JP3838319B2 - 水平制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水平制御装置に関するものであり、特に、農業用トラクタや乗用管理機等の水平制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
農業用トラクタや乗用管理機等の農用作業車両では、機体の後部にリンク機構を介してロータリ等の作業機を連結し、該機体と作業機の間に機体に対する作業機のローリング角を変更するアクチュエータを設けるとともに、該機体に作業機のローリング角を設定する傾き調整ダイヤル等を設け、作業機のローリング角を自動的に調整する水平制御装置を備えたものが知られている。
【0003】
この水平制御装置には、機体と作業機の間に作業機のローリング角を検出するセンサを設けるとともに、該機体に機体のローリング角を検出する傾斜センサを設け、各センサの検出値に基づいて機体のローリング角と作業機のローリング角を演算し、機体の姿勢に拘らず作業機のローリング角を水平に維持すべく前記アクチュエータへ駆動信号を出力したり、或いは、機体のローリング角と作業機のローリング角を平行に維持すべく前記アクチュエータを駆動するように制御している。
【0004】
一般に傾斜センサは、筐体内に常時鉛直方向に向かう振り子を吊り下げておき、該振り子に対して機体に取り付けた筐体の左右傾斜の角度変化を検出するように構成されており、該振り子自体の慣性力のため、例えば機体が右下がり方向に傾斜し始めるときは、該振り子は相対的に左側に取り残される。従って、傾斜センサは機体の傾斜開始直後は逆方向の検出信号を出力し、また、検出信号の出力に時間遅れが生じることで、機体の傾斜を迅速に検出するという応答性が良好ではない。
【0005】
これに対して、機体に機体のローリング角速度を検出するローリング角速度センサを設け、該ローリング角速度センサの検出値から機体のローリング角を演算する方法も考えられる。しかし、機体の走行速度や圃場の硬さ、或いはタイヤのラグパターン等の走行条件や圃場条件により種々のノイズが発生し、ローリング角速度センサの検出信号には連続的に小刻みの変化が表れる。特に、傾斜地で走行している場合は、タイヤのラグパターンの影響により機体の固有振動が大きくなり、ローリング角速度センサの検出信号に基づいて水平制御信号を出力すれば制御誤差が大きくなることがある。これを防止するには、ローリング角速度センサの出力変化に同期して全く応答遅れのない可変スピードの出せるアクチュエータが必要となり、構成が複雑になるとともに極めて高価となる。
【0006】
そこで、機体と作業機の間に設けられたアクチュエータを駆動し、作業機のローリング角を調整して水平制御を行う際に、機体のローリングによる作業機の行き過ぎや応答遅れを防止するとともに、タイヤのラグパターン等の走行条件や圃場条件により発生するローリング角速度センサのノイズに対応して正確な水平制御を行うために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、機体の後部にリンク機構を介して作業機を連結し、該機体と作業機の間に機体に対する作業機のローリング角を変更するアクチュエータと該機体に対する作業機のローリング角を検出する手段とを設け、該機体に機体のローリング角を検出する傾斜センサと、作業機のローリング角を設定する傾き設定手段とを備えた水平制御装置に於いて、該機体に機体がローリングするときのローリング角速度検出手段を設け、ローリング角速度検出手段の検出値と前記傾斜センサの検出値とに基づき、前記傾き設定手段の設定値に応じて作業機のローリング角を調整するとともに、前記傾斜センサが一定値以上のローリング角を検出しているときは、ローリング角速度検出手段の不感帯を広げ、ローリング角速度検出手段の検出値が該不感帯内にあるときは、ローリング角速度検出手段の検出値に基づく水平制御信号を出力しないように構成したことを特徴とする水平制御装置を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面に従って詳述する。図1及び図2は作業車両の一例として小型のトラクタ10を示し、機体の後部にリンク機構11を介してロータリ作業機12が連結されている。運転席13の近傍には作業機の昇降位置設定手段であるポジションレバー15、作業機の耕深量設定手段である耕深調整ダイヤル16、作業機のローリング角を設定する傾き設定手段である傾き調整ダイヤル17等が設けられている。また、ミッションケース18の上面部には後車軸19の近傍上方位置の略中央部に、機体のローリング角を検出する手段である傾斜センサ41と、機体がピッチングするときの角速度を検出する手段であるピッチング角速度センサ42と、機体がローリングするときの角速度を検出する手段であるローリング角速度センサ43がケース44内に一体的に収納されている。
