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JP3947014B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

電動パワーステアリング装置 Download PDF

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  • Combustion & Propulsion (AREA)
  • Transportation (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
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  • Power Steering Mechanism (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車載用の電動パワーステアリング装置に関し、特に、車速V、操舵角の角速度ω、操舵トルクT又はこれらの関連値によって規定される所定のサンプリング条件が成立した時の、操舵角のサンプリング値θa に基づいて、操舵角の中立角θc を推定する中立角推定手段を有する電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車速V、操舵角の角速度ω、操舵トルクT又はこれらの関連値によって規定される所定のサンプリング条件が成立した時の、操舵角のサンプリング値θa に基づいて、操舵角の中立角θc を推定する中立角推定手段を有する電動パワーステアリング装置としては、例えば、公開特許公報「特開2001−278084:電動パワーステアリング装置」や、「特開平2−290782:舵角中点検出装置」等に記載されているものが一般に知られている。
【0003】
図9に、公知の一般的な電動パワーステアリング装置の中立推定演算部(中立角推定手段)の処理手順を例示する。本フローチャートのステップ710〜ステップ730は、車速V、操舵角の角速度ω、操舵トルクTによって規定される所定のサンプリング条件が成立しているか否かをチェックするためのものであり、V0 ,T0 ,ω0 は各境界条件を規定する所定の境界値である。
即ち、これらの各境界条件が全て満たされた場合には、ハンドルは中立点近傍に位置するものと推定され、この時、ステップ770により、そのサンプリング条件成立時の操舵角のサンプリング値θa に基づいて、操舵角の中立角θc の値が更新される。このステップ770の左辺側の中立角θc は今回もとめるべき値を表しており、これは前回の値(ステップ770の右辺側の中立角θc の値)に基づいて、毎周期演算・更新されるものである。
【0004】
ただし、パラメータλには、適当な所定の忘却係数や、或いは、全サンプル数nに依存した重み係数(例:(n−1)/n)等が用いられる。
従来装置においては、例えばこの様な処理手順にしたがって、中立点(中立角θc )を基準とした絶対角θ(=θa −θc )が算出されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、上記の様な従来装置においては、上記のパラメータλの最適化(チューニング)が容易でなく、次の様な問題が有った。
(1)収斂性の問題
精度の高い中立角θc を得るためには、数多くのサンプル(サンプリング値θa )を集める必要が有り、したがって、中立角θc の推定値は短時間では一定の値に収束しにくい。
【0006】
通常、前回のエンジン停止時に記憶された中立角θc の値を、今回の初期値(暫定値)として用いるが、エンジン停止中のハンドル操作等によりこの初期値が有する誤差が大きくなっている場合には、上記の忘却係数(λ)が比較的小さくないと、中立角θc の推定値が正しい値に収束するまでに比較的長い時間を要することになる。しかし、逆に、忘却係数(λ)が必要以上に小さな値に設定されている場合には、推定値が最新のサンプリング値θa に必要以上に影響され易くなり、この場合、推定値の安定性が損なわれる。
【0007】
(2)信頼性の問題
一旦、中立角θc の推定値が正しい値に収束しても、その後の操舵系に対して発生する外乱等により正しい中立点の位置(正しい中立角θc の値)が変化する場合が有る。即ち、エンジン起動時は勿論のこと、通常の走行中においても、中立角θc の推定値が常時正しいと言う保証は得難い。
