JP3887531B2 - 信号補間装置、信号補間方法及び記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、変調された信号のスペクトル分布を改善する信号補間装置及び信号補間方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
MP3(MPEG1 audio layer 3)形式のデータの配信、及び、FM(Frequency Modulation)放送やテレビジョン音声多重放送等の手法による音楽などの供給が近年盛んになっている。これらの手法では、帯域が過度に広くなることによるデータ量の増大や占有帯域幅の広がりを避けるため、一般に、供給する対象の音楽等のうち約15kHz以上の周波数成分が除去されている。
【0003】
このように、一定値以上の周波数成分が除去された音楽等は通常、音質が悪い。そこで、除去された周波数成分に代わる信号を加算することが考えられる。このための手法としては、特開平7−93900号公報に開示されている手法や、特開平6−85607号公報に開示されている手法がある。
【0004】
特開平7−93900号公報に開示されている手法は、PCMディジタルオーディオ信号をローパスフィルタに通して得られる出力オーディオ信号を、当該出力信号の絶対値成分を含む信号を乗算することにより歪みを生じさせる、という手法である。
【0005】
特開平6−85607号公報に開示されている手法は、原オーディオ信号から基音と倍音が組で存在する音色成分を抽出して、抽出した音色成分を用い、原オーディオ信号の帯域より高域側の倍音成分を予測して原オーディオ信号に外挿する、という手法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平7−93900号公報のオーディオ信号再生装置は、出力オーディオ信号の波形を絶対値回路等を用いて歪ませることにより高調波を発生させるに過ぎないものであって、この高調波は元のオーディオ信号に含まれているものに近似し得るものであるかは分からない。
【0007】
また、元の音声等の帯域を制限して得られる原オーディオ信号に特開平6−85607の手法を適用した場合、純音の音色成分について倍音成分を予測して外挿することができず、同様に、帯域が制限された結果倍音成分を除去された音色成分についても、除去された倍音成分を推測して外挿することができない。
【0008】
この発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、原信号の帯域を制限した信号を用いて得られる変調波から原信号に近い信号を復元できるようにするための信号補間装置及び信号補間方法を提供することを目的とする。
また、この発明は、オーディオ信号を高音質で復元するための信号補間装置及び信号補間方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するべく、この発明の第1の観点に係る信号補間装置は、
補間される対象である被補間信号に基づき、当該被補間信号が表す値をフーリエ変換して得られる複素形式のスペクトルの虚数部及び実数部を表す信号を生成するスペクトル分布生成手段と、
前記スペクトルが占める帯域に含まれる補間用帯域を、当該補間用帯域の上限が、前記スペクトルが占める帯域の上限と実質的に一致するようにして特定する帯域特定手段と、
前記スペクトルが実質的に分布しない被補間帯域を特定し、特定した当該被補間帯域内のスペクトルの実数部の分布が、前記帯域特定手段により特定された前記補間用帯域内のスペクトルの実数部の分布と実質的に同一であり、特定した当該被補間帯域内のスペクトルの虚数部の分布が、前記帯域特定手段により特定された前記補間用帯域内のスペクトルの虚数部の分布と実質的に同一であるような補間用成分を生成する補間手段と、
前記被補間信号と前記補間用成分との和を表す出力信号を生成する加算部と、を備える、
ことを特徴とする。
【0010】
