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JP3886483B2 - 音響センサ - Google Patents

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Description

本発明は、音声認識処理,音響信号処理等において音信号の特徴を抽出するための音響センサに関し、特に、各周波数帯域における音信号の強度を検出するための音響センサに関する。
音声認識を実行するシステムにおいて、従来は、音声信号を受信したマイクロフォンの振動を、アンプにて電気信号に変換・増幅した後、A/D変換器でアナログ信号をディジタル化して音声ディジタル信号を得、この音声ディジタル信号にコンピュータ上でソフトウェアにより高速フーリエ変換を施し、音声の特徴を抽出する。このような音声認識のシステムが開示されている(例えば、非特許文献1参照。)。
音声信号の特徴を効率良く抽出するためには、音声信号が定常であると見做せる時間内の音響スペクトルを計算する必要がある。音声信号の場合には、通常10〜20msecの時間内で定常と見做せると考えられている。従って、10〜20msecを周期としてその時間内に含まれる音声ディジタル信号に対して、コンピュータ上のソフトウェアにより、高速フーリエ変換等の信号処理を実行する。
以上のように、従来の音声認識方式では、瞬時の全帯域を含んだ音声信号をマイクロフォンによって電気信号に変換し、その電気信号のスペクトルを分析するために、A/D変換を施して各周波数をディジタル化し、その音声ディジタル信号データを特定の音声波形のデータと比較して、音声の特徴を抽出している。
ところで、聴覚機構及び音の心理物理的性質について詳細な説明がなされている(例えば、非特許文献2参照。)。この文献には、人間が聴く音の高さ(ピッチ)の尺度が、物理量としての周波数と線形に対応するものではなく、メルスケールという尺度に線形に対応することが示されている。このメルスケールとは、音階に表されるような音の高さを表す心理的属性(心理尺度)を示すものであり、人間に等間隔に聞こえるピッチと呼ばれる周波数の間隔を直接数量化したスケールであって、1000Hz,40フォンの音のピッチを1000melと定義する。そして、500melの音響信号は0.5倍ピッチの音に聞こえ、2000melの音響信号は2倍ピッチの音に聞こえる。このメルスケールは物理量としての周波数f〔Hz〕を用いて次の(1)式のように近似できる。また、この近似式における音の高さ〔mel〕と周波数〔Hz〕との関係を図7に示す。
mel=(1000/log2)log(f/1000+1) …(1)
そして、音声の特徴を効率良く抽出するために、音響スペクトルの周波数帯をこのようなメルスケールに変換することが良く行われている。この音響スペクトルのメルスケールへの変換は、スペクトルの分析と同様に、通常コンピュータ上でソフトウェアにより実行される。
また、音声の特徴を効率良く抽出する手法として、音響スペクトルの周波数帯をバークスケールに変換することも良く行われている。このバークスケールは、人間の心理的な音の大きさ(ラウドネス)に対応する尺度であり、ある程度以上の大きな音において、人間が聴き分けられる周波数帯域幅(これを臨界帯域幅という)を示したものであり、この臨界帯域幅内の音は周波数が異なっていても同じように聞こえる。例えば、その臨界帯域幅内に大きなノイズが発生すると、信号音がそのノイズと周波数が異なっているにも拘らず、ノイズと信号音とを人間の聴覚では判別できないような周波数帯域を示すスケールがバークスケールである。
音声信号処理の分野ではコンピュータ上で取り扱いが容易な臨界帯域幅が要求され、音響スペクトルの周波数軸は1つの臨界帯域を1バーク〔Bark〕と定義するバークスケールで示される。図8に、臨界帯域幅とバークスケールとの数値関係を示す。また、これらの臨界帯域幅及びバークスケールは、物理量としての周波数f〔kHz〕を用いて次の(2)及び(3)式のように近似できる。
