JP3897838B2 - インダン化合物及び該化合物を用いた電子写真用感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真用感光体に用いられる電荷輸送剤として有用な新規なインダン化合物、及び該化合物を用いた電子写真用感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式とは、一般に光導電性材料を用いた感光体の表面に暗所で、例えばコロナ放電によって帯電させ、これに露光を行い、露光部の電荷を選択的に逸散させて静電潜像を得、これをトナーを用いて可視化したのち紙等に転写、定着して画像を得る画像形成方法の一種である。感光体としては、セレン、酸化亜鉛、硫化カドミウム、シリコン等の無機光導電性化合物を主成分とする無機感光体と、電荷発生剤と低分子量あるいは高分子量の電荷輸送剤を結着剤樹脂中に分散させた有機化合物を用いた有機感光体がある。無機感光体はそれぞれ多くの利点があり今まで広く使用されてきたが、例えばセレンは製造する条件が難しく、製造コストが高く、熱や機械的衝撃に弱く、結晶化をおこし易いため性能が劣化してしまう。酸化亜鉛や硫化カドミウムは耐湿性や機械的強度に問題があり、また増感剤として添加された色素の帯電や露光による劣化がおこり、耐久性がでない等の欠点がある。シリコンも製造する条件が難しい事と刺激性の強いガスを使用するためコストが高く、湿度に敏感であるため取扱いに注意を要する。
【0003】
近年、これら無機感光体の有する欠点を克服する目的で種々の有機化合物を用いた有機感光体が研究され、広く使用されるに至っている。有機感光体には電荷発生剤と電荷輸送剤を結着剤樹脂中に分散させた単層型感光体と、電荷発生層と電荷輸送層に機能分離した積層型感光体がある。機能分離型有機感光体は、各々の材料の選択肢が広いこと、組み合わせにより任意の性能を有する感光体を比較的容易に作製できる事から多くの研究がなされ広く使用されている。
【0004】
電荷発生剤としては、例えばアゾ化合物、ビスアゾ化合物、トリスアゾ化合物、テトラキスアゾ化合物、チアピリリウム塩、スクアリリウム塩、アズレニウム塩、シアニン色素、ペリレン化合物、無金属あるいは金属フタロシアニン化合物、多環キノン化合物、チオインジゴ系化合物、またはキナクリドン系化合物等、多くの有機顔料や色素が提案され実用に供されている。
【0005】
電荷輸送剤としては、例えば特公昭34−5466号公報のオキサジアゾール化合物、特開昭56−123544号公報のオキサゾール化合物、特公昭52−41880号公報のピラゾリン化合物、特公昭55−42380号公報や特公昭61−40104号公報、特公昭62−35673号公報、特公昭63−35976号公報のヒドラゾン化合物、特公昭58−32372号公報のジアミン化合物、特公昭63−18738号公報や特公昭63−19867号公報、特公平3−39306号公報のスチルベン化合物、特開昭62−30255号公報のブタジエン化合物等がある。これらの電荷輸送剤を用いた有機感光体は優れた特性を有し、実用化されているものがあるが、電子写真方式の感光体に要求される諸特性を十分に満たすものはまだ得られていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
有機感光体に用いる電荷輸送剤には、感度をはじめとする感光体としての諸特性を満足する他、光やオゾン、電気的負荷に耐える化学的安定性と繰り返し使用や長期使用によっても感度が低下しない安定性や耐久性が要求される。本発明の目的は、感光体特性を満足し高感度、高耐久性を有する電子写真用感光体を実現し得る電荷輸送剤として有用な新規なインダン化合物及び該化合物を用いた電子写真用感光体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記一般式[1]
【0008】
【化7】
【0009】
〔式中、Ar1は単環または2ないし4環のアリール基を表し、それぞれの基は炭素数が1〜4の低級アルキル基、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基、炭素数が5〜6のシクロアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ハロゲン原子で置換されているかもしくは無置換であり、Ar2はフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、またはアントリレン基を表し、それぞれの基は炭素数が1〜4の低級アルキル基、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基またはハロゲン原子で置換されているかもしくは無置換であり、Xは水素原子、炭素数が1〜4の低級アルキル基、または単環もしくは2ないし4環のアリール基を表し、該アリール基は炭素数が1〜4の低級アルキル基、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基、炭素数が5〜6のシクロアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ハロゲン原子で置換されているかもしくは無置換であり、Yは単環または2ないし4環のアリール基、該アリール基は炭素数が1〜4の低級アルキル基、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基、炭素数が5〜6のシクロアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ハロゲン原子で置換されているかもしくは無置換である、または下記一般式[2]
