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JP3805637B2 - 電動機制御装置 - Google Patents

電動機制御装置 Download PDF

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JP3805637B2
JP3805637B2 JP2001112182A JP2001112182A JP3805637B2 JP 3805637 B2 JP3805637 B2 JP 3805637B2 JP 2001112182 A JP2001112182 A JP 2001112182A JP 2001112182 A JP2001112182 A JP 2001112182A JP 3805637 B2 JP3805637 B2 JP 3805637B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、インバータにより電動機を駆動する電動機制御装置において、電動機の回転角度と電流値とをサンプリングするときのタイミング制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
同期電動機をベクトル制御方式により高精度に制御を行う場合、制御情報として電動機に流れる電流値と回転子の回転角度とを用いて制御演算を行うのが一般的であり、そのために、インバータから同期電動機への電力供給線路上には電流検出器が設けられ、回転子には角度検出器、または、特定角度検出機能を備えた回転速度検出器が取り付けられる。そして、この電流検出器にはシャント抵抗やホール素子を用いたCTが使用され、角度検出器や回転速度検出器にはレゾルバやエンコーダなどが使用される。また、同期電動機に電力を供給するインバータには制御装置からのPWM信号に制御される半導体電力変換素子がスイッチング素子として使用されるが、このスイッチング素子の動作による転流ノイズが角度や電流の検出信号に重畳して誤差を生じるため、電流値や角度の検出に際してはノイズ防止策や回避策などが用いらる。
【0003】
従来のこのような電動機制御装置においては、電流検出器からの信号入力経路や角度検出器からの信号入力経路にノイズ防止用の回路が設けられることが多かったが、電流値や角度の検出時にタイミング的に転流ノイズの影響を避けるのも一つの手法であり、例えば、特開平11−136950号公報に開示された技術もこの手法によるものである。この公報に開示された技術は、PWMのキャリア信号に同期しながら転流ノイズが発生している期間を避けて電流サンプリングを行うようにしたもので、具体的には、キャリア信号の三角波の頂点、または、頂点から所定の時間過ぎた時点において電流サンプリングを行うようにしたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
電流サンプリングのタイミングをこのように設定することにより転流ノイズによる誤差は避けられるが、同期電動機を高精度に制御するにあたっては今ひとつ無視できない問題がある。すなわち、ベクトル制御方式により高精度に同期電動機を制御しようとする場合、電流値を検出するタイミングと同時点において回転角度情報を得て制御演算を行う必要があり、回転角度情報と電流値との検出時期に時間的な差異がある場合には制御演算における座標軸にずれが生じ、制御精度が悪化すると共に、制御の応答性も低下するという問題点である。この回転角度情報と電流値とのサンプリングを同時に行う必要があるということは一般的によく知られていることではあるが、実際の制御にあたっては、回転角度の検出系と電流値の検出系とには伝達特性に差があるため、回転角度情報と電流値とのサンプリングの同時性は保たれないのが一般的であり、従って、従来の制御法では制御精度と応答性とに限界を生じるものであった。