このような信号補間装置によれば、スペクトルの実数部及び虚数部の分布が被補間信号のスペクトルの一部と実質的に同一であるような成分が被補間信号に追加され、帯域が拡張される。追加された成分は、被補間信号の一部分の高調波成分とみなし得るので、被補間信号が帯域を制限された信号である場合、帯域が拡張された後の被補間信号は、帯域が制限される前の原信号に近いものとなる。また、複素形式のスペクトルの実数部及び虚数部が共に追加されるので、追加された成分の位相は、帯域の制限により除去された成分の位相に近いものとなる。
従って、被補間信号がオーディオ信号を表すものであれば、帯域が拡張された後の被補間信号を用いてオーディオ信号を復元することにより、オーディオ信号が低歪み、高音質で復元される。
【0011】
前記補間用帯域の上限は、前記被補間信号のスペクトルの分布の上限に実質的に等しいものであれば、被補間信号に追加される成分は、被補間信号の一部分の高調波成分に特によく近似し得る可能性が高い。従って、帯域が拡張された後の被補間信号は、帯域が制限される前の原信号により近いものとなる。
【0012】
前記被補間帯域の下限は、前記被補間信号のスペクトルの分布の上限に実質的に等しいものであれば、被補間信号に追加される成分のスペクトルは、被補間信号のスペクトルと、高周波側で隙間なく隣接するものとなる。従って、帯域が拡張された後の被補間信号は、帯域が制限される前の原信号により近いものとなる。
【0013】
前記補間手段は、例えば、前記被補間信号のスペクトルの絶対値の包絡線を表す包絡線情報を抽出する手段と、前記補間用成分のスペクトルの強度を、当該補間用成分のスペクトルの絶対値の強度が前記包絡線情報が示す包絡線により表される強度に実質的に等しくなるように変更して前記加算部に供給する手段と、を備えていてもよい。
この場合、前記加算部は、前記被補間信号とスペクトルの強度が変更された前記補間用成分との和を表す出力信号を生成するものであればよい。
このような構成を有することにより、前記信号補間装置は、被補間信号に追加されるべき成分を、そのスペクトルの絶対値が被補間信号のスペクトルの包絡線に沿うようにして被補間信号に追加する。従って、帯域が拡張された後の被補間信号は、帯域が制限される前の原信号により近いものとなる。
【0014】
前記補間手段は、例えば、前記被補間信号のスペクトルの実数部の包絡線を表す第1の包絡線情報及び前記被補間信号のスペクトルの虚数部の包絡線を表す第2の包絡線情報を抽出する手段と、前記補間用成分のスペクトルの強度を、当該補間用成分のスペクトルの実数部の強度が前記第1の包絡線情報が示す包絡線により表される強度に実質的に等しくなり、且つ、当該補間用成分のスペクトルの虚数部の強度が前記第2の包絡線情報が示す包絡線により表される強度に実質的に等しくなるように変更して前記加算部に供給する手段と、を備えていてもよい。
この場合、前記加算部は、前記被補間信号とスペクトルの強度が変更された前記補間用成分との和を表す出力信号を生成するものであればよい。
このような構成を有することにより、前記信号補間装置は、被補間信号に追加されるべき成分を、そのスペクトルの実数部が被補間信号のスペクトルの実数部の包絡線に沿い、虚数部が被補間信号のスペクトルの虚数部の包絡線に沿うようにして被補間信号に追加する。従って、帯域が拡張された後の被補間信号は、帯域が制限される前の原信号により近いものとなる。
【0015】
前記加算部は、前記補間用成分と実質的に同相になるように前記被補間信号を遅延させる遅延部を備え、前記補間用成分及び前記遅延部が遅延させた前記被補間信号の和を表す前記出力信号を生成するものであれば、スペクトル分布生成手段及び補間手段のうちいずれかが信号の遅延を発生させるものであっても、加算部が正確に被補間信号の帯域の拡張を行う。
【0016】
また、この発明の第2の観点にかかる信号補間方法は、
補間される対象である被補間信号に基づき、当該被補間信号が表す値をフーリエ変換して得られる複素形式のスペクトルの虚数部及び実数部を表す信号を生成し、
前記スペクトルが占める帯域に含まれる補間用帯域を、当該補間用帯域の上限が、前記スペクトルが占める帯域の上限と実質的に一致するようにして特定し、
前記スペクトルが実質的に分布しない被補間帯域を特定し、特定した当該被補間帯域内のスペクトルの実数部の分布が前記補間用帯域内のスペクトルの実数部の分布と実質的に同一であり、特定した当該被補間帯域内のスペクトルの虚数部の分布が前記補間用帯域内のスペクトルの虚数部の分布と実質的に同一であるような補間用成分を生成し、
