JP3804481B2 - デュアルモード・バンドパスフィルタ、デュプレクサ及び無線通信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばマイクロ波〜ミリ波帯の通信機において帯域フィルタとして用いられるデュアルモード・バンドパスフィルタの帯域幅調整方法及び該デュアルモード・バンドパスフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高周波領域で用いられるバンドパスフィルタとして、デュアルモード・バンドパスフィルタが種々提案されている(MINIATURE DUAL MODE MICROSTRIP FILTERS, J.A. Curtis and S.J. Fiedziuszko, 1991 IEEE MTT-S Digestなど)。
【0003】
図23及び図24は、従来のデュアルモード・バンドパスフィルタを説明するための各模式的平面図である。
図23に示すバンドパスフィルタ200では、誘電体基板(図示せず)上に円形の導電膜201が形成されている。この導電膜201に、互いに90°の角度をなすように、入出力結合回路202及び入出力結合回路203が結合されている。そして、上記入出力結合回路203が配置されている部分に対して中心角45°の角度をなす位置に、先端開放スタブ204が形成されている。これによって共振周波数が異なる2つの共振モードが結合され、バンドパスフィルタ200は、デュアルモード・バンドパスフィルタとして動作するように構成されている。
【0004】
また、図24に示すデュアルモード・バンドパスフィルタ210では、誘電体基板上に略正方形の導電膜211が形成されている。この導電膜211に、互いに90°の角度をなすように、入出力結合回路212,213が結合されている。また、入出力結合回路213に対して135°の位置のコーナー部が欠落されている。欠落部分211aを設けることにより、2つの共振モードの共振周波数が異ならされており、該2つのモードの共振が結合されて、バンドパスフィルタ210は、デュアルモード・バンドパスフィルタとして動作する。
【0005】
他方、円形の導電膜に代えて、円環状の導電膜を用いたデュアルモードフィルタも提案されている(特開平9−139612号公報、特開平9−162610号公報など)。すなわち、円環状のリング伝送路を用い、図24に示したデュアルモード・バンドパスフィルタと同様に、中心角90°の角度をなすように入出力結合回路を配置し、かつリング状伝送路の一部に先端開放スタブを設けてなるデュアルモードフィルタが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図23及び図24に示した従来のデュアルモード・バンドパスフィルタでは、1つの導電膜パターンを形成することにより2段のバンドパスフィルタを構成することができ、従ってバンドパスフィルタの小型化を図り得る。
【0007】
しかしながら、円形や正方形の導電膜パターンにおいて、上記特定の角度を隔てて入出力結合回路を結合する構成を有するため、結合度を大きくすることができず、広い通過帯域を得ることができないという欠点があった。
【0008】
また、図23に示されているバンドパスフィルタでは、導電膜201が円形であり、図24に示すバンドパスフィルタでは、導電膜211がほぼ正方形と形状が限定されている。従って、設計の自由度が低いという問題もあった。
【0009】
また、上記バンドパスフィルタでは、円形や正方形の導電膜の寸法などにより周波数帯域が決定され、帯域を調整することが困難であった。
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、小型化を図ることができ、小型化・広帯域化を図ることができ、設計の自由度に優れたデュアルモード・バンドパスフィルタを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願の第1の発明は、誘電体基板と、前記誘電体基板の一方主面または誘電体基板内のある高さ位置において、部分的に形成された矩形の金属膜と、前記金属膜と誘電体基板層を介して対向するように、前記誘電体基板内部または誘電体基板の主面に形成されたグラウンド電極と、前記金属膜の対向する一対の辺にそれぞれ結合されている第1,第2の入出力結合回路と、前記第1または第2の入出力結合回路から入力信号が印加された場合に生じる、前記第1,第2の入出力結合回路が前記金属膜に結合している点間を結ぶ方向に伝搬する第1の共振モードと、該第1の共振モードと直交する方向に伝搬する第2の共振モードとの2つの共振モードにおいて、第1または第2の共振モードの共振電界を弱めて該第1または第2の共振モードの共振周波数を変化させることにより、第1,第2の共振モードが結合されるように、前記金属膜に付加されている、少なくとも1個のコンデンサとを備え、該コンデンサが、前記金属膜と、該金属膜に対向配置されておりかつ前記グラウンド電極に接続されている容量取り出し電極とにより構成されていることを特徴とする、デュアルモード・バンドパスフィルタである。
