JP3806662B2 - ドラム式洗濯機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドラム式洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ドラム式洗濯機では、ドラムを内装した外槽内に洗剤水を貯留した状態でドラムを回転させ、そのドラム内に収容した洗濯物を掻き上げつつ水面にたたきつけるようにして洗いを行う。そのため、いわゆる渦巻き式の洗濯機よりも、少ない水量で洗濯を行うことができるとともに、洗濯物の布傷みが少ないといった特長を有する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近、環境への配慮や洗濯後の衣類に残留する洗剤成分の人体への影響を考慮して、洗濯用の中性洗剤の使用量を減らしたり、中性洗剤の代わりに石けんを使用したりする動きが広まっている。こうした状況下で、本出願人は、特開2001-300190号公報などにおいて洗いやすすぎに電解水を利用した洗濯機を提案し、商品化を行っている。これによれば、中性洗剤の使用量を大幅に減らしたり、汚れの種類によっては洗剤を用いることなく洗いが行えるという大きな利点がある。
【0004】
こうした問題はドラム式洗濯機でも共通するものであるから、上記のような電解水を用いた洗いやすすぎをドラム式洗濯機に適用しようとするのは自然な流れである。しかしながら、渦巻き式洗濯機では、外槽内に多量に貯留した水の中に殆ど完全に洗濯物が浸漬するような状態で水の撹拌が行われるのに対し、ドラム式洗濯機では、一般に、ドラム内に収容された洗濯物のかなりの部分が水面上に露出した状態で洗濯物自体が大きく撹拌される、というように、両者の洗い方式、すすぎ方式には大きな相違がある。したがって、従来、渦巻き式洗濯機で使用されていた上記技術をそのままドラム式洗濯機に適用しようとしても、必ずしも充分な洗い性能やすすぎ性能を発揮することができない。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みて成されたものであり、その第1の目的は、ドラム式洗濯機で洗いやすすぎに電解水を利用する場合に、その特性を活かした高い洗い性能、すすぎ性能を発揮させることができるドラム式洗濯機を提供することである。また第2の目的は、消費電力を節約しつつ、高い洗い性能を発揮させることができるドラム式洗濯機を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段、及び効果】
上記第1の目的を達成するために成された請求項1に係る発明は、外槽内にドラムが回転自在に配設され、該外槽内に水を貯留した状態で前記ドラムを回転させることにより該ドラム内に収容された洗濯物を洗濯するドラム式洗濯機において、
a) 前記ドラムを回転駆動するモータと、
b)洗濯に使用する水を電気分解して電解水を生成する電解水生成手段と、
c)前記電解水を用いた洗濯を行う第1の運転コースと、該電解水でない通常の水を用い洗剤を使用した洗濯を行う第2の運転コースとを少なくとも選択可能に有する設定手段と、
d) 洗い運転時に、所定時間モータをオンした後、所定時間該モータをオフするオン・オフの組み合わせにより前記モータを駆動する手段であって、第1の運転コースが設定されて前記電解水を用いた洗い運転を行う場合に、第2の運転コースが設定されて前記通常の水を用い洗剤を使用した洗い運転を行う場合よりも、オンの時間を長く設定する運転制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項1に係るドラム式洗濯機において、上記電解水生成手段として例えば反対極性の電極間にイオン交換膜等の隔膜を設けない構成が用いられる場合には、該電解水生成手段により水が電気分解されると、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、塩素ガス等の含塩素物質や活性酸素種を含む電解水が生成される。こうした含塩素物質や活性酸素種が洗濯物に接触すると、酸化還元反応によって洗濯物に付着している汚れ成分(有機物)を分解・変性させることで洗浄を行うとともに滅菌する。
電解水を用いた第1の運転コースは洗剤を使用しない(又は使用する場合でもごく少量のみ使用する)ことを前提としている。モータがオンされてドラムが回転している期間には、たたき洗いや水が洗濯物の繊維の隙間を通過することによる洗い作用が得られるから、ドラムの回転が停止している期間よりは格段に高い洗浄能力が発揮される。洗剤を使用しない(又はごく少量のみの使用)場合には、ドラムの回転を長くして外槽内の水の撹拌が長く続いても泡が過剰に発生するおそれがなく、オン時間を長く設定することにより高い洗浄性能を得ることができる。一方、洗剤を使用する第2の運転コースでは、モータのオン時間を相対的に短くして水の撹拌時間を短くすることによって、外槽内で過剰な泡が発生することがなく、上述したような過剰な泡による不具合を回避することができる。
【0008】
なお、上記電解水生成手段として例えば反対極性の電極間に隔膜が設けられた構成では、該電解水生成手段により水が電気分解されると、上記のような各種物質が発生するほかに、隔膜を隔てて一方の側(陽極側)に水素イオンなどを含む酸性の電解水が、他方の側(陰極側)に水酸イオンなどを含むアルカリ性の電解水が生成される。特にアルカリ性の電解水はそれ自体が洗浄力を有する。
【0010】
また上記第1及び第2の目的を達成するために成された請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記運転制御手段は、前記第1の運転コースにおいて前記電解水を用いて洗い運転を行う際に、ドラムの回転に伴って洗濯物が回転途中まで持ち上げられた後に落下するような回転速度による第1の洗いモードと、洗濯物が遠心力によりドラムの内周壁に張り付いた状態で回転するような回転速度による第2の洗いモードとを組み合わせるように前記モータを制御することを特徴としている。
【0011】
