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JP3949172B2 - 長繊維不織布とその製造方法及びこれを用いた吸収性物品 - Google Patents

長繊維不織布とその製造方法及びこれを用いた吸収性物品 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、長繊維不織布に関するものである。特に本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有し、かつ繊維表面の少なくとも一部を繊維の長さ方向に形成している第一成分と、第一成分よりも高融点の結晶性熱可塑性樹脂を第二成分とした熱融着性複合長繊維不織布に関するものである。
背景技術
長繊維不織布の代表例であるスパンボンド不織布は、溶融紡糸口金から吐出した長繊維群をエアーサッカーなどに導入して牽引延伸し、開繊して捕集コンベア上に集積して繊維ウェブを得た後、長繊維相互間を適宜の手段で交絡あるいは熱融着させて製造されている。従って、連続繊維とも言える長繊維を構成繊維とするものであるため、短繊維を構成繊維とする短繊維不織布に比べて、引張強度等の機械的性質に優れている。また、溶融紡糸して得られた長繊維を、そのまま開繊及び集積して不織布が得られるため、短繊維を乾式法や湿式法で開繊及び集積して得られる不織布に比べて、合理的に生産しうるという利点があり、生産性に優れ、近年その生産量も大きく増加してきている。
特に、第一の成分としてエチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有した樹脂を用い、第二の成分として結晶性熱可塑性樹脂を用いた複合長繊維不織布は、長繊維不織布としての上記の利点のほかに、熱融着性に優れているため加工がしやすく、加えて第一の成分として2種以上のオレフィンを共重合したオレフィン系の低融点共重合体を用いる場合に比べて、他素材との熱融着性により優れているためバインダーが必要なく、良好な品質の不織布が得られる場合には、他素材との接着積層による応用分野も広がるので大幅な需要の増大が見込まれている。
ところで、熱融着性複合長繊維不織布の熱融着成分として用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有する共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有する共重合体により、低結晶性、低融点化または低軟化点化されている。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有する共重合体によってその大小はあるものの比較的、繊維相互間或いは繊維と金属間の摩擦抵抗値が大きくなっている。
このため、紡糸ノズル孔より吐出した糸条が金属製のエアーサッカーで牽引される際に繊維と金属間或いは繊維相互間の摩擦によって繊度斑が生じたり、繊維が束になり開繊しにくいという問題があった。
また、この様に結晶性が低下している樹脂を用いた場合には、紡糸ノズル孔から溶融状態で吐出したその樹脂の糸条が結晶化し固化するまでの時間或いは距離(固化長)が著しく長くなっている。
従って、摩擦によって長繊維が束になり繊度斑や開繊不良を生じるだけでなく、長繊維相互間の距離は短くなることを引き金に、固化長が長くなった糸条が未だ溶融状態すなわち、低融点または低軟化点の前記共重合体が溶融状態で接触するために、いわゆる糸切れが発生し操業性が悪いということがあった。
特開平5−5261号には、エチレン−プロピレンランダム共重合体とアイソタクチックポリプロピレンの複合型長繊維よりなる不織布が開示されている。しかしながら、ここでは、上述したような問題を解決するための手段は特に示されていない。また、エチレン−プロピレンランダム共重合体とは性質の異なるエチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有する共重合体を一成分として含有する複合繊維からなる長繊維不織布における前述の様な問題点を解決する方法は提案されていない。
発明の開示
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有する共重合体を複合繊維の一成分として含有する高接着性、低温接着性が良好で、得られる長繊維不織布の柔軟性や肌触り等の風合い、不織布の均一性に優れ、しかも紡糸性などの操業性も良好な複合繊維からなる長繊維不織布とその製造方法及びこれを用いた吸収性物品を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、少なくとも低融点または低軟化点成分である第一成分へ無機物粉末を添加することにより、無機物粉末が繊維表面へ露出し、繊維表面へ微細な凹凸を付与でき、繊維相互間の接触面積が減少し紡糸中に繊維相互間が粘着することを防止できるので、糸切れなどを減少させ、操業性を良好にし、しかも無機物粉末の添加によっても前記第一成分を構成する樹脂の結晶化温度の上昇はほとんど起こらず、結晶化度の増加も著しく小さく、従って、低融点または低軟化点のエチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有する共重合体の柔軟性や高接着性、低温接着性等の特徴を損なわず、柔軟性や肌触り等の風合いが良好かつ他部材との接着性に優れる長繊維不織布が得られることを知り本発明を完成するに至った。
上記の課題を解決するために、本発明の長繊維不織布は、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物とポリエチレンとを混合し、かつ繊維表面の少なくとも一部を繊維の長さ方向に形成している第一成分と、第一成分よりも高融点の結晶性熱可塑性ポリオレフィン樹脂を第二成分とした熱融着性複合長繊維からなり、少なくとも第一成分中に無機物粉末を含有し、前記無機物粉末の含有量が繊維中濃度にして500〜12000重量ppmであることを特徴とする。
本発明の長繊維不織布の製造方法は、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物とポリエチレンとを混合した樹脂組成物を第一成分とし、第一成分よりも高融点の結晶性熱可塑性ポリオレフィン樹脂を第二成分とし、少なくとも第一成分中に無機物粉末を繊維中濃度にして500〜12000重量ppmとなるよう添加し、第一成分が繊維表面の少なくとも一部を繊維の長さ方向に形成した複合長繊維となるよう溶融紡糸することを特徴とする。
本発明の長繊維不織布においては、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物の組成が酢酸ビニル及びその鹸化物の分率にして5〜40重量%であることが好ましい。
