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JP3887004B2 - 重合体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、分子量が大きく、かつ分子量分布が狭く、単峰性(分子量分布のパターンが単一のピークからなる)の重合体を製造する方法に関する。
近年、ブロック共重合体の自己組織化による機能を利用したナノ微細加工などの多くの提案がなされており、用いる重合体は通常高分子量で、かつ分子量分布が狭く、単峰性であることが望ましい。
従来、ビニル芳香族化合物や共役ジエン化合物などのアニオン重合性モノマーのリビングアニオン重合体については、高分子量で、かつ分子量分布が狭い重合体の製造方法が知られている(特開2002−206003号公報を参照)。
特開2002−206003号公報
しかしながら、この文献記載の製造方法によりアニオン重合性モノマーとアクリル系モノマーとのブロック共重合体の製造を試みても、高分子量で、かつ分子量分布が狭く、単峰性の重合体を得ることが困難であった。
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、高分子量であり、かつ分子量分布が狭く、単峰性の重合体、特にアニオン重合性モノマーとアクリル系モノマーのブロック共重合体を工業的に有利に製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、アニオン重合性モノマーおよびアニオン重合開始剤から調製される2量体以上の重合体の成長末端部が、アニオンと反応することによりアニオン重合性モノマーを重合させることが可能なアニオン末端を生成する化合物であって、それ自身では多量化しない化合物により修飾されたポリマーアニオンを、特定の有機金属化合物の存在下、アクリル系モノマーを反応させることにより、高分子量で、かつ分子量分布が狭く、単峰性の重合体を効率よく製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、アニオンと反応することにより、アニオン重合性モノマーを重合させることが可能なアニオン末端を生成する化合物であって、それ自身では多量化しない、ジフェニルエチレン骨格またはスチルベン骨格を有する化合物により末端部が修飾されたポリマーアニオンに、式(1):(R1)nM(式中、R1は、C1〜C20アルキル基、またはC6〜C20アリール基を表し、nが2以上の場合、R1は同一または相異なっていてもよく、Mは、長周期型周期律表第2族、第12族または第13族に属する原子を表し、nはMの原子価を表す。)で表される化合物の存在下、アクリル系モノマーを反応させることを特徴とする重合体の製造方法が提供される。
本発明の製造方法においては、前記ポリマーアニオンが、アニオン重合性モノマーおよびアニオン重合開始剤から調製される重合体の成長末端部と、アニオンと反応することによりアニオン重合性モノマーを重合させることが可能なアニオン末端を生成する化合物であって、それ自身では多量化しない、ジフェニルエチレン骨格またはスチルベン骨格を有する化合物とを反応させて得られたポリマーアニオンであるのが好ましい。
本発明の製造方法は、アニオン重合性モノマー、式(1):(R1)nM(式中、R1は、C1〜C20アルキル基、またはC6〜C20アリール基を表し、nが2以上の場合、R1は同一または相異なっていてもよく、Mは、長周期型周期律表第2族、第12族または第13族に属する原子を表し、nはMの原子価を表す。)で表される化合物およびアニオン重合開始剤から、アニオン重合性モノマーの重合体アニオンを調製する工程(1)と、工程(1)で調製した重合体アニオンと、アニオンと反応することによりアニオン重合性モノマーを重合させることが可能なアニオン末端を生成する化合物であって、それ自身では多量化しない、ジフェニルエチレン骨格またはスチルベン骨格を有する化合物とを反応させて、アニオンと反応することによりアニオン重合性モノマーを重合させることが可能なアニオン末端を生成する化合物であって、それ自身では多量化しない、ジフェニルエチレン骨格またはスチルベン骨格を有する化合物により末端部が修飾されたポリマーアニオンを調製する工程(2)と、工程(2)で調製したポリマーアニオンとアクリル系モノマーとを反応させる工程(3)とを有することを特徴とする重合体の製造方法であるのが好ましい。また、この場合においては、前記工程(1)が、アニオン重合性モノマーおよび前記式(1)で表される化合物を、アニオン重合開始剤に添加して重合する工程であるのがより好ましい。
