JP3949181B2 - 硬質合金を結合材とするダイヤモンド燒結体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、切削工具や耐摩耗工具、耐摩耗機械部材などに用いる高硬度で耐摩耗性に優れたダイヤモンド複合硬質燒結体、すなわち、硬質合金を結合材とするダイヤモンド燒結体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のダイヤモンド複合硬質燒結体は、高度の硬さと優れた耐摩耗性を得るために、ダイヤモンドが黒鉛に相変態しないことが必須要件とされている。そのため、通常は超高圧装置を用いて、ダイヤモンドが熱力学的に安定な高温高圧で燒結を行っているが、この方法では大型品や三次元形状品の製作が困難なうえ、製造コストが非常に高くなる。
【0003】
黒鉛が安定な圧力−温度領域で燒結して黒鉛を生成しないようにしたダイヤモンド燒結体の公知例もある。しかしながら、黒鉛の安定領域でダイヤモンドが黒鉛化を起こさないように燒結するためには、燒結条件や結合材、コーティング材などに種々の制約がある。例えば、特開昭49−000192号公報の方法では、低温短時間の燒結で黒鉛化を避けているが、結合材は酸化物に限定されている。特開平02−302367号公報の方法でも、燒結温度、圧力の限定により、黒鉛の生成を避けられるとしているが、結合材の強度向上に有効な鉄族金属などは黒鉛化を促進するので使用できない。また、特開平05−024922号公報では、ダイヤモンド粉末をダイヤモンドの黒鉛化を促進しない物質でコーティングすることにより、黒鉛化を防止できるとしている。
【0004】
一方、相変態で生成した黒鉛を結合材としたダイヤモンド燒結体が特公昭57−060316号公報に示されているが、これは、ダイヤモンド粉のみを原料としたもので、その他の結合材は使用していない。また、石材やコンクリート用のダイヤモンド砥石では、コバルトなど鉄族金属ボンドの強化のためにWCなどを添加することがあるが、ボンドの主成分は鉄族金属で、その硬さも極めて低く、硬質相を主成分としたものではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
切削工具や耐摩耗工具、耐摩耗部材に用いられるダイヤモンド燒結体は、高度の硬さ、優れた耐摩耗性、強度などを要求されるため、従来はダイヤモンドを黒鉛に相変態させることなく燒結しなければならないとされてきた。しかし、たとえある程度の黒鉛が生成しても、燒結体が使用条件に必要な特性と性能を備えていれば、実用上は十分に目的を達成できるわけで、黒鉛への変態を避けることは好ましくはあっても、必ずしも実用上の必須条件とはいえない。そして、この黒鉛に関する制約条件を実用に支障のない範囲で緩和すれば、組成や燒結条件などの選択の幅が大きく広がり、より容易にかつ低コストで燒結できると共に、多様な特性の燒結体が得られることを期待できる。
【0006】
本発明の技術的課題は、かかる観点に基づき、ダイヤモンドの部分的な黒鉛化を一定量まで容認することによって、黒鉛が安定な燒結条件においても鉄族金属を含む結合材の使用を可能にし、さらに従来より低温・低圧で、大型かつ三次元的に複雑な形状の燒結を容易に行えるようにし、かつ通常の硬質合金やセラミックスより硬さや耐摩耗性がはるかに優れたダイヤモンド燒結体及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の技術的課題は、切削工具や耐摩耗工具、耐摩耗部材として優れた性能と長寿命が期待され、性能的に、また経済的に大きな効果をもたらすダイヤモンド燒結体及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明のダイヤモンド燒結体は、基本的には、ダイヤモンド粉末の1〜75 