【0010】
【化8】
【0011】
で表される1価基または下記一般式[3]
【0012】
【化9】
【0013】
(式中、R1は水素原子、炭素数が1〜4の低級アルキル基または炭素数が1〜4の低級アルコキシ基を表し、R2は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数が1〜4の低級アルキル基を表し、Zは水素原子または単環もしくは2ないし4環のアリール基を表し、該アリール基は炭素数が1〜4の低級アルキル基、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基、炭素数が5〜6のシクロアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ハロゲン原子で置換されているかもしくは無置換であり、m及びnは0〜4の整数を表す。)で表される1価基を表す。〕で表されるインダン化合物であり、また、導電性支持体上に該化合物を含有する感光層を有することを特徴とする電子写真用感光体である。本発明によって、感光体特性を満足し高感度、高耐久性を有する電子写真用感光体を提供することができる。
【0014】
本発明において、電荷輸送剤として使用される前記一般式[1]で表されるインダン化合物は新規化合物であり、これらの化合物は、例えばジアリールインダン誘導体をホルミル化し、相当するホスホン酸エステルとのWittig−Horner−Emmons反応により合成される。ホルミル化はVilsmeier反応によるのが一般的な方法である。例えば下記一般式[4]
【0015】
【化10】
【0016】
〔式中、Ar2 及びYは前記一般式[1]におけるAr2 、Yと同じ意味を表す。〕で表されるトリアリールアミン化合物をN,N−ジメチルホルムアルデヒドおよびオキシ塩化リンなどによりホルミル化を行い、下記一般式[5]
【0017】
【化11】
【0018】
〔式中、Ar2 及びYは前記一般式[1]におけるAr2 、Yと同じ意味を表す。〕で表されるアルデヒド化合物を得る。
次に、このアルデヒド化合物と下記一般式[6]
【0019】
【化12】
【0020】
〔式中、Ar1 とXは前記一般式[1]におけるAr1 、Xと同じ意味を表し、R4 は低級アルキル基を表す。〕で表されるホスホン酸エステルとを反応させ、前記一般式[1]で表される本発明のインダン化合物を得ることができ。
【0021】
本発明において、前記一般式[1]で表されるインダン化合物は、Ar1 が置換アリール基である場合、置換基としては、炭素数が1〜4の低級アルキル基、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基、炭素数が5〜6のシクロアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ハロゲン原子などを選択することができ、さらにこれらの置換基が低級アルキル基または低級アルコキシ基の場合は、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基やハロゲン原子で更に置換されていても良く、置換基がベンジル基またはフェニル基の場合は炭素数が1〜4の低級アルキル基、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基またはハロゲン原子で更に置換されていても良い。
【0022】
また、Ar1 のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、フェナントリル基またはピレニル基などを選択することができ
る。
【0023】
Ar2 が置換フェニレン基、置換ナフチレン基、置換ビフェニリレン基または置換アントリレン基である場合、置換基としては、炭素数が1〜4の低級アルキル基、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基またはハロゲン原子などを選択することができ、さらにこれらの置換基が低級アルキル基または低級アルコキシ基の場合、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基やハロゲン原子で更に置換されていても良い。
【0024】