また、本発明の長繊維不織布においては、第一成分を構成する樹脂成分中におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物の含有率が5重量%以上であることが好ましい。
また、本発明の長繊維不織布においては、第一成分においてエチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物と混合する樹脂がポリエチレンであることが好ましい。
また、本発明の長繊維不織布においては、無機物粉末の粒子径が、重量平均粒子径で0.04〜2μmであることが好ましい。
また、本発明の長繊維不織布においては、無機物粉末が、二酸化チタン、シリカ、ミョウバン、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよびタルクから選ばれた少なくとも1種の無機粉末であることが好ましい。
また、本発明の長繊維不織布においては、第二成分の結晶性熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることが好ましい。
また、本発明の長繊維不織布においては、第二成分の結晶性熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
また、本発明の長繊維不織布においては、長繊維不織布がスパンボンド法により得られた長繊維不織布であることが好ましい。
また、本発明の長繊維不織布においては、第1成分と第2成分の容積割合が10:90〜90:10の範囲であることが好ましい。
また、本発明の長繊維不織布においては、第1成分と第2成分の容積割合が30:70〜70:30の範囲であることが好ましい。
次に本発明の吸収性物品は、前記本発明の長繊維不織布を物品の少なくとも一部に用いたことを特徴とする。
前記本発明の吸収性物品においては、吸収性物品が、長繊維不織布を用いた使い捨ておむつ及び長繊維不織布を用いた生理用品から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
本発明の長繊維不織布は、従来の長繊維不織布の欠点を改良し、高接着性、低温接着性が良好で、得られる長繊維不織布の柔軟性や肌触り等の風合い、不織布の均一性に優れ、しかも紡糸性などの操業性も良好な複合繊維からなる長繊維不織布を提供でき、その工業的価値は極めて大きい。すなわち、少なくとも低融点または低軟化点成分である第一成分へ無機物粉末を添加することにより、繊維表面へ微細な凹凸を付与し、紡糸中の繊維相互の粘着を防止して、糸切れなどを減少させ、操業性を良好にし、しかも無機物粉末は造核作用が比較的小さく、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有する樹脂成分の結晶化温度の上昇はほとんど起こらず、結晶化度の増加も著しく小さく、従って、低融点または低軟化点の前記共重合体の柔軟性や高接着性、低温接着性等の特徴を損なわず、柔軟性や肌触り等の風合いが良好かつ他部材との接着性に優れる長繊維不織布が提供できる。
また本発明の長繊維不織布に於いては、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物の組成が酢酸ビニル及びその鹸化物の分率にして5〜40重量%である好ましい態様にすることにより、共重合体の融点が余りに低すぎることがなく、熱安定性も良好で変質、熱劣化などが生じる事なく溶融紡糸することができ、また、他の異質素材との熱接着性に優れるものとなる。また、共重合体特有の柔らかさを良好に発揮出来、また、繊維表面に無機物粉末が露出し繊維表面に微細な凹凸を付与することにより、複合長繊維が束になりにくくなり、繊度斑が小さく開繊性に優れ、糸切れなどが生じにくく紡糸性を向上させることができ好ましい。
また、本発明の長繊維不織布に於いては、第一成分を構成する樹脂成分中におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物の含有率が5重量%以上の好ましい態様にすることにより低温接着性および他の異質素材との熱接着性が安定して発揮でき好ましい。また、共重合体特有の柔らかさを良好に発揮でき、風合の優れた長繊維不織布を提供できるので好ましい。
また、本発明の長繊維不織布に於いて、無機物粉末の粒子径が、平均粒子径で0.04〜2μmである本発明の好ましい態様とすることにより、この範囲の平均粒子径の無機物粉末は、より小さい粒子径のものに比べてコストの上昇が少なく、無機物粉末の2次凝集を起こしたり、フィルターや紡糸ノズルの目詰まりが生じたり、糸切れが発生して操業性が低下することもなく、また、より粒子径が大きい無機物粉末を使用する場合に比べて、無機物粉末の分散性が不良になったり、フィルターや紡糸ノズルの目詰まりが生じたり、糸切れが発生して操業性が低下する恐れもなく、前記効果を十分に達成でき好ましい。
また、本発明の長繊維不織布に於いて、無機物粉末が、二酸化チタン、シリカ、ミョウバン、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、タルクから選ばれた少なくとも1種の無機粉末である本発明の好ましい態様とすることにより、これらの無機物粉末は造核作用が比較的小さく、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有する第一成分を構成する樹脂の結晶化温度の上昇はほとんど起こらず、結晶化度の増加も著しく小さく、従って、第一成分である低融点または低軟化点の前記樹脂の柔軟性や高接着性、低温接着性等の特徴をより損ないにくく、柔軟性や肌触り等の風合いが良好でかつ他部材との接着性に優れる長繊維不織布が得られ好ましい。
また、本発明の長繊維不織布に於いて、第二成分の結晶性熱可塑性樹脂がポリプロピレンである本発明の好ましい態様とすることにより、比較的柔軟な長繊維不織布を得ることができ好ましい。
また、本発明の長繊維不織布に於いて、第二成分の結晶性熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートである本発明の好ましい態様とすることにより、より強力が大きく、また、捲縮を発現させた時の弾力性(クッション性)のより優れた長繊維不織布を得ることができ好ましい。
また、本発明の長繊維不織布に於いて、長繊維不織布がスパンボンド法により得られた長繊維不織布である本発明の好ましい態様とすることにより、引張強度等の機械的性質に優れている不織布が容易に得られ、また、溶融紡糸して得られた長繊維を、そのまま開繊及び集積して不織布が得られるため生産性が非常に優れ好ましいと共に、スパンボンド法により上述した作用効果が特に効果的に発揮され、スパンボンド法により得られた複合長繊維不織布の従来の欠点を効果的に改良することができ好ましい。
