JP3821883B2 - 非晶質酸化スズゾルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非晶質酸化スズゾルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に酸化スズは半導体であり、単体では高い導電性を示さないが、異原子をドープすることにより高い導電性を得ることが知られている。また、透明性、物理的化学的安定性に優れた材料であり、電気電子的用途に期待される材料である。
【0003】
このような酸化スズは、アンチモンやインジウムとの複合による透明導電性酸化皮膜が有名であり多くの用途を有するが、高純度の酸化スズもしくは非晶質酸化スズについては導電性が低いためにあまり検討されていない。
【0004】
これらの材料に関しては、科学技術庁刊行の無機材質研究所研究報告書第35号「酸化スズに関する研究」に述べられているように、ある特定の金属化合物のドープもしくは複合化以外では、高い導電性を示さない。純度が高くなると半導体領域になり、その導電性は106Ωcm以上まで達する。従って、透明導電材料の用途へ用いるためには、これまで導電性を高める多くの努力が成されてきた。
【0005】
また、透明導電材料には一般に化学蒸着法、真空蒸着法、反応性イオンプレーティング法、スパッタ法、イオンビームスパッタ法等の膜形成法により基板に被覆され用いられる。
【0006】
しかしこれらの方法は、いずれも装置が高価・複雑・大型であるだけでなく、膜形成速度が小さく、且つ大面積の膜を得ることができないという欠点をも有している。さらに複雑形状の膜を形成する場合、不均一となり易く、利用上の制約が多かった。
【0007】
これらに対し、液状の原料を基板にディップして塗布する方法、或いはスプレーして塗布する方法、エアードクター、バーコーター等を用いて塗布する方法等は、比較的容易に大面積の膜が得られると共に、複雑形状の部位にも比較的容易に適用でき、工業的に有望な方法である。酸化スズ系の材料においても、このような塗布方法は幅広く検討されている。
【0008】
従来より検討されている酸化スズ系材料は、主としてスズ及びアンチモンを共にイオンとして含有する有機或いは無機化合物の塩溶液である。従って、有機化合物の塩溶液の使用時には、有機物の残存がないように注意深く熱分解を行わなければならず、スズ及びアンチモンが有機塩として気散したり、溶液の極性が低くガラス等の基板とのなじみがなく均一な膜を得ることができなかった。
【0009】
また、有機塩の液安定性を保つために安定化材を多く必要とする結果、薄い膜厚のものしか得られず、且つ有機物含量が多いために乾燥後に多層ディップを行っても焼成時に剥離する等の問題があった。
【0010】
さらに熱分解時に生成する酸化スズ・アンチモンは一般に粒子径が粗く、特に均一微細性が要求される分野への適用については問題があった。かかる問題を解決する技術として、特開昭62−223019号及び同62−278705号には、製造方法の工夫により製造された結晶質酸化スズゾルを用いる方法が開示されている。
【0011】
しかしこれらの技術では、ゾル溶液が着色していたり、結晶質であるためにゾルを塗布した時の表面の平滑性が損なわれたり、また一度焼成しなければ高い導電性を発現しない等の問題点を有していた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の課題は、着色が無く、導電性が良好である透明導電材料の用途に適した非晶質酸化スズゾルの製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、下記構成を有する。
1.下記に示す非晶質酸化スズゾルの製造方法であって、加水分解性スズ化合物を加水分解処理し洗浄後、得られたハロゲン濃度が0.001%以上3%以下の原料をアンモニア水に溶解して水の沸点以下で加熱処理を行うことを特徴とする非晶質酸化スズゾルの製造方法。
[非晶質酸化スズゾル]
原子の配列に長距離秩序がなく、結晶性酸化スズの融点(1127℃)以下に物質の変化を示す温度領域が存在する非晶質酸化スズゾルであって、導電性が105Ωcm未満の非晶質酸化スズ粒子を含むことを特徴とする非晶質酸化スズゾル。
【0014】
2.下記に示す非晶質酸化スズゾルの製造方法であって、加水分解性スズ化合物とフッ素を含む化合物とを用いて加水分解処理し洗浄後、得られたハロゲン濃度が0.001%以上3%以下の原料をアンモニア水に溶解して水の沸点以下で加熱処理を行うことを特徴とする非晶質酸化スズゾルの製造方法。