【0009】
前記リンク機構11はトップリンク20と左右のロワリンク21,21とからなり、左右のリフトアーム22,22の先端とロワリンク21,21をリフトロッド23,23にて連結し、リフトシリンダ24の駆動にてリフトアーム22を回動することにより、リフトロッド23,23を介してロワリンク21,21が上下動する。斯くして、ロワリンク21,21の先端部を回動中心に前記ロータリ作業機12が昇降する。
【0010】
リフトアーム22の回動基部には、作業機の昇降位置を検出する手段としてリフトアーム角センサ25が設けられ、このリフトアーム角センサ25にてリフトアーム22の回動角を検出し、コントローラ50にてロータリ作業機12の昇降高さを演算する。また、ロータリ作業機12のメインカバー26の後端部にリヤカバー27を上下回動自在に取り付け、リヤカバーセンサ28により前記リヤカバー27の回動角を検出して、コントローラ50にてロータリ作業機12の耕深量を演算する。
【0011】
一方、機体に対するロータリ作業機12のローリング角を変更するためのアクチュエータとして、左右どちらかのリフトロッド23の途中にローリングシリンダ30を設け、該ローリングシリンダ30を伸縮させてロワリンク21のリフト量を左右で変えることにより、機体に対するロータリ作業機12の左右方向への傾きを変更できるように形成してある。
【0012】
そして、機体に対するロータリ作業機12のローリング角を検出する手段として、前記ローリングシリンダ30に隣接してストロークセンサ31を設け、該ストロークセンサ31によリローリングシリンダ30の伸縮長さを検出し、機体に対するロータリ作業機12のローリング角をコントローラ50にて演算するとともに、前記傾き調整ダイヤル17の設定値に応じてローリングシリンダ30を駆動し、ロータリ作業機12の水平制御を行えるようにしてある。
【0013】
ここで運転席13の前方には機体の操舵操作部であるステアリングハンドル32が設けられ、該ステアリングハンドル32の近傍位置に前後進切換えレバー33を設けてあり、該前後進切換えレバー33を操作することにより、後輪34へ伝達する駆動力を逆転させて、機体の進行方向を選択できるようにしてある。また、運転席13の前下方部に変速レバー35を設置するとともに、左右独立して踏み込み可能な左右ブレーキペダル36,36が設けられている。前記、ステアリングハンドル32の回転操作は操舵装置37へ伝達され、操舵量に応じて前輪38が回向する。前輪38の操舵量は前輪切れ角センサ39によって検出される。
【0014】
図3は制御系のブロック図であり、耕深調整ダイヤル16によってロータリ作業機12の耕深目標値を設定し、リフトアーム角センサ25の検出信号にてロータリ作業機12の昇降位置を演算するとともに、リヤカバーセンサ28にてリヤカバー27の回動角を検出してロータリ作業機の耕深量を演算する。そして、リヤカバー27の回動角を前記耕深調整ダイヤル16にて設定された耕深目標値に応じた所定角に維持すべく、リフトシリンダ24を駆動する電磁制御弁の上昇ソレノイドまたは下降ソレノイドへコントローラ50から制御信号を出力する。従って、リフトアーム22が上下回動してロータリ作業機12が昇降し、リヤカバー27が回動してリヤカバーセンサ28の検出値が耕深目標値と一致するように制御される。
【0015】