前記被補間信号と前記補間用成分との和を表す出力信号を生成する、
ことを特徴とする。
【0017】
このような信号補間方法によれば、スペクトルの実数部及び虚数部の分布が被補間信号のスペクトルの一部と実質的に同一であるような成分が被補間信号に追加され、帯域が拡張される。追加された成分は、被補間信号の一部分の高調波成分とみなし得るので、被補間信号が帯域を制限された信号である場合、帯域が拡張された後の被補間信号は、帯域が制限される前の原信号に近いものとなる。また、複素形式のスペクトルの実数部及び虚数部が共に追加されるので、追加された成分の位相は、帯域の制限により除去された成分の位相に近いものとなる。
従って、被補間信号がオーディオ信号を表すものであれば、帯域が拡張された後の被補間信号を用いてオーディオ信号を復元することにより、オーディオ信号が低歪み、高音質で復元される。
【0018】
前記補間用帯域の上限は、前記被補間信号のスペクトルの分布の上限に実質的に等しいものであれば、被補間信号に追加される成分は、被補間信号の一部分の高調波成分に特によく近似し得る可能性が高い。従って、帯域が拡張された後の被補間信号は、帯域が制限される前の原信号により近いものとなる。
【0019】
前記被補間帯域の下限は、前記被補間信号のスペクトルの分布の上限に実質的に等しいものであれば、被補間信号に追加される成分のスペクトルは、被補間信号のスペクトルと、高周波側で隙間なく隣接するものとなる。従って、帯域が拡張された後の被補間信号は、帯域が制限される前の原信号により近いものとなる。
【0020】
前記被補間信号のスペクトルの絶対値の包絡線を表す包絡線情報を抽出し、
前記補間用成分のスペクトルの強度を、当該補間用成分のスペクトルの絶対値の強度が前記包絡線情報が示す包絡線により表される強度に実質的に等しくなるように変更し、
前記被補間信号とスペクトルの強度が変更された前記補間用成分との和を表す出力信号を生成するようにしてもよい。
このような構成を有することにより、被補間信号に追加されるべき成分は、そのスペクトルの絶対値が被補間信号のスペクトルの包絡線に沿うようにして被補間信号に追加される。従って、帯域が拡張された後の被補間信号は、帯域が制限される前の原信号により近いものとなる。
【0021】
前記被補間信号のスペクトルの実数部の包絡線を表す第1の包絡線情報及び前記被補間信号のスペクトルの虚数部の包絡線を表す第2の包絡線情報を抽出し、
前記補間用成分のスペクトルの強度を、当該補間用成分のスペクトルの実数部の強度が前記第1の包絡線情報が示す包絡線により表される強度に実質的に等しくなり、且つ、当該補間用成分のスペクトルの虚数部の強度が前記第2の包絡線情報が示す包絡線により表される強度に実質的に等しくなるように変更し、
前記被補間信号とスペクトルの強度が変更された前記補間用成分との和を表す出力信号を生成するようにしてもよい。
こうすることにより、被補間信号に追加されるべき成分は、そのスペクトルの実数部が被補間信号のスペクトルの実数部の包絡線に沿い、虚数部が被補間信号のスペクトルの虚数部の包絡線に沿うようにして被補間信号に追加される。従って、帯域が拡張された後の被補間信号は、帯域が制限される前の原信号により近いものとなる。
【0022】
前記補間用成分と実質的に同相になるように前記被補間信号を遅延させ、前記補間用成分及び遅延した前記被補間信号の和を表す前記出力信号を生成するようにすれば、被補間信号のスペクトルを表す信号を生成する工程や補間用成分を生成する工程で信号の遅延が発生する場合も、被補間信号の帯域の拡張が正確に行われる。
【0023】
また、この発明の第3の観点にかかるコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、
コンピュータを、
補間される対象である被補間信号に基づき、当該被補間信号が表す値をフーリエ変換して得られる複素形式のスペクトルの虚数部及び実数部を表す信号を生成するスペクトル分布生成手段と、
前記スペクトルが占める帯域に含まれる補間用帯域を、当該補間用帯域の上限が、前記スペクトルが占める帯域の上限と実質的に一致するようにして特定する帯域特定手段と、