X、YまたはZが置換アリール基である場合、置換基としては、炭素数が1〜4の低級アルキル基、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基、炭素数が5〜6のシクロアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ハロゲン原子などを選択することができ、さらにこれらの置換基が低級アルキル基または低級アルコキシ基の場合は、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基やハロゲン原子で更に置換されていても良く、置換基がベンジル基またはフェニル基の場合は炭素数が1〜4の低級アルキル基、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基またはハロゲン原子で更に置換されていても良い。
【0025】
また、X、YまたはZのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、ピレニル基などが挙げられる。
【0026】
Xが置換アルキル基である場合、置換基としては、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基、炭素数が5〜6のシクロアルキル基またはハロゲン原子などを選択することができる。
【0026】
R1 が低級アルキル基または低級アルコキシ基である場合、低級アルキル基としては炭素数が1〜4の直鎖または分岐アルキル基を選択することができ、低級アルコキシ基としては炭素数が1〜4の直鎖または分岐アルコキシ基を選択することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
前述のアルデヒド化合物とホスホン酸エステルとの縮合反応はWittig−Horner−Emmons反応として知られる反応であり、好ましくは塩基性触媒の存在下で反応させる。この場合、塩基性触媒としては、水酸化カリウム、ナトリウムアミド、ナトリウムメチラート、カリウム−t−ブトキシドなどが用いられる。溶媒としてはメチルアルコール、エチルアルコール、t−ブチルアルコール、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、N、N−ジメチルホルムアミドなどが用いられる。反応温度は通常室温から100℃である。本発明において原料として用いられる前記一般式[6]で表されるホスホン酸エステルは、相当するハロゲン化合物と亜リン酸トリアルキルとを直接あるいはトルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中で加熱反応させることにより容易に合成される。
【0028】
電荷輸送剤として使用できる本発明に係る化合物の好ましい具体的な例として、次のような化合物が挙げられる。
化合物No.1
【0029】
【化13】
【0030】
化合物No.2
【0031】
【化14】
【0032】
化合物No.3
【0033】
【化15】
【0034】
化合物No.4
【0035】
【化16】
【0036】
化合物No.5
【0037】
【化17】
【0038】
化合物No.6
【0039】
【化18】
【0040】
化合物No.7
【0041】
【化19】
【0042】
化合物No.8
【0043】
【化20】
【0044】
化合物No.9
【0045】
【化21】
【0046】
化合物No.10
【0047】
【化22】
【0048】
化合物No.11
【0049】
【化23】
【0050】
化合物No.12
【0051】
【化24】
【0052】
化合物No.13
【0053】
【化25】
【0054】
化合物No.14
【0055】
【化26】
【0056】
化合物No.15
【0057】
【化27】
【0058】
化合物No.16
【0059】
【化28】
【0060】
化合物No.17
【0061】
【化29】
【0062】
化合物No.18
【0063】
【化30】
【0064】
化合物No.19
【0065】
【化31】
【0066】
化合物No.20
【0067】
【化32】
【0068】
化合物No.21
【0069】
【化33】
【0070】
化合物No.22
【0071】
【化34】
【0072】
化合物No.23
【0073】
【化35】
【0074】
化合物No.24
【0075】
【化36】
【0076】
化合物No.25
【0077】
【化37】
【0078】
化合物No.26
【0079】
【化38】
【0080】
化合物No.27
【0081】
【化39】
【0082】
化合物No.28
【0083】
【化40】
【0084】
化合物No.29
【0085】
【化41】
【0086】
化合物No.30
【0087】
【化42】
【0088】
化合物No.31
【0089】
【化43】
【0090】
本発明の電子写真用感光体は、上記のインダン化合物を1種または2種以上含有した感光層を有するものである。感光層の形態としては種々のものが存在し、本発明の電子写真用感光体の感光層としてはそのいずれであっても良い。代表例として図1〜図5にそれらの感光体を示した。
【0091】
図1の感光体は、導電性支持体1上にインダン化合物、増感色素および結着樹脂よりなる感光層2を設けたものである。
【0092】
