JP3826372B2 - スロ−アウエイチップ方式ドリル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、工作物の穴あけ加工などに使用されるドリルに係り、詳記すればバリの発生を低減させたスローアウェイチップ方式ドリル及び該ドリルを使用する穴あけ加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
工作物の穴あけ加工には、ドリルが使用されている。このようなドリルとしては、図1に示すように、ボデ−1にねじれ溝2を切った刃先部に、超硬チップ3をろう付けしたドリルが使用されている。
【0003】
この従来のろう付けドリルは、チップ3の摩耗がある程度以上進むと、再研磨して使用している。この再研磨は、刃工具の管理を厳格に行わなければならなかったことと、数回再研磨すると、まだ相当長期間使用し得る高価なボデ−と共に廃棄していたことから、穴あけ加工がコスト高になる問題があった。
【0004】
一方、図2に示すように、ドリルのボデ−4先端に多角形のチップからなる内刃5と外刃6とを装着し、内刃と外刃との摩耗がある程度以上になると、内刃と外刃だけを交換して再使用するスロ−アウエイチップ方式のドリルが使用されている。
【0005】
このスロ−アウエイチップ方式のドリルは、内刃5と外刃6とが寿命になった場合は、内刃と外刃だけを交換するだけで、高価なボデ−4は交換することなく、相当長期間使用できるので、穴あけ加工の刃工具費を大幅に低減できる利点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記スロ−アウエイチップ方式のドリルは、図8〜図10に示すように、穴あけ加工すると、バリ7が発生し、このバリ取り作業に多大の労力を要する問題がある。このバリの発生はろう付けドリルでも同様である。
【0007】
この発明は、上記スロ−アウエイチップ方式のドリルの利点を維持しつつ、バリの発生を実質的に解消したスロ−アウエイチップ方式のドリルを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明者は鋭意研究の結果、多角形の外刃のコ−ナ−部に、丸味若しくは面取りを付することによって、バリを大幅に低減できることを見いだし、本発明に到達した。
【0009】
即ち本発明は、ドリル先端に、多角形の内刃と外刃とを装着したスローアウェイチップ方式ドリルにおいて、前記多角形の外刃のコーナーに、バリを低減させる丸味若しくは面取りを付し、該丸味の曲率半径若しくは面取りの長さを1.2mm〜3.0mm(但し、1.2mmを除く)としたことを特徴とする。
【0010】
本発明の効果の原因は、多角形の外刃のコ−ナ−に丸味若しくは面取りを付することによって、バリとなる部分がその形状から剛性が高くなるので、下方に張り出し難くなり、そのためドリルによってバリとなる部分が切削除去されるためと考えられる。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図2は、本発明の実施例を示すもので、ボデ−4の先端凹部には、四角形の外刃6と内刃5とが、螺子8をネジ込むことによって、着脱可能に固定されている。
【0012】
切削する穴に接する外刃6の先端外側のコ−ナ−9には、図4に示すような丸味10若しくは面取り11が付されている。
通常市販のスロ−アウエイチップ方式ドリルの刃先チップ(内刃及び外刃)のコ−ナ−には、チッピング(欠け)を防止する目的から、若干の丸味が付けられている。この従来の丸味は、曲率半径が0.2mm〜0.8mm位であったが、バリを低減する効果は全く有していない。
【0013】
本発明においては、図4に示すように、外刃6のコーナーの丸味10の曲率半径(R)及び面取りの長さ(l)を、1.2mm〜3.0mm(但し、1.2mmを除く)と大幅に増大させることによって、バリを著しく低減させるものである。曲率半径(R)の大きさ及び面取りの長さ(l)は、開口する穴径に応じて、上記範囲内で適当な大きさ、長さを選択すれば良い。
【0014】
刃先チップには、切削の時発生する切削くずを短くするために、図3に示すように、刃先近傍にV字形の溝(ブレーカー)15が、刃先と平行に形成されている。
【0015】
これに対して、図5に示す外刃6のコーナー部12に、図6に示すようなC面10を付した場合、ブレーカー15のコーナー部16では、図3に示すブレーカー15の機能が失われる。その結果、切削くずが長くなる。
【0016】
これを防ぐためには、丸み(R)若しくは面取りを付したC面10に対向するブレーカー15のコーナーにも、同様に丸み若しくは面取り状17の形状とし、ブレーカーの機能を損なわないようにする必要がある。