前記スペクトルが実質的に分布しない被補間帯域を特定し、特定した当該被補間帯域内のスペクトルの実数部の分布が、前記帯域特定手段により特定された前記補間用帯域内のスペクトルの実数部の分布と実質的に同一であり、特定した当該被補間帯域内のスペクトルの虚数部の分布が、前記帯域特定手段により特定された前記補間用帯域内のスペクトルの虚数部の分布と実質的に同一であるような補間用成分を生成する補間手段と、
前記被補間信号と前記補間用成分との和を表す出力信号を生成する加算部と、
して機能させるためのプログラムを記録したことを特徴とする。
【0024】
このような記録媒体に記録されたプログラムを実行するコンピュータは、スペクトルの実数部及び虚数部の分布が被補間信号のスペクトルの一部と実質的に同一であるような成分を被補間信号に追加し、帯域を拡張する。追加された成分は、被補間信号の一部分の高調波成分とみなし得るので、被補間信号が帯域を制限された信号である場合、帯域が拡張された後の被補間信号は、帯域が制限される前の原信号に近いものとなる。また、複素形式のスペクトルの実数部及び虚数部が共に追加されるので、追加された成分の位相は、帯域の制限により除去された成分の位相に近いものとなる。
従って、被補間信号がオーディオ信号を表すものであれば、帯域が拡張された後の被補間信号を用いてオーディオ信号を復元することにより、オーディオ信号が低歪み、高音質で復元される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、この発明の実施の形態に係る信号補間装置を、信号補間器を例として説明する。
【0026】
図1は、この発明の実施の形態に係る信号補間器の構成を示す図である。
図示するように、この信号補間器は、フーリエ変換部1と、補間バンド解析部3と、信号補間処理部4と、逆フーリエ変換部5と、補間バンド加算部6と、遅延部2とより構成されている。
【0027】
フーリエ変換部1は、DSP(Digital Signal Processor)やCPU(Central Processing Unit)等より構成されている。
フーリエ変換部1は、この信号補間器により補間を受ける対象のPCM(Pulse Code Mudulation)信号が供給される。そして、離散フーリエ変換あるいは高速フーリエ変換の手法を用い、自己に供給されたこの信号のスペクトルの離散的な分布を複素数の集合(具体的には、この複素数の実数部及び虚数部を表す2個の値からなる組の集合)として表す信号を生成し、生成した信号を、補間バンド解析部3及び信号補間処理部4へと供給する。なお、α及びβを実数、jを虚数単位とした場合、複素数(α+jβ)の実数部は実数α、虚数部は実数βである。
【0028】
なお、上述のPCM信号は、音声等を電圧あるいは電流の変化として表すオーディオ信号を用いてPCM変調を行うことにより得られる信号である。以下では、このPCM信号が表すオーディオ信号のスペクトル分布は、元のオーディオ信号のスペクトルのうち16キロヘルツ以上の周波数成分が除去されたものに相当するものとする。
【0029】
遅延部2は、フーリエ変換部1に供給されたものと同一のPCM信号を、フーリエ変換部1と同時に供給される。そして、自己に供給された入力信号を遅延させて、補間バンド加算部6に供給する。
【0030】
遅延部2が信号を遅延させる時間の長さは、フーリエ変換部1に供給された信号の成分が信号補間処理部4及び逆フーリエ変換部5を経て補間バンド加算部6に供給されるまでに経過する時間の長さに実質的に等しいものとする。
また、遅延部2から補間バンド加算部6に供給される遅延された入力信号の位相と、逆フーリエ変換部5から補間バンド加算部6に供給される信号の位相とは、補間バンド加算部6に同時に供給されるもの同士の間では、実質的に同相であるものとする。
【0031】
補間バンド解析部3は、DSPやCPU等より構成されている。
