理に用いられる外添剤としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、チタニア、酸化亜鉛、アルミナ、マグネタイト等の金属酸化物、窒化珪素等の窒化物、炭化珪素等の炭化物、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、脂肪族金属塩等の金属塩等の無機材料で構成された微粒子、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、脂肪族金属塩等の有機材料で構成された微粒子やこれらの複合物で構成された微粒子等が挙げられる。
【0100】
また、外添剤としては、上記のような微粒子の表面に、HMDS、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、フッ素含有シラン系カップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施したものを用いてもよい。
【0101】
以上のようにして製造される本発明のトナーは、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいものである。特に、本発明では、真球に近い形状のトナー粒子が得られる。
【0102】
具体的には、トナー(トナー粒子)は、下記式(I)で表される平均円形度Rが0.95以上であるのが好ましく、0.97以上であるのがより好ましく、0.98以上であるのがさらに好ましい。平均円形度Rが0.95以上であると、トナーの転写効率は、さらに優れたものとなる。
【0103】
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円(完全な幾何学的円)の周囲長を表す。)
【0104】
また、トナーは、各粒子間での粒径の標準偏差が1.5μm以下であるのが好ましく、1.0μm以下であるのがより好ましい。各粒子間での粒径の標準偏差が1.5μm以下であると、帯電特性、定着特性等のバラツキが特に小さくなり、トナー全体としての、信頼性がさらに向上する。
【0105】
以上のようにして得られるトナーの重量基準の平均粒径は、2〜20μmであるのが好ましく、4〜10μmであるのがより好ましい。トナーの平均粒径が前記下限値未満であると、均一に帯電させるのが困難になるとともに、静電潜像担持体(例えば、感光体等)表面への付着力が大きくなり、結果として、転写残トナーの増加を招く場合がある。一方、トナーの平均粒径が前記上限値を超えると、トナーを用いて形成される画像の輪郭部分、特に文字画像やライトパターンの現像での再現性が低下する。
【0106】
以上、本発明のトナー製造装置、トナーの製造方法およびトナーについて、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0107】
例えば、本発明のトナー製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。例えば、前述した実施形態では、粒状の原料を鉛直下方に向けて吐出する構成について説明したが、原料の吐出方向は、鉛直上方、水平方向等、いかなる方向であってもよい。また、図3に示すように、原料6の吐出方向と、ガス噴射口7から噴射されるガスの噴射方向とが、ほぼ垂直となる構成のものであってもよい。この場合、吐出された粒状の原料6は、ガス流によりその進行方向が変わり、吐出部23からの吐出方向に対してほぼ直角に搬送されることになる。
【0108】
【実施例】
[1]トナーの製造
(実施例1)
まず、樹脂溶液Aおよび分散液Bを調製した。
【0109】
<樹脂溶液A>
ポリエステル樹脂(酸価:26.2KOHmg/g、水酸基価:12.2KOHmg/g、ガラス転移温度:62℃、降下式フローテスター軟化温度:104.8℃):98重量部と、キナクリドン系顔料:6重量部と、メチルエチルケトン:100重量部とを、攪拌翼を取り付けた密閉容器内に入れ、攪拌翼を回転させることにより、樹脂溶液Aを得た。
【0110】
<分散液B>
サリチル酸亜鉛塩:2重量部と、カルナウバワックス:3重量部と、ポリエステル樹脂:2重量部と、メチルエチルケトン:300重量部とを、ジルコニアボールの入った密閉容器内に入れ、ボールミル分散を1時間行うことにより、分散液Bを得た。
【0111】
上記のようにして調製した樹脂溶液A中に分散液Bを添加し、さらに10分間攪拌して、均一なマゼンタ色の溶液(分散液)をトナー製造用の原料として得た。
【0112】
このようにして得られた原料を、図1、図2に示すようなトナー製造装置のフィーダー内に投入した。フィーダー内に投入した原料を、定量ポンプによりヘッド部の原料貯留部に供給し、吐出部から固化部に吐出させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。
【0113】
原料の吐出は、発熱体に20kHzの高周波交流電圧を印加し、原料貯留部に発生させた気泡の体積を周期的に変化させることにより行った。吐出部から吐出される原料の初速度は3.5m/秒、ヘッド部から吐出される原料の一滴分の吐出量は4plであった。また、吐出部から吐出される原料の粘度は、182cps(25℃)であった。また、原料の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、原料の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0114】
また、原料の吐出時には、ガス噴射口から温度:100℃、流速:3m/秒の空気を鉛直下方に噴射し、また、固化部のハウジングには、その内表面側の電位が−200Vとなるように電圧を印加した。
【0115】
固化部で固化した粒子をサイクロンにて回収した。回収した粒子は、平均円形度0.985、円形度標準偏差0.007であった。重量基準の平均粒径は、8.6μmであった。重量基準の粒径標準偏差は1.2μmであった。なお、円形度の測定は、フロー式粒子像解析装置(東亜医用電子社製、FPIA−2000)を用いて、水分散系で行った。ただし、円形度Rは、下記式(I)で表されるものとする。
【0116】
