JP3890169B2 - 電磁式作動機構を備えた駆動力伝達装置 - Google Patents
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Description
本発明は、電磁式クラッチ、電磁式トルク発生機構等の電磁式作動機構を備えた駆動力伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の駆動力伝達装置における電磁式クラッチとして、実開平6−16731号公報に示されているように、磁路形成部材と、磁路形成部材の一側に位置する摩擦クラッチおよびアーマチャからなるアクチュエータと、電磁石を支持して磁路形成部材の他側に位置する支持部材を備え、電磁石への通電によりアクチュエータを作動させる形式の電磁式クラッチがある。
【0003】
当該形式の電磁式クラッチにおいては、支持部材と磁路形成部材との互いに対向する一対の対向面間(第1の対向面と第2の対向面との間)にギャップが形成されていて、このギャップを通してとして電磁石の電磁コイルへの通電により同電磁石を基点として支持部材、磁路形成部材、摩擦クラッチおよびアーマチャを通る磁路が形成され、この磁路を通って循環する磁束によりアーマチャを吸引する磁力が発生し、この磁力に応じてアーマチャが摩擦クラッチを押圧して摩擦係合させるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、当該形式の電磁式クラッチにおいては、支持部材と磁路形成部材の互いに対向する第1、第2の対向面の面積(対向面積)が、通電時に形成される磁路の面積(磁路面積)に相当し、この磁路面積が変わると磁力が変化して摩擦クラッチの摩擦係合力に変化をきたすことになる。
【0005】
当該電磁式クラッチにおいては、支持部材は磁路形成部材の他端側の凹所に嵌合されて回転可能に支持されるもので、支持部材を回転可能に支持するベアリングのガタのバラツキ、支持部材および磁路形成部材の寸法誤差、組付誤差等により、磁路形成部材とこれに嵌合する支持部材とが互いに対向する第1、第2の対向面の対向面積が変化するおそれがある。これら両部材の対向面積が設定した値に対して変化すると、磁路面積が設定した値とはならずに摩擦クラッチの摩擦係合力に変化をきたすことになる。すなわち、電磁式クラッチのクラッチ特性に変化をきたすことになる。
【0006】
この結果、当該形式の電磁式クラッチをパイロット機構として作動する駆動機構を備えた機器類は、その作動に大きな影響を受けることになる。例えば、当該形式の電磁式クラッチをパイロット機構とする駆動力伝達装置にあっては、電磁式クラッチのクラッチ特性の変化に起因して伝達トルクが低下する等の変動が発生する。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題に対処するため、この種の駆動力伝達装置における電磁式クラッチ、電磁式トルク発生機構等、電磁石への通電によりアクチュエータを作動させる形式の電磁式作動機構において、支持部材と磁路形成部材の対向面の対向面積が一定になるようにして、磁路面積の変化に起因する磁力の変化を無くし、磁力の変化に起因するアクチュエータの作動特性の変化を防止することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、互いに同軸的かつ相対回転可能に位置する内側回転部材と外側回転部材の間に配置されて前記内側回転部材と外側回転部材をトルク伝達可能に連結するメインクラッチ機構と、磁力によって軸方向に吸引されるアーマチャの作動によって係合し前記メインクラッチ機構の摩擦係合を制御するパイロットクラッチ機構と、前記外側回転部材の開口部に嵌合固定されて前記内側回転部材を回転可能に支持する磁路形成部材と、該磁路形成部材に軸方向に開口して形成した環状凹所に嵌合して同内磁路形成部材の軸部にベアリングを介して支持されその内部に環状の電磁石を嵌着した環状の支持部材とを備えて、前記環状凹所の外周側内面と前記支持部材の外周側環状突出部の外周面間に形成される環状ギャップと前記環状凹所の内周側外面と前記支持部材の内周側環状突出部の内周面間に形成される環状ギャップを通して形成される前記電磁石を基点とする磁路に生じる磁束によって前記アーマチャが作動するようにした駆動力伝達装置において、前記環状凹所の外周側内面と内周側外面を前記支持部材の外周側環状突出部の外周面と同支持部材の前記内周川突出部の内周面よりそれぞれ軸方向の両側に長く延在して形成し、前記支持部材の組付け位置が軸方向にずれても前記両環状ギャップの磁路面積がそれぞれ所定の磁路面積に規定されるようにしたことを特徴とする駆動力伝達装置を提供するものである。