図2の感光体は、導電性支持体1上にインダン化合物と結着樹脂よりなる電荷輸送媒体3の中に電荷発生物質4を分散せしめた感光層21を設けたものである。本感光体では電荷発生物質が光を吸収することにより電荷担体を発生し、これを電荷輸送媒体が輸送する。この場合、電荷輸送物質は電荷担体を発生させる光に対して透明であることが望ましい。インダン化合物は紫外部から可視部低波長域の一部に僅かな吸収があるのみで、電荷発生物質と吸収波長域が重ならないという条件を満足している。
【0093】
図3の感光体は、導電性支持体1上に電荷発生物質4を主体とする電荷発生層5とインダン化合物と結着樹脂よりなる電荷輸送層3の積層からなる感光層22を設けたものである。本感光体では電荷輸送層3を透過した光が電荷発生層5に到達し、電荷発生物質4に吸収され電荷担体が発生される。この電荷担体は電荷輸送層3に注入され輸送される。
【0094】
図4の感光体は、図3の感光体の電荷発生層5と電荷輸送層3の積層順を逆にした感光層23を設けたものである。上記と同様の機構によて電荷担体の発生と輸送が説明できる。
【0095】
図5の感光体は、機械的強度の向上を目的として図4の感光体の電荷発生層5の上に保護層6を更に積層した感光層24を設けたものである。
【0096】
以上に例示したような本発明の感光体は常法に従って製造される。例えば、前述した一般式[1]で表されるインダン化合物を結着樹脂とともに適当な溶剤中に溶解し、必要に応じて電荷発生物質、増感色素、電子吸引性化合物あるいは可塑剤、顔料、その他添加剤を添加して調製される塗布液を導電性支持体上に塗布、乾燥して数μから数十μの感光層を形成させることにより製造することができる。電荷発生層と電荷輸送層の二層よりなる感光層の場合は、電荷発生層の上に上記塗布液を塗布するか、上記塗布液を塗布して得られる電荷輸送層の上に電荷発生層を形成させることにより製造できる。また、このようにして製造される感光体には必要に応じ、接着層、中間層、バリヤー層を設けても良い。
【0097】
塗布液調製用の溶剤としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチル等の極性有機溶剤、トルエン、キシレンのような芳香族有機溶剤やジクロロメタン、ジクロロエタンのような塩素系炭化水素溶剤等があげられる。インダン化合物と結着樹脂に対して溶解性の高い溶剤が好適に使用される。
【0098】
増感色素としては、例えばメチルバイオレット、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット、アシッドバイオレットのようなトリアリールメタン染料、ローダミンB、エオシンS、ローズベンガルのようなキサンテン染料、メチレンブルーのようなチアジン染料、ベンゾピリリウム塩のようなピリリウム染料やチアピリリウム染料、またはシアニン染料等があげられる。
【0099】
また、インダン化合物と電荷移動錯体を形成する電子吸引性化合物としては例えば、クロラニル、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1−ニトロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類、4−ニトロベンズアルデヒド等のアルデヒド類、9−ベンゾイルアントラセン、インダンジオン、3,5−ジニトロベンゾフェノン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン等のケトン類、無水フタル酸、4−クロロナフタル酸無水物等の酸無水物、テトラシアノエチレン、テレフタラルマレノニトリル、9−アントリルメチリデンマレノニトリル等のシアノ化合物、3−ベンザルフタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等のフタリド類があげられる。
【0100】
結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、
メタクリル酸エステル、ブタジエン等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロースエステル、フェノキシ樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂等、インダン化合物と相溶性のある各種樹脂があげられる。結着樹脂の使用量は、通常インダン化合物に対して0.4〜10重量倍好ましくは0.5〜5重量倍の範囲である。
【0101】
また、本発明の感光層には成膜性、可とう性、機械的強度を向上させる目的で周知の可塑剤を含有しても良い。可塑剤としては、例えばフタル酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィン、メチルナフタリン、エポキシ化合物、塩素化脂肪酸エステル等があげられる。
【0102】