【0005】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、回転角度情報と電流情報とのサンプリングの同時性を確保し、しかも、転流ノイズを回避してサンプリングを行うことにより、良好な制御精度と応答性とを有する電動機制御装置を得ることを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる電動機制御装置は、電動機に対する供給電力を電力変換するインバータに電圧指令値とキャリア信号とに基づくPWM信号を与えるPWM信号生成手段と、電動機の電流値信号を入力して電流情報を出力する電流情報検出手段と、電動機の回転角度信号を入力して角度情報を出力する角度情報検出手段と、電流情報と角度情報とをサンプリングしてベクトル制御演算手段に与える電流情報サンプラと角度情報サンプラと、電流情報サンプラと角度情報サンプラとのそれぞれのサンプリング時期を演算するサンプリング時期演算手段とを備え、同一時期における前記電動機の電流信号と回転角度信号から前記電流情報と回転情報をサンプリングするために、サンプリング時期演算手段が出力するサンプリング時期、電流情報のサンプリング時期と角度情報のサンプリング時期との間に所定の時間差を有するように設定されたものである。
【0007】
また、キャリア信号が三角波であり、サンプリング時期演算手段が演算する角度情報のサンプリング時期が、三角波の最大値、または、最低値からゼロを含む所定の時間経過後に設定されるようにしたものである。
さらに、電流情報のサンプリング時期と角度情報のサンプリング時期との間の所定の時間差が、電流情報検出手段の信号処理遅れ時間と角度情報検出手段の信号処理遅れ時間との時間差に基づき設定されるようにしたものである。
さらにまた、インバータにPWM信号をゲート信号に変換するゲート駆動手段を設け、三角波の最大値または最低値からの所定の時間が、ゲート駆動手段のPWM信号からゲート信号に変換処理するときの信号処理遅れ時間に基づき設定されるようにしたものである。
【0008】
また、電流情報検出手段と角度情報検出手段とゲート駆動手段とに温度検出手段を設け、電流情報検出手段の信号処理遅れ時間と角度情報検出手段の信号処理遅れ時間との時間差に基づき設定される所定の時間差と、ゲート駆動手段のPWM信号からゲート信号に変換処理するときの信号処理遅れ時間に基づき設定される所定の時間とが、それぞれの温度により補正されるようにしたものである。
さらに、キャリア信号が鋸歯状波であり、サンプリング時期演算手段が演算する角度情報のサンプリング時期が、鋸歯状波の最大値から所定の時間前に設定されるようにしたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1ないし図8は、この発明の実施の形態1による電動機制御装置を説明するためのもので、図1は、システムの構成を示すブロック図、図2は、図1における電流情報検出手段10と角度情報検出回路11との構成例とその信号伝達特性を示す説明図、図3は、サンプリングの同時性を説明する動作説明図、図4は、図1におけるゲート駆動手段8の説明図、図5は、ゲート駆動動作の伝達特性を説明する説明図、図6は、回転角度情報に対する転流ノイズ防止タイミングを説明する説明図、図7と図8とは、サンプリングの同時性と転流ノイズ防止のタイミングを説明する説明図である。
【0010】
図1にてシステムの構成と動作とを説明すると、システムは直流電源1と、直流電源1からの直流電力をU相、V相、W相の三相交流電力に変換するインバータ2と、インバータ2からの交流電力により駆動される電動機3と、インバータ2から電動機3への電力供給路に設けられたU相電流検出器4aとV相電流検出器4bと、電動機3の回転子の回転角度を検出する角度検出器5と、U相電流検出器4aとV相電流検出器4bと角度検出器5とのそれぞれから信号を入力してインバータ2にPWM信号を与え、電動機3を制御する制御装置6とから構成されている。
【0011】
インバータ2には半導体電力変換装置として、U相p側のIGBT7aと、U相n側のIGBT7bと、図示しないがV相p側のIGBT、V相n側のIGBT、W相p側のIGBT、W相n側のIGBTの合計六個のスイッチング素子が三相ブリッジの構成にて接続されており、制御装置6からのPWM信号により駆動されるゲート駆動手段8のゲート信号によりスイッチング動作し、直流電源1からの直流電力を三相交流電力に変換して電動機3に供給する。
【0012】