【0014】
【発明の作用・効果】
上記のように構成した本発明による駆動力伝達装置においては、前記環状凹所の外周側内面と内周側外面を前記支持部材の外周側環状突出部の外周面と同支持部材の前記内周川突出部の内周面よりそれぞれ軸方向の両側に長く延在して形成し、前記支持部材の組付け位置が軸方向にずれても前記両環状ギャップの磁路面積がそれぞれ所定の磁路面積に規定されるようにしたことにより、前記支持部材を回転可能に支持するベアリングのガタのバラツキ、前記支持部材と磁路形成部材の寸法誤差、組付誤差等に起因する磁路面積の低減、これに起因して製品毎に作動機構の作動特性が変化するようなおそれはない。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に基づいて説明すると、図1には本発明に係る電磁式作動機構の一例である電磁式クラッチをパイロットクラッチ機構とする駆動力伝達装置10が示されている。駆動力伝達装置10は、図3に示すように、四輪駆動車における後輪側への駆動力伝達経路に搭載される。なお、駆動力伝達装置10の主要部は、軸線に対して略対称の構成であるため、図1には、駆動力伝達装置10の略半分の部位を示し、他の略半分の部位を省略している。
【0016】
当該四輪駆動車において、トアランスアクスル21はトランスミッション、トランスファおよびフロントディファレンシャルを一体に備えるもので、エンジン22の駆動力をトランスアクスル21のフロントディファレンシャル23を介して、両アクスルシャフト24a,24aに出力して左右の前輪24b,24bを駆動させるとともに、第1プロペラシャフト25側に出力させる。第1プロペラシャフト25は、駆動力伝達装置10を介して第2プロペラシャフト26に連結されており、第1プロペラシャフト25と第2プロペラシャフト26がトルク伝達可能に連結された場合には、駆動力はリヤディファレンシャル27に伝達され、リヤディファレンシャル27から両アクスルシャフト28a,28aへ出力されて左右の後輪28b,28bを駆動させる。
【0017】
駆動力伝達装置10は、第1プロペラシャフト25と第2プロペラシャフト26間に配設されているもので、図1に示すように、アウタケース10a、インナシャフト10b、メインクラッチ機構10c、パイロットクラッチ機構10d、およびカム機構10eを備えている。本発明に係る電磁式作動機構の一例である電磁式クラッチは、パイロットクラッチ機構10dとして採用されている。
【0018】
駆動力伝達装置10を構成するアウタケース10aは、有底筒状のハウジング11aと、ハウジング11aの後端開口部に螺着されて同開口部を覆蓋するリヤカバー11bとにより形成されている。ハウジング11aは非磁性材料であるアルミ合金により形成され、リヤカバー11bは磁性材料である鉄により形成されている。リヤカバー11bは本発明の磁路形成部材に該当する。なお、リヤカバー11bにはその中間部に、非磁性材料であるステンレス製の筒体11cが埋設されており、筒体11cは環状の非磁性部位を形成している。
【0019】
インナシャフト10bは、リヤカバー11bの中央部を液密的に貫通してアウタケース10aのハウジング11a内に同軸的に挿入されていて、軸方向の移動を規制された状態で、ハウジング11aとリヤカバー11bに回転可能に支持されている。インナシャフト10bには、第2プロペラシャフト26の先端部が挿入されて、トルク伝達可能に連結される。なお、アウタケース10aを構成するハウジング11aの前端部には、第1プロペラシャフト25がトルク伝達可能に連結されている。