本発明の製造方法においては、前記アニオン重合性モノマーが、ビニル芳香族化合物および共役ジエン化合物の少なくとも一種であるのが好ましい。
本発明の製造方法によれば、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.01〜2.50である重合体、および/または数平均分子量(Mn)が、20,000以上の重合体を製造することができる。
以下、本発明の重合体の製造方法を詳細に説明する。
本発明の重合体の製造方法は、アニオンと反応することにより、アニオン重合性モノマーを重合させることが可能なアニオン末端を生成する化合物であって、それ自身では多量化しない、ジフェニルエチレン骨格またはスチルベン骨格を有する化合物(以下、「キャップ剤」という。)により末端部が修飾されたポリマーアニオンに、式(1):(R1)nM(式中、R1は、C1〜C20アルキル基、またはC6〜C20アリール基を表し、nが2以上の場合、R1は同一または相異なっていてもよく、Mは、長周期型周期律表第2族、第12族または第13族に属する原子を表し、nはMの原子価を表す。)で表される化合物の存在下、アクリル系モノマーを反応させることを特徴とする。
(ポリマーアニオン)
本発明に用いるポリマーアニオンは、重合性モノマーの2量体以上の重合体の末端部がアニオン化されたポリマーアニオンであれば特に制約されない。本発明においては、後述するように、前記ポリマーアニオンが、アニオン重合性モノマーおよびアニオン重合開始剤から調製される重合体の成長末端部と、キャップ剤とを反応させて得られたポリマーアニオンであるのが好ましい。
(アニオン重合開始剤)
前記ポリマーアニオンの調製に用いるアニオン重合開始剤としては、求核剤であって、アニオン重合性モノマーの重合を開始させる働きを有するものであれば特に制約はなく、例えば、アルカリ金属、有機アルカリ金属などを使用することができる。
アルカリ金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどが挙げられる。
有機アルカリ金属としては、上記アルカリ金属のアルキル化物、アリル化物、アリール化物などが挙げられる。具体的には、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、エチルナトリウム、リチウムビフェニル、リチウムナフタレン、リチウムトリフェニル、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン、α−メチルスチレンナトリウムジアニオン、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、1,4−ジリチオ−2−ブテン、1,6−ジリチオヘキサン、ポリスチリルリチウム、クミルカリウム、クミルセシウムなどを使用できる。これらのアニオン重合開始剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン重合開始剤の使用量は、用いるアニオン重合性モノマーに対して、通常0.001〜0.2当量、好ましくは0.005〜0.1当量である。この範囲のアニオン重合開始剤を用いることによって、目的とする重合体を収率よく製造することができる。
(キャップ剤)
本発明に用いるキャップ剤としては、ポリマーアニオンのアニオン部と反応し、成長末端アニオンを生じさせる働きを有し、それ自身では多量化しない化合物であれば特に制約されない。なかでも、入手が容易であること、および目的とする重合体を効率よく製造することができる観点から、ジフェニルエチレン骨格またはスチルベン骨格を有する化合物が好ましい。
ジフェニルエチレン骨格を有する化合物の具体例としては、1,1−ジフェニルエチレン、1,1−ジ(p−メチルフェニル)エチレン、1,1−ジ(m−メチルフェニル)エチレン、1,1−ジ(p−クロロフェニル)エチレン、1,1−ジ(m−クロロフェニル)エチレンなどが挙げられる。
スチルベン骨格を有する化合物の具体例としては、スチルベン(トランス−1,2−ジフェニルエチレン)、イソスチルベン(シス−1,2−ジフェニルエチレン)、トランス−1,2−ジ(p−メチルフェニル)エチレン、1,2−ジ(m−メチルフェニル)エチレン、1,2−ジ(p−クロロフェニル)エチレン、1,2−ジ(m−クロロフェニル)エチレン、シス−1,2−ジ(p−メチルフェニル)エチレン、シス−1,2−ジ(m−メチルフェニル)エチレン、シス−1,2−ジ(p−クロロフェニル)エチレンなどが挙げられる。