【図面の簡単な説明】
図1 本発明の長繊維不織布を一部に用いた使い捨ておむつの一例の肌側から見た展開平面図。
図2 図1のI−I部分の断面の概略端面図。
図3 図1のII−II部分の断面の概略端面図。
図4 本発明の長繊維不織布を一部に用いた生理用ナプキンの一例の肌側から見た展開平面図。
図5 図4のIII−III部分の断面の概略端面図。
発明を実施するための最良の形態
本発明の長繊維不織布は、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有し、かつ繊維表面の少なくとも一部を繊維の長さ方向に形成している第一成分と、第一成分よりも高融点の結晶性熱可塑性樹脂を第二成分とした熱融着性複合長繊維からなり、少なくとも第一成分に無機物粉末が含有されており、前記無機物粉末の含有量が繊維中濃度にして500〜12000重量ppm含有する複合長繊維使いの不織布である。ここで、繊維表面の少なくとも一部を繊維の長さ方向に形成している第一成分の領域は、全長にわたって連続的であるのが好ましい。
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有し、かつ繊維表面の少なくとも一部を繊維の長さ方向に形成している樹脂を第一成分とし、結晶性熱可塑性樹脂を第二成分とした複合繊維としては、第一成分が鞘成分、第二成分が芯成分となる鞘芯型の複合繊維、前記に於いて芯成分の断面における位置が偏心しているいわゆる鞘芯偏心型の複合繊維、第一成分と第二成分が貼り合わされているいわゆる並列型複合繊維(サイドバイサイド型複合繊維)が好適に用いられる。特に鞘芯偏心型複合繊維や並列型複合繊維を用いると捲縮繊維を容易に得ることが出来、嵩高で風合のよい長繊維不織布が得られる点では好ましい。並列型複合繊維の断面における第一成分と第二成分の割合(複合比)は1:1であってもよく、一方の成分が繊維断面において他方の成分より大きな断面積を占める形になっていてもよいことはもちろんである。
複合繊維の第一成分と第二成分の容積割合(繊維断面を採用した場合にはその断面の面積割合に該当する=複合比)は、通常、第一成分:第二成分の比率で10:90〜90:10、好ましくは30:70〜70:30のものが用いられる。
本発明において第一成分としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有した樹脂が用いられる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、酢酸ビニル分率(すなわち酢酸ビニル成分の共重合割合)が約5〜40重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく用いられる。特にエチレン−酢酸ビニル2元共重合体が好ましく用いられるが本発明の目的を疎外しないで若干の他の成分が共重合されていてもよい。酢酸ビニル分率が約5〜40重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体は、融点が低過ぎたり、また粘着性を持つこともなく、繊維表面を構成する材料としての必要な性質を満足しており、また、熱安定性も比較的よいので溶融紡糸においての熱分解、変質の問題も少なくは好適であり、しかもエチレン−酢酸ビニル共重合体の特質である、他の異質素材との熱接着性にも優れており好適に用いられる。この点は鹸化物であっても同様である。
本発明に用いる上記エチレン−酢酸ビニル共重合体は、鹸化しないで用いることもできるし、また、その鹸化物も用いられる。鹸化度は100%までの任意のものでよい。すなわち部分鹸化物でもよい。鹸化物はコストが若干高くなるが、風合は良好である。エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物を用いる場合の酢酸ビニルとその鹸化物成分の分率(共重合割合)はその両成分の合計量で5〜40重量%の範囲のものが前述した理由により好ましく用いられる。前記において例えば鹸化度が0%の場合は“5〜40重量%”は酢酸ビニルの共重合割合を示すことになり、鹸化度が100%の場合はその鹸化物成分の共重合割合を示すことになる。
また、第一成分を構成する樹脂成分に於いては、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物は、第一成分中の樹脂成分の合計重量に基づいて5重量%以上含有していることが低温接着性や他の異質素材との接着性を良好に保つ上で好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物は、第一成分中の樹脂成分の合計重量に基づいて100重量%の割合まで使用することも出来るが、必要に応じて、溶融紡糸が可能な範囲で比較的低融点または低軟化点の樹脂を混合して使用することができる。
第一成分においてエチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物と混合して使用する比較的低融点または低軟化点の樹脂のうちでは、相溶性と低融点温度を確保するうえからポリエチレンが好ましく、ポリエチレンは各種のものが使用できるが特に低密度ポリエチレンが好ましい。ポリエチレンを併用することにより、溶融紡糸中における前述したエアーサッカーなどの金属との摩擦をより低減し、繊維間の接着をより好適に防止でき好ましい。
本発明において用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有する第一成分としては、第二成分の結晶性熱可塑性樹脂よりも低温で熱溶融または軟化して熱融着性を発揮し得るものであればよく、好ましくは、第二成分の結晶性熱可塑性樹脂が熱溶融または軟化する温度より5℃以上、より好ましくは30℃以上低い温度で熱溶融または軟化し得るものが、得られた長繊維フリースを熱融着させる場合に第二成分への熱による物理的性質の低下などのダメージを与えず好ましい。
本発明で用いる第二成分の結晶性熱可塑性樹脂としては、前記第一成分のエチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有したものの融点または軟化点よりも、融点または軟化点が高く、前記第一成分と共に複合紡糸ができる結晶性熱可塑性樹脂が用いられ、好ましくは、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートが挙げられる。前記第二成分としてポリプロピレンを用いると、比較的柔軟な長繊維不織布が得られ好ましい。また、前記第二成分としてポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、より強力が大きく、また、捲縮を発現させた時の弾力性(クッション性)のより優れた長繊維不織布を得ることができ好ましい。