【0020】
メインクラッチ機構10cは湿式多板式の摩擦クラッチであり、多数のクラッチプレート(インナクラッチプレート12a、アウタクラッチプレート12b)を備え、ハウジング11a内に配設されている。摩擦クラッチを構成する各インナクラッチプレート12aは、インナシャフト10bの外周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組付けられ、かつ、各アウタクラッチプレート12bはハウジング11aの内周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組付けられている。各インナクラッチプレート12aと各アウタクラッチプレート12bは交互に位置していて、互いに当接して摩擦係合するとともに互いに離間して自由状態となる。
【0021】
パイロットクラッチ機構10dは電磁式クラッチであり、電磁石13、摩擦クラッチ14、アーマチャ15、およびヨーク16にて構成されている。電磁石13は環状を呈し、ヨーク16に嵌着された状態でリヤカバー11bの環状凹所11dに嵌合されている。ヨーク16は本発明の支持部材に該当するもので、リヤカバー11bの後端部の外周に回転可能に支持された状態で車体側に固定されている。パイロットクラッチ機構10dにおける摩擦クラッチ14およびアーマチャ15は、本発明におけるアクチュエータを構成する。
【0022】
摩擦クラッチ14は、複数のアウタクラッチプレート14aとインナプレート14bとからなる湿式多板式の摩擦クラッチであり、各アウタクラッチプレート14aはハウジング11aの内周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組付けられ、かつ、各インナクラッチプレート14bは後述するカム機構10eを構成する第1カム部材17の外周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組付けられている。
【0023】
アーマチャ15は環状を呈するもので、ハウジング11aの内周にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組付けられていて、摩擦クラッチ14の前側に位置して対向している。
【0024】
上記のように構成したパイロットクラッチ機構10dにおいては、電磁石13の電磁コイルへの通電により、電磁石13を基点としてヨーク16、リヤカバー11b、摩擦クラッチ14およびアーマチャ15を循環する磁束が通る磁路が形成される。この場合、ヨーク16の環状の外周側の突出部16a1の外周面がリヤカバー11bの凹所11dの外周側内面11d1の一部に対向し、かつ、ヨーク16の環状の内周側の突出部16a2の内周面がリヤカバー11bの凹所11dの内周側外面11d2の一部に対向して、これらの対向面同士の対向面積が磁路面積となる。
【0025】
なお、電磁石13の電磁コイルへの通電の断続は、スイッチの切替え操作によりなされ、後述する3つの駆動モードを選択できるようになっている。当該スイッチは、車室内の運転席の近傍に配設されて、運転者が容易に操作し得るようになっている。なお、駆動力伝達装置10を後述する第2の駆動モードのみの構成とすれば、当該スイッチを省略できる。
【0026】
カム機構10eは、第1カム部材17、第2カム部材18、およびカムフォロアー19にて構成されている。第1カム部材17は、インナシャフト10bの外周に回転可能に嵌合されていて、リヤカバー11bに回転可能に支承されており、その外周に摩擦クラッチ14のインナクラッチプレート14bがスプライン嵌合している。第2カム部材18は、インナシャフト10bの外周にスプライン嵌合されて一体回転可能に組付けられていて、メインクラッチ機構10cのインナクラッチプレート12aの後側に対向して位置している。第1カム部材17と第2カム部材18の互いに対向するカム溝には、ボール状のカムフォロアー19が介在している。
【0027】