上記請求項2に係るドラム式洗濯機では、運転制御手段により第1の洗いモードでモータが制御されるとき、ドラムの回転に伴って洗濯物が回転途中まで持ち上げられた後に落下して水面にたたきつけられ、いわゆるたたき洗いの作用を生じる。一方、運転制御手段により第2の洗いモードでモータが制御されるとき、洗濯物は遠心力によりドラムの内周壁に張り付いた状態で回転するから、主として洗濯物の繊維の中を強い水勢で水が通過することによる洗いの作用を生じる。こうした相異なる2つの洗いの相乗作用によって、高い洗浄性能を得ることができる。また、第1の洗いモードでは、水を充分に吸収して重くなった洗濯物を重力に逆らって回転上方に持ち上げる必要があるためモータに大きな負荷が掛かるのに対し、第2の洗いモードでは、洗濯物が吸水している水の量が相対的に少なく洗濯物の重量が小さいのに加え、慣性力が大きくなるため重力に抗して洗濯物を持ち上げるための力の成分が小さくて済み、モータの負荷は相対的に軽くなる。そのため、第2の洗いモードでは第1の洗いモードに比べて、モータの消費電力が小さく巻線の温度上昇も低い。したがって、第1の洗いモードと第2の洗いモードとを組み合わせることにより、総合的に消費電力を減らすことができ、モータの巻線の過熱も防止することができる。
【0012】
なお、電解水を用いない通常の水による洗いの場合にも、上記と同様の洗いを行うことは可能であるが、低発泡性洗剤であっても洗剤を使用して第2の洗いモードを実行すると外槽内に異常に泡が発生する可能性がきわめて高く、泡のクッション作用によりたたき洗いの洗浄性能が大きく減じられるほか、過剰な泡による水の漏出等のおそれもある。
【0013】
こうしたことから、上記請求項2に係るドラム式洗濯機においては、請求項3に記載のように、前記運転制御手段は、第1の運転コースが設定されて前記電解水を用いた洗い運転を行う場合に、前記第1及び第2の洗いモードを組み合わせる洗い運転を行い、第2の運転コースが設定されて前記通常の水を用い洗剤を使用した洗い運転を行う場合に、前記第1の洗いモードのみによる洗い運転を行うべく前記モータを制御する構成とすることができる。
【0014】
また、上記請求項2に係るドラム式洗濯機では、請求項4に記載のように、第1の洗いモードによるドラムの回転方向と、それに引き続く第2の洗いモードによるドラムの回転方向とは逆方向とすることが好ましい。
【0015】
すなわち、第1の洗いモードでは、ドラムの回転により洗濯物がドラム内で撹拌され位置が入れ替わるため布絡みが生じ易いが、その後、第2の洗いモードに移行して逆方向にドラムが回転されると、ドラムの回転速度の上昇に従って絡み合っていた洗濯物が順次ばらけるようにしながらドラムの内周壁面に張り付く。それによって、洗濯物同士の絡みがほぐれる。したがって、布絡みを軽減して、洗濯或いは乾燥終了後に洗濯物を取り出し易くすることができるとともに、しわの発生も軽減することができる。
【0016】
また、上記請求項2に係るドラム洗濯機においては、第1の洗いモードと第2の洗いモードとでは上述したように主たる洗い作用が異なるから、その両者の時間割当ての比率によって総合的な洗浄性能が変化する。好ましくは、請求項5に記載のように、第1の洗いモードと第2の洗いモードとの時間割当ての比率を略3:1とすると、最も高い洗浄性能と布絡みの軽減とを達成することができる。
【0017】
また上記請求項1に係るドラム式洗濯機においては、請求項6に記載のように、前記第1の運転コースにおける洗い運転では、電気分解を行わず電解水を用いない状態で前記ドラムを回転駆動して洗濯物に吸水させた後、電気分解を開始してドラムを回転駆動する予洗い行程と、行程の開始当初より水の電気分解を行い、前記ドラムを回転駆動する電解洗い行程とが実行される構成とすることができる。
【0019】
また上記第1の目的を達成するために成された請求項7に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記電解水生成手段は、前記外槽の底部に設けられるとともに、
前記第1の運転コースにおける前記電解水を用いたすすぎ運転では、前記ドラムの回転を停止して洗濯物を浸漬した状態とするつけおき行程とこのつけおき行程に続いてドラムを回転させて洗濯物を攪拌するためすすぎ行程とが実行され、
前記運転制御手段は、前記つけおき行程の途中で所定時間だけドラムを回転させるべく前記モータを制御することを特徴としている。
【0020】
請求項7に係る発明に係るドラム式洗濯機では、ドラムの回転が停止している期間には水はあまり移動しないから、電解水生成手段の近傍やその周囲の直上の水面付近において電解水の濃度が高くなる。したがって、ドラム内でこうした箇所に位置している洗濯物は高濃度の電解水に接触し、特に短時間であっても高濃度の電解水に接触することによって死滅するような種類の雑菌が死滅する。その反面、こうした高濃度の電解水は洗濯物の布傷みの原因となる。そこで、つけおきの途中でドラムを回転駆動すると、局所的に滞留していた高濃度の電解水が全体に広がり、濃度は下がるものの外槽に貯留された水全体が電解水となる。また、ドラム内で洗濯物の位置も入れ替わる。それによって、再びドラムが停止してつけおき状態となった後に、洗濯物全体が低濃度の電解水に長時間浸かることとなり、特に低濃度の電解水であっても長時間接触することによって死滅するような種類の雑菌が死滅する。また、洗濯物の位置の入れ替えによってドラム内の所定位置近傍に来た洗濯物は、上記と同様に高濃度の電解水による滅菌作用を受ける。
【0021】
したがって、請求項7に係るドラム式洗濯機によれば、電解水によって各種雑菌を効果的に死滅させ、洗濯物の清潔さを向上させることができる。また、洗濯物を滅菌することにより、乾燥が不充分である場合でも異臭の発生を抑制することができる。更にまた、高濃度の電解水による洗濯物の布傷みも防止できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るドラム式洗濯機の一実施例について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1は本実施例のドラム式洗濯機の外観斜視図、図2は本ドラム式洗濯機内部の要部の正面縦断面図、図3は同じく内部の要部の右側面縦断面図、図4は給水部を中心に描いた構成図、図5は操作パネルの外観平面図である。
【0024】
図1に示すように、このドラム式洗濯機において、外箱1は、上面と前面との間の角部がやや丸みをもちつつ前下がりに傾斜しており、この傾斜部からその後方にかけて大きな洗濯物投入口3が開口し、この洗濯物投入口3を開閉するために、該洗濯物投入口3の後方に二つ折り状態で起立可能な上蓋2が設けられている。また、上蓋2の左側には前方に引き出し自在の洗剤容器4が、右側には前後方向に延伸して操作パネル5が設けられている。この操作パネル5はそのほぼ全体が斜め上方を指向しているため、ユーザが本洗濯機の前方に立った姿勢で斜め下方を見下ろしたとき、操作パネル5面はその視線に対して垂直に近い状態となり、表示が見易く且つ操作キーも押し易いという配慮がなされている。