制御装置6は、外部からのトルク指令値と、後述する電流情報と角度情報とにより電動機3に与えるべき電圧指令値を出力するベクトル制御演算手段9と、上記の各電流検出器4a、4bが検出した電流信号を入力して電流情報を出力する電流情報検出手段10と、角度検出器5からの回転角度信号を入力して角度情報を出力する角度情報検出手段11と、三角波のキャリア信号を生成するキャリア信号生成手段12と、キャリア信号を入力して電流情報と角度情報とのサンプリング時期を演算するサンプリング時期演算手段13と、サンプリング時期演算手段13の信号によりサンプリング指示信号を出力するサンプリング指示手段14と、サンプリング指示手段14の指示に基づき電流情報をサンプリングするサンプラ15aおよび15bと、サンプリング指示手段14の指示に基づき角度情報をサンプリングするサンプラ16と、ベクトル制御演算手段9の電圧指令値とキャリア信号生成手段12からのキャリア信号とによりPWM信号を生成してゲート駆動手段8に与えるPWM信号生成手段17とから構成されている。
【0013】
制御装置6には、図示しない外部装置から電動機3に対して与えられるトルク指令値τmと、U相電流検出器4aが検出するU相電流信号と、V相電流検出器4bが検出するV相電流信号と、角度検出器5が検出する電動機3の回転角度信号とが入力信号として入力される。各相の電流信号を入力する電流情報検出手段10は、後述する回路例のような構成を持ち、信号に含まれるノイズ成分の除去や信号レベル変換などのための波形整形を行い、U相電流情報としてiuを、V相電流情報としてivを出力する。また、角度情報検出手段11も後述する回路例のような構成を持ち、信号波形の整形を行って角度情報θを出力する。
【0014】
サンプリング時期演算手段13は、キャリア信号生成手段12が出力する三角波のキャリア信号に基づき、後述するように電流情報のサンプリング時期と角度情報のサンプリング時期とを演算してそれぞれのタイミング信号をサンプリング指示手段14に与える。サンプリング指示手段14は与えられたタイミング信号によりサンプラ15aと15bとに指示を与えてそのタイミングにおける電流情報iuとivとをサンプリングしてベクトル制御演算手段9に与え、また、サンプラ16に指示を与えてそのタイミングにおける電動機3の角度情報θをサンプリングしてベクトル制御演算手段9に与える。ベクトル制御演算手段9は、外部から入力されたトルク信号τmと、電流情報iuおよびivと、角度情報θとに基づき、公知のベクトル制御法により電動機3に印可すべき三相交流電圧指令値VuとVvとVwとを演算してPWM信号生成手段17に出力する。
【0015】
PWM信号生成手段17にはこの三相交流電圧指令VuとVvとVwと、キャリア信号生成手段12からの三角波キャリア信号Vcとが入力され、公知の三角波比較PWM生成法によりインバータ2の六個のIGBTを操作するPWM信号としてTup、Tun、Tvp、Tvn、Twp、Twnを生成し、出力する。ここで、各PWM信号のuとvとwは三相の各相を、pとnは正側と負側とを示す識別符号である。このPWM信号Tup〜Twnがインバータ2のゲート駆動手段8に与えられ、信号レベルが変換されてゲート信号として各IGBTに与えられ、インバータ2からは三相交流電圧が出力されて電動機3をトルク指令値τmに基づき駆動する。
【0016】
この実施の形態における電動機制御装置は以上のように動作するが、制御精度を向上するためにはサンプラ15aと15bとがサンプリングする電流情報と、サンプラ16がサンプリングする角度情報とのサンプリングの同時性が確保される必要があり、このサンプリングの同時性の確保は、サンプリング時期演算手段13によるサンプリングタイミングの調整によりなされる。以下にこのサンプリングタイミングの調整に関してその内容を説明する。なお、このサンプリングの同時性とは電流検出器4aおよび4bと角度検出器5とによる計測時期における同時性のことである。
【0017】
電流情報検出手段10は、例えば、各相毎に図2の(a)に示すような回路により電流信号に含まれるノイズ成分の除去や信号レベル変換のための波形整形が行われるが、この処理のために電気的な処理遅れが発生し、図の電流波形に示すように入力信号に対して出力信号には信号処理遅れ時間tiが生ずる。また、角度情報検出手段11は、例えば、図2の(b)に示すような回路を用いて信号波形の整形を行うが、この処理のために同じく電気的な処理遅れが発生し、図に示すように入力信号に対して出力信号には信号処理遅れ時間tθが生ずる。
【0018】