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象の粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象の粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【0117】
得られた粒子100重量部に疎水性シリカ0.5重量部を添加し、最終的なトナーを得た。最終的に得られたトナーの重量基準の平均粒径は、8.7μmであった。
【0118】
(実施例2)
溶融させたポリオレフィン樹脂:100重量部に、キナクリドン系顔料:6重量部と、サリチル酸亜鉛塩:2重量部を分散させた液状の原料を得た。
【0119】
このようにして得られた原料を、図1、図2に示すようなトナー製造装置のフィーダー内に投入した。フィーダー内に投入した原料を、定量ポンプによりヘッド部の原料貯留部に供給し、吐出部から固化部に吐出させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。原料貯留部に供給された原料の温度は、120℃であった。
【0120】
原料の吐出は、発熱体に24kHzの高周波交流電圧を印加し、原料貯留部に発生させた気泡の体積を周期的に変化させることにより行った。吐出部から吐出される原料の初速度は3m/秒、ヘッド部から吐出される原料の一滴分の吐出量は2plであった。また、吐出部から吐出される原料の粘度は、210cps(120℃)であった。また、原料の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、原料の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0121】
また、原料の吐出時には、ガス噴射口から温度:10℃、流速:3m/秒の空気を鉛直下方に噴射し、また、固化部のハウジングには、その内表面側の電位が−200Vとなるように電圧を印加した。
【0122】
固化部で固化した粒子をサイクロンにて回収した。回収した粒子は、平均円形度0.992、円形度標準偏差0.006であった。重量基準の平均粒径は、8.9μmであった。重量基準の粒径標準偏差は1.1μmであった。なお、円形度の測定は、フロー式粒子像解析装置(東亜医用電子社製、FPIA−2000)を用いて、水分散系で行った。ただし、円形度Rは、下記式(I)で表されるものとする。
【0123】
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象の粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象の粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【0124】
得られた粒子100重量部に疎水性シリカ0.5重量部を添加し、最終的なトナーを得た。最終的に得られたトナーの重量基準の平均粒径は、9.0μmであった。
【0125】
[2]評価
以上のようにして得られた各トナーについて、トナー粒子の平均円形度、転写効率、定着温度領域、耐久性、カブリの評価を行った。
【0126】
[2.1]トナー粒子の平均円形度
前記各実施例および前記各比較例で製造したトナーについて、平均円形度Rの測定を行った。円形度の測定は、フロー式粒子像解析装置(東亜医用電子社製、FPIA−2000)を用いて、水分散系で行った。ただし、円形度Rは、下記式(I)で表されるものとする。
【0127】
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【0128】
[2.2]転写効率の測定
前記各実施例で製造したトナーの転写効率は、カラーレーザープリンタ(セイコーエプソン社製、LP−2000C)を用いて、以下のように評価した。
【0129】
感光体への現像工程直後(転写前)の感光体上のトナーと、転写後(印刷後)の感光体上のトナーとを、別々のテープを用いて採取し、それぞれの重量を測定した。転写前の感光体上のトナー重量をWb[g]、転写後の感光体上のトナー重量をWa[g]としたとき、(Wb−Wa)×100/Wbとして求められる値を、転写効率とした。
【0130】
[2.3]耐久性
前記各実施例および前記各比較例で得られたトナーを、カラーレーザープリンタ(セイコーエプソン社製:LP−2000C)のカートリッジに詰め替えて、5000枚ランニングした。4901〜5000枚目の印刷物について、これらの画像を、以下の4段階の基準に従い評価した。
【0131】
◎:画像に筋、乱れが全く認められないもの。
○:画像に筋、乱れがほとんど認められないもの。
△:画像に筋、乱れが若干認められるもの。
×:画像に筋、乱れが明らかに認められるもの。
【0132】
これらの結果を、トナー粒子の円形度の標準偏差、(重量基準の)平均粒径、粒径の標準偏差とともに、表1にまとめて示した。
【0133】
【表1】
【0134】
表1から明らかなように、本発明のトナーは、円形度が大きく、粒度分布の幅の小さいものである。また、本発明のトナーは、いずれも、転写効率および耐久性に優れており、画像濃度、地汚れ、転写、定着ともに、なんら問題がなく、印字部周辺がシャープで濃度ムラの少ない印刷物が得られた。
【0135】
なお、スプレードライ法を用いた場合、ガスの噴射圧力、原料温度等の各種条件を好適な条件に設定した場合であっても、通常、得られるトナー粒子の円形度は0.97程度、円形度の標準偏差は0.04程度、粒径の標準偏差は2.7μm程度となる。
【0136】
また、着色剤として、キナクリドン系顔料に代わり、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントイエロー93、カーボンブラックを用いた以外は、前記各実施例と同様にして、トナーを作製し、これらの各トナーについても前記と同様の評価を行った。その結果、前記各実施例と同様の結果が得られた。
【0137】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、均一な形状を有し、粒度分布の幅の小さいトナーを提供することができる。
【0138】