臨界帯域幅:CB〔Hz〕=25+75(1+1.4f2 0.69 …(2)
バークスケール:B〔Bark〕
=13tan-1(0.76f)+3.5tan-1(f/7.5) …(3)
ところで、音声認識の分野で聴覚末梢系の工学的機能モデルを用いることが知られており、前記非特許文献2に詳細な説明がなされている。工学的機能モデルでは、帯域フィルタ群による周波数スペクトル分析を前処理としており、例えば代表的な工学的機能モデルの1つであるSeneffのモデルにおける前処理では130〜6400Hzの周波数領域に40個の独立したチャネルを持つ臨界帯域幅フィルタ群により周波数スペクトル分析がなされる。このとき、音響スペクトルの周波数帯はバークススケールに変換される。このモデルではコンピュータシミュレーションによって入力音刺激に対するモデルの出力が求められ、生理データと良く一致することが示されている。よって、このような工学的機能モデルを使用することにより、音声自動認識において雑音中の音声認識率の向上を図ることができる。
このような臨界帯域幅フィルタ群により周波数スペクトル分析及び音響スペクトルのメルスケールへの変換は、スペクトルの分析と同様に、通常コンピュータ上でソフトウェアにより実行される。
IEEE Signal Processing Magazine, Vol.13, No.5, pp.45-57(1996) 甘利俊一監修、中川聖一・鹿野清宏・東倉洋一著「ニューロサイエンス&テクノロジーシリーズ 音声・聴覚と神経回路網モデル」(オーム社,1992年)
コンピュータ上のソフトウェアにより、ディジタル音響信号に高速フーリエ変換処理を施して、その音響信号のスペクトルを分析する従来の手法では、計算量が莫大となって計算負荷が大きいという問題がある。また、音響信号のスペクトルを高速フーリエ変換し、かつ、メルスケールに変換する一連の処理を、コンピュータ上のソフトウェアで行う場合も、計算量が莫大となって計算負荷が大きい。更に、音響信号のスペクトルを臨界帯域幅フィルタ群により周波数スペクトル分析し、かつ、バークスケールに変換する一連の処理をコンピュータ上のソフトウェアで行う場合も、計算量が莫大となって計算負荷が大きい。
また、従来の方法では、母音のように、時間の変化と共に音響スペクトルが変化しないような音声については問題が生じないが、子音と母音との組合せの音、例えば、「か,き,く,け,こ,さ,た」等のように初めに子音が出てきて時間の経過と共に母音の強度が大きくなるような音、または、英語のように複雑な子音と母音との組合せの音では、以下のような問題が生じる。従来では、瞬時に音声を記録し、一定時間毎に区切って全帯域の音響スペクトルを積算して、音声を分析しているので、どの時点で子音から母音に変わったのかを判定することは困難であり、そのために音声認識の判別率の低下が引き起こされていた。この問題を解消するために、より多くの音声パターンを予めコンピュータに記憶させておき、これらの音声パターンの何れかにあてはめるようにしているが、このことが計算負荷をますます増大させる原因となっている。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、音響信号の検出及び周波数スペクトル分析を1つのハードウェア上にて高速かつ正確に行うことができる音響センサを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、音響信号の検出,周波数スペクトル分析及び周波数スケールの変換(メルスケールまたはバークスケールへの変換)を1つのハードウェア上にて高速かつ正確に行うことができる音響センサを提供することにある。
請求項1に係る音響センサは、媒質中を伝搬する音波を受ける受波部分と、夫々が異なる特定の周波数に共振するような長さを持つ複数の棒状の共振子を有する共振部分と、該共振部分を保持する保持部分と、前記各共振子の、前記特定の周波数毎の振動強度を検出する振動強度検出部分とを備えており、隣合う二つの前記共振子間の距離を異ならせて、各共振子における共振周波数の帯域幅を所定値に設定していることを特徴とする。