[非晶質酸化スズゾル]
原子の配列に長距離秩序がなく、結晶性酸化スズの融点(1127℃)以下に物質の変化を示す温度領域が存在する非晶質酸化スズゾルであって、導電性が105Ωcm未満の非晶質酸化スズ粒子を含むことを特徴とする非晶質酸化スズゾル。
【0015】
3.非晶質酸化スズゾルが、加熱処理により200℃から500℃の範囲で重量減少を0.1wt%以上30wt%未満生じる酸化スズを含むことを特徴とする前記1又は2に記載の非晶質酸化スズゾルの製造方法。
【0016】
4.非晶質酸化スズゾルが、少なくとも0.001wt%以上の陰イオンを含む酸化スズを含むことを特徴とする前記1又は2に記載の非晶質酸化スズゾルの製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細について説明する。
先ず、本発明において非晶質とは、結晶質とは異なる物質を意味する。結晶質とは、電気・電子工学大系72巻、結晶の評価(伊藤 次、犬塚直夫、コロナ社、1982年)第4頁に記載されているように、原子の配列に長距離秩序があり、その物質に固相の融点があることが特徴である。例えば、高純度で無色透明な結晶性の酸化スズであれば、正方晶系ルチル型構造であり、屈折率1.9968、電気伝導性は室温で106Ωcm以上の高抵抗を示すことが知られている。また融点は1127℃であり、結晶性酸化スズであればこの温度まで熱的に安定である。故に、一般に非晶質酸化スズとは、以上の性質を示さない物質であり、
▲1▼原子の配列に長距離秩序がない、
▲2▼結晶性酸化スズの融点以下に、物質の変化を示す温度領域が存在する、
酸化スズといえる。
【0019】
▲1▼については、X線回折によりその構造を同定することが可能であり、新版カリティX線回折要論(松村源太郎訳、アグネ社、1977年)に記載された結晶子サイズの測定から長距離秩序のおおよその値を知ることができる。例えば、酸化スズの(110)面の面間隔はおおよそ0.33nmであり、結晶性酸化スズならば数10個以上の繰り返し単位がなければならず、結晶子測定を行えば、10数nmの値が観測される。従って、結晶子測定において10nm未満であれば、もはや長距離秩序があるとはいえず、非晶質と思われる。5nm未満であれば、もはや繰り返し単位を仮定すれば10個以下となり結晶ではない。
【0020】
▲2▼については、固体の熱分析を行えば容易に明らかとなり、測定条件の影響、試料サイズの影響を考慮しても1000℃未満で熱的な変化が生じるならば結晶とは言い難い。熱的な変化で容易に観測できるのは熱重量分析であり、200℃での重量を測定開始重量として重量減少を融点よりはるかに低い500℃までの温度領域で0.1wt%以上生じるならば単結晶酸化スズではない。
以上のように上記▲1▼もしくは▲2▼を満たす酸化スズの場合には明らかに非晶質である。
【0021】
次に導電性については、酸化スズ粒子の導電性を意味し、その測定方法については、正確に導電性が評価できる限りいかなる方法でもよい。以下に測定例を示すが、本発明に制限を加えるものではない。
【0022】
石英板に酸化スズ薄膜を形成し、200℃空気中で処理を行う。室温25℃で薄膜の膜厚を測定後、四端子法にて抵抗を測定し、この抵抗値と膜厚から体積固有抵抗を求める。このような方法で求めた体積固有抵抗が10−2Ωcm以上105Ωcm未満を示す酸化スズ粒子を含むゾルが本発明の酸化スズゾルである。
【0023】
加熱処理による重量減少については、一般に用いられる熱重量分析で測定した値を意味する。昇温速度は30℃/分以下が好ましく、さらに好ましくは10℃/分以下で測定し、200℃から500℃の範囲で重量減少を0.1wt%以上30wt%未満生じる酸化スズを含むゾルである。
【0024】
本発明のゾルを200℃まで、空気中もしくは、N2やArなどの非酸化性雰囲気で加熱すると、非晶質酸化スズとなる。結晶性酸化スズであれば、続いて行う200℃以上の処理で熱的な変化を伴わない。非晶質酸化スズであれば0.1wt%以上の重量減少を示す。この重量減少量と導電性の関係は、明らかではないが、本発明者らは重量減少を示す酸化スズ粒子が導電性を有することを発見し、本発明に至った。
【0025】
不純物イオンについては、アンモニウムイオン、水素イオンなどの陽イオンや次に述べる陰イオンなど存在していると良好な結果を示す。
【0026】