Vol%と、結合材としての周期律表のIVa,Va,VIa族遷移金属の炭化物、窒化物、ホウ化物及びこれらの複合化合物の1種または2種以上の硬質相、及び、鉄、コバルト、ニッケルの1種または2種以上の金属結合相よりなる硬質合金の原料粉末の99〜25 Vol%とを混合し、それらを、炭素の相図で黒鉛が安定な温度−圧力領域において加圧燒結してなるダイヤモンド燒結体であって、該燒結体中にダイヤモンドと燒結時にダイヤモンドから変態して生成した黒鉛とが存在し、該ダイヤモンドと該黒鉛の比が、X−線回折におけるダイヤモンドの(111)面と黒鉛の(002)面の回折線の強度ID111及びIG002の比で0.05≦IG002/ID111<1.0であり、硬さをHv1000以上でかつ結合材の成分の硬質合金単体より硬くしたことを特徴とするものである。
【0008】
また、硬質合金における硬質相がWCを主成分とし、金属結合相がコバルトを主成分としたものとすることができ、あるいは、硬質合金における金属結合相を、鉄族金属に、50原子%未満のCu,Ti,Cr,Alの1種以上を添加した合金からなるものとすることができる。
【0009】
さらに、上述したダイヤモンド燒結体を得るための本発明の製造方法は、ダイヤモンド粉末の1〜75 Vol%と、結合材としての周期律表のIVa,Va,VIa遷移金属の炭化物、窒化物、ホウ化物及びこれらの複合化合物の1種または2種以上の硬質相、並びに、鉄、コバルト、ニッケルの1種または2種以上の金属結合相よりなる硬質合金の原料粉末の99〜25 Vol%とを混合し、それらを、炭素の相図で黒鉛が安定な温度−圧力領域内において、1200〜1500℃の温度と10MPa〜4.5GPaの圧力で加圧燒結し、燒結体中のダイヤモンドと燒結時にダイヤモンドから変態して生成した黒鉛との比が、X−線回折におけるダイヤモンドの(111)面と黒鉛の(002)面の回折線の強度ID111及びIG002の比で0.05≦IG002/ID111<1.0となるようにすることを特徴とするものである。
【0010】
さらに具体的に説明すると、本発明者は、ダイヤモンドの黒鉛変態にとらわれることなく、高硬度高強度の燒結体を低圧低温で得るために、金属の炭化物、窒化物、硼化物などの硬質相と、コバルト、ニッケルなどの金属結合相からなる硬質合金に着目したが、これらの硬質化合物は共有結合性が強いので、単体で緻密な燒結体を得ることは極めて困難である。鉄属金属は、これらの硬質化合物に対して良好な結合材であり、燒結を促進すると共に燒結体の強度を向上させることができる。これらの代表的なものは、超硬合金やサーメットの名で工具や耐摩耗部材として広く使用されている。
【0011】
上記硬質合金は、硬さや耐摩耗性に優れると共に、金属結合相を有するので、セラミックスより高強度、高靭性であるうえ、より低温で焼結できるという特徴がある。
ところが、鉄族金属はダイヤモンド合成の触媒として用いられる一方、黒鉛安定領域ではダイヤモンドの黒鉛化を促進するため、この領域で黒鉛変態を避けて燒結する場合は使用することができない。しかしながら、実用的な見地においては、黒鉛変態の防止自体が究極の目的ではなく、目的とするところは、黒鉛の生成による硬さや耐摩耗性などの性能の低下を防止することにある。従って、ある程度の黒鉛が生成したとしても、要求される性能水準を維持できれば、実用的には十分に目的を達成することができる。
【0012】
本発明者は、このような観点から、ダイヤモンドの部分的黒鉛化を容認したうえで、実用性能を十分に達成できるような高性能燒結体を提供すべく、研究開発を行い、その結果、燒結中にダイヤモンドの一部が黒鉛化しても、その量が一定の限界値以下であれば、燒結体の硬さは結合材の硬質合金より高く、切削工具や耐摩耗工具、耐摩耗部材として十分な硬さや耐摩耗性を有する緻密かつ高強度の燒結体が得られることを見出だしたものである。
【0013】
