JP3827143B2 - 排ガス浄化用触媒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化水素(以下、HCという)吸着材よりなるコート層をもつ排ガス浄化用触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゼオライトは、別名分子篩いとも称されるように、分子の大きさに匹敵する孔径2nm未満のミクロ細孔を有し、吸着材として利用されるほか、触媒として多くの反応に利用されている。また主成分であるアルミナ( Al2O3)の負電荷を中和するために陽イオンを含み、この陽イオンは水溶液中で他の陽イオンと用意に交換されるため、陽イオン交換体としても利用されている。
【0003】
ゼオライトのこのような性質を利用して、近年、自動車の排ガス浄化用触媒への利用が検討され、たとえば特開平2-056247号公報には、ゼオライトに白金やパラジウムなどの貴金属を担持した排ガス浄化用触媒が開示されている。
【0004】
ところがゼオライト自体は貴金属の担持性が低く、担持量が少ないために酸化能が不十分となるという不具合がある。またエンジンが冷間状態にある場合には、通常の運転時より燃料濃度の高い混合気が供給されるため、排ガス中に含まれるHC量が多い。さらに貴金属は、約 300℃以上にならないと活性化せず、始動時など排ガス温度が低い場合には排ガス中のHCを十分に浄化することができない。このためエンジンの冷間時や始動時などには、HCを特に効率よく浄化することが望まれている。
【0005】
そこで近年では、ゼオライトをHC吸着材として用いることが行われている。例えば特開平5-317701号公報には、SiO2/Al2O3モル比が所定範囲のゼオライトをHC吸着材とすることが記載され、これを貴金属を主とする酸化触媒と併用することが記載されている。また特開平2-056247号公報には、担体基材表面にゼオライトを主成分とする第1触媒層を形成し、さらにその表面に貴金属を主成分とする第2触媒層を形成した排ガス浄化用触媒が開示されている。
【0006】
これらの排ガス浄化用触媒によれば、低温域においてHCはゼオライトに一旦吸着され、排出が抑制される。そして吸着されたHCは、ゼオライトが所定温度以上となるとゼオライトから放出され、近傍に存在する貴金属により酸化浄化される。したがって低温域から高温域まで、安定してHCを浄化することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところでHCの吸着をゼオライトの物理的特性に依存する場合、ゼオライトの温度上昇を抑制することが望ましい。つまり温度上昇を抑制することによってゼオライトに吸着されているHCの脱離を抑制することができ、これにより貴金属が活性化するまでの間に放出されるHC量を低減することができる。
【0008】
ゼオライトの温度上昇を抑制するには、ゼオライトのコート量を多くしてコート厚を厚くするのが有効である。コート厚を厚くすればコート層内の温度分布を拡大することができ、コート層の深部の温度上昇を抑制することができるので、深部のゼオライトに吸着されているHCの放出を抑制することができる。
【0009】
しかしながら下層にHC吸着材層を、その上層に三元触媒などの触媒層を形成した排ガス浄化用触媒においては、HC吸着材層の厚さを厚くすると触媒全体の熱容量が大きくなるために、上層に担持されている貴金属の活性化が遅れ、その結果低温域におけるHC浄化能が低下するという問題がある。
【0010】
またゼオライトにPdやAgなどの金属を担持すれば、低分子量のHCの化学吸着性が一層向上するため、上層に担持されている貴金属が活性化するまでの間に放出されるHC量を低減することができる。しかしながらAgなどの金属による化学吸着を利用するには、Si/Al比が小さなゼオライトを用いなければならず、このようなゼオライトは耐熱性が低いという問題がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、HC吸着材層と触媒層との二層構造の排ガス浄化用触媒において、触媒層に担持されている貴金属が活性化するまでの間に放出されるHC量を低減するとともに、触媒層に担持されている貴金属が早期に活性化することで、低温域におけるHC浄化能をさらに向上させることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の排ガス浄化用触媒の特徴は、担体基材と、担体基材の表面に形成されたHC吸着材層と、HC吸着材層の表面に形成された触媒層と、よりなる排ガス浄化用触媒において、HC吸着材層の熱容量は排ガス流の上流側が小さく下流側が大きいことにある。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の排ガス浄化用触媒では、HC吸着材層の熱容量が、排ガス流の上流側が小さく下流側が大きくなるように構成されている。つまり、上流側ではHC吸着材層の熱容量が小さいので、上層の触媒層が速やかに昇温され担持されている貴金属が早期に活性化する。そして上流側での着火により排ガス温度が上昇するため、下流側の触媒層も速やかに昇温され、全体として低温域におけるHC浄化能が向上する。