これらの中でも、入手が容易であることおよび収率よく目的とする重合体を得ることができることなどから、1,1−ジフェニルエチレンおよびスチルベンが好ましく、1,1−ジフェニルエチレンが特に好ましい。
またキャップ剤は、副反応の発生を抑えるため十分に脱水処理および脱気処理して用いるのが好ましい。
キャップ剤の使用量は、アニオン重合開始剤に対して、通常0.5〜2当量、好ましくは0.8〜1.2当量である。また、アニオン重合性モノマーに対して、通常0.001〜0.2当量、好ましくは0.005〜0.1当量である。この範囲のキャップ剤を使用することにより、最も効率よく高分子量で、かつ分子量分布が狭く、単峰性の重合体を得ることができる。
(式(1)で表される化合物)
本発明の製造方法においては、式(1):(R1)nMで表される化合物(以下、化合物(1)という。)を用いる。化合物(1)は、重合体の成長末端部に化合物(1)の金属イオンが配位することによって成長末端を安定化させ、重合を円滑に進行させる働きを有する。また、系中にアニオン重合を阻害する物質、例えば活性水素化合物などが存在する場合に、活性水素化合物などと反応し、重合反応が阻害されるのを防止する。
前記式(1)において、R1は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20アルキル基またはC6〜C20アリール基を表す。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。C1〜C20アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、ベンジル基などが挙げられる。また、C6〜C20アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
nはMの原子価を表し、nが2以上のとき、R1は同一または相異なっていてもよい。
Mは、マグネシウム、カルシウムなどの長周期型周期律表第2族に属する原子;亜鉛、カドミウムなどの同第12族に属する原子;またはアルミニウムなどの同第13族に属する原子;を表す。
化合物(1)の具体例としては、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−t−ブチルマグネシウム、ジ−s−ブチルマグネシウム、n−ブチル−s−ブチルマグネシウム、n−ブチル−エチルマグネシウム、ジ−n−アミルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、ジフェニルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物;ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物;などが挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、これらの中でも、高分子量で、かつ分子量分布が狭く、単峰性の重合体が収率よく得られることから、有機マグネシウム化合物が好ましく、ジブチルマグネシウムが特に好ましい。
化合物(1)の使用量は、アニオン重合開始剤に対して、通常0.5〜2当量、好ましくは0.7〜1.2当量である。また、用いるアニオン重合性モノマーに対して、通常0.001〜0.2当量、好ましくは0.005〜0.1当量である。この範囲の化合物(1)を使用することにより、最も効率よく、高分子量で、かつ分子量分布が狭く、単峰性の重合体を得ることができる。
本発明の重合体の製造方法は、キャップ剤により末端部が修飾されたポリマーアニオンに、化合物(1)の存在下、アクリル系モノマーを反応させることを特徴とする。この反応は、キャップ剤により末端部が修飾されたポリマーアニオンに、アクリル系モノマーがアニオン重合するものである。
アクリル系モノマーの重合反応は適当な溶媒中で行なうのが好ましい。用いる溶媒としては、重合反応に関与せず、かつ重合体と相溶性のある溶媒であれば特に制限されない。例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサンなどのエーテル系溶媒;芳香族炭化水素系溶媒または脂環式炭化水素系溶媒;テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)などの3級アミン系溶媒;およびこれら2種以上からなる混合溶媒を使用することができる。