かかる構成の駆動力伝達装置10においては、パイロットクラッチ機構10dを構成する電磁石13の電磁コイルが非通電状態にある場合には磁路は形成されず、摩擦クラッチ14は非係合状態にある。このため、パイロットクラッチ機構10dは非作動の状態にあって、カム機構10eを構成する第1カム部材17はカムフォロアー19を介して第2カム部材18と一体回転可能であり、メインクラッチ機構10cは非作動の状態にある。このため、車両は二輪駆動である第1駆動モードを構成する。
【0028】
一方、電磁石13の電磁コイルへの通電がなされると、パイロットクラッチ機構10dには電磁石13を基点として循環する磁路が形成されて、電磁石13はアーマチャ15を吸引する。このため、アーマチャ15は摩擦クラッチ14を押圧して摩擦係合させ、カム機構10eの第1カム部材17をアウタケース10a側へ連結させて、第2カム部材18との間に相対回転を生じさせる。この結果、カム機構10eにおいては、カムフォロアー19が両カム部材17,18を互いに離間する方向へ押圧する。
【0029】
このため、第2カム部材18はメインクラッチ機構10c側へ押圧されて、メインクラッチ機構10cを摩擦クラッチ14の摩擦係合力に応じて摩擦係合させ、アウタケース10aとインナシャフト10b間でトルク伝達が生じる。これにより、車両は第1プロペラシャフト25と第2プロペラシャフト26が非直結状態と直結状態間での四輪駆動である第2の駆動モードを構成する。この駆動モードでは、車両の走行状態に応じて、前後輪間の駆動力分配比を100:0(二輪駆動状態)〜50:50(直結状態)の範囲で制御することができる。
【0030】
また、電磁石13の電磁コイルへの通電電流を所定の値に高めると電磁石13のアーマチャ15に対する吸引力が増大し、アーマチャ15は強く吸引されて摩擦クラッチ14の摩擦係合力を増大させ、両カム部材17,18間の相対回転を増大させる。この結果、カムフォロアー19は第2カム部材18に対する押圧力を高めて、メインクラッチ機構10cを結合状態とする。このため、車両は第1プロペラシャフト25と第2プロペラシャフト26が直結状態の四輪駆動である第3の駆動モードを構成する。
【0031】
しかして、パイロットクラッチ機構10dにおいては、リヤカバー11bの凹所11dに嵌合して組付けられているヨーク16の突出部16a1の外周面、および突出部16a2の内周面がリヤカバー11bの凹所11dの外周側内面11d1および内周側外面11d2の一部に対向し、リヤカバー11bとヨーク16の突出部16a1,16a2の対向面のエアギャップにて磁路面積が規定されているが、ヨーク16の突出部16a1,16a2はリヤカバー11bの凹所11d内に位置し、相対的にリヤカバー11bの凹所11dの外周側内面11d1および内周側外面11d2がヨーク16の突出部16a1,16a2を超えて軸方向に長く延出している。
【0032】
通常、ヨーク16をリヤカバー11bの凹所11dに嵌合して回転可能に組付ける場合には、ヨーク16を回転可能に支持するベアリング16bのガタのバラツキ、ヨーク16およびリヤカバー11bの寸法誤差、組付誤差等により、ヨーク16が設定された組付け位置から軸方向にずれて、ヨーク16の突出部16a1,16a2がリヤカバー11bの凹所11dからはみ出して、対向面同士の重なる対向面積(磁路面積)が設定された値より小さくなるおそれがある。この場合には、パイロットクラッチ機構10dのクラッチ特性が変化することになる。
【0033】
しかしながら、パイロットクラッチ機構10dにおいては、リヤカバー11bの凹所11dの外周側内面11d1および内周側外面11d2がヨーク16の突出部16a1,16a2を越えて延出するように形成されているため、ヨーク16の組付け位置が軸方向にずれてもヨーク16の突出部16a1,16a2がリヤカバー11bの凹所11dの外周側内面11d1および内周側外面11d2からはみ出すことはなく、ベアリング16bのガタのバラツキ、ヨーク16およびリヤカバー11bの寸法誤差、組付誤差等に起因する磁路面積の低減、これに起因するパイロットクラッチ機構10dのクラッチ特性が変化するおそれはない。
【0034】