研究経過を含めて本発明を具体的に説明すると、まず、燒結体のマトリックスとなる結合材には、周期律表のIVa,Va,VIa族遷移金属の炭化物、窒化物、ホウ化物、及びそれらの複合化合物の1種または2種以上の硬質相と、鉄、コバルト、ニッケルの鉄族金属のうちの1種または2種以上の金属結合相よりなる硬質合金を選択した。
【0014】
硬質合金の硬質相を形成する上記炭化物としては、TiC,ZrC,HfC,VC,NbC,TaC,Cr3 C2 ,Mo2 C,WC,W2 C,(W,Ti)C,(W,Ti,Ta)C,(Ta,Nb)C,(W,Ti,Ta,Nb)Cなどがあり、同窒化物としては、TiN,ZrN,HfN,VN,NbN,TaN,(Ti,Ta)N,(Ta,Nb)N,(Ti,Ta,Nb)Nなどがあり、さらに同ホウ化物としては、TiB2 ,ZrB2 ,HfB2 ,VB2 ,NbB2 ,TaB2 ,Crb2 ,α−MoB,α−WBなどがある。
【0015】
また、それらの複合化合物である炭窒化物としては、Ti(C,N),Ta(C,N),(Ta,Nb)(C,N)などがあり、同炭ホウ化物としては、Ti(C,B),Ta(C,B),(Ta,Nb)(C,B)などがあり、同ホウ窒化物としては、Ti(N,B),Ta(N,B),(Ta,Nb)(N,B)などがあり、さらに同炭窒ホウ化物としては、Ti(C,N,B),(Ta,Nb),(C,N,B)などがある。
なお、これらの化合物の2種以上は、焼結中に反応して、例えば、次のように変化することがある。
WC+TiC=(W,TiC)
TiC+TiN=Ti(C,N)
【0016】
結合材としての1種または2種以上の硬質相、及び1種または2種以上の金属結合相よりなる硬質合金は、上述したところを任意に選択して組み合わせることにより形成でき、例えば、WC−Co,TiC−TiN−Mo2 C−Ni等である。
硬質合金の粒度や組成は、燒結体の緻密化、特性、ダイヤモンドの黒鉛化などに影響し、ダイヤモンドの粒度や添加量も、燒結体の緻密化、特性、黒鉛化に影響するので、これらについては詳細な研究を行った。
【0017】
粉末混合、成形、半燒結などは、超硬合金などで広く使われている粉末治金の手法を用いることができる。また、加圧燒結には、黒鉛型による通常のホットプレス、通電加圧燒結、放電加圧燒結、熱間静水圧燒結(HIP)、超高圧装置による燒結などをはじめ、数多くの方法が知られている。本発明における燒結は、特定の加圧燒結法に限定されるものではなく、実施する燒結条件に好適な加圧燒結法を適宜に選択することができる。また、HIP燒結では、圧粉体のカプセルHIP法のほか、他の加圧燒結法で気孔が閉鎖する密度以上に燒結したのちカプセルなしでHIP処理することもできる。
【0018】
ダイヤモンドの安定領域における燒結では、黒鉛化を起こさず、ダイヤモンド粒子同士が直接結合した高密度高硬度の燒結体が最も確実に得られるが、通常5GPa以上の圧力が必要なため、装置が高価であるうえ、大型品や三次元形状品の燒結体を得ることが極めて困難で、通常は、円板状または円柱状に限定されている。
本発明をなすに至る過程においては、燒結圧力を下げてこれらの問題点を解決するため、黒鉛の安定領域における燒結について、圧力、温度、時間等の条件と燒結体の緻密化、特性、ダイヤモンドの黒鉛化等の関係を詳細に研究した。
【0019】
黒鉛安定領域の燒結では、ダイヤモンド粒子の直接結合を期待するのは困難であるため、結合材の硬質合金を緻密に燒結させてダイヤモンド粒子を強固に把握させる必要がある。そのための燒結温度は、一般的に、900℃以上、より好ましくは1000℃以上である。一方、高温ではダイヤモンドの黒鉛化や硬質合金の粒成長が促進するので、燒結温度の上限は1500℃、好ましくは1400℃である。
