JP3835740B2 - 軸方向駆動の振動体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、着信を無音で携帯者に感知させる携帯機器等に用いられる振動体の構成に関するものである。
【従来の技術】
従来から公共の場所、病院、電車・バス等の乗り物では、携帯機器の使用は制限されている場合が多い。特に、携帯機器の使用が許されている場合でも、所謂マナーモード(無音・体感振動)で着信を携帯者に感知させる方法が行われている。携帯機器には、最近の日進月歩の技術革新を反映して種々の商品が普及してきており、例えば携帯電話、PDA、ウエアラブル(身につける)コンピューティング機器等がある。これらには、無音で体感振動を感知させる振動モータやそれに近い機能を有するマルチファンクションデバイス(スピーカと振動体機能を併せ持つ)等が用いられている。以下では、従来の振動モータの代表例と思われるものについて説明する。
【0002】
従来例としては、公開実用平成3−83681号(以下では文献Aと称す)、特開平7−107699号(文献B)、特公平8−10972号(文献C)を挙げて説明する。文献Aは、ブラシとコンミテータを有する軸長型の直流モータを用いたものであり、振動モータの回転軸に装着する断面が扇型形状の偏心錘に関するものである。偏心錘として高比重ではあるものの加工が困難なタングステンのバルク材を用いずに、タングステンや鉛を含む金属の粉末焼結合金によって形成して回転軸への偏心錘の嵌着を容易にして振動出力を大きくしようとするものである。
【0003】
文献Bは、図5に概要を示すようにブラシとコンミテータを有する軸長型の直流モータを用いた振動モータであり、偏心錘の構成と回転軸への固定方法の開示に関するものである。図5において、直流モータ131の軸受け133に支持された回転軸136には回転軸136の外径より小さい溝135が設けられ、高比重材で形成されたタングステン等の粉末焼結合金からなる偏心錘134をカシメ部140で回転軸136の溝135にカシメる。そのため、偏心錘134の軸方向の両端部が盛りあがらずに偏心錘134は確実に回転軸136に固定されるので小型にも拘わらず出力を大きくすることができるとしている。また、多孔質な偏心錘134にはオイルが含浸されておりメッキによる表面処理なしで防錆効果があると記載されている。
【0004】
文献Cは、ブラシとコンミテータを有する偏平型の直流モータに関するもので、少なくとも3個の開き角が60〜80°のコイルを重複しないように扇形に配設して回転子の構成で偏心錘を形成する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
文献A、B、Cは直流モータの回転を前提としたものであり長軸型、扁平型の相違はあるものの、以下のような難点があった。(1)ブラシとコンミテータを用いるのでコストもかかりまた整流の際のマイクロアークによる損傷で寿命と品質の維持に問題がある。(2)7000〜8000rpmまでの立ち上がりに時間がかかり音楽に合わせた振動を発生させる機器には向いていない。
本発明の目的は、前述の欠点を除去して、簡単な構成で多様化する携帯機器の機能を豊富にする小型で高性能な軸方向駆動の振動体を提案するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の振動体の請求項1は、円筒状フレームの一側端に円筒状の駆動コイルを固定し、該駆動コイルと空隙を介して磁気的に係合する磁性材料からなるカップ状ヨークと該カップ状ヨークに内包され一端が固定される円柱状永久磁石を有し錘が搭載された駆動子と該駆動子を弾性的に支持する一対のコイルばねとで構成される軸方向駆動の振動体において、前記フレームの内周面に軸方向と平行な複数列のガイド凸部を設け、該ガイド凸部と機械的に摺動係合するガイド溝を前記駆動子の外周面に軸方向に平行に複数列設け、前記駆動コイルを同心円筒状の空隙を介して前記カップ状ヨークと前記円柱状磁石間に設定し、前記フレームの両側端に設けた一対の前記コイルばねによって前記駆動子が軸方向に振動するように配設したことを特徴とするものである。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の振動体の請求項2は、上記駆動子の前記カップ状ヨークに内包される前記円柱状磁石の他端部に磁性材料からなる円柱状のポールピースを固着したことを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の軸方向駆動の振動体の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の軸方向駆動の振動体(以下では振動体と略称)の構成半断面図である。図2は図1のXX線断面図である。図3は本発明である他の実施例の断面図である。図4は本発明である他の実施例の駆動子の構成説明図である。図1、図2において本発明の振動体10は、合成樹脂からなる円筒状のフレーム11と駆動コイル12と駆動子20とで構成される。フレーム11の軸方向の一側端には、金属材料例えば熱伝道性のよいアルミニュウムを陽極処理して表面を電気絶縁処理した円筒状のコイルボビン13にマグネットワイヤを巻回して形成され、端子35,36を有する駆動コイル12を片持ち状に固定する。駆動子20は、磁性材料からなるカップ状ヨーク21の中心部には軸方向に単磁極に着磁された円柱状の永久磁石22を片持ち状に固定し、カップ状ヨーク21の内外周底面には質量の大きい例えばタングステン粉末を樹脂成型して形成された錘23が接着剤等で固着される。駆動子20が軸方向にスムーズに駆動できるようにフレーム11の内周面には軸方向に直角に複数列(実施例では2列)のガイド凸部(14a,14b,14c)、(15a,15b,15c)が配設されている。そして、軸方向と平行にガイド凸部(14a,15a)、(14b,15b)、(14c,15c)が同列に形成されている。また、駆動コイル12と駆動子20は、軸方向に平行な円周状の空隙26,27を介して磁気的に係合する。更に、駆動子20はフレーム11の両側端に設けたコイルばね24,25によって支持される。駆動子20の1次共振周波数は駆動子20の質量とコイルばね24,25のスティッフネスで決まり、携帯者への体感性がよいとされる100〜160Hzに設定される。駆動子20は、一対のコイルばね24,25によって平衡点で通常は停止している。