【0017】
そのための加工方法としては、次の2つの方法が考えられる。
この超硬刃先チップは、金型を用いてプレス成形した後焼結される。このプレス金型に、図7の面取り状17のような形状を施しておけば良い。
【0018】
他の方法としては、適当な形状をしたグラインダーを用いて、図7の面取り状17のような形状になるように研磨を行えば良い。
【0019】
本発明に使用する刃先チップ5,6の形状は、正方形、長方形及び三角形等の多角形であれば良い。刃先チップの形状及び装着自体は、従来のスロ−アウエイチップ方式ドリルと同様にすれば良い。
【0020】
外刃6に付する丸味若しくは面取りは、図2及び図3に示すように、開口する穴の内周に接する先端外側のコ−ナ−9に付すれば良い。しかしながら、コ−ナ−9が摩耗した場合に、回転させて他のコ−ナ−12も使用できるように、全てのコ−ナ−に丸味若しくは面取りを付するのが好ましい。
多角形の外刃6の上面と下面とが同じ形状であり、裏返しても使用できる場合は、表裏の全てのコ−ナ−に丸味若しくは面取りを付するのが良い。
【0021】
上記実施例では、ドリルのボデ−4に螺旋状の溝が形成されているが、これはV字形の直線状の溝であっても勿論良い。内刃と外刃とを有するスロ−アウエイチップ方式のドリルであるならどのようなものでも良い。
【0022】
次に、本発明のドリルを使用するとバリが低減する原理を図面に基づいて説明する。
図8〜図10は、従来のスロ−アウエイチップ方式のドリルを使用して、工作物13に穴あけする状態を示す断面図である。
図8に示すように、ボデ−4を回転させて、外刃6で穴を開口していくと、切削くずは持ち上げられ、穴の底面14が薄くなると、下のほうに張り出し、図9に示すように底面が割れて突き出し、図10に示すように、穴あけ終了時には、大きなバリ7が発生する。
【0023】
図11〜図13は、本発明のスロ−アウエイチップ方式のドリルを使用して、工作物13に穴あけする状態を示す断面図であり、外刃6のコ−ナ−には、面取り11が施されている。
図11に示すように、面取り部11が穴の外周端部に当たり、この部分がその形状から折れ曲がり難くなり、剛性が高くなるから、穴の底面14が下のほうに突き出し難くなり、ドリルの外刃6により切削除去され、図13に示すように、穴あけ終了時には、バリが発生しないか、非常に小さくなる。
【0024】
従来のスロ−アウエイチップ方式のドリルを使用した場合は、穴バリの大きさは、1mm〜1.5mmであるが、本発明のドリルを使用すると、0.2mm〜0.04mmと極めて小さくなる。
【0025】
本発明のドリルを使用すると、バリ取り作業が不要若しくは大幅に低減する。即ち、本発明のドリルを使用すると、バリが大幅に低減するので、バリの大きさについてのユ−ザ−のスペック値よりも小さくなる場合があり、この場合はバリ取り作業を廃止することができる。
【0026】
また、バリが小さくなるので、ある製品を完成させるまでの種々の工程のうち、例えばショット工程などがあれば、このショット工程によって小さなバリは除去できるので、バリ取り工程を省略することができる。
【0025】
次に、コーナー部の面取り(R)の大きさを変えて穴あけ加工を行って、バリ高さを測定した実施例を示す。
【0027】
被削材として、鉄鋼材で比較的軟質のSS400とSM490を使用した。
直径25.0mmの本発明のドリルを使用し、回転数1500rpm、送り速度150mm/分、切削速度118m/分の切削条件で実施した。
【0028】
上記条件で、刃先コーナーのR(曲率半径)の値を変えて、バリ高さを測定した。結果を図8に示す。
尚、刃先チップのコーナーRが0.8mmの通常の市販品ドリルでは、バリ高さは、0.5mmから1.4mmとなる。
【0029】
図8から明らかなように、バリ高さはRの値の増大と共に減少し、Rが1.2mmではかなりの減少が認められ、Rが1.6mmでは0.2mm位に、そしてRが2.4mmでは殆どゼロになる。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、従来のスロ−アウエイチップ方式のドリルでは解決できなかったバリの発生を大幅に低減させることができるので、バリ取り作業が不要若しくは大幅に低減でき、作業能率が飛躍的に向上する。
【0031】
しかも、スロ−アウエイチップ方式であるので、ろう付け方式のドリルと比べて、ボデーを再使用することができるほか、再研磨が不要になると共に刃工具管理に要していたコストが軽減されるから、穴あけ加工のコストを著しく低減させることができる。
【0032】