一方、傾き調整ダイヤル17によってオペレータがロータリ作業機12のローリング角を任意に設定できる。地面に対する機体のローリング角は傾斜センサ41にて検出し、機体に対するロータリ作業機12のローリング角はストロークセンサ31にて検出する。従って、双方のセンサの検出値からロータリ作業機12の地面に対するローリング角を演算することができ、前記傾き調整ダイヤル17にて設定された作業機のローリング角を維持すべく、ローリングシリンダ30を駆動する電磁制御弁の右上げソレノイドまたは右下げソレノイドへコントローラ50から制御信号を出力する。従って、ローリングシリンダ30が伸縮してロータリ作業機12のローリング角が変更され、ストロークセンサ31の検出値が水平制御の目標値と一致するように制御される。
【0016】
尚、ピッチング角速度センサ42及びローリング角速度センサ43は夫々振動ジャイロ方式のものを使用しており、構造が簡単で精密且つ安価である。しかし、振動ジャイロ方式以外のセンサであってもよい。之等傾斜センサ41とピッチング角速度センサ42とローリング角速度センサ43は、後車軸19の近傍上方位置の略中央部に設けられており、前輪38側に設置する場合と比較して機体の重心に近くなり、上下方向の振動が少なく外乱を受けにくくなって測定精度が向上する。また、前記3つのセンサがすべてケース44内に一体的に収納されているので、設置スペースがコンパクトになり、電源回路を共用できる等、設置作業も簡単となる。
【0017】
更に、水平切換スイッチ45により、水平モードと機体平行モードと角度設定モードとを選択可能にしてあり、機体と作業機の相対的な傾き及び地面に対する傾きを検出しながら、該水平切換スイッチ45でセットしたモードに応じて水平制御の目標値を定め、前記ローリングシリンダ30を駆動してロータリ作業機12の傾きを調整する。
【0018】
例えば、水平切換スイッチ45が水平モードにセットされているときは、傾斜センサ41の検出値とストロークセンサ31の検出値からロータリ作業機12の地面に対する傾きを算出し、この傾きをゼロにするように水平制御の目標値を定める。そして、ストロークセンサ31の計測値がこの目標値に一致するように、ローリングシリンダ30を駆動する電磁制御弁の右上げソレノイドまたは右下げソレノイドへコントローラ50から制御信号を出力する。従って、機体の姿勢に拘らずロータリ作業機12の左右方向の傾きが水平となるように制御される。
【0019】
一方、水平切換スイッチ45が機体平行モードにセットされているときは、左右のロワリンク21のリフト量を等しくするように水平制御の目標値を定める。そして、ストロークセンサ31の計測値がこの目標値に一致するようにローリングシリンダ30を駆動すべく、コントローラ50から前記右上げソレノイドまたは右下げソレノイドへ制御信号を出力する。従って、ロータリ作業機12の左右方向の傾きが機体の傾きと平行になるように制御される。
【0020】
また、水平切換スイッチ45が角度設定モードにセットされているときは、オペレータが任意に設定した傾き調整ダイヤル17の設定値に応じて水平制御の目標値を定め、ストロークセンサ31の計測値がこの目標値に一致するようにローリングシリンダ30を駆動すべく、コントローラ50から前記右上げソレノイドまたは右下げソレノイドへ制御信号を出力する。従って、ロータリ作業機12が設定した任意の傾きとなるように制御される。
【0021】
ここで、機体の走行速度や圃場の硬さ或いはタイヤのラグパターン等、走行条件や圃場条件によって、前記ローリング角速度センサ43の検出信号には種々の振動に起因するノイズが発生する。例えば、図4に示すように、ローリング角速度センサ43の出力信号が0Vから最大5Vまで変化し、機体が左方向へローリングしたときの角速度の変化がグラフの上方向に表れ、機体が右方向へローリングしたときの角速度の変化が下方向に表れるものとしたとき、機体の振動ノイズによって、ローリング角速度センサ43の検出信号には連続的に小刻みの変化が表れる。
【0022】
従って、ローリング角速度に基づいて水平制御を行う場合は、右方向角速度のピーク値(上端ピーク値)と左方向角速度のピーク値(下端ピーク値)を所定時間継続して測定し、各ピーク値の移動平均値を算出し、右方向角速度ピーク値の移動平均値と左方向角速度ピーク値の移動平均値とからローリング角速度センサ43の中立位置Cを設定する。そして、図4の点線にて示すように、上記中立位置Cに対して予め所定範囲(例えば中立位置を中心として±1V〜1.5V)の不感帯U1を定めておき、ローリング角速度センサ43の検出値が該不感帯U1内にあるときは、機体の固有振動による角速度検出と見做して、前記傾斜センサ41の検出値にて機体のローリング角を算出し、該傾斜センサ41の検出値に基づいてローリングシリンダ30用の電磁制御弁へ「右上げ」または「右下げ」の水平制御信号を出力する。そして、該不感帯U1より大きなローリング角速度を検出したときは、前記ローリング角速度センサ43の検出値に基づいてローリングシリンダ30用の電磁制御弁へ水平制御信号を出力する。