請求項2に係る音響センサは、請求項1において、前記複数の共振子における共振周波数を、メルスケールで分布するように設定していることを特徴とする。
請求項3に係る音響センサは、請求項1において、前記複数の共振子における共振周波数を、バークスケールで分布するように設定していることを特徴とする。
請求項4に係る音響センサは、請求項1において、前記複数の共振子における共振周波数を、バークスケールで分布するように設定しており、各共振周波数に対応する帯域幅が臨界帯域幅であることを特徴とする。
請求項5に係る音響センサは、媒質中を伝搬する音波を受ける受波部分と、夫々が異なる特定の周波数に共振するような長さを持つ複数の棒状の共振子を有する共振部分と、該共振部分を保持する保持部分と、前記各共振子の、前記特定の周波数毎の振動強度を検出する振動強度検出部分とを備えており、隣合う二つの前記共振子間の距離が異なっており、前記複数の共振子における共振周波数を、バークスケールで分布するように設定しており、各共振周波数に対応する帯域幅が臨界帯域幅であることを特徴とする。
請求項6に係る音響センサは、請求項において、音楽曲を認識するための音楽曲入力用マイクロフォンであることを特徴とする。
請求項7に係る音響センサは、請求項1乃至5の何れかにおいて、音声を認識するための音声入力用マイクロフォンであることを特徴とする。
請求項8に係る音響センサは、請求項1乃至7の何れかにおいて、音響センサが半導体基板上に構成してあることを特徴とする。
本発明の音響センサは、夫々が特定の周波数に共振するように長さが異なる複数の共振子を有し、媒質中を伝搬した音波をこれらの共振子に伝え、各共振子での振動を検出する。そして、検出した振動振幅を電気信号に変換し、その電気信号を積算手段に入力して任意周期の期間で入力電気信号を積算する。そして、その積算結果を任意周期毎に特定の周波数毎に出力する。
また、本発明の音響センサは、各共振子における共振周波数を、数学的に線形なスケールで分布させるのではなく、メルスケールにて線形に分布させるようにする。実際の振動周波数とメルスケールとの対応は、前記(1)式及び図6に基づいて決められるので、各共振子の設計仕様は容易に決定できる。そして、メルスケール仕様に合わせた各共振子での振動を検出し、その後、上述した第1音響センサと同様の処理を行うことにより、音響信号のスペクトルに相当する物理量をメルスケールで検出できる。
また、本発明の音響センサは、各共振子における共振周波数を、数学的に線形なスケールで分布させるのではなく、バークスケールにて線形に分布させるようにすると共に、各共振周波数の帯域幅が臨界帯域幅になるようにする。実際の振動周波数とバークスケールとの対応、及び、臨界帯域幅を決める遮断周波数は、前記(2),(3)式及び図7に基づいて決められるので、各共振子の設計仕様は容易に決定できる。そして、バークスケール仕様に合わせた各共振子での振動を検出し、その後、上述した第1音響センサと同様の処理を行うことにより、音響信号のスペクトルに相当する物理量を臨界帯域幅を持ってバークスケールで検出できる。
本発明の音響センサでは、所望の周波数毎に音の強さを検知できるので、分析処理を行うことなく、音響スペクトルをリアルタイムで得ることができる。よって、全帯域の音響信号を入力して各周波数帯域に電気的にフィルタリングする従来の方式に比べて、このように音響信号を機械的に周波数毎に分解する本発明では、電気的なフィルタリングが不要となって処理速度が速くなる。また、一定時間毎に区切ったとしてもどこにも音響データの欠落がない。また、一定時間毎に各周波数毎の音響データが得られるので、時間の経過に合わせて各周波数の強度の推移を確認でき、例えば母音と子音との時間的変化の判別をより正確に行えて、音声認識の判別率を高めることができる。