硬質合金を結合材として、ダイヤモンドの黒鉛化を許容限界内に制御し、低温で緻密な燒結体を得るには、加圧燒結が必要であり、圧力は10MPa以上、好ましくは50MPa以上が必要である。圧力の上限は、黒鉛の安定領域内という限定から、1000℃で約3GPa、1500℃で約4.5GPaである。
【0020】
ダイヤモンドの黒鉛化は、燒結温度が低く、燒結圧力が高く、保持時間が短いほど抑制されるが、燒結体を緻密化して十分な特性を得るためには、上述の温度やある程度の時間が必要であり、かつ技術的経済的観点からは、圧力が低い方が好ましい。これらの燒結条件を上述した範囲内で適正に選択することにより、燒結体を十分緻密化したうえで黒鉛化量を許容限度内に制御できることを確かめている。
好適な燒結時間は、温度、圧力、燒結方法、原料組成、原料粒度などによって変わるので、一概に特定することは困難であるが、ホットプレス、通電加圧燒結、HIPなどでは、一般に、30min〜数時間であり、一方、GPa級の高圧下では、10min程度でも十分な場合もあり、放電加圧燒結では5〜15minの場合が多い。
【0021】
硬質合金中の鉄族金属はダイヤモンドの黒鉛化を促進するので、この観点からは鉄族金属ができるだけ少ないことが望ましい。一方、燒結性や強度は鉄族金属が多いほど向上するが、鉄族金属量が硬質合金中において1 Vol%程度の少量でも緻密化や強度の向上に十分な効果がある。また、燒結条件やダイヤモンドの粒径などを適切に選べば、通常の硬質合金と同様の鉄族金属量の範囲で黒鉛化量を許容限度以内に制御することが十分に可能で、それにより燒結体の強度が向上することを確認している。
【0022】
ダイヤモンドは、数 Vol%の少量添加でも燒結体の硬さや耐摩耗性の向上に顕著な効果が見られる。一方、混合則的には、ダイヤモンドの含有量は高いほど燒結体の硬さや耐摩耗性が向上するはずであるが、実際には、ダイヤモンド粒子の直接結合が困難な本発明の燒結体では、あまりダイヤモンド量が多いと結合材の把握力が低下して、緻密な燒結体が得られなくなる。従って、効果的なダイヤモンド添加量は1〜75 Vol%、好ましくは5〜60 Vol%である。
【0023】
また、ダイヤモンド粒子の粒径が大きい場合は、黒鉛化の制御が比較的容易であるが、粒子が微細で比表面積が大きくなるに従って、黒鉛化が速くなる。従って、微粒ダイヤモンドにおいては、燒結条件や鉄族金属量等でより注意深い制御が必要であるが、粒径1μmクラスの微粒でも目的とする燒結体が得られることを確認している。しかし、本発明では粒径の範囲を特に限定するものではなく、各種工具や機械部材に要求される性能や面粗さなどに応じて、適切な粒径を選択することができる。
【0024】
ダイヤモンドの黒鉛化量と燒結体の硬さの関係を調べた結果では、次の点が明らかになった。
すなわち、燒結体のX−線回折において、ダイヤモンドの(111)面と黒鉛の(002)面の回折線の強度ID111,IG002の比IG002/ID111が約1.0以下であれば、一般的に、燒結体の硬さは、その燒結体の結合材に用いた硬質合金のダイヤモンドを含まない単体の硬さと同等以上になるという知見を得た。従って、本発明の目的を達成するためには、ダイヤモンドの相変態で生成した黒鉛量の許容限界がI G002 /I D111 <1.0であり、さらに好ましくは0.5以下である。また、上記の結果は、ダイヤモンドの黒鉛化が起こらないかそれが僅かな燒結体においては、相変態による黒鉛との合計量が上記の許容限を超えない範囲の黒鉛粉末を添加しても、硬質合金より硬さが高い燒結体が得られることを示すものである。
【0025】
さらに、摩耗試験の結果では、ダイヤモンドの黒鉛化量が上記の許容範囲内の硬質複合燒結体は、超硬合金やセラミックスよりはるかに優れた耐摩耗性と低い摩擦係数を持つことが明らかとなっている。
【0026】