【0023】
図5は水平制御のフローチャートを示し、水平制御が開始されると、先ず各種センサやスイッチ及びダイヤル等の状態をコントローラ50に読み込み(Step100)、続いてローリング角速度センサ43のピーク値を収集する(Step110)。いま、図4に示したような振動ノイズが発生している場合、右方向角速度のピーク値(上端ピーク値)と左方向角速度のピーク値(下端ピーク値)を所定時間継続して測定し、各ピーク値の移動平均値を算出する。そして、右方向角速度ピーク値の移動平均値と左方向角速度ピーク値の移動平均値との間の領域をローリング角速度センサ43の不感帯に設定する(Step120)。
【0024】
上記不感帯を設定した後、ローリング角速度センサ43の検出値がこの不感帯内にあるときは(Step130)、振動に起因するノイズとみなして、前記傾斜センサ41の検出値にて機体のローリング角を算出し、該傾斜センサ41の検出値に基づいてローリングシリンダ30用の電磁制御弁へ「右上げ」または「右下げ」の水平制御信号を出力する(Step140)。これに対して、ローリング角速度センサ43の検出値が前記不感帯から外れて、右方向または左方向に大きな角速度が検出されたときは、該ローリング角速度センサ43の検出値に基づいてローリングシリンダ30用の電磁制御弁へ水平制御信号を出力する(Step150)。
【0025】
ここで、前記傾斜センサ41が所定値以上の傾斜を検出しているときは、Step120に於いて、ローリング角速度センサ43の不感帯の幅を広げる。これは、図6に示すように、タイヤのラグパターンはトレッドの中心から外側に向けて、ラグ60a,60bが交互に傾斜して設けられており、機体が水平状態のときはタイヤの接地面がA部分となり、双方のラグ60a,60bが連続的に地面に接地するので、機体に発生するローリング角速度は少ないが、機体の傾斜が大きくなったときはタイヤの接地面がB部分またはC部分となり、片方のラグ、60aまたは60bが断続的に接地して、機体には断続的にローリング角速度が発生するからである。
【0026】
斯くして、前記傾斜センサ41が所定値以上の傾斜を検出して機体の傾斜が大きいと判断したときは、図4の二点鎖線にて示すように、ローリング角速度センサ43の不感帯U1を広げて新たな不感帯U2とすることにより、安定した水平制御を行うことができる。尚、新たな不感帯U2は機体の傾斜角度に応じて段階的に広げるように設定するか、或いは、機体の傾斜角度に比例して無段階に漸増するように設定してもよい。
【0027】
また、ローリング角速度センサ43の検出値に基づく水平制御出力を停止して、傾斜センサ41に基づく水平制御に移行する場合は、該傾斜センサ41の検出値が一定時間に所定範囲に収まっているときのみ、傾斜センサ41に基づく水平制御出力を開始する。これは、ローリング角速度がなくなった後に機体の傾斜変化が緩やかになってから、傾斜センサ41に基づく水平制御を行うためである。
【0028】
尚、ローリング角速度センサ43にて検出された機体のローリング角速度をω、検出時間をTとすれば、機体のローリング角θは次式で表される。
【0029】
θ=ω×T
上式によって求められた機体のローリング角θとストロークセンサ31の検出値から、ロータリ作業機12のローリング角を演算し、傾き調整ダイヤル17の設定値に応じて前記ローリングシリンダ用の電磁制御弁へ水平制御信号を出力する。斯くして、走行条件や圃場条件等で必然的に発生するノイズに対しては、不感帯として前記ローリング角速度センサ43に基づく水平制御信号を出力しないため、特別に高性能のセンサやアクチュエータを使用せずして不要な出力をなくすことができ、安価な費用にて応答性のよい水平制御を行うことができる。
【0030】