即ち、従来装置においては、推定値の信頼性に常時追従した最適なハンドル戻し制御を実現することが困難であった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、中立角θc の推定値を短時間で精度よく収束させる手段、並びに、得られた中立角θc の推定値の精度(信頼性)を高い精度で定量的に評価する手段を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段、並びに、作用及び発明の効果】
上記の課題を解決するためには、以下の手段が有効である。
即ち、第1の手段は、車速V、操舵角の角速度ω、操舵トルクT又はこれらの関連値によって規定される所定のサンプリング条件が成立した時の、操舵角のサンプリング値θa に基づいて、操舵角の中立角θc を推定する中立角推定手段を有する電動パワーステアリング装置において、上記のサンプリング条件成立時の、車速V、角速度ω、操舵トルクT又はこれらの関連値に基づいてサンプリング値θa の中立角θc としての信頼度yを算定するサンプル信頼度算定手段を設け、上記の中立角推定手段により、サンプリング値θa と信頼度yに基づいて、中立角θc の値を暫定、確定、又は更新することである。
【0010】
例えば、図9のステップ710〜ステップ730の条件(所定のサンプリング条件)を満たす操舵角のサンプリング値θa の信頼度yが最も高くなる条件としては、以下の条件(式(1)〜式(3))を例示することができる。ただし、式(1)の定数Vmax は、例えば時速80km程度の値とする。
【数1】
V≧Vmax [km/h] …(1)
【数2】
T=0[Nm] …(2)
【数3】
ω=0[rad/s] …(3)
【0011】
例えば、上記の条件を満たしていたり、或いはこの様な条件に非常に近い場合には、サンプリング値θa の中立角θc としての信頼度yも非常に高くなるため、このような場合においては、例えば図9のステップ770等の忘却係数λの値を比較的小さい値に設定する等の適切な処置(最適化処理)を実施することが可能となる。これにより、サンプリング値θa の中立角θc としての信頼度yが高い場合には、その値に中立角θc の推定値が収束し易く、サンプリング値θa の中立角θc としての信頼度yが低い場合には、その値に中立角θc の推定値が影響され難くなる。
【0012】
例えばこの様に、上記の第1の手段によれば、サンプリング値θa に関する中立角θc としての信頼度yに応じて、上記の演算パラメータ(λ)を最適に決定することができるため、上記の収斂性の問題と信頼性の問題とを同時に合理的に解決することができる。
【0013】
また、第2の手段は、車速V、操舵角の角速度ω、操舵トルクT又はこれらの関連値によって規定される所定のサンプリング条件が成立した時の、操舵角のサンプリング値θaに基づいて、操舵角の中立角θcを推定する中立角推定手段を有する電動パワーステアリング装置において、上記の中立角推定手段によって算出された中立角θc とサンプリング値θaとの差分の絶対値に基づいて中立角θcの信頼度Xを算定する中立角信頼度算定手段と、この信頼度Xに基づいてハンドル戻しトルクTr値を決定するハンドル戻し制御手段とを設けることである。
【0014】
上記の中立角推定手段によって算出された中立角θc と、所定のサンプリング条件を満たしたサンプリング値θa との差分の絶対値が、例えば15°以上ある様な場合には、走行中に操舵系に対して発生した外乱等により、中立角θc の推定値が、走行中に適用不能になった等の状況が考えられる。したがって、上記の差分の絶対値に基づいて中立角θc の信頼度Xを算定すれば、上記の中立角推定手段によって得られた中立角θc の推定値の信頼性を高い精度で定量的に評価する手段(中立角信頼度算定手段)を構成することができる。
【0015】
したがって、この信頼度Xに基づいてハンドル戻しトルクTr値を決定するハンドル戻し制御手段を構成することができる。例えば、信頼度Xが低い場合には、ハンドル戻しトルクTrの値や算出用の係数(ゲイン)を小さくすることにより、誤った中立点にハンドルを戻そうとする現象(誤動作)を回避できる。また、信頼度Xが高い場合には、絶対角θに基づいた所望のハンドル戻し制御を確実に実施することができる。
例えばこの様な手段によっても、上記の信頼性の問題を解決することができる。
【0016】