【0014】
一方、下流側ではHC吸着材層の熱容量が大きい。したがって温度が上がりにくく上流側で脱離したHCを下流側で再吸着することができ、触媒層に担持されている貴金属が活性化するまでの間に放出されるHC量を低減することができる。
【0015】
担体基材としては、コージェライトなどの耐熱性セラミックスあるいはメタル箔などから形成されたものを用いることができる。また担体基材の形状は、ハニカム形状であってもよいし、ペレット形状でもよい。ハニカム形状の場合には、ハニカム通路内におけるHC吸着材の熱容量に分布を形成すればよいし、ペレット形状の場合には上流側に配置されるペレット触媒と下流側に配置されるペレット触媒とでHC吸着材の熱容量に分布を形成すればよい。
【0016】
HC吸着材としては、フェリエライト、ZSM-5、モルデナイト、Y型ゼオライトなどのゼオライトを用いることができる。三次元的な細孔をもち吸着性能に優れたZSM-5構造のゼオライトが特に好ましい。また、アルミナ成分に対するシリカ成分のモル比(SiO2/Al2O3)が 100以上、かつ平均一次粒子径が5μm以下であるようなゼオライトを用いることが特に望ましい。このようなゼオライトを用いれば、初期から耐久後まで高いHC吸着量を確保することができる。
【0017】
HC吸着材層の熱容量が、排ガス流の上流側が小さく下流側が大きくなるように構成するには、例えばHC吸着材層を上流側で薄く下流側で厚くなるように、厚さを流れ方向で変化させることで行うことができる。この場合、厚さの変化は段階的であってもよいし、厚さが漸次増大するように形成することもできる。
【0018】
HC吸着材層を上記のように形成するには、実施例にも示したようにHC吸着材のコート量が異なる触媒どうしを直列に並べて用いる方法がある。またウェットコート法でHC吸着材層を形成する場合、上流側と下流側でコート回数を変更する方法を用いてもよいし、スラリー濃度を変更してもよい。
【0019】
またHC吸着材層の見掛け密度が、排ガス流の上流側が小さく下流側が大きくなるように構成しても、熱容量を変化させることができる。
【0020】
熱容量の変化の程度には特に制限がないが、勾配が大きいほどあるいは段差が大きいほど好ましい。しかし下流側においてHC吸着材層が厚くなりすぎると、圧力損失の増大によってエンジン性能が低下するようになるので、圧力損失が増大しない範囲で変化させることが望ましい。
【0021】
触媒層としては、担体に触媒金属が担持された酸化触媒あるいは三元触媒、さらには担体に触媒金属とNOx 吸蔵材とが担持されたNOx 吸蔵還元型触媒などが例示される。担体としては、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、セリア−ジルコニアなどが一般に用いられる。また触媒金属にはPt、Pd、Rh、Ir、Ruなどが一般に用いられ、場合によっては卑金属を用いることもできる。さらにNOx 吸蔵材としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
【0022】
この触媒層は、排ガス流の上流側ほど厚く下流側ほど薄くなるように構成してもよい。これにより低温着火性が向上するとともに、HC吸着材層との合計厚さが上流側から下流側にかけてほぼ同一となるように構成できるので、圧力損失の増大を抑制することができる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0024】
セル密度 600cpsi、壁厚75μm、容積 1.3Lのコージェライト製ハニカム形状の担体基材を用意した。一方、ZSM-5(モル比SiO2/Al2O3=1900)とY型ゼオライト(モル比SiO2/Al2O3= 400)を重量比で1対1で混合したゼオライト粉末をバインダーとしてのアルミナゾル及び水と混合して、固形分63重量%のスラリーを調製した。
【0025】
上記担体基材を上記スラリー中に浸漬し、エアにて余分なスラリーを吹き払い、 120℃で6時間乾燥後、 500℃で3時間焼成した。ゼオライト層のコート量は、担体基材1L当たり 180gであった。