ここで、大きいローリング角速度を検出したときは、これに基づいて水平制御信号を出力しても、ローリングシリンダ30の動作速度の関係から目標の水平姿勢まで修正できないことがある。これを防止するために、水平制御出力の停止にディレーをかける。
【0031】
例えば、図7に示すように、ローリング角速度センサ43の不感帯Uを超えて中立位置Cを中心とする一定値±αVの位置にしきい値を設定しておき、ローリング角速度センサ43の検出値が不感帯Uを超えて機体が右方向へローリングし、「右下げ」の水平制御信号の出力要求があった場合(時点t1)、更に機体が大きく右方向へローリングして、このローリング角速度が前記しきい値(+αV)を超えたときは(時点t2)、一定値+αVを超えている間の時間T1を計測し(時点t2〜t3)、このローリング角速度が前記しきい値(+αV)以下になったときから更に時間T1の間(時点t3〜t4)は、該ローリング角速度が減少して不感帯Uに入ったとしても、「右下げ」の水平制御信号を停止せずローリングシリンダ30の伸長駆動を継続する。
【0032】
同様に、ローリング角速度センサ43の検出値が不感帯Uを超えて「右上げ」の水平制御信号の出力要求があった場合(時点t5)、このローリング角速度がしきい値(−αV)を超えたときは(時点t6)、一定値−αVを超えている間の時間T2を計測し(時点t6〜t7)、このローリング角速度が前記しきい値(−αV)以下になったときから更に時間T2の間(時点t7〜t8)は、該ローリング角速度が減少して不感帯Uに入ったとしても、「右上げ」の水平制御信号を停止せずローリングシリンダ30の収縮駆動を継続する。
【0033】
尚、前記ローリングシリンダ30が片ロッド型の場合は、伸び側と縮み側でピストンの受圧面積が異なるため、動作速度に差が生じて伸び速度より縮み速度が速くなる。本実施の形態で説明する小型のトラクタに使用されるローリングシリンダ30は、縮み速度に対して伸び速度は約2/3程度である。
【0034】
従って、図7の最下段(修正右上げ出力)に示すように、「右上げ」の水平制御信号を出力してローリングシリンダ30を収縮する場合は、出力停止ディレー時間を前述したT2の2/3として、ローリング角速度が前記しきい値(−αV)以下になったときから時間T2×(2/3)の間(時点t7〜t9)は、該ローリング角速度が減少して不感帯Uに入ったとしても、「右上げ」の水平制御信号を停止せずローリングシリンダ30の収縮駆動を継続する。斯くして、ローリングシリンダ30の伸び側と縮み側とでシリンダの動作量を同一にすることができる。
【0035】
一方、図8に示すように、一定値+αVを超えている間の時間T3を計測し(時点t11〜t12)、このローリング角速度が前記しきい値(+αV)以下になって時間T3の間(時点t12〜t13)に出力停止ディレーを行っている場合に、ローリング角速度が逆方向のしきい値(−αV)を超えたとき(時点t14)には、出力停止ディレーの時間を減算して作業機の行き過ぎを防止する必要がある。出力停止ディレーの減算量は、前記時点t13とt14の差T4の1/2とする。これにより、「右下げ」水平制御信号の出力停止ディレーは、時点t12からt15までの時間T5に減算される。
【0036】
尚、ロータリ作業機12の取付幅の大小により、ローリングシリンダ30の伸縮量に対する傾斜の度合いが異なるため、トラクタ10には取付幅切換装置(図示せず)が設けられている。従って、該取付幅切換装置が切り換えられたときは、前述した水平制御信号の出力停止ディレー時間も変更することは当然である。
【0037】
ここで、ローリング角速度センサ43の検出値に基づく水平制御中に、機体が旋回した場合は、コントローラ50からリフトシリンダ用電磁制御弁の上昇ソレノイドに指令信号を出力してロータリ作業機12を所定高さに上昇させる。或いは、機体が直進走行中であっても、作業領域外へ出たときや機体を後退するとき等には、ロータリ作業機12を手動操作にて所定高さに上昇させる。然るとき、前記ローリング角速度センサ43が機体の振動による角速度を検出して水平制御信号を出力すれば、作業機にガタツキが発生して操作感が悪くなるので、作業機を上昇したときはローリング角速度に基づく水平制御信号の出力を禁止し、旋回動作や後退動作が終了してロータリ作業機12を下降したときに、再びローリング角速度に基づく水平制御信号を出力する。