以上のように、本発明の音響センサでは、電気信号に変換する前に、音波が各周波数帯域毎に機械的に分解されるので、従来のようなソフトウェアを用いた電気的なフィルタリング処理は不要になり、処理速度が速くなる。また、半導体基板上に容易に作製可能であって、従来のシステムに比べて占有面積を縮小でき、低コスト化も図ることがきる。更に、所望の周波数毎に音の強さを検知できるので、分析処理を行うことなく、音響スペクトルをリアルタイムで得ることができ、また、一定時間毎に各周波数毎の音響データが得られるので、時間の経過に合わせて各周波数の強度の推移を確認でき、音声の時間的変化の判別をより正確に行えて、音声認識の判別率を高めることに寄与できる。
また、本発明の音響センサは、メルスケールで分布する共振周波数を持つ複数の共振子の集合体、または、共振周波数がバークスケールで分布し、臨界帯域幅を持つ複数の共振子の集合体を有するので、人間の聴覚により近似させた状態で音声を認識でき、音声認識時に音声の特徴を効率良く抽出することが可能である。
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の音響センサの実施の形態を示す図である。本発明の音響センサは、半導体シリコン基板1に形成されるセンサ本体2と電極3と周辺回路である検出回路4とから構成されている。センサ本体2は、すべての部分が半導体シリコンで形成されており、長さが異なる複数(図1の例では6個)の棒状の部分を有する共振部分21と、この共振部分21を共振の固定端側で保持する板状の保持部分22と、保持部分22の一方の端部に立設された短寸棒状の伝搬部分23と、伝搬部分23に連なり空気中を伝搬した音波を受ける板状の受波部分24とから構成されている。
共振部分21は片持ち梁となっており、それぞれの棒状の部分は特定の周波数に共振するように長さが調整された共振子25となっている。これらの複数の共振子25は、下記(4)式で表される共振周波数fにて選択的に応答振動するようになっている。
f=(CHE1/2 )/(L2 ρ1/2 ) …(4)
但し、C:実験的に決定される定数
H:各共振子の厚さ
L:各共振子の長さ
E:材料物質(半導体シリコン)のヤング率
ρ:材料物質(半導体シリコン)の密度
上記(4)式から分かるように、共振子25の厚さHまたは長さLを変えることにより、その共振周波数fを所望の値に設定することができる。図1に示す例では、すべての共振子25の厚さHは一定とし、その長さLを左側から右側に向かうにつれて順次長くなるように設定しており、各共振子25が固有の共振周波数を持つようにしている。具体的には、左側から右側に向かって可聴帯域の15〜/20kHz程度の範囲内で高周波数から低周波数まで対応できるようになっている。
各共振子25の共振周波数の帯域幅は、共振部分21を振動エネルギが伝送していく過程において、隣合う共振子25との相互作用に依存する。即ち、隣合う共振子25の共振周波数の変化率,隣合う共振子25までの距離のような構造上の設計値、及び、隣合う共振子25間の気体の粘性等により、その帯域幅は決定されるが、本例では、隣合う共振子25間の距離を変えることにより、各共振子25の共振周波数の帯域幅を制御している。
図5は、共振周波数が3kHzである単結晶シリコン製の共振子25について、隣合う共振子25までの距離D(横軸)を変化させた場合の帯域幅(縦軸)の変化を示すグラフである。図6は、共振子25における長さL,厚さH,幅W及び距離Dの関係を表す図であり、この共振子25の設計値は長さL=1706μm、厚さH=10μm、幅W=80μmであって、隣合う共振子25間の気体は空気である。隣合う共振子25までの距離Dを調整することにより、所望の帯域幅を設定できることが、図5から理解される。よって、このことを考慮して、本例では、各共振子25の帯域幅が図8に示す臨界帯域幅になるように、隣合う共振子25間の距離Dを決定している。
以上のような構成をなすセンサ本体2は、半導体集積回路製造技術またはマイクロマシン加工技術を用いて半導体シリコン基板1上に作製される。そして、このような構成において、音波が受波部分24に伝わるとその板状の受波部分24が振動し、音波を示すその振動は伝搬部分23を経て保持部分22に伝搬し、これに保持された共振部分21の棒状の各共振子25をそれぞれの特定の周波数にて順次共振させながら図1の左方から右方へ伝わっていくようになっている。