図2には、ヨーク16をリヤカバー11bの凹所11dに組付ける状態を模式的に示しており、組付け時、ヨーク16がリヤカバー11bの凹所11d内にて1点鎖線で示す範囲で軸方向に位置ずれを生じたとしても、ヨーク16の突出部16a1,16a2が凹所11dの外周側内面11d1および内周側外面11d2からはみ出ることはなく、両者の対向面により形成される磁路面積が変化することはない。
【0035】
従って、かかる構成のパイロットクラッチ機構10dを構成部品とする当該駆動力伝達装置10においては、パイロットクラッチ機構10dのクラッチ特性の変化に起因するメインクラッチ機構10cでの伝達トルクの変動(伝達トルクの低下)を防止することができる。
【0036】
なお、本実施の形態では、磁路形成部材と支持部材とを径方向に対向させ、これら対向面のうち支持部材側に突出部を設け、磁路形成部材側の対向面が突出部を越えて軸方向へ延出するように構成したが、磁路形成部材側の対向面に突出部を設け、支持部材側の対向面が突出部を越えて軸方向へ延出するようにしてもよい。
【0037】
図4には、本発明に係る電磁式作動機構の他の一例である電磁式トルク発生機構をパイロット機構とする駆動力伝達装置30が示されている。駆動力伝達装置30は、外側回転部材であるアウタケース30a、内側回転部材であるインナシャフト30b、摩擦クラッチ30c、パイロット機構30d、およびカム機構30eを備えているもので、パイロット機構30dおよびカム機構30eがパイロットクラッチ機構10dおよびカム機構10eと相違する点を除き、駆動力伝達装置10とは同様に構成されていて同様に作動する。
【0038】
アウタケース30aは、有底筒状のハウジング31aと、ハウジング31aの後端開口部に螺着されて同開口部を覆蓋するリヤカバー31bからなるもので、インナシャフト30bはリヤカバー31bの中央部を液密的に貫通してハウジング31a内に延びていて、軸方向の移動を規制された状態で回転可能に支持されている。リヤカバー31bは、後述する外側回転子を兼ねている。アウタケース30aにおけるハウジング31aの前端部には、第1プロペラシャフト25がトルク伝達可能に連結され、かつインナシャフト30bには、第2プロペラシャフト26がトルク伝達可能に連結される。
【0039】
摩擦クラッチ30cは、多数のインナクラッチプレート32aとアウタクラッチプレート32bを備えた湿式多板の摩擦クラッチで、各インナクラッチプレート32aはインナシャフト30bの外周側にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組付けられ、かつ各アウタクラッチプレート32bはハウジング31aの内周側にスプライン嵌合して軸方向へ移動可能に組付けられている。各インナクラッチプレート32aと各アウタクラッチプレート32bとは交互に位置していて、互いに当接して摩擦係合するとともに互いに離間して自由状態となる。
【0040】
パイロット機構30dは、電磁石33、外側回転子34および内側回転子35を備えている。電磁石33は、電磁コイルをボビンに巻回してなるもので、ヨーク36に組付けられた状態でリヤカバー31bに回転可能に支持されている。かかる構成においては、リヤカバー31b、ヨーク36および両回転子34,35は本発明における磁路形成部材、支持部材、およびアクチュエータに該当する。
【0041】
外側回転子34は、リヤカバー31bと一体に形成されているもので、アウタケース30aにおけるハウジング31aの開口端部に螺着されていて、その内端部が摩擦クラッチ30cの近傍に臨んでいる。内側回転子35は環状を呈するもので、外側回転子34の内端部とインナシャフト30b間にて、これら両者に対して回転可能に位置している。外側回転子34の内端部の内周面、および内側回転子35の外周面には、図5に示すように、周方向に所定間隔を保持して位置する複数の凹部34a,35aおよび凸部34b,35bが形成されている。これらの凹部34a,35aおよび凸部34b,35bは互いに対向し得る位置にあり、凸部34b,35b同士は所定の最小隙間を介在させて対向し得るようになっている。
【0042】