また、第3の手段は、上記の第1の手段において、中立角推定手段によって算出された中立角θcとサンプリング値θaとの差分の絶対値に基づいて中立角θcの信頼度Xを算定する中立角信頼度算定手段と、この信頼度Xに基づいてハンドル戻しトルクTr値を決定するハンドル戻し制御手段とを設けることである。
【0017】
これにより、上記の第1の手段において、更に、上記の本発明の第2の手段による作用・効果をも得ることが可能になる。また、上記の本発明の第3の手段によれば、信頼度Xの算出の際にも、上記の信頼度yの値を利用することができる。これにより、より高い精度で、或いはより簡潔な手順で、上記の信頼度Xの値を求めることが可能となる。
以上の本発明の手段により、前記の課題を効果的、或いは合理的に解決することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
(第1実施例)
図1は、本発明の各実施例に係わる、電動パワーステアリング装置100(第1実施例),101(第2実施例)のハードウェア構成図である。以下、本第1実施例の電動パワーステアリング装置100について説明する。
【0019】
ステアリングシャフト10の一端には、ステアリングホイール11(ハンドル)が取り付けられ、他端にはギヤボックス12に軸承されたピニオン軸13が結合されている。ピニオン軸13は、ギヤボックス12に嵌装されたラック軸14に噛合され、また図示していないが、このラック軸14の両端はボールジョイント等を介して図略の操向車輪に連結されている。また、ステアリングシャフト10には、アシストトルクを付与するブラシレス直流モータM(以下、単に「モータM」という)が、2つの歯車17を介して連結されている。
【0020】
このモータMには、モータ制御装置200の駆動回路213より、電流検出器215を介してU,V,Wの3相に対する各モータ駆動電流iu,iv,iwが供給される。更に、ステアリングシャフト10には、運転者からステアリングホイール(ハンドル)11に加えられたマニュアル操舵力の大きさ及びその方向(操舵トルクT)を検出するためのトルク検出器15が設けられている。
【0021】
また、モータMには、その回転角を検出する同期用の回転角センサE(エンコーダ)が付設されており、回転角センサEが出力するモータMの回転角θm に基づいてハンドルの操舵角θa が求められる。
モータ制御装置200は、CPU210、ROM211、RAM212、駆動回路213、入力インターフェイス(IF)214、電流検出器215等から構成されている。駆動回路213は、図略のバッテリー、PWM変換器、PMOS駆動回路等から構成され、チョッパ制御により駆動電流を正弦波にしてモータMに電力を供給する。
【0022】
モータ制御装置200のCPU210には、上記の回転角θm や、操舵トルクTの検出に利用されるトルクセンサ15、車速Vを与える車速計50等からの出力信号(測定値)が、入力インターフェイス(IF)214を介して入力される。CPU210は、これらの入力値から所定のトルク計算に基づいて、モータMが出力すべきトルク値(指令トルクTm )を決定し、更に、この指令トルクTm に基づいてd軸とq軸の各電流指令値(Id* ,Iq* )を決定する。だだし、本実施例においては、「Id* =0」である。
【0023】
図2は、本第1実施例に係わる、電動パワーステアリング装置100の制御ブロック・ダイヤグラムである。各制御ブロックの出力は以下の通りである。
(各制御ブロックの出力)
トルクセンサ(15 ): 操舵トルクT
アシスト制御部(20 ): アシストトルクTa
位相補償部(201): 操舵トルクT′(位相補償値)
慣性補償部(22 ): 慣性トルクTk
微分演算部(221): dT(操舵トルクTの微分)
ダンパ制御部(24 ): ダンパトルクTd
ハンドル戻し制御1(26 ): ハンドル戻しトルクTr1(ω依存分)
ハンドル戻し制御2(28 ): ハンドル戻しトルクTr2(θ依存分)
絶対角演算部(281): 操舵角の絶対角θ
中立推定演算部(282A): 操舵角の中立角θc
電流指令演算部(30 ): 指令電流Iq*
車速計(50 ): 車速V
相対角演算部(60 ): 操舵角の相対角θa
微分演算部(61 ): 操舵角の角速度ω
【0024】
また、電流指令演算部30に入力される指令トルクTm は、次式(4),(5)に従って算出される。
【数4】
m =Ta +Tk +Td +Tr …(4)