【0025】
図5に示すように、操作パネル5には、操作キーとして、電源キー5a、洗濯行程の開始及び一時停止を指示するためのスタートキー5b、後述の除菌すすぎの実行を設定するための除菌プラス選択キー5c、風呂水の使用の設定を行うための風呂水選択キー5d、通常の洗剤を使用した洗濯における運転コースを選択するためのコース選択キー5e、本洗濯機の特徴的な運転コースである洗剤ゼロコースを選択するための洗剤ゼロコース選択キー5f、全洗濯乾燥行程の連続動作ではなく特定の行程のみの実行をユーザ自身が指定するための複数の各行程選択キー5gなどが備えられている。また、表示器として、指定された特定行程での洗い時間やすすぎ回数などの数値を表示するための数値表示器群5h、残り時間や予約時間を表示するための数値表示器5j、自動的に検知された負荷量に応じた洗剤量の目安が表示される洗剤量目安表示器5kが備えられているほか、上記運転コースの設定などに応じて点灯したり、洗濯行程の進捗状況を報知したりするための各種の表示器が適宜に分散して配置されている。
【0026】
次に、図2〜図4により内部構成について概略的に述べる。外箱1の内部にあっては、周面が略円筒形状で両端面がほぼ閉塞された外槽10が、外箱1の左右側面にそれぞれ端面が対向する状態で、左右両側上方から吊支する二本のばね11と、前後方向に外槽10の下部を支持する三本のダンパ12とにより適度に揺動自在に保持されている。この外槽10の内部には、洗濯物を内部に収容するための内槽として、多数の通水穴13aが穿孔された略円筒形状の周面とほぼ閉塞された両端面とを有する横型のドラム13が、左右方向に延伸する水平軸線Cを中心に回転自在に設けられている。このドラム13の内周面には、回転に伴って洗濯物を掻き上げるためのバッフル13bが、水平軸線Cの周りに略120°の角度間隔で設けられている。
【0027】
ドラム13の左端面中央に固着された主軸14は、外槽10の左端面に固定されている第1軸受ケース16に保持された軸受17により支承されている。他方、ドラム13の右端面中央に固着された補助軸15は、外槽10の右端面に固定されている第2軸受ケース18に保持された軸受19により支承されている。この主軸14及び補助軸15により上記水平軸線Cが形成される。外槽10の左端面から側方へと突出した主軸14の先端には、アウタロータ型のモータ20のロータ20bが固定され、一方、モータ台を兼ねる第1軸受ケース16にはモータ20のステータ20aが固定されている。図示しない制御回路からステータ20aに駆動電流が供給されるとそれによってロータ20bが回転し、主軸14を介してロータ20bと同一の回転速度でドラム13が回転駆動される。
【0028】
外槽10の周面の上部から斜め前方にかけて、外箱1の洗濯物投入口3と一致する位置に、洗濯物を出し入れするための外槽開口100が設けられ、外槽開口100は左右水平方向に延伸する軸を中心に回動自在に設けられた外槽扉101により開閉自在となっている。また、ドラム13の周面(胴部)にも洗濯物を出し入れするためのドラム開口130が設けられ、ドラム開口130は、前後方向に観音開き構造を有する二枚の扉体131a,131bから成るドラム扉131により開閉自在となっている。但し、ドラム13は回転可能であるため、ドラム開口130が外槽開口100と径方向に一致した位置でドラム13が停止状態を維持するように、ステータ20aの下方にはドラムロック装置21が設けられており、ドラム13停止時にはドラムロック装置21から突出するピンとロータ20bに形成されている係合凹部とが噛み合い、ドラム13の停止位置が決まるように構成されている。
【0029】
外槽10の右側底部には排水口22が設けられ、排水口22はトルクモータの動作により開閉する排水バルブ23を介し、図示しない排水ホースを通して外部の排水溝へと接続されている。また、外槽10の最底部には一段窪んだ凹陥部10aが形成されており、そこにはほぼ水平に延在する水加熱ヒータ24が配設されており、外槽10内に貯留された水を適度な温度に加熱することができるようになっている。
【0030】
その凹陥部10aよりも前方側の外槽10底部には、外槽10内に貯留された水を電気分解するために複数枚の板状の電解用電極25aを電解室25b内部に備えた電解水生成部25が、外槽10に対して着脱可能に配設されている。電解水生成部25の電解室25bと外槽10とは、上下にそれぞれ略水平に延びる二本の連通管25c,25dで連結されている。電解用電極25aは耐腐食性を有するべくチタンの表面に白金をコーティングしたものであり、この電解用電極25aが水中に没する状態で電解用電極25a間に所定電圧を印加すると、後述するように次亜塩素酸などの含塩素物質と活性酸素種とを含む電解水が生成され、これによって洗い性能を高めることができるとともに除菌作用を発揮することができる。この点について後で詳述する。
【0031】
図1に示したように、外箱1の上面後部には、一端が水道栓に接続される水道水給水ホースの他端が接続される水道水給水口6と、一端が例えば風呂の浴槽内に貯留された水に浸漬される風呂水ホースの他端が接続される風呂水給水口7とが設けられている。図4に示すように、水道水給水口6は給水バルブ30の水導入口に接続され、風呂水給水口7は風呂水ポンプ31の吸入口に接続されている。給水バルブ30の複数の水導出口には大別して洗剤給水路32と柔軟仕上剤給水路33とが接続され、それぞれ洗剤投入器35に引き出し自在に内装される洗剤容器4の洗剤収容部4aと柔軟仕上げ剤収容部4bとに水を吐き出すように構成されている。また、洗剤給水路32は分岐され、風呂水ポンプ31に呼び水を供給する呼び水配管34となっている。風呂水ポンプ31の吐出口に接続された風呂水給水路36も洗剤容器4の洗剤収容部4aに水を吐き出すように構成されている。なお、図示していないが、給水バルブ30からは乾燥運転時の除湿用の冷却水を流す除湿水路も設けられている。
【0032】
洗剤容器4に吐き出された水はいずれも、最終的には洗剤投入器35から給水管37を通り、外槽10の後部側の注水口から外槽10内に流れ込む。而して、水道水は給水バルブ30におけるバルブ開閉制御に応じて、風呂水は風呂水ポンプ31の動作に応じて、いずれも洗剤投入器35を介して給水管37から外槽10へと供給される。