カム機構30eは、外側回転子34(リヤカバー31b)および内側回転子35を構成部材とするもので、外側回転子34の内周側にて周方向に所定間隔を保持して形成された複数のカム溝37aと、内側回転子35の内周側にて周方向に所定間隔を保持して形成された複数のカム溝37bと、互いに対向するカム溝37a,37b間に介在する複数のカムフォロア37cにて構成されている。カム機構30eは、内側回転子35を外側回転子34に対して位置決めする機能を有しており、ニードルベアリングを介して摩擦クラッチ30cに支持されている内側回転子35を、両回転子34,35の凸部34b,35b同士が図5に示すように周方向に所定量ずれた状態に位置決めしている。
【0043】
かかる構成の駆動力伝達装置30においては、パイロット機構30dを構成する電磁石33が非通電状態にある場合には磁路は形成されず、パイロット機構30dおよびカム機構30eは非作動の状態にある。このため、両回転子34,35はカムフォロア37cを介して一体回転可能であり、摩擦クラッチ30cは非作動の状態にある。このため、車両は二輪駆動の駆動モードを構成する。
【0044】
一方、電磁石33へ通電されると、パイロット機構30dに磁路が形成されて、図5の1点鎖線で示すように、両回転子34,35は互いの凸部34b,35b間で凸部34b,35bが完全に対向すべく吸引しあって、内側回転子35を1点鎖線で示す周方向へわずかに回転させる。これにより、両回転子34,35にはトルクが発生する。内側回転子35の回転によりカム機構30eが作動して、カムフォロア37cの押圧作用にて内側回転子35を摩擦クラッチ30c側へ押動する。この結果、摩擦クラッチ30cは内側回転子35からの押圧力に応じて摩擦係合して、アウタケース30aとインナシャフト30b間のトルク伝達を行う。このため、車両は両プロペラシャフト25,26が二輪駆動の結合状態でリアルタイムの四輪駆動の駆動モードを構成する。
【0045】
また、電磁石33への印加電流を所定の値に高めると、両回転子34,35同士はさらに強く吸引しあって内側回転子35の回転量を増大させる。この結果、カムフォロア37cは、内側回転子35に対する押圧力を高めて摩擦クラッチ30cを結合状態とする。このため、車両は両プロペラシャフト25,26が直結した四輪駆動の駆動モードを構成する。
【0046】
このように、当該駆動力伝達装置30を構成するパイロット機構30dにおいては、電磁石33への通電により磁力が発生して両回転子34,35間に磁路が発生し、両回転子34,35は互いに吸引しあって相対回転してトルクが発生する。これにより、パイロット機構30dは、電磁石33へ通電する電流に応じたトルクを発生し、摩擦クラッチ30cを作動させる駆動力源として機能する。この場合、磁路は電磁石33を基点としてヨーク36、リヤカバー31b、外側回転子34、内側回転子35、リヤカバー31b、およびヨーク36を循環して形成される。
【0047】
しかして、パイロット機構30dにおいては、リヤカバー31bの凹所31cに嵌合して組付けられているヨーク36の突出部36a1の外周面、突出部36a2の内周面がリヤカバー31bの凹所31cの外周側内面31c1および内周側外面31c2の一部に対向し、リヤカバー31bとヨーク36の突出部36a1,36a2の対向面のエアギャップにて磁路面積を形成しているが、ヨーク36の突出部36a1,36a2はリヤカバー31bの凹所31c内に位置し、相対的に、リヤカバー31bの凹所31cの外周側内面31c1および内周側外面31c2がヨーク36の突出部36a1,36a2を越えて軸方向に長く延出している。
【0048】
このため、パイロット機構30dにおいては、図6(b)および図7(a)〜(c)に示すように、ヨーク36の組付け位置が軸方向にずれてもヨーク36の突出部36a1,36a2がリヤカバー31bの凹所31cの外周側内面31c1および内周側外面31c2からはみ出すことはなく、ベアリング36bのガタのバラツキ、ヨーク36およびリヤカバー31bの寸法誤差、組付誤差等に起因する磁路面積の低減、これに起因するパイロット機構30dのクラッチ特性が変化するおそれはない。
【0049】