本願の第2の発明は、誘電体基板と、前記誘電体基板の一方主面または誘電体基板内のある高さ位置において、部分的に形成された矩形以外の多角形の金属膜と、前記金属膜と誘電体基板層を介して対向するように、前記誘電体基板内部または誘電体基板の主面に形成されたグラウンド電極と、前記金属膜の隣接する辺にそれぞれ結合されている第1,第2の入出力結合回路と、前記第1または第2の入出力結合回路から入力信号が印加された場合に生じる、前記第1,第2の入出力結合回路が前記金属膜に結合している点間を結ぶ方向に伝搬する第1の共振モードと、該第1の共振モードと直交する方向に伝搬する第2の共振モードとの2つの共振モードにおいて、第1または第2の共振モードの共振電界を弱めて該第1または第2の共振モードの共振周波数を変化させることにより、第1,第2の共振モードが結合されるように、前記金属膜に付加されている、少なくとも1個のコンデンサとを備え、該コンデンサが、前記金属膜と、該金属膜に対向配置されておりかつ前記グラウンド電極に接続されている容量取り出し電極とにより構成されていることを特徴とする、デュアルモード・バンドパスフィルタである。以下、第1,第2の発明を、本発明と総称することとする。
【0011】
本発明のある特定の局面では、上記容量取り出し電極が、誘電体基板内に構成されており、該容量取り出し電極と上記金属膜との間の誘電体基板層により静電容量が取り出される。
【0012】
上記容量取り出し電極は、誘電体基板内に形成されており、かつ一端が前記グラウンド電極に電気的に接続されているビアホール電極により構成することができる。
【0013】
また、上記容量取り出し電極が、ビアホール電極の先端に形成されており、かつ誘電体基板層を介して上記金属膜に部分的に対向するように配置されている対向電極膜をさらに備えていてもよい。
【0014】
上記のように、容量取り出し電極の構造及び平面形状等については特に限定されるものではない。
【0015】
本発明に係るデュプレクサは、本発明に従って構成されたデュアルモード・バンドパスフィルタを少なくとも1つ有する。
本発明に係る無線通信装置は、上記のようにして構成されたデュアルモード・バンドパスフィルタ、またはデュプレクサを有する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るデュアルモード・バンドパスフィルタの具体的な実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施例に係るデュアルモード・バンドパスフィルタを説明するための斜視図であり、図2はその要部を模式的に示す平面図である。
デュアルモード・バンドパスフィルタ1は、矩形板状の誘電体基板2を有する。誘電体基板2は、本実施例では、比誘電率εr=6.27のBa,Al,Siの酸化物を主成分とするセラミック材により構成されている。もっとも、本実施例及び以下の実施例において、誘電体基板2を構成する誘電体材料については、フッ素樹脂のような合成樹脂やBAS材等の適宜の誘電体材料を用いることができる。
【0018】
誘電体基板2の厚みは特に限定されないが、本実施例では、300μmとされている。
誘電体基板2の上面2aには、共振器を構成するために、矩形の金属膜3が形成されている。矩形の金属膜3は、誘電体基板2の上面2aにおいて部分的に形成されており、かつ本実施例では、外形が2.0×2.0mmの正方形の形状を有する。
【0019】
他方、誘電体基板2の下面には、全面にグラウンド電極4が形成されている。
上記金属膜3には、所定のギャップを隔てて、入出力結合回路5,6が配置されている。本実施例では、入出力結合回路5,6は、特に詳細は図示しないが、誘電体基板2の上面において、金属膜3の対向し合っている一対の辺3a,3bと所定のギャップを隔てて配置された金属膜により構成されている。すなわち、入出力結合回路5,6は、金属膜3に容量結合されている。
【0020】