本発明においては、これらの中でも、取り扱いが容易で、反応が円滑に進行して収率よく目的とする共重合体を得ることができることからエーテル系溶媒が好ましく、テトラヒドロフランが特に好ましい。また溶媒は、副反応の発生を抑えるため十分に脱水処理および脱気処理して用いるのが好ましい。
溶媒の使用量は特に制限はなく、反応規模、溶媒やモノマーの種類などにより適宜定めることができる。通常、用いるモノマーの溶媒に対する濃度が、1〜70重量%、好ましくは3〜40重量%となる範囲である。
本発明の製造方法は、アニオン重合性モノマー、化合物(1)およびアニオン重合開始剤から、アニオン重合性モノマーの重合体アニオンを調製する工程(1)と、工程(1)で調製した重合体アニオンと、キャップ剤により末端部が修飾されたポリマーアニオンを調製する工程(2)と、工程(2)で調製したポリマーアニオンとアクリル系モノマーとを反応させる工程(3)とを有するものであるのが好ましい。
この製造方法によれば、本発明に係る重合体を製造するプロセス全般において、化合物(1)を存在させることになり、アニオン重合体の成長末端を安定化して重合を円滑に進行させ、かつ、系中にアニオン重合を阻害する物質、例えば活性水素化合物などが存在する場合に、アニオン重合を阻害することなく、活性水素化合物などと反応し、重合反応が阻害されるのを確実に防止することができる。
工程(1)では、アニオン重合性モノマー、化合物(1)、およびアニオン重合開始剤から、アニオン重合性モノマーのポリマーアニオンを調製する。用いるアニオン重合性モノマーとしては、アニオン重合開始剤によりアニオンを発生し、このアニオンを反応活性点として付加反応を繰り返すことによりアニオン重合するものであれば、特に制限されない。例えば、ビニル芳香族化合物、共役ジエン化合物、アクリル系モノマーなどが使用できる。これらの中でも、ビニル芳香族化合物および共役ジエン化合物が好ましく、ビニル芳香族化合物が特に好ましい。
ビニル芳香族化合物としては、スチレン、α−アルキルスチレン、核置換スチレン、α−アルキル−核置換スチレンなどが挙げられる。α−アルキルスチレンとしては、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−n−プロピルスチレン、α−n−ブチルスチレンなどが挙げられる。
核置換スチレンは、スチレンのベンゼン環(核)が置換基で置換された化合物である。この置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、t−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、含酸素複素環基などが挙げられる。
核置換スチレンの具体例としては、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、2,4,6−トリイソプロピルスチレン、4−t−ブトキシスチレン、3−t−ブトキシスチレンなどのアルキル基が置換したスチレン;4−メトキシメチルスチレン、4−(1’−エトキシ)エチルスチレンなどのアルコキシアルキル基が置換したスチレン;4−メトキシスチレン、3−イソプロポキシスチレン、4−t−ブトキシスチレンなどのアルコキシ基が置換したスチレン;4−メトキシメトキシスチレン、4−エトキシメトキシスチレンなどのアルコキシアルコキシ基が置換したスチレン;4−t−ブトキシカルボニルスチレンなどのt−ブトキシカルボニル基が置換したスチレン;4−テトラヒドロフラニルスチレン、4−テトラヒドロピラニルスチレンなどの含酸素複素環基が置換したスチレン;などが挙げられる。
α−アルキル−核置換スチレンは、上述したα−アルキルスチレンのベンゼン環に、上述した核置換スチレンの置換基と同様の置換基が置換した化合物である。その具体例としては、4−メチル−α−メチルスチレン、3−メチル−α−メチルスチレン、2−メチル−α−メチルスチレン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、4−イソプロピル−α−メチルスチレン、4−t−ブトキシ−α−メチルスチレンなどが挙げられる。
共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。
アクリル系モノマーとしては、置換基を有していてもよい(メタ)アクリル酸のエステル、置換基を有していてもよい(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタクリル酸のいずれかを表す意である。