陰イオンについては、特にその存在を規定しないが、有機イオン、無機イオンなんでも存在していた方が高い導電性を示す。特に好ましいのは、カルボン酸基もしくはスルホン酸基、アミノ基、水酸基を含むイオン、炭酸イオンとハロゲンイオンである。これらのイオンは、非晶質酸化スズ粒子の内部に存在していても、外部もしくは内部と外部の両者に存在していてもいずれでもよい。但し、存在する量については、表面等の外部については、粒子に対して30wt%以上存在するとゾルの安定性に問題が生じるので好ましくなく、30wt%未満が好ましく、より好ましくは10wt%未満、特に好ましくは6wt%未満がゾルにした時の安定性がよいことから選ばれる。粒子内部に存在する陰イオンについては、ゾルの安定性に影響がないのでその量を規定しないが、好ましくは0.001wt%以上6wt%未満である。
【0027】
これらの酸化スズゾルの製造方法としては、
請求項1に示す方法、即ち、加水分解性スズ化合物を加水分解処理し洗浄後、得られたハロゲン濃度が0.001%以上3%以下の原料をアンモニア水に溶解して水の沸点以下で加熱処理を行う方法、
請求項2に示す方法、即ち、加水分解性スズ化合物とフッ素を含む化合物とを用いて加水分解処理し洗浄後、得られたハロゲン濃度が0.001%以上3%以下の原料をアンモニア水に溶解して水の沸点以下で加熱処理を行う方法、
のいずれの方法でもよい。
【0028】
本発明の製造方法において、全体の製造工程でSnを含む化合物にかかる温度条件が重要であり、高温度の熱処理を伴う方法は、一次粒子の成長や、結晶性が高くなる現象を生じるので好ましくなく、熱処理を行う必要がある時には、450℃以下、特に300℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下とする。しかし、25℃から150℃までの加温は、好適に選ばれる手段である。
【0029】
また、製造工程は、加水分解性スズ化合物を加水分解処理する工程と、得られた沈殿物の洗浄工程を経てゾル化する工程の3工程からなる。各工程がさらに細分化された工程をとることに本発明は制限を加えない。例えば、加水分解工程は、原料を計量する工程と投入する工程、加水分解するために加えられる成分との混合工程、加熱工程等で構成されるが、どのような構成をとっても加水分解工程ならばこれを制限しない。また洗浄工程では、固液分離工程を伴うが、その方法もデカンテーション、限外濾過等、適当な濾過器を用いる方法等、いかなる方法でもよい。
ゾル化も同様であり、粒子を安定に分散するために加えられる添加剤、溶媒等は制限されないが、アンモニア水によるゾルの安定化が経済性の点で好ましい。
【0030】
請求項1に示す製造方法に用いられる化合物について以下に述べる。
加水分解性スズ化合物とは、K2SnO3・3H2Oのようなオキソ陰イオンを含む化合物、SnCl4、SnCl4・5H2Oのような水溶性ハロゲン化物、R′2SnR2、R3SnX、R2SnX2[R′は脂肪族もしくは芳香族有機化合物、、Rは脂肪族もしくは芳香族有機化合物、Xはハロゲンを示す。]の構造を有する化合物、例えば(CH3)3SnCl・(ピリジン)、(C4H9)2Sn(O2CC2H5)2等の有機金属化合物、Sn(SO4)2・2H2O等のオキソ塩を挙げることができる。
【0031】
加水分解性スズ化合物の溶媒中における分解反応から製造する方法においては、プロセスの途中で溶媒に可溶なSn以外の元素を含む化合物の添加も可能である。例えば、溶媒に可溶なフッ素含有化合物の添加や、炭酸塩の添加である。溶媒に可溶なフッ素含有化合物とは、イオン性フッ化物もしくは共有性フッ化物のいずれでもよく、例えば、HFもしくはKHF2、SbF3、MoF6等の金属フッ化物、NH4MnF3、NH4BiF4等のフルオロ錯陰イオンを生成する化合物、BrF3、SF4、SF6等の無機分子性フッ化物、CF3I、CF3OOH、P(CF3)3等の有機フッ素化合物を挙げることができるが、溶媒が水の場合にはCaF2と硫酸との組み合わせのようにフッ素含有化合物と不揮発性酸との組み合わせも用いることができる。
【0032】
以上の製造方法において、洗浄プロセスを途中に用いてもよい。洗浄プロセスを用いることにより、ゾルに含まれるイオンの量を制御することが可能である。洗浄方法は、特に限定されないが、例えば、デカンテーションによる方法、限外濾過膜による方法などが挙げられる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