【数5】
r =Tr1+Tr2 …(5)
尚、図2の電流制御40は、図1の電流検出器215や駆動回路213を経由した形で構成される電流ループを使って、モータ駆動電流のPI制御を実行する。
【0025】
本第1実施例における上記の電動パワーステアリング装置100の特徴は、中立推定演算部282A(中立角推定手段)における演算方式にある。
図3は、電動パワーステアリング装置100の中立推定演算部282A(中立角推定手段)の処理手順を例示するフローチャートである。
ステップ310〜ステップ330においては、図9のステップ710〜ステップ730と同等の処理を実行する。
【0026】
ステップ340では、今回の制御周期にてトルクセンサ15から入力した操舵トルクTの値と、前回の制御周期における操舵トルクTとの差分dTを求め、その絶対値|dT|と所定の閾値dT0 とを比較し、絶対値|dT|の方が小さければ、今回入力された操舵角の相対角θa を中立角θc のサンプリング値として採用する。本ステップ340の作用・効果については、図4を用いて後で説明する。
【0027】
ステップ360では、次式(6)、(7)に従って、忘却係数λの値を求める(サンプル信頼度算定手段)。
【数6】
λ=1−Gy …(6)
【数7】
Figure 0003947014
【0028】
ただし、ここで、yはサンプリング値として採用された相対角θa の信頼度を表す指標であり、式(1)〜式(3)を用いた前述の考察からも判る様に、信頼度yの値が大きい時程、サンプリング値θa の中立角θc としての精度が高いものと考えられる。
尚、Vの値が時速80km以上有った場合には、式(7)を用いる際に、車速Vの値を80[km/h]に置き換えるものとする。また、ゲインGは、λの値を適当な範囲(例:0.95≦λ≦1)に収めるための定数である。
【0029】
その後のステップ370とステップ390は、図9のステップ770及びステップ790と全く同様に実行する。
例えば、以上の様に忘却係数λを動的に最適化すれば、サンプリング値θa に関する中立角θc としての信頼度yに応じて、上記の演算パラメータ(忘却係数λ)を最適に決定することができるため、前記の収斂性の問題と信頼性の問題とを同時に合理的に解決することができる。
【0030】
図4は、操舵角(正確な絶対角θ)に対する操舵トルクTと操舵角速度ωの各挙動を例示するグラフである。このグラフは、車速50[km/h]程度で、操舵トルクTを動的に大きく急変させる様な操舵を繰り返した時のものであるが、例えばこの様な操舵を行った際には、図3のステップ310〜ステップ330の条件を満たしている場合であっても、本図4の略中央の矢印と楕円形の太い破線で示した領域内に見られる様に、絶対角θは必ずしも中立点近傍には位置していない。
【0031】
前述の図3のステップ340は、この様な悪条件下でサンプリングされた操舵角の相対角θa を、中立角θc のサンプル集合から除去するための作用を奏する。したがって、上記の第1実施例の処理手順に従えば、操舵トルクTを動的に大きく急変させる様な操舵を繰り返した時にも、中立角θc の精度を高く確保することができる。
【0032】
(第2実施例)
図5は、本第2実施例の電動パワーステアリング装置101の制御ブロック・ダイヤグラムである。ただし、第1実施例の電動パワーステアリング装置100と同じ構成の所については、一部省略して図示してある。本電動パワーステアリング装置101の最も大きな特徴は、中立角θc の信頼度Xを算定する中立角信頼度算定手段を中立推定演算部282B(中立角推定手段)の中に備えている点にあり、更に、ハンドル戻しトルクTr2の演算用のゲイン(算出係数)がこの信頼度Xの値に応じて変化する点にある。
【0033】
言い換えれば、図5のゲイン演算部283では、以下の様にハンドル戻しトルクTr2に対する再設定処理を実行する。ただし、式(8)は、変数Tr2に信頼度X(上記のゲイン)を掛けて、その値を変数Tr2の格納領域に再格納する処理を意味している。
【数8】
r2=X*Tr2 (0≦X≦1) …(8)
【0034】
また、上記の信頼度Xは、次式(9)、(10)に示す微分方程式により定義されるものである。ただし、信頼度Xの値が1を越えた場合には、強制的にX=1に設定するものとする。信頼度Xが負値を取る場合も、強制的にX=0とする。また、X(n) は今回の制御周期で算出すべき信頼度Xの値を示し、X(n-1) は前回の制御周期で算出した信頼度Xの値を示すものである。