置換基を有していてもよい(メタ)アクリル酸のエステル、および置換基を有していてもよい(メタ)アクリロニトリルの置換基としては、炭素数が1〜18のアルキル基、ベンジル基などが挙げられる。これらの基は、さらに、フッ素原子などのハロゲン原子;t−アミノ基;アセトキシ基などのカルボアルコキシ基;などで置換されていてもよい。
アクリル系モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルなどが挙げられる。また、置換基を有していてもよい(メタ)アクリロニトリルの具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
本発明においては、これらのアニオン重合性モノマーを1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのアニオン重合性モノマーは、副反応の発生を抑えるため十分に脱水処理および脱気処理して用いるのが好ましい。
前記ポリマーアニオンは、化合物(1)の存在下、アニオン重合性モノマーとアニオン重合開始剤を、溶媒中、所定温度で撹拌することによって調製することができる。ポリマーアニオンの重合度は2以上であれば特に制約されず、アニオン重合性モノマーの仕込み量などにより適宜調節することができる。
前記ポリマーアニオンを調製するときの反応温度は、アニオン重合性モノマーのアニオン重合が完結する温度であり、用いるアニオン重合性モノマーの反応性により異なる。通常、化合物(1)を添加する時期に関わらず、−100℃〜+20℃、好ましくは−80℃〜0℃の範囲である。−100℃以下では反応速度が遅く、生産効率上問題となる一方で、+20℃以上では、移動反応や停止反応などの副反応が起こり易くなる。また反応温度は、重合反応中一定である必要はなく、重合反応の進行に従い任意の速度で上昇させてもかまわない。
反応時間は、反応温度や反応規模により異なり、適宜設定することができる。反応は、常圧下、高圧下、減圧下、高真空下いずれにおいても行うことができる。また反応は、副反応の発生を抑えるために、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
ポリマーアニオンを調製する反応の終了は、反応液からアニオン重合性モノマーが消失することにより確認することができる。アニオン重合性モノマーの消失は、例えば、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析して確認することができる。
工程(2)は、工程(1)で調製したポリマーアニオンとキャップ剤とを反応させて、キャップ剤により末端部が修飾されたポリマーアニオンを調製する工程である。すなわち、工程(1)で得たポリマーアニオンの溶液にキャップ剤を添加し、所定温度で引き続き撹拌を行うことにより、重合体の成長末端部がキャップ剤により修飾されたポリマーアニオンの溶液を得ることができる。
キャップ剤はそのまま添加しても、適当な溶媒に溶解した溶液として添加してもよい。ここで用いる溶媒としては反応に不活性な溶媒であれば特に制限されず、アニオン重合性モノマーの重合反応に用いた溶媒と同じであっても異なっていてもよい。キャップ剤により成長末端部が修飾されたポリマーアニオンは、重合反応の速度が適度に制御された状態となるため、アクリル系モノマーを添加することにより、高分子量で、かつ分子量分布が狭く、単峰性のブロック共重合体を得ることができる。
ポリマーアニオンとキャップ剤との反応の反応温度は、通常−100℃〜+50℃、好ましくは−80℃〜+20℃である。また反応は、通常数分から数時間で完結する。この反応の終了は、反応液をサンプリングし、ガスクロマトグラフィー、NMRスペクトルなどの公知の分析手段により確認することができる。
工程(3)は、工程(2)で調製したポリマーアニオンとアクリル系モノマーとを反応させる工程である。すなわち、キャップ剤により成長末端部が修飾されたポリマーアニオンが、化合物(1)の存在下にアクリル系モノマーと反応することにより、キャップ剤により修飾された成長末端部からさらにアクリル系モノマーの重合が始まり、高分子量で、かつ分子量分布が狭く、単峰性の重合体を得ることができる。
用いるアクリル系モノマーとしては、前記アニオン重合性モノマーとして用いることができるものとして例示したアクリル系モノマーと同様のものを使用できる。アクリル系モノマーは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。またアクリル系モノマーは、副反応の発生を抑えるため十分に脱水処理および脱気処理して用いるのが好ましい。