【0026】
次に、アルミナ粉末 120重量部、CeO2−ZrO2固溶体粉末62重量部、炭酸ランタン粉末30重量部、アルミナ水和物3重量部、40%硝酸アルミニウム水溶液44重量部を混合してスラリーを調製し、上記で得られたゼオライト層をもつ担体基材を浸漬した。その後エアにて余分なスラリーを吹き払い、 120℃で6時間乾燥後、 500℃で3時間焼成した。コート量は、担体基材1L当たり 150gであり、Laは担体基材1当たり 0.2モル担持されている。
【0027】
続いて白金ジニトロジアミン水溶液と塩化ロジウム水溶液を用いて、常法により担体基材1L当たり5gのPtと 0.5gのRhを含浸担持した。最後に 500℃で3時間焼成し、三元触媒層を形成して、これを触媒Aとした。
【0028】
上記と同様の担体基材及びスラリーを用い、コート量が担体基材1L当たり 130gとなるようにしたこと以外は同様にしてゼオライト層を形成し、同様に三元触媒層を形成して、これを触媒Bとした。
【0029】
さらに、上記と同様の担体基材及びスラリーを用い、コート量が担体基材1L当たり80gとなるようにしたこと以外は同様にしてゼオライト層を形成し、同様に三元触媒層を形成して、これを触媒Cとした。
【0030】
触媒A、触媒B及び触媒Cをそれぞれ3分割して、それぞれ1/3の長さの触媒a、触媒b及び触媒cとした。
【0031】
(実施例1)
図1に示すように、排ガス流の上流側から下流側にかけて、触媒c、触媒b、触媒aをこの順に間隔を開けずに並べたものを実施例1の触媒とした。
【0032】
この触媒では、ゼオライト層1の厚さが上流側の触媒cが最も薄く、次いで触媒c、触媒aの順に厚くなっている。したがってゼオライト層1の熱容量は、排ガス流の上流側が小さく下流側が大きくなっている。また三元触媒層2は、排ガス流れ方向に分布はなく均一となっている。
【0033】
(比較例1)
上記触媒Bを比較例1の触媒とした。
【0034】
(比較例2)
排ガス流の上流側から下流側にかけて、実施例1とは逆に、触媒a、触媒b、触媒cをこの順に間隔を開けずに並べたものを比較例2の触媒とした。
【0035】
<試験・評価>
V型8気筒、 4.0Lエンジンを搭載した車両の排気系に上記実施例及び比較例の触媒をそれぞれ装着し、空燃比A/F=15又は14で1Hzにて振動させながら入りガス温度 800℃にて 100時間保持する耐久試験を施した。
【0036】
次に直列4気筒、 2.2Lエンジンを搭載した車両のエンジン直下に三元触媒(スタートキャタリストSC)を搭載し、その下流のUF触媒として、上記耐久試験後の実施例及び比較例の触媒をそれぞれ搭載した。そしてコールドスタート(LA#4モード)時のHC吸着率とHC脱離率をそれぞれ測定し、結果を表1に示す。
【0037】
なおHC吸着率及びHC脱離率の算出方法はSCのみでの評価時の排出挙動との比較であり、HC吸着率はHCの吸着から脱離に転じる始動から40秒間の値を測定し、HC脱離率は浄化された分を差し引いて始動から40〜 120秒間の値を測定した。
【0038】
【表1】
【0039】
表1より、実施例1の触媒は比較例の触媒に比べて低温域におけるHC吸着率が高く、下流側におけるゼオライト層を厚くすることがきわめて有効であることが明らかである。
【0040】
また実施例1の触媒は、比較例の触媒に比べて低温域におけるHC脱離率が低い。これは、ゼオライト層の熱容量が小さい上流部で貴金属が早期に活性化され、上流部での着火による排ガス温度の上昇によって下流部でも貴金属が早期に活性化されたことによりHCの浄化率が向上し、その結果未浄化のHCの脱離が低減されたと考えられる。
【0041】
【発明の効果】
すなわち本発明の排ガス浄化用触媒によれば、触媒層に担持されている貴金属が活性化するまでの間に放出されるHC量が低減されるとともに、触媒層に担持されている貴金属が早期に活性化することで、低温域におけるHC浄化能がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の触媒の模式的な要部断面図である。
【符号の説明】
1:ゼオライト層 2:三元触媒層
Claims (1)
- 担体基材と、該担体基材の表面に形成された炭化水素吸着材層と、該炭化水素吸着材層の表面に形成された触媒層と、よりなる排ガス浄化用触媒において、
該炭化水素吸着材層の熱容量は排ガス流の上流側が小さく下流側が大きいことを特徴とする排ガス浄化用触媒。
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