補間バンド解析部3は、スペクトルの分布を表す上述の信号をフーリエ変換部1より供給されると、まず、被補間バンドを特定する。被補間バンドは、この信号補間器により補間を受ける対象のPCM信号に追加する成分の周波数の上限を上限する連続した帯域であって、フーリエ変換部1から供給された信号が表すスペクトルが実質的に含まれていない帯域(具体的には、例えば、当該スペクトルのうち絶対値が所定値を超えるスペクトルが含まれていない帯域)である。なお、複素数(α+jβ)の絶対値は、実数{(α2+β2)1/2}である。
【0032】
次に、補間バンド解析部3は、フーリエ変換部1から供給された信号が表すスペクトルが占める帯域の上限を上限とし、帯域幅が、上述の処理で特定された被補間バンドの帯域幅に実質的に等しい帯域を、基準バンドとして特定する。そして、特定した基準バンドの範囲を指定する情報を、信号補間処理部4へと供給する。なお、基準バンドの範囲が指定されれば、被補間バンドの範囲も特定される。
【0033】
信号補間処理部4は、DSPやCPU等より構成されている。信号補間処理部4は、スペクトルの分布を表す上述の信号をフーリエ変換部1より供給されると、このスペクトルの絶対値の分布に基づき回帰計算を行う等して、このスペクトルの絶対値の包絡線をなす関数を特定する。
【0034】
そして、信号補間処理部4は、補間バンド解析部3より、基準バンドを特定する情報を供給されると、特定された基準バンド内のスペクトルを被補間バンド内に外挿することにより被補間バンドの補間後のスペクトル分布を求める。すなわち、特定された基準バンド内のスペクトルの周波数を、その元来の値に基準バンドの最高周波数と最低周波数との差を加算した値へと変更し、特定した関数の値にこれらのスペクトルの絶対値が合致するような実数を、これらのスペクトルの複素数の値に乗じる。
そして、信号補間処理部4は、求められた被補間バンドの補間後のスペクトル分布を表す信号を生成し、生成した信号を逆フーリエ変換部5へと供給する。
【0035】
逆フーリエ変換部5は、DSPやCPU等より構成されており、上述の通り、信号補間処理部4が出力する、被補間バンドの補間後のスペクトル分布を表す信号を供給される。そして、離散逆フーリエ変換あるいは高速逆フーリエ変換の手法を用い、自己に供給された信号が表すスペクトル分布を有するPCM信号を生成して、補間バンド加算部6に供給する。
【0036】
補間バンド加算部6は、DSPやCPU等より構成されており、遅延部2から自己に供給される遅延されたPCM信号の値と逆フーリエ変換部5から供給されるPCM信号の値との和を表すPCM信号を生成し、この信号補間器の出力信号として出力する。
【0037】
従って、この信号補間器の出力信号のスペクトル(補間後のスペクトル)は、元のPCM信号のスペクトルに被補間バンドの補間後のスペクトルが加算されて得られるスペクトルに実質的に等しいものとなる。
【0038】
なお、図2(a)は、補間前のスペクトルの実数部の分布の一例を示す図であり、図2(b)は、補間前のスペクトルの虚数部の分布の一例を示す図である。なお、図2(a)及び(b)は、同一のPCM信号のスペクトルを表している。図示するように、このPCM信号は、16キロヘルツ以上の周波数成分を実質的に含んでいない。
【0039】
また、図2(c)は、図2(a)及び(b)に示すスペクトルのうちから特定された基準バンドのスペクトルの実数部の分布を示す図であり、図2(d)は、図2(a)及び(b)に示すスペクトルのうちから特定された基準バンドのスペクトルの虚数部の分布を示す図である。なお、図2(a)及び(b)にスペクトルを示すPCM信号に追加する成分の周波数の上限は、20キロヘルツであるものとする。
図示するように、このPCM信号に追加する成分の周波数の上限が20キロヘルツであって、このPCM信号が16キロヘルツ以上の周波数成分を実質的に含んでいないときは、16キロヘルツ以上20キロヘルツ以下の帯域が被補間バンドとして特定され、12キロヘルツ以上16キロヘルツ未満の帯域が、基準バンドとして特定される。
【0040】
また、図2(e)は、図2(a)及び(b)にスペクトルを示すPCM信号を補間して得られるPCM信号のスペクトル(補間後のスペクトル)の実数部の分布の一例を示す図であり、図2(f)は、補間後のスペクトルの虚数部の分布の一例を示す図である。