図1及び図2に破線で示すように金属膜3の下方には、容量取り出し電極としてのビアホール電極7,8が配置されている。図3に要部を断面図で示すように、ビアホール電極7は、誘電体基板2の下面から上方に延ばされており、ビアホール電極7の下端がグラウンド電極4に電気的に接続されている。また、ビアホール電極7の上端は誘電体基板層を介して金属膜3に対向されている。ビアホール電極8も、ビアホール電極7と同様に構成されている。従って、金属膜3とビアホール電極7,8との間でコンデンサが構成され、ビアホール電極7,8と金属膜3との間の誘電体基板層に基づく静電容量が金属膜3に付加されている。
【0021】
本実施例では、上記ビアホール電極7,8の上端面は、直径300μmの円形の形状を有するように構成されている。なお、ビアホール電極の両端面、すなわち金属膜3と対向する部分の平面形状は、円形の他、四角形等の任意の形状とすることができる。
【0022】
また、上記ビアホール電極7,8の上端と金属膜3との誘電体基板層の厚みは100μmとされている。
本実施例では、入出力結合回路5,6の一方とグラウンド電極4との間に入力電圧を印可することにより、入出力結合回路5,6の他方とグラウンド電極4との間で出力が取り出される。この場合、金属膜3では、入出力結合回路5,6が結合されている点を結ぶ方向に伝搬する第1の共振モードと、該方向と直交する方向に伝搬する第2の共振モードとの2つのモードの共振が発生する。そして、本実施例では、上記ビアホール電極7,8によりコンデンサが金属膜3に付加されており、該ビアホール電極7,8が上記2つの共振モードが結合するように配置されている。従って、金属膜3において生じた2つのモードの共振が結合されてデュアルモード・バンドパスフィルタとして動作する。
【0023】
なお、金属膜3において生じる第1,第2のモードの共振を結合するには、一方のモードの共振周波数を、双方のモードが結合するように位置させれば良く、本実施例では、モード、辺3a,3bを結ぶ方向に伝搬する第1の共振モードの共振電界が強い部分における共振電界を弱めるようにビアホール電極7,8が配置されて、2つのモードの共振が結合されている。
【0024】
図5は、本実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタ1の周波数特性と、上記ビアホール電極7,8が設けられていないことを除いては上記実施例と同様にして構成された比較例の周波数特性を示す図である。図5において、実線Aは実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタの反射特性を、実線Bは通過特性を示し、破線Cは比較例の反射特性を、破線Dは比較例の通過特性を示す。図5から明らかなようにビアホール電極7,8が設けられていない比較例では、2つの共振モードが結合されておらず、有効な帯域幅を得ることができない。これに対して、実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタでは、二つのモードの共振が結合されて、Eで示す通過帯域の形成されていることがわかる。
【0025】
なお、本実施例では、第1の容量取り出し電極が上記ビアホール電極7により構成されている。もっとも、図4に示す変形例のように、誘電体基板2のある高さ位置に対向電極膜9を形成しても良い。図4に示す構造では、対向電極9の下面がビアホール電極7に接続されており、ビアホール電極7の下端がグラウンド電極4に接続されている。すなわち、ビアホール電極7は、対向電極膜9をグラウンド電極4に電気的に接続する機能を果たしている。
【0026】
第1の容量取り出し電極をビアホール電極7と共に構成している対向電極膜9の平面形状は特に限定されず、四角形、円形、四角形以外の多角形などのさまざまな形状とすることができる。図4に示す変形例のようにビアホール電極7に加えて対向電極膜9を形成することにより、より大きな静電容量を金属膜3に付加することができる。
【0027】
本願発明者らは、上述した実施例から明らかなように、金属膜3にコンデンサを付加することにより、金属膜3に生じる2つの共振モードを結合させてバンドパスフィルタを構成し得ることを見出した。
【0028】
そこで、上記ビアホール電極7,8の位置を移動させた場合に、周波数特性がどのように変化するかを調べた。すなわち、図6に模式的平面図で示すように、上述したビアホール電極7,8が形成されている位置を、破線F,Gで示すように辺3b側に向かって100μm、あるいは200μm移動させて、2種類のデュアルモード・バンドパスフィルタを作製した。このようにして得られた2種類のデュアルモード・バンドパスフィルタの周波数特性と、上記実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタの周波数特性とを図7に示す。