更に、感光層が形成される導電性支持体としては、周知の電子写真用感光体に使用されている材料が使用できる。例えば、アルミニウム、ステンレス、銅等の金属ドラム、シートあるいはこれらの金属のラミネート物、蒸着物、また金属粉末、カーボンブラック、よう化銅、高分子電解質の導電性物質を適当なバインダーとともに塗布して導電処理したプラスチックフィルム、プラスチックドラム、紙、紙管、あるいは導電性物質を含有さすことにより導電性を付与したプラスチックフィルムやプラスチックドラム等があげられる。
【0103】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。実施例中の部は重量部を表わす。
【0104】
[合成実施例1](化合物No.1の合成)
「5−[N−(4−ホルミルフェニル)−N−フェニルアミノ]インダンの合成」
5−(N,N−ジフェニルアミノ)インダン24.4g(0.085mol)をN,N−ジメチルホルムアミド130mlに溶解し、室温で、オキシ塩化リン19.5g(0.13mol)を30分かけて滴下した。50℃まで昇温して3時間撹拌した。反応終了後、93%水酸化ナトリウム40g(0.93mol)を水600mlに溶解した中に反応液を注加して攪拌した。更にトルエン300mlを加え目的物を抽出した後、水洗、濃縮して5−[N−(4−ホルミルフェニル)−N−フェニルアミノ]インダン24.9g(収率;93.6%)を得た。
【0105】
「5−{N−[4−(4−メチルスチリル)フェニル]−N−フェニルアミノ}インダンの合成」
上記で合成した5−[N−(4−ホルミルフェニル)−N−フェニルアミノ]インダン6.27g(0.02mol)とp−メチルベンジルホスホン酸ジエチル5.8g(0.024mol)をテトラヒドロフラン40mlに溶解して、室温でカリウム−t−ブトキシド2.9g(0.026mol)を30分かけて添加した。添加後、更に2時間撹拌した。ホルミル化合物の消失しているのを確認して反応終了とした。反応物を5℃以下でメタノ−ル240mlに注加、更に水40mlを滴下して析出した結晶を濾過、メタノ−ル洗浄および水洗を行って乾燥した。この結晶をカラムクロマトグラフィ(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン:ヘキサン=1:4)により精製して5−{N−[4−(4−メチルスチリル)フェニル]−N−フェニルアミノ}インダン(化合物No.1)5.4g(収率;74.3%、融点;122.5−126.5℃)を得た。
【0106】
元素分析値はC30H27Nとして次に示す通りであった。炭素:89.53%(89.73%)、水素:6.84%(6.78%)、窒素:3.62%(3.49%)(計算値をかっこ内に示す。)
赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)の特性基波数(cm-1)は3020、1589、1484、821、749等であった。
【0107】
[合成実施例2](化合物No.6の合成)
「5−{N−[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]−N−フェニルアミノ}インダン(化合物No.6)の合成」
実施例1で合成した5−[N−(4−ホルミルフェニル)−N−フェニルアミノ]インダン6.27g(0.02mol)とジフェニルメチルホスホン酸ジエチル7.9g(0.024mol)をテトラヒドロフラン40mlに溶解して、室温でカリウム−t−ブトキシド2.9g(0.026mol)を30分かけて添加した。添加後、更に2時間撹拌した。ホルミル化合物の消失しているのを確認して反応終了とした。反応物を5℃以下でメタノ−ル240mlに注加、更に水40mlを滴下して析出した結晶を濾過、メタノ−ル洗浄および水洗を行って乾燥した。この結晶をカラムクロマトグラフィ(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン:ヘキサン=1:4)により精製して5−{N−[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]−N−フェニルアミノ}インダン(化合物No.6)5.8g(収率;62.3%、融解開始温度;64.0℃)を得た。
【0108】
元素分析値はC35H29Nとして次に示す通りであった。炭素:90.41%(90.67%)、水素:6.48%(6.31%)、窒素:3.11%(3.02%)(計算値をかっこ内に示す。)
赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)の特性基波数(cm-1)は3020、2942、1587、1484、1273、755等であった。
【0109】
[実施例1]
電荷発生剤として下記ビスアゾ化合物(電荷発生剤No.1)
【0110】
【化44】
【0111】