【数9】
(n) =X(n-1) +dX …(9)
【数10】
dX=G2×(ΔΘ−|θa −θc |)×y …(10)
【0035】
また、式(10)において、ΔΘは例えば10°程度の角度を表す定数で、中立点の測定精度や、絶対角θの値がハンドル戻し制御2(図5の符号28)等の各種の制御プログラムや応用プログラムで使用される際に、実際に要求される精度等に見合った適当な値を設定する。また、yは式(7)の信頼度で、G2は信頼度Xが真に中立角θc の信頼度を示す様に経験的に最適化されたゲインである。
この様な信頼度Xの演算は、図6のステップ680のタイミングで実行する。
ただし、図6は、本第2実施例の電動パワーステアリング装置101の中立推定演算部282B(中立角推定手段)の処理手順を例示するフローチャートである。
【0036】
例えば、前記の中立角推定手段によって算出された中立角θc と、所定のサンプリング条件を満たしたサンプリング値θa との差分の絶対値が、10°を越える様な場合には、走行中に操舵系に対して発生した外乱等により、中立角θc の推定値が、走行中に適用不能になった等の状況が考えられるが、上記の様な中立角信頼度算定手段を構成すれば、得られた中立角θc の推定値の信頼性を高い精度で定量的に評価することができるので、例えば外乱等により走行中にdX<0となった場合には、式(8)及び式(9)の作用により、絶対角θに依存するハンドル戻しトルクTr2の出力が抑制される。
【0037】
例えば、以上の様に、中立角θc の信頼度Xを算定する中立角信頼度算定手段(ステップ680)を中立推定演算部282B(中立角推定手段)の中に備えることにより、信頼度Xが低い場合には、ハンドル戻しトルクTr の値や算出用の係数(ゲイン)を小さくすることにより、誤った中立点にハンドルを戻そうとする現象(誤動作)を回避できる。また、信頼度Xが高い場合には、絶対角θに基づいた所望のハンドル戻し制御を確実に実施することができる。
【0038】
また、本第2実施例においては、図6のステップ630の角速度ωを次式(11)により求めている。
【数11】
ω = ω′ + μdT …(11)
【0039】
ただし、ここで、dTは操舵トルクTの微分(1制御周期当りの変位量)であり、μはトルクセンサ15が有する図略のトーション・バーのバネ定数の逆数に比例する定数である。また、ω′は、図5の微分演算部61が出力する角速度のことであり、第1実施例における角速度ωと同じ手順で求めたものである。
即ち、左辺の角速度ωは、操舵トルクTの変化量より算出されるトーション・バーのピニオン軸13に対する回転角速度(μdT)と、前記のピニオン軸13の回転角速度(図5の微分演算部61が出力する角速度ω′)の和として算出されるものである。
【0040】
この様な補正手段によれば、トルクセンサ15が有する図略のトーション・バーの変形量の影響を無視することなく、前記の第1実施例よりも更に正確に操舵角速度ωを算出することが可能となる。このような手法によっても、第1実施例におけるステップ340の高精度化の作用を代替することが可能であり、この様な補正は、定数αの値が大きい場合、即ち、トーション・バーのバネ定数が比較的小さい場合に特に有効であると考えられる。
【0041】
(その他の変形例)
上記の第2実施例では、信頼度Xをハンドル戻しトルクTr2(θ依存分)を決定する演算パラメータ(ゲイン)として用いる方式を例示したが、信頼度Xは、ハンドル戻しトルクTr1(ω依存分)を決定する演算パラメータ(ゲイン)として用いても良い。
【0042】
図7は、信頼度Xに基づいて、Tr1の上限値(α)やTr2の上限値(β)を変化させる制御方式を例示するグラフである。
例えば、この様な設定によれば、中立角θc の信頼度(X)が高い場合には、絶対角θに依存するハンドル戻しトルク(Tr2)を十分に大きくすることで、所望のハンドル戻しトルクを十分に大きく生成することができ、また、中立角θc の信頼度(X)が低い場合には、代替的なハンドル戻しトルク(Tr1)を必要最小限だけ生成することができる。
【0043】
また、前記の式(10)は、次式(12)の様に変形して用いても良い。
【数12】
dX=G2×(ΔΘ(y)−|θa −θc |)×y …(12)
ただし、ここで、ΔΘ(y)は信頼度yの関数であり、例えば関数ΔΘ(y)は、図8に例示する様に定義しても良い。
【0044】