【0029】
図7において、実線Aは前述した実施例の反射特性を、実線Bは通過特性を示し、破線H及び破線Iは、それぞれ、100μmだけビアホール電極を移動させた場合の反射特性及び通過特性を示し、一点鎖線J,Kは、それぞれ、ビアホール電極の位置を200μmを移動させた場合の反射特性及び通過特性を示す。
【0030】
図7から明らかなように、ビアホール電極7,8の位置を移動させることにより、2つのモードの内一方のモードの共振周波数が移動し、帯域幅を調整し得ることがわかる。
【0031】
また、上記実施例において、ビアホール電極の上端面の径を、180μm、200μm及び230μmに変更した場合の各周波数特性を図8に示す。図8において、実線L,Mは、それぞれ、ビアホール電極の径が230μmの場合の反射特性及び通過特性を、一点鎖線N,Oは、それぞれ、ビアホール電極の径が200μmの場合の反射特性及び通過特性を、破線P,Qは、ビアホール電極7,8の径が180μmの場合の反射特性及び通過特性を示す。
【0032】
図8から明らかなように、上記ビアホール電極7,8の径を変化させた場合、すなわち金属膜3とビアホール電極7,8との間で取り出される静電容量の大きさを変更することにより、2つのモードのうち一方の共振周波数が変化し、帯域幅を調整し得ることがわかる。
【0033】
すなわち、図7及び図8の結果から明らかなように、本実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタでは、金属膜3に、2つのモードの共振を結合させるためのコンデンサを付加するにあたり、該コンデンサの位置を及び静電容量の大きさを変化させることにより、帯域幅を容易に調整し得ることがわかる。
【0034】
また、本実施例では、上記のように金属膜3にコンデンサの付加することにより、2つのモードの共振を結合させてデュアルモード・バンドパスフィルタが構成されているため、入出力結合回路5,6の金属膜3に対する結合点の位置は、必ずしも、従来例のように金属膜の中心に対して中心角で90度をなすように配置される必要はない。従って、デュアルモード・バンドパスフィルタの設計の自由度を高めることができると共に、所望とする帯域幅のデュアルモード・バンドパスフィルタを容易に得ることができる。
【0035】
図9は、本発明の第2の実施例に係るデュアルモード・バンドパスフィルタを説明するための模式的平面図であり、第1の実施例について示した図2に相当する図である。
【0036】
第2の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタ11では、金属膜3に付加されるコンデンサがビアホール電極7により構成される1個のコンデンサのみである。すなわち、ビアホール電極8が形成されていないことを除いては、第1の実施例と同様に構成されている。
【0037】
図9に示した第2の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタの周波数特性を図10に示す。図10に示すように、本実施例においても、ビアホール電極7によるコンデンサの付加により、デュアルモード・バンドパスフィルタとしての帯域幅が得られていることがわかる。また、図10に示されている各特性を図5の実線A,Bと比較すると、コンデンサの数を変化させることにより、帯域幅を調整し得ることがわかる。
【0038】
図11は、本発明の第3の実施例に係るデュアルモード・バンドパスフィルタの模式的平面図であり、第1の実施例について示した図2に相当する図である。第3の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタ12では、金属膜3に対向するように、3個のビアホール電極7,8a,8bが配置されている。その他の点については、第1の実施例と同様である。
【0039】
ビアホール電極8a,8bをビアホール電極7と同じ大きさを有するように構成した場合のデュアルモード・バンドパスフィルタ12の周波数特性を図12に示す。
【0040】
図12から明らかなように、第3の実施例においても、3個のビアホール電極7,8a,8bに基づくコンデンサが金属膜3に付加されて、2つのモードの共振が結合されて、デュアルモード・バンドパスフィルタとしての特性が得られていることがわかる。また、図5及び図10に示した第1,第2の実施例の周波数特性と、図12に示した第3の実施例の周波数特性を比較すれば明らかなように、ビアホール電極の数を増大させることにより、帯域幅を調整し得ることがわかる。