1.5部をポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡(株)製)の8%THF溶液18.5部に加え、メノウ球入りのメノウポットに入れ、遊星型微粒粉砕機(フリッツ社製)で1時間回転し、分散した。得られた分散液を導電性支持体であるアルミ蒸着PETフィルムのアルミ面上にワイヤーバーを用いて塗布し、常圧下60℃で2時間、更に減圧下で2時間乾燥して膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。一方、電荷輸送剤として化合物No.1のインダン化合物1.5部をポリカーボネート樹脂(パンライトK−1300、帝人化成(株)製)の8%ジクロロエタン溶液18.75部に加え超音波をかけてインダン化合物を完全に溶解させた。この溶液を前記の電荷発生層上にワイヤーバーで塗布し、常圧下60℃で2時間、更に減圧下で2時間乾燥して膜厚20μmの電荷輸送層を形成せしめて、感光体No.1を作製した。
【0112】
この感光体について静電複写紙試験装置(商品名「EPA−8100」川口電機製作所(株)製)を用いて感度を測定した。まず、感光体を暗所で−6kVのコロナ放電により帯電させ、次いで3.0ルックスの白色光で露光し、表面電位が初期表面電位の半分に減少するまでの時間(秒)を測定し、半減露光量E1/2(ルックス・秒)を求めた。この感光体の初期表面電位は−853Vで、E1/2は0.88ルックス・秒であった。
【0113】
[実施例2〜12]
実施例1で用いた電荷発生剤および電荷輸送剤(インダン化合物)を[表1]に示したものに代えた以外は実施例1と同様にして感光体No.2〜12を作製した。
【0114】
【表1】
【0115】
尚、表1中に示した電荷発生剤No.2〜No.4の構造を下記に示す。
電荷発生剤No.2
【0116】
【化45】
【0117】
電荷発生剤No.3
【0118】
【化46】
【0119】
電荷発生剤No.4
【0120】
【化47】
【0121】
感光体No.2〜12を実施例1と同様にして感度測定を行った。その結果について[表2]に示した。
【0122】
【表2】
【0123】
[実施例13]
実施例1で用いた電荷輸送剤(インダン化合物)を化合物No.1のインダン化合物と化合物No.6のインダン化合物の1:1重量比の混合物に代えた以外は実施例1と同様にして感光体No.13を作製した。この感光体を実施例1と同様にして感度測定を行ったところ、初期表面電位は−851Vで、E1/2は0.87ルックス・秒であった。
【0124】
[実施例14]
電荷発生剤としてα型チタニルフタロシアニンオキサイド(α−TiOPc)1.5部をポリビニルブチラール樹脂(エスレックBX−L、積水化学工業(株)製)の3%THF溶液50部に加え、超音波分散機で45分間分散した。得られた分散液を導電性支持体のアルミ蒸着PETフィルムのアルミ面上にワイヤーバーを用いて塗布し、常圧下60℃で2時間、更に減圧下で2時間乾燥して膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。一方、電荷輸送剤として化合物No.1のインダン化合物1.5部をポリカーボネート樹脂(パンライトK−1300、帝人化成(株)製)の8%ジクロロエタン溶液18.75部に加え超音波をかけてインダン化合物を完全に溶解させた。この溶液を前記の電荷発生層上にワイヤーバーで塗布し、常圧下60℃で2時間、更に減圧下で2時間乾燥して膜厚約20μmの電荷輸送層を形成せしめて、感光体No.14を作製した。
【0125】
この感光体について静電複写紙試験装置(商品名「EPA−8100」)を用いて感度を測定した。まず、感光体を暗所で−6kVのコロナ放電により帯電させ、次いで光量5.0μW/cm2 の800nmの単色光で露光し、表面電位が初期表面電位の半分に減少するまでのエネルギー量を求め、半減露光量E1/2(μJ/cm2 )を測定した。この感光体の初期表面電位は−869Vで、E1/2は0.51μJ/cm2 であった。
【0126】
[実施例15]
電荷発生剤としてα−TiOPcの代わりに、X型無金属フタロシアニンを用いる以外は実施例14と同様に行って感光体No.15を作成した。この感光体を実施例14と同様にして感度測定を行ったところ、初期表面電位は−879Vで、E1/2は0.53μJ/cm2 であった。
【0127】
[実施例16]
電荷発生剤として、α−TiOPcの代わりに下記トリスアゾ化合物
【0128】
【化48】
【0129】
を用いる以外は実施例14と同様に行って感光体No.16を作製した。この感光体を実施例14と同様にして感度測定を行ったところ、初期表面電位は−1010Vで、E1/2は0.59μJ/cm2 であった。
【0130】
実施例17
電荷発生剤として下記チアピリリウム塩
【0131】
【化49】
【0132】
0.1部、電荷輸送層として化合物No.3のインダン化合物10部をポリカーボネート樹脂(パンライトK−1300、帝人化成(株)製)の8%ジクロロエタン溶液125部に加え、超音波をかけてチアピリリウム塩とインダン化合物を完全に溶解させた。この溶液を導電性支持体であるアルミ蒸着PETフィルムのアルミ面上にワイヤーバーを用いて塗布し、常圧下60℃で2時間、更に減圧下で2時間乾燥して膜厚20μmの感光層を形成せしめて感光体No.17を作製した。この感光体について静電複写紙試験装置(商品名「EPA−8100」)を用いて感度を測定した。まず、感光体を暗所で+7kVのコロナ放電により帯電させ、次いで3.0ルックスの白色光で露光し、表面電位が初期表面電位の半分に減少するまでの時間(秒)を測定し、半減露光量E1/2(ルックス秒)を求めた。この感光体の初期表面電位は+935Vで、E1/2は1.1ルックス・秒であった。