【0015】
図3において、駆動子30には軸方向と平行にガイド溝31a,31b,31cが設けられ、フレーム40のガイド凸部41a,41b,41cが夫々ガイド溝31a,31b,31cに対応して機械的にしゅう動係合する。この結果、駆動子30が軸方向に往復振動する際にピッチング、ローリング及びヨーイングが生じることもなく効率の良い軸方向の往復振動を発生する。また、錘23が搭載されている場合は、振動加震力を更に大きくすることができる。
【0016】
図4において、円柱状永久磁石22の駆動コイル12と磁気的に係合する先端部に磁性材料からなる円柱状のポールピース28を配設する実施例が示されている。本発明の実施例によればポールピース28からの磁束分布が駆動コイル12の直径方向に広がるので駆動コイル12の磁束鎖交数を大幅に増加させることができて振動エネルギーへの変換効率を向上させることができる。
【0017】
今までの本発明の振動体の説明では、フレーム11、駆動コイル12、駆動子20,30等の軸方向の断面形状を製造が容易な円筒状としているが、これに限定される必要はなく、楕円形状、方形状等携帯機器への取り付け配置等を考慮して軸方向への駆動子20,30の運動を妨げないのであれば任意の形状でよい。
【0018】
駆動子20,30の駆動は、駆動コイル12の端子35,36間に駆動子20,30の1次共振周波数とほぼ同一の基本周波数を有する正弦波または方形波等の交流信号でブリッジ回路等によって付勢されて駆動される。無論、正弦波または方形波によるユニポーラ駆動でも駆動することができる。
【0019】
駆動子20,30にはコイルばね24,25が一対用いられているが、コイルばねは1個でもよい。この場合は、駆動子20,30は1方向に押し付けられるように設定され、駆動はコイルばねの静的な力に打ち勝つように駆動される。この方法によれば、携帯機器の振動、衝撃等によって駆動子20,30が1方向に保持されているので振動体が保護される。
【0020】
また、本発明の実施例の駆動子20,30の構成をカップ状ヨーク21と円柱状永久磁石22とで説明したが、これを相互に置き換えてラジアル方向に単磁極に着磁されたカップ状永久磁石と円柱状ヨークとしても差し支えないことは明らかである。
【0021】
更にまた、本発明の駆動方法はバイポーラのブリッジ回路またはユニポーラ回路のいずれでも適用でき、そして駆動のための入力波形は正弦波または方形波のいずれでもよく、コスト/パフォーマンスを考慮して選択される。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、簡単な構成でコスト/パフォーマンスがよく、無音で体感特性の優れた携帯機器用の振動体が容易に実現できる。
【0023】
また、本発明によれば、直流モータを用いないので直流モータ特有のブラシ・コンミテータ間の長寿命化や品質維持を課題としなくてよいので製造管理が容易である。
【0024】
また、本発明によれば、駆動子の共振を用いるので運動変換効率がよく小型で高性能な振動体を実現することができる。
【0025】
また、本発明によれば、通常の振動モータのように立ち上がりに時間がかかることが少なく、音楽に合わせてリズムを奏することも可能であり、携帯機器の機能を豊富にすることができる。
【0026】
また、本発明によれば、駆動子の磁気回路は円筒状ヨークと円柱状永久磁石との間でよく閉じているので漏洩磁束が少なく本発明の振動体が搭載される機器への電磁障害を大幅に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の軸方向駆動の振動体の構成半断面図である。
【図2】図1のXX線断面図である。
【図3】本発明の他の実施例の断面図である。
【図4】本発明の他の駆動子の構成説明図である。
【図5】従来例のブラシとコンミテータを有する軸長型の直流モータを用いた振動モータの構成図である。
【符号の説明】
10 振動体
11 フレーム
12 駆動コイル
13 コイルボビン
14a,14b,14c,15a,15b,15c,41a,41b,41cガイド凸部
20,30 駆動子
21 カップ状ヨーク
22 円柱状永久磁石
23 錘
24 25 コイルばね
26,27 空隙
28 ポールピース
31a,31b,31c ガイド溝
35,36 端子
Claims (2)
- 円筒状フレームの一側端に円筒状の駆動コイルを固定し、該駆動コイルと空隙を介して磁気的に係合する磁性材料からなるカップ状ヨークと該カップ状ヨークに内包され一端が固定される円柱状永久磁石を有し錘が搭載された駆動子と該駆動子を弾性的に支持する一対のコイルばねとで構成される軸方向駆動の振動体において、前記フレームの内周面に軸方向と平行な複数列のガイド凸部を設け、該ガイド凸部と機械的に摺動係合するガイド溝を前記駆動子の外周面に軸方向に平行に複数列設け、前記駆動コイルを同心円筒状の空隙を介して前記カップ状ヨークと前記円柱状磁石間に設定し、前記フレームの両側端に設けた一対の前記コイルばねによって前記駆動子が軸方向に振動するように配設したことを特徴とする軸方向駆動の振動体。
- 前記駆動子の前記カップ状ヨークに内包される前記円柱状磁石の他端部に磁性材料からなる円柱状のポールピースを固着したことを特徴とする請求項1に記載の軸方向駆動の振動体。
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