以上のように、本発明では、黒鉛の安定領域で燒結するダイヤモンド複合燒結体において、ダイヤモンドの黒鉛化量を性能を大きく低下させない範囲で一定限度まで容認することによって、燒結体の製造条件や性能などの選択肢を大きく広げることが可能になり、そのため、鉄族金属などの使用が可能となって燒結性が向上し、従来より低温、低圧、短時間で、容易に緻密な燒結体を得ることが可能となった。さらに、ダイヤモンド粉末の保護コーティングなどの特別な前処理も必要としない。
【0027】
一方、得られた燒結体は、従来の超硬合金やセラミックスより高い硬さや耐摩耗性を有し、さらに金属結合相により燒結体の強度も向上し、各種切削工具や、金型、ダイス、裁断刃、ビット等の耐摩耗工具、あるいは、軸受け、ノズル、ワークレスト、バルブ等の各種の耐摩耗機械部材としてその利用が大きく期待できるものである。
また、本発明の燒結体の他の長所として、導電性があるので放電加工が可能であること、直接ろう付けが可能であること、既存の超高圧燒結ダイヤモンドに比べて研削加工が容易であること、大型品や三次元形状品を作りやすいこと等が挙げられる。
【0028】
【実施例】
本発明の実施例を以下に示す。なお、本発明は以下の実施例の範囲に限定されるものではない。
【0029】
実施例1
平均粒径1μmのWC99重量%とCo1重量%をボールミル混合した後、粒径が20〜30μmのダイヤモンド50 Vol%を乳鉢で混合した。混合粉は金型で成形し、非酸化性雰囲気で成形助剤の除去と半燒結を行った。この半燒結体はその周囲をhBNで包んでガラス容器に真空封入した。
次いで、1200℃,200MPaで60minのHIP条件で、10φ×2mm,10×15×5mm,25×4×2mmなどの燒結体を作製した。燒結体は緻密で光学顕微鏡で有害なポアは認められなかった。ダイヤモンドの一部は燒結中に黒鉛に変態し、燒結体のX−線回折による回折線の強度比IG002/ID111=0.05であった。Hv硬さは3800で、同時に燒結したWC−1%Co合金の硬さ2000よりもはるかに高かった。抗折力は、800MPaと機械部材として十分に使用できる強度を示した。
【0030】
また、10mmのアルミナボールを相手材としたピンオンブロックの往復摩耗試験を、摩擦速度72m/h,荷重2kgの条件で行った。比較に用いた市販のK20超硬合金及びCBN超高圧燒結体では、1hの試験で比摩耗量が各49×10-7mm3 /Nm,18×10-7mm3 /Nmで、摩擦係数は各0.35及び0.5であったのに対し、本実施例の燒結体は、3h摩擦しても測定できる大きさの摩耗は発生せず、摩擦時間全体を通じて0.08〜0.1の低い摩擦係数を示した。本実施例の燒結体の特性は測定条件内でダイヤモンド超高圧燒結体と同レベルであった。
【0031】
実施例2
実施例1と同様の方法で各種の燒結体を種々のHIP条件で作製した。実施例1と同様の測定結果を比較例と共に表1に示す。I G002 /I D111 <1.0の燒結体はいずれも高い硬さと優れた摩耗特性を示した。
【表1】
【0032】
実施例3
実施例1と同様にして、平均粒径1μmのWCとCoの重量比で97:3の混合粉に、粒径1〜2μmのダイヤモンドを50 Vol%添加した半燒結体を作製した。これをジルコニウム箔に包んで、超高圧燒結体の製造で通常行われている方法により、ベルト型高圧装置を用いて、1350℃,3GPaで30minの条件で、4φ×2mmの燒結体を作製した。得られた燒結体は緻密で、光学顕微鏡で有害なポアは認められなかった。X−線回折によるIG002/ID111=0.07であった。また、Hv硬さは4000で、硬質合金単体の硬さよりもはるかに高かった。
【0033】
実施例4
実施例3と同様の方法で各種の試料をベルト型高圧装置を用いて種々の条件で加圧燒結した。それらの結果を表2に示す。ただし、表中No.5の結果は参考例を示している。
【表2】
【0034】
実施例5