アクリル系モノマーの使用量は特に制限はなく、重合体の分子量などに応じて適宜設定することができる。通常、用いるアニオン重合性モノマーに対して0.01〜10当量、好ましくは0.1〜5当量である。
アクリル系モノマーは反応液にそのまま添加してもよいし、適当な溶媒に溶解した溶液として添加してもよい。溶液として用いる場合、アクリル系モノマー溶液の濃度は、通常10〜90重量%、好ましくは30〜60重量%である。用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に制限されず、アニオン重合性モノマーの重合反応に用いた溶媒と同じでも異なっていてもよい。
アクリル系モノマーの重合反応温度は、キャップ剤により修飾されたポリマーアニオンとアクリル系モノマーとが反応し、アクリル系モノマーのアニオン重合が完結する温度であり、用いるモノマーの反応性により異なる。通常、上述したアニオン重合反応の反応温度と同様、−100℃〜+20℃、好ましくは−80℃〜0℃である。
重合反応時間は、用いるアクリル系モノマーの種類や使用量、反応温度などにより、適宜設定することができる。通常、10分から24時間、好ましくは30分から5時間である。反応は、常圧下、高圧下、減圧下、高真空下などいずれの条件下でも行うことができる。また重合反応は、副反応の発生を抑えるために、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
アクリル系モノマーの重合反応の終了は、反応液からアクリル系モノマーが消失することにより確認することができる。アクリル系モノマーの消失は、例えば、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析して確認することができる。
反応終了後は、通常の後処理操作により、目的とする重合体を単離する。具体的には、メタノールなどの反応停止剤を反応液に添加して反応を終了させ、酸などを添加して化合物(1)を除去する操作を行い、次いで沈殿、ろ過などの操作により、目的とする重合体を単離することができる。
本発明の製造方法によれば、高分子量の重合体を得ることができる。得られる重合体の数平均分子量は、通常20,000以上、好ましくは50,000以上、より好ましくは100,000以上である。また、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
本発明の製造方法によれば、分子量分布が狭い重合体を得ることができる。本発明により得られる重合体の分子量分布、すなわち、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、好ましくは1.01〜2.50、より好ましくは1.01〜1.50である。
また本発明の製造方法によれば、分子量が20,000以上で、かつ分子量分布が狭く、単峰性の重合体を得ることができる。本発明の製造方法は、芳香族ビニル化合物とアクリル系モノマーとのブロック共重合体の製造に特に好適である。本発明の製造方法により得られるブロック共重合体は、自己組織化機能を利用したナノ微細加工などの材料として特に有用である。
次に、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく説明する。但し、本発明は、以下の実施例によって、何ら限定されるものではない。
(1)テトラヒドロフラン(THF)
市販の脱水THF(関東化学製)を使用した。
(2)n−ブチルリチウム(n−BuLi)溶液
市販のn−BuLi/n−ヘキサン溶液(1.6M;和光純薬製)を使用した。
(3)スチレン
市販のスチレンモノマー(和光純薬製)を30分窒素バブリングし脱気処理を施したものを使用した。
(4)メチルメタクリレート(MMA)
市販のメタクリル酸メチルモノマー(和光純薬製)をモレキュラシーブス4Aにて脱水処理を施し使用した。
(5)ジブチルマグネシウム(BuMg)溶液
市販のBuMg/n−ヘプタン溶液(1.0M;アルドリッチ社製)を使用した。
(6)ジフェニルエチレン(DPE)
市販のジフェニルエチレン(東京化成製)を使用した。
(7)塩化リチウム(LiCl)
市販の塩化リチウム(和光純薬製)を使用した。