この電流情報検出手段10および角度情報検出手段11の構成は、電流検出器4aと4b、および、角度検出器5の特性により異なるものになり、一般的に電流情報の信号処理遅れ時間tiと角度情報の信号処理遅れ時間tθは異なる値を持つものである。従って、信号処理後の電流情報と角度情報とを同時にサンプリングした場合には、図2におけるi2とθ2とを対にしてサンプリングすべきところを、i1とθ1とをサンプリングすることになり、サンプリングされた電流情報と角度情報とは信号処理時間の差により同時性が失われることになる。
【0019】
電流情報と角度情報とのサンプリングの同時性を保つためには、図3に示すように、電流情報検出手段10での電流情報の信号処理遅れ時間tiと角度情報検出手段11での角度情報の信号処理遅れ時間tθの差異を考慮し、電流情報のサンプリングタイミングtsmpl−iに対して角度情報のサンプリングタイミングtsmpl−θに信号処理遅れ時間の差分である(ti−tθ)の時間差を持たせてサンプリングを実行する必要があり、サンプリング時期演算手段13のタイミング指示にこの時間差を持たせることにより、電流情報と角度情報とのサンプリングの同時性が保たれることになる。
【0020】
また、ゲート駆動手段8は、例えば、各相毎に図4に示すような回路で構成されており、PWM信号生成手段17からPWM信号を入力してIGBTを駆動するためのゲート信号に変換するが、入力側と出力側との信号伝達には信号経路の絶縁のためにフォトカプラ等が用いられており、一般的にゲート駆動手段8の伝達特性はベクトル制御演算回路9の制御演算周期に比較して無視できない程度の信号処理遅れ時間を有している。
【0021】
図5に示すゲート駆動動作の伝達特性説明図は、三相の内のU相を代表として伝達特性と転流ノイズとの関係を示したもので、図の(a)はある時点での三角波キャリア信号Vcと電圧指令値Vuとの関係を示し、この関係に三角波比較PWM生成法を用いるとPWM信号は、図5(b)のTupとTunに示すような信号になる。このPWM信号がゲート駆動手段8によってゲート信号に変換されると、図の(c)のゲート信号IGBTupとIGBTunのようになり、PWM信号とゲート信号との間にはtgにて示す信号処理遅れ時間が生じ、このゲート信号により生成されるU相電流の電流波形は図の(d)に示すように変化して転流の都度スイッチングノイズ、すなわち、転流ノイズが重畳する。
【0022】
このキャリア信号Vcとゲート信号と角度情報との関係を示したのが図6であり、角度情報にもゲート信号によるIGBTの転流の都度転流ノイズが重畳するが、キャリア信号Vcの最大値と最低値とがこの転流のほぼ中間になるため、サンプリング時期演算手段13がキャリア信号Vcの最大値と最低値とを検出して最大値と最低値とから信号処理遅れ時間tg相当の時間後に角度情報のサンプリング指示を行えば転流ノイズを避けることができる。
【0023】
図7は、角度情報と電流情報との同時性の確保と、転流ノイズの重畳回避とを実現するためのサンプリングタイミングを示したものである。図の(a)に示す三角波キャリア信号Vcと電圧指令値Vuとに対し、PWM信号は両者の交点で反転し、ゲート信号は信号処理遅れ時間tg後に反転してIGBTを操作するため、上記したように、キャリア信号Vcの最大値と最低値とを検出して時間tg後に角度情報のサンプリング(tsmpl−θ)を行い、このサンプリング点から電流情報の信号処理遅れ時間tiと角度情報の信号処理遅れ時間tθとの差分である(ti−tθ)のタイミング差で電流情報のサンプリング(tsmpl−i)を行うことにより、電流情報と角度情報との同時性を保ちながら転流ノイズを避けたサンプリングが可能になる。
【0024】
図8は電流情報と角度情報との同時性を保ちながら転流ノイズを避けたサンプリングを行うための、他のサンプルタイミング示すもので、キャリア信号Vcの最大値と最低値とを検出して信号処理遅れ時間tg後に電流情報のサンプリング(tsmpl−i)を行い、このサンプリング点から電流情報の信号処理遅れ時間tiと角度情報の信号処理遅れ時間tθとの差分である(ti−tθ)のタイミング差で角度情報のサンプリング(tsmpl−θ)を行うようにしたものであり、図7に示したタイミングとは(ti−tθ)分ずれることになるが、このタイミングでも電流情報と角度情報との同時性を保ちながら転流ノイズを避けることができる。