用いる樹脂のMFR(メルトフローレート)は、特に限定するものではないが、第一成分、第二成分とも(但し、第二成分はオレフィン系樹脂を用いる場合)、一般的に10〜100g/10分のものが用いられる。
本発明で用いる無機物粉末は、繊維表面に凹凸を付与せしめ、繊維同士の粘着を防止し得るものであればどの様なものを用いてもよい。
無機物粉末の粒子径は、重量平均粒子径で0.04〜2μmであることが好ましく、特に0.04〜1μmの範囲が好ましい。余り粒子径の小さいものを用いても、コストが高くなること、二次凝集を起こしやすく、フィルターや紡糸ノズルの目詰まりが生じたり、糸切れが発生して操業性が低下する原因になりやすいし、また、余りに粒子径が大き過ぎる場合には、無機物粉末の分散性が不良になったり、フィルターや紡糸ノズルの目詰まりが生じたり、糸切れが発生して操業性が低下する原因になりやすい傾向があるので、上記の範囲が特に好ましい。無機物粉末の粒子径は電子顕微鏡観察により測定し得る。例えば、複合長繊維中に含有されている無機物粉末の粒子径を測定する場合には、複合長繊維を真空下で加熱することにより、複合長繊維を構成している重合体と無機物粉末とを分離してから電子顕微鏡観察により測定することができる。その際に粒子が球形以外の形の場合には、粒子と同体積の球と仮定した場合の粒子径に換算する。
本発明で用いる無機物粉末の具体例としては、二酸化チタン、シリカ、ミョウバン、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、タルクなど各種の安定な不活性な無機物粉末が挙げられる。これらの無機物粉末は、複合繊維表面へ微細な凹凸を付与する事ができ、その結果、紡糸中における繊維相互間の粘着を防止し、スパンボンド不織布などの複合長繊維不織布において、前述した様に繊度斑や開繊性が良好で、糸切れなどが改善され操業性がよく、しかも、これらの無機物粉末は造核作用が比較的小さい事で第一成分である低融点または高接着性のエチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有する樹脂成分の柔軟性や高接着性、低温接着性等の特徴を損なわず、柔軟性や肌触り等の風合いが良好でかつ他部材との接着性に優れる長繊維不織布が得られるのである。特に、二酸化チタン、シリカ、ミョウバン、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、タルクが造核作用などもより小さく好ましい。これらの無機粉末は純粋なものを用いてもよいが、工業的にはコストが高くなるので、本発明の目的を損わない限り、不純物が含まれているものを使用することは何ら差し支えない。また、二酸化チタンにはルチル型二酸化チタンやアナターゼ型二酸化チタンがあり、いずれも使用できるが、耐候性及び耐熱性が良好な点においてルチル型二酸化チタンが好ましい。また、無機物粉末は、少なくとも第一成分に添加することが必要であり、第一成分と第二成分の両者に添加されていてもよい。
無機物粉末は、押出機に設けられているサイドフィーダーより導入して溶融押出しと共に混練添加してもよい。また、事前に例えば第一成分と混練したコンパウンドあるいはマスターバッチのような形態で用いて添加してもよい。この無機物粉末を混練する際は、通常、分散性をよくするために適宜の分散剤が用いられる。
無機物粉末の添加量は繊維中濃度にして500〜12000重量ppm含有していることが必要である。無機物粉末の添加量がこれより少な過ぎると繊維表面の微細な凹凸付与による紡糸中に於ける繊維相互間の粘着防止効果が十分発揮されず、摩擦によって長繊維が束になり繊度斑や開繊不良を生じたり、糸切れが発生し操業性が低下してしまい、好ましくない。また、無機物粉末の添加量がこれより多過ぎるとフィルターや紡糸ノズルの目詰まりが生じたり、糸切れが発生して操業性が低下する原因になり好ましくない。尚、本発明の長繊維不織布を、特に生理用ナプキンに用いる場合には、無機物粉末の添加量は樹脂成分の合計量で12000重量ppm以下にすることが好ましい。
無機物粉末の添加量における繊維中濃度とは複合繊維の場合、繊維全体における濃度である。従って仮に第一成分のみに無機物粉末を添加した場合でも、その濃度は第一成分と第二成分とからなる複合繊維全体の平均的な濃度を示すことになる。
本発明において不織布を構成する複合長繊維の繊度は特に限定するものではなく、用いる素材樹脂の種類や用途に応じて適宜の繊度とすればよい。好ましくは1〜8d/f程度であり、例えば紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、手術用着衣、手術用掛布、ハップ材などで代表される衛生材料に用いる場合には1〜5d/fが好ましい。
本発明の長繊維不織布の目付も特に限定はなく、用いる素材樹脂の種類や用途に応じて適宜の目付の不織布とすればよく、好ましくは10〜50g/m2程度であり、特に衛生材料に用いる場合には10〜30g/m2程度が好ましい。
以上説明した様な第一成分、第二成分の樹脂組成物を用い、溶融紡糸して口金から複合長繊維を得て、本発明にかかる長繊維不織布を得ることができるが、かかる長繊維不織布は、よく知られているスパンボンド法によって容易に製造することができる。
スパンボンド法は、すでによく知られているので詳細な説明は省略するが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物を含有した低融点樹脂成分と無機物粉末の混合物を第一成分として用意し、結晶性熱可塑性樹脂(必要に応じて無機物粉末が混合された結晶性熱可塑性樹脂を用いてもよい)を第二成分として用意する。これら樹脂組成物を、それぞれ個別の押出機に投入し、複合紡糸口金を用いて溶融紡糸する。紡糸口金より吐出した繊維群をエアーサッカーに導入して牽引延伸し、長繊維群を得、続いて、エアーサッカーより排出された長繊維群を、コロナ放電装置などの適宜の帯電装置によりに同電荷を付与せしめ帯電させた後、一対の振動する羽根状物(フラップ)の間を通過させることで開繊させ、或いは適宜の反射板などに衝突させて開繊し、開繊された長繊維群は裏面に吸引装置を設けた無端ネット状コンベア上に、長繊維フリースとして捕集する。捕集した長繊維フリースは、無端コンベアに載せられたまま搬送され、加熱された凹凸ロールと平滑ロールとで構成されたポイントボンド加工機の加圧されたロール間に導入し、長繊維フリースを前記凹凸ロールの凸部に対応する区域において第一成分が溶融または軟化して長繊維相互間が熱融着された長繊維不織布を得る。長繊維不織布の目付は、例えば紡糸吐出速度(時間当たりの吐出量)や無端コンベアの移動速度などを調整することにより調整することができる。なお、長繊維フリースの不織布化(交絡あるいは熱融着)は、ポイントボンド法に限らず、その他、熱風加熱法、高圧水流法、二ードルパンチ法、超音波加熱法などで行われても良く、これら不織布化法の複数の組み合わせも採用し得る。