【0041】
同様に、図13は、第4の実施例に係るデュアルモード・バンドパスフィルタの模式的平面図であり、第1の実施例において示した図2に相当する図である。第4の実施例では、4個のビアホール電極7a,7b,8a,8bが配置されている。ビアホール電極7a,7b,8a,8bは、第1の実施例のビアホール電極7と同様の寸法で構成されている。このデュアルモード・バンドパスフィルタ13の周波数特性を図14に示す。
【0042】
図14から明らかなように本実施例においても、2つのモードがコンデンサの付加により結合されて、デュアルモード・バンドパスフィルタとしての特性の得られていることがわかる。
【0043】
また、図5、図10及び図12に示した各実施例の周波数特性と、図14に示した周波数特性を比較すれば明らかなように、ビアホール電極の数を変化させることにより、帯域幅を調整し得ることがわかる。
【0044】
図15は、参考例に係るデュアルモード・バンドパスフィルタを説明するための模式的平面図であり、第1の実施例について示した図2に相当する図である。
【0045】
参考例のデュアルモード・バンドパスフィルタ15では、金属膜3に付加されるコンデンサが、誘電体基板内に形成されたビアホール電極ではなく、誘電体基板表面に形成された第1の容量取り出し電極16,17により構成されている。すなわち、第1の容量取り出し電極16,17は誘電体基板表面において金属膜3の対向し合っている辺3c,3dと所定のギャップを隔てて配置されている矩形の金属膜により構成されている。本参考例では、第1の容量取り出し電極16,17は、辺3c,3dと150μmのギャップを隔てて、かつ1400μmの長さに渡り対向されている。その他の構造については、第1の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタ1と同様であるため、詳細な説明については第1の実施例の説明を援用することにすることにより省略する。
【0046】
参考例のデュアルモード・バンドパスフィルタ15の周波数特性を図16に示す。
図16から明らかなように、参考例においても、金属膜3に対して、第1の容量取り出し電極16,17に基づくコンデンサの付加により、2つのモードの共振が結合されて、デュアルモード・バンドパスフィルタとしての特性が得られていることがわかる。
【0047】
なお、本参考例では、第1の容量取り出し電極16,17は、誘電体基板の表面に金属膜を形成することにより構成されている。従って、金属膜3の形成と同じ工程で、第1の容量取り出し電極16,17を容易に形成することができる。
【0048】
また、容量取り出し電極16,17は、誘電体基板の表面に形成されているので容量取り出し電極16,17をトリミングすることなどにより、金属膜3に付加される静電容量を容易に調整することができる。
【0049】
本参考例においても、入出力結合回路5,6の金属膜3に対する結合点の位置は、必ずしも、中心角で90度の角度をなすように配置する必要がない。さらに、第1の容量取り出し電極16,17により付加される静電容量の大きさ、及び第1の容量取り出し電極16,17の位置を変更することにより、すなわち一方の共振モードにおける強い共振電界を発生する部分の該共振電界を弱めるようにコンデンサの配置を変えることにより、容易に帯域幅を調整することができる。
【0050】
なお、参考例では、誘電体基板の表面に第1,第2の容量取り出し電極16,17が形成されていたが、誘電体基板内に金属膜3が形成されている場合には、金属膜3の上方において、第1の容量取り出し電極16,17を金属膜3と誘電体基板層を介して対向するように構成しても良い。あるいは、誘電体基板内において、金属膜3と第1の容量取り出し電極16,17を本実施例と同様に同一高さ位置との平面内に形成しても良い。
【0051】
第1〜第4の実施例では、金属膜3は正方形の形状を有するように構成されていたが、本発明におけるデュアルモード・バンドパスフィルタにおいて共振器を構成するために金属膜の平面形状は特に限定されるものではない。
【0052】
図17は、本発明の第5の実施例に係るデュアルモード・バンドパスフィルタを説明するための模式的平面図であり、第1の実施例について示した図2に相当する図である。第5の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタ21では、金属膜23の平面形状が菱形とされている。その他の点については、第1の実施例と同様に構成されているため、第1の実施例の説明を援用することにより詳細な説明を省略する。
【0053】