【0133】
[実施例18]
実施例1で用いた電荷輸送剤の塗工液をアルミ蒸着PETフィルムのアルミ面上にワイヤーバーを用いて塗布し、常圧下60℃で2時間、更に減圧下で2時間乾燥して膜厚10μmの電荷輸送層を形成した。
一方、電荷発生剤として実施例2で用いたと同じジスアゾ化合物3.0部をポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡(株)製)の8%THF溶液18.5部に加え、メノウ球入りのメノウポットに入れ、遊星型微粒粉砕機(フリッツ社製)で1時間回転し、分散した。この分散液にTHF200部を加え、攪拌混合して塗工液とした。この塗工液を上記電荷輸送層の上にスプレーで塗工し、常圧下60℃で2時間、更に減圧下で2時間乾燥して膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。更に、この電荷発生層の上にアルコール可溶性ポリアミド樹脂をイソプロパノールに溶解した溶液をスプレーで塗工し、常圧下60℃で2時間、更に減圧下で2時間乾燥して膜厚0.5μmのオーバーコート層を形成せしめて感光体No.18を作製した。
この感光体を実施例17と同様にして感度を測定した。この感光体の初期表面電位は+846Vで、E1/2は1.0ルックス・秒であった。
【0134】
[比較例1]
実施例1で用いた化合物No.1のインダン化合物の代わりに下記化合物
【0135】
【化50】
【0136】
を用いる以外は実施例1と同様にして比較用感光体を作製した。
この感光体を実施例1と同様にして感度を測定した。この感光体の初期表面電位は−870Vで、E1/2は1.18ルックス・秒であった。
【0137】
【発明の効果】
本発明の新規なインダン化合物は優れた電荷輸送能を有しており、電荷輸送材料として広範囲に利用することができる。また、これらの化合物を含有する感光層を導電性支持体上に有する本発明の電子写真用感光体は優れた感光体特性を示し、電子写真用感光体として広範囲に利用することができる利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】電子写真用単層感光体の断面図である。
【図2】電荷発生物質を分散させた電子写真用単層感光体の断面図である。
【図3】導電性支持体上に、電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した電子写真用感光体の断面図である。
【図4】導電性支持体上に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層した電子写真用感光体の断面図である。
【図5】保護層を設けた電子写真用感光体の断面図である。
【符号の説明】
1 導電性支持体
2,21,22,23,24 感光層
3 電荷輸送媒体、電荷輸送層
4 電荷発生物質
5 電荷発生層
6 保護層
Claims (6)
- 下記一般式[1]
- 前記した一般式[1]におけるAr1の単環または2ないし4環のアリール基が、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、フェナントリル基、またはピレニル基である請求項1記載のインダン化合物。
- 前記した一般式[1]中のYが、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、フェナントリル基、またはピレニル基であり、それぞれの基は炭素数が1〜4の低級アルキル基、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基、炭素数が5〜6のシクロアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ハロゲン原子で置換されているかもしくは無置換である請求項1記載のインダン化合物。
- 導電性支持体上に下記一般式[1]
- 前記した一般式[1]におけるAr1の単環または2ないし4環のアリール基が、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、フェナントリル基、またはピレニル基である請求項4記載のインダン化合物を含有する感光層を有することを特徴とする電子写真用感光体。
- 前記した一般式[1]中のYが、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、フェナントリル基、またはピレニル基であり、それぞれの基は炭素数が1〜4の低級アルキル基、炭素数が1〜4の低級アルコキシ基、炭素数が5〜6のシクロアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ハロゲン原子で置換されているかもしくは無置換である請求項4記載のインダン化合物を含有する感光層を有することを特徴とする電子写真用感光体。
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