塩化第二スズ45gを炭酸ガスを含んでいる30℃の水2000mlに溶解し均一溶液を得た。次いでこれを2時間煮沸し共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて沈殿を10回水洗する。蒸留水1000ml添加し、全量を2000mlとする。さらに30%アンモニア水を40ml加え、水浴中で100℃に加温し、無色透明なゾル溶液を得た。
このゾル溶液へ石英板をディップして乾燥する。この操作を100回繰り返し石英板上に酸化スズ薄膜を形成した。この石英板を空気中150℃2時間処理した試料について四端子法にて体積固有抵抗を測定したところ、7×104Ωcmであった。
ゾル溶液をスプレードライ装置を用いて乾燥しゾル溶液から粉末を取り出した。この粉末を用いて粉末X線回折により(100)面の結晶子測定を行ったところ、2.1nmと求められ非晶質粉末であることを確認した。また、この粉末の熱重量分析を10℃/分の昇温速度で行ったところ、200℃まで緩やかに重量減少を1.0wt%示した後、200℃から500℃までに2.5wt%の重量減少を示した。
【0034】
比較例1
塩化第二スズ水和物65gを蒸留水2000mlに100℃で溶解し均一溶液を得た。次いでこれを煮沸し共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて沈殿を40回水洗する。沈殿を洗浄した蒸留水中に硝酸銀を滴下し、塩素イオンの反応が無いことを確認後、蒸留水1000ml添加し全量を2000mlとする。さらに30%アンモニア水を40ml加え、水浴中で100℃に加温し、コロイド状ゲル分散液を得た。できたゾル溶液は、無色透明であった。
実施例1と同様の方法により石英板上に薄膜を形成した後、四端子法にて体積固有抵抗を測定したところ、2.1×105Ωcmであった。
また、結晶子測定を行ったところ、3.1nmと測定された。
【0035】
比較例2
塩化第二スズ水和物65gを30℃の蒸留水2000mlに溶解し均一溶液を得た。次いでこれを煮沸し共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて沈殿を40回水洗する。水洗後800℃の筒状の電気炉の中へスプレーし粉末を取り出した。この粉末を2000mlの水中に分散し、30%アンモニア水を40ml加え、水浴中で100℃に加温し、コロイド状ゲル分散液を得た。できたゾル溶液はやや白濁していた。
実施例1と同様の方法により、石英板上に薄膜を形成した後、四端子法にて体積固有抵抗を測定したところ、7.1×106Ωcmであった。
また、結晶子測定を行ったところ、30.5nmと測定された。
【0036】
以上、実施例1と比較例1及び比較例2とから、僅かな製造条件の違いで得られる酸化スズの体積固有抵抗が異なることが明らかである。
【0037】
実施例2
塩化第二スズ45gを50℃の蒸留水2000mlに溶解し均一溶液を得た。次いでこれを2時間煮沸し共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて沈殿を8回水洗する。蒸留水1000ml添加し全量を2000mlとする。さらに30%アンモニア水を40ml加え、水浴中で100℃に加温し、無色透明なゾル溶液を得た。
イオンクロマトグラフィーを用いて、ゾル溶液に含まれる塩素イオン濃度を求めたところ、0.008wt%塩素イオンが含まれていた。
実施例1と同様に石英板上にこのゾル溶液を用いて薄膜を形成し、熱処理後の体積固有抵抗を求めたところ、9.5×104Ωcmであった。
また、実施例1と同様に結晶子測定を行ったところ、2.7nmであった。
【0038】
実施例3
塩化第二スズ45gを40℃の蒸留水2000mlに溶解し均一溶液を得た。次いでこれを2時間煮沸し共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて沈殿を7回水洗する。蒸留水1000ml添加し全量を2000mlとする。さらに30%アンモニア水を40ml加え、水浴中で100℃に加温し、無色透明なゾル溶液を得た。
イオンクロマトグラフィーを用いて、ゾル溶液に含まれる塩素イオン濃度を求めたところ、0.016wt%塩素イオンが含まれていた。
実施例1と同様に石英板上にこのゾル溶液を用いて薄膜を形成し、熱処理後の体積固有抵抗を求めたところ、9.5×104Ωcmであった。
また、実施例1と同様に結晶子測定を行ったところ、2.2nmであった。
【0039】
実施例4