また、本発明の長繊維不織布は前記で説明した方法によって製造されたものに限定されるものではないが、スパンボンド法が引張強度等の機械的性質に優れている不織布が容易に得られ、また、溶融紡糸して得られた長繊維を、そのまま開繊及び集積して不織布が得られるため生産性が非常に優れ安価に製造でき好ましい。
かくして得られた、本発明の長繊維不織布は、高接着性、低温接着性、異種素材との接着性が良好で、得られる長繊維不織布の柔軟性や肌触り等の風合い、不織布の均一性に優れ、しかも紡糸性などの操業性も良好な複合繊維からなる長繊維不織布が得られるので、各種の用途に使用でき、特に他の素材と接合或いは接着させて使用したり、または他の素材と組み合わせて複合材料を形成する場合に容易に熱接着ができるので、かかる複合材料の製造にも効果的に使用できる。
更に本発明の長繊維不織布は、生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の一部に用いることもできる。
紙おむつ等の使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品は、その態様によっても多少異なるが、尿や血液などの体液を吸収し漏れを防止するため、少なくとも、尿や血液などの体液を吸収し保持する液体吸収層と、その表面側(肌に接する側)に配置される例えば不織布などからなる液体透過性の表カバーと、裏側面に配置され、吸収した体液が外部にもれるのを防ぐための液体非透過性バックシートとを有する構成となっている。また、通常、紙おむつ等の使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品においては、バックシートのほかにも、吸収性物品が身体の動きによって所定の着用状態から位置がずれたり、横向きに寝転んだりした場合に、吸収した体液などの液体が漏れるのを防止するために吸収性物品の両脇に不織布などからなる撥水性のサイドシート(使い捨ておむつなどの場合にはギャザーが付与されている場合が多いのでサイドギャザーとかレッグカフなどとも言われており、使い捨ておむつの場合には、サイドシートは使い捨ておむつを着用した場合に太もものつけね又は太ももを回ってそれを把持する様な位置に設けられている。)なども設けられていたり、また、使い捨ておむつに於いては、更に腹部などを覆う部分やその反対側の唇部上部を覆う部分の肌側には、吸収した体液などの液体が、転んだり、寝転んだり、身体を回転させるなど着用者の動きにより、腹部や臀部上部に漏れてきた場合にそれを吸水性物品外に漏らさないようにするための不織布などからなる撥水性のラウンドシートなども設けられている。更に使い捨ておむつなどの場合には、ウェスト位置肌側に帯状にウェストギャザーなどが設けられているものもあり、これらも例えば不織布などの撥水性のシートで構成されている。
また、液体吸収層には、例えばフラッフパルプなどのセルロース系繊維、更に必要に応じて合成繊維等が混合された繊維集合体に高吸水性樹脂が混合されたものを圧縮して固めたものなどからなる適宜の各種液体吸収層が使用されている。この液体吸収層は、ティッシュペーパーなどにより包まれているのが一般的である。また、バックシートとしては、通常、熱可塑性フィルムが使用されていて、該熱可塑性フィルムは、着用中の内部の蒸れを防止するために無数の微細孔を有し、通気性をもたせることが一般的である。また、フィルム特有のプラスチック性の感触と外観を改良し、また、強力を改良する観点から不織布と複合化させたものも使用されいる。このほかにも更に種々の機能を付与するために更に他のシートが挿入され、より多層になっているものもある。
本発明の前述の長繊維不織布は、目的に応じてこれらの吸収性物品の表カバー、サイドシート、ラウンドシート、バックシートの一部(液体非透過性シートとの積層など)、液体吸収層などに用いることができる。液体吸収層に用いる場合には、例えば液体吸収層の中間に挿入して熱接着することにより、液体吸収層の吸収特性を余り阻害することなく、着用中の体重がかかった状態での身体の動きにより応力がかかって液体吸収層が崩れるのを防止する補強の作用を果たすことができる。そして、これらの各部材の相互間は、必要な部分が適宜熱接着されて固定されている。
尚、熱プレスや熱圧着は、使用部分にもよるが、通常多数の点接着ができる様な部分的な点接着が好ましく採用される。
以下図面を用いて、吸収性物品の本発明による前記長繊維不織布が、吸収性物品のどの様な部分に使用されるかその代表例を挙げて説明するが、図示した吸収性物品の構造は一例であって、吸収性物品がこの図示した構造のもののみに限定されると言う意味ではない。
図1は使い捨ておむつの一例の肌側から見た展開平面図であり、図2はそのI−I部分の断面の概略端面図、図3はそのII−II部分の断面の概略端面図である。
図1〜3において、1、1′は体液を吸収し保持するための液体吸収層であり、特に限定するものではないが、例えばフラッフパルプなどのセルロース系繊維、高吸水性樹脂、必要に応じ合成繊維の混合物などを圧縮して固めたものなどからなっている。尚、液体吸収層1、1′は、ティッシュペーパー(図示せず)などに包み込まれている。本発明のこの態様では、液体吸収層1、1′の間に本発明の長繊維不織布からなる補強層6が挿入されて液体吸収層1、1′の間を熱接着し、液体吸収層が、体重や身体の動きにより崩れない様な補強の役割をしている。2はその表面側(肌に接する側)に配置される液体透過性の表カバーである。この表カバー2にも本発明の長繊維不織布が使用できる。そして3は液体非透過性が要求されるバックシートである。このバックシート3の裏側にバックシート積層物8として本発明の長繊維不織布が積層されている。この様な吸収性物品のバックシートに積層してプラスチックフィルムの冷たい感触やプラスチック特有の外観を改良し、布様の暖かみのある感触と外観を付与できると共にバックシートの補強を行うことができる。