実施例1の燒結体からJISのSNGN120408相当の切削用インサートを作成し、Al−18%Si合金丸棒の端面を切削速度550〜90m/min、切り込み0.5mm、送り0.1mm/revで切削した。横逃げ面摩耗幅はK10超硬合金が5パスの切削で0.30mmであったのに対し、本実施例の燒結体では10パスの切削で0.05mmで、ダイヤモンド超高圧燒結体の0.03mmに近い耐摩耗性を示した。
【0035】
【発明の効果】
以上に詳述したように、本発明によれば、高硬度、高耐摩耗性のダイヤモンド複合燒結体において、ダイヤモンドの部分的な黒鉛化を一定量まで容認することによって、黒鉛が安定な燒結条件においても鉄族金属を含む結合材の使用を可能にし、さらに従来より低温・低圧で、大型かつ三次元的に複雑な形状の燒結を容易に行えるようにし、かつ通常の硬質合金やセラミックスより硬さや耐摩耗性がはるかに優れたダイヤモンド燒結体及びその製造方法を得ることができる。
そして、本発明によれば、工具や耐摩耗部材として優れた性能と長寿命が期待され、性能的に、また経済的に大きな効果をもたらすダイヤモンド燒結体及びその製造方法を得ることができる。
Claims (4)
- ダイヤモンド粉末の1〜75 Vol%と、結合材としての周期律表のIVa,Va,VIa族遷移金属の炭化物、窒化物、ホウ化物及びこれらの複合化合物の1種または2種以上の硬質相、及び、鉄、コバルト、ニッケルの1種または2種以上の金属結合相よりなる硬質合金の原料粉末の99〜25 Vol%とを混合し、それらを、炭素の相図で黒鉛が安定な温度−圧力領域において加圧燒結してなるダイヤモンド燒結体であって、
該燒結体中にダイヤモンドと燒結時にダイヤモンドから変態して生成した黒鉛とが存在し、該ダイヤモンドと該黒鉛の比が、X−線回折におけるダイヤモンドの(111)面と黒鉛の(002)面の回折線の強度ID111及びIG002の比で0.05≦IG002/ID111<1.0であり、
硬さをHv1000以上でかつ結合材の成分の硬質合金単体より硬くした、
ことを特徴とする硬質合金を結合材とするダイヤモンド燒結体。 - 硬質合金における硬質相がWCを主成分とし、金属結合相がコバルトを主成分としたものである請求項1に記載の硬質合金を結合材とするダイヤモンド燒結体。
- 硬質合金における金属結合相が、鉄族金属に、50原子%未満のCu,Ti,Cr,Alの1種以上を添加した合金からなる請求項1に記載の硬質合金を結合材とするダイヤモンド燒結体。
- 請求項1〜3に記載のいずれかのダイヤモンド燒結体を製造するための方法であって、
ダイヤモンド粉末の1〜75 Vol%と、結合材としての周期律表のIVa,Va,VIa族遷移金属の炭化物、窒化物、ホウ化物及びこれらの複合化合物の1種または2種以上の硬質相、及び、鉄、コバルト、ニッケルの1種または2種以上の金属結合相よりなる硬質合金の原料粉末の99〜25 Vol%とを混合し、それらを、炭素の相図で黒鉛が安定な温度−圧力領域内において、1200〜1500℃の温度と10MPa〜4.5GPaの圧力で加圧燒結し、燒結体中のダイヤモンドと燒結時にダイヤモンドから変態して生成した黒鉛との比が、X−線回折におけるダイヤモンドの(111)面と黒鉛の(002)面の回折線の強度ID111及びIG002の比で0.05≦IG002/ID111<1.0となるようにする、
ことを特徴とする硬質合金を結合材とするダイヤモンド燒結体の製造方法。
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1994
- 1994-10-11 JP JP27178894A patent/JP3949181B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JPH08109431A (ja) | 1996-04-30 |
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