上記菱形の金属膜23の寸法を、1700μmとし、第1の実施例と同様にしてデュアルモード・バンドパスフィルタを構成した。この周波数特性を図18に示す。図18から明らかなように、本実施例においてもビアホール電極7,8によるコンデンサが金属膜23に付加されているため、一方の共振モードの共振周波数がシフトされて、2つのモードの共振が結合されて、デュアルモード・バンドパスフィルタとしての特性が得られている。
【0054】
また、第1〜第4の実施例から推測されるように、第5の実施例においても、付加されるコンデンサの静電容量の大きさやコンデンサの位置を変化させることにより、帯域幅を容易に調整することができる。
【0055】
図19〜図21は、本発明デュアルモード・バンドパスフィルタの各変形例を示す模式的平面図であり、第1の実施例について示した図2に相当する図である。
【0056】
図19に示すデュアルモード・バンドパスフィルタ24では、平面形状が三角形の金属膜25が用いられており、図20に示す変形例のデュアルモード・バンドパスフィルタ26では、正五角形の平面形状を有する金属膜27が用いられており、図21に示す変形例のデュアルモード・バンドパスフィルタ28では、正六角形の平面形状を有する金属膜29が用いられている。
【0057】
このように、金属膜の平面形状は適宜変形することができ、これらの多角形状の他、楕円形や対称性を有しない無秩序な平面形状を有するものであっても良い。また、上述してきた実施例では、誘電体基板の上面に共振器を構成するための金属膜が配置されていたが、金属膜は誘電体基板内に埋設されていても良い。
【0058】
また、グラウンド電極4についても、誘電体基板2の内部に埋設されていても良い。
次に、本発明に係るデュアルモード・バンドパスフィルタを用いたデュプレクサ及び無線通信装置の実施例を、図22を参照して説明する。
【0059】
図22は、上記デュアルモード・バンドパスフィルタを用いたデュプレクサDPXを有する無線通信装置300の要部を示すブロック図である。
本実施例のデュプレクサDPXは、本発明にしたがって構成されたデュアルモード・バンドパスフィルタからなる第1,第2のバンドパスフィルタBPF1,BPF2を有する。第1,第2のバンドパスフィルタBPF1,BPF2の一端が、それぞれ、デュプレクサDPXの第1,第2のポートP1,P2に接続されており、バンドパスフィルタBPF1,BPF2の他端が共通接続され、デュプレクサDPXの第3のポートP3に接続されいる。
【0060】
また、第1のポートP1は、送信部TXに接続され、第2のポートP2は、受信部RXに接続されている。さらに、デュプレクサDPXの第3のポートP3は、アンテナANTに接続されている。
【0061】
本実施例のデュプレクサでは、本発明のデュアルモード・バンドパスフィルタからなる第1,第2のバンドパスフィルタBPF1,BPF2を有するので、設計の自由度に優れ、所望とする帯域幅を容易に得ることができる。また、無線通信装置300では、上記デュプレクサDPXを有するため、通信品質を容易に高めることができる。
【0062】
【発明の効果】
本発明に係るデュアルモード・バンドパスフィルタでは、誘電体基板の一方主面または誘電体基板内に、部分的に形成された金属膜に、第1,第2の入出力結合回路が結合されており、第1または第2の入出力係合回路から入力電圧が引加された場合に、金属膜において2つの共振モードが生じる。そして、該2つの共振モードが結合されるように、少なくとも1個のコンデンサが金属膜に付加されているので、デュアルモード・バンドパスフィルタとして動作させることができる。従来のデュアルモード・バンドパスフィルタでは、円形、あるいは正方形の特定の平面形状の金属膜に対し、入出力結合回路の結合点を、中心角が90度をなすように配置しなければならなかったのに対し、本発明に係るデュアルモード・バンドパスフィルタでは、上記コンデンサの付加により2つのモードの共振の結合が達成されているので、入出力結合回路の金属膜に対する結合点を互いに中心角で90度をなすように配置する必要が必ずしもない。
【0063】
また、上記コンデンサの静電容量及び形成位置を調整することにより、帯域幅を容易に調整することができる。
従って、設計の自由度が高く、所望とする帯域幅を容易に得ることができるバンドパスフィルタを提供とすることが可能となる。
【0064】
上記コンデンサが付加されている部分が、残りの部分に比べて相対的に強い共振電界を生じる金属膜部分の場合には、一方のモードの共振において、上記強い共振電界を生じる金属膜部分における共振電界がコンデンサの付加により弱められて、2つのモードの共振が結合される。