THF562gに、窒素雰囲気下、−40℃でn−BuLi溶液1.69g(4.1mmol)を添加した。この溶液に、スチレン29.9g(287mmol)に、窒素雰囲気下、−40℃でBuMg溶液2.72g(19重量%、3.8mmol)を添加して得た混合液を添加し、−40℃で1時間攪拌した。次いで、この反応液にジフェニルエチレン(DPE)1.12g(6.2mmol)を加えた。−65℃で30分攪拌した後、メチルメタクリレート7.7g(76.7mmol)を添加し、さらに1時間攪拌した。得られた反応混合物にメタノールを添加して反応を停止させた後、1.0N塩酸を加え、メタノール/THF(体積比1:1)溶媒で再沈澱操作を行ない、ろ取し、得られたろ過物を風乾することにより、スチレン−メタクリレート共重合体Aを得た(収率99%)。共重合体Aの重量平均分子量をGPCで測定したところ、59,600であった。
この共重合体のGPC曲線(a)を図1に示す。図中、横軸は保持時間(分)、縦軸は吸収強度(保持容量)を表す(以下にて同じ)。図1より、DPEおよびBuMgを添加した実施例1では、分子量が大きく、かつ分子量分布が狭く、単峰性の共重合体が得られた。
比較例1
THF568gに、窒素雰囲気下、−40℃でn−BuLi溶液2.2g(5.3mmol)を添加した。この溶液に、スチレン29.8g(286mmol)に、窒素雰囲気下、−40℃でBuMg溶液3.65g(19重量%、5.1mmol)を添加して得た混合液を添加し、−40℃で1時間攪拌した。次いで、この反応液にメチルメタクリレート12.4g(124mmol)を添加し、さらに−65℃で1時間攪拌した。得られた反応混合物にメタノールを添加して反応を停止させた後、1.0N塩酸を加え、メタノール/THF(体積比1:1)溶媒で再沈澱操作を行ない、ろ取し、得られたろ過物を風乾することにより、スチレン−メタクリレート共重合体Bを得た(収率99%)。共重合体Bの重量平均分子量は、293,700であった。
この共重合体のGPC曲線を図2に示す。図2より、DPE(キャップ剤)を添加しなかった比較例1では、分子量が大きく、分子量分布が狭いが、二峰性の共重合体が得られた。
比較例2
THF597g中に、窒素雰囲気下、−40℃でn−BuLi溶液1.4g(3.4mmol)を添加した。この溶液中に、スチレン48.9g(470mmol)を−40℃で添加して−40℃で1時間攪拌した。次いでこの反応液に、DPE0.63g(3.5mmol)を加え、−40℃で30分攪拌した後、メチルメタクリレート12.1g(121mmol)を添加し、さらに−65℃で1時間攪拌した。得られた反応混合物にメタノールを添加して反応を停止させた後、1.0N塩酸を加え、メタノール/THF(体積比1:1)溶媒で再沈澱操作を行ない、ろ取し、得られたろ過物を風乾することにより、スチレン−メタクリレート共重合体Cを得た(収率99%)。共重合体Cの重量平均分子量は、449,200であった。
この共重合体のGPC曲線を図3に示す。図3より、BuMgを添加しなかった比較例2では、分子量が大きく、単峰性ではあるが、分子量分布が広い共重合体が得られた。
比較例3
塩化リチウム(LiCl)0.6g(1.3mmol)を添加したTHF270gに、窒素雰囲気下、−65℃でn−BuLi溶液0.5g(1.3mmol)を室温で添加した。この溶液に、スチレン13.7g(130mmol)を−65℃で添加して−65℃で1時間攪拌した。次いで、この反応液にメチルメタクリレート14.8g(150mmol)を添加し、さらに−65℃で1時間撹拌した。得られた反応混合物にメタノールを添加して反応を停止させた後、1.0N塩酸を加え、メタノール/THF(体積比1:1)溶媒で再沈澱操作を行ない、ろ取し、得られたろ過物を風乾することにより、スチレン−メタクリレート共重合体Dを得た(収率99%)。共重合体Dの重量平均分子量は、15,460であった。
この共重合体のGPC曲線を図4に示す。図4より、LiClを添加した比較例3では、単峰性ではあるが、分子量が小さく、分子量分布が若干広い共重合体が得られた。
比較例4
THF242gに、窒素雰囲気下、−65℃でn−BuLi溶液0.5g(1.3mmol)を添加した。この溶液に、スチレン13.0g(130mmol)を添加して−65℃で1時間撹拌した。次いで、この反応液にメチルメタクリレート14.8g(150mmol)を添加し、さらに−65℃で1時間攪拌した。得られた反応混合物にメタノールを添加して反応を停止させた後、1.0N塩酸を加え、メタノール/THF(体積比1:1)溶媒で再沈澱操作を行ない、ろ取し、得られたろ過物を風乾することにより、スチレン−メタクリレート共重合体Eを得た(収率99%)。共重合体Eの重量平均分子量は、112,100であった。