【0038】
例えば、図9に示すように、ローリング角速度センサ43の検出値に基づく水平制御中に、リフトアーム角センサ25の検出値が一定値以上になったときは(Step200)、ロータリ作業機12が上昇操作中若しくは上昇位置で停止している状態であるので、ローリング角速度に基づく水平制御信号の出力を禁止する(Step210)。従って、作業機上昇中に不用な水平制御出力を行わなくなり、作業機のガタツキを解消できる。
【0039】
そして、旋回動作や後退動作が終了してロータリ作業機12を下降したときは、直ちにローリング角速度に基づく水平制御信号を出力するのではなく、所定時間(下降操作から約2秒間)のウエイトをかける(Step230)。この間は、傾斜センサ41の検出値に基づく水平制御に切り換えて制御信号を出力するため(Step240)。作業機接地等でロータリ角速度が発生したとしても、ローリング角速度に基づく水平制御信号を出力しないので、誤制御を防止することができる。所定時間経過後はローリング角速度に基づく水平制御信号の出力を再開する(Step250)。
【0040】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0041】
【発明の効果】
本発明は上記一実施の形態に詳述したように、機体の傾斜センサの検出値と機体のローリング角速度の検出値とに基づいて作業機の水平制御を行う際に、傾斜センサが一定値以上のローリング角を検出しているときは、ローリング角速度の不感帯を広げたことにより、機体の傾斜によってタイヤのラグパターンによる振動ノイズが多くなったとしても、不感帯としてローリング角速度に基づく水平制御信号を出力せず、従来と同様に傾斜センサの検出値に基づいて水平制御信号を出力するので、特別に高性能のセンサやアクチュエータを使用せずして不要な出力をなくすことができ、安価な費用にて応答性のよい水平制御を行うことができる。一方、不感帯より大きなローリング角速度を検出したときは、ローリング角速度に基づく水平制御を行うため、作業機の行き過ぎや応答遅れを防止して正確な水平制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
図は本発明の一実施の形態を示すものである。
【図1】トラクタの機体とロータリ作業機の側面図。
【図2】リヤカバーセンサ等の図示を省略した図1の背面図。
【図3】制御系のブロック図。
【図4】ノイズがあるときのローリング角速度センサの検出信号を表したグラフ。
【図5】水平制御装置の制御手順を示すフローチャート。
【図6】タイヤのラグパターンを示す要部斜視図。
【図7】大きなローリング角速度を検出したときの出力停止ディレーを表したグラフ。
【図8】出力停止ディレーを減算したグラフ。
【図9】ローリング角速度での水平制御中に作業機下降操作があった場合の制御手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
10 トラクタ
11 リンク機構
12 ロータリ作業機
17 傾き調整ダイヤル
30 ローリングシリンダ
31 ストロークセンサ
41 傾斜センサ
43 ローリング角速度センサ
50 コントローラ
Claims (1)
- 機体の後部にリンク機構を介して作業機を連結し、該機体と作業機の間に機体に対する作業機のローリング角を変更するアクチュエータと該機体に対する作業機のローリング角を検出する手段とを設け、該機体に機体のローリング角を検出する傾斜センサと、作業機のローリング角を設定する傾き設定手段とを備えた水平制御装置に於いて、該機体に機体がローリングするときのローリング角速度検出手段を設け、ローリング角速度検出手段の検出値と前記傾斜センサの検出値とに基づき、前記傾き設定手段の設定値に応じて作業機のローリング角を調整するとともに、前記傾斜センサが一定値以上のローリング角を検出しているときは、ローリング角速度検出手段の不感帯を広げ、ローリング角速度検出手段の検出値が該不感帯内にあるときは、ローリング角速度検出手段の検出値に基づく水平制御信号を出力しないように構成したことを特徴とする水平制御装置。
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