図8は、信頼度yに基づいて、ΔΘやdXを変化させる制御方式を例示するグラフであり、横軸のyの係数(ゲインG)は前記の式(6)に用いた定数と同じものである。
例えばこの様な設定に基づいて、前述の第2実施例の式(9),(10)を用いれば、前述の第2実施例等において中立角θc の信頼度Xをより精度よく求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の各実施例に係わる、電動パワーステアリング装置100,101のハードウェア構成図。
【図2】本発明の第1実施例に係わる、電動パワーステアリング装置100の制御ブロック・ダイヤグラム。
【図3】電動パワーステアリング装置100の中立推定演算部282A(中立角推定手段)の処理手順を例示するフローチャート。
【図4】操舵角に対する操舵トルクTと操舵角速度ωの各挙動を例示するグラフ。
【図5】本発明の第2実施例に係わる、電動パワーステアリング装置101の制御ブロック・ダイヤグラム。
【図6】電動パワーステアリング装置101の中立推定演算部282B(中立角推定手段)の処理手順を例示するフローチャート。
【図7】信頼度Xに基づいて、α(Tr1の上限値)やβ(Tr2の上限値)を変化させる制御方式を例示するグラフ。
【図8】信頼度yに基づいて、ΔΘやdXを変化させる制御方式を例示するグラフ。
【図9】従来の電動パワーステアリング装置の中立推定演算部(中立角推定手段)の処理手順を例示するフローチャート。
【符号の説明】
100,
101 … 電動パワーステアリング装置
10 … ステアリング・シャフト
11 … ステアリング・ホイール(ハンドル)
15 … トルクセンサ
50 … 車速計
E … エンコーダ(回転角センサ)
M … モータ
282A,
282B … 中立推定演算部(中立角推定手段)
360 … 忘却係数λの算定処理(サンプル信頼度算定手段)
680 … 信頼度Xの算定処理(中立角信頼度算定手段)
T … 操舵トルク
V … 車速
ω … 操舵角速度(操舵角θの角速度)
dT … Tの微分(操舵トルクTの所定微小時間内の変化量)
θ … 操舵角(絶対角)
θa … 操舵角のサンプリング値(相対角)
θc … 操舵角の中立角(推定値)
y … サンプリング値θa の信頼度
X … 中立角θc の信頼度
r … ハンドル戻しトルク(Tr1+Tr2

Claims (3)

  1. 車速V、操舵角の角速度ω、操舵トルクT又はこれらの関連値によって規定される所定のサンプリング条件が成立した時の、前記操舵角のサンプリング値θaに基づいて、前記操舵角の中立角θcを推定する中立角推定手段を有する電動パワーステアリング装置において、
    前記サンプリング条件成立時の、前記車速V、前記角速度ω、前記操舵トルクT又はこれらの関連値に基づいて、前記サンプリング値θaの前記中立角θcとしての信頼度yを算定するサンプル信頼度算定手段を有し、
    前記中立角推定手段は、前記サンプリング値θaと前記信頼度yに基づいて、前記中立角θcの値を暫定、確定、又は更新することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 車速V、操舵角の角速度ω、操舵トルクT又はこれらの関連値によって規定される所定のサンプリング条件が成立した時の、前記操舵角のサンプリング値θaに基づいて、前記操舵角の中立角θcを推定する中立角推定手段を有する電動パワーステアリング装置において、
    前記中立角推定手段によって算出された前記中立角θcと前記サンプリング値θaとの差分の絶対値に基づいて、前記中立角θcの信頼度Xを算定する中立角信頼度算定手段と、
    前記信頼度Xに基づいて、ハンドル戻しトルクTr値を決定するハンドル戻し制御手段とを有することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  3. 前記中立角推定手段によって算出された前記中立角θcと前記サンプリング値θaとの差分の絶対値に基づいて、前記中立角θcの信頼度Xを算定する中立角信頼度算定手段と、
    前記信頼度Xに基づいて、ハンドル戻しトルクTr値を決定するハンドル戻し制御手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
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