【0025】
以上のようにサンプリング時期演算手段13が、キャリア信号からサンプリングタイミングを演算して出力し、サンプリング指示手段14がサンプラ15aと15b、および、サンプラ16を駆動して電流情報と角度情報とをサンプリングすることにより、角度情報と電流情報との同時性を確保しながら転流ノイズの重畳を回避でき、制御精度が高く、応答性に優れた電動機制御を得ることが可能になるものである。なお、電流検出をU相とV相との検出にて説明したが、どの相を検出しても良く、また、三相全てを検出しても同様の動作と効果とが得られるものである。
【0026】
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2による電動機制御装置のシステムの構成を示すブロック図であり、この実施の形態は上記した実施の形態1の電動機制御装置に対して、ゲート駆動手段8に温度検出手段18を、電流情報検出手段10に温度検出手段19を、角度情報検出手段11に温度検出手段20を設け、これらの各温度検出手段から温度信号を入力してサンプリング時期演算手段13に温度による時間遅れの補正値ΔtgとΔtiとΔtθとを出力してサンプリング時期を補正する温度変動補償手段21を設けるようにしたものである。
【0027】
電流情報検出手段10と、角度情報検出手段11と、ゲート駆動手段8とは一般的に電子デバイスにより構成される。多くの電子デバイスは温度変化に対してその特性を変化させる温度依存性を持っていることから、回路の構成によっては各手段の信号処理遅れ時間tgとtiとtθとは温度により変化する。従って、タイミング補正を行う必要のあるゲート駆動手段8と電流情報検出手段10と角度情報検出手段11とのそれぞれに温度検出手段18〜20を設け、検出した温度を温度変動補償手段21に入力してそれぞれの温度に対する信号処理遅れ時間の変動分としてtgに対するΔtgと、tiに対するΔtiと、tθに対するΔtθとを演算し、それぞれを元の信号処理遅れ時間tgとtiとtθとに合算することにより、温度の変化に対しても常に角度情報と電流情報との同時性が得られ、転流ノイズの重畳が回避できるものである。
【0028】
なお、温度変動補償手段21による演算は、各手段の特性の温度依存性を温度に関する算式としても良く、また、ルックアップテーブルとして記憶させても良い。また、温度検出を電流情報のサンプリングと角度情報のサンプリングとに影響を及ぼす回路にのみ設置することもでき、温度を環境温度により代表させることも、環境温度と運転時間と負荷の状況とにより推定する方式を採ることもできるものである。
【0029】
実施の形態3.
図10は、この発明の実施の形態3による電動機制御装置の動作を説明する説明図であり、この実施の形態は、実施の形態1の電動機制御装置と比較して、キャリア信号生成手段12が生成する三角波のキャリア信号波形が異なるもので、そのために、サンプリング時期演算手段13によるサンプリング時期の設定をキャリア信号波形に応じて変えるようにしたものである。
【0030】
図10の(a)に示すように、この実施の形態のキャリア信号生成手段12は鋸歯状波のキャリア信号Vcを出力する。PWM信号生成手段17が生成するPWM信号は鋸歯状のキャリア信号Vcと電圧指令値Vuとの交点にて反転するため、反転はキャリア信号電圧の立ち上がり途上と最大値時点=最小値時点とで発生することになる。ゲート駆動手段8が生成するゲート信号の反転は、実施の形態1の場合と同様にPWM信号に対して信号処理遅れ時間tgを持つため、図10の(b)と(c)とに示すように、キャリア信号の最大値と最小値とから時間tg後に転流ノイズが発生し、実施の形態1と同様のサンプリング時期では角度情報と電流情報とには転流ノイズが重畳することになる。
【0031】
従って、この実施の形態においては図10に示すように、サンプリングのタイミングをゲート信号の反転に対して時間tΔだけ早めるものである。例えば、電流情報の信号処置遅れ時間tiの方が角度情報の信号処理遅れ時間tθより大きい場合には、サンプリング時期演算手段13がキャリア信号の最大値を検出して(tg−tΔ)の時点にて角度情報をサンプリングし、この(tg−tΔ)の時点より(ti−tθ)早い時点で電流情報がサンプリングされるようにサンプルリング時期が設定される。電流情報の信号処理遅れ時間tiの方が角度情報の信号処理遅れ時間tθより小さい場合にはこの逆になるが、通常はti>tθである。