塩化第二スズ45gとK2TiF6を5gとを30℃の蒸留水2000mlに溶解し均一溶液を得た。次いでこれを2時間煮沸し共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて沈殿を8回水洗する。蒸留水1000ml添加し全量を2000mlとする。さらに30%アンモニア水を40ml加え、水浴中で100℃に加温し、無色透明なゾル溶液を得た。
イオンクロマトグラフィーを用いて、ゾル溶液に含まれる塩素イオン濃度を求めたところ、0.008wt%塩素イオンが含まれていた。
実施例1と同様に石英板上にこのゾル溶液を用いて薄膜を形成し、熱処理後の体積固有抵抗を求めたところ、1.5×104Ωcmであった。
また、実施例1と同様に結晶子測定を行ったところ、2.4nmであった。
【0040】
実施例5
塩化第二スズ45gとKF5gとを30℃の蒸留水2000mlに溶解し均一溶液を得た。次いでこれを2時間煮沸し共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて沈殿を8回水洗する。蒸留水1000ml添加し全量を2000mlとする。さらに30%アンモニア水を40ml加え、水浴中で100℃に加温し、無色透明なゾル溶液を得た。
イオンクロマトグラフィーを用いて、ゾル溶液に含まれる塩素イオン濃度を求めたところ、0.008wt%塩素イオンが含まれていた。
実施例1と同様に石英板上にこのゾル溶液を用いて薄膜を形成し、熱処理後の体積固有抵抗を求めたところ、6.5×103Ωcmであった。
また、実施例1と同様に結晶子測定を行ったところ、2.1nmであった。
【0041】
比較例3
塩化第二スズ水和物65gと三塩化アンチモン1.0gを30℃の水/エタノール混合溶液2000mlに溶解し均一溶液を得た。次いでこれを2時間煮沸し共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて沈殿を40回水洗する。沈殿を洗浄した蒸留水中に硝酸銀を滴下し、塩素イオンの反応が無いことを確認後、蒸留水1000ml添加し全量を2000mlとする。さらに30%アンモニア水を40ml加え、水浴中で100℃に加温し、コロイド状ゲル分散液を得た。やや赤みを帯びたゾル溶液が得られた。
【0042】
以上、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5と比較例3との比較より、本発明は着色の無い、導電性の良好な非晶質酸化スズゾルを製造することが可能である。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、着色が無く、導電性が良好である透明導電材料の用途に適した非晶質酸化スズゾルの製造方法を提供することができる。
Claims (4)
- 下記に示す非晶質酸化スズゾルの製造方法であって、加水分解性スズ化合物を加水分解処理し洗浄後、得られたハロゲン濃度が0.001%以上3%以下の原料をアンモニア水に溶解して水の沸点以下で加熱処理を行うことを特徴とする非晶質酸化スズゾルの製造方法。
[非晶質酸化スズゾル]
原子の配列に長距離秩序がなく、結晶性酸化スズの融点(1127℃)以下に物質の変化を示す温度領域が存在する非晶質酸化スズゾルであって、導電性が105Ωcm未満の非晶質酸化スズ粒子を含むことを特徴とする非晶質酸化スズゾル。 - 下記に示す非晶質酸化スズゾルの製造方法であって、加水分解性スズ化合物とフッ素を含む化合物とを用いて加水分解処理し洗浄後、得られたハロゲン濃度が0.001%以上3%以下の原料をアンモニア水に溶解して水の沸点以下で加熱処理を行うことを特徴とする非晶質酸化スズゾルの製造方法。
[非晶質酸化スズゾル]
原子の配列に長距離秩序がなく、結晶性酸化スズの融点(1127℃)以下に物質の変化を示す温度領域が存在する非晶質酸化スズゾルであって、導電性が105Ωcm未満の非晶質酸化スズ粒子を含むことを特徴とする非晶質酸化スズゾル。 - 非晶質酸化スズゾルが、加熱処理により200℃から500℃の範囲で重量減少を0.1wt%以上30wt%未満生じる酸化スズを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の非晶質酸化スズゾルの製造方法。
- 非晶質酸化スズゾルが、少なくとも0.001wt%以上の陰イオンを含む酸化スズを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の非晶質酸化スズゾルの製造方法。
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