図示するように、補間後のスペクトルの実数部の分布は、図2(a)に示す分布と図2(c)に示す分布とを加算したものに相当する。また、補間後のスペクトルの虚数部の分布は、図2(b)に示す分布と図2(d)に示す分布とを加算したものに相当する。
【0041】
補間後のスペクトル分布のうち補間バンド加算部6により加算された被補間バンドの部分のスペクトル分布は、補間前のスペクトルが占める帯域の上限を上限とする連続した帯域である基準バンドのスペクトル分布に相当するので、被補間バンドの部分は、この基準バンドの高調波成分とみなし得る。
また、被補間バンドの複素形式のスペクトルの実数部及び虚数部が共に補間前のスペクトルに追加されるので、追加された被補間バンドの位相は、帯域の制限により除去されたオーディオ信号の成分の位相に近いものとなる。
従って、この信号補間器が出力する出力信号は、帯域が制限される前のオーディオ信号に近いオーディオ信号をPCM変調して得られるPCM信号となり、この出力信号を用いてオーディオ信号を復元することにより、オーディオ信号が高音質で復元される。
【0042】
なお、この信号補間器の構成は上述のものに限られない。
例えば、信号補間処理部4は、スペクトルの分布を表す上述の信号をフーリエ変換部1より供給されると、このスペクトルの実数部及び虚数部の分布につき回帰計算を行う等して、このスペクトルの実数部及び虚数部の包絡線をなす2個の関数を特定してもよい。
【0043】
この場合、信号補間処理部4は、補間バンド解析部3が特定した基準バンド内のスペクトルの実数部の値を、スペクトルの実数部の包絡線をなす関数の値に合致するよう被補間バンド内に外挿し、基準バンド内のスペクトルの虚数部の値を、スペクトルの虚数部の包絡線をなす関数の値に合致するよう被補間バンド内に外挿するものとする。この結果得られる、被補間バンドの補間後のスペクトルの実数部の分布と、被補間バンドの補間後のスペクトルの虚数部の分布とが、被補間バンドの補間後のスペクトルの分布を表す。
【0044】
また、基準バンドの上限は、必ずしも補間前のスペクトルが占める帯域の上限と実質的に一致していなくてもよい。
ただし、基準バンドの上限が補間前のスペクトルが占める帯域の上限に一致するようにすれば、基準バンドの最高周波数は元のPCM信号のスペクトルの最高周波数を含んでいるので、基準バンド内のスペクトル自体が、補間前のスペクトルの一部分の高調波成分とみなし得る可能性が高い。従って、基準バンドの上限が補間前のスペクトルが占める帯域の上限に一致していれば、一致していない場合に比べ、帯域が制限される前のオーディオ信号により近いオーディオ信号を表すものとなる。
【0045】
また、この信号補間器が補間を行う対象の信号はPCM信号である必要はなく、オーディオ信号を変調して得られる変調波である必要もない。また、信号補間処理部4は、必ずしもフーリエ変換部1から供給された信号が表すスペクトルの包絡線を特定しなくてもよく、補間後の被補間バンド内のスペクトルの強度を変更しなくてもよい。
【0046】
以上、この発明の実施の形態を説明したが、この発明にかかる信号補間装置は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。
例えば、パーソナルコンピュータやマイクロコンピュータに上述のフーリエ変換部1、遅延部2、補間バンド解析部3、信号補間処理部4、逆フーリエ変換部5及び補間バンド加算部6の動作を実行するためのプログラムを格納した媒体(CD−ROM、MO、フロッピーディスク等)から該プログラムをインストールすることにより、上述の処理を実行する信号補間器を構成することができる。
【0047】
また、例えば、通信回線の掲示板(BBS)に該プログラムを掲示し、これを通信回線を介して配信してもよく、また、該プログラムを表す信号により搬送波を変調し、得られた変調波を伝送し、この変調波を受信した装置が変調波を復調して該プログラムを復元するようにしてもよい。
そして、このプログラムを起動し、OSの制御下に、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行することができる。
【0048】