ラウンドシート4は必ずしも必要ではないが、図2、図3においては液体吸収層1′とバックシート3との間にラウンドシート4が設けられている例を図示した。ラウンドシート4としても本発明の長繊維不織布が使用できる。そして5、5′が前述した様に吸収性物品が身体の動きによって所定の着用状態から位置がずれたり、横向きに寝転んだりした場合に、吸収した体液などの液体が漏れるのを防止するために吸収性物品の両脇にサイドシート(使い捨ておむつなどの場合にはギャザーが付与されている場合が多いのでサイドギャザーとかレッグカフなどとも言われており、使い捨ておむつの場合には、サイドシートは使い捨ておむつを着用した場合に太もものつけね又は太ももを回って太ももを把持する様な位置に設けられている。)である。このサイドシートにも本発明の長繊維不織布が使用できる。そして特に図2、図3では図示していないが、図1の7として示したウェスト位置の肌側に帯状にウェストギャザーなどが設けられていても良い。本発明の長繊維不織布はウェストギャザーにも使用できる。これらの各部材は、図面では記載を省略しているが、適宜の部分が熱接着されていて、脱落しない様になっている。この熱接着が施される部材として本発明の長繊維不織布が使用されている場合には、ホットメルト接着剤を使用しないで熱接着できる。そして本発明の長繊維不織布はその繊維素材に前述した様に特定の直鎖状高級脂肪酸および/またはその金属塩が添加されているので、ぬめり感も軽減されており、風合いの良好な吸収性物品が得られる。
尚、本発明の長繊維不織布が使用されている部分は、上記で説明した部材全てに使用されていなくてもよく、そのいずれか一つまたはそれ以上でもよい。
次に図4に生理用ナプキンの一例の肌側から見た展開平面図を示し、また、図5にそのIII−III部分の断面の概略端面図を示した。1、1′がティッシュペーパー(図示せず)に包み込まれている液体吸収層、2がその表面側(肌に接する側)に配置される液体透過性の表カバー、3が液体非透過性が要求されるバックシートである。そして5、5′がサイドシートである。そして本発明のこの態様では、液体吸収層1、1′の間に本発明の長繊維不織布からなる補強層6が挿入されて液体吸収層1、1′の間を熱接着し、液体吸収層が、体重や身体の動きにより崩れない様な補強の役割をしている。そしてバックシート3の裏側にバックシート積層物8として本発明の長繊維不織布が積層され、また、サイドシート5、5′にも、本発明の長繊維不織布が用いられている。
これらの各部材は、図面では記載を省略しているが、適宜の部分が接着されていて、脱落しない様になっている。この熱接着が必要な部材に本発明の長繊維不織布が使用されている場合には、ホットメルト接着剤を使用しないで熱接着できる。本発明の長繊維不織布は前述した様にぬめり感も軽減されており、風合いの良好な吸収性物品が得られる。
もちろん、本発明の長繊維不織布が使用されている部分は、上記で説明した部材の全てに使用されていなくてもよく、そのいずれか一つまたはそれ以上でよいことは、前述の場合と同様である。
本発明の長繊維不織布はぬめり感も軽減されており、風合いの良好な吸収性物品が得られる。そして接合を必要とする部材に本発明の長繊維不織布が用いられている場合には、ホットメルト接着剤を使用しなくても、容易に熱接着でき、したがって重量増加も少なく、低コストの吸収性物品が得られる。
実施例
以下、実施例、比較例を挙げて具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に挙げられたもののみに限定されるものではない。
実施例1〜11、比較例1〜3
表1は、エチレン−酢酸ビニル2元共重合体またはその鹸化物を含有した混合樹脂(前記樹脂と混合した樹脂は低密度ポリエチレンで表1中にはLDPEと略記している。)と、表1に示した無機物粉末を第一成分として用意した。
また、第二成分としては、同じく表1に示した性状の結晶性熱可塑性樹脂を用意した。
これら樹脂組成物を、それぞれ個別の直径60mm押出機に投入し、第一成分側が押出温度220℃で、第二成分側は、ポリプロピレンの場合は押出温度250℃で、ポリエチレンテレフタレートの場合は押出温度280℃で、押出機から押出た。
それぞれ第一成分、第二成分の複合比に応じて両者のトータル量が2200cc/分の割合となる様に押し出し(具体的には、第一成分(A)、第二成分(B)の複合比A/Bの容積割合が50/50の場合には第一成分の押し出し割合は1100cc/分の割合、第二成分の押し出し割合は1100cc/分の割合となる)、それぞれ、表の複合様式の欄に記載した様な並列型、鞘芯型あるいは鞘芯偏心型の紡糸口金を用いて溶融紡糸した。紡糸口金は、孔径0.35mmの円形紡糸孔を口金の長手方向に550個×5列で持つものを使用した。この紡糸口金より吐出した繊維群をエアーサッカーに導入して牽引延伸し、長繊維群を得た。続いて、エアーサッカーより排出された長繊維群を、コロナ放電装置にて同電荷を付与せしめ帯電させた後、一対の振動する羽根状の間を通過させることで開繊した。開繊された長繊維群は裏面に吸引装置を設けた無端コンベア上に、長繊維フリースとして捕集した。このときの長繊維の繊度は2.2d/fとなるように繊維の種類に応じてエアーサッカーの牽引延伸速度を適宜調整した。また、繊維中無機物の粉末の濃度は表記載の通りであった。捕集した長繊維フリースは、無端コンベアに載せられたまま搬送し、加熱された凹凸ロールと平滑ロールとで構成されたポイントボンド加工機の加圧されたロール間に導入した。導入された長繊維フリースは、凹凸ロールの凸部に対応する区域において第一成分が溶融または軟化して長繊維相互間が熱融着された長繊維不織布が得られた。この長繊維不織布の目付は28g/m2となるように繊維の種類に応じて無端コンベア移動速度を50m/min.を基準にしてその前後で調整した。なお、凹凸ロールの周速度は無端コンベアの移動速度と同一にした。ロール間の線圧及びロール温度の設定は、長繊維不織布の剛軟度(JIS L 1096のA法の45°カンチレバー法に準拠、但し試料の大きさは5cm×15cmとした。)の縦及び横方向の値の平均値が35mm付近となるように適宜設定した。
なお、実施例における全ての不織布化(長繊維相互間の熱融着)は、官能試験時の条件合わせのためにポイントボンド法で行ったが、熱風加熱法、高圧水流法、ニードルパンチ法、超音波加熱法などで行われても良く、これら不織布化法の複数の組み合わせであってもかまわない。
また、第二成分としてポリエチレンテレフタレートを使用した場合は、その[η](極限粘度)値が0.64のものを使用した。[η]値の測定は、フェノールと四塩化エタンの等重量混合物を溶媒として、20℃で測定した。
尚、表1に記載した無機物粉末の重量平均粒子径は、シリカが0.04μm、TiO2が0.20μm、ミョウバンが0.95μm、CaCO3が0.08μm、CaOが0.35μm、MgOが0.17μm、タルクが0.40μmのものを用いた。尚、TiO2としてはルチル型二酸化チタンを用いた。また表1中、第一成分の混合樹脂のLDPEは前述した様に低密度ポリエチレンを意味し、第二成分のPPはポリプロピレン、PETはポリエチレンテレフタレートを意味する。また複合比の欄の容積比A/Bは、Aが第一成分、Bが第二成分の数値を示しており、複合繊維全体で100としている。
以上の如く得られた長繊維不織布の評価結果を表2に示した。