【0033】
外槽10の凹陥部10a後方側には、外槽10の左右方向の略中央付近に設けられた開口10bから右端面側に延伸する筒状の管路10cが外槽10と一体に形成されており、該管路10cは乾燥運転の際に外槽10内に加熱空気を循環的に供給するための乾燥循環風路の一部となっている。図示しないが、乾燥循環風路の他の主要部分は外槽10の右端面及び第2軸受ケース18の外側及び後方に配設され、乾燥循環風路内には、外槽10内から上記開口10bを介して取り出された湿った空気を除湿するための除湿器、除湿された空気を加熱するための乾燥用ヒータ、外槽→除湿器→ヒータ→外槽という循環的な空気流を発生させる送風ファンなどが設けられている。
【0034】
図6は、上記構成を有する本実施例のドラム式洗濯機の電気系ブロック構成図である。制御部50はCPU、ROM、RAM、タイマなどを含むマイクロコンピュータ(マイコン)を中心に構成されており、ROMに格納されている制御プログラムに基づいて、洗い、すすぎ、脱水及び乾燥の各行程の運転動作を行うための各種の制御を実行する。制御部50には、使用者が各種設定や指示を与えるために操作パネル5に設けられた上記各種操作キーからキー入力信号が与えられるとともに、外槽10内に貯留された水の水位を検知する水位センサ52、洗いやすすぎ行程時には水温を、乾燥行程時にはドラム13の出口側の温度を検出するドラム出口温度センサ53、乾燥行程時に除湿後の冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ54、外槽10内での異常な泡の発生を検知する泡検知センサ55などからそれぞれ信号が入力される。また、制御部50には負荷駆動部51が接続されており、この負荷駆動部51を介して既に説明したドラムモータ20、水加熱ヒータ24、給水バルブ30、風呂水ポンプ31、排水バルブ23、電解水生成部25、ドラムロック装置21のほか、上記送風ファンを回転駆動するファンモータ60や乾燥用ヒータ61などの動作をそれぞれ独立に制御する。
【0035】
続いて、上記のような構成を有する本実施例のドラム式洗濯機の洗濯動作について、詳細に説明する。
【0036】
本実施例のドラム式洗濯機では、洗濯対象である衣類の種類や汚れの度合などに応じて、運転時間などの運転条件が相違する複数の運転コースが用意されており、使用者が適宜の運転コースを選ぶことができるようになっている。そうした運転コースの1つとして、電解水を利用した洗いを行う洗剤ゼロコースが設けられており、上記洗剤ゼロコース選択キー5fの操作により設定されるようになっている。洗剤ゼロコースでない通常の運転コースは、市販されている粉末洗剤又は液体洗剤を使用して洗濯を行うものであるのに対し、洗剤ゼロコースは比較的汚れの少ない衣類を洗剤を使用することなく洗濯したい場合に適している。更にまた、すすぎの際に電解水を利用するか否かは洗剤ゼロコースの選択とは別途、除菌プラス選択キー5cの操作により設定できるようになっており、洗い、すすぎともに電解水を利用したい場合には、洗剤ゼロコースを選択した上で除菌プラスを選択すればよい。
【0037】
図7は洗剤ゼロコースにおける全洗濯行程の流れを示すフローチャート、図8は予洗い行程の制御フローチャート、図9は電解洗い行程の制御フローチャート、図10は除菌すすぎ行程の制御フローチャート、図11は各行程におけるドラムモータの駆動パターンを示す図である。
【0038】
ユーザはドラム13内に洗濯物を投入すると共に、必要に応じて洗剤容器4の柔軟仕上げ剤収容部4bに柔軟仕上げ剤を収容し、操作パネル5の操作キーにより所定の設定を行った上で洗濯開始の指示を行う。すると、まず、洗濯物の量を自動的に検知するための負荷量検知処理が実行され、それにより検知された負荷量に応じて給水水位が決定される(ステップS10)。ここで、洗剤ゼロコースでは、通常(つまり、ここでは洗剤を使用する洗濯)の運転コースとは給水水位が異なり、検知された負荷量が同一であった場合でも、給水水位が高くなるように決められている。この理由については後で述べる。
【0039】
給水水位が決定されると、給水バルブ30において洗剤収容部4aへのバルブが開かれ、又は風呂水ポンプ31が作動されることにより、外槽10内への給水が行われる。このとき水は洗剤収容部4aを通過するが、洗剤が収容されていない限り、単なる水が外槽10内に供給される。給水開始後、制御部50は水位センサ52により外槽10内の水位を検知し、その検知水位が上記給水水位に達すると、上記バルブを閉じる又は風呂水ポンプ31を停止することにより給水を停止する(ステップS11)。
【0040】
予洗い行程では(ステップS12)、まず、制御部50はドラムモータ20を駆動パターンA(図11(A)参照)で駆動することによりドラム13を回転させる(ステップS30)。駆動パターンAは、正転方向に40rpmの回転速度で15秒間回転させ、その後3秒間の停止期間を挟んで、逆転方向に40rpmの回転速度で15秒間回転させ、その後3秒間の停止期間を設ける。これを1周期として繰り返す。なお、本洗濯機では、図3においてドラム13が時計回り方向に回転する方向を正転方向、反時計回り方向に回転する方向を逆転方向と定義する。
【0041】
始めドラム13内の洗濯物は殆ど吸水していないが、上記のようにドラム13が回転駆動されることにより洗濯物が撹拌されると、洗濯物は徐々に水を吸う。すると、その分だけ、外槽10内の水位が下がる。そこで制御部50は、1分が経過する毎に水位センサ52によりその時点での水位を検知し、水位が下がっている場合には、給水バルブ30を開いて追加の給水(補給水)を行い、水位を給水水位近傍にまで戻す(ステップS31)。
【0042】
上記駆動パターンAでの駆動制御を2分間継続したならば、電解水生成部25をオンし、水の電気分解を開始する(ステップS32)。そしてそれとほぼ同時に、ドラムモータ20の制御を駆動パターンAから駆動パターンB(図11(B)参照)に切り替える(ステップS33)。駆動パターンBは、正転方向に40rpmの回転速度で30秒間回転させ、その後3秒間の停止期間を挟んで、逆転方向に80rpmの回転速度で10秒間回転させ、その後3秒間の停止期間を設ける。これを1周期として繰り返す。
【0043】
上記ドラム13の運転制御を行い、運転終了1分前に達したならば(ステップS34で「Y」)、電解水生成部25をオフして水の電気分解を停止するとともに(ステップS35)、排水バルブ23を開放して排水を開始する(ステップS36)。この排水中もドラム13の回転駆動は継続され、排水開始から1分経過後、つまり通常はほぼ排水が終了した時点でドラム13の回転は停止される。