センサ本体2には適当なバイアス電圧Vbiasが印加されており、共振部分21の各共振子25の先端部と、該先端部に対向する位置の半導体シリコン基板1に形成された電極3とにてキャパシタが構成されている。共振子25の先端部は共振子25の振動に伴って位置が上下する可動電極であって、一方、半導体シリコン基板1に形成された電極3はその位置が移動しない固定電極となっている。そして、共振子25がそれぞれの特定の周波数にて振動すると、両電極間の距離が変動するので、キャパシタの容量が変化するようになっている。
各電極3には、このような容量変化を電圧信号に変換し、変換した電圧信号を所定時間内で積算して出力する検出回路4が接続されている。図2は、検出回路4の構成を示す図であり、検出回路4は、前記キャパシタの容量Cs と基準容量Cf とのインピーダンス比に応じた増幅比にて増幅する演算増幅器41,42と、基準電圧Vref より高い演算増幅器42の出力信号を所定時間だけ積算する積算回路43と、積算回路43から出力信号を取り出して一時的に保持して出力するサンプルホールド回路44とを備える。このような構成の検出回路4は、例えばシリコンCMOSプロセスによって形成されている。
演算増幅器41,積算回路43及びサンプルホールド回路44には、それぞれクロックパルスφ0 ,φ1 及びφ2 が供給され、演算増幅器41,積算回路43及びサンプルホールド回路44はそれぞれこれらのクロックパルスに同期して動作する。なお、これらのクロックパルスは、外部から供給するようにしても良いし、同一の半導体シリコン基板上にカウンタ回路を形成してそこから供給するようにしても良い。
次に、動作について説明する。空気中を伝搬した音波がセンサ本体2の受波部分24に伝わると、板状の受波部分24が振動してその振動がセンサ本体2内を伝搬する。この際、図1の左方から右方へ音波が、順次長さが長くなっていく片持ち梁の各共振子25を共振させながら伝わっていく。各共振子25は固有の共振周波数を有しており、各共振子25はその固有の周波数の音波が伝搬すると共振し、その先端部が上下に振動する。この振動によって、その先端部と電極3との間で構成されるキャパシタの容量が変化する。なお、音波が伝搬していくにつれて音波のエネルギは共振子25の振動エネルギに順次変換されていくので、このような共振により音波のエネルギは除々に減衰し、最も長い共振子25(図1の右端)に音波が到達する頃には、音波としてのエネルギは殆ど無くなっており、反射波は生じない。よって、反射波が容量変化に影響を及ぼす虞はなく、伝搬した音波のスペクトルに合致した正確な容量変化を検出できる。
得られた容量変化が検出回路4内に送られる。図3は、検出回路4内におけるタイミングチャートを示す図であり、演算増幅器41,積算回路43及びサンプルホールド回路44にそれぞれ供給するクロックパルスφ0 ,φ1 及びφ2 を示す。なお、本例でのクロックパルス制御は、ローレベルでオン状態とする。
まず、検出回路4内では、演算増幅器41で得られたキャパシタの容量Cs と基準容量Cf とのインピーダンス比に応じて増幅比が決まる。例えば、1/ωCf (ω=2πf,f:周波数)に対する1/ωCs の値が1/2である場合には、得られる電圧信号が2倍になる。但し、演算増幅器41は、その+入力端子が接地されている反転増幅器であるので、次段の演算増幅器42で電圧位相を1倍で反転させる。得られた増幅電圧信号が積算回路43へ入力される。積算回路43では、クロックパルスφ1 に応じた所定の時間内において基準電圧Vref より高い増幅電圧信号が積算され、その積算信号がサンプルホールド回路44へ入力される。サンプルホールド回路44では、クロックパルスφ2 に応じて積算信号のサンプリングとホールドとを繰り返して外部へ積算信号を出力する。