【0065】
上記コンデンサが、グラウンド電極に接続されており、誘電体基板内に構成されている第1の容量取り出し電極を有し、該第1の容量取り出し電極と金属膜との間の誘電体基板層により静電容量が取り出される構造の場合には、第1の容量取り出し電極の面積を調整することにより、帯域幅を容易に調整することができる。また、誘電体基板内に積層セラミック電子部品製造技術を用いてコンデンサを容易に構成することができ、デュアルモード・バンドパスフィルタの小型化を進めることができる。
【0066】
上記第1の容量取り出し電極がビアホール電極である場合には、セラミック多層基板の製造方法を用いて、容易に第1の容量取り出し電極を形成することができる。
【0067】
第1の容量取り出し電極がビアホール電極と、誘電体基板層を介して金属膜に対向するように誘電体基板内に設けられた対向電極膜とを備える場合には対向し電極膜の面積を調整することにより、付加されるコンデンサの静電容量を大きく調整することができる。
【0068】
本発明に係るデュプレクサでは、本発明にしたがって構成されたデュアルモード・バンドパスフィルタを備えるため、設計の自由度に優れ、所望とする帯域幅を容易に得ることができる。
【0069】
また、本発明に係る無線通信装置では、本発明にしたがって構成されたデュアルモード・バンドパスフィルタ、またはデュプレクサを有するので、設計の自由度に優れ、所望とする帯域幅を容易に得ることができ、通信品質を容易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例に係るデュアルモード・バンドパスフィルタの斜視図。
【図2】 第1の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタの要部を示す模式的平面図。
【図3】 第1の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタの要部の断面図。
【図4】 第1の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタの変形例を説明するための要部断面図。
【図5】 第1の実施例及び比較例の周波数特性を示す図。
【図6】 第1の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタにおいて、付加されるコンデンサの位置を変更した構造を説明するための模式的平面図。
【図7】 第1の実施例において、コンデンサの位置をずらした場合の周波数特性の変化を示す図。
【図8】 第1の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタにおいて、コンデンサを構成するビアホール電極の径を変化させた場合の周波数特性の変化を示す図。
【図9】 第2の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタの要部を示す模式的平面図。
【図10】 第2の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタの周波数特性を示す図。
【図11】 第3の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタの要部を示す模式的平面図。
【図12】 第3の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタの周波数特性を示す図。
【図13】 第4の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタの要部を示す模式的平面図。
【図14】 第4の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタの周波数特性を示す図。
【図15】 参考例のデュアルモード・バンドパスフィルタの要部を示す模式的平面図。
【図16】 参考例のデュアルモード・バンドパスフィルタの周波数特性を示す図。
【図17】 第5の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタの要部を示す模式的平面図。
【図18】 第5の実施例のデュアルモード・バンドパスフィルタの周波数特性を示す図。
【図19】 本発明のデュアルモード・バンドパスフィルタの変形例の要部を示す模式的平面図。
【図20】 本発明のデュアルモード・バンドパスフィルタの他の変形例の要部を示す模式的平面図。
【図21】 本発明のデュアルモード・バンドパスフィルタの他の変形例の要部を示す模式的平面図。