なお、OSが処理の一部を分担する場合、あるいは、OSが本願発明の1つの構成要素の一部を構成するような場合には、記録媒体には、その部分をのぞいたプログラムを格納してもよい。この場合も、この発明では、その記録媒体には、コンピュータが実行する各機能又はステップを実行するためのプログラムが格納されているものとする。
【0049】
【発明の効果】
以上の説明のように、この発明によれば、原信号の帯域を制限した信号を用いて得られる変調波から原信号に近い信号を復元できるようにするための信号補間装置及び信号補間方法が実現される。
また、この発明によれば、オーディオ信号を高音質で復元するための信号補間装置及び信号補間方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る信号補間器の構成を示す図である。
【図2】(a)は、補間前のスペクトルの実数部の分布の一例を示す図であり、(b)は、補間前のスペクトルの虚数部の分布の一例を示す図であり、(c)は、基準バンドのスペクトルの実数部の分布を示す図であり、(d)は、基準バンドのスペクトルの虚数部の分布を示す図であり、(e)は補間後のスペクトルの実数部の分布の一例を示す図であり、(f)は、補間後のスペクトルの虚数部の分布の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 フーリエ変換部
2 遅延部
3 補間バンド解析部
4 信号補間処理部
5 逆フーリエ変換部
6 補間バンド加算部
Claims (13)
- 補間される対象である被補間信号に基づき、当該被補間信号が表す値をフーリエ変換して得られる複素形式のスペクトルの虚数部及び実数部を表す信号を生成するスペクトル分布生成手段と、
前記スペクトルが占める帯域に含まれる補間用帯域を、当該補間用帯域の上限が、前記スペクトルが占める帯域の上限と実質的に一致するようにして特定する帯域特定手段と、
前記スペクトルが実質的に分布しない被補間帯域を特定し、特定した当該被補間帯域内のスペクトルの実数部の分布が、前記帯域特定手段により特定された前記補間用帯域内のスペクトルの実数部の分布と実質的に同一であり、特定した当該被補間帯域内のスペクトルの虚数部の分布が、前記帯域特定手段により特定された前記補間用帯域内のスペクトルの虚数部の分布と実質的に同一であるような補間用成分を生成する補間手段と、
前記被補間信号と前記補間用成分との和を表す出力信号を生成する加算部と、を備える、
ことを特徴とする信号補間装置。 - 前記補間用帯域の上限は、前記被補間信号のスペクトルの分布の上限に実質的に等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載の信号補間装置。 - 前記被補間帯域の下限は、前記被補間信号のスペクトルの分布の上限に実質的に等しい、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の信号補間装置。 - 前記補間手段は、
前記被補間信号のスペクトルの絶対値の包絡線を表す包絡線情報を抽出する手段と、
前記補間用成分のスペクトルの強度を、当該補間用成分のスペクトルの絶対値の強度が前記包絡線情報が示す包絡線により表される強度に実質的に等しくなるように変更して前記加算部に供給する手段と、を備え、
前記加算部は、前記被補間信号とスペクトルの強度が変更された前記補間用成分との和を表す出力信号を生成するものである、
ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の信号補間装置。 - 前記補間手段は、
前記被補間信号のスペクトルの実数部の包絡線を表す第1の包絡線情報及び前記被補間信号のスペクトルの虚数部の包絡線を表す第2の包絡線情報を抽出する手段と、
前記補間用成分のスペクトルの強度を、当該補間用成分のスペクトルの実数部の強度が前記第1の包絡線情報が示す包絡線により表される強度に実質的に等しくなり、且つ、当該補間用成分のスペクトルの虚数部の強度が前記第2の包絡線情報が示す包絡線により表される強度に実質的に等しくなるように変更して前記加算部に供給する手段と、を備え、
前記加算部は、前記被補間信号とスペクトルの強度が変更された前記補間用成分との和を表す出力信号を生成するものである、
ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の信号補間装置。 - 前記加算部は、前記補間用成分と実質的に同相になるように前記被補間信号を遅延させる遅延部を備え、前記補間用成分及び前記遅延部が遅延させた前記被補間信号の和を表す前記出力信号を生成する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の信号補間装置。 - 補間される対象である被補間信号に基づき、当該被補間信号が表す値をフーリエ変換して得られる複素形式のスペクトルの虚数部及び実数部を表す信号を生成し、
前記スペクトルが占める帯域に含まれる補間用帯域を、当該補間用帯域の上限が、前記スペクトルが占める帯域の上限と実質的に一致するようにして特定し、
前記スペクトルが実質的に分布しない被補間帯域を特定し、特定した当該被補間帯域内のスペクトルの実数部の分布が前記補間用帯域内のスペクトルの実数部の分布と実質的に同一であり、特定した当該被補間帯域内のスペクトルの虚数部の分布が前記補間用帯域内のスペクトルの虚数部の分布と実質的に同一であるような補間用成分を生成し、
前記被補間信号と前記補間用成分との和を表す出力信号を生成する、
ことを特徴とする信号補間方法。 - 前記補間用帯域の上限は、前記被補間信号のスペクトルの分布の上限に実質的に等しい、
ことを特徴とする請求項7に記載の信号補間方法。 - 前記被補間帯域の下限は、前記被補間信号のスペクトルの分布の上限に実質的に等しい、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の信号補間方法。 - 前記被補間信号のスペクトルの絶対値の包絡線を表す包絡線情報を抽出し、
前記補間用成分のスペクトルの強度を、当該補間用成分のスペクトルの絶対値の強度が前記包絡線情報が示す包絡線により表される強度に実質的に等しくなるように変更し、
前記被補間信号とスペクトルの強度が変更された前記補間用成分との和を表す出力信号を生成する、
ことを特徴とする請求項7、8又は9に記載の信号補間方法。 - 前記被補間信号のスペクトルの実数部の包絡線を表す第1の包絡線情報及び前記被補間信号のスペクトルの虚数部の包絡線を表す第2の包絡線情報を抽出し、
前記補間用成分のスペクトルの強度を、当該補間用成分のスペクトルの実数部の強度が前記第1の包絡線情報が示す包絡線により表される強度に実質的に等しくなり、且つ、当該補間用成分のスペクトルの虚数部の強度が前記第2の包絡線情報が示す包絡線により表される強度に実質的に等しくなるように変更し、
前記被補間信号とスペクトルの強度が変更された前記補間用成分との和を表す出力信号を生成する、
ことを特徴とする請求項7、8又は9に記載の信号補間方法。 - 前記補間用成分と実質的に同相になるように前記被補間信号を遅延させ、前記補間用成分及び遅延した前記被補間信号の和を表す前記出力信号を生成する、
ことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の信号補間方法。 - コンピュータを、
補間される対象である被補間信号に基づき、当該被補間信号が表す値をフーリエ変換して得られる複素形式のスペクトルの虚数部及び実数部を表す信号を生成するスペクトル分布生成手段と、
前記スペクトルが占める帯域に含まれる補間用帯域を、当該補間用帯域の上限が、前記スペクトルが占める帯域の上限と実質的に一致するようにして特定する帯域特定手段と、
前記スペクトルが実質的に分布しない被補間帯域を特定し、特定した当該被補間帯域内のスペクトルの実数部の分布が、前記帯域特定手段により特定された前記補間用帯域内のスペクトルの実数部の分布と実質的に同一であり、特定した当該被補間帯域内のスペクトルの虚数部の分布が、前記帯域特定手段により特定された前記補間用帯域内のスペクトルの虚数部の分布と実質的に同一であるような補間用成分を生成する補間手段と、
前記被補間信号と前記補間用成分との和を表す出力信号を生成する加算部と、
して機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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