以上のような処理は、長さが異なる共振子25にそれぞれ対応する検出回路4毎に並列的に行われる。なお、図3に示すクロックパルスφ0 ,φ1 及びφ2 の周期は一例であり、これらの各クロックパルスの周期は任意に設定しても良いことは勿論である。
以上のようにして、本発明では、特定の周波数に共振する共振子25に対応する検出回路4の出力信号を調べることにより、任意の時間を周期とした、その特定の周波数の音の強さの経時変化を知ることができる。また、複数の共振子25に対応する検出回路4の出力信号を調べることにより、任意の時間を周期とした、複数の周波数帯域毎の音の強さの経時変化を知ることができる。
図4は、特定の周波数に対応する各検出回路4の関係を示す図である。例えば、n種類の共振周波数f1 ,f2 ,f3 ,f4 ,…,fn にそれぞれ選択的に応答振動するようにn本の共振子を設ける場合には、各共振周波数毎にその共振強度に応じた検出回路の出力信号V1 ,V2 ,V3 ,V4 ,…,Vn を得ることができる。例えば、音声認識のための音声入力用マイクロフォンとして本発明の音響センサを使用する場合には、可聴帯域における各共振周波数毎の共振強度に応じてその周波数の強度を求め、求めた分析パターンに基づいて音声を認識する。
なお、音波の任意に選択した周波数のみの強度を求めたい場合には、必要な共振周波数に対応する検出回路の出力信号のみを得るようにすれば良い。例えば、図4において周波数f1 ,f3 の強度を求める場合には、対応しない他の検出回路4-2,4-4,…,4-nの出力を遮断するか、予めこれらの検出回路4-2,4-4,…,4-nは設けないようにするかして、必要な出力信号V1 ,V3 が得られて、不要な出力信号V2 ,V4 ,…,Vn が得られないようにすれば良い。このような音響センサの使用例としては、特定の1または複数の周波数の異常音を検出するための異常音入力用マイクロフォンが好適である。
(第2の実施の形態)
次に、各共振子における共振周波数を、音階に表されるような音の高さを表す心理的属性であるメルスケールにて線形に分布させるようにした第2の実施の形態について説明する。なお、この第2の実施の形態の音響センサの構成は、前述した第1の実施の形態の構成と同様であるが、第2の実施の形態では、各共振子25における共振周波数を、数学的に線形なスケールで分布させるのではなく、メルスケールにて線形に分布させるようにしている。つまり、n本の共振子25における共振周波数をf1 ,f2 ,f3 ,…,fn とした場合に、
1 〔Hz〕=αf2 〔Hz〕=…………=αn-1 n 〔Hz〕
のように設定するのではなく、
1 〔mel〕=αf2 〔mel〕=…………=αn-1 n 〔mel〕
のように設定する。なお、αは任意に設定可能な係数である。
各共振子25の共振周波数は、前記(4)式にて決められ、また、実際の振動周波数とメルスケールとの対応は、前述したように、前記(1)式及び図7に基づいて決められるので、メルスケールでの任意の共振周波数を各共振子25に容易に割り当てることができる。本例では、すべての共振子25の厚さHは一定とし、その長さLを異ならせて、メルスケール上で等間隔になるような周波数に対応した共振周波数を得ている。
なお、他の構成及び動作は、前述した第1の実施の形態の場合と同じであるので、それらの説明は省略する。
第2の実施の形態では、各共振子25の共振周波数をメルスケールにて分布するようにしたので、人間の耳に聞こえるオクターブ音,半音等を選択的にリアルタイムで認識でき、人間の聴覚に合わせた周波数特性を持つマイクロフォンの製作が可能となる。オクターブ音,半音等のピッチ音の時間的変化をより正確に判別できるので、音声認識,異常音検出に効果を奏することは勿論、朗読,和歌等の抑揚がある音声、楽曲等の音階がある音に対する識別性に優れた音声入力用マイクロフォンを構成できる。
(第3の実施の形態)
次に、各共振子における共振周波数を、音の大きさを表す心理的属性であるバークスケールにて線形に分布させるようにした第3の実施の形態について説明する。なお、この第3の実施の形態の音響センサの構成は、前述した第1の実施の形態の構成と同様であるが、第3の実施の形態では、各共振子25における共振周波数を、数学的に線形なスケールで分布させるのではなく、バークスケールにて分布させるようにしていると共に、各共振子25における共振周波数の帯域幅を臨界帯域幅になるようにしている。