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のろう付けドリルを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例を示す側面図である。
【図3】本発明の外刃を示す斜視図である。
【図4】本発明の外刃のコ−ナ−部の丸味若しくは面取りを示す図である。
【図5】従来の刃先チップの正面図である。
【図6】コーナーにC面を形成した刃先チップの正面図である。
【図7】ブレーカーにC面と同様に面取りした形状に形成した刃先チップの正面図である。
【図8】従来のスロ−アウエイ方式のドリルで穴あけする状態を示す断面図である。
【図9】従来のスロ−アウエイ方式のドリルで穴あけする状態を示す断面図である。
【図10】従来のスロ−アウエイ方式のドリルで穴あけする状態を示す断面図である。
【図11】本発明のスロ−アウエイ方式のドリルで穴あけする状態を示す断面図である。
【図12】本発明のスロ−アウエイ方式のドリルで穴あけする状態を示す断面図である。
【図13】本発明のスロ−アウエイ方式のドリルで穴あけする状態を示す断面図である。
【図14】刃先コーナーRの値とバリ高さとの関係を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
4 ドリルのボデ−
5 内刃
6 外刃
9 穴の内周に接する外刃の先端外周のコ−ナ−
10 コ−ナ−の丸味
11 コ−ナ−の面取り
Claims (6)
- ドリル先端に、多角形の内刃と外刃とを装着したスローアウェイチップ方式ドリルにおいて、前記多角形の外刃のコーナーに、バリを低減させる丸味若しくは面取りを付し、該丸味の曲率半径若しくは面取りの長さを1.2mm〜3.0mm(但し、1.2mmを除く)としたことを特徴とするバリを低減するスローアウェイチップ方式ドリル。
- 前記多角形の外刃の先端外側のコーナーに、前記丸味若しくは面取りを付してなる請求項1に記載のドリル。
- 前記バリの大きさを、0.2mm〜0.04mmに低減させる請求項1または2に記載のドリル。
- 前記多角形の外刃の内側の刃先部近傍に、切削くずを短くする断面V字状の多角形の溝を形成し、前記丸味若しくは前記面取りを付した位置に対向する前記多角形の溝のコーナーを丸み若しくは面取りした形状に形成し、切削くずを短くする機能を損なわないようにした請求項1〜3のいずれかに記載のドリル。
- 多角形の外刃のコーナーに、バリを低減させる丸味若しくは面取りを付し、該丸味の曲率半径若しくは面取りの長さを1.2mm〜3.0mm(但し、1.2mmを除く)としたことを特徴とするバリを低減するスローアウェイチップ方式ドリル用外刃。
- ドリル先端に多角形の内刃と外刃とを装着し、前記多角形の外刃のコーナーに、バリを低減させる丸味若しくは面取りを付し、該丸味の曲率半径若しくは面取りの長さを1.2mm〜3.0mm(但し、1.2mmを除く)としたスローアウェイチップ方式ドリルを使用して、工作物に穴あけ加工することを特徴とするバリの大きさを低減させる穴あけ加工方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35808797A JP3826372B2 (ja) | 1997-01-10 | 1997-12-25 | スロ−アウエイチップ方式ドリル |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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JPH10249622A JPH10249622A (ja) | 1998-09-22 |
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Family Applications (1)
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JP35808797A Expired - Lifetime JP3826372B2 (ja) | 1997-01-10 | 1997-12-25 | スロ−アウエイチップ方式ドリル |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3826372B2 (ja) |
-
1997
- 1997-12-25 JP JP35808797A patent/JP3826372B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH10249622A (ja) | 1998-09-22 |
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