【0044】
上記予洗いが終了すると、中間脱水(ステップS13)を行う。すなわち、ドラム13を高速で回転させることにより、洗濯物に染みこんでいる水を洗濯物から吐出させ、通水穴13aを介して外槽10側に飛散させて排水口22から機外へと排出する。
【0045】
次いで、排水バルブ23が閉鎖されるとともに、給水バルブ30が開かれ、又は風呂水ポンプ31が作動されることにより、外槽10内への給水が行われる。制御部50は水位センサ52により外槽10内の水位を検知し、その検知水位が上記給水水位に達すると給水を停止する(ステップS14)。
【0046】
電解洗い行程では(ステップS15)、まず、電解水生成部25をオンし、水の電気分解を開始する(ステップS40)。そして、ドラムモータ20を駆動パターンAで駆動することによりドラム13を回転させる(ステップS41)。そして上記予洗い行程時のステップS31と同様のS42の処理により、1分が経過する毎に水位センサ52によりその時点での水位を検知し、水位が下がっている場合には、給水バルブ30を開いて追加の給水(補給水)を行い、水位を給水水位近傍にまで戻す。更に予洗い行程時のステップS33〜S36と同様のステップS43〜S46の処理により、ドラムモータ20を駆動パターンBで駆動させ、運転終了1分前になると電解水生成部25をオフするとともに排水を開始し、排水開始から1分後にドラム13の回転を停止する。
【0047】
ここで、上記予洗い行程及び電解洗い行程における、電解水を用いた洗いの作用、及び、駆動パターンAによるドラム13の回転駆動時の洗いと駆動パターンBによるドラム13の回転駆動時の洗いとの相違、について説明する。
【0048】
洗濯のために水道水を使用する場合、水道水には不純物成分の一つとして塩素イオンが含まれる。そのため、上記ステップS32、S40において電解水生成部25がオンされ水の電気分解が開始されると、電解水生成部25の電解用電極25aの周囲には塩素イオンの化学反応物質として、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO-)、塩素ガス(Cl2)などの含塩素物質が発生し、またそうした反応の過程で活性酸素種も発生する(これら各種成分を含有する水を電解水と呼んでいる)。これらは、それ自体が洗浄能力や滅菌力を有する。電解室25b内で発生した含塩素物質や活性酸素は連通管25c又は25dを通って外槽10内に流出し、他方の連通管25d又は25cを介して新鮮な(ここでは「電解されていない」という意味)水が電解室25bに流れ込む。外槽10内に流れ出した含塩素物質や活性酸素種はドラム13内の洗濯物に接触し、これによって洗濯物に付着している汚れ成分(有機物)を酸化・還元作用で分解・変性させることにより洗浄を行うとともに、洗濯物に付着している(及び水に含まれる)各種雑菌を死滅させる。これが、電解水による洗浄及び除菌作用である。
【0049】
なお、上記のような含塩素物質や活性酸素種を発生する反応は通常、水道水に含まれる塩素イオンを元にして充分に行うことができるが、必要に応じて、塩化ナトリウム、塩化カルシウムなどの塩類を補助的に水に添加してもよい。
【0050】
本ドラム式洗濯機においてドラム13が回転するとき、ドラム13内に収容されている洗濯物に作用する遠心力と重力とがほぼ均衡するのは、回転速度が60〜65rpmのときである。したがって、ドラム13が40rpmで回転駆動されるとき、ドラム13内の洗濯物に作用する遠心力は重力よりも小さい。そのため、洗濯物はバッフル13bによって掻き上げられ、回転上方まで持ち上げられる途中で落下して水面にたたきつけられる。すなわち、たたき洗いが実行される。したがって、上記駆動パターンAでドラムモータ20が制御されるときには、洗剤ゼロコースでない通常の運転コースと同様のたたき洗いが連続的に実行される。
【0051】
一方、ドラム13が80rpmで回転駆動されるとき、ドラム13内の洗濯物に作用する遠心力は重力よりも大きい。そのため、洗濯物は遠心力によってドラム13の内周壁面に張り付き、ドラム13とほぼ一体となって回転する。したがって、洗濯物が水面に突入する際のたたき洗いの作用はあるものの、それよりも、強い水流が洗濯物を通過することによる洗い作用が生じる。なお、ここでは、これを遠心洗いと呼ぶ。したがって、上記駆動パターンBでドラムモータ20が制御されるときには、正転方向にたたき洗いが実行され、その後、逆転方向に遠心洗いが実行される。
【0052】
上述したように、予洗い行程時には、まず、電解水を用いない状態でたたき洗いのみを実行している。予洗いの前には洗濯物が殆ど吸水していないため、たたき洗いの途中で、つまり補給水を行うよりも前に、洗濯物の吸水により大きく水位が低下するおそれがある。こうした大幅な水位低下の結果、もし電解用電極25aが水面上に露出してしまうと、水の電気分解の効率が大きく低下する。また、そもそも、洗濯物の多くが水面上に露出し、しかもその露出した洗濯物があまり吸水していないような状況では、電解水による洗浄作用は非常に低いものとなる。そこで、洗濯物がほぼ完全に吸水するまでの期間として、予洗い行程の駆動パターンAでのドラム回転制御時には水の電気分解を行わないようにしている。これに対し、電解洗い行程時には、始めから洗濯物が充分に吸水しているため、水位低下があったとしても僅かである。そこで、行程の開始当初より水の電気分解を行うようにしている。
【0053】
一般にドラム式洗濯機ではたたき洗いを行えば充分であるため、ドラム内に収容された洗濯物のうち、ドラムの下方にある洗濯物が浸漬する程度しか外槽10内には水が貯留されない。しかしながら、上記のような電解水を用いた洗浄の効果は、洗濯物がより多く水に浸かるほど高いものとなる。また、電解水生成部25で確実に水の電気分解を行うためには、電解水生成部25全体が水に浸漬していることが好ましい。上記遠心洗い時にはドラム13内の水にも遠心力が作用するため、外槽10内に貯留されている水の水位は大きく低下する。また、たたき洗いのときにも、外槽10内の水位は大きく上下に変動する。このとき、電解室25b内に充分に水が循環供給されないと、電気分解の効率が低下する。
【0054】