【図22】 本発明にしたがって構成されたデュプレクサが組み込まれた無線通信装置の実施例を説明するための概略ブロック図。
【図23】 従来のデュアルモード・バンドパスフィルタを説明するための要部を示す模式的平面図。
【図24】 従来のデュアルモード・バンドパスフィルタの他の例を示す模式的平面図。
【符号の説明】
1…デュアルモード・バンドパスフィルタ
2…誘電体基板
3…金属膜
4…グラウンド電極
5,6…入出力結合回路
7,8,7a,7b,8a,8b…ビアホール電極
9…対向電極膜
11…デュアルモード・バンドパスフィルタ
12…デュアルモード・バンドパスフィルタ
13…デュアルモード・バンドパスフィルタ
15…デュアルモード・バンドパスフィルタ
16,17…第1の容量取り出し電極
21…デュアルモード・バンドパスフィルタ
23…金属膜
24,26,28…デュアルモード・バンドパスフィルタ
25,27,29…金属膜
300…無線通信装置
DPX…デュプレクサ
P1〜P3…第1〜第3のポート
BPF1,BPF2…第1,第2のバンドパスフィルタ
ANT…アンテナ
RX…受信部
TX…送信部
Claims (7)
- 誘電体基板と、
前記誘電体基板の一方主面または誘電体基板内のある高さ位置において、部分的に形成された矩形の金属膜と、
前記金属膜と誘電体基板層を介して対向するように、前記誘電体基板内部または誘電体基板の主面に形成されたグラウンド電極と、
前記金属膜の対向する一対の辺にそれぞれ結合されている第1,第2の入出力結合回路と、
前記第1または第2の入出力結合回路から入力信号が印加された場合に生じる、前記第1,第2の入出力結合回路が前記金属膜に結合している点間を結ぶ方向に伝搬する第1の共振モードと、該第1の共振モードと直交する方向に伝搬する第2の共振モードとの2つの共振モードにおいて、第1または第2の共振モードの共振電界を弱めて該第1または第2の共振モードの共振周波数を変化させることにより、第1,第2の共振モードが結合されるように、前記金属膜に付加されている、少なくとも1個のコンデンサとを備え、該コンデンサが、前記金属膜と、該金属膜に対向配置されておりかつ前記グラウンド電極に接続されている容量取り出し電極とにより構成されていることを特徴とする、デュアルモード・バンドパスフィルタ。 - 誘電体基板と、
前記誘電体基板の一方主面または誘電体基板内のある高さ位置において、部分的に形成された矩形以外の多角形の金属膜と、
前記金属膜と誘電体基板層を介して対向するように、前記誘電体基板内部または誘電体基板の主面に形成されたグラウンド電極と、
前記金属膜の隣接する辺にそれぞれ結合されている第1,第2の入出力結合回路と、
前記第1または第2の入出力結合回路から入力信号が印加された場合に生じる、前記第1,第2の入出力結合回路が前記金属膜に結合している点間を結ぶ方向に伝搬する第1の共振モードと、該第1の共振モードと直交する方向に伝搬する第2の共振モードとの2つの共振モードにおいて、第1または第2の共振モードの共振電界を弱めて該第1または第2の共振モードの共振周波数を変化させることにより、第1,第2の共振モードが結合されるように、前記金属膜に付加されている、少なくとも1個のコンデンサとを備え、該コンデンサが、前記金属膜と、該金属膜に対向配置されておりかつ前記グラウンド電極に接続されている容量取り出し電極とにより構成されていることを特徴とする、デュアルモード・バンドパスフィルタ。 - 前記容量取り出し電極が前記誘電体基板内に構成されており、該容量取り出し電極と前記金属膜との間の誘電体基板層により静電容量が取り出される、請求項1または2に記載のデュアルモード・バンドパスフィルタ。
- 前記容量取り出し電極がビアホール電極である、請求項3に記載のデュアルモード・バンドパスフィルタ。
- 前記容量取り出し電極が、前記ビアホール電極の先端に形成されており金属膜に対向するように誘電体基板内に設けられている対向電極膜をさらに備える、請求項4に記載のデュアルモード・バンドパスフィルタ。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のデュアルモード・バンドパスフィルタを少なくとも1つ有してなる、デュプレクサ。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のデュアルモード・バンドパスフィルタ、または、請求項6に記載のデュプレクサの少なくとも一方を有してなる、無線通信装置。
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