【0032】
このようにサンプリング時期演算手段13によるサンプリング時期を設定することにより、キャリア信号生成手段12の生成するキャリア信号が鋸歯状波であっても角度情報と電流情報との同時性が確保でき、転流ノイズの重畳回避が可能になり、制御精度が高く、応答性に優れた電動機制御装置を得ることができるものである。
【0033】
【発明の効果】
以上に説明したように、この発明の電動機制御装置において、請求項1に記載の発明によれば、電動機に電力供給するインバータにPWM信号を与えるPWM信号生成手段と、電動機の電流から電流情報を出力する電流情報検出手段と、電動機の回転角度信号から角度情報を出力する角度情報検出手段と、電流情報と角度情報とをサンプリングする電流情報サンプラと角度情報サンプラと、このそれぞれのサンプラのサンプリング時期を演算するサンプリング時期演算手段とを備え、同一時期における前記電動機の電流信号と回転角度信号から前記電流情報と回転情報をサンプリングするために、サンプリング時期演算手段が出力するサンプリング時期、電流情報のサンプリング時期と角度情報のサンプリング時期との間に所定の時間差を有するように設定されたので、角度情報と電流情報とのサンプリングの同時性を確保することができ、制御精度が高く、応答性に優れた電動機制御装置を得ることができるものである。
【0034】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、PWM信号生成手段のキャリア信号が三角波の場合に、サンプリング時期演算手段が演算する角度情報サンプラのサンプリング時期が、三角波の最大値、または、最低値からゼロを含む所定の時間経過後に設定されるようにしたので、角度情報と電流情報との同時性を確保しながら各情報が転流ノイズに影響されることを防止することができるものである。
【0035】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、電流情報のサンプリング時期と角度情報のサンプリング時期との間の所定の時間差を、電流情報検出手段の信号処理遅れ時間と、角度情報検出手段の信号処理遅れ時間との時間差に基づき設定するようにしたので、信号処理遅れ時間に起因するサンプリング時期の非同時性に対する補正が可能になるものである。
さらにまた、請求項4に記載の発明によれば、請求項2の発明において、インバータにゲート駆動手段を設け、このゲート駆動手段のPWM信号からゲート信号に変換処理するときの信号処理遅れ時間に基づき、三角波の最大値または最低値からの所定の時間を設定するようにしたので、角度情報や電流情報のサンプリング時期を確実に転流ノイズの影響外の時期に設定することができるものである。
【0036】
また、請求項5に記載の発明によれば、請求項3と4との発明において、電流情報検出手段と角度情報検出手段とゲート駆動手段とに温度検出手段を設け、電流情報検出手段の信号処理遅れ時間と角度情報検出手段の信号処理遅れ時間との時間差に基づき設定される所定の時間差と、ゲート駆動手段のPWM信号からゲート信号に変換処理するときの信号処理遅れ時間に基づき設定される所定の時間とを、それぞれの温度により補正するようにしたので、環境温度が変化しても常に信号処理遅れ時間に起因するサンプリング時期の非同時性の補正ができ、また、角度情報や電流情報のサンプリング時期を確実に転流ノイズの影響外に設定することができるものである。
【0037】
さらに、請求項6に記載の発明によれば、キャリア信号が鋸歯状波である場合において、サンプリング時期演算手段が演算する角度情報サンプラのサンプリング時期が、鋸歯状波の最大値から所定の時間前に設定されるようにしたので、キャリア信号の波形に影響されず、信号処理遅れ時間に起因するサンプリング時期の補正ができ、また、角度情報や電流情報のサンプリング時期を確実に転流ノイズの影響外に設定することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による電動機制御装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による電動機制御装置の電流情報検出手段と角度情報検出手段の説明図である。