そこで本ドラム式洗濯機では、上述したように、洗剤ゼロコースでは通常の洗剤を使用することを前提とした他の運転コースよりも、同一負荷量に対して給水水位を高く設定している。すなわち、洗剤ゼロコースでは、外槽10内に貯留された水の水位が元々高くなっている(つまりは水量が多い)ため、洗濯物が水に浸り易い。また、遠心洗い時に水位が大きく変動した場合でも、電解室25b全体が確実に水に浸漬するような水位を確保することができる。それによって、電解水を確実に生成し、上記のような作用による洗浄性能を充分に発揮させることができる。
【0055】
上述したように、予洗い行程及び電解洗い行程ともに、たたき洗いと遠心洗いとを交互に行うことで実質的に洗濯物の洗浄を行っているが、このようにたたき洗いと遠心洗いを組み合わせることの利点は次の通りである。
【0056】
たたき洗いでは、洗濯物は充分に吸水した後、バッフル13b上に乗った状態で回転上方に持ち上げられるため、大きな重量物を重力に抗して持ち上げる必要があるためにドラムモータ20に大きな負荷が掛かる。特に、洗剤ゼロコースでは上記の如く外槽10内に貯留する水の量が相対的に多いため、各洗濯物の吸水量が多くなる傾向にあり、そのためドラムモータ20に対する負荷は一段と大きくなる。こうした負荷の増加は、ドラムモータ20に流れる電流が増加することを意味する。一方、遠心洗いでは、洗濯物には遠心力が作用しているため、洗濯物の吸水量はたたき洗いのときよりも少なくなり、その結果、各洗濯物の重量は相対的に軽くなる。また、回転速度が大きいことにより慣性力も大きくなり、洗濯物を重力に抗して持ち上げるに要する力が相対的に小さくて済む。このようなことから、ドラムモータ20に対する負荷はたたき洗い時よりも小さい。
【0057】
いま、本実施例のドラム式洗濯機において、同一負荷量の条件の下で、ドラム13の回転速度と消費電力との関係を実測すると、図12に示すようになる。図12で明らかなように、たたき洗いを実行する40rpm前後よりも遠心洗いを実行する80rpm前後で消費電力は約1/3に低下する。したがって、たたき洗いのみで洗いを行おうとすると、消費電力が大きくなり過ぎ、省電力に反するとともにドラムモータ20の温度上昇が大きく過熱のおそれがある。
【0058】
一方、遠心洗いのみでは消費電力を大幅に抑制することは可能であるものの、充分な洗浄能力を確保することが難しい。そこで、上記のようにたたき洗いと遠心洗いとを組み合わせることにより、消費電力を適度に抑えることができる。また、遠心洗いのみでは充分な洗浄能力が得られないが、たたき洗いと遠心洗いとを組み合わせると、両者の洗い作用の相乗効果によって、それぞれの洗いのみの場合よりも洗浄能力が向上する。
【0059】
更にまた、たたき洗い時には洗濯物が大きく移動し、しかもバッフル13bにより洗濯物の一部が掻き上げられる際に大きく広がりながら重なることがあるため、比較的洗濯物が絡み易い。これに対し、特にたたき洗いから遠心洗いに移行する過程では絡み合っていた洗濯物がばらけるように転がりつつ広がり、遠心力によってドラム13の内周壁面に張り付く。そのため、たたき洗いと遠心洗いとを交互に行い且つその回転方向を反対方向にすると、たたき洗い時に絡み合った洗濯物が引き続く遠心洗いの際にうまくほぐれ、結果的に布絡みを少なくすることができる。特に、本願発明者らの実験によれば、布絡みはたたき洗いの継続時間と脱水洗いの継続時間との比率に依存していることがわかった。そこで、実験的に最も布絡みが少なくなる条件を見い出し、その比率を約3:1、つまりたたき洗い30秒に対し遠心洗い10秒に定めるようにしている。
【0060】
図13は、電解水を用いてたたき洗いのみを行った場合と、たたき洗いと遠心洗いを組み合わせた場合との実測による比較結果を示す。但し、たたき洗いは、30秒正転方向回転−3秒停止−30秒逆転方向回転−3秒停止を1周期として30分の運転を継続した場合、たたき洗いと遠心洗いの組み合わせは、45秒正転方向のたたき洗い−3秒停止−15秒逆転方向の遠心洗い−3秒停止を1周期として30分の運転を継続した場合である。図13で明らかなように、たたき洗いと遠心洗いとの組み合わせでは、消費電力は約20%減少し、ドラムモータの温度上昇は14℃も小さくなっている。その反面、洗浄性能は約10%向上している。
【0061】
更にまた、駆動パターンBでのたたき洗いの継続時間は30秒と、洗剤ゼロコース以外、つまり洗剤を使用した洗濯でのたたき洗いの継続時間(標準的には10秒)よりも長く設定している。洗剤を使用した運転コースでは、このようにたたき洗いの継続時間を長くすると、洗剤による過剰な泡が発生してしまうが、洗剤ゼロコースでは洗剤を使用しないために洗剤による過剰な泡の発生のおそれがないことを利用し、たたき洗いによる洗浄作用も一段と高めている。
【0062】
図7に戻り説明を続ける。上記電解洗い行程が終了すると、ステップS13と同様にステップS16で中間脱水を実行し、その後、再び外槽10内に給水を行う。そして、除菌プラスの設定が為されているか否かを判定する(ステップS18)。除菌プラスが設定されていない場合には、洗剤使用時の最終すすぎ行程と同様の通常のすすぎ行程(ステップS20)を実行した後に、外槽10に貯留している水を排水し(ステップS21)、最終脱水行程を行って(ステップS22)洗濯の全行程を終了する。乾燥までの連続自動運転が設定されている場合には、洗濯の終了後、乾燥の各行程を順次実行することになる。
【0063】
除菌プラスが設定されている場合にはステップS18からS19へと進み、特徴的な除菌すすぎ行程を実行する。除菌すすぎ行程では、電解洗い行程時と同様に、まず電解水生成部25をオンし、水の電気分解を開始する(ステップS50)。そして、ドラムモータ20を駆動パターンAで駆動することによりドラム13を回転させる(ステップS51)。そして電解洗い行程時のステップS42と同様のS52の処理により、1分が経過する毎に水位センサ52によりその時点での水位を検知し、水位が下がっている場合には給水バルブ30を開いて追加の給水(補給水)を行い、水位を給水水位近傍にまで戻す。
【0064】