従って、かかる構成のパイロット機構30dを構成部品とする当該駆動力伝達装置30においては、パイロット機構30dのトルク特性の変動に起因するクラッチ機構30cでの伝達トルクの変動(伝達トルクの低下)を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電磁式作動機構の一例である電磁クラッチをパイロットクラッチ機構とする駆動力伝達装置の部分断面図である。
【図2】同パイロットクラッチ機構を構成するヨークのリヤカバーへの組付け状態を示す模式図である。
【図3】同駆動力伝達装置を搭載した四輪駆動車の概略構成図である。
【図4】本発明に係る電磁式作動機構の他の一例である電磁式トルク発生機構をパイロット機構とする駆動力伝達装置の部分断面図である。
【図5】同パイロット機構を構成する両回転子の一部を拡大して示す部分断面図である。
【図6】同パイロット機構を構成するヨークのリヤカバーへの組付け状態を示す部分断面図(a)、およびその部分拡大図(b)である。
【図7】同パイロット機構を構成するヨークのリヤカバーへの組付け状態の3つの状態をを示す模式図(a),(b),(c)である。
【符号の説明】
10…駆動力伝達装置、10a…アウタケース、10b…インナシャウト、10c…メインクラッチ機構、10d…パイロットクラッチ機構、10e…カム機構、11a…ハウジング、11b…リヤカバー、11c…筒体、11d…凹所、11d1…外周側内面、11d2…内周側外面、12a…インナクラッチプレート、12b…アウタクラッチプレート、13…電磁石、14…摩擦クラッチ、14a…アウタクラッチプレート、14b…インナクラッチプレート、15…アーマチャ、16…ヨーク(支持部材)、16a1,16a2…突出部、16b…ベアリング、17…第1カム部材、18…第2カム部材、19…カムフォロアー、21…トランスアクスル、22…エンジン、23…フロントディファレンシャル、24a…アクスルシャフト、24b…前輪、25,26…プロペラシャフト、27…リヤディファレンシャル、28a…アクスルシャフト、28b…後輪、30…駆動力伝達装置、30a…アウタケース、30b…インナシャウト、30c…クラッチ機構、30d…パイロット機構、30e…カム機構、31a…ハウジング、31b…リヤカバー、31c…凹所、31c1…外周側内面、31c2…内周側外面、32a…インナクラッチプレート、32b…アウタクラッチプレート、33…電磁石、34…外側回転子、35…内側回転子、34a,35a…凹部、34b,35b…凸部、36…ヨーク(支持部材)、36a1,36a2…突出部、36b…ベアリング、37a,37b…カム溝、37c…カムフォロア。
Claims (1)
- 互いに同軸的かつ相対回転可能に位置する内側回転部材と外側回転部材の間に配置されて前記内側回転部材と外側回転部材をトルク伝達可能に連結するメインクラッチ機構と、磁力によって軸方向に吸引されるアーマチャの作動によって係合し前記メインクラッチ機構の摩擦係合を制御するパイロットクラッチ機構と、
前記外側回転部材の開口部に嵌合固定されて前記内側回転部材を回転可能に支持する磁路形成部材と、該磁路形成部材に軸方向に開口して形成した環状凹所に嵌合して同内磁路形成部材の軸部にベアリングを介して支持されその内部に環状の電磁石を嵌着した環状の支持部材とを備えて、前記環状凹所の外周側内面と前記支持部材の外周側環状突出部の外周面間に形成される環状ギャップと前記環状凹所の内周側外面と前記支持部材の内周側環状突出部の内周面間に形成される環状ギャップを通して形成される前記電磁石を基点とする磁路に生じる磁束によって前記アーマチャが作動するようにした駆動力伝達装置において、
前記環状凹所の外周側内面と内周側外面を前記支持部材の外周側環状突出部の外周面と同支持部材の前記内周川突出部の内周面よりそれぞれ軸方向の両側に長く延在して形成し、前記支持部材の組付け位置が軸方向にずれても前記両環状ギャップの磁路面積がそれぞれ所定の磁路面積に規定されるようにしたことを特徴とする駆動力伝達装置。
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