【図3】 この発明の実施の形態1による電動機制御装置のサンプリング動作の説明図である。
【図4】 この発明の実施の形態1による電動機制御装置のゲート駆動手段の説明図である。
【図5】 この発明の実施の形態1による電動機制御装置のゲート駆動動作の説明図である。
【図6】 この発明の実施の形態1による電動機制御装置の転流ノイズ防止の説明図である。
【図7】 この発明の実施の形態1による電動機制御装置のサンプリングの同時性と転流ノイズ防止の説明図である。
【図8】 この発明の実施の形態1による電動機制御装置のサンプリングの同時性と転流ノイズ防止の説明図である。
【図9】 この発明の実施の形態2による電動機制御装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図10】 この発明の実施の形態3による電動機制御装置の動作説明図である。
【符号の説明】
1 直流電源、2 インバータ、3 電動機、4a、4b 電流検出器、
5 角度検出器、6 制御装置、7a、7b IGBT、
8 ゲート駆動手段、9 ベクトル制御演算手段、
10 電流情報検出手段、11 角度情報検出手段、
12 キャリア信号生成手段、13 サンプリング時期演算手段、
14 サンプリング指示手段、15a、15b、16 サンプラ、
17 PWM信号生成手段、18、19、20 温度検出手段、
21 温度変動補償手段。

Claims (6)

  1. 電動機に対する供給電力を電力変換するインバータに電圧指令値とキャリア信号とに基づくPWM信号を与えるPWM信号生成手段、前記電動機の電流信号を入力して電流情報を出力する電流情報検出手段、前記電動機の回転角度信号を入力して角度情報を出力する角度情報検出手段、前記電流情報と前記角度情報とをサンプリングしてベクトル制御演算手段に与える電流情報サンプラと角度情報サンプラ、前記電流情報サンプラと前記角度情報サンプラとのそれぞれのサンプリング時期を演算するサンプリング時期演算手段を備え、同一時期における前記電動機の電流信号と回転角度信号から前記電流情報と角度情報をサンプリングするために、前記サンプリング時期演算手段が出力するサンプリング時期、前記電流情報のサンプリング時期と前記角度情報のサンプリング時期との間に所定の時間差を有するように設定されたことを特徴とする電動機制御装置。
  2. 前記キャリア信号が三角波であり、前記サンプリング時期演算手段の演算する前記角度情報のサンプリング時期が、前記三角波の最大値、または、最低値からゼロを含む所定の時間経過後に設定されることを特徴とする請求項1に記載の電動機制御装置。
  3. 前記電流情報のサンプリング時期と前記角度情報のサンプリング時期との間の前記所定の時間差が、前記電流情報検出手段の信号処理遅れ時間と前記角度情報検出手段の信号処理遅れ時間との時間差に基づき設定されることを特徴とする請求項1に記載の電動機制御装置。
  4. 前記インバータに前記PWM信号をゲート信号に変換するゲート駆動手段を設け、前記三角波の最大値または最低値からの所定の時間が、前記ゲート駆動手段の前記PWM信号から前記ゲート信号に変換処理するときの信号処理遅れ時間に基づき設定されることを特徴とする請求項2に記載の電動機制御装置。
  5. 前記電流情報検出手段と前記角度情報検出手段と前記ゲート駆動手段とに温度検出手段を設け、前記電流情報検出手段の信号処理遅れ時間と前記角度情報検出手段の信号処理遅れ時間との時間差に基づき設定される前記所定の時間差と、前記ゲート駆動手段の前記PWM信号から前記ゲート信号に変換処理するときの信号処理遅れ時間に基づき設定される前記所定の時間とが、それぞれの温度により補正されるようにしたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の電動機制御装置。
  6. 前記キャリア信号が鋸歯状波であり、前記サンプリング時期演算手段が演算する前記角度情報のサンプリング時期が、前記鋸歯状波の最大値から所定の時間前に設定されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電動機制御装置。
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