このような効果は、原料の組成や、発熱体に印加する交流電圧の周波数、吐出部の開口径、原料の温度・粘度等の製造条件を調整すること等により、さらに優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のトナー製造装置の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図2】 図1に示すトナー製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。
【図3】 他の実施形態のトナー製造装置のヘッド部付近の構造を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1……トナー製造装置 2……ヘッド部 21……原料貯留部 22……発熱体 23……吐出部 24……保護膜 3……固化部 31……ハウジング 311……縮径部 4……フィーダー 5……回収部 6……原料 7……ガス噴射口 8……電圧印加手段 9……トナー粒子 10……ガス流供給手段 101……ダクト 11……熱交換器 12……気泡
Claims (29)
- 流動性を有する原料を用いてトナーを製造する装置であって、
前記原料を吐出するヘッド部と、該ヘッド部から吐出された前記原料を固化させ、粒状とする固化部とを有し、
前記ヘッド部が、前記原料を貯留する原料貯留部と、前記原料貯留部に貯留された前記原料に熱エネルギーを与え、前記原料貯留部内に気泡を発生させる発熱体と、前記気泡の体積変化により前記原料を吐出する吐出部とを有することを特徴とするトナー製造装置。 - 前記発熱体は、交流電圧の印加により発熱するものである請求項1に記載のトナー製造装置。
- 前記ヘッド部から吐出された前記原料を搬送する搬送手段を有する請求項1または2に記載のトナー製造装置。
- 前記搬送手段がガス流を供給するガス流供給手段である請求項3に記載のトナー製造装置。
- 前記ヘッド部を複数個有する請求項1ないし4のいずれかに記載のトナー製造装置。
- 互いに隣接する前記吐出部の間に、気体を噴射するガス噴射口を有する請求項5に記載のトナー製造装置。
- 複数個の前記ヘッド部のうち、少なくとも隣り合う2つで、前記原料の吐出タイミングが異なる請求項5または6に記載のトナー製造装置。
- 前記固化部に電圧を印加するための電圧印加手段を有する請求項1ないし7のいずれかに記載のトナー製造装置。
- 前記吐出部は、略円形状をなすものであり、その直径が5〜500μmである請求項1ないし8のいずれかに記載のトナー製造装置。
- 請求項1ないし9のいずれかに記載のトナー製造装置を用いることを特徴とするトナーの製造方法。
- 流動性を有する原料を用いてトナーを製造する方法であって、
気泡の体積変化によりヘッド部から前記原料を間欠的に吐出し、気流により固化部内を搬送させつつ固化させ、粒状とすることを特徴とするトナーの製造方法。 - 前記ヘッド部が、前記原料を貯留する原料貯留部と、前記原料貯留部に貯留された前記原料に熱エネルギーを与え、前記原料貯留部内に気泡を発生させる発熱体と、前記気泡の体積変化により前記原料を吐出する吐出部とを有するものである請求項11に記載のトナーの製造方法。
- 前記発熱体に交流電圧を印加することにより、前記熱エネルギーを発生させる請求項12に記載のトナーの製造方法。
- 前記発熱体に印加する交流電圧の周波数は、1〜50kHzである請求項13に記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部から吐出する前記原料は、ほぼ一方向に流れるガス中に放出される請求項11ないし14のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部を複数個有する請求項11ないし15のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 互いに隣接する前記吐出部の間から気体を噴射しつつ、前記原料を吐出する請求項16に記載のトナーの製造方法。
- 複数個の前記ヘッド部のうち、少なくとも隣り合う2つからの前記原料の吐出タイミングをずらす請求項16または17に記載のトナーの製造方法。
- 前記固化部に、前記原料と同じ極性の電圧を印加した状態で、前記原料を吐出する請求項11ないし18のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部から吐出する前記原料の初速度は、0.1〜10m/秒である請求項11ないし19のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記吐出口から吐出される前記原料の粘度は、1〜1000cpsである請求項11ないし20のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部から吐出される前記原料は、その成分の少なくとも一部を溶媒に溶解させたものである請求項11ないし21のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部から吐出される前記原料は、その成分の少なくとも一部が溶融した状態のものである請求項11ないし21のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記ヘッド部から吐出される前記原料の一滴分の吐出量が0.05〜500plである請求項11ないし23のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 請求項1ないし9のいずれかに記載のトナー製造装置を用いて製造されたことを特徴とするトナー。
- 請求項10ないし24のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とするトナー。
- 重量基準の平均粒径が2〜20μmである請求項25または26に記載のトナー。
- 各粒子間での重量基準の粒径の標準偏差が1.5μm以下である請求項25ないし27のいずれかに記載のトナー。
- 下記式(I)で表される平均円形度Rが0.95以上である請求項25ないし28のいずれかに記載のトナー。
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
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