この共重合体のGPC曲線を図5に示す。図5より、BuMg、DPE(キャップ剤)を添加しなかった比較例4では、分子量は大きいが、多峰性であり、かつ分子量分布が広い共重合体が得られた。
本発明によれば、分子量が大きく、かつ分子量分布が狭く、単峰性を有するアニオン重合性モノマーとアクリル系モノマーとのブロック共重合体を効率よく製造することができる。本発明の製造方法により得られるブロック共重合体は、自己組織化機能を利用したナノ微細加工などの材料として特に有用であり、本発明の製造方法は、産業上の利用価値は高いといえる。
図1は、実施例1で得られる共重合体のGPC曲線図である。 図2は、比較例1で得られる共重合体のGPC曲線図である。 図3は、比較例2で得られる共重合体のGPC曲線図である。 図4は、比較例3で得られる共重合体のGPC曲線図である。 図5は、比較例4で得られる共重合体のGPC曲線図である。

Claims (8)

  1. アニオンと反応することによりアニオン重合性モノマーを重合させることが可能なアニオン末端を生成する化合物であって、それ自身では多量化しない、ジフェニルエチレン骨格またはスチルベン骨格を有する化合物により末端部が修飾されたポリマーアニオンに、式(1):(R1)nM(式中、R1は、C1〜C20アルキル基、またはC6〜C20アリール基を表し、nが2以上の場合、R1は同一または相異なっていてもよく、Mは、長周期型周期律表第2族、第12族または第13族に属する原子を表し、nはMの原子価を表す。)で表される化合物の存在下、アクリル系モノマーを反応させることを特徴とする重合体の製造方法。
  2. 前記ポリマーアニオンが、アニオン重合性モノマーおよびアニオン重合開始剤から調製される重合体の成長末端部と、アニオンと反応することによりアニオン重合性モノマーを重合させることが可能なアニオン末端を生成する化合物であって、それ自身では多量化しない、ジフェニルエチレン骨格またはスチルベン骨格を有する化合物とを反応させて得られたポリマーアニオンであることを特徴とする請求項1記載の重合体の製造方法。
  3. アニオン重合性モノマー、式(1):(R1)nM(式中、R1は、C1〜C20アルキル基、またはC6〜C20アリール基を表し、nが2以上の場合、R1は同一または相異なっていてもよく、Mは、長周期型周期律表第2族、第12族または第13族に属する原子を表し、nはMの原子価を表す。)で表される化合物、およびアニオン重合開始剤から、アニオン重合性モノマーの重合体アニオンを調製する工程(1)と、工程(1)で調製した重合体アニオンと、アニオンと反応することによりアニオン重合性モノマーを重合させることが可能なアニオン末端を生成する化合物であって、それ自身では多量化しない、ジフェニルエチレン骨格またはスチルベン骨格を有する化合物とを反応させて、アニオンと反応することによりアニオン重合性モノマーを重合させることが可能なアニオン末端を生成する化合物であって、それ自身では多量化しない、ジフェニルエチレン骨格またはスチルベン骨格を有する化合物により末端部が修飾されたポリマーアニオンを調製する工程(2)と、工程(2)で調製したポリマーアニオンとアクリル系モノマーとを反応させる工程(3)とを有することを特徴とする重合体の製造方法。
  4. 前記工程(1)が、アニオン重合性モノマーおよび前記式(1)で表される化合物を、アニオン重合開始剤に添加して重合する工程であることを特徴とする請求項3に記載の重合体の製造方法。
  5. 前記アニオン重合性モノマーが、ビニル芳香族化合物および共役ジエン化合物の少なくとも一種であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の重合体の製造方法。
  6. 前記式(1)で表される化合物が、有機マグネシウム化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の重合体の製造方法。
  7. 重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.01〜2.50である重合体を製造することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の重合体の製造方法。
  8. 数平均分子量(Mn)が、20,000以上の重合体を製造することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の重合体の製造方法。
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