上記駆動パターンAでの駆動制御を所定時間(例えば2分間)継続したならば、電解室25b内の水を介して電解用電極25aに流れる電流の大きさ、負荷量、運転コースの種類などに応じて、つけおき時間、溜めすすぎ時間、及び電解動作時間をそれぞれ決定する(ステップS53)。すなわち、水の導電性は主として該水に含まれる不純物の量に依存しており、不純物が多いほど導電性が高い。周知のように、水道水に含まれる不純物の量は水の種類(例えば川からの引導水、地下水など)や地域などに大きく依存している。上述のように、本洗濯機では、水に含まれる塩素イオンを元に含塩素物質を生成しているから、不純物である塩素イオン自体が少ないと滅菌性能が低くなる。そこで、水に流れる電流が小さい場合には塩素イオンが少ないと判断し、つけおき時間、溜めすすぎ時間、及び電解動作時間を長く設定する。また、負荷量が多い場合には、それだけ滅菌対象が多くなるわけであるから、つけおき時間、溜めすすぎ時間、及び電解動作時間を長く設定する。更にまた、この除菌すすぎ行程は上記洗剤ゼロコースによる洗いの後に実行される場合と通常の洗いの後に実行される場合とがあるが、通常の洗いの後に実行される場合には、洗濯物に残留した洗剤成分の影響により滅菌性能が低くなる傾向にある。そこで、通常の洗い後の除菌すすぎの場合には洗剤ゼロコースによる洗いの後の除菌すすぎの場合よりも、つけおき時間、溜めすすぎ時間、及び電解動作時間を長く設定する。なお、つけおき時間、溜めすすぎ時間、及び電解動作時間の全てを変更する必要はなく、少なくともいずれか1つを変更するようにしてもよい。
【0065】
そして、つけおき行程として、ドラムモータ20を駆動パターンC(図11(C)参照)で駆動させる(ステップS54)。駆動パターンCは、逆転方向に40rpmの回転速度で10秒間だけドラム13を回転させ、その後110秒間の停止期間を設ける。これを1周期として繰り返す。したがって、ドラム13が回転しているのはごく僅かな割合のみであり、実質的に洗濯物は単に電解水に浸っている状態となる。これがつけおき行程の呼称の由縁である。
【0066】
ここで、ドラム13の回転が停止している期間には、電解水生成部25の電解室25bと外槽10との間の水の交換は少ない。したがって、電解室25b内部に滞留した水はあまり入れ替わることなく電気分解されるため、その水に含まれる含塩素物質や活性酸素種の濃度は非常に高くなる。こうして濃度の高まった含塩素物質や活性酸素種が上方連通管25dを通して徐々に外槽10内に流れ出し、主として上昇するように広がる。そのため、ドラム13内で、電解水生成部25の上方連通管25dの出口周囲と、その直上の水面までの間の近傍に位置している洗濯物に高濃度の電解水が接触する。
【0067】
次いで、10秒間ドラム13が逆転方向に回転駆動されると、ドラム13と外槽10との間隙をドラム13の回転方向(図3では反時計方向)に流れる水流が発生する。このような水の流れによって、下方連通管25cを通して外槽10から電解室25b内へと入り、他方、上方連通管25dを通して電解室25b内から外槽10へと出てゆく強い水流が発生する。この水流は、ドラム13を正転方向に回転させた場合よりも遙かに強くなる。したがって、上記ドラム13の回転期間には、電解室25bにスムーズに水が循環供給される。そのため、電解室25b内で発生した含塩素物質や活性酸素種は水流に乗ってスムーズに外槽10へと出て、外槽10内の水に広がって行き渡る(但し、活性酸素種は不安定であるため長時間存在することなく分解される)。また、電解室25b内の塩素濃度が高くなり過ぎると電解効率が落ちる。そこで、時々、電解室25b内から含塩素化合物を運び去ってその代わりに新鮮な水を送り込むことによって電解効率が回復し、常に高い効率で水の電気分解を継続することができる。
【0068】
更にまた、ドラム13停止時には一部の洗濯物は水面上に露出していて電解水に浸漬していないが、ドラム13を回転させることにより水に浸漬する洗濯物の入れ替えを行い、つけおきのむらが生じにくくなる。また、高濃度の次亜塩素酸等に洗濯物が接触し続けると、繊維の種類などによっては布傷みを生じることがあるが、時々、洗濯物を入れ替えるとともに水を撹拌することにより、こうした布傷みも防止することができる。
【0069】
また、各種雑菌の中には、上記滅菌に寄与する物質の濃度は比較的低くてもよいが接触時間が長さが滅菌に必要であるような種類のものと、逆に、接触時間は比較的短くてよいが上記の物質の濃度の濃さが必要であるような種類のものとが存在する。上記つけおき行程ではドラム13が停止している期間に滅菌に寄与する物質の濃度がかなり高くなるため、ドラム13内の上記特定部位に位置している洗濯物は高濃度の電解水に接触する機会を持つ。一方、ドラム13回転中に撹拌される洗濯物や、ドラム13停止時でも上記特定部位以外に位置している洗濯物は、相対的に低濃度の電解水に長時間接触する機会を持つ。したがって、上記のような様々な種類の雑菌に対して、満遍なく滅菌作用を及ぼすことができる。
【0070】
先に決められたつけおき時間が経過すると(ステップS55で「Y」)、次にためすすぎ行程として、ドラムモータ20を駆動パターンDで駆動させる(ステップS56)。駆動パターンDでは、正転方向に40rpmの回転速度で20秒間ドラム13を回転させ、その後10秒間の停止期間を挟んで、逆転方向に40rpmの回転速度で20秒間ドラム13を回転させ、その後10秒間の停止期間を設ける。これを1周期として繰り返す。このときには、外槽10内の電解水の濃度は比較的低いが、洗濯物がよく撹拌されるので、厚手の洗濯物であってもその繊維の内部にまで電解水を充分に染みこませて、むらのない滅菌を行うことができる。
【0071】
そして先に決められた電解動作時間が経過したならば(ステップS57で「Y」)、電解水生成部25をオフし、電解水の発生を停止する(ステップS58)。その後、給水バルブ30で柔軟仕上げ剤4bに水を供給するバルブを開き、洗剤容器4内の柔軟仕上げ剤収容部4bを介して適宜量の給水を行い、該収容部4bに収容されている柔軟仕上げ剤を外槽10内に投入する(ステップS59)。柔軟仕上げ剤の主成分は陽イオン系界面活性剤であるため、電解水生成部25が動作していると、該活性剤が電解用電極25aに引き寄せられてしまって洗濯物に付着しなくなるおそれがあるが、柔軟仕上げ剤の投入に先立って電解水生成部25をオフしているため、そうしたおそれがない。そして、予め定めたためすすぎ時間が経過するまでドラム13の回転を継続し、それによって柔軟仕上げ剤を洗濯物に行き渡らせる。ためすすぎ時間が経過したならば(ステップS60)、ドラム13の回転を停止し(ステップS61)、除菌すすぎ行程を終了する。
【0072】