図8で示されるバークスケールと実周波数との対応関係に基づいて、各各共振子25の共振周波数が決定される。そして、各共振子25の共振周波数は前記(4)式にて決められるが、本例では、すべての共振子25の厚さHは一定とし、その長さLを異ならせることにより、バークスケールでの任意の共振周波数を各共振子25に割り当てている。
第3の実施の形態では、各共振子25の共振周波数をバークスケールにて分布するようにしたので、人間の聴力に合った周波数特性と帯域幅を持たせることができ、雑音中に隠れている音響信号を選別することが容易になり、雑音が多い状況の中での音声認識の判別率を向上させることが可能となる。また、人間の聴覚により近いセンサを提供できる。
なお、他の構成及び動作は、前述した第1の実施の形態の場合と同じであるので、それらの説明は省略する。
本発明の音響センサの実施の形態を示す図である。 本発明の音響センサにおける検出回路の構成を示す図である。 本発明の音響センサにおける検出回路のタイミングチャートを示す図である。 特定の周波数に対応する各検出回路の関係を示す図である。 共振子間距離と帯域幅との関係を示すグラフである。 本発明の音響センサにおける共振子の長さ,厚さ,幅及び距離の関係を表す図である。 実際の周波数とメルスケール値との関係を示すグラフである。 臨界帯域幅とバークスケールとの数値関係を示す図表である。
符号の説明
1 半導体シリコン基板
2 センサ本体
3 電極
4 検出回路
21 共振部分
22 保持部分
23 伝搬部分
24 受波部分
25 共振子
41,42 演算増幅器
43 積算回路
44 サンプルホールド回路

Claims (8)

  1. 媒質中を伝搬する音波を受ける受波部分と、夫々が異なる特定の周波数に共振するような長さを持つ複数の棒状の共振子を有する共振部分と、該共振部分を保持する保持部分と、前記各共振子の、前記特定の周波数毎の振動強度を検出する振動強度検出部分とを備えており、隣合う二つの前記共振子間の距離を異ならせて、各共振子における共振周波数の帯域幅を所定値に設定していることを特徴とする音響センサ。
  2. 前記複数の共振子における共振周波数を、メルスケールで分布するように設定していることを特徴とする請求項1に記載の音響センサ。
  3. 前記複数の共振子における共振周波数を、バークスケールで分布するように設定していることを特徴とする請求項1に記載の音響センサ。
  4. 前記複数の共振子における共振周波数を、バークスケールで分布するように設定しており、各共振周波数に対応する帯域幅が臨界帯域幅であることを特徴とする請求項1に記載の音響センサ。
  5. 媒質中を伝搬する音波を受ける受波部分と、夫々が異なる特定の周波数に共振するような長さを持つ複数の棒状の共振子を有する共振部分と、該共振部分を保持する保持部分と、前記各共振子の、前記特定の周波数毎の振動強度を検出する振動強度検出部分とを備えており、隣合う二つの前記共振子間の距離が異なっており、前記複数の共振子における共振周波数を、バークスケールで分布するように設定しており、各共振周波数に対応する帯域幅が臨界帯域幅であることを特徴とする音響センサ。
  6. 音楽曲を認識するための音楽曲入力用マイクロフォンであることを特徴とする請求項に記載の音響センサ。
  7. 音声を認識するための音声入力用マイクロフォンであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の音響センサ。
  8. 音響センサが半導体基板上に構成してあることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の音響センサ。
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