(1)実施例1で得られた長繊維不織布を使い捨ておむつの表カバー2として使用した。この時、液体透過性を付与するために、ポリエチレングリコールジメチルラウレート(分子量400)50%、ポリエチレングリコールモノラウレート(分子量500)50%で構成された親水性油剤を0.5重量%不織布に付着させた。前記表カバーは、直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムからなるバックシートおよび液体吸収層を包んでいるティッシュペーパーにヒートシールした。得られた使い捨ておむつを着用試験したところ、風合いが良好で、液漏れがなく、液体吸収層のズレもなく良好な吸収性物品が得られた。
尚、ここで上記使い捨ておむつは、上述の表カバー、フラッフパルプと高吸水性樹脂からなりティッシュペーパーに包まれた液体吸収層、ポリプロピレン製長繊維不織布のサイドシート、ポリプロピレン製長繊維不織布のラウンドシート、直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムのバックシートからなるものである。
(2)実施例2で得られた長繊維不織布を使い捨ておむつのサイドシートとして使用した。前記サイドシートは、ポリプロピレン製短繊維不織布の表カバーおよびポリプロピレン製長繊維不織布のラウンドシートにヒートシールした。得られた使い捨ておむつを着用試験したところ、風合いが良好で、液漏れがなく良好な吸収性物品が得られた。
尚、ここで上記使い捨ておむつは、ポリプロピレン製短繊維不織布の表カバー、フラッフパルプと高吸水性樹脂からなりティッシュペーパーに包まれた液体吸収層、上述のサイドギャザー、ポリプロピレン製長繊維不織布のラウンドシート、直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムのバックシートからなるものである。
(3)実施例3で得られた長繊維不織布を使い捨ておむつのラウンドシートとして使用した。前記ラウンドシートは、ポリプロピレン製短繊維不織布の表カバーにヒートシールした。得られた使い捨ておむつを着用試験したところ、風合いが良好で、液漏れがなく良好な吸収性物品が得られた。
尚、ここで上記使い捨ておむつは、ポリプロピレン製短繊維不織布の表カバー、フラッフパルプと高吸水性樹脂からなりティッシュペーパーに包まれた液体吸収層、ポリプロピレン製長繊維不織布のサイドシート、上述のラウンドシート、直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムのバックシートからなるものである。
(4)実施例4で得られた長繊維不織布を使い捨ておむつのバックシート積層物として使用した。前記バックシート積層物は、直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムにヒートシールした。得られた使い捨ておむつを着用試験したところ、風合いが良好で、外観が良好な吸収性物品が得られた。
尚、ここで上記使い捨ておむつは、ポリプロピレン製短繊維不織布の表カバー、フラッフパルプと高吸水性樹脂からなりティッシュペーパーに包まれた液体吸収層、ポリプロピレン製長繊維不織布のサイドシート、ポリプロピレン製長繊維不織布のラウンドシート、直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムのバックシート及び上述のバックシート積層物からなるものである。
(5)実施例5で得られた長繊維不織布を使い捨ておむつのウエストギャザーとして使用した。前記ウエストギャザーは、ポリプロピレン製長繊維不織布のラウンドシートにヒートシールした。得られた使い捨ておむつを着用試験したところ、風合いが良好で、液漏れがなく良好な吸収性物品が得られた。
尚、ここで上記使い捨ておむつは、ポリプロピレン製短繊維不織布の表カバー、フラッフパルプと高吸水性樹脂からなりティッシュペーパーに包まれた液体吸収層、ポリプロピレン製長繊維不織布のサイドシート、ポリプロピレン製長繊維不織布のラウンドシート、直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムのバックシート及び上述のウエストギャザーからなるものである。
(6)実施例6、7で得られた長繊維不織布を使い捨ておむつの液体吸収層の一部として使用した。前記液体吸収層は、図2に示した様にフラッフパルプと高吸水性樹脂からな液体吸収層1、1′の中間に前記本発明の長繊維不織布を挿入しヒートシールした。そして得られた液体吸収層の外側をティッシュペーパーで包んだ。得られた使い捨ておむつを着用試験したところ、液体吸収層の崩れがなく、液漏れもなく良好な吸収性物品が得られた。
尚、ここで上記使い捨ておむつは、ポリプロピレン製短繊維不織布の表カバー、上述の液体吸収層、ポリプロピレン製長繊維不織布のサイドシート、ポリプロピレン製長繊維不織布のラウンドシート、直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムのバックシートからなるものである。
(7)実施例8で得られた長繊維不織布を生理用ナプキンの表カバーとして使用した。この時、液体透過性を付与するために、ポリエチレングリコールジメチルラウレート(分子量400)50%、ポリエチレングリコールモノラウレート(分子量500)50%で構成された親水性油剤を0.5重量%不織布に付着させた。前記表カバーは、直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムのバックシートおよび液体吸収層を包んでいるティッシュペーパーにヒートシールした。得られた生理用ナプキンを着用試験したところ、風合いが良好で、液漏れがなく、液体吸収層のズレもなく良好な吸収性物品が得られた。
尚、ここで、上記生理用ナプキンは、上述の表カバー、フラッフパルプと高吸水性樹脂からなりティッシュペーパーに包まれた液体吸収層、ポリプロピレン製長繊維不織布のサイドシート、直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムのバックシートからなるものである。
(8)実施例9で得られた長繊維不織布を生理用ナプキンのサイドシートとして使用した。前記サイドシートは、ポリプロピレン製短繊維不織布の表カバーにヒートシールした。得られた生理用ナプキンを着用試験したところ、風合いが良好で、液漏れがなく、良好な吸収性物品が得られた。
尚、ここで、上記生理用ナプキンは、ポリプロピレン製短繊維不織布の表カバー、フラッフパルプと高吸水性樹脂からなりティッシュペーパーに包まれた液体吸収層、上述のサイドシート、直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムのバックシートからなるものである。