洗剤ゼロコースに加えて除菌プラスが設定された場合には、以上のように、予洗い及び電解洗い時に電解水が利用されるのに加え、すすぎ時にも電解水が用いられる。このすすぎ時には、電解水に含まれる含塩素物質と活性酸素種との滅菌作用によって、洗濯物に付着していた各種雑菌を効果的に除去することができ、洗濯物の清潔さを一層高めることができる。また、本洗濯機の乾燥機能を使用せずに屋外又は屋内で洗濯物を干す場合、乾き具合が不充分であると洗濯物が特有の異臭を発することがある。こうした異臭の原因は洗濯物に繁殖する雑菌であると言われているが、上記除菌すすぎ行程によって洗濯物の滅菌を行うことにより、こうした場合の洗濯物の異臭の発生を防止することもできる。
【0073】
もちろん、こうした除菌すすぎ行程における除菌作用は洗剤を使用した洗いの後にも有効である。
【0074】
なお、上記実施例は本発明の一例に過ぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正を行えることは明らかである。
【0075】
例えば、上記実施例のドラム式洗濯機では、電解室20b内の電解用電極20aの陽極と陰極との間にイオン交換膜などの隔膜を設けていないが、隔膜を設けた構成にも本発明を適用することが可能である。すなわち、電解室内に隔膜を隔てて陽極と陰極とを配置した構成では、陽極側に含塩素物質が生成されるとともに水素イオンなどを含む酸性の電解水が生成される。他方、陰極側には水酸イオンなどを含むアルカリ性の電解水が生成される。特にpH値が高い場合、アルカリ性の電解水はそれ自体が洗浄力を有するから、このアルカリ性の電解水を外槽内に供給することにより、高い洗浄性能を得ることができる。一方、含塩素物質を含む酸性の電解水は高い滅菌作用を有するから、この酸性の電解水を外槽内に供給することにより、高い滅菌性能を得ることができる。こうした洗いやすすぎを行う際にも上記の如き制御が有用であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例によるドラム式洗濯機の外観斜視図。
【図2】 本実施例のドラム式洗濯機の内部の要部の正面縦断面図。
【図3】 本実施例のドラム式洗濯機の内部の要部の右側面縦断面図。
【図4】 本実施例のドラム式洗濯機の給水部を中心に描いた構成図。
【図5】 本実施例のドラム式洗濯機の操作パネルの外観平面図。
【図6】 本実施例のドラム式洗濯機の電気系構成図。
【図7】 本実施例のドラム式洗濯機において洗剤ゼロコースにおける全洗濯行程の流れを示すフローチャート。
【図8】 予洗い行程の制御フローチャート。
【図9】 電解洗い行程の制御フローチャート。
【図10】 除菌すすぎ行程の制御フローチャート。
【図11】 各行程におけるドラムモータの駆動パターンを示す図。
【図12】 同一負荷量の条件の下で、ドラムの回転速度と消費電力との関係を実測した結果を示す図。
【図13】 電解水を用いてたたき洗いのみを行った場合と、たたき洗いと遠心洗いを組み合わせた場合との実測による比較結果を示す図。
【符号の説明】
1…外箱
4…洗剤容器
4a…洗剤収容部
4b…柔軟仕上げ剤収容部
5…操作パネル
5b…スタートキー
5c…除菌プラス選択キー
5f…洗剤ゼロコース選択キー
10…外槽
13…ドラム
13a…通水穴
13b…バッフル
14…主軸
20…ドラムモータ
25…電解水生成部
25a…電解用電極
25b…電解室
25c,25d…連通管
30…給水バルブ
31…風呂水ポンプ
50…制御部
51…負荷駆動部
52…水位センサ
Claims (7)
- 外槽内にドラムが回転自在に配設され、該外槽内に水を貯留した状態で前記ドラムを回転させることにより該ドラム内に収容された洗濯物を洗濯するドラム式洗濯機において、
a) 前記ドラムを回転駆動するモータと、
b)洗濯に使用する水を電気分解して電解水を生成する電解水生成手段と、
c)前記電解水を用いた洗濯を行う第1の運転コースと、該電解水でない通常の水を用い洗剤を使用した洗濯を行う第2の運転コースとを少なくとも選択可能に有する設定手段と、
d) 洗い運転時に、所定時間モータをオンした後、所定時間該モータをオフするオン・オフの組み合わせにより前記モータを駆動する手段であって、第1の運転コースが設定されて前記電解水を用いた洗い運転を行う場合に、第2の運転コースが設定されて前記通常の水を用い洗剤を使用した洗い運転を行う場合よりも、オンの時間を長く設定する運転制御手段と、
を備えることを特徴とするドラム式洗濯機。 - 前記運転制御手段は、前記第1の運転コースにおいて前記電解水を用いて洗い運転を行う際に、ドラムの回転に伴って洗濯物が回転途中まで持ち上げられた後に落下するような回転速度による第1の洗いモードと、洗濯物が遠心力によりドラムの内周壁に張り付いた状態で回転するような回転速度による第2の洗いモードとを組み合わせるように前記モータを制御することを特徴とする請求項1記載のドラム式洗濯機。
- 前記運転制御手段は、第1の運転コースが設定されて前記電解水を用いた洗い運転を行う場合に、前記第1及び第2の洗いモードを組み合わせる洗い運転を行い、第2の運転コースが設定されて前記通常の水を用い洗剤を使用した洗い運転を行う場合に、前記第1の洗いモードのみによる洗い運転を行うべく前記モータを制御することを特徴とする請求項2に記載のドラム式洗濯機。
- 第1の洗いモードによるドラムの回転方向と、それに引き続く第2の洗いモードによるドラムの回転方向とは逆方向とすることを特徴とする請求項2又は3に記載のドラム式洗濯機。
- 第1の洗いモードと第2の洗いモードとの時間割当ての比率を略3:1とすることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のドラム式洗濯機。
- 前記第1の運転コースにおける洗い運転では、電気分解を行わず電解水を用いない状態で前記ドラムを回転駆動して洗濯物に吸水させた後、電気分解を開始してドラムを回転駆動する予洗い行程と、行程の開始当初より水の電気分解を行い、前記ドラムを回転駆動する電解洗い行程とが実行されることを特徴とする請求項1に記載のドラム式洗濯機。
- 前記電解水生成手段は、前記外槽の底部に設けられるとともに、
前記第1の運転コースにおける前記電解水を用いたすすぎ運転では、前記ドラムの回転を停止して洗濯物を浸漬した状態とするつけおき行程とこのつけおき行程に続いてドラムを回転させて洗濯物を攪拌するためすすぎ行程とが実行され、
前記運転制御手段は、前記つけおき行程の途中で所定時間だけドラムを回転させるべく前記モータを制御することを特徴とする請求項1に記載のドラム式洗濯機。
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