(9)実施例10で得られた長繊維不織布を生理用ナプキンのバックシート積層物として使用した。前記バックシート積層物は、直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムにヒートシールした。得られた生理用ナプキンを着用試験したところ、風合いが良好で、外観が良好な吸収性物品が得られた。
尚、ここで、上記生理用ナプキンは、ポリプロピレン製短繊維不織布の表カバー、フラッフパルプと高吸水性樹脂からなりティッシュペーパーに包まれた液体吸収層、ポリプロピレン製長繊維不織布のサイドシート、直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムのバックシート及び上述のバックシート積層物からなるものである。
(10)実施例11で得られた長繊維不織布を生理用ナプキンの液体吸収層の一部として使用した。前記液体吸収層は、図4に示した様にフラッフパルプと高吸水性樹脂からな液体吸収層1、1′の中間に前記本発明の長繊維不織布を挿入しヒートシールした。そして得られた液体吸収層の外側をティッシュペーパーで包んだ。得られた生理用ナプキンを着用試験したところ、液体吸収層の崩れがなく、液漏れがなく良好な吸収性物品が得られた。
尚、ここで、上記生理用ナプキンは、ポリプロピレン製短繊維不織布の表カバー、上述の液体吸収層、ポリプロピレン製長繊維不織布のサイドシート、直鎖状低密度ポリエチレン製フィルムのバックシートからなるものである。
尚、各評価項目の測定法や評価基準は次の通りである。
(引張強度):JIS L 1096に準拠し、テンシロン引張試験を行い、縦及び横方向の引張強力を測定しこれを目付及び試料幅で割った値を縦及び横方向の引張強度とした。これを(縦方向の引張強度×横方向の引張強度)×1/2の式に代入し、引張強度として算出した。ここで縦方向とは長繊維が無端コンベアで搬送される、いわゆる機械方向であり、横方向はこれに直交する方向を言う。単位はkg/cm(g/m2)で示してあるがカッコ内の(g/m2)の意味は不織布の単位目付当たりに換算された値であることを意味するものである。
(長繊維不織布の均一性指数):5×5cmのサンプルを不織布の横方向に5点等間隔にて採取し、それぞれを1cm角に裁断し重量を測定した。これより、5点の試料それぞれについて((最大値)−(最小値)))×100/(平均値)を算出し、これらの平均値を求めた。開繊斑や繊度斑の尺度として用いた。この値が小さいほど均一性が高く、80以下で均一性がよいと考えて良い。
(風合い):モニター10人が、長繊維不織布表面の手触りによる官能試験を行い、肌触りが良いと感じたら1点/1人で加点した。
(紡糸性):溶融紡糸を3時間行い、糸切れの発生回数を測定した。糸切れ同回数が3回以下の時紡糸性は良好であると考えて良い。
(ヒートシール性<剥離強さ>)各実施例、比較例で得られた試料(長繊維不織布)とポリプロピレン長繊維不織布(目付20g/m2)とをそれぞれ10cm×2.5cmの大きさに切断した。これら試料の四隅が揃うように重ね合わせ、その重ね合わせた試料の短辺方向、つまり幅方向に細長いヒートシールを施す。ヒートシールを施す位置は、重ね合わせた試料の短辺の一端より長手方向に1cm内側に入った部分から2cm内側迄の部分である。つまり試料の短辺の一端より短辺と平行に1cm幅のヒートシールのない余白部分を設け、その余白部分に隣接して短辺と平行に1cm幅のヒートシールを行った。ヒートシール条件は、温度120℃(上下とも)、3kg/cm2,3秒であり、ヒートシール装置として“ヒートシールテスターTP−701”(テスター産業株式会社製)を用いた。
上記操作によって得られた引張り試験用の試料を、ヒートシールを施さなかった側の他端の短辺側から開き、それぞれその端部を10cm間隔に設定したテンシロン引張試験機(“RDM−100”株式会社オリエンテック製)のチャツク間に、振れなどが生じないように固定した。剥離強さの測定は、引張り速度100mm/分で測定し、剥離強さの計算方法はJIS L 1086(1983)に準拠した。
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Claims (11)

  1. エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物とポリエチレンとを混合し、かつ繊維表面の少なくとも一部を繊維の長さ方向に形成している第一成分と、
    第一成分よりも高融点の結晶性熱可塑性ポリオレフィン樹脂を第二成分とした熱融着性複合長繊維からなり、
    少なくとも第一成分中に無機物粉末を含有し、前記無機物粉末の含有量が繊維中濃度にして500〜12000重量ppmであることを特徴とする長繊維不織布。
  2. エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物の組成が酢酸ビニル及びその鹸化物の分率にして5〜40重量%である請求項1に記載の長繊維不織布。
  3. 第一成分を構成する樹脂成分中におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物の含有率が5重量%以上である請求項1に記載の長繊維不織布。
  4. 無機物粉末の粒子径が、重量平均粒子径で0.04〜2μmである請求項1に記載の長繊維不織布。
  5. 無機物粉末が、二酸化チタン、シリカ、ミョウバン、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよびタルクから選ばれた少なくとも1種の無機粉末である請求項1に記載の長繊維不織布。
  6. 第二成分の結晶性熱可塑性ポリオレフィン樹脂がポリプロピレンである請求項1に記載の長繊維不織布。
  7. 長繊維不織布がスパンボンド法により得られた長繊維不織布である請求項1に記載の長繊維不織布。
  8. 第1成分と第2成分の容積割合が10:90〜90:10の範囲で請求項1に記載の長繊維不織布。
  9. エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物とポリエチレンとを混合した樹脂組成物を第一成分とし、
    第一成分よりも高融点の結晶性熱可塑性ポリオレフィン樹脂を第二成分とし、
    少なくとも第一成分中に無機物粉末を繊維中濃度にして500〜12000重量ppmとなるよう添加し、
    第一成分が繊維表面の少なくとも一部を繊維の長さ方向に形成した複合長繊維となるよう溶融紡糸することを特徴とする長繊維不織布の製造方法。
  10. 請求項1に記載の長繊維不織布を物品の少なくとも一部に用いた吸収性物品。
  11. 吸収性物品が、長繊維不織布を用いた使い捨ておむつ及び長繊維不織布を用いた生理用品から選ばれる少なくとも一つである請求項10に記載の吸収性物品。
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